特表-19103069IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-103069樹脂組成物、分散媒、樹脂組成物の製造方法、積層体及び包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年5月31日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、分散媒、樹脂組成物の製造方法、積層体及び包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20201120BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20201120BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20201120BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20201120BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20201120BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20201120BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   C08L29/04 DZAB
   C08L67/00
   C08K3/10
   C08K5/098
   B32B27/28 102
   B32B27/36
   B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】特願2019-555352(P2019-555352)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年11月21日
(31)【優先権主張番号】62/589,602
(32)【優先日】2017年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】チャウ エドガード
(72)【発明者】
【氏名】星加 里奈
(72)【発明者】
【氏名】野中 康弘
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD04
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB41
3E086CA01
3E086DA06
4F100AA02A
4F100AA03A
4F100AA04A
4F100AA07A
4F100AC03A
4F100AH08A
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK04J
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK07D
4F100AK07E
4F100AK21A
4F100AK21J
4F100AK69A
4F100AL01A
4F100AL05A
4F100AL07D
4F100AL07E
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA15
4F100DE01A
4F100EH202
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA07A
4F100JB16B
4F100YY00A
4J002BE031
4J002CF032
4J002CF192
4J002DG046
4J002DH046
4J002DH047
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002EG026
4J002EG027
4J002FD206
4J002FD207
4J002GG02
(57)【要約】
熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる樹脂組成物、このような樹脂組成物を得ることができる分散媒、上記樹脂組成物を用いた積層体、及び上記積層体を含む包装体を提供する。本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、下記式(I)で表される構造単位を有する脂肪族ポリエステル(B)とを含有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である樹脂組成物(α)である。−(CH−OCO− ・・・(I)(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、
数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、下記式(I)で表される構造単位を有する脂肪族ポリエステル(B)と
を含有し、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である樹脂組成物。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
金属化合物(C)をさらに含有し、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量が、0.05質量部以上20質量部以下であり、
上記金属化合物(C)が金属化合物粒子(C2)を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中のビニルアルコール単位(Ma)と上記金属化合物(C)中の金属元素(Mc)とのモル比(Ma/Mc)が、0.01以上500以下である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記脂肪族ポリエステル(B)と上記金属化合物(C)中の金属元素(C’)との質量比(B/C’)が、0.0005以上5以下である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
上記金属化合物(C)の金属成分が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム又はこれらの組み合わせを含む請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
上記金属化合物粒子(C2)が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸マグネシウム、ジクエン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、コハク酸マグネシウム、乳酸カルシウム、ナノクレイ又はこれらの組み合わせである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
金属化合物粒子の分散媒であって、
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、
数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、下記式(I)で表される構造単位を有する脂肪族ポリエステル(B)と
を含有し、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である分散媒。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【請求項8】
金属塩(C1)をさらに含有する請求項7に記載の分散媒。
【請求項9】
上記分散媒100質量部に対する上記金属塩(C1)中の金属元素の含有量が、0.0007質量部以上0.05質量部以下である請求項8に記載の分散媒。
【請求項10】
請求項7に記載の分散媒と、
この分散媒に分散された金属化合物粒子(C2)と
を含む樹脂組成物。
【請求項11】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び金属塩(C1)の混合物と脂肪族ポリエステル(B)とを混合することにより、分散媒を得る工程(I)、及び
上記分散媒と金属化合物粒子(C2)とを混合する工程(II)
を備え、
上記脂肪族ポリエステル(B)の数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、かつ上記脂肪族ポリエステル(B)が、下記式(I)で表される構造単位を有し、
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と上記脂肪族ポリエステル(B)との質量比(A/B)が、70/30以上99.99/0.01以下である樹脂組成物の製造方法。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【請求項12】
