特表-18155473IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2018155473-触媒液の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年8月30日
【発行日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】触媒液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20191122BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 2/32 20060101ALN20191122BHJP
   C07C 9/14 20060101ALN20191122BHJP
   C07C 9/22 20060101ALN20191122BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191122BHJP
【FI】
   B01J37/04 102
   B01J31/24 Z
   C07C2/32
   C07C9/14
   C07C9/22
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2019-501365(P2019-501365)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-34584(P2017-34584)
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲穂▼坂 祐作
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE06B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169CB48
4G169CB63
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB77
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA25
4H039CA99
4H039CL20
(57)【要約】
第6〜11族遷移金属触媒を含有する触媒液の、保存中における遷移金属触媒のブラック化を抑制することのできる触媒液の製造方法であり、アルケニル化合物およびリン配位子を添加した後、第6〜11族遷移金属触媒を添加する、触媒液の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル化合物およびリン配位子を添加した後、第6〜11族遷移金属触媒を添加する、触媒液の製造方法。
【請求項2】
アルケニル化合物、リン配位子、第6〜11族遷移金属触媒をこの順で添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルケニル化合物がアリルアルコール類である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
アリルアルコール類が炭素数8〜12のアルカジエノール類である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
炭素数8〜12のアルカジエノール類が2,7−オクタジエン−1−オールである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
リン配位子が第三級リン化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
第三級リン化合物が疎水性芳香族ホスフィンまたは親水性芳香族ホスフィンである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
第三級リン化合物が親水性芳香族ホスフィンである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
第三級リン化合物がリチウム 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートまたはトリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
第6〜11族遷移金属触媒がパラジウム化合物である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
触媒液がテロメリゼーション反応用触媒液である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
テロメリゼーション反応がブタジエンまたはイソプレンを原料としたテロメリゼーション反応である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1〜2に記載されている様に、液相均一系で使用される遷移金属の錯体触媒は、高い反応選択性を有する一方で、工業的に利用することは難しい。その理由として、例えば遷移金属触媒の熱的・化学的安定性の低さ等が挙げられる。それらを補うため、工業プロセスにおいては、反応条件だけでなく反応系への触媒の導入形態についても工夫を行う必要がある。
例えば特許文献1〜2では、共役ジエンと活性水素化合物とのテロメリゼーション反応において、遷移金属触媒を反応系に直接添加するのではなく、事前に遷移金属触媒や配位子と溶媒等を混合した触媒液を調製し、それを反応系に供給している。これは反応性の低下や目的外不純物の発生を防ぐための処置である。具体的に、特許文献1では、遷移金属触媒であるパラジウム触媒を安定化させるために用いる三置換ホスフィンなどのリン配位子が反応活性を低下させるという問題を解決するため、リン配位子を事前にホスホニウム塩として調製し、それを反応系に供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−085988号公報
【特許文献2】特開2002−371088号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】触媒学会「触媒講座第4巻(基礎編4)反応機構決定法・錯体触媒(第1版)」、講談社、1986年6月、162−172頁
【非特許文献2】Chemical Reviews(Chem. Rev.)、2015年、115巻、127−150頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が特許文献1〜2に記載の触媒液を一度に多量に調製し、その一部を連続反応のために使用し、残りを保存しつつ、連続反応の過程で溶出等により失われる触媒を補填するために適宜必要量を反応系に投入していたところ、保存していた触媒液中において経時的な遷移金属触媒のブラック化(遷移金属触媒が還元され、金属として析出する現象)が発生することが分かった。また、触媒液を一度に多量に調製した場合、遷移金属触媒や配位子の溶解性によっては、調製に2日以上を要する場合があるなど生産性に課題があった。
