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再表2018-159641含フッ素シラン化合物の製造方法及び含フッ素シラン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】含フッ素シラン化合物の製造方法及び含フッ素シラン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20191122BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191122BHJP
【FI】
   C07F7/12CSP
   C07F7/12 D
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】57
【出願番号】特願2019-503037(P2019-503037)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-39894(P2017-39894)
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼田 司
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H039CA29
4H039CJ30
4H049VN01
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ12
4H049VQ19
4H049VR21
4H049VR33
4H049VS12
4H049VT17
4H049VT30
4H049VU28
4H049VW02
4H049VW36
(57)【要約】
本発明は、オレフィンメタセシスにより、反応性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素シラン化合物を温和な条件下で簡便かつ効率的に製造できる製造方法及び新規な含フッ素シラン化合物を提供することを目的とする。本発明は、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とをクロスメタセシス反応させる、下記式(3)で表される化合物の製造方法に関する。ただし、式中の各符号は明細書中に定義されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1’)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とをクロスメタセシス反応させる、下記式(3’)で表される化合物の製造方法。
【化1】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基であり、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、hは2以上の自然数を表し、複数存在するZ、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とをクロスメタセシス反応させる、下記式(3)で表される化合物の製造方法。
【化2】
(式中、aは0または1であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
aは0または1であり、bは0であり、cは0であり、Xは塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基を表し、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
〜Zはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロ(メトキシメトキシ)基、ペルフルオロ(プロポキシプロポキシ)基、ペンタフルオロフェニル基またはペンタフルオロフェニルオキシ基を表す、請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
下記式(3’)で表される化合物。
【化3】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基であり、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、hは2以上の自然数を表し、R、Xがそれぞれ複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
下記式(4)で表される化合物。
【化4】
(式中、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、R11は1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R11、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、R11は炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下記式(5)で表される化合物。
【化5】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
bは0であり、cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
下記式(6)で表される化合物。
【化6】
(式中、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、Rがそれぞれ複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項11】
cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、請求項10に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスメタセシス反応により含フッ素シラン化合物を製造する方法及び含フッ素シラン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子を含む有機基を表面層に有する基材は、ディスプレイやメガネ、タッチパネルなど、撥水、撥油、防汚性が求められる用途において産業上有用である。ここで、フッ素原子を含む有機基は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、基材の表面処理剤に好適に用いられる。該表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。
【0003】
基材の表面に含フッ素化合物を導入する方法としては、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤を用いる方法などが知られている。
例えば、特許文献1には含フッ素シラン化合物として、分子内に2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いる表面処理剤が開示されている。
【0004】
一方、金属触媒による二重結合組み換え反応であるオレフィンメタセシス反応(以下、単に、「オレフィンメタセシス」または「メタセシス」ということもある。)は、多彩な置換基を有するオレフィンの製造方法として広く利用されている。
例えば、非特許文献1では、種々の置換基を有するオレフィンの反応性が調べられており、非特許文献2では、ルテニウム錯体とフッ化ビニリデン(すなわち、1,1−ジフルオロエチレン)のオレフィンメタセシスが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/069592号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chatterjee,A.K.et al.,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,11360−11370.
