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再表2017-94789自己融着性絶縁電線、コイル及び電気・電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年6月8日
【発行日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】自己融着性絶縁電線、コイル及び電気・電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20180824BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20180824BHJP
【FI】
   H01B7/02 B
   H01F5/06 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2017-554149(P2017-554149)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-238082(P2015-238082)
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509216094
【氏名又は名称】古河マグネットワイヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀雄
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309NA04
5G309NA05
(57)【要約】
断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂層を有し、該熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有する自己融着性絶縁電線であって、
前記融着層が、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)と、軟化点50℃以上250℃以下のエポキシ樹脂(a2)と、イミダゾール系硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物からなり、
前記硬化性樹脂組成物中、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の含有量の比が、(a1):(a2)=71:29〜95:5(質量比)を満たし、且つ、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の総含有量100質量部に対する前記イミダゾール系硬化剤の含有量が2質量部未満であり、
前記硬化性樹脂組成物が、硬化させた後の85℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaである自己融着性絶縁電線、この絶縁電線からなるコイル、及び、電気・電子機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂層を有し、該熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有する自己融着性絶縁電線であって、
前記融着層が、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)と、軟化点50℃以上250℃以下のエポキシ樹脂(a2)と、イミダゾール系硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物からなり、
前記硬化性樹脂組成物中、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の含有量の比が、(a1):(a2)=71:29〜95:5(質量比)を満たし、且つ、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の総含有量100質量部に対する前記イミダゾール系硬化剤の含有量が2質量部未満であり、
前記硬化性樹脂組成物が、硬化させた後の85℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaである、自己融着性絶縁電線。
【請求項2】
断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂層を有し、該熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有する自己融着性絶縁電線であって、
前記融着層が、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)と、軟化点50℃以上250℃以下のエポキシ樹脂(a2)と、イミダゾール系硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物からなり、
前記硬化性樹脂組成物中、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の含有量の比が、(a1):(a2)=71:29〜95:5(質量比)を満たし、且つ、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の総含有量100質量部に対する前記イミダゾール系硬化剤の含有量が2質量部未満であり、
前記硬化性樹脂組成物が、硬化させた後の130℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaである、自己融着性絶縁電線。
【請求項3】
前記樹脂(a1)が分子内にエポキシ基を2つ以上有する、請求項1又は2記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項4】
前記樹脂(a1)の重量平均分子量が10,000〜100,000である、請求項1〜3のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項5】
前記樹脂(a1)のエポキシ当量が3000〜20000g/eqであり、前記樹脂(a2)のエポキシ当量が150〜2500g/eqである、請求項1〜4のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項6】
前記融着層の厚みが2〜100μmである、請求項1〜5のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の融点が250℃以上である、請求項1〜6のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂層が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリエーテルエーテルケトン及び熱可塑性ポリイミドから選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる層である、請求項1〜7のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線からなるコイル。
