特表-17150166IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧
<>
  • 再表WO2017150166-複層フィルム及び製造方法 図000004
  • 再表WO2017150166-複層フィルム及び製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月8日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】複層フィルム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20181130BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20181130BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20181130BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20181130BHJP
   C08C 19/02 20060101ALI20181130BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20181130BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B32B27/32
   B29C47/06
   C08F297/04
   C08C19/02
   C08C19/25
   B29L9:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
【出願番号】特願2018-503011(P2018-503011)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37290(P2016-37290)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AH06A
4F100AH06B
4F100AK02B
4F100AK03A
4F100AK11A
4F100AK12A
4F100AK73A
4F100AL02A
4F100BA02
4F100EH20
4F100EJ14
4F100GB41
4F100JK00
4F100JL02
4F100JN00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F207AA03A
4F207AA13A
4F207AA13F
4F207AC01A
4F207AG01
4F207AG03
4F207AH73
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KM15
4J026HA06
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HA49
4J026HB16
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB43
4J026HB45
4J026HB48
4J026HC06
4J026HC32
4J026HC39
4J026HC45
4J026HC48
4J026HC49
4J026HE02
4J100BA77H
4J100CA03
4J100CA25
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100HA04
4J100HA61
4J100HB02
4J100HB33
4J100HB61
4J100HD22
4J100HE14
4J100HE32
4J100HE35
4J100HE41
4J100HF01
4J100HG02
(57)【要約】
樹脂[I]からなる第一樹脂層と、前記第一樹脂層の少なくとも片面に設けられた、樹脂[II]からなる第二樹脂層とを備え、前記樹脂[I]は、ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物[3]及びエステル化合物[4]を含み、前記アルコキシシリル変性物[3]は、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した水素化物[2]のアルコキシシリル基変性物であり、前記樹脂[I]における前記エステル化合物[4]の割合が0.1重量%〜10重量%である、複層フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂[I]からなる第一樹脂層と、前記第一樹脂層の少なくとも片面に設けられた、樹脂[II]からなる第二樹脂層とを備え、
前記樹脂[I]は、ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物[3]及びエステル化合物[4]を含み、
前記アルコキシシリル変性物[3]は、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した水素化物[2]のアルコキシシリル基変性物であり、
前記ブロック共重合体[1]は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体[1]1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有し、
前記ブロック共重合体[1]の全体に占める前記重合体ブロック[A]の重量分率wAと、前記ブロック共重合体[1]の全体に占める前記重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA/wB)が、20/80〜60/40であり、
前記樹脂[I]における前記エステル化合物[4]の割合が0.1重量%〜10重量%である、複層フィルム。
【請求項2】
前記樹脂[II]が、環状オレフィン重合体、前記水素化物[2]、前記アルコキシシリル変性物[3]、及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体を含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂[II]は前記エステル化合物[4]を含まないか、又は前記樹脂[II]における前記エステル化合物[4]の含有割合が0.1重量%未満である、
請求項1又は2に記載の複層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法であって、
溶融された前記樹脂[I]及び前記樹脂[II]を共押出しする、共押出成形工程を含む、製造方法。
【請求項5】
前記共押出成形工程を、スクリュー押出機及びダイを含む溶融押出成形機を用い、
前記共押出成形工程は、前記樹脂[I]を、スクリュー押出機から前記ダイに圧送することを含む、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素化した水素化物にアルコキシシリル基を導入した、アルコキシシリル基変性物(この重合体を、以下において単に「アルコキシシリル基変性物」ということがある。)が知られている(特許文献1及び2)。このようなアルコキシシリル基変性物を含む樹脂は、透明性、耐熱性、耐候性、並びにガラス及び金属等の無機材料との接着性等に優れる。したがって、かかる樹脂は、光学的用途等の様々な用途に用いうる。例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、有機エレクトロルミネッセンス発光装置等の、有機発光層を備える光学装置において、かかる有機発光層を含む発光素子を封止するための材料として、このような樹脂を用いて形成したフィルムを用いうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/043708号(対応他国公報:欧州特許出願公開第2623526号明細書)
【特許文献2】特開2015−104859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルコキシシリル基変性物を含む樹脂のフィルムを製造する方法の例としては、押出成形工程を含む方法が挙げられる。具体的には、スクリュー押出機及びダイを含む溶融押出成形機を用い、樹脂を、スクリュー押出機から前記ダイに圧送し、それによりダイからフィルムの形状の樹脂を押し出すことにより、効率的にフィルムを製造しうる。
【0005】
しかしながら、そのような押出成形工程を行う場合、樹脂に異物が不所望に混入し、得られたフィルムの光学的性能が低下する場合がある。かかる異物の混入を低減する方法としては、製造工程において異物の発生を低減させるか、異物を除去する操作を行うことが考えられるが、その場合製造装置が高価になったり、製造工程が煩雑になったり、製造効率が低減したりする不利益が発生しうる。したがって、製造の容易さ、光学的性能、機械的な性質を損なわずに、かかる異物を低減して製造しうるフィルムが求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、製造の容易さ、光学的性能、及び機械的な性質がいずれも優れるフィルム、及びそのようなフィルムを容易に製造することができるフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決するために検討した結果、アルコキシシリル基変性物を押出成形する際には、スクリュー押出機における、押出機内部で発生する異物の発生が特に問題となり得ることを見出した。本発明者はさらに、そのようなスクリュー押出機における異物の発生は、樹脂に特定の化合物を可塑剤として添加することにより低減しうることを見出した。本発明者はさらに、フィルムを特定の複層フィルムとすることにより、製造工程におけるそのような化合物のブリードアウト等の不所望な現象も低減されうることを見出した。本発明は、これらの知見を元に完成されたものである。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0008】
〔1〕 樹脂[I]からなる第一樹脂層と、前記第一樹脂層の少なくとも片面に設けられた、樹脂[II]からなる第二樹脂層とを備え、
前記樹脂[I]は、ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物[3]及びエステル化合物[4]を含み、
前記アルコキシシリル変性物[3]は、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した水素化物[2]のアルコキシシリル基変性物であり、
前記ブロック共重合体[1]は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体[1]1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有し、
