特表-18163367IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-163367エポキシポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート、硬化物、Cステージシート、樹脂付金属箔、金属基板及びエポキシ樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月13日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】エポキシポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート、硬化物、Cステージシート、樹脂付金属箔、金属基板及びエポキシ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20191129BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20191129BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   C08G59/14
   C08K3/013
   C08L63/00 C
   B32B15/092
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
【出願番号】特願2019-504235(P2019-504235)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年3月9日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片木 秀行
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優香
(72)【発明者】
【氏名】東内 智子
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由高
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB33B
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA23A
4F100DG01A
4F100DH01A
4F100DH02A
4F100GB41
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JB12A
4F100JJ01
4F100JJ03
4F100JL11A
4J002CC032
4J002CD201
4J002DE076
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ016
4J002DK006
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD160
4J002GF00
4J036CA09
4J036DA01
4J036FA02
4J036FA10
4J036FA13
4J036FB07
4J036GA29
4J036JA08
(57)【要約】
メソゲン骨格と、一般式(A)で表される構造単位とを有するエポキシポリマー。一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン骨格と、下記一般式(A)で表される構造単位とを有するエポキシポリマー。
【化1】

(一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【請求項2】
下記一般式(IA)で表される構造単位及び下記一般式(IB)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つを有する請求項1に記載のエポキシポリマー。
【化2】

(一般式(IA)及び一般式(IB)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による数平均分子量が1000〜3000である請求項1又は請求項2に記載のエポキシポリマー。
【請求項4】
メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物と、を反応させてなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシポリマー。
【請求項5】
前記3価フェノール化合物は、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項4に記載のエポキシポリマー。
【請求項6】
前記3価フェノール化合物は、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項4又は請求項5に記載のエポキシポリマー。
【請求項7】
前記エポキシ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物を含む請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のエポキシポリマー。
【化3】

(一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【請求項8】
前記エポキシ化合物は、trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートを含む請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載のエポキシポリマー。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂。
【請求項10】
請求項9に記載のエポキシ樹脂と、
フィラーと、
を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のバインダとして用いられる請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
封止材又は成形材として用いられる請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上である請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
硬化物としたとき、CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有する請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有する、樹脂シート。
【請求項16】
請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層を有する、Bステージシート。
【請求項17】
請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層を有する、Cステージシート。
【請求項18】
請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項19】
ガラス転移温度が180℃以上である請求項18に記載の硬化物。
【請求項20】
CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有する請求項18又は請求項19に記載の硬化物。
【請求項21】
金属箔と、前記金属箔上に配置された請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層と、を有する樹脂付金属箔。
【請求項22】
金属支持体と、前記金属支持体上に配置された請求項10〜請求項14いずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層と、前記硬化樹脂組成物層上に配置された金属箔と、を有する金属基板。
【請求項23】
メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物と、を反応させてエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂を製造するエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項24】
前記エポキシ化合物のエポキシ基の当量数(Ep)と、前記3価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)を、100/50〜100/1の範囲とし、前記エポキシ化合物と前記3価フェノール化合物とを反応させる請求項23に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項25】
前記3価フェノール化合物は、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項23又は請求項24に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート、硬化物、Cステージシート、樹脂付金属箔、金属基板及びエポキシ樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体パッケージデバイスは、高密度化及び高集積化の進展により、半導体パッケージデバイスの実使用温度が高温になり易くなっていることから、放熱対策が重要となっている。特に電気自動車、ハイブリッド自動車、産業機器等に使用されるパワーデバイスの分野においては、シリコンに替わり、より高出力化が可能な炭化ケイ素(SiC)の適用が検討されており、優れた耐熱性及び高い熱伝導特性を有する周辺材料の開発が求められている。また、炭化ケイ素の適用箇所によっては、周辺材料は高い絶縁性が必要とされる。
【0003】
パワーデバイスの周辺に配置される部材は、パワーデバイスの小型化及び軽量化の進展に伴い、これまで使用されてきたセラミック等の無機材料に替わり、有機材料が使用されつつある。有機材料の使用形態としては、有機高分子(樹脂)と無機フィラーとの混合物からなるコンポジット材料が挙げられる。
【0004】
有機材料は、無機材料と比較して材料の加工性が高い、軽量化できる等の利点を有する一方、熱伝導率及び耐熱性が無機材料と比べて低い傾向にある。
【0005】
有機材料を高熱伝導率化する手法としては、高い熱伝導率を有するアルミナ、窒化ホウ素等に代表される無機フィラーを樹脂に混合する手法が知られている。また、メソゲン骨格等の剛直な構造を樹脂の分子内に導入し、分子間スタッキング性を利用し、液晶性又は結晶性を発現させ、フォノン散乱を抑制することにより熱伝導率を高める手法も知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。前者の手法では、無機フィラーの充填量を増やすことでコンポジット材料の熱伝導率を高めることができるが、絶縁性との両立の観点からは充填量に限界がある。これに対して、後者の熱伝導率の高い樹脂を使用する手法では、絶縁性を維持したままコンポジット材料の熱伝導率を飛躍的に高くすることが可能となる。
【0006】
樹脂を高熱伝導率化する具体的手法としては、結晶性又は液晶性を発現するメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を適用する方法が挙げられる。これにより、フィラーの充填率を上げずとも樹脂の高熱伝導率化が可能となる。しかし、樹脂の融点が高くなる傾向があるため、成形温度での流動性が低下し、被着体と樹脂との接着性が低下する等、ハンドリング面で支障を来たすおそれがある。
【0007】
成形温度での流動性の低下を抑制する手法としては、結晶性又は液晶性を発現するメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と相溶性のある樹脂をブレンドすることにより樹脂の結晶性又は液晶性を低下させ、流動性を高める手法が知られている。しかし、この手法では、硬化後の高熱伝導樹脂のスタッキング性が阻害され、コンポジット材料の高熱伝導率化が発揮されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4118691号公報
【特許文献2】特許第5397476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、成形温度での流動性の低下の抑制と、高熱伝導率との両立を図る手法として、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と2価フェノールとを反応させることにより、高次構造形成能を低下させずに、軟化点が低下し、ハンドリング性が向上したエポキシ樹脂を製造する方法が挙げられる。しかし、相反として架橋点間距離が長くなるため、エポキシ化合物のみを使用した場合と比較して硬化物のガラス転移温度が低くなるという問題がある。
【0010】
本発明の一態様の目的は、高いガラス転移温度を有する硬化物を形成可能なエポキシポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート及び樹脂付金属箔、並びに、高いガラス転移温度を有する硬化物、この硬化物を備えるCステージシート及び金属基板、並びに、エポキシ樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための具体的手段は、以下の態様を含む。
【0012】