【非特許文献2】Trnka,T.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2001,40,3441−3444.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤は長期の使用による性能の低下が懸念され、例えば、摩擦耐久性が充分でない等、改善の余地があった。
【0008】
また、電子求引性置換基を有する電子不足オレフィンは反応性が低いため、オレフィンメタセシスに利用することは容易ではない。実際、非特許文献1では、電子不足オレフィンの反応性が低いと記載されている。
さらに、フッ素原子や塩素原子等、ハロゲン原子を有するオレフィンも電子不足オレフィンであるため、オレフィンメタセシスに用いた報告はほとんどなく、非特許文献2では、期待した生成物すなわちエチレン及びテトラフルオロエチレンは全く得られなかったと述べられている。
【0009】
そのため、工業的に入手容易な含フッ素化合物を用いて、反応性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素シラン化合物を、温和な条件下で簡便かつ効率的に製造できれば、基材表面に架橋性部位を有する含フッ素アルキル基を導入する事が可能となり、既存手法と比較して耐久性の高い基材を製造できる。
【0010】
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであって、オレフィンメタセシスにより、反応性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素シラン化合物を温和な条件下で簡便かつ効率的に製造できる製造方法及び新規な含フッ素シラン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物同士をクロスメタセシス反応させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<11>に関するものである。
<1>下記式(1’)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とをクロスメタセシス反応させる、下記式(3’)で表される化合物の製造方法。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基であり、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、hは2以上の自然数を表し、複数存在するZ、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
<2>下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とをクロスメタセシス反応させる、下記式(3)で表される化合物の製造方法。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、aは0または1であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0017】
<3>aは0または1であり、bは0であり、cは0であり、Xは塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基を表し、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、前記<2>に記載の製造方法。
<4>Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロ(メトキシメトキシ)基、ペルフルオロ(プロポキシプロポキシ)基、ペンタフルオロフェニル基またはペンタフルオロフェニルオキシ基を表す、前記<2>または<3>に記載の製造方法。
<5>下記式(3’)で表される化合物。
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基であり、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、hは2以上の自然数を表し、R、Xがそれぞれ複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0020】
<6>下記式(4)で表される化合物。
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、R11は1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R11、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0023】
<7>cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、R11は炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、前記<6>に記載の化合物。
<8>下記式(5)で表される化合物。
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0026】
<9>bは0であり、cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、前記<8>に記載の化合物。
<10>下記式(6)で表される化合物。
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、Rがそれぞれ複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0029】
<11>cは0であり、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Rは炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表し、Rはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基を表す、前記<10>に記載の化合物。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、新規で有用な反応性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素シラン化合物を温和な条件下で簡便かつ効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本発明は金属触媒によるオレフィンメタセシスに関するものであり、従来技術と共通する一般的特徴については記載を省略することがある。
なお、本明細書において、「式(n)で表される化合物」のことを、単に「化合物(n)」と称する場合がある。
【0032】
また、本明細書において、炭素数とは、ある基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は当該基の骨格を形成する炭素原子の数を表し、該基が置換基を有する場合は当該基の骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
【0033】
エーテル性酸素原子とは、炭素−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子である。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるホモアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
(ペル)フルオロアルキル基とは、フルオロアルキル基とペルフルオロアルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のフッ素原子を有するアルキル基である。(ペル)フルオロアルコキシ基、(ペル)フルオロアリール基、(ペル)フルオロアリールオキシ基についても同様である。
【0034】
[クロスメタセシス反応]
本発明の一態様は、下記式(1)で表される化合物(化合物(1))と、下記式(2)で表される化合物(化合物(2))とをクロスメタセシス反応させることによる、下記式(3)で表される化合物(化合物(3))の製造方法に関するものである。
【0035】
【化7】
【0036】
式中、aは0または1であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Rはフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
