(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年5月11日
【発行日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置およびダイボンディング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20171006BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/52 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2017-511792(P2017-511792)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】62/251,484
(32)【優先日】2015年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 照幸
(72)【発明者】
【氏名】関野 章良
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英広
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA19
5F047BA19
5F047BB16
5F047CA08
5F047FA08
5F047FA52
5F047FA58
5F047FA59
(57)【要約】
第1部品に第2部品をボンディングするダイボンディング装置であって、第1部品が載置領域に載置される載置台と、載置台の下側に設けられたヒータと、載置台の載置領域を囲むように設けられた側壁と、第1および第2部品が通過可能な大きさの孔を有し、側壁に載置される蓋と、第2部品を先端部にて真空チャックすることにより保持可能なコレットと、コレットを、コレットが保持した第2部品が孔を通過して第1部品にボンディングされるように移動させる移動機構と、側壁に設けられ、側壁と蓋とで形成される加熱空間に加熱ガスを供給するガス供給管と、を備え、蓋は、ヒータおよび加熱ガスにより生じる赤外線輻射を反射もしくは吸収・再輻射することができる材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品に第2部品をボンディングするダイボンディング装置であって、
前記第1部品が載置領域に載置される載置台と、
前記載置台の下側に設けられたヒータと、
前記載置台の載置領域を囲むように設けられた側壁と、
前記第1および第2部品が通過可能な大きさの孔を有し、前記側壁に載置される蓋と、
前記第2部品を先端部にて真空チャックすることにより保持可能なコレットと、
前記コレットを、前記コレットが保持した前記第2部品が前記孔を通過して前記第1部品にボンディングされるように移動させる移動機構と、
前記側壁に設けられ、前記側壁と前記蓋とで形成される加熱空間に加熱ガスを供給するガス供給管と、
を備え、
前記蓋は、前記ヒータおよび前記加熱ガスにより生じる赤外線輻射を反射、もしくは吸収・再輻射することができる材料を含むことを特徴とするダイボンディング装置。
【請求項2】
前記蓋は前記材料からなることを特徴とする請求項1に記載のダイボンディング装置。
【請求項3】
前記蓋は前記材料からなる層を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイボンディング装置。
【請求項4】
前記材料は、金属、セラミック、耐熱樹脂およびカーボンの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項5】
前記側壁は多層構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項6】
前記ガス供給管は、前記加熱ガスが、前記蓋側からみて前記蓋の孔を避けるような方向に噴射するように設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項7】
前記ガス供給管は、前記加熱ガスが、前記載置台側に向けて噴射するように設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項8】
前記加熱ガスは、不活性ガス、還元性ガス、または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項9】
前記コレットは、真空チャックする面積が、前記第2部品が真空チャックされる面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項10】
前記コレットは丸コレットであることを特徴とする請求項9に記載のダイボンディング装置。
【請求項11】
前記コレットの先端部が樹脂からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項12】
前記第2部品は長手方向のサイズが4mm以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載のダイボンディング装置。
【請求項13】
第1部品に第2部品をボンディングするダイボンディング方法であって、
前記第1部品を載置台の載置領域に載置する載置工程と、
前記第1部品をヒータで加熱する加熱工程と、