<1> メソゲン骨格と、下記一般式(A)で表される構造単位とを有するエポキシポリマー。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【0015】
<2> 下記一般式(IA)で表される構造単位及び下記一般式(IB)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つを有する<1>に記載のエポキシポリマー。
【0016】
【化2】
【0017】
(一般式(IA)及び一般式(IB)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【0018】
<3> ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による数平均分子量が1000〜3000である<1>又は<2>に記載のエポキシポリマー。
【0019】
<4> メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物と、を反応させてなる<1>〜<3>のいずれか1つに記載のエポキシポリマー。
【0020】
<5> 前記3価フェノール化合物は、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである<4>に記載のエポキシポリマー。
【0021】
<6> 前記3価フェノール化合物は、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである<4>又は<5>に記載のエポキシポリマー。
【0022】
<7> 前記エポキシ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物を含む<4>〜<6>のいずれか1つに記載のエポキシポリマー。
【0023】
【化3】
【0024】
(一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0025】
<8> 前記エポキシ化合物は、trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートを含む<4>〜<7>のいずれか1つに記載のエポキシポリマー。
【0026】
<9> <1>〜<8>のいずれか1つに記載のエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂。
【0027】
<10> <9>に記載のエポキシ樹脂と、フィラーと、を含むエポキシ樹脂組成物。
【0028】
<11> 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のバインダとして用いられる<10>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0029】
<12> 封止材又は成形材として用いられる<10>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0030】
<13> 硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上である<10>〜<12>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0031】
<14> 硬化物としたとき、CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有する<10>〜<13>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0032】
<15> <10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有する、樹脂シート。
【0033】
<16> <10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層を有する、Bステージシート。
【0034】
<17> <10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層を有する、Cステージシート。
【0035】
<18> <10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【0036】
<19> ガラス転移温度が180℃以上である<18>に記載の硬化物。
【0037】
<20> CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有する<18>又は<19>に記載の硬化物。
【0038】
<21> 金属箔と、前記金属箔上に配置された<10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層と、を有する樹脂付金属箔。
【0039】
<22> 金属支持体と、前記金属支持体上に配置された<10>〜<14>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層と、前記硬化樹脂組成物層上に配置された金属箔と、を有する金属基板。
【0040】
<23> メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物と、を反応させてエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂を製造するエポキシ樹脂の製造方法。
【0041】
<24> 前記エポキシ化合物のエポキシ基の当量数(Ep)と、前記3価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)を、100/50〜100/1の範囲とし、前記エポキシ化合物と前記3価フェノール化合物とを反応させる<23>に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【0042】
<25> 前記3価フェノール化合物は、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つである<23>又は<24>に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一態様によれば、高いガラス転移温度を有する硬化物を形成可能なエポキシポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート及び樹脂付金属箔、並びに、高いガラス転移温度を有する硬化物、この硬化物を備えるCステージシート及び金属基板、並びに、エポキシ樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、この主旨を逸脱しない限り、種々の形態をとり得る。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0045】
本開示において「メソゲン骨格」とは、液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す。具体的には、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、シクロヘキシルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、これらの誘導体等が挙げられる。メソゲン骨格を有するエポキシポリマーを用いることにより、硬化時に高次構造を形成し易く、硬化物としたときに熱伝導率が向上する傾向にある。
ここで、高次構造とは、その構成要素が配列してミクロな秩序構造を形成した高次構造体を含む構造を意味し、例えば、結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造体の存在の有無は、偏光顕微鏡観察によって容易に判断することが可能である。即ち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られることで判別可能である。
この高次構造体は、通常硬化物中に島状に存在して、ドメイン構造を形成しており、その島の1つが1つの高次構造体に対応する。この高次構造体の構成要素自体は一般には共有結合により形成されている。
【0046】
<エポキシポリマー>
本開示のエポキシポリマーは、メソゲン骨格と、下記一般式(A)で表される構造単位とを有する。これにより、低軟化点化と高次構造形成能の保持とを図りつつ、硬化物が高いガラス転移温度を有する硬化物を形成可能である。硬化物のガラス転移温度を高めることにより、例えば、パワーデバイスの分野にてより高出力化が可能な炭化ケイ素(SiC)の適用による動作温度の向上にも耐える材料となり得る。
例えば、下記一般式(A)で表される構造単位は、エポキシ基と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物の1つの水酸基との反応に由来する構造であってもよい。
【0047】
【化4】
【0048】
一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。
なお、炭素数1〜8のアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、アリール基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。なお、アルキル基の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
【0049】
一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(A)中、nは0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。つまり、一般式(A)においてRを付されたベンゼン環は、1個〜3個の水素原子を有することが好ましく、2個又は3個の水素原子を有することがより好ましく、3個の水素原子を有することがさらに好ましい。
【0050】
本開示のエポキシポリマーは、下記一般式(IA)で表される構造単位及び下記一般式(IB)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つを有することが好ましい。
なお、前述の一般式(A)で表される構造単位は、一般式(IA)で表される構造単位及び一般式(IB)で表される構造単位に包含されるものであってもよい。
【0051】
【化5】
【0052】
一般式(IA)及び一般式(IB)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。
なお、炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜8のアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、アリール基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。また、アルキル基の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
【0053】
一般式(IA)及び一般式(IB)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらにR〜Rの内の2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個全てが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基の場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
一般式(IA)及び一般式(IB)中、Rは、前述の一般式(A)中のRと同様である。
【0054】
本開示のエポキシポリマーは、1分子中に下記一般式(II)で表される構造単位を2つ以上含む化合物であってもよい。
【0055】
【化6】
【0056】
一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。一般式(II)におけるR〜Rの好ましい構成は、前述の一般式(IA)及び一般式(IB)におけるR〜Rと同様である。
【0057】
本開示のエポキシポリマーは、メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(以下、「エポキシ化合物」とも称する。)と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物(以下、「3価フェノール化合物」とも称する。)と、を反応させてなるものであることが好ましく、メソゲン骨格を有し、2個のグリシジル基を有するエポキシ化合物と、3価フェノール化合物と、を反応させてなるものであることがより好ましい。2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いることにより、1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いる場合よりも硬化後の架橋密度に優れるため熱伝導性に優れる傾向にあり、かつ、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いる場合よりもポリマー化反応の制御が容易であり、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
【0058】
