特表-17150199IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月8日
【発行日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/07 20060101AFI20181122BHJP
   C08J 5/02 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C08J3/07CEQ
   C08J5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】特願2018-503021(P2018-503021)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37079(P2016-37079)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石葉 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】相原 俊仁
(72)【発明者】
【氏名】小出村 順司
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
【Fターム(参考)】
4F070AA06
4F070AA08
4F070AB08
4F070CA02
4F070CA16
4F070CB03
4F070CB13
4F071AA12
4F071AA13
4F071AA75
4F071AB04
4F071AB18
4F071AB23
4F071AE02
4F071AF15Y
4F071AH19
4F071BA04
4F071BB13
4F071BC04
(57)【要約】
合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して0.1〜30重量部のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程と、前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、前記有機溶媒を除去した乳化液を濃縮するとともに、濃縮後の前記乳化液中の前記ロジン酸エステル塩の含有割合を、前記乳化液中の前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲に調整する濃縮工程と、を備える重合体ラテックスの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して0.1〜30重量部のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程と、
前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記有機溶媒を除去した乳化液を濃縮するとともに、前記乳化液中の前記ロジン酸エステル塩の含有割合を、前記乳化液中の前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲に調整する濃縮工程と、を備える重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記濃縮工程において、遠心分離により、前記乳化液を濃縮する請求項1に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記遠心分離を、遠心加速度100〜20,000Gの条件で行う請求項2に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記濃縮工程において、前記乳化液として、固形分濃度1〜40重量%の範囲に調整されたものを用いて濃縮を行う請求項1〜3のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記濃縮工程における濃縮後の前記乳化液の固形分濃度が40〜70重量%となるように、前記乳化液を濃縮する請求項1〜4のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記重合体溶液が、有機溶媒に溶解させたイソプレンを含む単量体を溶液重合して得られる前記合成ポリイソプレン、および/または有機溶媒に溶解させたスチレンを含有する単量体とイソプレンを含有する単量体とを溶液重合して得られる前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液であり、
前記乳化工程において、前記重合体溶液を、凝固を経ずに、水中で直接乳化することにより前記乳化液を得る請求項1〜5のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた重合体ラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性および機械的安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が得られることが知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギーの症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜または臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ポリイソプレンやスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスを用いる検討がされてきている(特許文献1)。
【0003】
たとえば、特許文献1には、イソプレンゴムを炭化水素溶媒に溶解してなる重合体溶液を、ロジン系石鹸を含む水性石鹸液により乳化させた後、炭化水素溶媒の除去および濃縮を行う工程を備える人工ラテックスの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術により得られる人工ラテックスは、生産性および機械的安定性が十分でなく、しかも、この人工ラテックスを用いて製造されるディップ成形体は、引張強度に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−531497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、生産性および機械的安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、所定割合のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して乳化させ、得られた乳化液の有機溶媒を除去した後、有機溶媒を除去した乳化液を、濃縮する際に、ロジン酸エステル塩の含有割合が所定範囲となるように調整することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して0.1〜30重量部のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程と、前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、前記有機溶媒を除去した乳化液を濃縮するとともに、前記乳化液中の前記ロジン酸エステル塩の含有割合を、前記乳化液中の前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲に調整する濃縮工程と、を備える重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記濃縮工程では、遠心分離により、前記乳化液を濃縮することが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記遠心分離を、遠心加速度100〜20,000Gの条件で行うことが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記濃縮工程では、前記乳化液として、固形分濃度1〜40重量%の範囲に調整されたものを用いて濃縮を行うことが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記濃縮工程における濃縮後の前記乳化液の固形分濃度が40〜70重量%となるように、前記乳化液を濃縮することが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性および機械的安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックス、およびこのような重合体ラテックスを用いて得られ、高い引張強度を備えるディップ成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して0.1〜30重量部のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程と、前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、前記有機溶媒を除去した乳化液を濃縮するとともに、前記乳化液中の前記ロジン酸エステル塩の含有割合を、前記乳化液中の前記合成ポリイソプレンおよび前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲に調整する濃縮工程と、を備えるものである。
【0012】
合成ポリイソプレンの重合体溶液
まず、本発明の製造方法で用いる、合成ポリイソプレンの重合体溶液について説明する。
本発明で用いる合成ポリイソプレンの重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
【0013】
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0014】
本発明で用いる、合成ポリイソプレンの重合体溶液は、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合して得ることができる。特に、本発明によれば、上述したアルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、直接、乳化した場合でも、得られる乳化液中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0015】
また、重合触媒の使用量は、高い生産性で重合体ラテックスを製造することができるという観点より、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.0070〜0.085重量部、より好ましくは0.0076〜0.056重量部、さらに好ましくは0.0084〜0.042重量部である。
【0016】
有機溶媒としては、重合反応に対して不活性なものであればよいが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンが特に好ましい。有機溶媒の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは250〜2000重量部、より好ましくは400〜1250重量部である。
【0017】
また、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合する際の重合温度は、高い生産性で重合体ラテックスを製造することができるという観点より、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜75℃である。
【0018】
本発明の製造方法においては、このようにしてイソプレンを含む単量体を溶液重合することで、合成ポリイソプレンの重合体溶液を得ることができるが、本発明の製造方法においては、このようにして溶液重合して得られる重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、これを、乳化剤としてのロジン酸エステル塩の存在下に、水中で直接乳化させることが好ましい。一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、合成ポリイソプレンの分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあるため、凝固させることなく、そのまま用いることが好ましい。なお、この場合において、たとえば、重合体溶液の粘度等を調整するために、有機溶媒を添加してもよい。
【0019】
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2−ビニル結合単位、3,4−ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは72重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。
【0020】
合成ポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは100,000〜1,200,000、より好ましくは150,000〜1,100,000、さらに好ましくは200,000〜1,000,000である。合成ポリイソプレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体の引張強度が向上するとともに、合成ポリイソプレンラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
【0021】
合成ポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、通常1〜5、好ましくは1.1〜3、より好ましくは1.2〜2である。合成ポリイソプレンの分子量分布を上記範囲とすることにより、ディップ成形体の引張強度がより向上する。
【0022】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液
次いで、本発明の製造方法で用いる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液について説明する。
本発明で用いるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレンとイソプレンとのブロック共重合体であり、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99〜90:10、好ましくは3:97〜70:30、より好ましくは5:95〜50:50、さらに好ましくは10:90〜30:70の範囲である。
【0023】