前記載置台と、前記載置台の載置領域を囲むように設けられた側壁と、前記第1および第2部品が通過可能な大きさの孔を有し前記側壁に載置される蓋と、で形成される加熱空間に加熱ガスを供給するガス供給工程と、
前記蓋の孔に、コレットで保持した前記第2部品を通過させて前記加熱空間内に導入し、前記第2部品を前記第1部品に接触させてボンディングを行うボンディング工程と、
を含み、
前記蓋は、前記ヒータおよび前記加熱ガスにより生じる赤外線輻射を反射、もしくは吸収・再輻射することができる材料を含むことを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項14】
前記加熱空間内で前記第2部品を第1速度で移動させ、その後、前記第1速度より速い第2速度で前記第2部品を移動させて前記第1部品に接触させることを特徴とする請求項13に記載のダイボンディング方法。
【請求項15】
前記加熱空間内で前記第2部品を停止させ、その後、前記第2部品を移動させて前記第1部品に接触させることを特徴とする請求項13に記載のダイボンディング方法。
【請求項16】
前記第2部品は長手方向のサイズが4mm以上であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一つに記載のダイボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンディング装置およびダイボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイボンディング装置は、支持基材などの第1部品に半導体素子のチップなどの第2部品をボンディングするために用いられる(特許文献1、2参照)。ダイボンディング装置では、通常、第1部品を加熱してその表面に塗布されたロウ材を溶融、もしくは加熱ヒーター上で第一部品にロウ材を供給、加熱により溶融させ、これに第2部品を接触させてボンディングを行う。ボンディングに用いられるロウ材は、たとえば半田や導電性接着剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4935491号公報
【特許文献2】特開2009−81218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1部品の表面のロウ材の温度に対してボンディング直前の第2部品の温度が低い場合、ボンディング時にロウ材が短時間で固化してしまい、ロウ材と第2部品との濡れ性が不十分のままボンディングが完了してしまう可能性がある。この場合、第1部品と第2部品との熱抵抗が大きくなり、第2部品の特性および信頼性を低下させる可能性があるという問題がある。また、第2部品が、長共振器型の半導体レーザ素子のチップや、半導体レーザがアレイ状に配列されたレーザバー素子のチップなどのようにサイズが大きい場合、チップの長手方向に反りが生じて局所的に濡れ性が不十分な箇所が存在したままボンディングが完了してしまう場合がある。この場合も、チップの特性および信頼性を低下させる可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品の特性および信頼性を低下させることなく好適なボンディングを実施できるダイボンディング装置およびダイボンディング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、第1部品に第2部品をボンディングするダイボンディング装置であって、前記第1部品が載置領域に載置される載置台と、前記載置台の下側に設けられたヒータと、前記載置台の載置領域を囲むように設けられた側壁と、前記第1および第2部品が通過可能な大きさの孔を有し、前記側壁に載置される蓋と、前記第2部品を先端部にて真空チャックすることにより保持可能なコレットと、前記コレットを、前記コレットが保持した前記第2部品が前記孔を通過して前記第1部品にボンディングされるように移動させる移動機構と、前記側壁に設けられ、前記側壁と前記蓋とで形成される加熱空間に加熱ガスを供給するガス供給管と、を備え、前記蓋は、前記ヒータおよび前記加熱ガスにより生じる赤外線輻射を反射、もしくは吸収・再輻射することができる材料を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記蓋は前記材料からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記蓋は前記材料からなる層を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記材料は、金属、セラミック、耐熱樹脂およびカーボンの少なくとも一つであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記側壁は多層構造を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記ガス供給管は、前記加熱ガスが、前記蓋側からみて前記蓋の孔を避けるような方向に噴射するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記ガス供給管は、前記加熱ガスが、前記載置台側に向けて噴射するように設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記加熱ガスは、不活性ガス、還元性ガス、または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスであることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記コレットは、真空チャックする面積が、前記第2部品が真空チャックされる面の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記コレットは丸コレットであることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記コレットの先端部が樹脂からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るダイボンディング装置は、前記第2部品は長手方向のサイズが4mm以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係るダイボンディング方法は、第1部品に第2部品をボンディングするダイボンディング方法であって、前記第1部品を載置台の載置領域に載置する載置工程と、前記第1部品をヒータで加熱する加熱工程と、前記載置台と、前記載置台の載置領域を囲むように設けられた側壁と、前記第1および第2部品が通過可能な大きさの孔を有し前記側壁に載置される蓋と、で形成される加熱空間に加熱ガスを供給するガス供給工程と、前記蓋の孔に、コレットで保持した前記第2部品を通過させて前記加熱空間内に導入し、前記第2部品を前記第1部品に接触させてボンディングを行うボンディング工程と、を含み、前記蓋は、前記ヒータおよび前記加熱ガスにより生じる赤外線輻射を反射、もしくは吸収・再輻射することができる材料を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係るダイボンディング方法は、前記加熱空間内で前記第2部品を第1速度で移動させ、その後、前記第1速度より速い第2速度で前記第2部品を移動させて前記第1部品に接触させることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係るダイボンディング方法は、前記加熱空間内で前記第2部品を停止させ、その後、前記第2部品を移動させて前記第1部品に接触させることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係るダイボンディング方法は、前記第2部品は長手方向のサイズが4mm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、部品の特性および信頼性を低下させることなく好適なボンディングを実施できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係るダイボンディング装置の模式的な一部切欠側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すダイボンディング装置の模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すダイボンディング装置を用いたダイボンディング方法を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すダイボンディング装置を用いたダイボンディング方法を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、半導体チップとコレットの先端部との関係を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、ガス供給管の配置例1を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、ガス供給管の配置例2を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、コレットの他の構成例を説明する模式図である。
【
図9】
図9は、蓋の他の構成例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るダイボンディング装置の模式的な一部切欠側面図である。
図2は、
図1に示すダイボンディング装置の模式的な平面図である。ダイボンディング装置100は、後述するように、第1部品であるサブマウントに第2部品である半導体レーザ素子のチップ(以下、半導体チップと記載する場合がある)をボンディングし、チップオンサブマウントを製造するものである。
【0026】
ダイボンディング装置100は、載置台1と、ヒータ2と、側壁3と、蓋4と、コレット5と、コレット5の移動機構6と、ガス供給管7と、位置調整用アーム8、9と、を備えている。
【0027】
載置台1は、ステンレス鋼からなるが、銅などのその他の金属材料でもよい。載置台1は、表面にサブマウントが載置される載置領域1aを有する。また、載置台1の載置領域1aには、真空ポンプに繋がっている吸引孔1bが形成されている。
【0028】
ヒータ2は、載置台1の載置領域1aの下側に設けられている。側壁3は、載置台1の載置領域1aを囲むように設けられており、離間して配置された金属板材3aと金属板材3bとの2層で構成された多層構造を有する。金属板材3a、3bは、ステンレス鋼からなるが、銅などのその他の金属材料からなるものでもよい。
【0029】
