(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
少なくとも一方の面に、連続した線状の凹凸部によって形作られた複数のナール部を有する長尺フィルムであって、複数の前記ナール部が、前記長尺フィルムの長手方向に並んでいて、前記ナール部を前記長尺フィルムの厚み方向から見た平面形状が、曲率半径が0.3mm以下で且つ角度が100°以下であるか、又は、曲率半径が0.2mm以下で且つ角度が120°以下である角部を、前記ナール部の平面形状1個当たり、10個以上有し、直線状の直線部を、前記ナール部の平面形状1個当たり、18個以上有する、長尺フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、フィルムに形成されたナール部の平面形状とは、別に断らない限り、前記フィルムの厚み方向から見たナール部の形状を表す。
【0013】
以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」、「メタクリレート」及びこれらの組み合わせを包含する用語である。
【0014】
[1.長尺フィルムの実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る長尺フィルム100を、当該長尺フィルム100の厚み方向から見た様子を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、長尺フィルム100は、長尺のフィルムであって、少なくとも一方の面100Uに、複数のナール部110を有する。これら複数のナール部110は、長尺フィルム100の長手方向MDに並んで設けられている。また、ナール部110は、通常、長尺フィルム100の幅方向TDの少なくとも一方の端部に設けられ、好ましくは両方の端部に設けられる。各ナール部110を厚み方向から見た平面形状は、異なっていてもよいが、本実施形態では、いずれもナール部110の平面形状も同じである例を示す。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る長尺フィルム100が有するナール部110の一つを、前記長尺フィルム100の厚み方向から見た平面形状を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、ナール部110は、連続した線状の凹凸部120によって形作られている。これらの凹凸部120は、レーザー光の照射によって形成されたものである。よって、凹凸部120は、レーザー光の照射点が移動した跡として、通常は一筆書き状に連続する線として形成されている。そして、ナール部110は、このような線状の凹凸部120によって描画された特定の平面形状を有する。
【0016】
本実施形態において、ナール部110を長尺フィルム100の厚み方向から見た平面形状は、下記の要件(A)及び(B)を満たす。
(A)ナール部110の平面形状が、(a)曲率半径が0.3mm以下で且つ角度が100°以下であるか、又は、(b)曲率半径が0.2mm以下で且つ角度が120°以下である角部111を、ナール部110の平面形状1個当たり、10個以上有する。
(B)ナール部110の平面形状が、直線状の直線部112を、ナール部110の平面形状1個当たり、18個以上有する。
これらの要件(A)及び(B)を満たすナール部110を有することにより、長尺フィルム100は、良好な搬送性及び巻回性を有する。
【0017】
以下、前記の要件(A)について説明する。
ナール部110の平面形状は、通常、直線状に延在する凹凸部120によって形作られた直線部112と、非直線状に延在する凹凸部120によって形作られた非直線部113とを含む。非直線部113のうち、(a)曲率半径が0.3mm以下で且つ角度が100°以下であるか、又は、(b)曲率半径が0.2mm以下で且つ角度が120°以下である部分を、角部111という。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係る長尺フィルム100が有するナール部110の角部111の一つを、拡大して模式的に示す平面図である。
前記の角部111は、巨視的に見ると、尖った角になっているが、微視的に見ると、通常は、
図3に示すように、丸みを帯びている。この際、前記の丸みを帯びた部分の曲率半径Rが、当該角部111の曲率半径である。また、巨視的に見た時に角部111において交わる2本の直線部112を延長し、延長した線112a及び112bが交わる角度θが、前記の角部111の角度である。
【0019】
本実施形態に係るナール部110は、
図2に示すように、前記の角部111を、ナール部110の平面形状1個当たり、通常10個以上、より好ましくは12個以上、より好ましくは15個以上、有する。このようにナール部110が角部111を多く有するにより、長尺フィルム100の搬送性及び巻回性を改善できる。ナール部110の平面形状1個当たりの角部111の数の上限は、特段は無いが、ナール部110の形成を容易に行う観点から、好ましくは40個以下、より好ましくは30個以下、特に好ましくは25個以下である。
【0020】
ここで、角部111を多く有するナール部110により、長尺フィルム10の搬送性及び巻回性を改善できる仕組みを説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みの説明によって制限されない。
【0021】
図4は、角部111を形成するために照射されるレーザー光の照射点Pが移動する様子を、模式的に示す平面図である。また、
図5は、直線部112を形成するために照射されるレーザー光の照射点Pが移動する様子を、模式的に示す平面図である。
図4及び
図5においては、照射点Pは、矢印A1及びA2が示す方向に移動する様子を示している。
【0022】
線状に連続する凹凸部120を形成する場合、
図4及び
図5に示すように、レーザー光の照射点Pを移動させながら、フィルムにレーザー光を照射する。直線部112を形成する場合には、
図5に示すように、照射点Pは直線状に移動する。他方、角部111を形成する場合には、
図4に示すように、照射点Pは、急峻な角度で曲がるように移動する。急峻に曲がるように照射点Pを移動させた場合、その移動方向の内側部分では、レーザー光の照射時間が長くなるので、照射されるレーザー光のエネルギー密度が大きくなる。よって、角部111においては、凹凸部120の高さH(
図6参照)が高くなる。このように凹凸部120の高さHが高いことにより、角部111では、長尺フィルム100を他の部材に接触させた場合に、その接触圧を大きくできる。
【0023】
そのため、長尺フィルム100を搬送するときに、前記の角部111では、搬送ロールと長尺フィルム100との接触圧を高くできる。よって、ナール部110が角部111を多く有すると、搬送ロールに対する長尺フィルム100のグリップ力(摩擦力)を大きくできるので、蛇行を抑制して搬送性を改善することができる。
また、長尺フィルム100を巻き取るときに、前記の角部111では、巻き重ねられる長尺フィルム100同士の接触圧を高くできる。よって、ナール部110が角部111を多く有すると、巻き重ねられる長尺フィルム100同士のグリップ力を大きくできるので、巻きずれを抑制して巻回性を改善することができる。
【0024】
次に、前記の要件(B)について説明する。
ナール部110の平面形状は、
図2に示すように、直線状の直線部112を、ナール部110の平面形状1個当たり、通常18個以上、好ましくは25個以上、より好ましくは30個以上、有する。このようにナール部110が直線部112を多く有するにより、長尺フィルム100の搬送性及び巻回性を改善できる。ナール部110の平面形状1個当たりの直線部112の数の上限は、特段は無いが、ナール部110の形成を容易に行う観点から、好ましくは45個以下、より好ましくは40個以下、特に好ましくは35個以下である。
【0025】
ここで、直線部112を多く有するナール部110により、長尺フィルム10の搬送性及び巻回性を改善できる仕組みを説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みの説明によって制限されない。
【0026】
直線部112は、凹凸部120によって形作られている。そのため、直線部112では、角部111ほど大きくは無いものの、長尺フィルム100を他の部材に接触させた場合に、その接触圧を大きくできる。したがって、角部111に加えて直線部112を多く有するナール部110を有することにより、長尺フィルム100は、直線部112の作用によっても、搬送ロールと長尺フィルムとの接触圧、並びに、巻き重ねられる長尺フィルム100同士の接触圧を高くできる。そして、前記のように接触圧を高くできることにより、搬送ロールに対する長尺フィルム100のグリップ力、並びに、巻き重ねられる長尺フィルム100同士のグリップ力を更に大きくできるので、搬送性及び巻回性を効果的に改善できる。
【0027】
図2に示すように、直線部112の一本当たりの長さL
112は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、特に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