本発明においては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.0〜2.6であり、より好ましくは1.0〜2.4、さらに好ましくは1.0〜2.2である。分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とすることにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を有機溶媒に溶解することで得られる重合体溶液の粘度の上昇を抑えながら、得られるディップ成形体の引張強度を適切に高めることができる。その一方で、分子量分布(Mw/Mn)が大きすぎると、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものとなるおそれがある。
【0024】
なお、本発明の製造方法において、後述するように、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る際においては、実際に使用するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液中の固形分粘度をより高くすることができ、これにより、乳化を行う際における生産レート(単位時間当たりの生産量)をより高めることができるという点より、温度60℃における粘度が20,000cps程度であるもの(たとえば、温度60℃における粘度が20,000cps±100cpsであるもの)を用いることが好ましい。
【0025】
本発明で用いる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液は、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、スチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合して得ることができる。特に、本発明によれば、上述したアルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、直接、乳化した場合でも、得られる乳化液中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0026】
また、重合触媒の使用量は、高い生産性で重合体ラテックスを製造することができるという観点より、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.030〜0.34重量部、より好ましくは0.038〜0.24重量部、さらに好ましくは0.044〜0.17重量部である。
【0027】
有機溶媒としては、重合反応に対して不活性なものであればよいが、たとえば、上述した有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは75〜570重量部、より好ましくは80〜400重量部である。
【0028】
また、スチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合する際の重合温度は、高い生産性で重合体ラテックスを製造することができるという観点より、好ましくは35〜80℃、より好ましくは40〜75℃である。
【0029】
本発明の製造方法においては、このようにしてスチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合することで、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得ることができるが、本発明の製造方法においては、このようにして溶液重合して得られる重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、これを、乳化剤としてのロジン酸エステル塩の存在下に、水中で直接乳化させることが好ましい。一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあるため、凝固させることなく、そのまま用いることが好ましい。なお、この場合において、たとえば、重合体溶液の粘度等を調整するために、有機溶媒を添加してもよい。
【0030】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは70,000〜400,000、さらに好ましくは100,000〜350,000である。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体の引張強度が向上するとともに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
【0031】
乳化工程
本発明の製造方法における乳化工程は、上述した合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、乳化剤としてのロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して、水中で乳化させることで、乳化液を得る工程である。
【0032】
本発明で用いるロジン酸エステル塩を含む水溶液は、ロジン酸エステル塩の含有割合が、重合体溶液中の合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部である。ロジン酸エステル塩の含有割合を上記範囲とすることにより、後述する溶媒除去工程において有機溶媒を除去する際における、乳化液の泡立ちを抑制することができ、重合体ラテックスの生産性を向上させることができるとともに、乳化液中における凝集物(コアギュラム)の発生が抑制され、乳化液の機械的安定性を向上させることもできる。さらには、得られるディップ成形体は、引張強度が向上する。
【0033】
上述したように、本発明の製造方法における乳化工程においては、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液として、上記した重合方法により得られた重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることが好ましい。これに対し、一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあり、その一方で、凝固させることなく、そのまま用いて乳化させることで、このような不具合の発生を抑制できる。
【0034】
本発明で用いるロジン酸エステル塩は、ロジン酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリンサン酸、ピマール酸、イソピマール酸、またはデヒドロアビエチン酸等を含有する)により得られる脂肪酸塩石鹸であり、後述する溶媒除去工程において有機溶媒を除去する際における、乳化液の泡立ちの抑制効果が高いことから、ロジン酸のアルカリ金属塩が好ましく、ロジン酸カリウム、またはロジン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0035】
なお、本発明の製造方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、乳化剤として、上記ロジン酸エステル塩に加えて、上記ロジン酸エステル塩以外の乳化剤を併用してもよい。
【0036】
上記ロジン酸エステル塩と併用可能な乳化剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等が挙げられる。
【0037】
これらアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0038】