【請求項10】
請求項9記載のコイルを有する電気・電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線、コイル及び電気・電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ関連機器、例えば高速スイッチング素子、インバータモーター、変圧器等の電気・電子機器用コイルには、マグネットワイヤとして、いわゆるエナメル線からなる絶縁電線(絶縁ワイヤ)や、エナメル樹脂からなる層と、エナメル樹脂とは別種の樹脂からなる被覆層とを含む多層の被覆層を有する絶縁電線等が用いられている。
【0003】
電気・電子機器用コイルにおいて絶縁電線(巻線)を固定化したり、絶縁性を高めたりするために、ステータコアに配置したコイルにワニスを含浸させ、次いでワニスを乾燥して硬化させることが行われている。また、ワニスを用いずに巻線を固定化する技術も知られている。例えば特許文献1には、エナメル線の上層に、融点が170℃以上の共重合ポリアミド樹脂に酸化防止剤を添加した塗料からなる融着層を設けた自己融着性エナメル線が記載されている。また特許文献2には、導体上に直接又は他の絶縁物を介して融着層を設けた自己融着性エナメル線が記載され、当該融着層を特定構造のスルホン基含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂と芳香族無水物とで形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−358836号公報
【特許文献2】特開平11−297124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、絶縁電線にはより高度な耐熱性が求められるようになってきた。小型化ないし高性能化された回転電機等では、その高効率化から使用電圧が高く設定され、それに伴って発熱量も増大している。また、小型化された回転電機等では十分な放熱性を確保することも難しい。したがって、回転電機等に用いる絶縁電線には、例えば200℃以上の高温に曝されても、巻線の固定化状態(固着状態)を安定的に維持でき、初期の性能を持続的に発現可能な特性が求められるようになってきている。しかし、上記特許文献1及び2記載の自己融着性エナメル線は、高温の熱環境に曝されると固着した融着層の固着状態が緩みやすく、例えば200℃以上という高温環境においては巻線の固着状態を安定に維持するのは困難であった。
また、回転電機等はその使用環境においてオイルに曝されるために、巻線の固着状態が油に曝されても安定して維持されることが求められる。
【0006】
また、小型化又は高性能化された電気・電子機器(単に電気機器ともいう)においては、絶縁電線を加工(例えば、巻線加工(コイル加工))してなる巻線(コイル)を非常に狭い部分へ押し込んで使用するような使い方が多く見られるようになっている。例えば、回転電機や変圧器等の電気機器においては、コイルをステータコアのスロット中に何本入れられるかにより、その性能が決定されるといっても過言ではない。これらの電気機器に用いる絶縁電線は複雑に、かつ小さな屈曲半径で曲げ加工される。したがって、樹脂被覆層には高度な耐折性が要求される。
【0007】
本発明は、最外被覆層として融着層を有する絶縁電線であって、曲げ加工によっても被覆層に亀裂が生じにくく耐折性に優れ、且つ、固着させた融着層が高温環境に曝しても強固な固着状態を安定に維持でき、さらに油中に浸漬しても固着状態を安定に保つことができる絶縁電線、当該絶縁電線を用いたコイル、当該コイルを用いた電気・電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、断面が矩形の導体上に熱可塑性樹脂層を設け、当該熱可塑性樹脂層の外周にさらに、エポキシ基含有フェノキシ樹脂と特定のエポキシ樹脂とを特定比で含み、且つイミダゾール系硬化剤を含んでなる熱硬化性の融着層を設けた絶縁電線が、折り曲げても亀裂が生じにくく耐折性に優れること、熱硬化して固着させた融着層の固着状態が高温環境に曝しても安定して維持できること、さらに油中に浸漬しても上記固着状態を安定に維持できることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
〔1〕
断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂層を有し、該熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有する自己融着性絶縁電線であって、
前記融着層が、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)と、軟化点50℃以上250℃以下のエポキシ樹脂(a2)と、イミダゾール系硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物からなり、
前記硬化性樹脂組成物中、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の含有量の比が、(a1):(a2)=71:29〜95:5(質量比)を満たし、且つ、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の総含有量100質量部に対する前記イミダゾール系硬化剤の含有量が2質量部未満であり、
前記硬化性樹脂組成物が、硬化させた後の85℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaである、自己融着性絶縁電線。
〔2〕
断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂層を有し、該熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有する自己融着性絶縁電線であって、
前記融着層が、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)と、軟化点50℃以上250℃以下のエポキシ樹脂(a2)と、イミダゾール系硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物からなり、
前記硬化性樹脂組成物中、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の含有量の比が、(a1):(a2)=71:29〜95:5(質量比)を満たし、且つ、前記樹脂(a1)と前記樹脂(a2)の総含有量100質量部に対する前記イミダゾール系硬化剤の含有量が2質量部未満であり、
前記硬化性樹脂組成物が、硬化させた後の130℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaである、自己融着性絶縁電線。
〔3〕