クロスメタセシス反応においては、式(1)における二重結合の左側カルベン部分(化合物(1)からCZを除いた部分)と式(3)における二重結合の左側カルベン部分は同一となり、式(2)における二重結合の右側カルベン部分(化合物(2)からCZを除いた部分)と式(3)における二重結合の右側カルベン部分は同一となる。
【0037】
また、本発明の別の態様は、下記式(1’)で表される化合物(化合物(1’))と、下記式(2)で表される化合物(化合物(2))とをクロスメタセシス反応させることによる、下記式(3’)で表される化合物(化合物(3’))の製造方法に関するものである。
【0038】
【化8】
【0039】
式中、bは0または1であり、cは0、1または2であり、cとdの和は3であり、Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基であり、Rは炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、hは2以上の自然数を表し、複数存在するZ、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、Xがそれぞれ同一分子内に複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
クロスメタセシス反応においては、式(1’)における二重結合の左側カルベン部分(化合物(1’)からCZを除いた部分)と式(3’)における二重結合の左側カルベン部分は同一となり、式(2)における二重結合の右側カルベン部分(化合物(2)からCZを除いた部分)と式(3’)における二重結合の右側カルベン部分は同一となる。
【0040】
(原料化合物)
本発明においては、化合物(1)と化合物(2)をクロスメタセシス反応させる。
【0041】
化合物(1)及び化合物(2)において、aは0または1であり、好ましくは1である。
bは0または1であり、好ましくは0である。
cは0、1または2であり、好ましくは0である。
cとdの和は3である。すなわち、dは1、2または3であり、好ましくは3である。
【0042】
Xは塩素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、dが2または3である場合、同一分子内に複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、またはプロポキシ基が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基である。
【0043】
Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−を表し、好ましくは、単結合、エーテル性酸素原子である。
【0044】
〜Zはそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基からなる群から選ばれる基が挙げられ、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、(ペル)ハロゲン化アルキル基、(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基からなる群から選ばれる基は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含んでもよい。
【0045】
これらの中でも、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロ(メトキシメトキシ)基、ペルフルオロ(プロポキシプロポキシ)基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニルオキシ基である。
【0046】
はフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表す。
含フッ素有機基としては、例えば、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルコキシ基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基である。
【0047】
は水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表す。
含フッ素有機基としては、例えば、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルコキシ基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である。
【0048】
はフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、好ましくは、フッ素原子、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基であり、より好ましくはフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である。
【0049】
は炭素数4〜20のアリール基または炭素数1〜6のアルキル基を表し、cが2である場合、2つ存在するRは同一でも異なっていてもよい。
炭素数4〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、フェニル基、メチル基、エチル基である。
【0050】
本発明の別の態様においては、化合物(1’)と化合物(2)をクロスメタセシス反応させる。
【0051】
化合物(1’)におけるhは2以上の自然数を表し、Qはフッ素原子を含み、かつヘテロ原子を有していてもよいh価の有機基である。
hは2〜5の自然数が好ましく、2または3がより好ましい。
Qは酸素原子を含む炭素数2〜400の含フッ素有機基、酸素原子とケイ素原子を含む炭素数2〜400の含フッ素有機基等が好ましい。
なお、化合物(1’)におけるZ及びZは、先述した化合物(1)と化合物(2)とのクロスメタセシス反応における化合物(1)のZ及びZとそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様である。また、複数存在するZ、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0052】
化合物(2)におけるb〜d、X、Z、Z及びRは、先述した化合物(1)と化合物(2)とのクロスメタセシス反応における化合物(2)のb〜d、X、Z、Z及びRとそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様である。
【0053】
化合物(1)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。なお、化学式中、複数種類のオキシペルフルオロアルキレン基が並んでいる場合(例えば[−O−CF−]c5−[−O−CF−CF−]c6の場合)、当該複数種類のオキシペルフルオロアルキレン基はブロック鎖であってもランダム鎖であってもよい。
【0054】
【化9】
【0055】
【化10】
【0056】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0057】
【化11】
【0058】
化合物(1’)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0059】
【化12】
【0060】
化合物(2)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0061】
【化13】
【0062】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
(生成化合物)
本発明のクロスメタセシスにより化合物(3)が製造される。
化合物(3)中の、a、b、c、cとdの和、X、Y、R、R、R及びRは前記定義と同様である。また、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(3)としては、aが0または1、bが0、cが0、dが3、Xが塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基、Yは単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−、Rが炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である化合物が好ましい。
【0065】
化合物(3)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0073】
【化21】
【0074】
【化22】
【0075】
本発明のクロスメタセシスにより化合物(3’)が製造される。
化合物(3’)中の、b、c、cとdの和、X、Q、R及びhは前記定義と同様である。
