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再表2018-159748Fe−Ni系合金薄板の製造方法およびFe−Ni系合金薄板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】Fe−Ni系合金薄板の製造方法およびFe−Ni系合金薄板
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/22 20060101AFI20191129BHJP
   B21B 37/40 20060101ALI20191129BHJP
   B21B 3/02 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B21B1/22 J
   B21B37/40 Z
   B21B3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2019-503103(P2019-503103)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-38361(P2017-38361)
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 章博
(72)【発明者】
【氏名】安田 信隆
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AD05
4E002BB13
4E002BC05
4E002CA02
4E002CA08
4E002CA09
4E124AA02
4E124AA07
4E124AA08
4E124BB01
4E124DD05
4E124EE16
(57)【要約】
少ないトリミング量で良好な平坦度を得ることができるFe−Ni系合金薄板およびその製造方法を提供する。
Fe−Ni系合金熱間圧延材を用いた冷間圧延用素材に冷間圧延を施して厚さ0.4mm以下の中間冷延素材を作製する中間冷間圧延工程と、前記中間冷延素材を冷間圧延して厚さ0.2mm以下の薄板とする仕上冷間圧延工程と、前記薄板に形状矯正を行う形状矯正工程とを含み、前記仕上冷間圧延工程では、中間ロールシフト機構を有する多段圧延機を用い、中間ロール端部と中間冷延素材端部との間の平行距離である中間ロールシフト量を0〜+9mmに調整して冷間圧延が行われ、前記形状矯正工程では、伸び率0.3〜0.7の形状矯正が行われることを特徴とする、Fe−Ni系合金薄板の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe−Ni系合金熱間圧延材を用いた冷間圧延用素材に冷間圧延を施して厚さ0.4mm以下の中間冷延素材を作製する中間冷間圧延工程と、
前記中間冷延素材を冷間圧延して厚さ0.2mm以下の薄板とする仕上冷間圧延工程と、
前記薄板に形状矯正を行う形状矯正工程とを含み、
前記仕上冷間圧延工程では、中間ロールシフト機構を有する多段圧延機を用い、中間ロール端部と中間冷延素材端部との間の平行距離である中間ロールシフト量を0〜+9mmに調整して冷間圧延が行われ、
前記形状矯正工程では、伸び率0.3〜0.7の形状矯正が行われることを特徴とする、Fe−Ni系合金薄板の製造方法。
【請求項2】
前記仕上冷間圧延工程での冷間圧延率は、15〜50%であることを特徴とする、請求項1に記載のFe−Ni系合金薄板の製造方法。
【請求項3】
前記薄板の板幅が500〜1200mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のFe−Ni系合金薄板の製造方法。
【請求項4】
厚さが0.2mm以下のFe−Ni系合金薄板において、
前記薄板の圧延直角方向両端部には、前記圧延直角方向の最大長さが前記薄板幅の10%以内である耳波を有し、
前記耳波が、前記薄板の圧延方向長さ800mmあたりで、薄板の圧延直角方向両端部にそれぞれ10個以上形成されていることを特徴とする、Fe−Ni系合金薄板。
【請求項5】
前記薄板幅の10%を超える最大幅を有する耳波が、薄板の圧延直角方向両端部に800mmあたりそれぞれ3個以下であることを特徴とする、請求項4に記載のFe−Ni系合金薄板。