前記樹脂(a1)が分子内にエポキシ基を2つ以上有する、〔1〕又は〔2〕記載の自己融着性絶縁電線。
〔4〕
前記樹脂(a1)の重量平均分子量が10,000〜100,000である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
〔5〕
前記樹脂(a1)のエポキシ当量が3000〜20000g/eqであり、前記樹脂(a2)のエポキシ当量が150〜2500g/eqである、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
〔6〕
前記融着層の厚みが2〜100μmである、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
〔7〕
前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の融点が250℃以上である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
〔8〕
前記熱可塑性樹脂層が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリエーテルエーテルケトン及び熱可塑性ポリイミドから選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂からなる層である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の自己融着性絶縁電線からなるコイル。
〔10〕
〔9〕記載のコイルを有する電気・電子機器。
【0010】
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自己融着性絶縁電線は、最外被覆層として熱硬化性の融着層を有し、折り曲げても樹脂被覆層に亀裂が生じにくく耐折性に優れる。また、熱硬化により対象物と固着した融着層は、その固着状態を、高温環境に曝されても、また油中に浸漬しても、安定的に維持することができる。また本発明のコイル、当該コイルを用いた電気・電子機器は、高温環境においても巻線の強固な固着状態を安定して維持することができ、過酷環境下で使用しても優れた性能を持続的に発現することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の絶縁電線の好ましい形態を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の絶縁電線の別の好ましい形態を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の絶縁電線のさらに別の好ましい形態を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略斜視図である。
図5図5は、本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[自己融着性絶縁電線]
本発明の自己融着性絶縁電線(以下「本発明の絶縁電線」ともいう)は、断面が矩形の導体の外周に熱可塑性樹脂からなる層(熱可塑性樹脂層という)を有し、この熱可塑性樹脂層の外周に熱硬化性の融着層を有している。上記熱可塑性樹脂層は上記導体の外周に直接設けられていてもよいし、絶縁層を介して設けられていてもよい(すなわち導体と熱可塑性樹脂層との間に絶縁層を有してもよい)。また、上記融着層は上記熱可塑性樹脂層の外周に直接設けられていてもよいし、熱硬化性樹脂からなる層(熱硬化性樹脂層という)を介して設けられていてもよい(すなわち熱可塑性樹脂層と融着層との層間に熱硬化性樹脂層を有してもよい)。本発明の絶縁電線を構成する導体、各樹脂被覆層の組成については後述する。
【0014】
本発明において、「樹脂(樹脂Z)からなる層」という場合、樹脂Zのみから形成された層と、樹脂Zと他の成分(例えば、樹脂Z以外の樹脂又は添加剤)とで形成された層との両態様を包含する意味に用いる。ここで、樹脂Zからなる層中における上記「他の成分」の含有率は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではなく、通常は、0質量%より大きく、5質量%以下である。
【0015】
以下、本発明の絶縁電線の好ましい実施形態を、図面を参照して説明するが、本発明は、本発明で規定されること以外は下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各部材のサイズ、厚み、ないしは相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
【0016】
図1に断面図を示した本発明の好ましい絶縁電線1は、導体11と、導体11の外周面に形成された樹脂被覆層14とを有する。
導体11は、断面形状が矩形(平角形状)になっている。本発明において、断面が矩形である導体は、断面が長方形の導体と、断面が正方形の導体とを包含する。
樹脂被覆層14は、導体11の外周面と接触する最も内側の樹脂層として熱可塑性樹脂層12と、熱可塑性樹脂層12の外周面と接触する融着層13とからなる2層構造になっている。樹脂被覆層14の総厚は40〜250μmに設定されていることが好ましい。
本明細書において、樹脂被覆層ないし樹脂被覆層を構成する各樹脂層の厚さは、電線をその長手軸方向に対して垂直に切断した断面をマイクロスコープを用いて観察し、測定対象の樹脂層に隣接する内側の層(測定対象の樹脂層が導体と接している場合は導体)の外周から測定対象の樹脂層の外周までの最短距離を、無作為に選択した16点について測定し、それらの平均値として算出される値である。
【0017】
図2に断面図を示した本発明の好ましい絶縁電線2は、導体21と熱可塑性樹脂層23との間に絶縁層22を有すること以外は、絶縁電線1と同じ構成である。すなわち、絶縁電線2は、導体21と導体21の外周面に形成された樹脂被覆層25とを有する。この樹脂被覆層25は、導体11の外周面と接触する最も内側の樹脂層として絶縁層22と、絶縁層22の外周面と接触する熱可塑性樹脂層23と、熱可塑性樹脂層23の外周面と接触する融着層24とからなる3層構造になっている。樹脂被覆層25の総厚は50〜300μmに設定されていることが好ましい。
【0018】
図3に断面図を示した本発明の好ましい絶縁電線3は、熱可塑性樹脂層32と融着層34の間に熱硬化性樹脂層33を有すること以外は、絶縁電線1と同じ構成である。すなわち、絶縁電線3は、導体31と導体31の外周面に形成された樹脂被覆層35とを有する。この樹脂被覆層35は、導体11の外周面と接触する最も内側の樹脂層として熱可塑性樹脂層32と、熱可塑性樹脂層32の外周面と接触する熱硬化性樹脂層33と、熱硬化性樹脂層33の外周面と接触する融着層34とからなる3層構造になっている。樹脂被覆層35の総厚は50〜300μmに設定されていることが好ましい。
また、絶縁電線3の形態において、導体31と熱可塑性樹脂層32との間に上述した絶縁層(図3には図示していない)を有する形態も本発明の絶縁電線として好ましく採用できる。