前記ブロック共重合体[1]の全体に占める前記重合体ブロック[A]の重量分率wAと、前記ブロック共重合体[1]の全体に占める前記重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA/wB)が、20/80〜60/40であり、
前記樹脂[I]における前記エステル化合物[4]の割合が0.1重量%〜10重量%である、複層フィルム。
〔2〕 前記樹脂[II]が、環状オレフィン重合体、前記水素化物[2]、前記アルコキシシリル変性物[3]、及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体を含む、〔1〕に記載の複層フィルム。
〔3〕 前記樹脂[II]は前記エステル化合物[4]を含まないか、又は前記樹脂[II]における前記エステル化合物[4]の含有割合が0.1重量%未満である、
〔1〕又は〔2〕に記載の複層フィルム。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の複層フィルムの製造方法であって、
溶融された前記樹脂[I]及び前記樹脂[II]を共押出しする、共押出成形工程を含む、製造方法。
〔5〕 前記共押出成形工程を、スクリュー押出機及びダイを含む溶融押出成形機を用い、
前記共押出成形工程は、前記樹脂[I]を、スクリュー押出機から前記ダイに圧送することを含む、〔4〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複層フィルムは、製造の容易さ、光学的性能、及び機械的な性質がいずれも優れるフィルムとすることができる。また、本発明の複層フィルムの製造方法によれば、そのような本発明の複層フィルムを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の複層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の複層フィルムの製造方法を実施するための溶融押出成形機、及びそれを用いた本発明の製造方法の一例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0012】
〔1.複層フィルムの概要〕
本発明の複層フィルムは、特定の樹脂[I]からなる第一樹脂層と、第一樹脂層の少なくとも片面に設けられた、樹脂[II]からなる第二樹脂層とを備える。
図1は、本発明の複層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。図1において、複層フィルム100は、第一樹脂層110と、第一樹脂層110の一方の面110Uに設けられた第二樹脂層120とを備える。この例では、第一樹脂層110の他方の面110Dは、複層フィルム100の外表面に露出した状態となっている。
【0013】
〔2.第一樹脂層〕
第一樹脂層は、樹脂[I]からなる層である。樹脂[I]は、特定のアルコキシシリル変性物[3]及びエステル化合物[4]を含む。アルコキシシリル変性物[3]は、特定のブロック共重合体[1]の不飽和結合を水素化した水素化物[2]のアルコキシシリル基変性物である。
【0014】
〔2.1.ブロック共重合体[1]〕
ブロック共重合体[I]は、ブロック共重合体[1]1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有するブロック共重合体である。
【0015】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする重合体ブロックである。ここで、芳香族ビニル化合物単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0016】
重合体ブロック[A]が有する芳香族ビニル化合物単位に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、吸湿性の面から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的入手のし易さから、スチレンが特に好ましい。
【0017】
重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、第一樹脂層の耐熱性を高めることができる。
【0018】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[A]は、任意の構造単位を、1種類で単独でも含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0019】
重合体ブロック[A]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物単位が挙げられる。ここで、鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例として挙げるものと同様の例が挙げられる。
【0020】
また、重合体ブロック[A]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物以外の任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。任意の不飽和化合物としては、例えば、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物等のビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物;等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の1分子当たり炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の1分子当たり炭素数5〜20の環状オレフィン;等の、極性基を有しないビニル化合物が好ましく、1分子当たり炭素数2〜20の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0021】
重合体ブロック[A]における任意の構造単位の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0022】
ブロック共重合体[1]1分子における重合体ブロック[A]の数は、好ましくは2個以上であり、好ましくは5個以下、より好ましくは4個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子中に複数個ある重合体ブロック[A]は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
1分子のブロック共重合体[1]に、異なる重合体ブロック[A]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A2)とする。このとき、Mw(A1)とMw(A2)との比「Mw(A1)/Mw(A2)」は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。Mw(A1)/Mw(A2)の下限は、1.0以上としうる。
【0024】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする重合体ブロックである。前述のように、鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0025】
この重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で、極性基を含有しない鎖状共役ジエン化合物が好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0026】
重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、第一樹脂層の柔軟性を向上させることができる。
【0027】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[B]は、任意の構造単位を、1種類で単独でも含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0028】
重合体ブロック[B]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物以外の任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位としては、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものと同様の例が挙げられる。
【0029】
重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率を低くすることにより、第一樹脂層の柔軟性を向上させることができる。
【0030】
ブロック共重合体[1]1分子における重合体ブロック[B]の数は、通常1個以上であるが、2個以上であってもよい。ブロック共重合体[1]における重合体ブロック[B]の数が2個以上である場合、重合体ブロック[B]は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0031】
1分子のブロック共重合体[1]に、異なる重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[B]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B2)とする。このとき、Mw(B1)とMw(B2)との比「Mw(B1)/Mw(B2)」は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。Mw(B1)/Mw(B2)の下限は、1.0以上としうる。
【0032】
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。ブロック共重合体[1]が鎖状型ブロックの形態を有する場合、ブロック共重合体[1]の分子鎖の両端が重合体ブロック[A]であることが、樹脂[I]のベタツキを所望の低い値に抑えることができるので、好ましい。
【0033】
ブロック共重合体[1]の特に好ましいブロックの形態は、[A]−[B]−[A]で表されるように、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;[A]−[B]−[A]−[B]−[A]で表されるように、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体;である。特に、[A]−[B]−[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ物性を所望の範囲に容易に収めることができるため、特に好ましい。
【0034】