エポキシ化合物としては、メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するモノマーであればよい。エポキシ化合物としては、ビフェニル型エポキシ化合物、3環型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0059】
ビフェニル型エポキシ化合物は、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物であればよく(但し、3環型エポキシ化合物を除く)、ビフェニル骨格の2つのベンゼン環以外に環を有さないことが好ましい(つまり、ビフェニル型エポキシ化合物は2環型エポキシ化合物であることが好ましい)。ビフェニル型エポキシ化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化7】
【0061】
一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。R〜R8で表される1価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。なお、炭化水素基の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
【0062】
炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。アリール基の置換基としては、アルキル基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。
炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、置換又は非置換の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、非置換の炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
置換又は非置換の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0063】
一般式(1)におけるR〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子又は非置換の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0064】
ビフェニル型エポキシ化合物としては、具体的には、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させてなるエポキシ化合物等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
【0065】
ビフェニル型エポキシ化合物の市販品としては、「YX4000」、「YX4000H」、「YL6121H」(以上、三菱化学株式会社製)、「NC−3000」、「NC−3100」(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。低融点化及び熱伝導性の向上の観点から、「YL6121H」(三菱化学株式会社製)が好ましい。
【0066】
エポキシ化合物の全量に対するビフェニル型エポキシ化合物の含有率は、熱伝導率の観点から、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
3環型エポキシ化合物としては、例えば、ベンゼン環及びシクロヘキサン環からなる群より選択される3つの環を有するエポキシ化合物が挙げられる。ベンゼン環及びシクロヘキサン環からなる群より選択される3つの環は、それぞれ単結合で結合していてもよいし、2価の基で結合していてもよい。2価の基としては、酸素原子、エーテル基、エステル基等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
【0068】
3環型エポキシ化合物としては、具体的には、ターフェニル骨格を有するエポキシ化合物、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼン、下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。硬化物としたときに熱伝導率がより向上する観点から、3環型エポキシ化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「特定エポキシ化合物」とも称する。)が好ましい。
【0069】
【化8】
【0070】
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。一般式(I)中のR〜Rとしては、前述の一般式(IA)及び一般式(IB)中のR〜Rと同様である。
【0071】
具体的に、特定エポキシ化合物としては、例えば、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−エチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−イソプロピルベンゾエート、及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエートを挙げることができ、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートであることがより好ましく、trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートであることがさらに好ましい。
【0072】
特定エポキシ化合物は、例えば特開2011−74366号公報に記載の方法により合成することができる。
【0073】
エポキシ化合物の全量に対する3環型エポキシ化合物の含有率は、熱伝導率の観点から、70モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0074】
1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物は、前述のエポキシ化合物をポリマー化するバインダとして機能する。前述のエポキシ化合物をポリマー化するバインダとしては、他にはアミン化合物が挙げられる。
【0075】
アミン化合物を用いてエポキシ化合物をポリマー化した場合、得られたエポキシポリマー中に2級アミン構造又は3級アミン構造が形成され、ポリマー自体及びポリマーを硬化剤と配合してなるエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が悪化する傾向にあり、好ましくない。
【0076】
一方、本開示に示すように、フェノール化合物として、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物を用いてエポキシ化合物をポリマー化することが好ましい。これにより、エポキシポリマーの低軟化点化と高次構造形成能の保持とを好適に図りつつ、エポキシポリマーを用いた硬化物のガラス転移温度をより高められる傾向にある。
【0077】
3価フェノール化合物としては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、エポキシポリマーを用いた硬化物の熱伝導性を向上させる点から、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
【0078】
(エポキシポリマーの合成方法)
本開示のエポキシポリマーは、メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、3価フェノール化合物と、を反応させてなるものであってもよい。以下、エポキシポリマーの合成方法の具体例について説明する。
なお、エポキシ化合物と、3価フェノール化合物と、を反応させてなるエポキシポリマーは、未反応のエポキシ化合物との混合物であってもよい。
【0079】
エポキシポリマーは、例えば、溶媒中にエポキシ化合物と3価フェノール化合物、さらに硬化触媒を溶解し、加熱しながら撹拌して合成する。エポキシ化合物を溶融して3価フェノール化合物と反応させることにより、溶媒を使用せずにエポキシポリマーを合成してもよく、安全性の観点から、前述のように溶媒を使用してエポキシポリマーを合成してもよい。
【0080】
溶媒としては、エポキシ化合物と3価フェノール化合物との反応が好適に進行するために必要な温度に加温できる溶媒であれば特に制限されない。溶媒として、具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0081】
溶媒の量としては、反応温度において、エポキシ化合物、3価フェノール化合物及び硬化触媒が全て溶媒中に溶解する量であればよい。例えば、反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、仕込み固形分量に対して20質量%〜60質量%であれば、ポリマー合成後のエポキシポリマー溶液の粘度が好ましい範囲となる。
【0082】
エポキシポリマーの合成に使用する硬化触媒の種類、配合量等は特に制限されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から、適切なものを選択することができる。硬化触媒の具体例としては、例えば、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
【0083】
硬化触媒としては、中でも、エポキシポリマーを用いた硬化物の耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物(1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等)、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物(テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等)との錯体;からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0084】
有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
【0085】
硬化触媒の量は特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点から、エポキシ化合物と3価フェノール化合物との合計質量に対し、0.1質量%〜1.5質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0086】
エポキシポリマーは、少量スケールであればガラス製のフラスコを使用し、大量スケールであればステンレス製の合成釜を使用して合成できる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。
まず、エポキシ化合物をフラスコ又は合成釜に投入し、溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、エポキシ化合物を溶解する。そこに3価フェノール化合物を投入し、溶媒中に溶解したことを確認した後に硬化触媒を投入し、反応を開始する。所定時間の後に反応溶液を取り出せばエポキシポリマー溶液が得られる。また、フラスコ内又は合成釜内において、加温条件のもと減圧下で溶媒を留去したものを取り出せばエポキシポリマーが室温(25℃)下で固体として得られる。
前述のエポキシポリマー溶液は、エポキシポリマーとともに未反応のエポキシ化合物を含んでいてもよい。
【0087】
反応温度は、硬化触媒の存在下でエポキシ基とフェノール性水酸基との反応が進行する温度であれば制限されず、例えば100℃〜180℃の範囲であることが好ましく、120℃〜170℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることでゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
【0088】
エポキシポリマーの合成において、エポキシ化合物と、3価フェノール化合物と、の比率を変更して合成することができる。具体的には、エポキシ化合物のエポキシ基の当量数(Ep)と、3価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)を、100/50〜100/1の範囲として合成することが可能である。エポキシ樹脂組成物の流動性並びに硬化物の耐熱性及び熱伝導率の観点から、Ep/Phは100/40〜100/10の範囲であることが好ましく、100/30〜100/15の範囲であることがより好ましい。Ep/Phを100/10以下とすることで得られるエポキシポリマーの軟化点の上昇を抑制できる傾向にあり、Ep/Phを100/40以上とすることで、架橋点密度の低下による硬化物の耐熱性の悪化を抑制し、かつ硬化物の熱伝導性の低下を抑制できる傾向にある。
【0089】
<エポキシ樹脂>
本開示のエポキシ樹脂は、前述のエポキシポリマーを含む。またエポキシ樹脂は、少なくともエポキシポリマーを含むものであればよく、例えば、エポキシポリマーと、エポキシ化合物との混合物であってもよい。
【0090】
エポキシ樹脂中に含まれ得るエポキシ化合物が有するメソゲン骨格は、エポキシポリマーが有するメソゲン骨格と同じであることが好ましい。これにより、液晶性又は結晶性を発現し、スタッキングが損なわれにくく、高次構造が形成しやすくなり、かつ硬化物が高熱伝導率化する傾向にある。さらにエポキシ樹脂の軟化点が低下し、成形温度での流動性の向上を図ることもできる。