化合物(3’)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0076】
【化23】
【0077】
(製造方法)
本発明はクロスメタセシスによる含フッ素シラン化合物の製造方法に関するものであり、「化合物(1)及び化合物(2)」と、または「化合物(1’)及び化合物(2)」と触媒とを接触させることによってクロスメタセシスを行い、原料とは異なるオレフィン(化合物(3)または化合物(3’))を得るものである。
【0078】
化合物(1)、化合物(1’)及び化合物(2)の、二重結合上の幾何異性は特に限定はない。
目的物収率向上の点で、化合物(1)、化合物(1’)及び化合物(2)は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。化合物(1)、化合物(1’)及び化合物(2)について、前記脱気及び脱水操作は通常触媒と接触させる前に行う。
【0079】
また化合物(1)、化合物(1’)及び化合物(2)は微量の不純物(例えばフッ化水素、過酸化物)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば、文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
【0080】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)は、反応容器にあらかじめ混合してから投入しても、別々に投入しても構わない。第一のオレフィンを触媒と接触させて得られた混合物に、第二のオレフィンを接触させる場合もある。
【0081】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)のモル比に特に限定はないが、通常基準となるオレフィン1モルに対して、もう一方のオレフィンを0.01〜100モル用い、好ましくは、0.1〜10モル用いる。
【0082】
触媒は試薬として投入しても、系内で発生させてもよい。
試薬として投入する場合、市販の触媒をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない触媒を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した触媒を本発明に用いることができる。
【0083】
触媒としては、例えば、金属−カルベン錯体化合物が挙げられる。
【0084】
金属−カルベン錯体化合物のうち金属がルテニウムである化合物は、一般的にルテニウム−カルベン錯体と称されるものであり、例えばVougioukalakis,G.C.et al.Chem.Rev.,2010,110,1746−1787.に記載されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。
また、例えばAldrich社やUmicore社から市販されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。
【0085】
ルテニウム−カルベン錯体の具体例としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−3−メチル−2−ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジシクロヘキシル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[ビス(3−ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが挙げられる。
【0086】
これらの中でも、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが特に好ましい。
【0087】
なお、上記錯体のうち、「Umicore」で始まる名称は、Umicore社の製品の商品名である。また、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
【0088】
金属−カルベン錯体化合物のうち金属がモリブデンまたはタングステンである化合物は、一般的にモリブデン−カルベン錯体やタングステン−カルベン錯体と称されるものであり、例えばGrela,K.(Ed)Olefin Metathesis:Theory and Practice,Wiley,2014.に記載されているモリブデン−カルベン錯体またはタングステン−カルベン錯体を利用することができる。
また、例えばAldrich社やStrem社から市販されているモリブデン−カルベン錯体またはタングステン−カルベン錯体を利用することができる。
【0089】
なお、上記モリブデン−カルベン錯体またはタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
【0090】
モリブデン−カルベン錯体の具体例を下記に示す。
なお、Meとはメチル基を、i−Prとはイソプロピル基を、t−Buとはターシャリーブチル基を、Phとはフェニル基を、それぞれ意味する。
【0091】
【化24】
【0092】
【化25】
【0093】
タングステン−カルベン錯体の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0094】
【化26】
【0095】
触媒の量としては、特に制限はないが、化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)の内、基準となるオレフィン1モルに対して、通常0.0001〜1モル用い、好ましくは、0.001〜0.2モル用いる。
【0096】
触媒は、通常固体のまま反応容器に投入するが、溶媒に溶解または懸濁させて投入してもよい。
【0097】
この時用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独または混合して用いることができる。なお、これらの溶媒分子中、一部またはすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
【0098】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒を使用することができる。
【0099】
含フッ素有機溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパンを使用することができる。
【0100】
イオン液体としては、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩を用いることができる。
【0101】
上記溶媒の中でも、触媒の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、及びこれらの混合物が好ましい。
【0102】
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常触媒と接触させる前に行う。
【0103】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる雰囲気としては、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素またはアルゴン雰囲気下が好ましい。
ただし、反応条件において気体となるオレフィンを原料として用いる場合、これらの気体雰囲気下で行うことができる。
【0104】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)のうち少なくとも一方が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。
【0105】
このとき用いる溶媒としては、上記、触媒の溶解または懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)のうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
【0106】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる容器としては、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器またはガラス製容器を用いることができる。なお、本発明にかかるクロスメタセシスは反応条件下、気体状態のオレフィンを扱うことがあるので、高気密が可能な耐圧容器が好ましい。
【0107】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる温度としては、特に制限はないが、通常−100〜200℃の範囲で実施することができ、反応速度の点で、0〜150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