ブロック共重合体[1]において、ブロック共重合体[1]の全体に占める重合体ブロック[A]の重量分率wAと、ブロック共重合体[1]の全体に占める重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA/wB)は、特定の範囲に収まる。具体的には、前記の比(wA/wB)は、通常20/80以上、好ましくは25/75以上、より好ましくは30/70以上、特に好ましくは40/60以上であり、通常60/40以下、好ましくは55/45以下である。前記の比wA/wBを前記範囲の下限値以上にすることにより、第一樹脂層の耐熱性を向上させたり複屈折を小さくしたりすることができる。また、上限値以下にすることにより、第一樹脂層の柔軟性を向上させることができる。ここで、重合体ブロック[A]の重量分率wAは、重合体ブロック[A]全体の重量分率を示し、重合体ブロック[B]の重量分率wBは、重合体ブロック[B]全体の重量分率を示す。
【0035】
前記のブロック共重合体[1]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。
また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
前記ブロック共重合体[1]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
【0036】
ブロック共重合体[1]の製造方法としては、例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;が挙げられる。
【0037】
モノマー混合物(a)中の芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、モノマー混合物(a)は、芳香族ビニル化合物以外の任意のモノマー成分を含有していてもよい。任意のモノマー成分としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物、任意の不飽和化合物が挙げられる。任意のモノマー成分の量は、モノマー混合物(a)に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0038】
モノマー混合物(b)中の鎖状共役ジエン化合物の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。また、モノマー混合物(b)は、鎖状共役ジエン化合物以外の任意のモノマー成分を含有していてもよい。任意のモノマー成分としては、芳香族ビニル化合物、任意の不飽和化合物が挙げられる。任意のモノマー成分の量は、モノマー混合物(b)に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0039】
モノマー組成物を重合してそれぞれの重合体ブロックを得る方法としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などを用いうる。重合操作及び後工程での水素化反応を容易にする観点では、ラジカル重合、アニオン重合及びカチオン重合などを、リビング重合により行う方法が好ましく、リビングアニオン重合により行う方法が特に好ましい。
【0040】
重合は、重合開始剤の存在下で行いうる。例えばリビングアニオン重合では、重合開始剤として、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物;などを用いうる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0041】
重合温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。
【0042】
重合反応の形態は、例えば溶液重合及びスラリー重合などを用いうる。中でも、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。
溶液重合を行う場合、溶媒としては、各工程で得られる重合体が溶解しうる不活性溶媒を用いうる。不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒として脂環式炭化水素溶媒を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体[1]の溶解性も良好であるため、好ましい。溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、好ましくは200重量部〜2000重量部である。
【0043】
それぞれのモノマー組成物が2種以上のモノマーを含む場合、ある1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザーを使用しうる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、例えばルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用することが好ましい。ルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
〔2.2.水素化物[2]〕
水素化物[2]は、ブロック共重合体[1]の不飽和結合の特定量以上の量を水素化して得られる重合体である。ここで、水素化されるブロック共重合体[1]の不飽和結合には、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の、芳香族性及び非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合をいずれも含む。
【0045】
本発明において、水素化物[2]の水素化率は、特定以上の高い値である。ここで水素化物[2]の水素化率は、別に断らない限り、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合のうちの、水素化された結合の割合である。素化物[2]の水素化率は、90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、第一樹脂層の透明性、耐熱性及び耐候性を良好にでき、更には第一樹脂層の複屈折を小さくし易い。ここで、水素化物[2]の水素化率は、H−NMRによる測定により求めうる。水素化物[2]の水素化率の上限は、100%以下としうる。
【0046】
特に、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、第一樹脂層の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。
【0047】
また、芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、第一樹脂層の耐熱性を効果的に高めることができる。さらに、第一樹脂層の光弾性係数を下げることができる。
【0048】
水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)を前記の範囲に収めることにより、第一樹脂層の機械強度及び耐熱性を向上させることができ、更には第一樹脂層の複屈折を小さくし易い。
水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)を前記の範囲に収めることにより、第一樹脂層の機械強度及び耐熱性を向上させることができ、更には第一樹脂層の複屈折を小さくし易い。
水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
【0049】
前述した水素化物[2]は、ブロック共重合体[1]を水素化することにより、製造しうる。水素化方法としては、水素化率を高くでき、ブロック共重合体[1]の鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号に記載された方法が挙げられる。
【0050】
具体的な水素化方法の例としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む水素化触媒を用いて水素化を行う方法が挙げられる。水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。また、水素化反応は、有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0051】
不均一系触媒は、例えば、金属又は金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持して用いてもよい。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化ケイ素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒及び担体の合計量に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。また、担持型触媒の比表面積は、好ましくは100m/g〜500m/gである。さらに、担持型触媒の平均細孔径は、好ましくは100Å以上、より好ましくは200Å以上であり、好ましくは1000Å以下、より好ましくは500Å以下である。ここで、比表面積は、窒素吸着量を測定しBET式を用いて求めうる。また、平均細孔径は、水銀圧入法により測定しうる。
【0052】
均一系触媒としては、例えば、ニッケル、コバルト又は鉄の化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等を含む有機金属錯体触媒;などを用いることができる。
【0053】
ニッケル、コバルト又は鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が用いられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム;等が挙げられる。
【0054】
有機金属錯体触媒としては、例えば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。
【0055】
水素化触媒の使用量は、ブロック共重合体[1]100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0056】
水素化反応の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下である。このような温度範囲で水素化反応を行なうことにより、水素化率を高くでき、また、ブロック共重合体[1]の分子切断を少なくできる。
【0057】
水素化反応時の水素圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上、特に好ましくは2MPa以上であり、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。このような水素圧力で水素化反応を行なうことにより、水素化率を高くでき、ブロック共重合体[1]の分子鎖切断を少なくでき、操作性が良好となる。