例えば、エポキシポリマーが、エポキシ化合物と、フェノール化合物と、を反応させてなるものである場合、エポキシポリマーと未反応のエポキシ化合物とは同じメソゲン骨格を有するため、エポキシ樹脂は、エポキシポリマーと未反応のエポキシ化合物との混合物であってもよい。
【0091】
以下、エポキシポリマー、及びエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂の物性値の好ましい範囲について説明する。
【0092】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定される。
エポキシ当量は、エポキシ樹脂組成物の流動性及び硬化物の熱伝導性を両立する点から、245g/eq〜320g/eqであることが好ましく、250g/eq〜310g/eqであることがより好ましく、260g/eq〜305g/eqであることがさらに好ましい。
【0093】
また、エポキシ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における数平均分子量(Mn)は、エポキシ樹脂組成物の流動性及び硬化物の熱伝導性を両立する点から、500〜1200であることが好ましく、550〜1100であることがより好ましく、600〜1000であることがさらに好ましい。
なお、エポキシポリマーとエポキシ化合物(例えば、未反応のエポキシ化合物)との混合物であるエポキシ樹脂のMnが上記数値範囲を満たすことが好ましい。
【0094】
また、エポキシポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における数平均分子量(Mn)は、エポキシ樹脂組成物の流動性及び硬化物の熱伝導性を両立する点から、1000〜3000であることが好ましく、1200〜2700であることがより好ましく、1400〜2500であることがさらに好ましい。Mnが1000以上であれば、エポキシポリマーの結晶性が高くなることによる流動性の低下を抑制できる傾向にあり、Mnが3000以下であれば、硬化物の架橋点密度の低下による熱伝導率の低下を抑制できる傾向にある。
【0095】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定は、市販の装置を用いて測定が可能である。一例として、ポンプ:L−6000(株式会社日立製作所製)、カラム:TSKgel G4000HR+G3000HR+G2000XL(東ソー株式会社製)、検出器:示差屈折率計RI−8020(東ソー株式会社製)、及び溶出溶媒:テトラヒドロフラン(クロマトグラフィー用安定剤不含、和光純薬工業株式会社製)を使用し、樹脂サンプルを5mg/cmの濃度になるようテトラヒドロフランに溶解したものをサンプルとして流速1.0cm/分の条件で測定すればよい。
また、ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、ポリスチレン換算値でエポキシ樹脂及びエポキシポリマーの数平均分子量(Mn)を計算する。
なお、エポキシ化合物及びエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂からエポキシポリマーの数平均分子量(Mn)を求める場合、エポキシ化合物に由来する溶出ピークを含めず、それ以外の溶出ピークを用いてエポキシポリマーの数平均分子量(Mn)を求めればよい。
【0096】
エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物、接着シートの材料として使用することができる。
【0097】
<エポキシ樹脂の製造方法>
本開示のエポキシ樹脂の製造方法は、メソゲン骨格を有し、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、1つのベンゼン環に3つの水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物と、を反応させてエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂を製造する方法である。なお、本開示のエポキシ樹脂の製造方法において、エポキシ化合物と、3価フェノール化合物と、を反応させる際の好ましい条件としては、前述のエポキシポリマーの合成方法に記載の条件と同様である。
【0098】
<エポキシ樹脂組成物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、前述のエポキシ樹脂と、フィラーとを少なくとも含むものである。本開示のエポキシ樹脂組成物は流動性に優れ、硬化物において高いガラス転移温度を有する。
また、本開示のエポキシ樹脂組成物は、エポキシポリマー及びエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、フィラーとを含むものであってもよい。
【0099】
本開示のエポキシ樹脂組成物は、例えば、封止材又は成形材として用いることが可能であり、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のバインダとしても用いることが可能である。
【0100】
本開示のエポキシ樹脂組成物はフィラーを含む。これにより、硬化物の熱伝導性が向上する。フィラーとしては、具体的には、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
中でも、エポキシ樹脂組成物の流動性、硬化物の熱伝導性及び電気絶縁性の観点から、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムからなる1種類以上のフィラーが好ましい。この場合、エポキシ樹脂組成物に窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウムを少量添加してもよい。
【0101】
フィラーは、横軸に粒子径及び縦軸に頻度をとった粒度分布曲線を描いた場合に単一のピークを有していてもよく、複数のピークを有していてもよい。粒度分布曲線が複数のピークを有するフィラーを用いることで、フィラーの充てん性が向上し、硬化物の熱伝導性が向上する傾向にある。
【0102】
粒度分布曲線が単一のピークを有する場合、フィラーの平均粒子径は、硬化物の熱伝導性の観点から、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜70μmであることがより好ましい。また、粒度分布曲線が複数のピークを有する場合、例えば、異なる平均粒子径を有する二種類以上のフィラーを組み合わせて構成できる。
なお、フィラーの粒度分布は、レーザー回折法を用いて測定される体積累積粒度分布をいう。また、フィラーの平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定される体積累積粒度分布が50%となる粒子径をいう。
レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて行なうことができる。
【0103】
異なる平均粒子径を有する3種類のフィラーを組み合わせて使用する場合、平均粒子径が40μm〜100μmのフィラー、平均粒子径が10μm〜30μmのフィラー及び平均粒子径が0.1μm〜8μmのフィラーを組み合わせてもよい。
また、フィラーの充てん性の観点から、フィラーの全体積に対して、平均粒子径が40μm〜100μmのフィラーを50体積%〜70体積%、平均粒子径が10μm〜30μmのフィラーを15体積%〜25体積%及び平均粒子径が0.1μm〜8μmのフィラーを15体積%〜25体積%の範囲で混合してもよい。
【0104】
エポキシ樹脂組成物中のフィラーの含有率は特に制限されず、硬化物の熱伝導性及びエポキシ樹脂組成物の成形性の観点から、エポキシ樹脂組成物の全体積に対して、60体積%〜90体積%であることが好ましく、70体積%〜85体積%であることがより好ましい。フィラーの含有率が60体積%以上であることにより、硬化物の熱伝導性が向上する傾向にあり、フィラーの含有率が90体積%以下であることにより、成形性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0105】
本開示におけるエポキシ樹脂組成物中のフィラーの含有率(体積%)は、次式により求めた値とする。
フィラーの含有率(体積%)={(Ew/Ed)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew/Ed)+(Fw/Fd))}×100
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:エポキシ樹脂の質量組成比(質量%)
Bw:硬化剤(任意成分)の質量組成比(質量%)
Cw:シランカップリング剤(任意成分)の質量組成比(質量%)
Dw:硬化触媒(任意成分)の質量組成比(質量%)
Ew:フィラーの質量組成比(質量%)
Fw:その他の成分(任意成分)の質量組成比(質量%)
Ad:エポキシ樹脂の比重
Bd:硬化剤の比重
Cd:シランカップリング剤の比重
Dd:硬化触媒の比重
Ed:フィラーの比重
Fd:その他の成分の比重
【0106】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及びフィラーの他、シランカップリング剤、硬化剤、硬化触媒、離型剤、応力緩和剤、補強材等を含むものであってもよい。
【0107】
エポキシ樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。これにより、フィラーの表面とフィラーの周りを取り囲むエポキシ樹脂との間で相互作用することにより、エポキシ樹脂組成物の流動性、硬化物の熱伝導性及びフィラーへの水分の浸入を妨げることによる硬化物の絶縁信頼性が向上する傾向にある。中でも、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂との相互作用及び硬化物の熱伝導性の観点から、フェニル基を含むシランカップリング剤が好ましい。
【0108】
フェニル基を含むシランカップリング剤の種類としては特に限定されず、市販のものを使用してもよい。フェニル基を含むシランカップリング剤としては、具体的には、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトシキシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
【0109】
フェニル基を含むシランカップリング剤の使用量は、フィラー全体の表面積に対する被覆率(以下、「シランカップリング剤の被覆率」とも称する。)が0.4〜0.8となる量であることが好ましい。
シランカップリング剤の被覆率={シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)×シランカップリング剤の使用量(g)}/{フィラーの比表面積(m/g)×フィラーの使用量(g)}
また、上式のシランカップリング剤の最小被覆面積は次式により算出される。
シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)={アボガドロ定数(6.02×1023)(mol−1)×シランカップリング剤1分子当たりの被覆面積(13×10−20)(m)}/シランカップリング剤の分子量(g/mol)
【0110】
また、上式のフィラーの比表面積の測定法としては主にBET法が適用される。BET法とは、窒素(N)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の不活性気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する気体吸着法である。比表面積の測定は、比表面積細孔分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、SA3100)を用いて行うことができる。
【0111】
シランカップリング剤の被覆率は、フィラーの表面をシランカップリング剤が全て覆う場合に1となる。この場合、フィラーの表面にシランカップリング剤と反応する分の水酸基等の極性基がなく、フィラーと反応しない未反応のシランカップリング剤が生じることが考えられる。
シランカップリング剤の被覆率は0.4〜0.8であることが好ましく、0.5〜0.7であることがより好ましい。シランカップリング剤の被覆率が0.4以上であることにより、エポキシ樹脂組成物の成形後に成形不良が発生しにくい傾向にある。シランカップリング剤の被覆率が0.8以下であることにより、フィラーと結合しないシランカップリング剤が、フィラーとエポキシ樹脂との結合、エポキシ樹脂の架橋等を阻害することが抑制され、硬化物の熱伝導性の低下が抑制される傾向にある。
【0112】
エポキシ樹脂組成物へのシランカップリング剤の添加方法としては特に制限はなく、具体的には、エポキシ樹脂、フィラー等の他の材料と混合する際に添加するインテグラル法、少量のエポキシ樹脂に一定量のシランカップリング剤を混合した後、フィラー等の他の材料と混合するマスターバッチ法、エポキシ樹脂等の他の材料と混合する前に、フィラーと混合して予めフィラーの表面にシランカップリング剤を処理する前処理法などが挙げられる。
また、前処理法としては、シランカップリング剤の原液又は溶液をフィラーとともに高速撹拌により均一に分散させて処理する乾式法、及び、シランカップリング剤の希薄溶液でスラリー化したり、直接浸漬したりすることによりフィラーの表面に処理を施す湿式法が挙げられる。
【0113】