【0019】
<導体>
本発明に用いる導体としては、従来、絶縁電線で用いられているものを使用することができ、銅線、アルミニウム線等の金属導体が挙げられる。好ましくは、酸素含有量が30ppm以下の低酸素銅、さらに好ましくは20ppm以下の低酸素銅又は無酸素銅の導体である。酸素含有量が30ppm以下であれば、導体を溶接するために熱で溶融させた場合、溶接部分に含有酸素に起因するボイドの発生がなく、溶接部分の電気抵抗が悪化することを防止するとともに溶接部分の強度を保持することができる。
【0020】
本発明で使用する導体は、その断面形状が矩形(平角形状)である。平角形状の導体は、円形のものと比較し、巻線時にステータコアのスロットに対する占積率を高めることができる。
平角形状の導体は、角部からの部分放電を抑制する点において、図1図3に示すように、4隅に面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2〜0.4mmがより好ましい。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1〜5mmが好ましく、1.4〜4.0mmがより好ましく、厚み(短辺)は0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚み(短辺)の長さの割合(厚み:幅)は、1:1〜1:4が好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3〜3.0mmが好ましく、0.4〜2.7mmが好ましい。
【0021】
<熱可塑性樹脂層12、23、32>
熱可塑性樹脂層12、23、32を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロンともいう)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、超高分子量ポリエチレン等の汎用エンジニアリングプラスチックの他、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、変性PEEK、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、熱可塑性ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等のスーパーエンジニアリングプラスチック、さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)をベース樹脂とするポリマーアロイ、ABS/ポリカーボネート、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンエーテル/ナイロン6,6、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリカーボネート等の上記エンジニアリングプラスチックを含むポリマーアロイが挙げられる。
【0022】
なかでも、結晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。結晶性の熱可塑性樹脂としては、上記熱可塑性樹脂のうち、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン等の汎用エンジニアリングプラスチック、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、PEEK、変性PEEK、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
さらに、高耐熱性(250℃以上の高融点)の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、この観点からは、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、PEEK、変性PEEK、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド(特にナイロン6,6)、ポリエーテルケトン、熱可塑性ポリイミドを用いることが好ましく、ポリフェニレンスルフィド、PEEK、変性PEEK、及び熱可塑性ポリイミドから選ばれる樹脂を用いることがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0023】
熱可塑性樹脂層12、23、32の厚さは、特に限定されないが、例えば、30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0024】
<融着層13、24、34>
融着層13、24、34は熱硬化性の層である。融着層を加熱して硬化することにより融着層に接する対象物と融着層とを固着させることができ、結果、絶縁電線を当該対象物に固定化することができる。融着層13、24、34は、エポキシ基含有フェノキシ樹脂と特定の軟化点を有するエポキシ樹脂とを特定比で組み合わせて含み、さらにイミダゾール系硬化剤を含む硬化性樹脂組成物で構成されている。かかる構成により、融着層を固着させた後、この固着状態を高温環境に曝しても、油中に浸漬しても、安定に固着力を維持することが可能となる。融着層13、24、34を構成する樹脂について説明する。
【0025】
−エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)−
エポキシ基含有フェノキシ樹脂(a1)(以下、単に「樹脂(a1)」ともいう。)とは、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる樹脂である。樹脂(a1)は分子内にエポキシ基を有し(好ましくは分子内にエポキシ基を2つ以上有する)、このエポキシ基を介して架橋構造を形成させることにより硬化する特性を有する。
樹脂(a1)の重量平均分子量(Mw)は10,000〜100,000が好ましく、より好ましくは30,000〜80,000である。重量平均分子量はGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)を用いて測定することができる。
【0026】
樹脂(a1)は、エポキシ当量(1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数)が3000〜20000g/当量(eq)が好ましく、3000〜16000g/当量(eq)がより好ましい。エポキシ当量を上記好ましい範囲内とすることにより、粘度が適度に抑えられて作業性がより向上し、また硬化後の耐熱性もより高めることができる。
【0027】
上記樹脂(a1)は、そのガラス転移点(Tg)が120〜250℃が好ましく、130〜180℃がより好ましい。ガラス転移点は後述する[実施例]に記載の方法により測定される。
【0028】