【0058】
上述した方法で得られる水素化物[2]は、通常、水素化物[2]、水素化触媒及び重合触媒を含む反応液として得られる。そこで、水素化物[2]は、この反応液から例えば濾過及び遠心分離等の方法によって、水素化触媒及び重合触媒を除去した後に、反応液から回収してもよい。反応液から水素化物[2]を回収する方法としては、例えば、水素化物[2]を含む反応液からスチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法;減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法;水素化物[2]の貧溶媒中に反応液を注いで析出又は凝固させる凝固法;などの方法が挙げられる。
【0059】
回収された水素化物[2]の形態は、その後のシリル化変性反応(アルコキシシリル基を導入する反応)に供し易いように、ペレット形状とすることが好ましい。例えば、溶融状態の水素化物[2]をダイスからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして、各種の成形に供してもよい。また、凝固法を用いる場合は、例えば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にして各種の成形に供してもよい。
【0060】
〔2.3.アルコキシシリル基変性物[3]〕
アルコキシシリル基変性物[3]は、上述したブロック共重合体[1]の水素化物[2]に、アルコキシシリル基を導入して得られる重合体である。この際、アルコキシシリル基は、上述した水素化物[2]に直接結合していてもよく、例えばアルキレン基などの2価の有機基を介して間接的に結合していてもよい。アルコキシシリル基変性物[3]は、ガラス、金属等の無機材料との接着性に特に優れる。そのため、第一樹脂層は、通常、前記の無機材料との接着性に優れる。したがって、第一樹脂層は、高温高湿環境に長時間暴露された後も、無機材料に対する高い接着力を維持することができる。
【0061】
アルコキシシリル基変性物[3]におけるアルコキシシリル基の導入量は、アルコキシシリル基の導入前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。アルコキシシリル基の導入量を前記範囲に収めると、水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が過剰に高くなることを防止できるので、第一樹脂層の無機材料に対する接着性を高く維持することができる。
アルコキシシリル基の導入量は、H−NMRスペクトルにて計測しうる。また、アルコキシシリル基の導入量の計測の際、導入量が少ない場合は、積算回数を増やして計測しうる。
【0062】
アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、通常は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)から大きく変化しない。ただし、アルコキシシリル基を導入する際には過酸化物の存在下で水素化物[2]を変性反応させるので、その水素化物[2]の架橋反応及び切断反応が進行し、分子量分布は大きく変化する傾向がある。アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、アルコキシシリル基変性物[3]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上である。アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲であると、第一樹脂層の良好な機械強度及び引張り伸びが維持できる。
アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
【0063】
アルコキシシリル基変性物[3]は、前述したブロック共重合体[1]の水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入することにより、製造し得る。水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入する方法としては、例えば、水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0064】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、水素化物[2]とグラフト重合でき、水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入できるものを用いうる。このようなエチレン性不飽和シラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリル基を有するアルコキシシラン;p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等のp−スチリル基を有するアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の3−メタクリロキシプロピル基を有するアルコキシシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の3−アクリロキシプロピル基を有するアルコキシシラン;2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシラン等の2−ノルボルネン−5−イル基を有するアルコキシシラン;などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好ましい。また、エチレン性不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0065】
エチレン性不飽和シラン化合物の量は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。
【0066】
過酸化物としては、ラジカル反応開始剤として機能するものを用いうる。このような過酸化物としては、通常、有機過酸化物を用いる。有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、1分間半減期温度が170℃〜190℃のものが好ましく、具体的には、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド等が好ましい。また、過酸化物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
過酸化物の量は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。
【0068】
ブロック共重合体[1]の水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、例えば、加熱混練機及び反応器を用いて行いうる。具体例を挙げると、水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物と過酸化物との混合物を、二軸混練機にて、水素化物[2]の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより、アルコキシシリル基変性物[3]を得ることができる。混練時の具体的な温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下、特に好ましくは220℃以下である。また、混練時間は、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.2分以上、特に好ましくは0.3分以上であり、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、特に好ましくは5分以下である。二軸混練機、単軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練及び押出しを行いうる。
【0069】
樹脂[I]におけるアルコキシシリル基変性物[3]の量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは97重量%以上である。樹脂[I]におけるアルコキシシリル基変性物[3]の量を前記の範囲に収めることにより、本発明の所望の効果を安定して発揮することができる。樹脂[I]におけるアルコキシシリル基変性物[3]の量の上限は、99.9重量%以下としうる。
【0070】
〔2.4.エステル化合物〕
樹脂[I]は、アルコキシシリル変性物[3]に加えて、エステル化合物[4]を含む。樹脂[I]がエステル化合物[4]を含むことにより、少ない異物数、高い剥離強度等の所望の特性を、第一樹脂層に付与することができる。
【0071】
エステル化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、アジピン酸エステル化合物などが挙げられる。また、エステル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、少ない異物数、高い剥離強度等の所望の特性を良好に発現させる観点から、カルボン酸エステル化合物が好ましい。
【0072】
リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0073】
カルボン酸エステル化合物としては、例えば、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0074】
芳香族カルボン酸エステルは、芳香族カルボン酸とアルコールとのエステルである。
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などを用いうる。芳香族カルボン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アルコールとしては、例えば、直鎖又は分岐のアルキルアルコールを用いうる。また、アルコールとしては、水酸基を1分子当たり1個有する1価のアルコールを用いてもよく、水酸基を1分子当たり2個以上有する多価アルコールを用いてもよい。1価のアルコールの具体例としては、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプタノール、n−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、イソデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。また、多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。アルコールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0075】