【0006】
すなわち本発明の課題は、触媒液の保存中における遷移金属触媒のブラック化を抑制することのできる、触媒液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、触媒液の製造時にアルケニル化合物およびリン配位子を添加した後、第6〜11族遷移金属触媒を添加することにより、触媒液保存時に遷移金属触媒のブラック化が抑制されることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0008】
本発明は、下記[1]〜[12]に関する。
[1]アルケニル化合物およびリン配位子を添加した後、第6〜11族遷移金属触媒を添加する、触媒液の製造方法。
[2]アルケニル化合物、リン配位子、第6〜11族遷移金属触媒をこの順で添加する、[1]の製造方法。
[3]アルケニル化合物がアリルアルコール類である、[1]または[2]の製造方法。
[4]アリルアルコール類が炭素数8〜12のアルカジエノール類である、[3]の製造方法。
[5]炭素数8〜12のアルカジエノール類が2,7−オクタジエン−1−オールである、[4]の製造方法。
[6]リン配位子が第三級リン化合物である、[1]〜[5]のいずれかの製造方法。
[7]第三級リン化合物が疎水性芳香族ホスフィンまたは親水性芳香族ホスフィンである、[6]の製造方法。
[8]第三級リン化合物が親水性芳香族ホスフィンである、[6]の製造方法。
[9]第三級リン化合物がリチウム 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートまたはトリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートである、[6]の製造方法。
[10]第6〜11族遷移金属触媒がパラジウム化合物である、[1]〜[9]のいずれかの製造方法。
[11]触媒液がテロメリゼーション反応用触媒液である、[1]〜[10]のいずれかの製造方法。
[12]テロメリゼーション反応がブタジエンまたはイソプレンを原料としたテロメリゼーション反応である、[11]の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により、第6〜11族遷移金属触媒を含有する触媒液の保存中における遷移金属触媒のブラック化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例および比較例で製造した触媒液における、経過日数に対するパラジウム濃度(酢酸パラジウム換算)の変化を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、第6〜11族遷移金属触媒を含有する触媒液の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)に関する。本発明の触媒液の製造方法では、アルケニル化合物およびリン配位子を添加した後、第6〜11族遷移金属触媒を添加する。当該製造方法により、第6〜11族遷移金属触媒を含有する触媒液において、保存中における遷移金属触媒のブラック化を抑制することができる。上記の順で各成分を添加することにより該遷移金属触媒のブラック化を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、上記の順で添加することで、第6〜11族遷移金属触媒およびリン配位子のみからなる不安定な錯体の形成が抑制され、アルケニル化合物、リン配位子および第6〜11族遷移金属触媒からなる安定なπアリル錯体や、アルケニル化合物およびリン配位子からなるホスホニウム塩の形成が早期に完了するためと考えている。
【0012】
アルケニル化合物とリン配位子は同時に添加してもよく、順次添加してもよい。本発明の触媒液の製造方法では、リン配位子および第6〜11族遷移金属触媒の溶解度を高め、触媒液の調製時間を短縮できる観点から、アルケニル化合物、リン配位子、第6〜11族遷移金属触媒をこの順で添加することが好ましい。
【0013】
本明細書において「アルケニル化合物」とは、分子内に炭素−炭素間の不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物をいう。また「第6〜11族遷移金属触媒」における「第6〜11族遷移金属」とは、長周期表における第6〜11族の遷移金属をいう。
【0014】
<アルケニル化合物>
本発明に用いるアルケニル化合物としては、リン配位子および第6〜11族遷移金属触媒と作用して安定な錯体を形成し得、かつ、リン配位子との反応によりホスホニウム塩を形成し得る化合物を好ましく用いることができる。
上記観点、及び、後述する溶媒への溶解性等の観点から、本発明に用いるアルケニル化合物としてはアリルアルコール類又はその誘導体が好ましく、アリルアルコール類がより好ましい。「アリルアルコール類」とは、アリルアルコール、又は、アリルアルコールのアリル基部分の水素原子のうち少なくとも1つが置換されたアルコールをいう。また、「アリルアルコール類の誘導体」とは、上記アリルアルコール類におけるヒドロキシ基の水素原子が置換されたアルコール誘導体であり、アリルアルコール類のエステル化物、エーテル化物などが挙げられる。当該誘導体としてはエステル化物が好ましい。
本発明においてアルケニル化合物として好適に用いられるアリルアルコール類又はその誘導体は、より好ましくは下記一般式(I)で表される化合物である。
【化1】

上記一般式(I)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜12の炭化水素基である。Rは水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、−CO−R、又は−SO−Rで表される基(Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示す)である。
【0015】
〜Rにおける炭化水素基としては鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状脂肪族基が好ましい。当該脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。R〜Rにおける炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6である。
【0016】