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤の種類は特に限定されず、従来から公知の硬化剤を用いることができ、低分子フェノール化合物、それらをノボラック化したフェノール樹脂等のフェノール系硬化剤が挙げられる。
【0114】
低分子フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能の化合物、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能の化合物、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能の化合物などが挙げられる。
【0115】
また、前述の低分子フェノール化合物をノボラック化したフェノール樹脂、例えば、前述の低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
【0116】
フェノール系硬化剤としては、硬化物の熱伝導性の観点から、前述の2官能の化合物及びこれら低分子の2官能のフェノール化合物をメチレン鎖で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂であることが好ましい。
【0117】
フェノールノボラック樹脂としては、具体的には、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ヒドロキノンノボラック樹脂等の1種類の低分子フェノール化合物をノボラック化した樹脂、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールヒドロキノンノボラック樹脂等の二種類又はそれ以上の低分子フェノール化合物をノボラック化した樹脂などが挙げられる。
【0118】
フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(II−1)及び下記一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましい。
【0119】
【化9】
【0120】
一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R21及びR24はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R21又はR24で表されるアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。アリール基、及びアラルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
なお、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
【0121】
21及びR24はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜13のアラルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
【0122】
m21及びm22はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。m21が2の場合、2つのR21は同一であっても異なっていてもよく、m22が2の場合、2つのR24は同一であっても異なっていてもよい。m21及びm22は、それぞれ独立に0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、n21及びn22はそれぞれ独立に1〜7の整数を示し、一般式(II−1)で表される構造単位又は一般式(II−2)で表される構造単位の含有数をそれぞれ示す。
【0123】
一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R22、R23、R25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R22、R23、R25又はR26で表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。アリール基及びアラルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
なお、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の炭素数には置換基の炭素数を含めないものとする。
【0124】
22、R23、R25及びR26としては、エポキシ樹脂組成物の保存安定性と硬化物の熱伝導性の観点から、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらに、硬化物の耐熱性の観点から、R22及びR23の少なくとも一方、又はR25及びR26の少なくとも一方はアリール基であることもまた好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。
なお、上記アリール基は芳香族基にヘテロ原子を含んでいてもよく、ヘテロ原子と炭素の合計数が6〜12となるヘテロアリール基であることが好ましい。
【0125】
フェノールノボラック樹脂は、一般式(II−1)で表される構造単位又は一般式(II−2)で表される構造単位を有する化合物を一種類単独で含んでいてもよいし、二種類以上を含んでいてもよい。
【0126】
一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物は、レゾルシノール以外の低分子フェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも一種類をさらに含んでいてもよい。一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物におけるレゾルシノール以外の低分子フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物は、これらの低分子フェノール化合物に由来する部分構造を一種類単独で含んでいてもよいし、二種類以上を含んでいてもよい。
また、一般式(II−2)で表され、カテコールに由来する構造単位を有する化合物においても、カテコール以外の低分子フェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも一種類を含んでいてもよい。
【0127】
ここで、低分子フェノール化合物に由来する部分構造とは、低分子フェノール化合物の芳香環部分から1個又は2個の水素原子を取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。なお、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0128】
一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物において、レゾルシノール以外の低分子フェノール化合物に由来する部分構造としては、硬化物の熱伝導性並びにエポキシ樹脂組成物の接着性及び保存安定性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも一種類に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選択される少なくとも一種類に由来する部分構造であることがより好ましい。
【0129】
また、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物において、レゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率は、55質量%以上であることが好ましく、硬化物のTgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、硬化物の熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0130】
さらに、フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(III−1)〜下記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物を含むことも好ましい。
【0131】
【化10】
【0132】
【化11】
【0133】
【化12】
【0134】
【化13】
【0135】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)中、m31〜m34及びn31〜n34はそれぞれ独立に正の整数を示す。Ar31〜Ar34はそれぞれ独立に下記一般式(III−a)で表される基及び下記一般式(III−b)で表される基のいずれか1つを示す。
【0136】
【化14】
【0137】
一般式(III−a)及び一般式(III−b)中、R31及びR34はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R32及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
【0138】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造は、フェノールノボラック樹脂の主鎖骨格として含まれていてもよく、また、側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、一般式(III−1)〜一般式(III−4)のいずれか1つで表される構造を構成するそれぞれの構造単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
また、一般式(III−1)〜一般式(III−4)において、水酸基の置換位置は芳香環上であれば特に制限されない。
【0139】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)のそれぞれについて、複数存在するAr31〜Ar34はすべて同一の原子団であってもよいし、二種類以上の原子団を含んでいてもよい。なお、Ar31〜Ar34はそれぞれ独立に一般式(III−a)で表される基及び一般式(III−b)で表される基のいずれか1つを示す。
【0140】
一般式(III−a)及び一般式(III−b)におけるR31及びR34はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基であり、硬化物の熱伝導性の観点から水酸基であることが好ましい。また、R31及びR34の置換位置は特に制限されない。
【0141】
また、一般式(III−a)におけるR32及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R32及びR33における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、一般式(III−a)におけるR32及びR33の置換位置は特に制限されない。
【0142】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるAr31〜Ar34はそれぞれ独立に、硬化物の優れた熱伝導性を達成する点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(すなわち、一般式(III−a)においてR31が水酸基であって、R32及びR33が水素原子である基)、及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(すなわち、一般式(III−b)においてR34が水酸基である基)から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。
【0143】
ここで「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から2つの水素原子を取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。また、「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」等についても同様の意味である。
【0144】
また、エポキシ樹脂組成物の生産性及び流動性の観点から、Ar31〜Ar34はそれぞれ独立に、ジヒドロキシベンゼンに由来する基であることが好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選ばれる少なくとも一種類であることがより好ましい。硬化物の熱伝導性を特に高める点から、Ar31〜Ar34はレゾルシノールに由来する基を少なくとも含むことが好ましい。
また、硬化物の熱伝導性を特に高める観点から、含有数がn31〜n34で表される構造単位は、レゾルシノールに由来する部分構造を少なくとも含んでいることが好ましい。
【0145】