上記特性を有する樹脂(a1)は常法により調製することができ、市販品を用いることもできる。樹脂(a1)として用いうる市販品としては、例えば、YX7200B35(商品名、三菱化学社製)、YX6954BH30(商品名、三菱化学社製)、フェノトートYP−50S(商品名、新日鉄住金化学社製)、フェノトートYP−70(商品名、新日鉄住金化学社製)を挙げることができる。
上記融着層中に存在する樹脂(a1)は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0029】
−エポキシ樹脂(a2)−
融着層13、24、34は、上記樹脂(a1)に加えて、軟化点50℃以上250℃以下(すなわち常温(25℃)で固体)のエポキシ樹脂(a2)(以下、単に樹脂(a2)ともいう。)を含有する。樹脂(a1)と樹脂(a2)は、互いに異なる樹脂である。樹脂(a2)の軟化点は50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。軟化点は後述する[実施例]に記載の方法により測定される。
【0030】
樹脂(a2)のエポキシ当量は150〜2500g/当量(eq)が好ましく、400〜2000g/当量(eq)がより好ましい。
【0031】
樹脂(a2)は上記軟化点を有すれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールメタン型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環式の各エポキシ樹脂を挙げることができる。なかでもクレゾールノボラック型やビスフェノールA型が好ましい。
また、樹脂(a2)の重量平均分子量は300〜6000が好ましい。
【0032】
上記特性を有する樹脂(a2)は常法により調製することができ、市販品を用いることもできる。樹脂(a2)として用いうる市販品としては、例えば、1001(商品名、三菱化学社製)、ECN1299(商品名、チバガイキー社製)、1002(商品名、三菱化学社製)、1003(商品名、三菱化学社製)、1004(商品名、三菱化学社製)、1007(商品名、三菱化学社製)を挙げることができる。
上記融着層中に存在する樹脂(a2)は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0033】
上記融着層中(すなわち上記融着層を構成する上記硬化性樹脂組成物中)、樹脂(a1)と樹脂(a2)の含有量の比(質量比)は、(a1):(a2)=71:29〜95:5を満たし、(a1):(a2)=73:27〜95:5を満たすことが好ましい。樹脂(a1)の含有量が上記規定より多くても少なくても、所望の固着力が得られにくくなる。
上記融着層中、樹脂(a1)と樹脂(a2)の含有量の合計は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95〜99.5質量%がより好ましく、97〜99.2質量%がさらに好ましい。
【0034】
続いて、融着層13、24、34に用いるイミダゾール系硬化剤について説明する。なお、本発明においてイミダゾール系硬化剤とは、分子構造中にイミダゾール環を有する硬化剤を意味する。
本発明に用いるイミダゾール系硬化剤として、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールを挙げることができる。
【0035】
上記融着層中に存在する、本発明に用いるイミダゾール系硬化剤の含有量は、上記融着層中の樹脂(a1)と樹脂(a2)の総含有量100質量部に対し2質量部未満であり、0.5〜1.5質量部がより好ましい。融着層中、本発明に用いるイミダゾール系硬化剤を上記含有量とすることにより、固着させた融着層の強固な固着状態を、高温環境に曝したり油に浸漬させたりしても、安定に維持することが可能となる。イミダゾール系硬化剤の含有量が少なすぎると融着層の硬化が不十分となる可能性があり、一方多すぎると固着力や耐油性が悪化する傾向がある。
【0036】
上記融着層(すなわち上記融着層を構成する硬化性樹脂組成物)は、発熱ピーク温度が120℃以上であることが好ましく、好ましくは130〜180℃である。融着層の発熱ピーク温度を上記温度とすることにより、絶縁電線の耐折性を大きく向上させることが可能となる。発熱ピーク温度は、後述する[実施例]に記載するように、融着層を構成する硬化性樹脂組成物を試料としてDSCチャートを取得し、決定することができる。
また、本発明の一実施形態において、前記融着層を構成する硬化性樹脂組成物は、硬化させた後の(すなわち硬化物の)85℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaとなるものであり、100〜2000MPaとなるものが好ましく、100〜1800MPaとなるものがより好ましく、100〜1500MPaとなるものがさらに好ましく、100〜1200MPaとなるものがさらに好ましく、100〜1000MPaとなるものが特に好ましい。また、本発明の一実施形態において、上記の85℃における貯蔵弾性率を100〜700MPaとしてもよく、100〜500MPaとしてもよく、100〜400MPaとしてもよい。
また、本発明の別の一実施形態において、前記融着層を構成する硬化性樹脂組成物は、硬化させた後の(すなわち硬化物の)130℃における貯蔵弾性率が100〜2500MPaとなるものであり、120〜2000MPaとなるものが好ましく、120〜1000MPaとなるものがより好ましく、150〜500MPaとなるものがさらに好ましい。
さらに好ましくは、本発明の絶縁電線において、前記融着層を構成する硬化性樹脂組成物は、硬化させた後の(すなわち硬化物の)85℃における貯蔵弾性率が100〜1500MPa(好ましくは100〜1000MPa、また、100〜700MPaとしてもよく、100〜500MPaとしてもよく、100〜400MPaとしてもよい。)となり、且つ、当該組成物を硬化させた後の(すなわち硬化物の)130℃における貯蔵弾性率が100〜1000MPa(好ましくは120〜1000MPa、より好ましくは150〜500MPa)となるものが好ましい。
融着層を構成する硬化性樹脂組成物の85℃における貯蔵弾性率、及び130℃における貯蔵弾性率は、後述する[実施例]に記載の方法により測定することができる。
【0037】
融着層13、24、34の厚さは特に限定されず、十分な固着力とコイルの高密度化(占積率)を両立する観点から2〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
【0038】
<絶縁層22>
本発明の絶縁電線は、導体と熱可塑性樹脂層との間に絶縁層を有していてもよい。
絶縁層22は、熱硬化性樹脂で形成され、所謂エナメル(樹脂)層であることが好ましい。
絶縁層22に用いる熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド(PI)、ポリウレタン、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステル(PEst)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエステルイミド(PEsI)、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル及びポリエステルイミドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