蓋4は、側壁3に載置されている。蓋4は、ステンレス鋼からなる板状部材であるが、銅などのその他の金属材料からなる板状部材でもよい。蓋4は、サブマウントおよび半導体チップが通過可能な大きさの孔4aを有している。側壁3と蓋4とが加熱空間HSを形成している。なお、蓋4は側壁3には固定されておらず、着脱可能である。これにより、蓋4を取り外して、加熱空間HSをメインテナンス(清掃や調整等)しやすくなっている。また、蓋4を側壁3と一体化する構造、もしくはガスや輻射による熱の漏れを防ぐ構造としてもよい。また、蓋4を側壁3に載置した状態では、蓋4の孔4aが載置台1の載置領域1aの上方に位置するようになっている。
【0030】
コレット5は、金属からなる本体部5aとポリイミド樹脂からなる先端部5bとを有しており、先端部5bの先端面が丸い丸コレットである。また、コレット5には、先端部5bの先端面で開口し、真空ポンプに繋がっている吸引孔5cが形成されている。コレット5は、半導体チップを吸引孔5cで吸引して真空チャックすることにより、先端部5bにて半導体チップを保持可能である。
【0031】
移動機構6は、コレット5が取り付けられており、コレット5を移動させるための機構である。移動機構6には、吸引孔5cと真空ポンプとを繋ぐ吸引孔6aが形成されている。
【0032】
ガス供給管7は、側壁3を貫通するように設けられ、加熱空間HSに加熱ガスを供給する。位置調整用アーム8、9は、側壁3を貫通し、かつ互いに直交する方向に移動自在に設けられている。具体的には、位置調整用アーム8は
図2の紙面左右方向に移動自在であり、位置調整用アーム9は
図2の紙面上下方向に移動自在である。位置調整用アーム8、9は、載置台1の載置領域1aに載置されたサブマウントの位置調整を行うためのものである。
【0033】
なお、ダイボンディング装置100には、サブマウントを載置台1の載置領域1aに移動させ、載置するための、不図示の搬送機構を有する。
【0034】
つぎに、
図3、4を参照して、ダイボンディング装置100を用いたダイボンディング方法を説明する。
【0035】
まず、
図3に示すように、搬送機構によりサブマウントMを蓋4の孔4aを通過させて、載置台1の載置領域1aに載置する載置工程を行う。サブマウントMは、基板M1の表面に電極層M2とロウ材層M3(本実施形態ではAuSn半田層)とが順次形成されたものである。載置後に、位置調整用アーム8、9を、初期位置から
図3の矢印の方向に前進させ、サブマウントMの載置位置を微調整する。つづいて、
図4に矢印で示すように、載置台1の吸引孔1bから真空ポンプでサブマウントMを吸引し、真空チャックする。
【0036】
つづいて、サブマウントMをヒータ2で加熱する加熱工程を行う。つづいて、
図4に矢印で示すように、ガス供給管7から加熱空間HSに加熱ガスGを噴射して供給するガス供給工程を行う。これにより、加熱空間HS内が加熱される。加熱空間HS内の温度は、半導体チップCがボンディングのために適切な温度となるように設定する。また、ヒータ2の出力を調整し、サブマウントMを、ロウ材層M3が溶解する温度とする。なお、ロウ材層M3の温度が低いと、ボンディングの際にロウ材層M3が必要以上に短時間で固化してしまう場合がある。一方、温度が高いと、ロウ材層M3が変質する場合がある。たとえば、ロウ材層M3がAuSn半田層の場合、温度が高いと融点の高い化合物となり、固化してしまう場合がある。これらの問題を防止するために、ロウ材層M3が適切な温度になるようにヒータ2の出力を調整する。
【0037】
ここで、ヒータ2および加熱ガスGにより加熱空間HS内が加熱されることにより、載置台1や側壁3から赤外線輻射が生じる。本実施形態のダイボンディング装置100では、蓋4が金属材料であるステンレス鋼からなるので、蓋4は赤外線輻射を反射もしくは吸収・再輻射する。その結果、加熱空間HS内の温度の低下が抑制される。
【0038】
つづいて、ボンディング工程を行う。具体的には、移動機構6により、蓋4の孔4aに、コレット5の真空チャックにより保持した半導体チップCを通過させて、加熱空間HS内に導入する。半導体チップCは加熱空間HS内で予備加熱される。その後、コレット5により半導体チップCをサブマウントMのロウ材層M3に接触させて押圧し、ボンディングを行う。その後、サブマウントMをダイボンディング装置100から取り出し、電極層M2と半導体チップCとの間に所定の配線工程を行うことで、チップオンサブマウントが製造される。
【0039】
なお、加熱工程から半導体チップCをサブマウントMのロウ材層M3に接触させて押圧し、ボンディングを行うまでの時間は、ロウ材層M3が変質しない程度の時間とする。
【0040】
また、半導体チップCを確実に適切な温度に加熱するために、加熱空間HS内で半導体チップCを比較的遅い第1速度で移動させ、その後、第1速度より速い第2速度で半導体チップCをサブマウントMに接触させてもよい。また、加熱空間HS内で半導体チップCを所定時間だけ一旦停止させ、その後、半導体チップCを移動させてサブマウントMに接触させてもよい。
【0041】
本実施形態に係るダイボンディング装置100では、蓋4が赤外線輻射を反射もしくは吸収・再輻射する結果、加熱空間HS内の温度の低下が抑制される。そのため、サブマウントMのロウ材層M3の温度に対して、ボンディング直前の半導体チップCの温度が適切に保たれる。これにより、ボンディング時にロウ材層M3と半導体チップCとの濡れ性が十分な状態で、ロウ材層M3が凝固しボンディングが完了する。その結果、半導体チップCとサブマウントMとの熱抵抗が大きくなることが抑制または防止されるので、半導体チップCの特性の低下が抑制または防止され、および信頼性が向上する。