【0028】
長尺フィルム100の幅方向TDにおけるナール部110の1つ当たりの長さL
TDと、長尺フィルム100の長手方向におけるナール部110の1つ当たりの長さL
MDとの比L
TD/L
MDは、所定範囲に収まることが好ましい。具体的には、前記の比L
TD/L
MDは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、特に好ましくは3以上である。比L
TD/L
MDが、前記範囲に収まることにより、形状が崩れることなくナール部110を形成できる。前記の比L
TD/L
MDの上限に特段の制限は無いが、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、特に好ましくは10以下である。
【0029】
ナール部110の長さL
TD及びL
MDは、それぞれ、前記の比L
TD/L
Mが上述した範囲に収まるように、適切に設定することが好ましい。具体的には、長尺フィルム100の幅方向TDにおけるナール部110の1つ当たりの長さL
TDは、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、特に好ましくは7mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは17mm以下、特に好ましくは15mm以下である。また、長尺フィルム100の長手方向におけるナール部110の1つ当たりの長さL
MDは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0030】
図1に示したように、ナール部110は、通常、所定のピッチで、長尺フィルム100の長手方向MDに並んで設けられている。この際、ナール部110のピッチは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、特に好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。また、ナール部110のピッチは、一定でもよく、異なっていてもよい。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態に係る長尺フィルム100が有するナール部110に含まれる線状の凹凸部120を、当該凹凸部120の延在方向に垂直な面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、上述したナール部110を形作る凹凸部120は、凹部121と、凹部121の両側に設けられた凸部122を備える。通常、凹部121は、レーザー光の照射による熱溶融又はアブレーションによって、樹脂が取り除かれた部分に相当し、また、凸部122は、前記のレーザー光の照射によって加熱されて流動化した樹脂が盛り上がった部分に相当する。凸部122が、周囲の長尺フィルム100の面100Uよりも突出していることにより、この凹凸部120においては長尺フィルム100の実質的な厚みが厚くなっている。そのため、上述したように、長尺フィルム100の搬送性及び巻回性などの取り扱い性が良好となっている。
【0032】
凹凸部120の高さHは、均一でもよく、不均一でもよい。通常は、ナール部110の角部111と直線部112とで、凹凸部120の高さHは異なる。また、角部111においては、内側の凸部122と外側の凸部122とで、その高さHが異なりうる。
【0033】
ナール部110の角部111における凹凸部120の平均高さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。角部111における凹凸部120の平均高さが、前記範囲の下限値以上であることにより、長尺フィルム100の巻き取り時に、巻きずれを抑制できる。また、角部111における凹凸部120の平均高さが、前記範囲の上限値以下であることにより、巻き取ったロールの巻径が、ナール部110が形成された部分(例えば、ロールの軸方向端部)とそれ以外の部分(例えば、ロールの軸方向中央部)とで差ができることによる、長尺フィルム100の変形を抑制できる。
【0034】
ナール部110の直線部112における凹凸部120の平均高さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。直線部112における凹凸部120の平均高さが、前記範囲の下限値以上であることにより、長尺フィルム100の巻き取り時に、巻きずれを抑制できる。また、直線部112における凹凸部120の平均高さが、前記範囲の上限値以下であることにより、形状が崩れることなくナール部110を形成できる。
【0035】
凹凸部120の幅Wは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.75μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。凹凸部120の幅Wが、前記範囲の下限値以上であることにより、長尺フィルム100の巻き取り時に、巻きずれを抑制できる。また、凹凸部120の幅Wが、前記範囲の上限値以下であることにより、形状が崩れることなくナール部110を形成できる。
【0036】
長尺フィルム100の幅及び厚みには特に制限は無く、使用目的に応じた幅及び厚みを採用しうる。長尺フィルム100の幅は、好ましくは700mm以上、より好ましくは1000mm以上、さらにより好ましくは1200mm以上であり、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2200mm以下、さらにより好ましくは2000mm以下である。また、長尺フィルム100の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは20μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下である。
【0037】
長尺フィルム100は、光学フィルムとして用いる場合には、ナール部110の無い領域において、高い透明性を有することが好ましい。具体的には、前記の領域における長尺フィルム100の全光線透過率は、好ましくは85%〜100%、より好ましくは92%〜100%である。また、前記の領域における長尺フィルム100のヘイズは、好ましくは0%〜5%、より好ましくは0%〜3%、特に好ましくは0%〜2%である。ここで、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−2000」を用いて測定しうる。また、ヘイズは、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定しうる。
【0038】
上述した長尺フィルム100は、ナール部110を形成される前のフィルムに、レーザー光を照射する工程を含む製造方法によって製造しうる。以下、ナール部110を形成される前のフィルムを、適宜「処理前フィルム」ということがある。
【0039】
レーザー光の照射は、通常、処理前フィルムを当該処理前フィルムの長手方向に連続的に搬送しながら、行う。処理前フィルムの少なくとも一方の面にレーザー光を照射すると、レーザー光が照射された場所において局所的に熱溶融又はアブレーションが生じる。このため、レーザー光が照射された場所では、処理前フィルムに、凹凸部120としての凸状の変形及び凹状の変形を生じさせることができる。
【0040】
このようなレーザー光を用いたナール部110の形成では、機械的な力が不要であるので、ナール部110における残留応力が残り難い。そのため、長尺フィルム100におけるナール部110を起点とした破断の発生を抑制し易い。また、厚みの薄い処理前フィルムを用いた場合でも、ナール部110の形成時におけるフィルム破断を抑制し易い。さらに、ナール部110の形成による異物の発生を、容易に抑制できる。
【0041】
前記のレーザー光の照射の際には、レーザー光が処理前フィルムに当たる照射点Pを、形成したいナール部110の平面形状を描画するように移動させる。これにより、レーザー光の照射点Pが移動した跡に凹凸部120が形成されるので、所望の平面形状を有するナール部110を形成することができる。
【0042】
レーザー光の照射点Pを移動させる際、照射点Pは、ナール部110の平面形状を、途中で線を途切れさせずに連続して描画することが好ましい(一筆書き)。これにより、一つのナール部110を形成する期間、レーザー光を照射したままにできる。したがって、ナール部110の形状のバラツキを抑制することができるので、ナール部110の安定した形成が可能である。
【0043】
レーザー光の照射点Pの移動速度は、所望のナール部110を形成できる範囲で任意に設定しうる。具体的な移動速度は、好ましくは500mm/s以上、より好ましくは1000mm/s以上、特に好ましくは1500mm/s以上であり、好ましくは10000mm/s以下、より好ましくは8000mm/s以下、特に好ましくは6000mm/s以下である。
【0044】