における炭化水素基としては鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状脂肪族基が好ましい。当該脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよく、飽和脂肪族基が好ましい。Rにおける炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3である。
は水素原子又は−CO−Rで表される基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
は炭素数1〜12の炭化水素基であり、鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状脂肪族基が好ましい。当該脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよく、飽和脂肪族基が好ましい。Rにおける炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3である。
【0017】
本発明に用いるアルケニル化合物の炭素数は、錯体形成能、ホスホニウム塩の形成能、並びに、後述する溶媒への溶解性等の観点から、好ましくは3〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは8〜12である。
【0018】
本発明に用いる好ましいアルケニル化合物としては、より具体的には例えばアリルアルコール(2−プロペン−1−オール)、2−メチル−2−プロペン−1−オール、2−ブテン−1−オール、2,5−ヘキサジエン−1−オール、2,7−オクタジエン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オール、1,7−オクタジエン−3−オール、2−オクテン−1−オール等のアリルアルコール類;酢酸アリル、酢酸2−メチル−2−プロペニル、酢酸2,5−ヘキサジエニル、酢酸2,7−オクタジエニル、酢酸1−ビニル−5−ヘキセニル、プロピオン酸1−ビニル−2−プロペニル、プロピオン酸2−オクテニル等のアリルアルコール類のエステル化物などが挙げられる。
これらの中でも、アリルアルコール類が好ましい。
また、アリルアルコール類の中でも、2,7−オクタジエン−1−オール、1,7−オクタジエン−3−オール等の炭素数8〜12のアルカジエノール類が好ましく、2,7−オクタジエン−1−オールがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<リン配位子>
本発明に用いるリン配位子としては、リン原子を含有し、第6〜11族遷移金属に配位して錯体を形成し得る化合物を好ましく用いることができる。当該リン配位子としては、ホスフィン、ホスファイト、ホスホナイト等の第三級リン化合物が好ましい。
第三級リン化合物としては、例えばトリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィン等の脂環式ホスフィン;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、ジフェニル−p−クロロフェニルホスフィン、トリメシチルホスフィン等の疎水性芳香族ホスフィン;リチウム 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナート、ナトリウム 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナート、トリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナート、トリス(ナトリウム 3−スルホフェニル)ホスフィン等の親水性芳香族ホスフィン;トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等のホスファイト;オクチルジオクトキシホスフィン、ブチルジブトキシホスフィン等のホスホナイトなどが挙げられる。
これらの中でも、芳香族ホスフィン、すなわち疎水性芳香族ホスフィンまたは親水性芳香族ホスフィンが好ましく、親水性芳香族ホスフィンがより好ましく、リチウム 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートまたはトリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナートが特に好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお親水性芳香族ホスフィンとは、―SOM、−COOM(Mはアルカリ金属イオン、または−HN(R11)(R12)(R13)を示す)、または−N(R14)(R15)で表される基等の、親水性基を有する芳香族ホスフィンをいう。R11、R12、R13はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R14およびR15は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示す。
疎水性芳香族ホスフィンとは、上記親水性基を有さない芳香族ホスフィンをいう。
【0020】
<第6〜11族遷移金属触媒>
本発明に用いる第6〜11族遷移金属触媒としては、長周期表における第6〜11族遷移金属を含有する化合物を用いることができる。
第6〜11族遷移金属触媒における遷移金属としては、第6族遷移金属及び第10族遷移金属からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、第10族遷移金属がより好ましく、パラジウムがさらに好ましい。
第6〜11族遷移金属触媒としては、より具体的には例えばモリブデン化合物、タングステン化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、プラチナ化合物などが挙げられる。これらの中でも、パラジウム化合物が好ましい。
パラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、硝酸パラジウム等の2価のパラジウム錯体;トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム等の0価のパラジウム錯体などが挙げられる。
これらの中でも、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、酢酸パラジウムがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(溶媒)
本発明においては、触媒液の製造をより円滑に行うため、溶媒を使用することが好ましい。
溶媒は特に限定されないが、アルケニル化合物、リン配位子および第6〜11族遷移金属触媒を少なくとも部分的に溶解し得るものが好ましい。