絶縁層22には、熱硬化性樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
絶縁層を構成しうるポリイミドは、特に限定されず、全芳香族ポリイミド及び熱硬化性芳香族ポリイミドなど、通常のポリイミドを用いることができる。また、常法により、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物を極性溶媒中で反応させて得られるポリアミド酸溶液を用い、焼付け時の加熱処理によってイミド化させることによって得られるものを用いることができる。
絶縁層を構成しうるポリアミドイミドは、他の樹脂に比べ熱伝導率が低く、絶縁破壊電圧が高く、焼付け硬化が可能である。ポリアミドイミドは、特に限定されないが、常法により、例えば極性溶媒中でトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物を直接反応させて得たもの、又は、極性溶媒中でトリカルボン酸無水物にジアミン化合物を先に反応させて、まずイミド結合を導入し、次いでジイソシアネート化合物でアミド化して得られるものが挙げられる。
【0040】
絶縁層を構成しうるポリエステルは、分子内にエステル結合を有するポリマーであって熱硬化性のものであればよく、H種ポリエステル(HPE)が好ましい。このようなH種ポリエステルとしては、例えば、芳香族ポリエステルのうちフェノール樹脂等を添加することによって樹脂を変性させたもので、耐熱クラスがH種であるものが挙げられる。
また、絶縁層を構成しうるポリエステルイミドは、分子内にエステル結合とイミド結合を有するポリマーであって熱硬化性のものであれば特に限定されない。例えば、トリカルボン酸無水物とアミン化合物からイミド結合を形成し、アルコールとカルボン酸又はそのアルキルエステルからエステル結合を形成し、そして、イミド結合の遊離酸基又は無水基がエステル形成反応に加わることで得られるものを用いることができる。このようなポリエステルイミドは、例えば、トリカルボン酸無水物、ジカルボン酸化合物又はそのアルキルエステル、アルコール化合物及びジアミン化合物を公知の方法で反応させて得られるものを用いることもできる。
【0041】
絶縁層22の厚さは特に限定されず、通常は20〜120μmであり、より好ましくは40〜100μmである。
【0042】
絶縁層22は、導体21の表面に通常は焼付け塗布して、形成される。具体的には、熱硬化性樹脂を含有するワニスを、導体21の表面に焼付け塗布して、形成されることが好ましい。
【0043】
絶縁層22に用いる熱硬化性樹脂として市販品を用いることができる。例えば、ポリイミドとして、Uイミド(商品名、ユニチカ社製)、U−ワニス(商品名、宇部興産社製)等が挙げられる。ポリアミドイミドとして、HI406又はHCIシリーズ(いずれも、商品名、日立化成社製)等が挙げられる。H種ポリエステルとして、Isonel200(商品名、米スケネクタディインターナショナル社製)等が挙げられる。ポリエステルイミドとして、ネオヒート8600A(商品名、東特塗料社製)等が挙げられる。
【0044】
<熱硬化性樹脂層33>
本発明の絶縁電線は、熱可塑性樹脂層と融着層との間に熱硬化性樹脂層を有していてもよい。
熱硬化性樹脂層33を構成する樹脂としては、上述した絶縁層22を構成する樹脂として説明したものを用いることができる。好ましい樹脂の形態も同じである。
熱硬化性樹脂層33の厚さは特に限定されず、通常は20〜120μmであり、より好ましくは40〜100μmである。
【0045】
[絶縁電線の製造方法]
本発明の絶縁電線は、導体の外周面に、少なくとも熱可塑性樹脂層と融着層を含む樹脂被覆層を形成することにより製造される。
より詳細には、導体11、21、31の外周面に熱可塑性樹脂層12、23、32と融着層13、24、34を順次あるいは同時に形成することにより、製造することができる。また、所望により上述した絶縁層22、熱硬化性樹脂層33の形成工程を組み込んでもよい。各層の形成は、導体外周面に近い側から順次形成する形態でもよいし、一部又は全部の層を同時に形成してもよい。また、各層を形成する際には、樹脂を含むワニスを調製し、このワニスを用いて層を形成した後、乾燥する方法を採用することもできる。
【0046】
また、融着層を除く各層を導体外周面に順次焼付けて塗布した後、最外層として融着層を形成することも好ましい。融着層は熱硬化性の組成物(エポキシ基含有フェノキシ樹脂と軟化点50℃以上のエポキシ樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含む組成物)で形成される層であるため、融着層を焼付けて形成することは通常は行わない。
樹脂層を焼付けて形成する場合、目的の樹脂層を構成する樹脂を含むワニスを調製し、当該ワニスを塗布し、焼付けて形成できる。ワニスを塗布する方法は、従来の方法を特に限定されることなく適用できる。例えば、導体の断面形状と相似形をしたワニス塗布用ダイスを用いる方法、導体の断面形状が矩形である場合、井桁状に形成された「ユニバーサルダイス」と呼ばれるダイスを用いる方法が挙げられる。
ワニス塗布後の焼付けは、常法により行うことができ、例えば焼付け炉で焼付けすることができる。この場合の具体的な焼付け条件は、その使用される炉の形状等に左右され一義的に決定できないが、およそ8mの自然対流式の竪型炉であれば、例えば、炉内温度400〜650℃にて通過時間を10〜90秒とする条件が挙げられる。
上記ワニスには、各層の特性に影響を及ぼさない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤又はエラストマー等が挙げられる。
【0047】
ワニスは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂をワニス化させるために有機溶媒等を含有することが好ましい。かかる有機溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチル尿素等の尿素系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム系溶媒、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
有機溶媒等は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
[コイル及び電気・電子機器]
本発明の絶縁電線は、コイルとして、各種電気・電子機器など、電気特性(耐電圧性)や耐熱性を必要とする分野に利用可能である。例えば、本発明の絶縁電線はモーターやトランス等に用いられ、高性能の電気・電子機器を構成できる。特にHVやEVの駆動モーター用の巻線として好適に用いられる。このように、本発明によれば、本発明の絶縁電線をコイルとして用いた、電気・電子機器、特にHV及びEVの駆動モーターを提供できる。