レーザー光の照射装置であるレーザー装置としては、例えば、ArFエキシマレーザー装置、KrFエキシマレーザー装置、XeClエキシマレーザー装置、YAGレーザー装置(特に、第3高調波若しくは第4高調波)、YLF若しくはYVO4の固体レーザー装置(特に、第3高調波若しくは第4高調波)、Ti:Sレーザー装置、半導体レーザー装置、ファイバーレーザー装置、及び炭酸ガスレーザー装置が挙げられる。これらのレーザー装置の中でも、比較的安価であり、且つフィルムの加工に適した出力が効率的に得られる観点から、炭酸ガスレーザー装置が好ましい。
【0045】
レーザー光の出力は、好ましくは1W以上、より好ましくは5W以上、さらに好ましくは15W以上であり、好ましくは120W以下、より好ましくは100W以下、さらに好ましくは80W以下、さらにより好ましくは70W以下である。レーザー光の出力を前記範囲の下限値以上にすることにより、レーザー光の照射量不足を抑制して、ナール部110を安定して形成できる。また、レーザー光の出力を前記範囲の上限値以下とすることにより、フィルムに貫通孔が生じるのを抑制できる。
【0046】
[2.長尺フィルムの組成]
上述した長尺フィルムとしては、通常、樹脂フィルムを用いる。この樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。また、前記の樹脂フィルムは、基材層のみを備える単層フィルムであってもよく、基材層に組み合わせて更に任意の層を備える複層フィルムであってもよい。
【0047】
基材層としては、通常、樹脂からなる層を用いる。このような樹脂としては、長尺フィルムの用途に応じて様々な樹脂を用いうるが、中でも、環状オレフィン樹脂又は(メタ)アクリル樹脂が好ましい。環状オレフィン樹脂又は(メタ)アクリル樹脂からなる基材層を備えるフィルムは、一般に、巻き取り時に空気を巻きこみやすく、そのため、巻きずれを生じやすい。これに対し、上述したナール部を形成すれば、そのように巻きずれが生じやすいフィルムにおいて、巻きずれを効果的に抑制できる。
【0048】
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン重合体を含む樹脂である。環状オレフィン重合体は、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れる。
【0049】
環状オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。環状オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0050】
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0051】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0052】
環状オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、透明性及び耐熱性が良好となる。
【0053】
環状オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
【0054】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0055】
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0056】
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0057】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0059】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0061】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0062】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含むフィルムを、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0063】
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0064】
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
【0065】
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
【0066】
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。但し、前記のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーでは、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いてもよい。
【0067】
環状オレフィン重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、フィルムの安定性を高めることができる。
【0068】
環状オレフィン重合体のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。ガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であることにより、高温下におけるフィルムの耐久性を良好にでき、ガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であることにより、延伸処理を容易に行うことが可能である。
【0069】
環状オレフィン重合体は、光弾性係数の絶対値が10×10
−12Pa
−1以下であることが好ましく、7×10
−12Pa
−1以下であることがより好ましく、4×10
−12Pa
−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。環状オレフィン重合体の光弾性係数を前記範囲に収めることにより、フィルムの面内レターデーショReのバラツキを小さくできる。
【0070】
環状オレフィン重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、長尺フィルムの面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。また、長尺フィルムを偏光板保護フィルムとして用いて偏光板及び液晶表示装置を製造した場合、その偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、液晶表示装置の表示機能を、長期にわたり安定的に、良好な状態に保つことができる。
【0071】
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。環状オレフィン重合体における飽和吸水率は、例えば、環状オレフィン重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、環状オレフィン重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
【0072】
環状オレフィン樹脂における環状オレフィン重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、十分な耐熱性及び透明性を得られる。
【0073】
環状オレフィン樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、環状オレフィン重合体以外の任意の成分を含みうる。任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;滑剤;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル重合体を含む樹脂である。(メタ)アクリル重合体とは、アクリル酸又はアクリル酸誘導体の重合体を意味し、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの重合体及び共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル重合体は強度が高く硬いため、機械的強度の高いフィルムを実現できる。
【0075】
(メタ)アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られる構造を有する構造単位を含む重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜15のアルカノール又はシクロアルカノールとから誘導される構造を有する化合物が好ましい。さらには、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜8のアルカノールとから誘導される構造を有する化合物がより好ましい。炭素数を前記のように小さくすることにより、フィルム破断時の伸びを小さくすることができる。
【0076】
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
【0077】
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