また、重合体ラテックスを製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、上記ロジン酸エステル塩と併用する乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩を用いることが特に好ましい。ここで、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の製造方法においては、乳化剤として、上記ロジン酸エステル塩に加えて、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
【0040】
また、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
【0041】
ロジン酸エステル塩以外の乳化剤を併用する場合における、ロジン酸エステル塩以外の乳化剤の使用量は、重合体溶液中に含まれる合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0042】
本発明の製造方法における乳化工程において、使用する水の量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(有機溶媒溶液)100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
【0043】
合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、乳化剤としてのロジン酸エステル塩の存在下、水中で乳化する際には、一般に乳化機または分散機として市販されている乳化装置を特に限定されず使用できる。合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
【0044】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等を用いることができる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0045】
溶媒除去工程
本発明の製造方法における溶媒除去工程は、乳化工程で得られた乳化液から、有機溶媒を除去する工程である。乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液中における、有機溶媒(好ましくは脂肪族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができるが、これらの中でも、有機溶媒を適切かつ効率的に除去できるという観点より、減圧蒸留が好ましい。
【0046】
本発明の製造方法においては、上記乳化工程において、乳化剤として、ロジン酸エステル塩を使用し、かつ、その使用量を上記範囲とするため、減圧蒸留により溶媒除去を行う際における、乳化液の泡立ちを抑制することでき、これにより、生産効率を高めることができる。
【0047】
有機溶媒を除去した乳化液には、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
【0048】
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0049】
濃縮工程
本発明の製造方法における濃縮工程は、溶媒除去工程において有機溶媒を除去した乳化液を、濃縮するとともに、乳化液を濃縮する際に、乳化液中のロジン酸エステル塩の含有割合を、乳化液中の合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1〜3重量部に調整することで、重合体ラテックスを得る工程である。
【0050】
有機溶媒を除去した乳化液を濃縮する方法としては、特に限定されず、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法を用いることができるが、得られる重合体ラテックスの固形分濃度を上げるとともに、重合体ラテックス中の乳化剤の残留量を低減することができるという観点より、遠心分離が好ましい。
【0051】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機や回分式遠心分離機を用いて行うことができるが、重合体ラテックスの生産性に優れるという観点より、連続遠心分離機を用いて行うことが好ましい。遠心分離により乳化液を濃縮する場合には、遠心分離後の分散液から、その一部である軽液として、重合体ラテックスを得ることができる。そのため、遠心分離によれば、軽液としての重合体ラテックスを取り除いた後の残液中に、除去したい所望量のロジン酸エステル塩が含まれるようにすることにより、得られる重合体ラテックス中におけるロジン酸エステル塩の残留量を適切に調製できるものである。
【0052】
本発明の製造方法の濃縮工程においては、重合体ラテックスの濃縮を行うとともに、濃縮した後の乳化液中のロジン酸エステル塩の残留量を、乳化液中の合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部に対して、0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2.5重量部、より好ましくは0.1〜2.0重量部に調整するものである。本発明の製造方法によれば、濃縮工程後の乳化液中のロジン酸エステル塩の残留量を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスの機械的安定性を向上させることができ、しかも、得られるディップ成形体を引張強度に優れたものとすることができる。濃縮工程後の乳化液中のロジン酸エステル塩の残留量が少なすぎると、得られる重合体ラテックスは、機械的安定性に劣るものとなってしまう。一方、濃縮工程後の乳化液中のロジン酸エステル塩の残留量が少なすぎると、得られるディップ成形体は、引張強度に劣るものとなってしまう。
【0053】
濃縮工程後の乳化液中のロジン酸エステル塩の残留量を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、遠心分離により濃縮を行う際における、乳化液の固形分濃度を調整する方法や、遠心分離を行う際における条件を後述する範囲において調整する方法などが挙げられる。
【0054】
遠心分離に用いる乳化液(遠心分離前の乳化液)の固形分濃度は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。遠心分離前の乳化液の固形分濃度を上記範囲とすることにより、遠心分離中に、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の凝集を防止することができ、これにより、乳化液の機械的安定性が向上するとともに、得られる重合体ラテックス中のロジン酸エステル塩の量を適切に所望の量に調整することができ、これにより、乳化液中における凝集物(コアギュラム)の発生が抑制され、乳化液の機械的安定性をより向上させることもでき、さらには、得られるディップ成形体の引張強度をより向上させることができるため、好ましい。なお、遠心分離を行う際には、溶媒除去工程を経た乳化液をそのまま用いてもよいし、あるいは、固形分濃度を調整した後に用いてもよい。
【0055】
乳化液の機械的安定性の向上のため、予めpH調整剤を添加して乳化液のpHを7以上としておくことが好ましく、pHを9以上としておくことがより好ましい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0056】