【請求項6】
前記薄板の板幅が500〜1200mmであることを特徴とする、請求項4または5に記載のFe−Ni系合金薄板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リードフレームやメタルマスク等に使用されるFe−Ni系合金薄板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードフレームやメタルマスク等に使用されるFe−Ni系合金薄板は、性能向上のために従来より様々な検討がなされている。このFe−Ni系合金薄板は様々な要求に対応するために薄型化が進んでいるが、それに伴う形状不良の発生増加が懸念されている。この形状不良として代表的なものに、薄板の圧延直角方向(以下、幅方向とも記載する。)両端部に形成される耳波が知られている。耳波とは薄板の幅方向両端部に発生する波形状であり、薄板端部の圧延方向長さが薄板中央部の圧延方向長さよりも長い場合に形成される。過大な耳波は薄板の巻取り時に板の曲がりや蛇行等の不具合を発生させたり、薄板にフィルムを接着する場合に薄板とフィルム等との密着性を低下させる原因となる。
【0003】
このような耳波を低減させるために、従来より様々な検討が行われている。耳波を抑制する技術としては、中間ロールシフト機能を有した多段圧延機が一般的に知られている。特許文献1には、中間ロールシフト機能により中間ロールの端部を、金属帯の側端部付近あるいは側端部よりも内側に変位させることで、金属帯の側端部付近のワークロールの押圧力を減少させ、耳波を抑制する方法について記載されている。
【0004】
特許文献2には、微視的には規則的な凹凸を有し、その凹凸によって構成される巨視的なパターンがロールの軸方向に異なることを特徴とする圧延用ワークロールを用いて、ロールクロス圧延により耳波の発生を抑制する冷間圧延方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−010816号公報
【特許文献2】特開平7−256313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平坦な薄板を得るためには、上述した薄板の両端部に発生する耳波の幅方向長さを抑えることが重要である。この耳波の幅方向長さが大きいと、ある程度平坦な薄板を得るために、薄板の両端部を大きく切断(トリミング)する必要があり、歩留り低下を招く。特許文献1の発明は耳波を抑制する方法としては有用ではあるが、側端部のロール押圧力を減少させたことにより、薄板の幅方向中央部のロール押圧力が上昇するため、中伸び(薄板の幅方向中央部に形成される波形状)といった別の形状不良が発生する可能性が高い。また特許文献2の発明も、両端部における耳波の急峻度を小さくすることができる発明であるが、材質や形状不良の形態によって公差角やロールの種類を変更する必要が生じるため、生産性が低下する傾向にある。また、耳波の幅方向長さを小さくすることに関しては、記載されていない。
本発明の目的は、耳波の形成範囲を制御することで、少ないトリミング量で良好な平坦度を得ることができるFe−Ni系合金薄板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、Fe−Ni系合金熱間圧延材を用いた冷間圧延用素材に冷間圧延を施して厚さ0.4mm以下の中間冷延素材を作製する中間冷間圧延工程と、
前記中間冷延素材を冷間圧延して厚さ0.2mm以下の薄板とする仕上冷間圧延工程と、
前記薄板に形状矯正を行う形状矯正工程とを含み、
前記仕上冷間圧延工程では、中間ロールシフト機構を有する多段圧延機を用い、中間ロール端部と中間冷延素材端部との間の平行距離である中間ロールシフト量を0〜+9mmに調整して冷間圧延が行われ、
前記形状矯正工程では、伸び率0.3〜0.7の形状矯正が行われることを特徴とする、Fe−Ni系合金薄板の製造方法である。
好ましくは、仕上冷間圧延工程での冷間圧延率は、15〜50%である。
好ましくは、前記薄板の板幅が500〜1200mmである。
【0008】