【0078】
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、例えば水酸基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
また、(メタ)アクリル重合体は、アクリル酸又はアクリル酸誘導体のみの重合体であってもよいが、アクリル酸又はアクリル酸誘導体とこれに共重合可能な任意の単量体との共重合体でもよい。任意の単量体としては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0081】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0082】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0083】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0084】
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0085】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0086】
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
【0087】
(メタ)アクリル重合体が任意の単量体を含む場合、当該(メタ)アクリル重合体における任意の単量体を重合して得られる構造を有する構造単位の量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0088】
これらの(メタ)アクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
【0089】
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、十分な機械的強度を得られる。
【0090】
(メタ)アクリル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、(メタ)アクリル重合体以外の任意の成分を含みうる。任意の成分の例を挙げると、環状オレフィン樹脂が含みうる任意の成分と同様の例が挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0091】
前記の基材層は、樹脂を適切なフィルム成形法で成形することによって、製造しうる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法は、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境及び作業環境の観点、並びに、製造効率に優れる観点から、好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法を用いてもよいが、生産性及び厚さ精度に優れる点で、Tダイ法が好ましい。
【0092】
長尺フィルムとして、2層以上の層を備える複層フィルムを用いる場合、当該複層フィルムは、基材層及び機能層を備えることが好ましい。機能層は、基材層の片側に設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。中でも、機能層は、基材層のナール部側に設けられていることが好ましく、機能層の表面にナール部が設けられていることが更に好ましい。
このような機能層としては、例えば、帯電防止層、ハードコート層、密着防止層、易接着層などが挙げられる。
【0093】
帯電防止層とは、小さい表面抵抗値を有する層をいう。帯電防止層の具体的な表面抵抗値は、好ましくは1.0×10
6Ω/□以上、より好ましくは1.0×10
7Ω/□以上、特に好ましくは1.0×10
8Ω/□以上であり、好ましくは1.0×10
10Ω/□以下、より好ましくは5.0×10
9Ω/□以下、特に好ましくは1.0×10
9Ω/□以下である。表面抵抗値は、JIS K6911に準拠して、ディジタル超絶縁/微少電流計(日置電気社製「DSM−8104」)を用いて測定しうる。このような帯電防止層は、例えば、金属酸化物粒子等の導電性粒子と重合体とを含む樹脂により形成しうる。
【0094】
ハードコート層とは、高い硬度を有する層をいう。ハードコート層の具体的な硬度をJIS鉛筆硬度で示すと、好ましくはB以上、より好ましくはHB以上、特に好ましくはH以上である。ここで、JIS鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準拠して、各種硬度の鉛筆を45°傾けて、上から500g重の荷重を掛けて層の表面を引っ掻き、傷が付きはじめる鉛筆の硬さである。このようなハードコート層は、例えば、樹脂により形成しうる。
【0095】
密着防止層とは、粗い表面を有し、他のフィルムと重ねた時にフィルム間の密着を抑制しうる層をいう。このような密着防止層は、例えば、重合体及び粒子を含む樹脂により形成しうる。
【0096】
易接着層とは、当該易接着層の表面を別の部材と貼り合わせる際に高い接着性を発揮しうる層をいう。このような易接着層は、例えば、重合体を含む樹脂により形成しうる。
【0097】
前記の機能層のなかでも、易接着層が好ましい。易接着層は、水系樹脂を含む層とすることが好ましい。水系樹脂とは、水を媒体とした溶液または分散液として調製されうる樹脂である。水系樹脂を含む水溶液又は水分散液を基材層の表面に塗布して乾燥することにより、基材層の表面に、水系樹脂の層を形成することができる。水系樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれぞれの樹脂のエマルジョンなどが挙げられ、好ましくは水系ウレタン樹脂が挙げられる。
【0098】
水系ウレタン樹脂は、ポリウレタンと、必要に応じて任意の成分とを含む。
水系ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンが挙げられる。
また、水系ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンとしては、例えば、上記(i)成分及び(ii)成分をウレタン化反応させて得たイソシアネート基含有プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタンが挙げられる。ここで、イソシアネート基含有プレポリマーを得るための(i)成分及び(ii)成分のウレタン化反応は、イソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中で行う。
これらのポリウレタン中には酸構造(酸残基)を含有させてもよい。
【0099】
イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は、公知の方法を用いうる。例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させてもよい。
【0100】
前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、ポリオール化合物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0101】
(1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
【0102】
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
【0103】
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、ジカルボン酸又はその無水物と、ポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、例えば、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、またはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどが挙げられる。
【0104】
(4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)を、上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。また、ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオールと他のグリコールとの混合物を、上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。ポリエーテルエステルポリオールとしては、より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
【0105】
(5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させる方法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させ、必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