フェノールノボラック樹脂がレゾルシノールに由来する部分構造を含む場合、レゾルシノールに由来する部分構造の含有率は、一般式(III−1)〜一般式(III−4)のうちの少なくとも1つで表される構造を有する化合物の総質量中において55質量%以上であることが好ましく、硬化物のTgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、硬化物の熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0146】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるm31〜m34及びn31〜n34についてはそれぞれ、エポキシ樹脂組成物の流動性の観点から、m/n=1/5〜20/1であることが好ましく、5/1〜20/1であることがより好ましく、10/1〜20/1であることがさらに好ましい。また、(m+n)は、エポキシ樹脂組成物の流動性の観点から20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。なお、(m+n)の下限値は特に制限されない。ここでnがn31の場合、mはm31であり、nがn32の場合、mはm32であり、nがn33の場合、mはm33であり、nがn34の場合、mはm34である。
【0147】
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選ばれる少なくとも1つで表される構造を有するフェノールノボラック樹脂は、特にAr31〜Ar34が置換又は非置換のジヒドロキシベンゼン、及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレンの少なくとも一種類である場合、これらを単純にノボラック化したノボラック樹脂等と比較してその合成が容易であり、軟化点の低いノボラック樹脂が得られる傾向にある。よって、このようなノボラック樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物の製造及び取り扱いも、容易になるという利点がある。
【0148】
なお、フェノールノボラック樹脂が一般式(III−1)〜一般式(III−4)のうちの少なくとも1つで表される部分構造を有するか否かは、電界脱離イオン化質量分析法(FD−MS)によってそのフラグメント成分として一般式(III−1)〜一般式(III−4)のうちの少なくとも1つで表される部分構造に相当する成分が含まれるか否かによって判断することができる。
【0149】
フェノールノボラック樹脂の分子量は特に制限されない。エポキシ樹脂組成物の流動性の観点から、数平均分子量(Mn)として2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることがさらに好ましい。
これらMn及びMwは、GPCを用いた通常の方法により測定される。
【0150】
フェノールノボラック樹脂の水酸基当量は特に制限されない。硬化物の耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることがさらに好ましい。
【0151】
硬化剤は、フェノールノボラック樹脂を構成する低分子フェノール化合物であるモノマーを含んでいてもよい。硬化剤におけるフェノールノボラック樹脂を構成する低分子フェノール化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」とも称する。)としては特に制限はない。硬化物の熱伝導性及び耐熱性並びにエポキシ樹脂組成物の成形性の観点から、硬化剤におけるモノマー含有比率は5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0152】
モノマー含有比率が80質量%以下であることで、硬化反応の際に架橋に寄与しないモノマーが少なくなり、架橋する高分子量体が多くなるため、より高密度な高次構造が形成され、硬化物の熱伝導性が向上する傾向にある。また、5質量%以上であることで、成形の際に流動し易いため、フィラーとの密着性がより向上し、硬化物のより優れた熱伝導性と耐熱性が達成できる傾向にある。
【0153】
エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に制限されない。硬化剤におけるフェノール性水酸基の活性水素の当量数(フェノール性水酸基の当量数)とエポキシ樹脂のエポキシ基の当量数との比(フェノール性水酸基の当量数/エポキシ基の当量数)が0.5〜2となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。
【0154】
また、エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化触媒をさらに含んでいてもよい。硬化触媒を含むことでさらに十分にエポキシ樹脂組成物を硬化させることができる。硬化触媒の種類及び含有率は特に限定されず、反応速度、反応温度、保管性等の観点から、適切な種類及び含有率を選択することができる。具体例としては、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
中でも、硬化物の耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物(1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等)、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物(テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等)との錯体;からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0155】
有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
【0156】
硬化触媒は一種類単独でも二種類以上を併用して用いてもよい。後述のBステージシート、Cステージシート及び硬化物を効率よく作製する手法として、エポキシ樹脂と硬化剤との反応開始温度及び反応速度が異なる二種類の硬化触媒を混合して用いる方法が挙げられる。
【0157】
硬化触媒の二種類以上を併用して用いる場合、混合割合はBステージシート、Cステージシート及び硬化物に求める特性によって、特に制限されることなく決めることができる。
【0158】
エポキシ樹脂組成物が硬化触媒を含む場合、エポキシ樹脂組成物の成形性の観点から、硬化触媒の含有率はエポキシ樹脂と硬化剤の合計質量の0.1質量%〜1.5質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1.0質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0159】
硬化剤としては、前述のフェノール系硬化剤の他、アミン系硬化剤も使用できる。アミン系硬化剤は、フェノール系硬化剤を使用した場合と比較して硬化物の耐熱性が高く、金属との密着性も高いという利点がある。分子構造により液体又は固体の形態を取るが、一般的に液体アミンはエポキシ樹脂と相溶しやすいため、ライフが短い課題がある一方、固形アミンはエポキシ樹脂と混合しても、エポキシ樹脂の融点が高く、反応開始温度が高くなるためライフが長い利点がある。
【0160】
アミン系硬化剤としては、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等が挙げられ、硬化物の耐熱性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが好ましい。
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のアミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化物の耐熱性に優れ、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等のバインダとして好適であり、自動車用途、航空機用途等に適している。
【0161】
エポキシ樹脂組成物は、離型剤を含んでもよい。離型剤としては、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これらは一種類単独でも、二種類以上を併用してもよい。
【0162】
エポキシ樹脂組成物は、応力緩和剤、補強材等を含んでもよい。応力緩和剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等が挙げられる。また、補強材としては、グラスファイバー等が挙げられる。
【0163】
エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたとき、CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有することが好ましい。このような回折ピークを有する硬化物には、高次構造の中でも特に秩序性の高いスメクチック構造が形成されており、硬化物の熱伝導性に優れる傾向にある。
【0164】
エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたとき、ガラス転移温度が180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましい。
なお、ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0165】
エポキシ樹脂組成物の調製方法としては、各種成分を分散混合できる方法であれば特に制限されない。例えば、所定の配合量の各種成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却及び粉砕する方法を挙げられる。また、例えば、前述した各種成分を撹拌及び混合し、予め70℃〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却及び粉砕するなどの方法も挙げられる。
また、成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化してもよい。
【0166】
エポキシ樹脂組成物は、産業用及び自動車用のモータ、インバーター等、プリント配線板、半導体素子用封止材の分野などにて使用可能である。
また、エポキシ樹脂組成物を自動車・産業機器向けパワーデバイスに適用することにより、デバイスの発熱を抑え、デバイスの出力向上、寿命延長等が可能となり、省エネルギー化に貢献する。
【0167】
<樹脂シート>
本開示の樹脂シートは、本開示のエポキシ樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有する。樹脂組成物層は1層であっても2層以上であってもよい。本開示の樹脂シートは、必要に応じて樹脂組成物層上に離型フィルムをさらに含んで構成されてもよい。
樹脂シートは、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の有機溶剤をエポキシ樹脂組成物に添加して調製されるワニス状のエポキシ樹脂組成物(以下、「樹脂ワニス」とも称する。)をPETフィルム等の離型フィルム上に付与後、乾燥することで製造することができる。
本開示の樹脂シートを、例えば、接着シートとして用いてもよい。
【0168】
樹脂ワニスの付与は公知の方法により実施することができる。具体的には、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、グラビアコート法等の方法が挙げられる。所定の厚みに樹脂組成物層を形成するための樹脂ワニスの付与方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調整した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等を適用する。例えば、乾燥前の樹脂組成物層の厚みが50μm〜500μmである場合は、コンマコート法を用いることが好ましい。
【0169】
乾燥方法は、樹脂ワニス中に含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から適宜選択することができる。
【0170】
樹脂シートの密度は特に制限されず、例えば、3.0g/cm〜3.4g/cmであってもよい。柔軟性と熱伝導性の両立を考慮すると、樹脂シートの密度は3.0g/cm〜3.3g/cmであることが好ましく、3.1g/cm〜3.3g/cmであることがより好ましい。樹脂シートの密度は、例えば、無機フィラーの配合量で調整することができる。
本開示において、樹脂シートの密度は、樹脂組成物層の密度をいい、樹脂シートが2層以上の樹脂組成物層を有する場合、全ての樹脂組成物層の密度の平均値をいう。また、樹脂シートに離型フィルムが含まれている場合、離型フィルムを除いた樹脂組成物層の密度をいう。
【0171】
樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物を含む第1の樹脂組成物層と、第1の樹脂組成物層上に積層されているエポキシ樹脂組成物を含む第2の樹脂組成物層と、を有することが好ましい。例えば、樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物から形成される第1の樹脂組成物層と、エポキシ樹脂組成物から形成される第2の樹脂組成物層との積層体であることが好ましい。これにより絶縁耐圧をより向上させることができる。第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を形成するエポキシ樹脂組成物は、同一の組成であっても互いに異なる組成を有していてもよい。第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を形成するエポキシ樹脂組成物は、熱伝導性の観点から、同一の組成であることが好ましい。
【0172】