本発明の他の一態様は、厚さが0.2mm以下のFe−Ni系合金薄板において、
前記薄板の圧延直角方向両端部には、前記圧延直角方向の最大長さが前記薄板幅の10%以内である耳波を有し、
前記耳波が、前記薄板の圧延方向長さ800mmあたりで、薄板の圧延直角方向両端部にそれぞれ10個以上形成されているFe−Ni系合金薄板である。
好ましくは、薄板幅の10%を超える最大幅を有する耳波が、薄板の圧延直角方向両端部に800mmあたりそれぞれ3個以下である。
好ましくは、前記薄板の板幅が500〜1200mmである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄板の両端に微小な耳波を意図的に形成させることで、過大な耳波や中伸び等の発生を抑制することができる。これにより、少ないトリミング量で良好な平坦度を有するFe−Ni系合金薄板を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のFe−Ni系合金薄板の形状を説明するための模式図である。 (a)は上面図、(b)は端部近辺の斜視図である。
図2】比較例のFe−Ni系合金薄板の形状を説明するための上面模式図である。
図3】本実施形態で使用した仕上圧延機の概略図である。
図4】本発明例1と比較例11の薄板の急峻度を表したグラフである。
図5】本発明例2と比較例12,13の薄板の急峻度を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず本発明のFe−Ni系合金薄板の製造方法について一実施形態を説明する。
<熱間圧延材組成>
本実施形態では、例えば、質量%でNi+Co:35.0〜43.0%(但し、Coは0〜6.0%)、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、残部はFe及び不純物からなる組成を有する熱間圧延材に適用することができる。上記の組成を有することで、低熱膨張性を有するFe−Ni系合金薄板を得ることができる。
[Ni+Co:35.0〜43.0%(但し、Coは0〜6.0%)]
Ni及びCoは、低熱膨張性を得るために35.0〜43.0%の範囲に調整することが好ましい。なお、Coは必ずしも添加の必要はないが、CoにはFe−Ni系合金を高強度とする作用があるため、特に厳しいハンドリング性を求められるような、薄い板厚では6.0%までの範囲で、Niの一部をCoで置換することができる。
【0012】
[Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下]
Si、Mnは通常Fe−Ni系合金では、脱酸を目的に微量含有されているが、過剰に含有すれば偏析を起こし易くなるため、Siは0.5%以下とし、Mnは1.0%以下とすることが好ましい。なお、SiとMnの下限は特に限定しないが、前述のように脱酸元素として添加されることから、Siは0.05%、Mnは0.05%は少なからず残留する。
[残部はFe及び不純物]
上記の元素以外は実質的にFeであれば良いが、製造上不可避的な不純物は含まれる。特に制限の必要な不純物元素にはCがあり、例えば、エッチングを行う用途に使用するのであれば、その上限を0.05%とすると良い。
また、プレス打抜き性を向上させる場合はS等の快削性元素を0.020%以下で含有させても良い。熱間加工性を向上させるようなB等の元素を0.0050%以下で含有させても良い。
【0013】
<冷間圧延用素材>
本発明では、前述の熱間圧延材を用いて冷間圧延用素材とすることができる。熱間圧延材には酸化層が形成されていることから、その酸化層を、例えば、機械的、或いは化学的に除去することがよい。また、冷間圧延中の冷間圧延材のエッジから割れ等の不良が発生しないように、エッジをトリミングしてもよい。このような加工を行って冷間圧延用素材とすることができる。
【0014】
次に、冷間圧延工程について、詳しく説明する。
<中間冷間圧延>