脂肪族カルボン酸エステルは、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルである。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アルコールとしては、例えば、芳香族カルボン酸エステルに用いうるアルコールとして例示した物と同様の例が挙げられる。また、アルコールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0076】
さらに、エステル化合物1分子当たりのエステル結合の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。そのため、エステル化合物としては、例えば、ポリエステル化合物を用いてもよい。ポリエステル化合物は、必要に応じて1価の酸又は1価のアルコールをストッパーに使用して、2価以上の酸と多価アルコールとを反応させることにより製造しうる。
【0077】
上述したエステル化合物の中でも、分子中に芳香環を含むものが好ましく、この芳香環にエステル結合が結合しているものが特に好ましい。これにより、少ない異物数、高い剥離強度等の所望の特性を良好に発現させることができる。したがって、上述したエステル化合物の中でも、安息香酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく、特に安息香酸エステルが好ましい。安息香酸エステルの中でも、特に、ジエチレングリコールジベンゾエート、及びペンタエリスリトールテトラベンゾエートが特に好ましい。
【0078】
エステル化合物は、樹脂[I]において可塑剤として機能しうる。エステル化合物が可塑剤として機能することにより、スクリュー押出機含む溶融押出成形機を用いた効率的な製造においても、異物の少ない製造を行うことができ、その結果、高品質で且つ容易に製造しうる複層フィルムとすることができる。
【0079】
エステル化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、特に好ましくは500以上であり、好ましくは2200以下、より好ましくは1800以下、特に好ましくは1400以下である。エステル化合物の分子量を前記範囲の下限値以上にすることにより、ブリードアウトを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、エステル化合物を可塑剤として機能し易くさせることができる。
【0080】
また、エステル化合物の融点は、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。エステル化合物の融点を前記範囲の下限値以上にすることにより、ブリードアウトを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、エステル化合物を可塑剤として機能し易くさせることができる。
【0081】
樹脂[I]におけるエステル化合物の割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。エステル化合物の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、少ない異物数、高い剥離強度等の所望の特性を良好に発現させることができる。また、上限値以下にすることにより、第一樹脂層のヘイズを低くできるので、複層フィルムの透明性を良好にできる。
【0082】
〔2.5.任意の成分〕
樹脂[I]は、アルコキシシリル基変性物[3]及びエステル化合物[4]に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
任意の成分の例としては、エステル化合物[4]以外の追加の可塑剤が挙げられる。エステル化合物[4]に加えて、追加の可塑剤を併せて用いることにより、樹脂[I]のガラス転移温度及び弾性率を調整できるので、樹脂[I]の耐熱性及び機械的強度を調整することが可能である。追加の可塑剤としては、アルコキシシリル基変性物[3]と混合し易く、当該可塑剤との混合によって第一樹脂層の透明性を損なわないものが好ましい。このような可塑剤の例としては、ポリイソブテン、水素化ポリイソブテン、水素化ポリイソプレン、水素化1,3−ペンタジエン系石油樹脂、水素化シクロペンタジエン系石油樹脂、水素化スチレン・インデン系石油樹脂などが挙げられる。また、追加の可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0084】
追加の可塑剤を添加する場合におけるその量は、アルコキシシリル基変性物[3]100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。可塑剤の量を前記位の範囲に収めることにより、樹脂[I]のガラス転移温度及び弾性率を適切な範囲に容易に調整できる。
【0085】
任意の成分の他の例としては、酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いることにより、樹脂[I]を溶融押し出しすることで第一樹脂層を製造する際に、ダイスのリップ部への樹脂[I]の酸化劣化物の付着を抑えることができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。また、酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0086】
酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。アルキル置換フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチル−6−t−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−t−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の単環のフェノール系酸化防止剤;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,6−ジオキサオクタメチレンビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の2環のフェノール系酸化防止剤;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等の3環のフェノール系酸化防止剤;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等の4環のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0087】
酸化防止剤の量は、アルコキシシリル基変性物[3]100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、特に好ましくは0.3重量部以下である。
【0088】
さらに、任意の成分としては、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されうる。
【0089】
〔2.6.樹脂[I]の調製方法〕
樹脂[I]は、アルコキシシリル基変性物[3]と、エステル化合物[4]と、必要であれば任意の成分とを混合することにより調製しうる。樹脂[I]はまた、アルコキシシリル基変性物[3]の前駆体(水素化物[2]等)と、エステル化合物[4]と、必要であれば任意の成分とを混合し、その後前駆体をアルコキシシリル基変性物[3]に変換することによっても調製しうる。
【0090】
アルコキシシリル基変性物[3]とエステル化合物[4]とを混合する方法としては、例えば、(i)エステル化合物[4]を適切な溶媒に溶解してブロック共重合体[1]の水素化物[2]の溶液と混合した後、溶媒を除去して、水素化物[2]及びエステル化合物[4]を含む組成物を回収し、この組成物とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法;(ii)二軸混錬機、ロール、ブラベンダー及び押出機等の混練装置で、アルコキシシリル基変性物[3]を溶融状態にしてエステル化合物[4]を混練する方法;(iii)水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる際に、それらとエステル化合物[4]とを混練する方法;(iv)水素化物[2]にエステル化合物[4]を均一に分散してペレット状にしたものと、アルコキシシリル基変性物[3]をペレット状にしたものとを混合し、溶融混練して均一に分散する方法;などが挙げられる。任意の成分の添加も、これらの方法のいずれかに準じた方法により行いうる。
【0091】
〔2.7.樹脂[I]の物性〕
樹脂[I]は、透明であることが好ましい。このような透明の樹脂[I]からなる第一樹脂層は、光学用途に好適に用いうる。ここで、透明な樹脂とは、当該樹脂を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である樹脂を言う。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0092】
樹脂[I]のガラス転移温度Tgは、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、特に好ましくは100℃以下である。樹脂は、複数のガラス転移温度を有する場合には、樹脂の最も高いガラス転移温度が、前記の範囲に収まることが好ましい。樹脂[I]のガラス転移温度Tgを前記の範囲に収めることにより、第一樹脂層の接着性及び耐熱性のバランスを良好にできる。樹脂[I]のガラス転移温度Tgは、粘弾性スペクトルにおけるtanδのピークトップ値として求めることができる。
【0093】
樹脂[I]の荷重たわみ温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下である。樹脂[I]の荷重たわみ温度を前記の範囲に収めることにより、複層フィルムの製造が容易となり、配向緩和性に優れた複層フィルムが得られる。配向緩和性に優れたフィルムは、有機発光層の封止等の封止材料として用いる場合に、熱収縮によるしわの発生を抑制しうるため好ましい。樹脂[I]の荷重たわみ温度は、射出成形して試験片を作製し、JIS K7191−2に準拠し、B法、荷重0.45MPaの条件で測定することができる。
【0094】
〔3.第二樹脂層〕
第二樹脂層は、樹脂[II]からなる層である。樹脂[II]は、一般的な光学フィルムの材料として用いるのに適した任意の樹脂としうる。好ましくは、樹脂[II]は、重合体[II]を含むものとしうる。かかる重合体[II]の例としては、環状オレフィン重合体、水素化物[2]、アルコキシシリル変性物[3]、及びこれらの混合物からなる群より選択される重合体が挙げられる。