また、遠心加速度は、好ましくは100〜20,000G、より好ましくは500〜20,000G、さらに好ましくは1000〜15,000Gである。遠心加速度を上記範囲とすることにより、遠心分離中に、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の凝集を防止することができ、これにより、乳化液の機械的安定性が向上するとともに、得られる重合体ラテックスの固形分濃度が適度なものとなり、この重合体ラテックスを用いて得られるディップ成形体の引張強度が高くなる。
【0057】
また、遠心分離を行う時間は、好ましくは0.5〜300分、より好ましくは1〜100分、さらに好ましくは1〜50分である。
【0058】
さらに、遠心分離を連続遠心分離機を用いて行う場合には、乳化液を遠心分離機に送り込む流速は、好ましくは500〜1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は、好ましくは0.03〜1.6MPaである。
【0059】
本発明の製造方法においては、上記条件を適宜バランスさせることにより、濃縮工程後の乳化液中における、ロジン酸エステル塩の残留量を上記範囲とすることができる。あるいは、本発明の製造方法においては、濃縮工程にて、遠心分離以外の方法で乳化液を濃縮することにより、ロジン酸エステル塩の残留量を上記範囲としてもよいし、遠心分離または遠心分離以外の方法で濃縮した乳化液について、濃度調整を行うことにより、ロジン酸エステル塩の残留量を上記範囲としてもよい。
【0060】
本発明の製造方法においては、濃縮工程で濃縮された乳化液の固形分濃度は、好ましくは40〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%、さらに好ましくは50〜65重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、得られる重合体ラテックスを貯蔵した際における重合体粒子の分離を抑制することができるとともに、重合体粒子同士が凝集して粗大凝集物が発生することを抑制できる。
尚、濃縮工程を上述した遠心分離により行う場合には、遠心分離により得られる軽液の固形分濃度が上記範囲となるように遠心分離の条件を調整してもよいし、軽液の固形分濃度が上記範囲よりも高濃度で得られた場合には重液と混合して固形分濃度が上記範囲となるように調整してもよい。
【0061】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは1〜2μmである。体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、重合体ラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
【0062】
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
【0063】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0065】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
架橋促進剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0067】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有することが好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0068】
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤;分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
【0069】
老化防止剤としては、2,6−ジ−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0070】
老化防止剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0071】
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0072】
本発明のラテックス組成物は、pHが7以上であることが好ましく、pHが7〜13の範囲であることがより好ましく、pHが8〜12の範囲であることがさらに好ましい。また、ラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
【0073】
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
【0074】
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0075】
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0076】
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0077】
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0078】
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
【0079】
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
【0080】
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
【0081】
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
【0082】
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体ラテックスを用いて得られるものであるため、引張強度に優れるものであり、手袋として特に好適に用いることができる。ディップ成形体が手袋である場合、ディップ成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
【0083】
また、本発明のディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【0084】
接着剤組成物
本発明においては、上述した本発明の重合体ラテックスを、接着剤組成物として用いることができる。
【0085】
接着剤組成物中における合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有量(固形分量)は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0086】
接着剤組成物は、本発明の重合体ラテックスに加えて、接着剤樹脂を含有してなることが好ましい。接着剤樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びイソシアネート樹脂を好適に使用することができ、これらのなかでも、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂は、公知のもの(例えば、特開昭55−142635号公報に開示のもの)が使用できる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの反応比率は、「レゾルシン:ホルムアルデヒド」のモル比で、通常、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3である。