【0049】
本発明のコイルは、各種電気・電子機器に適した形態を有していればよく、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻き回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻線数等は特に限定されない。通常、絶縁電線を巻き回す際には鉄芯等が用いられる。
【0050】
本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるものとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。このようなコイルは、例えば、図5に示されるように、本発明の絶縁電線を所定の長さに切断してU字形状等に曲げ加工して複数の電線セグメント44を作製し、各電線セグメント44のU字形状等の2つの開放端部(末端)44aを互い違いに接続して、作製されたコイル43(図4参照)が挙げられる。コイル43を、融着層の硬化開始温度以上の温度に加熱することにより、隣接する融着層同士、あるいは融着層とスロット42とを固着することができ、コイルが固定化される。
【0051】
このコイルを用いてなる電気・電子機器としては、特に限定されない。このような電気・電子機器の好ましい一態様として、例えば、図4に示されるステータ40を備えた回転電機(特にHV及びEVの駆動モーター)が挙げられる。この回転電機は、ステータ40を備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
ステータ40は、電線セグメント44が本発明の絶縁電線で形成されていること以外は従来のステータと同様の構成とすることができる。すなわち、ステータ40は、ステータコア41と、例えば図3に示されるように本発明の絶縁電線からなる電線セグメント44がステータコア41のスロット42に組み込まれ、開放端部44aが電気的に接続されてなるコイル43とを有している。このコイル43は、隣接する融着層同士、あるいは融着層とスロット42とが固着されて固定化された状態となっている。ここで、電線セグメント44は、スロット42に1本で組み込まれてもよいが、好ましくは図4に示されるように2本一組として組み込まれる。このステータ40は、上記のように曲げ加工した電線セグメント44を、その2つの末端である開放端部44aを互い違いに接続してなるコイル43が、ステータコア41のスロット42に収納されている。このとき、電線セグメント44の開放端部44aを接続してからスロット42に収納してもよく、また、絶縁セグメント44をスロット42に収納した後に、電線セグメント44の開放端部44aを折り曲げ加工して接続してもよい。
本発明の絶縁電線として断面形状が矩形の導体を用いると、例えば、ステータコアのスロット断面積に対する導体の断面積の比率(占積率)を高めることができ、電気・電子機器の特性を向上させることができる。
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明をこれらに限定されない。
【実施例】
【0053】
[実験例]
<製造例>
図1に示す構造の絶縁電線を製造した。
−導体11−
導体11として、断面平角(長辺3.2mm×短辺2.4mmで、四隅の面取りの曲率半径r=0.3mm)の平角導体(酸素含有量15ppmの銅)を用いた。
【0054】
−熱可塑性樹脂層12−
押出機のスクリューは、30mmフルフライト、L/D=20、圧縮比3を用いた。材料はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(ソルベイスペシャリティポリマーズ製、商品名:キータスパイアKT−820、比誘電率3.1、融点250℃以上)を用い、押出温度条件は次のようにした。
(押出温度条件)
C1:300℃
C2:380℃
C3:380℃
H :390℃
D :400℃
C1、C2、C3は押出機内のシリンダー温度を示し、樹脂投入側から順にC1、C2、C3の3ゾーンの温度をそれぞれ示す。Hはヘッド部、Dはダイス部の温度を示す。押出ダイを用いてPEEKの押出被覆を行った後、10秒の時間を空けて水冷して導体の外側に厚さ80μmの熱可塑性樹脂層12を形成した。
こうして導体11の外周に熱可塑性樹脂層(厚み80μm)を有する構造のプレ電線(長さ500mm)を調製した。
【0055】
−融着層13−
メチルエチルケトン(MEK)に、下記表1に示す配合比で、各樹脂と硬化剤を溶解し、樹脂と硬化剤の合計含有量が20質量%濃度の融着層形成用溶液を調製した。上記で調製したプレ電線を長さ300mmに切断した後、融着層形成用溶液に浸漬し(25℃、10秒)、プレ電線の外周に融着層形成用溶液を塗布した。この融着層形成用溶液を塗布したプレ電線を120℃で5分間の加熱処理に付してMEKを揮発させ、熱可塑性樹脂層12表面に熱硬化性の融着層13(最外層、厚み30μm)を有する自己融着性絶縁電線を作製した。
【0056】
<測定、評価>
−融着層13を形成する硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の85℃における貯蔵弾性率、及び130℃における貯蔵弾性率の測定−
上記融着層形成用溶液をガラス板の平坦な表面へフィルム形状に塗布し、MEKを揮発させ、フィルム(融着層を構成する硬化性樹脂組成物、厚さ50μm)を得た。
次いで得られたフィルムを190℃、30分間の加熱処理に付して硬化し、硬化フィルム(厚さ50μm)を得た。この硬化フィルムを縦20mm×横5mmの長方形に切り出し、この切り出した硬化フィルムについて、動的粘弾性測定装置DMA8000(PerkinElmer社製)を用いて貯蔵弾性率を測定した。より詳細には、引張モードにより、1Hzで、10℃/分の昇温速度で50〜250℃まで昇温しながら貯蔵弾性率を測定し、85℃における貯蔵弾性率及び130℃における貯蔵弾性率を決定した。
【0057】
−ガラス転移点の測定−
ガラス転移点は、示差走査型熱量分析装置(島津製作所製、DSC−60)を用いて、30℃〜250℃まで昇温速度10℃/分で測定した値であり、JIS K 7121「プラスチックの転移温度測定方法」の、補外ガラス転移開始温度である。
【0058】
−軟化点の測定−
JIS K 7234−1986に記載する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定した。
【0059】
−融着層13を形成する硬化性樹脂組成物の発熱ピーク温度−
上記の融着層形成用溶液を120℃5分間の熱処理に付してMEKを揮発させ、MEKを除いた残留物(融着層を構成する硬化性樹脂組成物)を試料として、示差走査型熱量分析装置(島津製作所製、DSC−60)を用いて、40℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際のDSCチャートを取得し、発熱ピークの頂点の温度を発熱ピーク温度とした。
【0060】
−耐折性−