【0106】
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0107】
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物を使用してもよい。
【0108】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0109】
また、水系ウレタン樹脂のうちでポリウレタンが酸構造を含有するもの(以下、適宜「酸構造含有水系ウレタン樹脂」という。)は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となる。よって、酸構造含有水系ウレタン樹脂によれば、易接着層の耐水性が良くなることが期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤を使用すること無く分子イオン性のみで、水中にポリウレタン樹脂が分散安定化しうることを意味する。このような水系ウレタン樹脂を用いた易接着層は、界面活性剤が不要であるために、環状オレフィン樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂との接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できる。
【0110】
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO
3H)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。また、酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0111】
酸構造の含有量としては、水系ウレタン樹脂中の酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が前記範囲の下限値以上であることにより水分散性が良好となりやすく、酸価が前記範囲の上限値以下であることにより易接着層の耐水性を良好にできる。
【0112】
ポリウレタンに酸構造を導入する方法としては、例えば、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。また、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0113】
ポリウレタンが含む酸構造の一部又は全部は、中和されていることが好ましい。酸構造を中和することにより、水系ウレタン樹脂の水分散性を向上させることができる。酸成分を中和する中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;などを挙げられる。また、中和剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0114】
ポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
【0115】
水系ウレタン樹脂として、市販されている水系ウレタン樹脂をそのまま使用することも可能である。水系ウレタン樹脂としては、例えば、DIC社製の、ハイドランHW−301、HW−310、HW−311、HW−312B、HW−333、HW−340、HW−350、HW−375、HW−920、HW−930、HW−940、HW−950、HW−970、AP−10、AP−20、ECOS3000;三洋化成工業社製の、ユープレンUXA−3005、ケミチレンGA−500;第一工業製薬社製の、スーパーフレックス110、スーパーフレックス150、スーパーフレックス260S、スーパーフレックス210、スーパーフレックス410、スーパーフレックス420、スーパーフレックス500M、スーパーフレックス870;アデカ社製の、アデカボンタイターUHX−210、アデカボンタイターUHX−280;住化バイエルウレタン社製の、ディスパコールU53、ディスパコールU54、ディスパコールU56、ディスパコールU42、インプラニールDLU、インプラニールDLSなどを用いることができる。また、水系ウレタン樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0116】
易接着層は、粒子を含むことが好ましい。したがって、易接着層が水系樹脂により形成される場合、当該水系樹脂は粒子を含むことが好ましい。粒子により、易接着層の表面に凹凸が形成される。それによって、易接着層の表面の滑り性を向上させて、長尺フィルムを巻き取る際のシワの発生を抑制できる。
【0117】
粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、特に好ましくは200nm以下である。平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、易接着層の滑り性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることによりヘイズを低く抑えることができる。粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。
【0118】
粒子としては、無機粒子、有機粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の粒子を用いることが好ましい。無機粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、長尺フィルムの光学特性に与える影響がより小さい。また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好である。シリカの粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
また、粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0119】
易接着層が含む粒子の量は、易接着層が含む重合体100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは5重量部以上、特に好ましくは8重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは18重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、フィルムのハンドリング性を向上させることができるので、長尺フィルムを巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、長尺フィルムの白濁の無い外観を維持できる。
【0120】
易接着層の機械強度を向上させる目的で、易接着層の製造に用いる水系樹脂には、更に架橋剤を含ませることが好ましい。架橋剤としては、水系樹脂に含まれる重合体が有する反応性基と反応する官能基を有する化合物を用いうる。例えば、水系樹脂として水系ウレタン樹脂を用いる場合には、架橋剤として水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物、水系オキサゾリン化合物等を使用することが、材料の汎用性の観点から好ましい。中でも、特に水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系オキサゾリン化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。
【0121】
水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。水系エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。
【0122】
水系アミノ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。水系アミノ化合物の例を挙げると、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。
【0123】
水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物を用いうる。非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらの変性体が挙げられる。前記の変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体が挙げられる。さらには、ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、前記の例に挙げたブロック型イソシアネート化合物の重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものを、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタムなど)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。