【0087】
また、接着剤組成物の接着力をさらに高めるために、接着剤組成物には、従来から使用されている2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール又は類似の化合物、イソシアネート、ブロックイソシアネート、エチレン尿素、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル樹脂等を含有させることができる。
【0088】
さらに、接着剤組成物には、加硫助剤を含有させることができる。加硫助剤を含有させることにより、接着剤組成物を用いて得られる後述する複合体の機械的強度を向上させることができる。加硫助剤としては、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム;ラウリルメタクリレートやメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)等のアリル化合物;ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N,N−m−フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物;硫黄;等を挙げることができる。
【0089】
接着剤層形成基材
本発明の接着剤層形成基材は、本発明の重合体ラテックスまたは接着剤組成物を用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成して得られる。
【0090】
基材としては、特に限定されないが、たとえば繊維基材を用いることができる。繊維基材を構成する繊維の種類は、特に限定されず、たとえば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド繊維、ガラス繊維、綿、レーヨン等が挙げられる。これらは、その用途に応じて、適宜選定することができる。繊維基材の形状は特に限定されず、たとえば、ステープル、フィラメント、コード状、ロープ状、織布(帆布等)等を挙げることができ、その用途に応じて適宜選定することができる。たとえば、接着剤層形成基材は、接着剤層を介して、ゴムと接着することにより、基材−ゴム複合体として用いることができる。基材−ゴム複合体としては、特に限定されないが、たとえば、繊維基材としてコード状のものを用いた芯線入りのゴム製歯付きベルト、帆布等の基布状の繊維基材を用いたゴム製歯付きベルト等が挙げられる。
【0091】
基材−ゴム複合体を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、浸漬処理等により、本発明の重合体ラテックスまたは接着剤組成物を基材に付着させて接着剤層形成基材を得て、接着剤層形成基材をゴム上に載置し、これを加熱および加圧する方法が挙げられる。加圧は、圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行なうことができる。加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaである。加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。加熱および加圧の処理時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。加熱および加圧する方法により、ゴムの成形、および接着剤層形成基材とゴムとの接着を、同時に行なうことができるようになる。なお、加圧に用いる圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とする基材−ゴム複合体のゴムに所望の表面形状を付与するための型を形成させておくことが好ましい。
【0092】
また、基材−ゴム複合体の一態様として、基材−ゴム−基材複合体を挙げることができる。基材−ゴム−基材複合体は、たとえば、基材(2種以上の基材の複合体であってもよい。)と基材−ゴム複合体とを組み合わせて形成することができる。具体的には、基材としての芯線、ゴムおよび基材としての基布を重ね(このとき、芯線および基布には、本発明の重合体ラテックスまたは接着剤組成物を適宜付着させて接着剤層形成基材としておく)、加熱しながら加圧することにより、基材−ゴム−基材複合体を得ることができる。
【0093】
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、機械的強度、耐摩耗性および耐水性に優れたものであり、そのため、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルト等のベルトとして好適に用いることができる。また、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、耐油性に優れ、油中ベルトとして好適に用いることができる。さらに、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、ホース、チューブ、ダイアフラム等にも好適に使用できる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホース等が挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラム等が挙げられる。
【0094】
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロール等の工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動等の運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータ等が挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケット等が挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器等のOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロール等の繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロール等の製鉄用ロール;等が挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0096】
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0097】
固形分濃度
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
【0098】
ロジン酸カリウム含有割合
乳化液または重合体ラテックス0.1gに水2mlを加え、アセトニトリルで10mlに希釈した。得られた液体をよく振とうさせ、ゴム分を凝固させた。その後水層を0.2μmのディスクフィルタで濾過した。この液体を高速液体クロマトグラフィーで分析し、合成ポリイソプレンまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体100部に対するロジン酸カリウム含有割合(単位:重量部)を算出した。