【0095】
〔3.1.重合体[II]:環状オレフィン重合体〕
環状オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。このような環状オレフィン重合体を含む樹脂は、通常、透明性、寸法安定性、位相差発現性、及び低温での延伸性等の性能に優れる。
【0096】
環状オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0097】
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0098】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、環状オレフィン樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0099】
環状オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、本発明の複層フィルムの使用目的に応じて選択しうる。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、環状オレフィン樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0100】
環状オレフィン重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体とは、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素−炭素二重結合の例としては、開環重合等の重合が可能な炭素−炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造の例としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、得られる重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
【0101】
上記のシクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
【0102】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0103】
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0104】
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。樹脂[II]を構成する重合体としては、このような極性基を含むものも、極性基を含まないものも、好ましく用いうる。
【0105】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0107】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0109】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0110】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む第二樹脂層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0111】
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0112】
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
【0113】
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、複層フィルムの使用目的に応じて適宜選定でき、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、複層フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0114】
環状オレフィン重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、複層フィルムの安定性を高めることができる。
【0115】
環状オレフィン重合体及びそれを含む樹脂としては、市販の樹脂を用いうる。市販の樹脂の例としては、ゼオノア(日本ゼオン株式会社製)、アートン(JSR株式会社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)及びアペル(三井化学社製)が挙げられる。
【0116】
〔3.2.重合体[II]:水素化物[2]及びアルコキシシリル変性物[3]〕
重合体[II]としての水素化物[2]及びアルコキシシリル変性物[3]としては、樹脂[I]を構成するアルコキシシリル変性物[3]及びその前駆体としての水素化物[2]として説明したものと同様のものを用いうる。
【0117】
〔3.3.樹脂[II]のその他の成分〕
樹脂[II]は、重合体[II]に加えて、任意の成分を含みうる。例えば、樹脂[II]はまた、エステル化合物[4]を含んでいてもよい。但し、ブリードアウトを防ぐ観点から、樹脂[II]はエステル化合物[4]を含まないか、又は含んでいてもその含有割合が少ないことが好ましい。具体的には、樹脂[II]におけるエステル化合物[4]の割合は、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満、さらにより好ましくは0.01重量%未満としうる。
【0118】
樹脂[II]はまた、樹脂[I]が含みうる任意の成分として挙げた材料と同様の材料を含みうる。樹脂[II]はまた、エステル化合物[4]を含んでいてもよい。但し、ブリードアウトを防ぐ観点から、これらの成分は、含まないか、又は含んでいても含有割合が少ないことが好ましい。具体的には、樹脂[II]における重合体[II]の割合は、好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上、さらにより好ましくは99.5重量%以上としうる。
【0119】
〔4.複層フィルムの形状及び物性〕
本発明の複層フィルムは、1層の第一樹脂層及び1層の第二樹脂層からなる2種2層のフィルムとしうる。しかしながら本発明の複層フィルムはこれに限られず、例えば、1層の第一樹脂層と、その両側の面に設けられた2層の第二樹脂層を有するものであってもよい。本発明の複層フィルムはまた、第一樹脂層及び第二樹脂層以外の任意の層を有していてもよい。
【0120】
本発明の複層フィルムは、樹脂中に含まれる異物の少ないフィルムとしうる。即ち、本発明の複層フィルムにおいては、肉眼及び顕微鏡で観察される非透光性の粒子の数が少ない。特に、第一樹脂層における100μmサイズ以上の異物の数が少ないものとしうる。「100μmサイズ以上」の異物とは、フィルムを観察した際の長径の寸法が100μm以上の異物である。具体的には、フィルムの面積100mm当たりの、第一樹脂層における100μmサイズ以上の異物の数は、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下としうる。このような少ない異物数は、樹脂[I]がエステル化合物[4]を含むことにより達成可能となる。
【0121】
第一樹脂層及び第二樹脂層のそれぞれの厚みは、特に限定されず用途に応じた所望の厚みとしうる。第一樹脂層及び第二樹脂層のそれぞれの1層当たりの厚みは、例えば好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。本発明の複層フィルムにおいて、第一樹脂層の合計厚みと第二樹脂層の合計厚みとの比は、1対1程度、具体的には0.7:1.3〜1.3:0.7の範囲であることが好ましい。
【0122】
本発明の複層フィルムの透明性は、特に限定されない。ただし、複層フィルムを、光を透過することが求められる部材として有用に用いうるという観点では、本発明の複層フィルムの透明性は高いことが好ましい。この場合、複層フィルムの全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0123】
本発明の複層フィルムのヘイズは、特に限定されない。ただし、本発明の複層フィルムを、光を拡散させることを特段意図しない光学的用途に用いる場合、ヘイズは一般的には低い方が好ましい。この場合、本発明の複層フィルムのヘイズは、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。ヘイズは、JIS K 7136に準拠して、第一樹脂層を50mm×50mmに切り出したフィルム片を用いて測定しうる。
【0124】
本発明の複層フィルムは、十分に高い無機材料との接着性を有することが好ましい。例えば、本発明の複層フィルムをガラス板に直接に貼り合わせた場合に、そのガラス板から複層フィルムを剥がすために要する剥離強度は、好ましくは15N/cm以上、より好ましくは20N/cm以上である。前記の剥離強度の上限に特に制限は無いが、好ましくは200N/cm以下である。アルコキシシリル変性物[3]は、ガラス等の無機材料との高い接着性を発現しうるので、第一樹脂層及び第二樹脂層のうちの第一樹脂層のみがアルコキシシリル変性物[3]を含む場合、複層フィルムのその一方又は両方の面に第一樹脂層が位置し、第一樹脂層と無機材料との間で、高い剥離強度を発現するよう構成することが好ましい。
【0125】
本発明の複層フィルムは、低い透湿度を有することが好ましい。低い透湿度を有することにより、有機発光層を備える光学装置において有機発光層を含む発光素子を封止するための材料として好ましく用いることができる。本発明の複層フィルムの透湿度は、40℃90%RHの雰囲気下において、好ましくは4g/m・24h以下、より好ましくは2g/m・24h以下であり、理想的には0g/m・24hである。このような低い透湿度を得る上では、第二樹脂層が重合体[II]として環状オレフィン重合体を含むものであることが好ましい。
【0126】
〔5.複層フィルムの製造方法〕
本発明の複層フィルムは、任意の製造方法により製造しうる。例えば、溶融成形法、溶液流延法の成形方法により製造しうる。溶融成形法は、さらに詳細には、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた第一樹脂層を得るために、押出成形法、インフレーション成形法及びプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単に第一樹脂層を製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。本発明の複層フィルムは、以下に述べる共押出成形工程を含む製造方法で製造することが特に好ましい。以下においては、この製造方法を、本発明の複層フィルムの製造方法として説明する。