【0124】
水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物を用いうる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
【0125】
水系オキサゾリン化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のオキサゾリン基を有する化合物を用いうる。
【0126】
架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0127】
架橋剤の量は、水系樹脂が含む重合体100重量部に対して、有効成分で、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、好ましくは70重量部以下、より好ましくは65重量部以下である。このような配合にすることにより、易接着層の強度と、水系樹脂の水分散体の安定性を両立できる。また、架橋剤のなかでも反応性の高いヒドラジド化合物及び多官能イソシアネート化合物は、基材層及び接着剤と相互作用を生じる可能性があるので、その量はなるべく少ないことが好ましい。具体的には、水系樹脂が含む重合体100重量部に対するヒドラジド化合物及び多官能イソシアネート化合物の量は、有効成分で、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上であり、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは8重量部以下である。
【0128】
さらに、易接着層には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどの成分を含ませてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0129】
易接着層は、重合体及び溶媒、並びに必要に応じて粒子等の任意の成分を含む樹脂組成物を用意し、その樹脂組成物を基材層の表面に塗布して前記樹脂組成物の層を形成した後で、その樹脂組成物の層を硬化させることにより製造しうる。また、樹脂組成物の層の硬化は、例えば、紫外線等の活性エネルギー線の照射、加熱等により行ないうる。
【0130】
例えば、易接着層をウレタン樹脂により形成する場合は、基材層の表面に、水系ウレタン樹脂の水分散体を直接に塗布することにより、易接着層としてのウレタン樹脂層を形成してもよい。水系ウレタン樹脂の水分散体は、水系ウレタン樹脂が水に分散された液状の組成物であり、例えば、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態としてもよい。
【0131】
水系ウレタン樹脂の水分散体には、水溶性の溶媒が含まれていてもよい。水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0132】
水系ウレタン樹脂の水分散体に分散する水系ウレタン樹脂の粒子の粒径は、長尺フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。水系ウレタン樹脂粒子の粒径は、動的光散乱法により測定することができ、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定することができる。
【0133】
水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であるのが特に好ましい。水系ウレタン樹脂の分散体の粘度が前記範囲内にあると、基材層の表面に水系ウレタン樹脂の水分散体を均一に塗布することができる。水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。水系ウレタン樹脂の水分散体中の水系ウレタン樹脂の割合及び水系ウレタン樹脂の粒径などを変化させることにより、水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度を調整することができる。
【0134】
水系樹脂を含む塗布液の塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
【0135】
易接着層を設ける前に、基材層の表面に改質処理を施し、基材層と易接着層との密着性をより向上させることが好ましい。基材層に対する表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
【0136】
さらに、易接着層の表面には、親水化表面処理を施すことが好ましい。易接着層の表面は、通常は、長尺フィルムを他の任意の部材と貼り合わせる際の貼り合せ面となる。したがって、この面の親水性を更に向上させることにより、長尺フィルムと任意の部材との接着性を顕著に向上させることができる。親水化表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。
【0137】
上述した易接着層等の機能層の厚みは、基材層の厚みの、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.015%以上、特に好ましくは0.02%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。機能層の厚みが前記範囲の下限値以上であることにより、当該機能層の機能を十分に発揮でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、フィルム面内に樹脂組成物を均一に塗布することを、容易に行うことができる。
【0138】
[長尺フィルムの用途]
長尺フィルムは、広範な長途に用いることができ、中でも、光学フィルムとして用いることが好ましい。光学フィルムとしては、例えば、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、などが挙げられる。中でも、上述した長尺フィルムは、偏光板保護フィルムとして用いることが好ましい。
【0139】
偏光板は、通常、偏光子と偏光板保護フィルムとを備える。したがって、上述した長尺フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合には、通常、偏光子に長尺フィルムを貼り合わせて用いられる。
【0140】
長尺フィルムと偏光子とを貼り合わせる際、接着剤を介することなく直接に長尺フィルムと偏光子とを貼り合せてもよく、接着剤を介して貼り合せてもよい。さらに、偏光子の一方の面だけに長尺フィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。偏光子の一方の面だけに長尺フィルムを貼り合わせる場合、偏光子の他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。
【0141】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造したフィルムを用いうる。また、偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造したフィルムを用いうる。さらに、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
【0142】
長尺フィルムと偏光子とを接着するための接着剤としては、光学的に透明なものを用いうる。接着剤の例としては、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0143】
光硬化型接着剤としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびアクリルアミド誘導体を含むアクリレート系接着剤;並びに、エポキシ化合物を含む接着剤(以下、適宜「エポキシ系接着剤」と記載することがある。)を用いることができる。
【0144】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートと多価アルコール類とを反応させた後、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得られるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーを用いうる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有(メタ)アクリル化合物と多価アルコール類とを反応させた後、更にポリイソシアネートを反応させることによって得られるものを用いてもよい。これらの中でも、一分子当たり2個〜3個の二重結合を有していて、二重結合1個当たりの数平均分子量が500〜3000であるウレタン(メタ)アクリレートが、接着強度、柔軟性、光硬化性及び粘度をバランスさせやすいので、好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤におけるウレタン(メタ)アクリレートの量は、好ましくは30重量%〜50重量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの量が、30重量%以上であることにより、接着剤の脆化を抑制でき、また、50重量%以下であることにより、過度の粘度上昇を抑制したり、接着強度を高くしたりできる。