【0042】
蓋4については、側壁3との間の隙間を減らすために、重い方がよい。隙間を減らすことで、隙間からの加熱ガスGの流出を抑制できる。
【0043】
なお、仮に蓋4をガラスなどの透明な材質の蓋にすると、ボンディング作業の視認性はよいが、蓋が赤外線輻射を透過してしまうため、サブマウントMのロウ材層M3の温度に対してボンディング直前の半導体チップCの温度が低くなってしまい、ボンディング不良による熱抵抗の増加が発生する場合がある。
【0044】
特に、半導体チップCのサイズが大きい(たとえば長手方向のサイズが4mm以上)場合、チップの長手方向で反りが生じている場合がある。この場合に半導体チップCの温度が低いと、半導体チップCのうち、ロウ材層M3と先に接触してしまう領域があり、かつその領域では接触した瞬間にロウ材層M3の温度が低下し、固化してしまう場合がある。このような場合、後からロウ材層M3に接触した領域は局所的に濡れ性が不十分になる場合がある。これに対して、ダイボンディング装置100では、ボンディング直前の半導体チップCの温度が適切に保たれるので、上記のような局所的に濡れ性が不十分な箇所が発生することが抑制または防止される。
【0045】
また、ダイボンディング装置100では、側壁3が多層構造を有しているので、加熱空間HS内の熱が放熱されにくくなり、温度の低下がより一層抑制される。
【0046】
また、加熱空間HSの体積は、加熱空間HS内の温度を高温かつ均一にするために、サブマウントMや半導体チップCのサイズと比較して必要以上に大きくせず、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0047】
また、ガス供給管7から供給する加熱ガスGは、本実施形態では窒素ガスであるが、たとえば、アルゴンガスなどのその他の不活性ガス、水素ガスなどの還元性ガス、または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスでもよい。加熱ガスGが還元性ガスの場合、ロウ材層M3の酸化が防止される効果がある。また、加熱ガスGは空気でもよい。
【0048】
また、ダイボンディング装置100では、コレット5において半導体チップCと接触する部分である先端部5bが樹脂からなり、熱伝導率が金属よりも小さい。その結果、半導体チップCの熱がコレット5に伝導して半導体チップCの温度が低下することが抑制または防止される。また、先端部5bが樹脂からなることで、半導体チップCと先端部5bとの間の密着性が高くなり、隙間が減少する。その結果、隙間からガスが流入して半導体チップCの温度を低下させることが抑制または防止される。なお、樹脂として硬度の低いものを用いることで、隙間を減少させる効果がより高まる。さらに、先端部5bが樹脂からなることで、真空チャック時などに半導体チップCがコレット5から衝撃を受けることも抑制または防止される。好ましい樹脂の例は、耐熱性および硬度の点からポリイミドであるが、その他の樹脂でもよい。
【0049】
また、ダイボンディング装置100では、コレット5は丸コレットである。
図5は、半導体チップCとコレット5の先端部5bとの関係を説明する模式図である。
図5に示すように、コレット5の先端部5bの先端面の面積は、半導体チップCが真空チャックされる面の面積よりも小さい。したがって、コレット5が半導体チップCを真空チャックする面積である吸引孔5cの面積も、半導体チップCが真空チャックされる面の面積よりも小さい。これにより、コレット5が半導体チップCを真空チャックしたときに吸引孔5cが半導体チップCからはみ出して、そこからガスが流入することが防止される。丸コレットであれば、吸引孔5cの面積を小さくしやすいので好ましい。
【0050】
(ガス供給管の他の配置例)
図6は、ガス供給管の他の配置例である配置例1を説明する模式図である。
図6に示す配置例1では、ガス供給管7は、加熱ガスGが、ダイボンディング装置100を蓋4側から見た場合に、蓋4の孔4aを避けるような方向に噴射するように設けられている。この配置例1によれば、ガス供給管7から噴射された加熱ガスGは、直線的に孔4aに到達してそこから加熱空間HSの外部に流出せず、加熱空間HS内に長く滞留しやすくなる。その結果、加熱空間HSを効果的に加熱できる。
【0051】
図7は、ガス供給管の配置例2を説明する模式図である。
図7に示す配置例2では、ガス供給管7は、加熱ガスGが、載置台1側に向けて噴射するように設けられている。この配置例2によれば、加熱ガスGは加熱空間HS内に長く滞留しやすくなり、加熱空間HSを効果的に加熱できる。さらに、加熱ガスGによりサブマウントMも効果的に加熱できる。
【0052】
(コレットの他の構成例)
図8は、コレットの他の構成例を説明する模式図である。
図8(a)は側面から見た図であり、
図8(b)は、
図5と同様に半導体チップとコレットの先端部との関係を説明する模式図である。コレット5Aは、金属からなる本体部5aとポリイミド樹脂からなる先端部5Abとを有しており、先端部5Abの先端面が長方形状である平コレットである。コレット5と同様に、コレット5Aには、先端部5Abの先端面に開口し、真空ポンプに繋がっている吸引孔5Acが形成されている。コレット5Aは、半導体チップCを吸引孔5Acで吸引して真空チャックすることにより、先端部5Abにて半導体チップCを保持可能である。
【0053】