【0108】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは、0.01〜1MPa程度である。
【0109】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させる際に、反応に悪影響を及ぼさない範囲で無機塩や有機化合物、金属錯体を共存させてもよい。
【0110】
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒との混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法としては、メカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いることができる。
【0111】
化合物(1)または化合物(1’)及び化合物(2)と触媒とを接触させた後、目的物は通常複数のオレフィンの混合物として得られるため、公知の方法で単離してもよい。
単離方法としては、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLCが挙げられ、必要に応じてこれらを単独または複数組み合わせて用いることができる。
【0112】
本反応で得られた化合物(3)または化合物(3’)は、通常の有機化合物と同様の公知の方法で同定することができる。例えば、H−,19F−,13C−NMRやGC−MSが挙げられ、必要に応じてこれらを単独または複数組み合わせて用いることができる。
【0113】
[化合物(4)]
また、本発明は、下記式(4)で表される化合物(化合物(4))に関するものである。
化合物(4)は化合物(3)の一例であり、化合物(1)として下記の化合物(4−1)及び化合物(2)として下記の化合物(4−2)を上記に記載した方法にて触媒と接触させることによってクロスメタセシス反応を行い、得ることができる。
【0114】
【化27】
【0115】
式中、R11は1価の含フッ素有機基を表す。
含フッ素有機基としては、例えば、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルコキシ基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基である。
【0116】
〜Z、c、cとdの和、Y、R、R及びRは前記化合物(1)〜(3)における定義とそれぞれ同様である。
また、R11、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(4)としては、cが0、dが3、Yが単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−、R11が炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である化合物が好ましい。
【0117】
化合物(4)の具体例としては、下記に示す化合物が挙げられる。
【0118】
【化28】
【0119】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0120】
【化29】
【0121】
[化合物(5)]
また、本発明は、下記式(5)で表される化合物(化合物(5))に関するものである。
化合物(5)は化合物(3)の一例であり、化合物(1)として下記の化合物(5−1)及び化合物(2)として下記の化合物(5−2)を上記に記載した方法にて触媒と接触させることによってクロスメタセシス反応を行い得ることができる。
【0122】
【化30】
【0123】
〜Z、b、c、cとdの和、Y、R、R、R及びRは前記化合物(1)〜(3)における定義とそれぞれ同様である。また、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(5)としては、bが0、cが0、dが3、Yが単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−、Rが炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である化合物が好ましい。
【0124】
化合物(5)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0125】
【化31】
【0126】
【化32】
【0127】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0128】
【化33】
【0129】
[化合物(6)]
また、本発明は、下記式(6)で表される化合物(化合物(6))に関するものである。
化合物(6)は化合物(3)の一例であり、化合物(1)として下記の化合物(6−1)及び化合物(2)として下記の化合物(6−2)を上記に記載した方法にて触媒と接触させることによってクロスメタセシス反応を行い得ることができる。
【0130】
【化34】
【0131】
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rが同一分子内に複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、またはプロピル基が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、メチル基、エチル基である。
〜Z、c、cとdの和、Y、R、R、R及びRは前記化合物(1)〜(3)における定義と同様である。また、R、R、およびRからなる群から選ばれる任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(6)としては、cが0、dが3、Yが単結合、エーテル性酸素原子または−CHO−、Rが炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルコキシ基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基、Rがフッ素原子、トリフルオロメチル基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数2〜400の(ペル)フルオロアルキル基である化合物が好ましい。
【0132】
化合物(6)の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
【0133】
【化35】
【0134】
これらの中でも、好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
【0135】
【化36】
【実施例】
【0136】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0137】
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いた。
溶媒(クロロホルム−d)は、Sigma−Aldrich社製「クロロホルム−d」をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
【0138】
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置「JNM−AL300」によりH−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。
【0139】
<実施例1>UmicoreM73SIPr触媒によるC17−CH−CH=CHとトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.217mmol)、トリクロロビニルシラン(10.9mmol、1.76g、5モル当量)、C17−CH−CH=CH(2.17mmol、1.00g、1モル当量)及びクロロホルム−d(3.5mL)を10mLのフラスコの中に量り入れた。
【0140】
フラスコを60℃で加熱し2時間反応させた。反応終了後、NMRを測定して下記式Aで表される化合物Aの生成を確認した。収率は74%であった。また、減圧蒸留により化合物Aを単離した。
これら一連の反応を以下に示す。
【0141】
【化37】
【0142】
得られた化合物Aの評価結果を以下に示す。
【0143】
(化合物A)
H−NMR(CDCl、300MHz、テトラメチルシラン基準):δ(ppm)3.07(2H、dt、J=6,17Hz)、6.14(1H、d、J=18Hz)、6.61(1H、dt、J=6,18Hz).
19F−NMR(CDCl、283MHz、トリクロロフルオロメタン基準):δ(ppm)−81.2(3F、t、J=11Hz)、−112.8(2F、t、J=17Hz)、−122.2−−122.4(6F、m)、−123.2−−123.4(4F、m)、−126.6(2F).