本実施形態における中間冷間圧延工程では、冷間圧延用素材に冷間圧延を施して厚さ0.4mm以下の中間冷延素材を作製する。この中間冷延素材の厚さが0.4mmを超える場合、後述する仕上冷間圧延の圧下率が高くなりすぎ、仕上冷間圧延後の薄板に過大な耳波や中伸びが多く発生する傾向にある。この中間冷間圧延工程では、冷間圧延を1回以上行うことができ、圧下率も目的に合わせて適宜設定することができる。より低コストかつ機械特性を向上させるためには、圧下率を85%以上として1回のみ冷間圧延を行う中間冷間圧延工程とすることが好ましい。圧下率の上限は特に定めないが、圧下率が99%を超えると過大な圧延時間によるコストの増大を招く可能性があるため、99%に上限を設定することができる。なお圧下率を85%以上に設定する場合は、上述した熱間圧延材の厚さを2mm以上とすることが好ましい。また熱間圧延材が厚すぎると冷間圧延工程中のパス回数が増えたり、圧延中のFe−Ni系合金の形状の調整が困難になる可能性があるため、用いる熱間圧延材の厚さの上限を5mmとすることが好ましい。
【0015】
<軟化焼鈍>
本実施形態では、前述した中間冷間圧延で加工硬化した中間冷延素材の歪を除去して軟化させるために、軟化焼鈍を行ってもよい。これにより、後述する仕上冷間圧延において所望の板厚に調整し易くなる傾向にある。中間冷間圧延工程にて複数回の冷間圧延を行う場合は、その冷間圧延の間に軟化焼鈍を行ってもよい。本実施形態では、薄板の結晶粒の形状を整えるために800℃以上の温度で軟化焼鈍を行うことが好ましい。また温度が高すぎると所望の特性が得られなくなる可能性があるため、上限を1100℃に設定することが好ましい。なおこの軟化焼鈍は、所望の温度に設定された加熱炉に中間冷延素材を連続的に通して行うことができる。例えば、中間冷延素材がロール状に巻かれた状態から引き出し、加熱炉に通板させ、コイル状に巻き取る方法で行うことができる。
【0016】
<仕上冷間圧延>
本実施形態の製造方法では、前述した中間冷間圧延工程の後、または前述した軟化焼鈍の後の中間冷延素材に仕上冷間圧延を施す。この仕上冷間圧延工程の際に使用する圧延機には、図3に示すような中間ロールシフト機構を有する多段圧延機を用い、中間ロールシフト量が0〜+9mmとなるように調整する。このように調整することで、薄板の端部に荷重を集中させ、最大幅方向長さが前記薄板幅の10%以下である耳波(以下、微小耳波とも記載する。)を薄板端部に意図的に集中して形成させることが可能である。この中間ロールシフト量が0mm未満(負値)の場合、薄板に形成される耳波の幅方向長さが過大となったり、幅方向中央部に波形状(中伸び)が発生する傾向にあるため、好ましくない。中間ロールシフト量が+9mmを超える場合、薄板の端部にかかる荷重が大きくなりすぎるため、極端な端部板厚の減少や、端部割れの原因となる傾向にある。より好ましい中間ロールシフト量の上限は、+6mmである。なお本実施形態での中間ロールシフト量とは、図3に示すように中間ロールの端部(テーパー端部)Q1、Q2と中間冷延素材の端部P1、P2との距離D1、D2を示す。中間ロールシフト量が「+」の場合、中間ロールのテーパ端部Q1、Q2が薄板の端部P1、P2よりもロール軸方向外側に位置していることを示し、中間ロールシフト量が「−」の場合、中間ロールのテーパ端部Q1、Q2が薄板の端部P1、P2よりもロール軸方向内側に位置している(Q1がP1よりも図3における左方向に位置している、またはQ2がP2よりも図3における右方向に位置している)ことを示す。
【0017】
本実施形態の製造方法は、仕上冷間圧延時の圧延前方張力を20〜40kgf/mm、圧延荷重を80〜120tonに調整することが好ましい。これにより、前述した微小耳波をより形成させやすくなる傾向にある。圧延前方張力および圧延荷重が上記の値の範囲外になった場合、過大な耳波等の形状不良が発生しやすくなるため、好ましくない。また、仕上冷間圧延時の圧下率は、50%以下と設定することができる。50%を超えると薄板の幅方向中央部にも大きな荷重がかかりやすくなるため、中伸び不良が発生しやすくなる傾向にある。好ましい圧下率の上限は、45%であり、さらに好ましくは40%である。なお圧下率の下限は特に限定しないが、圧下率が小さすぎると所望の微小耳波が形成できない可能性があるため、15%と設定することができる。好ましい圧下率の下限は、20%である。なお仕上冷間圧延は、薄板表面疵を抑制しつつ低コストで圧延するために、1パスで圧延することが好ましい。