コレット5Aの先端部5Abの先端面の面積は、半導体チップCが真空チャックされる面の面積よりも小さい。したがって、コレット5Aが半導体チップCを真空チャックする面積である吸引孔5Acの面積も、半導体チップCが真空チャックされる面の面積よりも小さい。これにより、コレット5Aが半導体チップCを真空チャックしたときに吸引孔5Acが半導体チップCからはみ出して、そこからガスが流入することが防止される。
【0054】
なお、
図8のような形状の平コレットを用いる場合、半導体チップCを長手方向に沿って面的にチャックできるので、チャックされた状態では半導体チップCの反りが小さくなるという効果がある。ただし、吸引孔5Acの外周の長さも大きくなるので、半導体チップCと吸引孔5Acとの間に隙間ができやすくなり、そこからガスが流入して半導体チップCの温度を低下させる場合がある。しがって、反りを小さくする効果と隙間ができやすくなることの影響とを勘案して先端部5Abの形状を設定すべきである。
【0055】
(蓋の他の構成例)
図9は、蓋の他の構成例を説明する模式図である。孔4Aaを有する蓋4Aは、ステンレス鋼からなる板状部材4A1と、ガラスからなる板状部材4A2とを貼り合わせた2層構造となっている。このように、蓋は、赤外線輻射を反射もしくは吸収・再輻射することができる材料からなる層を含む構成としてもよく、当該材料を含む構成としてもよい。なお、赤外線輻射を反射もしくは吸収・再輻射することができる材料としては、金属、セラミック、各種耐熱樹脂材料およびカーボンの少なくとも一つである。また、蓋は、これらの材料のうち2種以上を含む構成としてもよい。
【0056】
(実施例、比較例)
実施例1として、実施形態に係るダイボンディング装置100の構成においてコレットを平コレットとしたダイボンディング装置を用いて、長さが1mm〜5mmの半導体チップをサブマウントにダイボンディングし、チップオンサブマウントをそれぞれ複数サンプル作製した。一方、比較例として、実施例1のダイボンディング装置の構成において蓋をガラス板としたダイボンディング装置を用いて、長さが1mm〜5mmの半導体チップをサブマウントにダイボンディングし、チップオンサブマウントを複数サンプル作製した。その後、作製したチップオンサブマウントのサブマウントから半導体チップを剥がし、ボンディング状態を確認した。比較例と実施例1の差は蓋の材質のみである。その結果を表1に示す。なお、加熱空間内の温度(予備加熱温度)は100℃〜440℃の間で変更したが、表1では420℃の結果を示している。
【0058】
表1に示すように、比較例の場合、半導体チップの長さが1mm〜2mmの場合は全てのサンプルでボンディング状態が良好であった(「〇」の記号で示す)が、長さが3mmの場合はボンディング状態が不良なサンプルがあり(「△」の記号で示す)、長さが4mm〜5mmの場合は全てのサンプルでボンディング状態が不良であった(「×」の記号で示す)。一方、実施例1の場合、全ての長さの半導体チップの全てのサンプルでボンディング状態が良好であった。なお、ボンディング状態が良好である場合とは、半導体チップを剥がした後にサブマウント側に残るチップの痕跡の割合が、チップサイズの90%以上である場合とした。
【0059】
つぎに、実施例2として、実施形態に係るダイボンディング装置100の構成(すなわち丸コレットを用いた構成)のダイボンディング装置を用いて、長さが4mmの半導体チップをサブマウントにダイボンディングし、チップオンサブマウントをそれぞれ複数サンプル作製した。さらに、実施例3として、実施例2の構成のダイボンディング装置を用いて、長さが4mmの半導体チップをサブマウントにダイボンディングし、チップオンサブマウントをそれぞれ複数サンプル作製した。ただし、実施例3では、実施例1、2と比較して、サブマウントにおけるロウ材(AuSn半田)の体積を1.5〜3倍へ増大させた。その後、作製したチップオンサブマウントのサブマウントから半導体チップを剥がし、ボンディング状態を確認した。その結果を比較例の結果、および実施例1で半導体チップの長さが4mmの場合の結果とともに表2に示す。
【0061】
表2に示すように、比較例で半導体チップの長さが4mm以上の場合は、全ての温度かつ全てのサンプルでボンディング状態が不良であった。しかし、実施例1の場合は、400℃〜420℃の温度範囲において、全てのサンプルでボンディング状態が良好であった。さらに、実施例2の場合は、380℃〜420℃の温度範囲において、全てのサンプルでボンディング状態が良好であった。さらに、実施例3の場合は、360℃〜420℃の温度範囲において、全てのサンプルでボンディング状態が良好であった。
【0062】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係るダイボンディング装置およびダイボンディング方法は、例えば半導体チップのダイボンディングに適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0064】
1 載置台
1a 載置領域
1b 吸引孔
2 ヒータ
3 側壁
3a、3b 金属板材
4、4A 蓋
4A1、4A2 板状部材
4a、4Aa 孔
5、5A コレット
5b、5Ab 先端部
5c、5Ac、6a 吸引孔
5a 本体部
6 移動機構
7 ガス供給管
8、9 位置調整用アーム
100 ダイボンディング装置
C 半導体チップ
G 加熱ガス
HS 加熱空間
M サブマウント
M1 基板
M2 電極層
M3 ロウ材層
【国際調査報告】