【0127】
本発明の複層フィルムの製造方法は、溶融された樹脂[I]及び樹脂[II]を共押出しする、共押出成形工程を含む。好ましくは、共押出成形工程を、スクリュー押出機及びダイを含む溶融押出成形機を用い、共押出成形工程は、樹脂[I]を、スクリュー押出機からダイに圧送することを含む。
【0128】
図2は、本発明の複層フィルムの製造方法を実施するための溶融押出成形機、及びそれを用いた本発明の製造方法の一例を概略的に示す側面図である。図2において、溶融押出成形機200は、図1に示す複層フィルム100、即ち樹脂[I]からなる1層の第一樹脂層110、及び樹脂[II]からなる1層の第二樹脂層120からなる、2種2層の複層フィルムを製造する装置である。
【0129】
溶融押出成形機200は、スクリュー押出機210及びTダイ220を含む。溶融押出成形機200はさらに、任意の構成要素として、Tダイの下流に設けられた冷却ロール230、スクリュー押出機の上流端に設けられたホッパー240及びTダイに連結された導入管250を有する。スクリュー押出機210は、シリンダー211と、シリンダー211の内部に設けられたシャフト213と、シャフト213の周囲に設けられたスクリュー212とを備える。スクリュー212は、シャフト213をその軸を中心として回転させた際にそれに伴い回転可能な態様で設けられ、且つシリンダー211の内径に適合した寸法を有する。図2においては、図示の都合上、シリンダー211、Tダイ220、ホッパー240及び導入管250は、それらの縦断面により示される。
【0130】
溶融押出成形機200の操作においては、ホッパー240に、樹脂[I]を、ペレット等の形状に成形したものを投入し、これをスクリュー押出機210へ供給する。供給量は、必要であれば、ホッパー240とスクリュー押出機210との間に設けられたフィーダー(不図示)により調節しうる。スクリュー押出機内の温度は、スクリュー押出機に設けられたヒーター(不図示)等の装置により調整しうる。これにより、樹脂[I]を溶融させることができる。シャフト213を回転させ、それによりスクリュー212を回転させることにより、溶融状態の樹脂[I]を矢印A1の方向に圧出し、ダイ220へ圧送することができる。
【0131】
スクリュー押出機内の樹脂[I]の温度は、好ましくはTg+50℃以上、より好ましくはTg+70℃以上であり、好ましくはTg+160℃以下、より好ましくはTg+140℃以下である。ここで、Tgは、樹脂[I]のガラス転移温度を表す。スクリュー押出機での溶融温度が前記下限値以上であることにより、樹脂[I]の流動性を十分に高くでき、また、前記上限値以下であることにより、樹脂[I]の分解による分子量の低下を抑制できる。
【0132】
このようなスクリュー押出機を用いた圧送を行うことにより、効率的な複層フィルムの製造を行うことができる。しかし一方で、このようなスクリュー押出機を用いた圧送を行った場合、スクリュー押出機内部の構造物が僅かに切削され、樹脂中に微小な異物が混入しうる。本発明者が見出したところによれば、かかる異物の混入は、ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物[3]を用いた場合に特に問題となりうるが、樹脂[I]がブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物[3]に加えてエステル化合物[4]を含むことにより、かかる異物数を低減し、高品質な複層フィルムを効率的に製造することが可能となる。
【0133】
本発明の製造方法ではまた、導入管250を通して、樹脂[II]をダイ220へ矢印A2の方向に圧送しうる。樹脂[II]の圧送は、樹脂[I]のためのものと同様のスクリュー押出機を導入管250に連結し、これを操作することにより行いうる。
【0134】
Tダイ220へ圧送された樹脂[I]及び樹脂[II]は、Tダイ220から、2種2層のフィルムの形状で吐出される。Tダイにおける樹脂[I]及び樹脂[II]の温度は、これらの両方の溶融状態が維持される状態となるよう、Tダイに設けられたヒーター(不図示)等の装置により適宜調整しうる。
【0135】
吐出された溶融状態のフィルム300は、冷却ロール230の周面上へ供給される。この例では、溶融状態のフィルム300の冷却ロール230への供給は、その樹脂[I]側の面310Dが冷却ロール230に接する面と反対側になるよう行われる。このような供給を行うことにより、樹脂[I]からブリードアウトしたエステル化合物[4]が冷却ロール230に付着することを抑制することができ、その結果、搬送経路の汚れを抑制し、効率的な製造を行うことができる。冷却ロールの温度は、滑りや傷付き等の不具合を抑制しうる範囲に適宜調整しうる。
【0136】
冷却ロール230による冷却により、溶融状態のフィルム300は冷却され、2種2層の複層フィルム100となる。得られた複層フィルム100は、装置から搬出され、さらに必要に応じて任意の処理を施して製品としうる。図2に示す例では、複層フィルム100は、長尺のフィルムとして効率的に製造される。長尺のフィルムとは、フィルムの幅に対して、通常5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの比の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0137】
〔6.用途〕
本発明の複層フィルムは、光学的用途等の様々な用途に用いうる。例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル用基板、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート、封止フィルム等の光学フィルムとして用いうる。特に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、有機エレクトロルミネッセンス発光装置等の、有機発光層を備える光学装置において、かかる有機発光層を含む発光素子を封止するためのフィルムとして好ましく用いうる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0139】
〔評価方法〕
〔1.重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定方法〕
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレン換算値として測定した。測定は、38℃において行った。また、測定装置としては、東ソー社製「HLC8020GPC」を用いた。
【0140】
〔2.水素化率の測定方法〕
ブロック共重合体の水素化物の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
【0141】
〔3.異物数〕
実施例及び比較例で得られた複層フィルムを光学顕微鏡を用いて観察し、100μmサイズ以上の異物の数を計数し、100mm当たりの数を求めた。
【0142】
〔4.全光線透過率〕
実施例及び比較例で得られた複層フィルムを試料として、JIS K 7361に従い測定した(単位:%)。
【0143】
〔5.ガラスとの剥離強度〕
実施例及び比較例で得られた複層フィルムを切断し、100mm×100mmの矩形の形状とし、これを試料とした。試料の第一樹脂層側の表面と、ガラス(500mm×1000mm×1.1mmt)の表面とを重ね合せ、170℃5分間真空脱気を行い、10分間0.1MPaで加圧プレスをすることにより接着した。オートグラフ(島津製作所社製「AGS−10NX」)を使用して、JIS Z 0237に準じて、試料をガラス板から剥離させる180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した(単位:N/10mm)。この際の測定条件は、剥離速度100mm/分、温度23℃とした。
【0144】
〔6.透湿度〕
実施例及び比較例で得られた複層フィルムの透湿度を、JIS Z 0208に準じて、40℃、90%RHの環境条件で測定した(単位:g/m・24h)。
【0145】
〔7.荷重たわみ温度〕
実施例及び比較例で得られた樹脂[I]を、射出成形して試験片を作製し、JIS K7191−2に準拠し、B法、荷重0.45MPaの条件で測定した。
【0146】
〔実施例1〕
(1−1.ブロック共重合体[1]の合成)
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、以下の手順によってブロック共重合体を製造した。以下の説明において、重合転化率は、別に断らない限り、ガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0147】
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.68部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は、99.5%であった。
【0148】
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99%であった。その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここで、イソプロピルアルコール0.5部を加えて、反応を停止して、ブロック共重合体[1]を含む重合体溶液を得た。ブロック共重合体[1]の重量平均分子量(Mw)は61,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0149】
(1−2.水素化物[2]の製造)
次に、ブロック共重合体[1]を含む前記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(ズードケミー触媒社製「T−8400RL」)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。これにより、溶液中のブロック共重合体[1]が水素化されて、ブロック共重合体[1]の水素化物を含む反応溶液を得た。この水素化物の重量平均分子量(Mw)は65,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0150】
水素化反応の終了後、水素化物を含む前記の反応溶液をろ過して、水素化触媒を除去した。その後、ろ過された反応溶液に、フェノール系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、BASFジャパン社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
【0151】