【0099】
凝集物含有割合
重合体ラテックスの固形分濃度を測定し、その重合体ラテックス約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、重合体ラテックスを除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、下記式に基づいて凝集物含有割合(単位:重量%)を求めた。
凝集物含有率={(α−β)/(γ×Δ)}×10,000
ここで、αは乾燥後の金網及び乾燥凝集物の重量、βは金網の重量、γは重合体ラテックスの重量、Δは重合体ラテックスの全固形分の重量をそれぞれ示す。
【0100】
泡立ち評価
溶媒除去工程において、減圧蒸留を行っている間の乳化液の泡立ちを、目視にて観察し、以下の基準で評価した。
A:泡立ちがほとんど確認されなかった。
B:泡立ちが確認されたものの、若干量であった。
C:泡立ちが顕著であった。
【0101】
機械的安定性
ASTMD1417−10の「Determination of Mechanical Stability」に記載の方法に準拠して以下の方法により機械的安定性を評価した。
MS−5114(上島製作所)またはLL5110NA MK3(Source 2 trade Ltd)を使用して機械的安定性を測定した。但し、撹拌ディスクはASTM D1076−10に規定されている直径が20.83(mm)±0.03、厚みが1.57(mm)±0.05(mm)のものを使用した。ガラスビーカーはASTM D1417−10に規定されているガラス製ビーカーで内径が57.8(mm)±1(mm)であるものを使用した。重合体ラテックス50gを精秤し、回転数14,000rpmの条件で30分間撹拌した。撹拌後の重合体ラテックスを、80メッシュ金網にて濾過した。その後メッシュを石鹸水で洗浄し、蒸留水で石鹸を洗い流した後、105℃で2時間乾燥した。乾燥後、金網上の残渣物を秤量して、重合体ラテックス50gに対する比率(単位:重量%)を計算し、その値により機械的安定性を評価した。値が小さいほど、機械的安定性に優れる。
【0102】
ディップ成形体の引張強度
ディップ成形体の引張強度は、ASTM D412に基づいて測定した。具体的には、ディップ成形体をダンベル(Die−C)で打ち抜き、測定用試験片を作製し、得られた試験片をテンシロン万能試験機(オリエンテック社製「RTC−1225A」)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)を測定した。
【0103】
実施例1
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌機付きのオートクレーブに、シクロヘキサン1150部とイソプレン100部とテトラメチルエチレンジアミン0.04部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、n−ブチルリチウム15.6重量%を含有するヘキサン触媒溶液0.1105部を加えて1時間反応させた。重合反応率は99%であった。得られたポリマー溶液に重合停止剤としてメタノール0.0831部を添加し、反応を停止させ、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)を得た。合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が677,000で、分子量分布(Mw/Mn)は1.99であった。
【0104】
(重合体ラテックスの製造)
次いで、この合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)全量1250部(合成ポリイソプレン100部、シクロヘキサン1150部)と、ロジン酸カリウム0.8重量%(上記合成ポリイソプレンに対して10部)を含有してなる界面活性剤水溶液1250部とを準備した。
【0105】
(乳化工程)
そして、上記合成ポリイソプレンの重合体溶液の全量、および、上記界面活性剤水溶液の全量を、SUS304製の容器に入れて撹拌混合し、続いてホモジナイザー(商品名「マイルダーMDN−303V」、太平洋機工社製)によって乳化分散処理を施し、乳化液(B−1)を得た。得られた乳化液(B−1)について、上述方法に従って、ロジン酸カリウム含有割合および凝集物含有割合を測定した。結果を表1に示す。
【0106】
(溶媒除去工程)
次に、乳化工程で得られた乳化液(B−1)を、溶剤除去用タンクに移し、減圧蒸留により、シクロヘキサンを除去した乳化液(C−1)を得た。なお、蒸留時間は6時間とした。また、シクロヘキサンを除去した乳化液(C−1)の固形分濃度は、10重量%であった。そして、200メッシュステンレス製金網を用い、乳化液(C−1)中の凝集物を除去した。なお、シクロヘキサンを留去している間における乳化液(B−1)の泡立ちの量を、上記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
【0107】
(濃縮工程)
次いで、上記にてシクロヘキサンを除去した乳化液(C−1)について、溶媒をさらに除去することで、固形分濃度を20重量%に調整した。その後、冷却遠心分離機(型式「H−2000B」、コクサン社製)にロータMNをセットし、容量500mlの遠沈管に乳化液(C−1)を入れ、設定温度20℃、遠心加速度4,000G、処理時間20分間の条件で、遠心分離操作を行った。回転が止まった後、直ちに遠沈管内から、軽液として重合体ラテックス(D−1)を得た。得られた重合体ラテックス(D−1)を重液と混合し、固形分濃度を60重量%に調整した(E-1)。得られた重合体ラテックス(E-1)について、上述方法に従って、ロジン酸カリウム含有割合および機械的安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
(ラテックス組成物の調製)
得られた重合体ラテックス(E-1)を撹拌しながら、重合体ラテックス(E-1)中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛0.7部となるように、各配合剤の水分散液を添加した後、水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整したラテックス組成物を得た。その後、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
【0109】
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)を含む凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
【0110】
その後、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、ラテックス組成物に10秒間浸漬した。次いで、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬した。さらに、130℃のオーブン内に置き30分間加硫を行った後、室温まで冷却し、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体を得た。得られたディップ成形体の引張強度を、上述方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0111】
実施例2