そのような溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素などが挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたはスルホランが好ましく、スルホランがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、溶媒として水を併用してもよい。
【0022】
本発明において、アルケニル化合物、リン配位子、第6〜11族遷移金属触媒および必要に応じて用いる溶媒の使用量は特に限定されず、触媒液の用途に応じて適宜調整すればよい。
例えば、本発明の製造方法におけるアルケニル化合物の使用量は、第6〜11族遷移金属触媒中の遷移金属1モルに対し、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは1〜50モルであり、リン配位子の使用量は、第6〜11族遷移金属触媒中の遷移金属1モルに対し、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは1〜50モルである。
溶媒を用いる場合、その使用量は、触媒液の全量に対し通常1〜99.5質量%の範囲である。
また得られる触媒液の濃度は、第6〜11族遷移金属触媒中の遷移金属の濃度として、通常0.1〜10,000ppm、好ましくは50〜5,000ppm、より好ましくは100〜3,000ppmの範囲である。
【0023】
本発明の触媒液の製造方法は、例えば以下の手順で行うことができる。
まず、反応器にアルケニル化合物、リン配位子、および必要に応じ溶媒を添加して攪拌、混合する。前述の通り、アルケニル化合物とリン配位子は同時に添加してもよく、順次添加してもよい。リン配位子および第6〜11族遷移金属触媒の溶解度を高め、触媒液の調製時間を短縮できる観点から、アルケニル化合物、リン配位子をこの順で添加することが好ましい。例えば溶媒を用いる場合は、最初にアルケニル化合物および溶媒を添加して混合し、アルケニル化合物を溶解させた後にリン配位子を添加して混合することができる。
次いで、アルケニル化合物、リン配位子、および必要に応じ溶媒を添加して得られた混合物に第6〜11族遷移金属触媒を添加し、濁りがなくなるまで攪拌、混合して触媒液を得ることができる。
以上の操作は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また各成分を添加、混合する際の温度は特に制限されないが、通常、5〜50℃の温度下で行うことができる。
【0024】
本発明の製造方法により製造される触媒液の用途は特に限定されず、例えばテロメリゼーション反応用触媒液や辻・トロスト反応用触媒液等として用いることができる。
中でも、本発明の製造方法は目的とする触媒液がテロメリゼーション反応用触媒液である場合に好適に用いることができ、目的とする触媒液がブタジエンまたはイソプレン(特に1,3−ブタジエンまたは2−メチル−1,3−ブタジエン)を原料としたテロメリゼーション反応用触媒液である場合により好適に用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。なお、特に断りがない限り、操作は窒素雰囲気下で行った。
【0026】
(実施例)
磁気攪拌子を備えたガラス製3つ口フラスコに蒸留水27.29g(27.29mL)、スルホラン28.69g(22.77mL)を入れた後、2,7−オクタジエン−1−オール0.676g(0.777mL)を加え溶解させた。次いで、トリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナート1.0819g(2.44mmol)を加え、最後に酢酸パラジウム0.1354g(0.603mmol)を添加し、室温で10分攪拌した。取得した触媒液をハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製、材質:Hiperグラス)に移し、二酸化炭素0.5MPa雰囲気下、室温で保存した。
保存中に適宜サンプリングを行い、原子吸光分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「Z−5010」)を用いて触媒液中のパラジウムの濃度(酢酸パラジウム換算)を測定した。経過日数に対するパラジウムの濃度(ppm)の変化を表1に示す。
【0027】
(比較例)
磁気攪拌子を備えたガラス製3つ口フラスコに蒸留水27.30g(27.30mL)、スルホラン28.76g(22.82mL)を入れた後、トリエチルアミン 3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルホナート1.0715g(2.42mmol)を溶解させた。この無色溶液をハイパーグラスシリンダーに移し、二酸化炭素0.5MPa雰囲気下、室温で1時間静置した。静置後脱圧し、一部をシリンジで抜き出し、フラスコに移した。そこへ酢酸パラジウム0.1387g(0.618mmol)を加え、よく攪拌して均一にした後、ハイパーグラスシリンダーへ戻し、シリンジによる抜き入れおよび容器の揺動によって内容物をよく攪拌した。その後、再び二酸化炭素0.5MPa雰囲気として16時間静置した。濁りがなくなったのを確認後、脱圧し、2,7−オクタジエン−1−オール0.634g(0.728mL)を加えた。取得した触媒液を二酸化炭素0.5MPa雰囲気下、室温で保存した。
保存中に適宜サンプリングを行い、原子吸光分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「Z−5010」)を用いて触媒液中のパラジウムの濃度(酢酸パラジウム換算)を測定した。経過日数に対するパラジウムの濃度(ppm)の変化を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
まず第6〜11族遷移金属触媒の不存在下においてアルケニル化合物およびリン配位子を添加し、その後に第6〜11族遷移金属触媒である酢酸パラジウムを添加した実施例においては、経過日数に応じたパラジウム濃度の有意な変化がみられず、ブラック化が抑制されたことが示唆された。一方、リン配位子、第6〜11族遷移金属触媒、アルケニル化合物をこの順で添加した比較例においては、経過日数に応じて触媒液中のパラジウム濃度が減少し、ブラック化の発生が示唆された。
また、実施例においては短時間で触媒液の調製が完了したのに対し、比較例においてはそれぞれの成分の溶解に時間がかかり、調製時間が長期化した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法は、第6〜11族遷移金属触媒を含有する触媒液の製造に際し、工業規模量の触媒液を保存性良く調製できる点で有用である。
図1
【国際調査報告】