次いで、前記の反応溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して、微小な固形分を除去した。その後、ろ過された反応溶液から、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製「コントロ」)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン及びキシレン、並びにその他の揮発成分を除去した。そして、前記の濃縮乾燥器に直結したダイから、前記の反応溶液の固形分を、溶融状態でストランド状に押し出し、冷却し、ペレタイザーでカットして、水素化物[2]のペレット90部を得た。得られた水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。水素化率は、ほぼ100%であった。
【0152】
(1−3.エステル化合物[4]の混合)
エステル化合物[4]として、ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製「ユニスターH476D」、ペンタエリスリトールジステアレート(C(CHOCOC1735(CHOH))、分子量657、融点53℃)を用意した。
(1−2)で得た水素化物[2]のペレット90部と、エステル化合物[4]8部とを、二軸押出機(東芝機械社製「TEM35B」)を用いて、樹脂温度200℃で混練して、水素化物[2]及びエステル化合物[4]を含む樹脂を得た。この樹脂を、二軸押出機からストランド状に押出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングして、ペレットを得た。
【0153】
(1−4.水素化物[2]へのアルコキシシリル基の導入:樹脂[I]の製造)
(1−3)で得たペレット98部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.8部及びジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(東芝機械社製「TEM37B」)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80秒〜90秒で混練した。その後、混練した樹脂をストランド状に押し出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして、水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入したアルコキシシリル基変性物[3]及びエステル化合物[4]を含む樹脂[I]のペレット97部を得た。得られた樹脂[I]の荷重たわみ温度を測定したところ、48℃であった。得られた樹脂[I]をH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)により分析したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比から、水素化物[2]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
【0154】
(1−5.樹脂[II]の製造)
(1−3)で得たペレットに代えて、(1−2)で得られた水素化物[2]のペレットそのままのものを98部用いた他は、(1−4)と同様にして、アルコキシシリル基変性物[3]を含む(但し及びエステル化合物[4]を含まない)樹脂[II]のペレットを得た。
【0155】
(1−6.複層フィルムの製造及び評価)
フィルム溶融押出成形機(据置型、GSIクレオス社製)を用意した。このフィルム溶融押出成形機は、スクリュー径20mm、圧縮比3.1、L/D=30のスクリュー押出機を2台備え、且つ、共押出用2層のハンガーマニホールドタイプのTダイ(Tダイ幅150mm)を備えるものであった。
【0156】
(1−4)で得た樹脂[I]及び(1−5)で得た樹脂[II]を、2台のスクリュー押出機のそれぞれに充填し、溶融された状態でスクリュー押出機からTダイに圧送し、フィルム溶融押出成形機を使用して共押出しし、冷却ロールで冷却し、2種2層のフィルムに成形した。成形の条件は、ダイリップ開口0.8mm、ダイリップ幅120mm、Tダイ温度200℃、冷却ロール温度50℃とし、冷却に際し樹脂[II]側の面が冷却ロールと接するよう、冷却ロールとの接触を行った。これにより、樹脂[I]からなる第一樹脂層及び樹脂[II]からなる第二樹脂層を備える、2種2層の複層フィルムを得た。複層フィルムの厚みは20μmであり、(第1樹脂層厚み):(第2樹脂層厚み)の比は1:1であった。
【0157】
得られた複層フィルムについて、全光線透過率、ガラスとの剥離強度及び透湿度を評価した。
【0158】
(1−7.評価用単層フィルムの製造及び評価)
フィルム溶融押出成形機(据置型、GSIクレオス社製)を用意した。このフィルム溶融押出成形機は、スクリュー径20mm、圧縮比3.1、L/D=30のスクリュー押出機を1台備え、且つ、単層押出用Tダイ(Tダイ幅150mm)を備えるものであった。
【0159】
(1−4)で得た樹脂[I]を、溶融された状態で、スクリュー押出機に充填し、スクリュー押出機からTダイに圧送し、フィルム溶融押出成形機を使用して押出し、冷却ロールで冷却し、単層のフィルムに成形した。成形の条件は、ダイリップ開口0.8mm、ダイリップ幅120mm、Tダイ温度200℃、冷却ロール温度50℃とした。これにより、樹脂[I]からなる第一樹脂層の単層フィルムを得た。単層フィルムの厚みは20μmであった。
【0160】
得られた単層フィルムについて、異物数を評価した。
【0161】
〔実施例2〕
(1−3)のエステル化合物[4]の混合において、水素化物[2]のペレットの量を90部から93部に変更し、エステル化合物[4]の量を8部から5部に変更した他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。
【0162】
〔実施例3〕
(1−4)のアルコキシシリル基の導入において、ビニルトリメトキシシランの添加量を1.8部から7.2部に、ジ−t−ブチルパーオキサイドの添加量を0.2部から0.8部に変更した他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。但し、(1−5)の樹脂[II]の製造においては、ビニルトリメトキシシランの添加量は変更せず実施例1の(1−4)の通りとした。得られた樹脂[I]をH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)により分析したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比から、水素化物[2]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン7.0部が結合したことが確認された。
【0163】
〔実施例4〕
(1−3)のエステル化合物[4]の混合において、水素化物[2]のペレットの量を90部から97.7部に変更し、エステル化合物[4]の量を8部から0.3部に変更した他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。
【0164】
〔実施例5〕
(1−6)の複層フィルムの製造において、樹脂[II]として、(1−5)で得たものに代えて、環状オレフィン重合体樹脂(商品名「ZEONOR1215」、日本ゼオン株式会社製、Tg約123℃)を用い、Tダイ温度を200℃から240℃に変更した他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。
【0165】
〔比較例1〕
(1−4)のアルコキシシリル基の導入において、(1−3)で得たペレットに代えて、(1−2)で得られた水素化物[2]のペレットそのままのものを98部用いた他は、実施例と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。即ち、(1−6)の複層フィルムの製造においては、樹脂[I]及び樹脂[II]の組み合わせに代えて、同一の樹脂[II]を用いて、1種2層の複層フィルムを形成した。
【0166】
〔比較例2〕
下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。
・(1−3)のエステル化合物[4]の混合において、エステル化合物[4]としてのペンタエリスリトールジステアレート8部に代えて、非エステル化合物の可塑剤である流動パラフィン(和光特級、和光純薬工業(株)製、融点−24℃)8部を用いた。
・(1−6)の複層フィルムの製造において、樹脂[II]として、(1−5)で得たものに代えて、ポリエチレンテレフタレート(帝人社製「TRN−8550FF」)のペレットを用い、Tダイ温度を200℃から260℃に変更した。
【0167】
〔比較例3〕
(1−3)のエステル化合物[4]の混合において、エステル化合物[4]として、ペンタエリスリトールジステアレート8部に代えて、非エステル化合物の可塑剤である流動パラフィン(和光特級、和光純薬工業(株)製)8部を用いた他は、実施例1と同様にして、複層フィルム及び単層フィルムを得て評価した。
【0168】
実施例及び比較例の結果を、表1にまとめて示す。
【0169】
【表1】
【0170】
表中の略語の意味は、下記の通りである。
重合体割合:第一樹脂層を構成する樹脂[I]中の、ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル基変性物[3]のうちの、アルコキシシリル基の導入前の水素化物[2]に相当する分の重量(部)。
シラン変性:第一樹脂層を構成する樹脂[I]中の、ビニルトリメトキシシランに相当する分の重量(部)。
アルキキシリル基導入量:アルコキシシリル基変性物におけるアルコキシシリル基の導入量(重量部)。
エステル化合物:第一樹脂層を構成する樹脂[I]中の、エステル化合物の重量(部)。
非エステル可塑剤:第一樹脂層を構成する樹脂[I]中の、非エステル化合物の可塑剤の重量(部)。
荷重たわみ温度:第一樹脂層を構成する樹脂[I]の荷重たわみ温度。
樹脂[II]:第二樹脂層を構成する樹脂[II]の種類。HSIS+シラン変性:ブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル基変性物[3]。COP:環状オレフィン重合体樹脂。PET:ポリエチレンテレフタレート。
【0171】
表1の結果から、本発明の要件を満たす複層フィルムは、異物数が少なく、全光線透過率が高く、ガラスとの剥離強度が高く、且つ透湿度が低いものとすることができることが分かる。
【符号の説明】
【0172】
100:複層フィルム
110:第一樹脂層
110D:第一樹脂層の他方の面
110U:第一樹脂層の一方の面
120:第二樹脂層
200:溶融押出成形機
210:スクリュー押出機
211:シリンダー
212:スクリュー
213:シャフト
220:Tダイ
230:冷却ロール
240:ホッパー
250:導入管
図1
図2
【国際調査報告】