【0145】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、特にヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量は、好ましくは13重量%〜40重量%である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量が、13重量%以上であることにより、接着剤全体の親水性を高くできるので、特にポリビニルアルコール系の偏光子に対する接着強度を高くでき、また、40重量%以下であることにより、接着剤の脆化を抑制したり、光硬化性を良好にしたりできる。
【0146】
アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられるが、特にN,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。また、アクリルアミド誘導体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤におけるアクリルアミド誘導体の量は、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは1重量%〜30重量%である。
【0147】
アクリレート系接着剤は、上述した成分に加えて、イソボルニル(メタ)アクリレートを30重量%〜40重量%することが好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートにより、接着剤に耐熱性が付与される他、接着性能を低下させずに塗工性能を改良するための粘度調整が可能である。
【0148】
さらに、前記のアクリレート系接着剤は、2重量%〜10重量%の光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0149】
エポキシ系接着剤は、エポキシ化合物を含有する。前記エポキシ化合物としては、耐候性、屈折率及びカチオン重合性の観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とすることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物としては、例えば、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
【0150】
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルは、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものでありうる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、及びビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂のような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0151】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルでありうる。脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0152】
エポキシ系接着剤において、エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0153】
また、エポキシ系接着剤は、上記エポキシ化合物に加え、オキセタン化合物を含有してもよい。オキセタン化合物を用いることにより、エポキシ系接着剤の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。
【0154】
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物である。オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、いずれも東亞合成社から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT−101”、“アロンオキセタン OXT−121”、“アロンオキセタン OXT−211”、“アロンオキセタン OXT−221”、“アロンオキセタン OXT−212”などを挙げることができる。オキセタン化合物の量は特に限定されないが、接着剤中の活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準に、通常50重量%以下、好ましくは10重量%〜40重量%である。
【0155】
接着剤が、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等のカチオン重合性化合物を含む場合、その接着剤には、通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での接着剤層の形成が可能となる。そのため、偏光子の耐熱性及び膨張による歪を考慮する必要性が減少し、密着性良く偏光子と長尺フィルムとを貼合できる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、接着剤が前記光カチオン重合開始剤を含んでいても、その接着剤は保存安定性及び作業性に優れる。
【0156】
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射により、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させうる。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよく、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
【0157】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなどがあげられる。
【0158】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなどがあげられる。
【0159】
これらの光カチオン重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、日本化薬社製の、カヤラッド PCI−220、カヤラッド PCI−620;ユニオンカーバイド社製の、UVI−6990;ダイセル・サイテック社製の、UVACURE 1590;ADEKA社製の、アデカオプトマー SP−150、アデカオプトマー SP−170;日本曹達社製の、CI−5102、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S;みどり化学社製の、DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102及びDTS−103;ローディア社製のPI−2074;などを挙げることができる。
【0160】
上述した接着剤の粘度は、23℃で、好ましくは20mPa〜5000mPa、より好ましくは30mPa〜3000mPa、特に好ましくは50mPa〜1500mPaである。
【0161】
接着剤を用いて偏光子と長尺フィルムとを貼り合わせる場合には、偏光子と長尺フィルムとを接着剤を介して貼り合わせた後で、必要に応じて、接着剤を硬化させてもよい。接着剤を硬化させる方法は、接着剤の種類に応じて、適切な方法を採用しうる。例えば、光硬化型接着剤を用いる場合には、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって、接着剤を硬化させうる。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線照射強度は、好ましくは200mJ/cm
2以上、より好ましくは300mJ/cm
2以上であり、好ましくは7000mJ/cm
2以下、より好ましくは6000mJ/cm
2以下である。紫外線照射強度が、前記範囲の下限値以上であることにより、接着剤の硬化を十分に進行させられるので、偏光子と長尺フィルムとが剥がれることを抑制できる。また、紫外線照射強度が、前記範囲の上限値以下であることにより、紫外線の照射熱による長尺フィルムの溶融を抑制できる。
【0162】
接着剤を用いた場合、偏光子と長尺フィルムとの間には、接着剤層が設けられる。この接着剤層の平均厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【実施例】
【0163】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」、「ppm」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0164】
[評価方法]
〔凹凸部の高さの測定方法〕