【0018】
本実施形態の圧延形態を最適に発揮するためには、仕上冷間圧延後の厚さは0.2mm以下とする。好ましくは、0.15mm以下である。なお下限は特に限定しないが、材料が薄すぎると形状変化が生じやすくなる傾向にあるため、0.02mmと設定することができる。本発明のFe−Ni系合金薄板は、広幅な薄板に適用することが好ましく、具体的には板幅が500〜1200mmであることが好ましい。より好ましい板幅の下限は600mmであり、さらに好ましい板幅の下限は700mmである。また好ましい板幅の上限は1100mmであり、さらに好ましくは1000mmである。
【0019】
<形状矯正工程>
本実施形態の製造方法では、仕上冷間圧延を終えた薄板に形状矯正を行う。これにより薄板に残存している耳波や中伸びを矯正し、平坦度を大幅に向上させることが可能となる。この形状矯正に用いる装置は、ローラレベラーやテンションレベラー等、従来から用いられている形状矯正装置を使用することができる(本実施形態ではテンションレベラーを使用する)。ここで形状矯正は、伸び率を0.3〜0.7に設定する。伸び率が0.7を超える場合、新たな中伸びや耳波は薄板に発生する可能性があるため、好ましくない。また伸び率が0.3未満となる場合、波形状を矯正しきれない可能性があるため、好ましくない。好ましい伸び率の下限は0.4であり、好ましい伸び率の上限は0.6である。本実施形態の製造方法で得られたFe−Ni系薄板は、巻取り機によってコイル状に巻きとって薄板コイルとし、次工程に供給することができる。
【0020】
本実施形態の製造方法で得られた薄板は、過大な耳波や中伸びの発生が抑制され、良好な平坦度を有するため、低コスト化のためにトリミングを行わずに使用することも可能である。但し、より平坦度を向上させたい場合は、形状矯正を終えた薄板の幅方向両端部をトリミングすることが好ましい。本実施形態の製造方法で得られる薄板は、従来よりも少ないトリミングで微小耳波の大部分を除去できるため、非常に平坦度が高い(急峻度が低い)薄板を得ることが可能である。例えば本実施形態では形状矯正後の薄板両端部を、薄板幅の1〜9%トリミングすることで、トリミング量を抑えて歩留まりの低下を抑制しつつ、最大急峻度が0.5%以下である平坦度が高い薄板を得ることが可能である。より好ましいトリミング量の下限は、4%である。なお、平坦度の向上を重視する場合は、薄板両端部を薄板幅の10〜20%(より好ましくは10〜16%)トリミングする。これにより、得られる薄板の最大急峻度を0.3%以下にすることが可能となる。
【0021】
続いて本発明のFe−Ni系合金薄板の一実施形態について説明する。図1に本発明の一実施形態の薄板の波形状を示す。図2に比較例の本発明の薄板の模式図を示す(圧延方向長さLは800mmを想定)。上述した製造方法によって作製された本発明のFe−Ni系合金薄板(トリミングする前)は薄板の圧延直角方向(幅方向)両端部に、最大長さWmが薄板幅Wの10%以下である耳波2(微小耳波)が形成されており、前記薄板の圧延方向の800mm長さにおける微小耳波が、薄板両端部にそれぞれ10個以上形成されていることを特徴とする。一般的に圧延率が同じ場合、耳波と中伸びの発生量はトレードオフの関係にある。本実施形態では、幅方向最大長さが短い耳波(微小耳波)を薄板端部の狭い領域に意図的に多数形成させることで、幅方向最大長さが薄板幅の10%を超える耳波(過大耳波)や、中伸びの発生を抑制することができる。その効果により、薄板両端部に対して大きなトリミングを必要とせずに、良好な平坦性を有する薄板を得ることが可能である。好ましい耳波の幅方向最大長さWmは、薄板幅の8%以下である。この微小耳波が形成されなかった場合、過大な耳波や中伸びが形成されやすくなる傾向にある。そのため平坦度の良い薄板を得るために薄板両端部を大きくトリミングして耳波を除去しなければならないため、歩留りの低下に繋がる。なお、微小耳波の幅方向最大長さは小さいほど好ましいが、0%にすることが製造上困難なため、薄板幅の1%を下限と設定してもよい。また本実施形態の微小耳波の最大浮上がり高さは、大きすぎると耳波の幅方向最大長さが大きくなる傾向にあるため、1.0mm以下であることが好ましい。より好ましい高さは、0.7mm以下である。浮上がり高さの値も小さいほど好ましいが、0mmは製造上困難ため、0.01mmと下限を設定してもよい。このような浮上り高さは、試料を水平定盤上に載置し、レーザー変位計(三次元形状測定機)装置等を用いることで測定することができる。