上記で製造した自己融着性絶縁電線を80℃で168時間加熱処理し、φ2.5mmの鉄芯に、断面における短辺を形成する面の側を当該鉄芯に向けて巻き付けた(すなわち180℃曲げ加工を行った)。融着層に亀裂が生じなかった場合を評価A、融着層に亀裂が生じた場合を評価Cとし、耐折性を評価した。
【0061】
−常温雰囲気中(25℃)における固着力−
上記で製造した自己融着性絶縁電線2本を、重ね合わせた長さが200mmとなるように断面における長辺を形成する面同士を重ね合わせて密着し、190℃30分間の加熱処理に付して密着面全体を固着させた。この電線を25℃の雰囲気中で8時間静置した後、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−J)にセットし、50mm/minの引張速度で、重ね合せた電線の両端を互いに反対方向に引っ張った。2本の電線の固着状態を破断するのに要した強度を固着力とし、下記基準により評価した。
固着力が2MPa以上:A
固着力が0.5MPa以上2MPa未満:B
固着力が0.5MPa未満:C
【0062】
−高温雰囲気中(200℃)における固着力−
上記で製造した自己融着性絶縁電線2本を、重ね合わせた長さが200mmとなるように断面における長辺を形成する面同士を重ね合わせて密着し、190℃、30分間の加熱処理に付して密着面全体を固着させた。この電線を恒温槽付引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−J、恒温槽温度:200℃)にセットし、50mm/minの引張速度で重ね合せた電線の両端を互いに反対方向に引っ張った。2本の電線の固着状態を破断するのに要した強度を固着力とし、下記基準により評価した。
固着力が2MPa以上:A
固着力が0.5MPa以上2MPa未満:B
固着力が0.5MPa未満:C
【0063】
−高温雰囲気中(200℃)に長時間暴露後の固着力−
上記で製造した自己融着性絶縁電線2本を、重ね合わせた長さが200mmとなるように断面における長辺を形成する面同士を重ね合わせて密着し、190℃、30分間の加熱処理に付して密着面全体を固着させた。この電線を恒温槽(温度:200℃)中に1000時間静置した。次いで電線を25℃雰囲気中で8時間静置した後、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−J)にセットし、50mm/minの引張速度で重ね合せた電線の両端を互いに反対方向に引っ張った。2本の電線の固着状態を破断するのに要した強度を固着力とし、下記基準により評価した。
固着力が2MPa以上:A
固着力が0.5MPa以上2MPa未満:B
固着力が0.5MPa未満:C
【0064】
−耐油性−
上記で製造した絶縁電線2本を、重ね合わせた長さが200mmとなるように断面における長辺を形成する面同士を重ね合わせて密着し、190℃、30分間の加熱処理に付して密着面全体を固着させた。この電線を150℃に加熱したATFオイル中に1000時間浸漬した後、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−J)にセットし、50mm/minの引張速度で重ね合せた電線の両端を互いに反対方向に引っ張った。2本の電線の固着状態を破断するのに要した強度を固着力とし、下記基準により評価した。なお、ATFオイル中への浸漬は150℃、固着力の測定は25℃で実施した。
固着力が2MPa以上:A
固着力が0.5MPa以上2MPa未満:B
固着力が0.5MPa未満:C
【0065】
−総合評価−
上記各評価結果を下記基準に当てはめ、電線の性能を総合的に評価した。
すべての評価結果が評価Aであったもの:A
すべての評価結果において評価Cがなかったもの:B
いずれかの評価結果が評価Cであったもの:C
【0066】
上記の結果を下記表1にまとめて示す。下記表1に記載の樹脂、硬化剤の種類は下記の通りである。
A1:エポキシ基含有フェノキシ樹脂(商品名:YX7200B35、三菱化学社製、ビスフェノールA型、エポキシ当量:3000〜16000g/eq)
A2:エポキシ基含有フェノキシ樹脂(商品名:YX6954BH30、三菱化学社製、ビスフェノールA型、エポキシ当量:10000〜16000g/eq)
A3:エポキシ基含有フェノキシ樹脂(商品名:jER1256、三菱化学社製、ビスフェノールA型、エポキシ当量:7500〜8500g/eq)
B1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:1001、三菱化学社製、エポキシ当量:450〜500g/eq、軟化点:67℃)
B2:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ECN1299、千葉ガイキー社製、エポキシ当量:215g/eq、軟化点:99℃)
B3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:1004、三菱化学社製、エポキシ当量:875〜975g/eq、軟化点:97℃)
C1:2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成社製)
C2:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物(商品名:2MA−OK、四国化成社製、融点260℃)
【0067】
【表1】
【0068】
上記表1に示される通り、融着層中のエポキシ樹脂(a1)の含有量が本発明で規定するよりも少ないと、高温雰囲気中において固着力が低下してしまった(実験例6、12)。また融着層中のエポキシ樹脂(a1)の含有量を本発明で規定するよりも多くした場合も同様に、高温雰囲気中において固着力が低下する結果となり、また耐折性にも劣っていた(実験例7)。
また、融着層中のエポキシ樹脂(a1)と(a2)の量比が本発明の規定内にあっても、硬化剤の含有量が本発明の規定を超える場合は、やはり固着力に劣る結果となった(実験例8、9)。
また、融着層が樹脂(a1)を含有しない場合にも、固着力に劣る結果となった(実験例10、11)。
【0069】
これに対し本発明の規定を満たす絶縁電線(実験例1〜5)は、高温雰囲気中でも固着した融着層の固着力が良好に維持でき、さらに耐油性、耐折性のいずれにおいても優れた特性を有することがわかった。
【0070】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0071】
本願は、2015年12月4日に日本国で特許出願された特願2015−238082に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 絶縁電線
11、21、31 導体
12、23、32 熱可塑性樹脂層
13、24、34 熱硬化性の融着層
22、絶縁層(熱硬化性樹脂層)
14、25、35 樹脂被覆層
40 ステータ
41 ステータコア
42 スロット
43 コイル
44 電線セグメント
44a 開放端部
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】