樹脂シートが積層体である場合、エポキシ樹脂組成物から形成される第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層とを重ね合わせて製造されることが好ましい。かかる構成であることにより、絶縁耐圧がより向上する傾向にある。
【0173】
これは例えば以下のように考えることができる。すなわち、2つの樹脂組成物層を重ねることで、一方の樹脂組成物層中に存在しうる厚みの薄くなる箇所(ピンホール又はボイド)がもう一方の樹脂組成物層により補填されることになる。これにより、最小絶縁厚みを大きくすることができ、絶縁耐圧がより向上すると考えることができる。樹脂シートの製造方法におけるピンホール又はボイドの発生確率は高くはないが、2つの樹脂組成物層を重ねることで薄い部分の重なり合う確率はその2乗になり、ピンホール又はボイドの個数はゼロに近づくことになる。絶縁破壊は最も絶縁的に弱い箇所で起こることから、2つの樹脂組成物層を重ねることにより絶縁耐圧がより向上する効果が得られると考えることができる。さらに、2つの樹脂組成物層を重ねることにより、フィラー同士の接触確率も向上し、熱伝導性の向上効果も生じると考えることができる。
【0174】
樹脂シートの製造方法は、エポキシ樹脂組成物から形成される第1の樹脂組成物層上に、エポキシ樹脂組成物から形成される第2の樹脂組成物層を重ねて積層体を得る工程と、得られた積層体を加熱加圧処理する工程とを含むことが好ましい。かかる製造方法であることにより、絶縁耐圧がより向上する傾向にある。
【0175】
樹脂シートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができる。例えば樹脂組成物層の厚みとして50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。
【0176】
<Bステージシート>
本開示のBステージシートは、本開示のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層を有する。
Bステージシートは、例えば、樹脂シートをBステージ状態まで加熱処理する工程を含む製造方法で製造できる。
樹脂シートを加熱処理して形成されることで、熱伝導性に優れ、Bステージシートとしての可とう性及び可使時間に優れる。
なお、Bステージ及び後述するCステージについては、JIS K6900:1994の規定を参照するものとする。
Bステージシートとしては、その粘度が常温(25℃)においては10Pa・s〜10Pa・sであるのに対して、100℃で10Pa・s〜10Pa・sに粘度が低下するものであることが好ましい。また、後述する硬化樹脂組成物層は加温によっても溶融することはない。なお、上記粘度は、動的粘弾性測定(周波数1Hz、荷重40g、昇温速度3℃/分)によって測定される。
【0177】
樹脂シートの樹脂組成物層は硬化反応がほとんど進行していないため、可とう性を有するものの、シートとしての柔軟性に乏しく、PETフィルム等の支持体を除去した状態ではシートの自立性に乏しく、取り扱いが困難な場合がある。そこで後述する加熱処理により樹脂組成物層をBステージ化することが好ましい。
樹脂シートを加熱処理する条件は、樹脂組成物層をBステージ状態にまで半硬化することができれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。加熱処理には、エポキシ樹脂組成物を付与する際に生じた樹脂組成物層中の空隙(ボイド)を消滅させる目的から、熱真空プレス、熱ロールラミネート等から選択される加熱処理方法が好ましい。これにより平坦なBステージシートを効率よく製造することができる。
具体的には例えば、加熱温度80℃〜180℃で、1秒〜3分間、減圧下(例えば、1kPa)で加熱プレス処理することで樹脂組成物層をBステージ状態に半硬化することができる。また、プレスの圧力は、5MPa〜20MPaとすることができる。
【0178】
Bステージシートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。また、2層以上の樹脂シートを積層した状態で熱プレスすることによりBステージシートを作製することもできる。
【0179】
<Cステージシート>
本開示のCステージシートは、本開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層を有する。
Cステージシートは、例えば、樹脂シート又はBステージシートをCステージ状態まで加熱処理する工程を含む製造方法で製造できる。
樹脂シート又はBステージシートを加熱処理する条件は、樹脂組成物層又は半硬化樹脂組成物層をCステージ状態にまで硬化することができれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。加熱処理には、Cステージシート中のボイドの発生を抑制し、Cステージシートの耐電圧性を向上させる観点から、熱真空プレス等の加熱処理方法が好ましい。これにより平坦なCステージシートを効率よく製造することができる。
具体的には例えば、加熱温度150℃〜220℃で、1分間〜30分間、1MPa〜20MPaで加熱プレス処理することで樹脂組成物層又は半硬化樹脂組成物層をCステージ状態に硬化することができる。
【0180】
Cステージシートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。また、2層以上の樹脂シート又はBステージシートを積層した状態で熱プレスすることによりCステージシートを作製することもできる。
【0181】
Cステージシートは、CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有することが好ましい。このような回折ピークを有するCステージシートには、高次構造の中でも特に秩序性の高いスメクチック構造が形成されており、熱伝導性に優れる傾向にある。
【0182】
<硬化物>
本開示の硬化物は、本開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物である。エポキシ樹脂組成物を硬化する方法としては、特に制限はなく、通常用いられる方法を適宜選択することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を加熱処理することでエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。
エポキシ樹脂組成物を加熱処理する方法としては特に制限はなく、また加熱条件についても特に制限はない。加熱処理の温度範囲は、エポキシ樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜選択することができる。また、加熱処理の時間としては、特に制限はなく、硬化物の形状、厚み等に応じて適宜選択される。
【0183】
例えば、エポキシ樹脂組成物をプレス成形することにより、硬化物を得ることができる。プレス成形する方法としては、トランスファー成形法、圧縮成形法等が挙げられ、中でも、トランスファー成形法が一般的である。例えば、トランスファー成形法では、金型温度140℃〜180℃、成形圧力10MPa〜25MPaの条件で30秒間〜600秒間エポキシ樹脂組成物を加熱することにより、硬化物を得ることができる。金型から外した硬化物を必要に応じて160℃〜200℃で2時間〜8時間さらに加熱し、後硬化してもよい。
【0184】
硬化物は、CuKα線を用いたX線回折法により、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有することが好ましい。このような回折ピークを有する硬化物には、高次構造の中でも特に秩序性の高いスメクチック構造が形成されており、熱伝導性に優れる傾向にある。
【0185】
硬化物は、ガラス転移温度が180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましい。
なお、ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0186】
<樹脂付金属箔>
本開示の樹脂付金属箔は、金属箔と、前記金属箔上に配置された本開示のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層と、を備える。本開示のエポキシ樹脂組成物の半硬化物を含む半硬化樹脂組成物層を有することで、本開示の樹脂付金属箔は、熱伝導率及び電気絶縁性に優れる。
半硬化樹脂組成物層はエポキシ樹脂組成物をBステージ状態になるように加熱処理して得られるものである。
【0187】
金属箔としては、金箔、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、一般的には銅箔が用いられる。
金属箔の厚みとしては、1μm〜35μmであれば特に制限されない。なお、20μm以下の金属箔を用いることで、樹脂付金属箔の可とう性がより向上する傾向にある。
金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、中間層の一方の面に0.5μm〜15μmの銅層を設け、中間層の他方の面に10μm〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔、又はアルミニウム箔と銅箔とを複合した2層構造の複合箔を用いることもできる。
【0188】
樹脂付金属箔は、例えば、エポキシ樹脂組成物(好ましくは、樹脂ワニス)を金属箔上に塗布し乾燥することにより樹脂組成物層(樹脂シート)を形成し、これを加熱処理して樹脂組成物層をBステージ状態とすることで製造することができる。樹脂組成物層の形成方法は既述の通りである。
【0189】
樹脂付金属箔の製造条件は特に制限されるものではない。乾燥後の樹脂組成物層において、樹脂ワニスに使用した有機溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。乾燥温度は80℃〜180℃程度であり、乾燥時間は樹脂ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜選択することができ、特に制限はない。樹脂ワニスの塗布量は、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μm〜350μmとなるように塗布することが好ましく、60μm〜300μmとなることがより好ましい。
乾燥後の樹脂組成物層は、加熱処理されることでBステージ状態になる。樹脂組成物層を加熱処理する条件は、Bステージシートにおける加熱処理条件と同様である。
【0190】
<金属基板>
本開示の金属基板は、金属支持体と、前記金属支持体上に配置された本開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層と、前記硬化樹脂組成物層上に配置された金属箔と、を備える。
金属支持体と金属箔との間に本開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む硬化樹脂組成物層を配置することで、接着性、熱伝導率及び電気絶縁性が向上する。
【0191】
金属支持体は、目的に応じてその素材、厚み等が適宜選択される。具体的には、アルミニウム、鉄等の金属を用い、厚みを0.5mm〜5mmとすることができる。
【0192】
また硬化樹脂組成物層上に配置される金属箔は、樹脂付金属箔における金属箔と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0193】
本開示の金属基板は、例えば以下のようにして製造することができる。
アルミニウム等の金属支持体上に、エポキシ樹脂組成物を樹脂付金属箔等の場合と同様に付与して乾燥することで樹脂組成物層を形成し、さらに樹脂組成物層上に金属箔を配置し、これを加熱及び加圧処理して、樹脂組成物層を硬化することで金属基板を製造することができる。また、金属支持体上に、樹脂付金属箔を半硬化樹脂組成物層が金属支持体に対向するように張り合わせた後、これを加熱及び加圧処理して、半硬化樹脂組成物層を硬化することで製造することもできる。
【実施例】
【0194】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0195】
以下に、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂の合成に用いた材料及びその略称を示す。
【0196】
・エポキシ化合物1
化合物名:trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、エポキシ当量:212g/eq、特開2011−74366号公報に記載の方法により製造した。
【0197】
【化15】
【0198】
・フェノール化合物1
化合物名:1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(和光純薬工業株式会社製、分子量126.11、水酸基当量:42g/eq.)
・フェノール化合物2
化合物名:1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(和光純薬工業株式会社製、分子量126.11、水酸基当量:42g/eq.)
・フェノール化合物3
化合物名:1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(和光純薬工業株式会社製、分子量126.11、水酸基当量:42g/eq.)
・フェノール化合物4
化合物名:ヒドロキノン(和光純薬工業株式会社製、水酸基当量:55g/eq.)