【0022】
上述したように、本実施形態における微小耳波の個数は、800mm長さの薄板において、幅方向両端部にそれぞれ10個以上形成させることが必要である。微小耳波が10個未満の場合、耳波の幅方向最大長さが薄板幅の10%を超えるような過大な耳波が発生しやすくなる。微小耳波が増加するほど過大耳波の形成が抑制され、薄板の平坦度が向上する傾向にあるので、好ましい微小耳波個数の下限は12個とすることができる。個数の上限は特に設定しないが、製造の容易さを考慮すると、耳波の個数上限は30個と設定することもできる。一方で薄板幅の10%を超える過大耳波は、薄板の幅方向両端部にそれぞれ3個以下であることが好ましい。これにより、薄板の平坦度をより向上させることが可能である。ここで本実施形態の耳波個数は、例えば、薄板を800mmの長さに切断して水平定盤上に載置し、レーザー変位計(三次元形状測定機)装置を用いて計測することができる。その際本実施形態では、図1(b)に示すように、薄板上面に向かって凸形状であり、高さが0.2mm以上の部分を耳波として、その耳波2aの個数を計測する(薄板下面に向かって凸形状である耳波2bは計測しない。)。この他にも、光学顕微鏡等の既存の測定装置等を用いて、目視で耳波を計測してもよい。なお幅方向最大長さとは図1(a)に示すように、薄板の端部から板幅垂直方向の耳波最大長さWmを示す。図1(a)の点線で示す部分が、薄板両端部における0.2mm以上の浮き上がりを有する部分であり、その幅方向の長さを耳波最大長さWmとしている。
【実施例】
【0023】
表1の組成を有するFe−Ni系合金に熱間プレス及び熱間圧延を行って厚さ3.0mmの熱間圧延材を準備した。前述の熱間圧延材を化学研摩、機械研磨にて熱間圧延材表面の酸化層を除去し、トリム加工で素材幅方向の両端部にある熱間圧延時の亀裂を除去して厚さ1.55mmの冷間圧延用素材を準備した。なお、冷間圧延用素材の幅は850mm、730mmの2種類を準備した。次に、前述の冷間圧延用素材を本発明例と比較例に分け、中間冷間圧延、軟化焼鈍、仕上冷間圧延を施してFe−Ni系合金薄板とした。本発明例および比較例の中間冷間圧延は、前述した冷間圧延用素材を用いて、圧下率85%、パス数を10パスとし、厚さ0.125mmの中間冷延素材を作製した。その後、本発明例および比較例ともに、温度900℃、保持時間0.36分で軟化焼鈍を行い、本発明例と比較例の試料を作成した。本発明例No.1と比較例No.11の試料が薄板幅850mmであり、本発明例No.2と比較例No.12、No.13の試料が薄板幅730mmである。本発明例No.1は圧延前方張力35kgf/mm、圧延荷重100〜115ton、中間ロールシフト量+5mmの条件で仕上冷間圧延を行い、本発明例2は圧延前方張力36kgf/mm、圧延荷重80〜95ton、中間ロールシフト+2mmの条件で仕上冷間圧延を行った。比較例No.11は中間ロールシフト量を+10mmに変更し、圧延前方張力と圧延荷重は本発明例1と同じ条件とした。比較例No.12、No.13も中間ロールシフト量を+10mmに設定し、圧延前方張力と圧延荷重は本発明例2と同じ条件とした。仕上冷間圧延時の圧下率は本発明例、比較例ともに36%であり、パス数も1パスとし、厚さ0.08mmの薄板とした。その後、本発明例、比較例ともに、仕上冷間圧延後に伸び率0.6、張力(ユニットテンション)60kgf/mmの条件でテンションレベラーによる形状矯正を行い。仕上げ冷間圧延後に熱処理は行わなかった。形状矯正後の薄板については、長さ方向を圧延方向として、長さ800mmに切断して、長さ800mm、幅850mmまたは730mm、厚さ0.08mmの試験片を作製し、微小耳波(幅方向最大長さが薄板幅の10%以内)個数、過大耳波(幅方向最大長さが薄板幅の10%を超える)個数、最大急峻度を測定した。