乳化工程で用いる界面活性剤水溶液中のロジン酸カリウム量を固形分濃度で25部に、溶媒除去工程における蒸留時間を11時間に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-2)を製造した。そして、得られた重合体ラテックス(E-2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物の調製、及びディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
実施例3
遠心分離前の乳化液を調製する際に、固形分濃度を10重量%に調整することで、乳化液(B−3)を得て、乳化液(B−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-3)を製造した。そして、得られた重合体ラテックス(E-3)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物の調製、及びディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
実施例4
実施例1の合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)に代えて、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)(商品名「QUINTAC 3620」、日本ゼオン社製)を濃度8重量%となるようにシクロヘキサン溶液に溶解してなる重合体溶液(A−4)を使用するとともに、溶媒除去工程における蒸留時間を7時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-4)を製造した。そして、得られた重合体ラテックス(E-4)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物の調製、及びディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
乳化工程で用いる界面活性剤水溶液中のロジン酸カリウム量を固形分濃度で0.05部に、溶媒除去工程における蒸留時間を4時間に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-5)の製造を行った。比較例1では、乳化工程で得られた乳化液の凝集物含有割合が高く、その後、濃縮工程における遠心分離時に乳化液が固化してしまい、重合体ラテックス(E-5)を回収することができなかった。結果を表1に示す。
【0115】
比較例2
乳化工程で用いる界面活性剤水溶液中のロジン酸カリウム量を固形分濃度で35部に、溶媒除去工程における蒸留時間を18時間に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-6)を製造した。そして、得られた重合体ラテックス(E-6)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物の調製、及びディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
比較例3
遠心分離前の乳化液を調製する際に、固形分濃度を10重量%に調整することで、乳化液(B−7)を得て、乳化液(B−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-7)を製造した。そして、得られた重合体ラテックス(E-7)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物の調製、及びディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
比較例4
遠心分離前の乳化液を調製する際に、固形分濃度を10重量%に調整することで、乳化液(B−8)を得て、乳化液(B−8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-8)を製造した。比較例4では、ラテックス組成物を調製する際に、重合体ラテックス(E-8)中に多数の凝集物が発生してしまい、ディップ成形体を製造することができなかった。結果を表1に示す。
【0118】
比較例5
濃縮工程にて遠心分離を行う際の条件を、遠心加速度25,000G、処理時間1分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(D−9)の製造を行った。比較例5では、遠心分離時に乳化液が凝集してしまい、重合体ラテックス(D−9)を回収することができなかった。結果を表1に示す。
【0119】
比較例6
濃縮工程にて遠心分離を行う際の条件を、遠心加速度50G、処理時間100分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体ラテックス(E-10)の製造を行った。比較例6では、遠心分離によって固形分濃度が30重量%である重合体ラテックス(E-10)を得たが、遠心分離後の重合体ラテックス中のロジン酸カリウム量が高くなりすぎたため、この重合体ラテックスを用いても十分な引張強度を有するディップ成形体は得られないと判断し、ディップ成形体の製造および引張強度の評価は行わなかった。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1より、合成ポリイソプレンまたはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、0.1〜30部のロジン酸エステル塩を含む水溶液と混合して乳化させることで乳化液を得て、乳化液中の有機溶媒を除去した後、乳化液を濃縮して、乳化液中のロジン酸エステル塩の含有割合を0.1〜3部とした場合には、重合体ラテックスを製造する過程における泡立ちが抑制され、さらに重合体ラテックスの機械的安定性が優れており、しかも、引張強度の高いディップ成形体が得られた(実施例1〜4)。
【0122】
一方、乳化工程で使用する乳化液中のロジン酸カリウム量を固形分濃度で0.1部未満とした場合には、乳化工程後の乳化液の凝集物含有割合が高く、その後、濃縮工程における遠心分離時に乳化液が固化してしまい、重合体ラテックスを回収することができなかった(比較例1)。
また、乳化工程で使用する乳化液中のロジン酸カリウム量を固形分濃度で30部超とした場合には、重合体ラテックスを製造する過程において、泡立ちの発生量が多くなってしまい、重合体ラテックスの生産性に劣るものであった(比較例2)。
また、濃縮工程により得られた重合体ラテックス中のロジン酸カリウム量が3部超であった場合には、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものであった(比較例2,3)。
また、濃縮工程により得られた重合体ラテックス中のロジン酸カリウム量が0.1部未満であった場合には、重合体ラテックスは機械的安定性に劣るものであり、ディップ成形体を製造することができなかった(比較例4)。
また、濃縮工程にて遠心分離を行った際の遠心加速度が高すぎた場合には、遠心分離中に乳化液が凝集してしまい、重合体ラテックスを回収することができなかった(比較例5)。
さらに、濃縮工程にて遠心分離を行った際の遠心加速度が低すぎた場合には、濃縮工程後の重合体ラテックス中のロジン酸カリウム量が高くなりすぎたため、この重合体ラテックスを用いても十分な引張強度を有するディップ成形体は得られないと判断し、ディップ成形体の製造および引張強度の評価は行わなかった(比較例6)。
【国際調査報告】