【0144】
<実施例2>UmicoreM73SIPr触媒によるペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(1)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、ペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(1)(0.06mmol、lの平均値:20、平均分子量:4000、0.24g、1モル当量)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Bの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0145】
【化38】
【0146】
<実施例3>UmicoreM73SIPr触媒によるペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(3)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.003mmol)、トリクロロビニルシラン(0.15mmol、25mg、5モル当量)、ペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(3)(0.03mmol、mの平均値:21、nの平均値:24、平均分子量:4800、0.15g)及び1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.44mL)、クロロホルム−d(0.11mL)をNMR測定管の中に量り入れた。NMR管を60℃で加熱し3時間反応させた。反応終了後、NMRを測定して化合物Dの生成を確認した。収率は56%であった。
これら一連の反応を以下に示す。
【0147】
【化39】
【0148】
<実施例4>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(4)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(4)(0.06mmol、11mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Eの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0149】
【化40】
【0150】
<実施例5>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(5)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(5)(0.06mmol、15mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Fの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0151】
【化41】
【0152】
<実施例6>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(6)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(6)(0.06mmol、19mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Gの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0153】
【化42】
【0154】
<実施例7>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(7)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(7)(0.06mmol、12mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Hの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0155】
【化43】
【0156】
<実施例8>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(8)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(8)(0.06mmol、22mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Iの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0157】
【化44】
【0158】
<実施例9>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(9)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(9)(0.06mmol、17mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Jの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0159】
【化45】
【0160】
<実施例10>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(10)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(10)(0.06mmol、13mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Kの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0161】
【化46】
【0162】
<実施例11>UmicoreM73SIPr触媒による含フッ素オレフィン(11)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロビニルシラン(0.30mmol、48mg、5モル当量)、含フッ素オレフィン(11)(0.06mmol、18mg)及びクロロホルム−d(0.56mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Lの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0163】
【化47】
【0164】
<実施例12>UmicoreM73SIPr触媒によるC17−CH−CH=CHとビニルトリメトキシシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、ビニルトリメトキシシラン(0.30mmol、44mg、5モル当量)、C17−CH−CH=CH(0.06mmol、28mg、1モル当量)及びクロロホルム−d(0.54mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Mの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0165】
【化48】
【0166】
<実施例13>UmicoreM73SIPr触媒によるC17−CH−CH=CHとトリクロロアリルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.006mmol)、トリクロロアリルシラン(0.30mmol、52mg、5モル当量)、C17−CH−CH=CH(0.06mmol、28mg、1モル当量)及びクロロホルム−d(0.54mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Nの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0167】
【化49】
【0168】
<実施例14>UmicoreM73SIPr触媒によるC17−CH−CH=CHとトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
実施例1におけるUmicoreM73SIPr触媒の使用量を0.1mol%(0.00217mmol)に変更した以外は実施例1と同様な方法により化合物Aの生成を確認する。
【0169】
<実施例15>UmicoreM73SIPr触媒によるC17−CH−CH=CHとトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
実施例1における溶媒を重ベンゼン(C)に変更した以外は実施例1と同様な方法により化合物Aの生成を確認する。
【0170】
<実施例16>Grubbs第二世代触媒によるC17−CH−CH=CHとトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
実施例1における触媒をGrubbs第二世代触媒(10mol%、0.006mmol)に変更した以外は実施例1と同様な方法により化合物Aの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0171】
【化50】
【0172】
<実施例17>UmicoreM73SIPr触媒によるペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(12)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.003mmol)、トリクロロビニルシラン(0.15mmol、24mg、5モル当量)、ペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(12)(0.03mmol、0.11g)及び1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.44mL)、クロロホルム−d(0.11mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Oの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0173】
【化51】
【0174】
<実施例18>UmicoreM73SIPr触媒によるペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(13)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.003mmol)、トリクロロビニルシラン(0.15mmol、24mg、5モル当量)、ペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(13)(0.03mmol、55mg)及び1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.44mL)、クロロホルム−d(0.11mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Pの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0175】
【化52】
【0176】
<実施例19>UmicoreM73SIPr触媒によるペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(14)とトリクロロビニルシランのクロスメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(0.003mmol)、トリクロロビニルシラン(0.15mmol、24mg)、ペルフルオロポリエーテル基含有オレフィン(13)(0.13g)及び1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.44mL)、クロロホルム−d(0.11mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を60℃で加熱し2時間反応させる。反応終了後、NMRを測定して化合物Qの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
【0177】
【化53】
【0178】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年3月2日出願の日本特許出願(特願2017−039894)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の製造方法に係る含フッ素シラン化合物は、医農薬中間体、指紋除去剤、防汚剤、防湿コーティング剤として利用可能である。
【国際調査報告】