この時の耳波個数は三次元形状測定器で計測し、急峻度も三次元形状測定器を用いて、その試験片を水平定盤に置いた状態の浮上り高さから導出した。その結果を表2に示す。なお表2における最大急峻度(全体)とは、薄板全体における急峻度の最大値であり、最大急峻度(4%除外)と最大急峻度(10%除外)とは、それぞれ薄板端部から薄板幅の4%の位置までの急峻度を除外した最大急峻度の値と、薄板端部から薄板幅の10%の位置までの急峻度を除外した最大急峻度の値を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表2(表2において、一端側を端部a、他端側を端部bとした)に示すように本発明の試料No.1は、幅方向長さが85mm(薄板幅の10%)以下である耳波(微小耳波)が、両端部にそれぞれ15個程度形成されており、本発明例の試料No.2は幅方向長さが73mm(薄板幅の10%)以下の耳波(微小耳波)が両端部に11個程度形成されていることを確認した。幅方向最大長さが薄板幅の10%を超える過大耳波も試料No.1では端部b側で1個確認されたのみであり、試料No.2では両端部に1個ずつ確認されたのみであった。端部における最大急峻度はNo.1が0.3%、No.2が0.6%であり、さらに端部から幅4%までの範囲を除外した急峻度の値はNo.1、No.2ともに0.3%、端部から幅10%までの範囲を除外した急峻度の値はNo.1、No.2ともに最大急峻度の値が0.1%と非常に良好な値を示した。No.1がNo.2よりも急峻度の値が良かった理由としては、No.1のほうが微小耳波の個数が多いため、微小耳波1個あたりの浮上がり高さが減少しているものと考えられる。対して比較例No.11〜No.13は、微小耳波の個数が少なく、過大耳波も本発明例より多く形成されている。そのため、最大急峻度が本発明例よりも悪化した値であることを確認した。図4図5にも示すように、比較例の最大急峻度を0.1以下にするためには、比較例11は200mm程度、比較例12は120mm程度、比較例13は230mm程度両端部をトリミングする必要があることが確認できる。このため比較例の試料は、大幅な歩留りの低下が懸念される。
以上のことから、本発明によれば、厚さが0.2mm以下の薄いFe−Ni系合金薄板において、広幅化となっても非常に良好な平坦性を付与することができる。そのため密着性やエッチング性も良く、様々な用途に適用することができる。
【0027】
続いて、形状矯正におけるテンションレベラーの条件を変更し、その影響を確認した。まず幅が730mmの冷間圧延用素材を準備し、仕上冷間圧延まで実施例1の本発明例2と同じ条件で、Fe−Ni系合金薄板を作製した。続いて仕上冷間圧延後の試料に、伸び率の条件を変更し、本発明例の試料および比較例の試料を作製した。ここで、本発明例3の試料は伸び率0.5、比較例14の試料は伸び率0.2、比較例15の試料は伸び率0.8とした。張力(ユニットテンション)は本発明例、比較例ともに60kgf/mmの条件として形状矯正を行った。なお実施例1と同様、仕上げ冷間圧延後に熱処理は行わなかった。
【0028】
【表3】
【0029】
表3に示すように、伸び率が0.5である本発明例は、微小耳波が多く形成されており過大耳波個数が少ない値を示した。対して比較例14は微小耳波個数が少なく、急峻度も本発明例より高い値となっていた。一方で比較例15は、微小耳波個数や急峻度が同程度であるものの、試料の幅方向中央部において凹凸形状が発生しており、本発明より形状的に劣る結果となった。また比較例15の形状矯正条件は伸び率が高すぎるため、同条件で試料を複数形状矯正した際に、破断する試料があることも確認した。
【符号の説明】
【0030】
1 薄板
2 耳波
2a 薄板上面に向かって凸の耳波
2b 薄板上面に向かって凹の耳波
11a、11b ワークロール
12a、12b 中間ロール
13a、13b バックアップロール
D1、D2 中間ロールシフト量
L 圧延方向長さ
P1、P2 中間ロール端部(テーパ端部)
Q1、Q2 薄板端部
W 薄板幅
Wm 耳波の圧延直角方向最大長さ

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】