長尺フィルムのナール部の各角部及び各直線部における凹凸部の高さを、三次元表面プロファイラー(ザイゴ社製「NewView5000」)を用いて測定した。測定された高さの値から、角部及び直線部それぞれの平均高さを求めた。
【0165】
〔角部の曲率半径の測定方法〕
長尺フィルムのナール部の各角部の曲率半径は、三次元表面プロファイラー(ザイゴ社製「NewView5000」)を用いて測定した。
【0166】
〔フィルムの蛇行量の評価方法〕
ナール部を形成された長尺フィルムを、当該長尺フィルムの長手方向に搬送しながら、長尺フィルムの搬送位置を測定した。搬送開始時点での搬送位置を基準として、搬送完了までの間に生じた搬送位置のフィルム幅方向へのズレ量を、長尺フィルムの蛇行量として求めた。そして、得られた蛇行量が5mm以下の場合を「良」、5mmより大きい場合を「不良」と判定した。
【0167】
〔フィルムの巻きずれ量の評価方法〕
ナール部を形成された長尺フィルムを、当該長尺フィルムの長手方向に搬送し、巻き芯に巻き取って、フィルムロールを得た。フィルムロールの径方向において最も内側の部分での長尺フィルムの位置(巻取り開始位置)と、フィルムロールの径方向において最も外側の部分での長尺フィルの位置(巻取り終了位置)との、フィルム幅方向(即ち、ロールの軸方向)における差を、巻きずれ量として求めた。そして、得られた巻きずれ量が5mm以下の場合を「良」、5mmより大きい場合を「不良」と判定した。
【0168】
[実施例1]
〔基材層の製造〕
環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて、70℃で2時間、乾燥した。乾燥させたペレットを、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機に供給し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅1700mmの成形条件で押出成形を行って、長尺の基材層(厚さ50μm、幅1500mm、長さ2000m)を製造した。
【0169】
〔処理前フィルムの製造(易接着層の形成)〕
温度計、攪拌機、窒素導入管及び冷却管を備えた2000mlの四つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製「マキシモールFSK−2000」、水酸基価56mgKOH/g)840gと、多価イソシアネート成分であるトリレンジイソシアネート119gと、溶媒であるメチルエチルケトン200gとを入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。
【0170】
反応終了後、60℃まで冷却し、酸構造を導入するためにジメチロールプロピオン酸35.6gを加え、75℃で反応させて、酸構造を含有するポリウレタン溶液を得た。この溶液に含まれるポリウレタンのイソシアネート基(−NCO基)の含有量は、0.5%であった。
【0171】
次いで、このポリウレタン溶液を40℃にまで冷却し、水1500gと、中和剤である水酸化ナトリウム10.6gとを加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去した後、シリカビーズ(日本アエロジル社製「アエロジル130」;平均粒子径16nm)99.5gを加え攪拌し、さらに固形分濃度が10%になるように水を加えて中和処理した。これにより、中和された水系ウレタン樹脂の水分散体を得た。
【0172】
前記の基材層の片面に、上記水系ウレタン樹脂の水分散体を、リバースロール法で、乾燥後の厚みが100nmになるように塗布し、90℃にて乾燥させた。これにより、基材層の片面に易接着層を形成して、基材層及び易接着層を備える複層構造の処理前フィルムを得た。
【0173】
〔ナール部の形成〕
前記の処理前フィルムを長尺方向に30m/分の速度で搬送した。そして、搬送される処理前フィルムの幅方向の左右両端部の、易接着層側の面に、レーザー光を照射した。レーザー光の照射装置としては、CO
2レーザー光照射装置(パナソニックサンクス社製「LP−430U」、レーザー波長10.6μm)を用いた。また、レーザー光の照射出力は、出力90%とした。
【0174】
図7は、本発明の実施例1で形成されたナール部1の平面形状を示す模式的な平面図である。
図7においては、ナール部1の寸法を示すため、長尺フィルムの長手方向及び幅方向の座標を示す。この座標の数値の単位は、ミリメートルである。
前記のレーザー光の照射は、
図7に示すナール部1の平面形状を描くように、移動速度2000mm/sでレーザー光照射点を移動させながら、行った。
図7に示すナール部1の平面形状において、一点鎖線で囲んで示す角部Aは、いずれも、角度90°であった。また、ナール部1の平面形状において、角部A以外の非直線部(
図7において破線で囲んで示す非直線部)Xの角度は、135°であった。前記のレーザー光の照射により、処理前フィルムの易接着層側の面には、フィルム長尺方向に4.2mmピッチで並んで、線状の凹凸部によって形作られた
図7に示す平面形状を有する複数のナール部1が形成された。これにより、表面にナール部1を有する長尺フィルムを得た。形成されたナール部1において、角部Aの曲率半径を測定したところ、0.2mmであった。また、角部及び直線部における凹凸部の平均高さを、前述の方法で測定した。
【0175】
得られた長尺フィルムを、更に長手方向に搬送し、直径6インチの巻き芯(コア)を中心にして、巻き取り張力120Nにて長尺方向に1000m巻き取り、フィルムロールを得た。巻き取りの際、長尺フィルムの蛇行量及び巻きずれ量を測定し、上述した方法で評価した。
【0176】
[実施例2]
図8は、本発明の実施例2で形成されたナール部2の平面形状を示す模式的な平面図である。
図8においては、ナール部2の寸法を示すため、長尺フィルムの長手方向及び幅方向の座標を示す。この座標の数値の単位は、ミリメートルである。
実施例2においては、形成するナール部2の平面形状を
図8に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、長尺フィルムの製造及び評価を行った。
図8に示すナール部2の平面形状において、一点鎖線で囲んで示す角部Aは、いずれも、角度120°であった。また、ナール部2の平面形状において、二点鎖線で示す角部Bは、いずれも、角度60°であった。さらに、ナール部2の平面形状において、角部A及び角部B以外の非直線部(
図8において破線で囲んで示す非直線部)Xの角度は、150°であった。形成されたナール部2において、角部A及び角部Bの曲率半径を測定したところ、0.1mm及び0.2mmであった。
【0177】
[実施例3]
図9は、本発明の実施例3で形成されたナール部3の平面形状を示す模式的な平面図である。
図9においては、ナール部3の寸法を示すため、長尺フィルムの長手方向及び幅方向の座標を示す。この座標の数値の単位は、ミリメートルである。
実施例3においては、形成するナール部3の平面形状を
図9に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、長尺フィルムの製造及び評価を行った。
図9に示すナール部3の平面形状において、一点鎖線で囲んで示す角部Aは、いずれも、角度90°であった。また、ナール部3の平面形状において、二点鎖線で示す角部Bは、角度96°であった。形成されたナール部3において、角部A及び角部Bの曲率半径を測定したところ、0.2mm及び0.2mmであった。
【0178】
[比較例1]
図10は、比較例1で形成されたナール部4の平面形状を示す模式的な平面図である。
図10においては、ナール部4の寸法を示すため、長尺フィルムの長手方向及び幅方向の座標を示す。この座標の数値の単位は、ミリメートルである。
比較例1においては、形成するナール部4の平面形状を
図10に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、長尺フィルムの製造及び評価を行った。ただし、比較例1では、実施例1〜3との対比の条件を整えるために、
図10に示すように、ナール部4を、長尺フィルムの幅方向に4個ずつ並べて形成した。
図10に示すナール部4の平面形状において、一点鎖線で囲んで示す角部Aは、いずれも、角度90°であった。形成されたナール部4において、角部Aの曲率半径を測定したところ、0.2mmであった。
【0179】
[比較例2]
処理前フィルムにレーザー光を照射する際、レーザー光照射点の移動速度を3000mm/sに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、長尺フィルムの製造及び評価を行った。形成されたナール部において角部Aの曲率半径を測定したところ、0.4mmであった。
【0180】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。表1において、略称の意味は、下記のとおりである。
スキャンスピード:レーザー光照射点の移動速度。
【0181】
【表1】
【0182】
[検討]
表1から分かるように、実施例1〜3においては、蛇行評価及び巻きずれ評価の両方において、良好な結果が得られている。したがって、本発明により、搬送性及び巻回性に優れる長尺フィルムを実現できることが確認された。