・溶媒1
シクロヘキサノン(沸点:156℃)
・硬化触媒1
トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製、分子量:262)
【0199】
<実施例1>
[エポキシ樹脂1の合成]
まず、500mLの三口フラスコに、エポキシ化合物1を50g(0.118mol)量り取り、そこに溶媒1(シクロヘキサノン)を80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを160℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。数分後にエポキシ化合物1が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、フェノール化合物1(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)を0.99g(0.00785mol)フラスコに添加し、さらに硬化触媒1(トリフェニルホスフィン)を0.5g添加し、160℃のオイルバス温度で加熱を継続した。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物1のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は10/1とした。5時間加熱を継続した後に、反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去した残渣を室温まで冷却することにより、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂1を得た。なお、このエポキシ樹脂1には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0200】
エポキシ樹脂1の固形分量を加熱減量法により測定したところ、98.2%であった。なお、固形分量は、エポキシ樹脂1をアルミ製のカップに1.0g〜1.1g量り取り、180℃の温度に設定した乾燥機内に30分間放置した後の計測量と、加熱前の計測量とに基づき、次式により算出した。
固形分量(%)=(30分間放置した後の計測量/加熱前の計測量)×100
【0201】
また、エポキシ樹脂1の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、合成により生成したエポキシポリマーの数平均分子量は1500、未反応のエポキシ化合物及びエポキシポリマーを含むエポキシ樹脂の数平均分子量は620であった。
【0202】
また、エポキシ樹脂1のエポキシ当量を過塩素酸滴定法により測定したところ、263g/eqであった。
【0203】
エポキシ樹脂1の融点を示差走査熱量測定(DSC)により測定したところ、130℃に吸熱ピークを有した。
【0204】
[成形材の調製及び成形]
以下の成分を混練温度60℃〜90℃、混練時間10分間の条件でロール混練した後、冷却、粉砕することにより、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0205】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1・・・100.00g
(無機フィラー)
アルミナフィラー(AL35−63、新日鉄住金マテリアルズ株式会社 マイクロンカンパニー製、平均粒子径:50μm)・・・1053.4g
アルミナフィラー(AL35−45、新日鉄住金マテリアルズ株式会社 マイクロンカンパニー製、平均粒子径:20μm)・・・301.0g
アルミナフィラー(AX3−32、新日鉄住金マテリアルズ株式会社 マイクロンカンパニー製、平均粒子径:4μm)・・・301.0g
(フェノール系硬化剤)
フェノールノボラック硬化剤(A−4SM、日立化成株式会社製)・・・24.10g
(硬化触媒)
p−ベンゾキノンとトリ−n−ブチルホスフィンとの付加反応物・・・1.50g
(シランカップリング剤)
3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573、信越化学工業株式会社製)・・・1.16g
(離型剤)
モンタン酸エステル(リコワックスE、クラリアントジャパン株式会社製)・・・14.46g
【0206】
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、調製した成形材をトランスファー成形機により、金型温度160℃、成形圧力7.0MPa及び硬化時間300秒間の条件で成形して流動距離を求めたところ、流動距離は60cmであった。
また、調製した成形材を用いて、金型温度160℃、成形圧力7.0MPa及び硬化時間300秒間の条件でトランスファー成形を行ったところ、金型形状の硬化物を得ることができた。さらに、トランスファー成形後の硬化物を180℃で4時間加熱し、後硬化を行った。
アルキメデス法により測定した硬化物の比重は3.25、動的粘弾性測定(DMA)により求めた硬化物のガラス転移温度は192℃であった。
なお硬化物のガラス転移温度は、引張りモードによる動的粘弾性測定により算出される。測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とし、得られたtanδチャートのピークをガラス転移温度とする。測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製のRSA−G2を用いることができる。
硬化物の熱拡散率を熱拡散率測定装置(NETZSCH社製、LFA447)を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。得られた熱拡散率と、別途測定した硬化物の比熱及び比重との積から硬化物の熱伝導率を求めた。その結果、硬化物の熱伝導率は11.6W/(m・K)であった。
また、CuKα線を用いたX線回折法により硬化物を分析したところ、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しておらず、ネマチック相を形成していると推測した。
【0207】
<実施例2>
[エポキシ樹脂2の合成]
フェノール化合物1をフェノール化合物2(1,2,4−トリヒドロキシベンゼン)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂2を得た。なお、このエポキシ樹脂2には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0208】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂2について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0209】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0210】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、実施例2の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しておらず、ネマチック相を形成していると推測した。
【0211】
<実施例3>
[エポキシ樹脂3の合成]
フェノール化合物1をフェノール化合物3(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂3を得た。なお、このエポキシ樹脂3には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0212】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂3について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0213】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂3に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0214】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、実施例3の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しておらず、ネマチック相を形成していると推測した。
【0215】
<実施例4>
[エポキシ樹脂4の合成]
フェノール化合物1(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)を0.99g(0.00785mol)フラスコに添加する替わりに、フェノール化合物1(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)を1.98g(0.0157mol)フラスコに添加したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂4を得た。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物1のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は5/1とした。なお、このエポキシ樹脂4には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0216】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂4について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0217】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂4に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0218】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、実施例4の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しておらず、ネマチック相を形成していると推測した。
【0219】
<実施例5>
[エポキシ樹脂5の合成]
フェノール化合物2(1,2,4−トリヒドロキシベンゼン)を0.99g(0.00785mol)フラスコに添加する替わりに、フェノール化合物2(1,2,4−トリヒドロキシベンゼン)を1.98g(0.0157mol)フラスコに添加したこと以外は実施例2と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂5を得た。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物2のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は5/1とした。なお、このエポキシ樹脂5には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0220】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂5について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0221】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂5に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0222】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、実施例5の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しており、スメクチック相を形成していた。
【0223】
<実施例6>
[エポキシ樹脂6の合成]
フェノール化合物3(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)を0.99g(0.00785mol)フラスコに添加する替わりに、フェノール化合物2(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)を1.98g(0.0157mol)フラスコに添加したこと以外は実施例3と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂6を得た。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物3のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は5/1とした。なお、このエポキシ樹脂6には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0224】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂6について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0225】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂6に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0226】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、実施例6の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しており、スメクチック相を形成していた。
【0227】
<比較例1>
[エポキシ樹脂7の合成]
まず、500mLの三口フラスコに、エポキシ化合物1を50g(0.118mol)量り取り、そこに溶媒1(シクロヘキサノン)を80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを160℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。数分後にエポキシ化合物1が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、フェノール化合物4(ヒドロキノン)を1.3g(0.0118mol)フラスコに添加し、さらに硬化触媒1(トリフェニルホスフィン)を0.5g添加し、160℃のオイルバス温度で加熱を継続した。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物4のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は10/1とした。5時間加熱を継続した後に、反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去した残渣を室温まで冷却することにより、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂7を得た。なお、このエポキシ樹脂7には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0228】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂7について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0229】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂7に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0230】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、比較例1の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しており、スメクチック相を形成していた。
【0231】
<比較例2>
[エポキシ樹脂8の合成]
フェノール化合物4(ヒドロキノン)を1.3g(0.0118mol)フラスコに添加する替わりに、フェノール化合物4(ヒドロキノン)を2.6g(0.0236mol)フラスコに添加したこと以外は比較例1と同様にして、エポキシポリマーを含むエポキシ樹脂8を得た。ここで、エポキシ化合物1のエポキシ基の当量数(Ep)と、フェノール化合物4のフェノール性水酸基の当量数(Ph)との比率(Ep/Ph)は5/1とした。なお、このエポキシ樹脂8には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ化合物とが含まれていた。
【0232】
実施例1と同様にし、エポキシ樹脂8について、固形分量、数平均分子量、エポキシ当量及び融点を測定した。
結果を表1に示す。
【0233】
[成形材の調製及び成形]
エポキシ樹脂1をエポキシ樹脂8に変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物の成形材を調製した。なお、成形材中の無機フィラーの含有率は78体積%であった。
【0234】
実施例1と同様にし、成形材について、流動距離、比重及びガラス転移温度を測定し、硬化物について、熱伝導率を求め、かつCuKα線を用いたX線回折を行った。
結果を表1に示す。
なお、比較例2の硬化物は、回折角2θ=3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有しておらず、ネマチック相を形成していると推測した。
【0235】
エポキシ樹脂1〜8を合成するための配合組成及び合成条件、並びにエポキシ樹脂1〜8及びエポキシ樹脂1〜8を用いて得られた成形材の特性を以下の表1に示す。
表1中、[ポリマー合成配合]の欄の数値は各成分の配合量(g)を示し、「−」は当該成分が使用されていないことを意味する。
【0236】
【表1】
【0237】
表1に示すように、Ep/Phがそれぞれ等しい実施例1〜3及び比較例1において、比較例1で合成したエポキシ樹脂7から得られた成形材よりも実施例1〜3でそれぞれ合成したエポキシ樹脂1〜3から得られた成形材の方が流動特性(スパイラルフロー)は高い値であった。
また、Ep/Phがそれぞれ等しい実施例4〜6及び比較例2において、比較例2で合成したエポキシ樹脂8から得られた成形材よりも実施例4〜6でそれぞれ合成したエポキシ樹脂4〜6から得られた成形材の方が流動特性(スパイラルフロー)は高い値であった。
実施例1〜6ではフェノール成分としてフェノール化合物1(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)を用いた場合に流動特性(スパイラルフロー)が高い値であった。
【0238】
さらに、実施例1〜6及び比較例1、2では、水酸基を3つ有するフェノール化合物を用いた場合に水酸基を2つ有するフェノール化合物を用いる場合よりも硬化物のガラス転移温度が高い値であった。これは、水酸基を3つ有するフェノール化合物を用いることによりエポキシ樹脂の架橋密度が向上したためであると推測される。
【0239】
さらに、Ep/Phが10/1である実施例1〜3では、X線回折法にてスメクチック相の形成が確認されなかった一方、Ep/Phが5/1である実施例5及び6では、X線回折法にてスメクチック相の形成が確認された。これにより、硬化物の熱伝導率も向上していた。
Ep/Phが5/1である実施例4では、X線回折法にてスメクチック相の形成が確認されなかった理由としては、バインダとして機能するフェノール化合物の水酸基配置が近接しているため、メソゲンの配列を阻害したためと推測される。
【0240】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【国際調査報告】