請求項1に記載の樹脂組成物からなるバリア層、及び
上記バリア層の少なくとも一方の面側に配置された熱可塑性樹脂を含む層
を備える積層体。
【請求項13】
請求項12に記載の積層体を含む包装体。
【請求項14】
レトルト用である請求項13に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、分散媒、樹脂組成物の製造方法、積層体及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある。)は、酸素遮断性、透明性、耐油性、非帯電性、機械強度等に優れており、フィルム、シート、容器などの各種包装材料等として広く用いられている。近年では、食品をレトルト処理するための容器の素材としても、EVOHが採用されている。
【0003】
EVOHに要求されている諸特性を向上させるために、EVOHに対して、カルボン酸、リン酸等の酸や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩を適当な含有率で含有させる方法が各種提案されている(特開昭64−66262号公報及び特開2001−146539号公報参照)。
【0004】
一方、EVOHを用いたレトルト容器においては、水分の存在により、レトルト処理中及びレトルト処理後に酸素遮蔽性が低下することが知られている。そのため、この酸素遮蔽性の低下を防ぐために、EVOHに乾燥剤等を添加した樹脂組成物が提案されている(特開2007−314788号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−66262号公報
【特許文献2】特開2001−146539号公報
【特許文献3】特開2007−314788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の金属塩等が含有されたEVOH組成物は、真空成形、圧空成形等の熱成形を行う際の成形性(熱成形性)などについては十分なものとはいえない。これに対し、可塑剤等を添加してEVOHの熱成形性を高めることも考えられるが、この場合、得られる成形体からの可塑剤のブリードアウトが生じることがある。また、EVOH組成物を溶融押出成形等によりペレット化する場合、EVOHやその劣化物等がスクリューに付着し、得られるペレットのサイズや形状にバラツキが生じることがある。さらに、乾燥剤を含むEVOH組成物を用いて得られたレトルト容器においては、乾燥剤が十分に分散していない場合などは、レトルト処理後の酸素遮蔽性が不十分になる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる樹脂組成物、このような樹脂組成物を得ることができる分散媒、上記樹脂組成物を用いた積層体、及び上記積層体を含む包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、下記式(I)で表される構造単位を有する脂肪族ポリエステル(B)とを含有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である樹脂組成物(α)である。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【0009】
当該樹脂組成物(α)は、脂肪族ポリエステル(B)を所定量含有するため、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。この理由は定かでは無いが、特定の構造及び物性を有する上記脂肪族ポリエステル(B)が可塑剤的な役割を果たし、熱成形性を高めているものと推測される。また、当該樹脂組成物(α)によれば、脂肪族ポリエステル(B)の含有量が上記範囲であり、かつこの脂肪族ポリエステル(B)の融点が上記範囲であることなどから、熱成形性を高めつつ、得られる成形体からの脂肪族ポリエステル(B)のブリードアウトが抑制される。従って、当該樹脂組成物(α)から、良好な成形体を成形することができる。
【0010】
当該樹脂組成物(α)は、金属化合物(C)をさらに含有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量が、0.05質量部以上20質量部以下であり、上記金属化合物(C)が金属化合物粒子(C2)を含むことが好ましい。
【0011】
当該樹脂組成物(α)がこのように金属化合物粒子(C2)を含む金属化合物(C)を含有することで、溶融押出成形によりペレット化する際に得られるペレットのサイズのバラツキが小さくなるなど、溶融成形性が高まる。この理由は定かでは無いが、金属化合物粒子(C2)がEVOH(A)と相互作用しやすいためと推測される。また、脂肪族ポリエステル(B)が、金属化合物粒子(C2)の良好な分散剤として機能しているとも推測される。これらの結果、金属化合物粒子(C2)の分散性が高まることなどによって、ペレタイズ時におけるEVOHやその劣化物等のスクリューへの付着が抑制され、ストランドが安定するため、ペレットのサイズのバラツキが小さくなるものと推測される。なお、「溶融成形性」とは、当該樹脂組成物をフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等の形状へ溶融成形するときの成形性のみならず、当該樹脂組成物を調製するための溶融混練によりペレットなどを得るときの成形性も含む意味である。また、このような金属化合物(C)を含有する樹脂組成物(α)から形成される包装体は、レトルト処理後も酸素遮蔽性が良好である。
【0012】
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中のビニルアルコール単位(Ma)と上記金属化合物(C)中の金属元素(Mc)とのモル比(Ma/Mc)が、0.01以上500以下であることが好ましい。上記モル比(Ma/Mc)を上記範囲とすることにより、ペレタイズ時におけるスクリューへの付着がより抑制され、ペレットのサイズのバラツキがより小さくなる。また、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性を高めることができる。この理由は、モル比(Ma/Mc)を上記範囲とすることにより、EVOH(A)と金属化合物粒子(C2)との相互作用がより良好に生じることなどによると推測される。
【0013】
上記脂肪族ポリエステル(B)と上記金属化合物(C)中の金属元素(C’)との質量比(B/C’)が、0.0005以上5以下であることが好ましい。上記質量比(B/C’)を上記範囲とすることで、金属化合物粒子(C2)の分散性がより高まることなどにより、ペレタイズ時におけるスクリューへの付着がより抑制され、ペレットのサイズのバラツキがより小さくなる。また、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性を高めることができる。
【0014】
上記金属化合物(C)の金属成分が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。このような金属化合物(C)を用いることで、本発明の熱成形性等の効果をより高めることができる。
【0015】
上記金属化合物粒子(C2)が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸マグネシウム、ジクエン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、コハク酸マグネシウム、乳酸カルシウム、ナノクレイ又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらの成分は乾燥剤として機能する。従って、上記金属化合物粒子(C2)がこのような成分を含む場合、得られる容器等のレトルト処理後の酸素遮蔽性を高めることなどができる。特に、当該樹脂組成物(α)は、脂肪族ポリエステル(B)を含むため、金属化合物粒子(C2)の分散性が良好であり、熱成形性にも優れるため、得られる容器等をレトルト処理した後の酸素遮蔽性も十分に発揮される。
【0016】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、金属化合物粒子の分散媒であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、下記式(I)で表される構造単位を有する脂肪族ポリエステル(B)とを含有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する上記脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である分散媒である。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【0017】
当該分散媒に金属化合物粒子を分散させて得られる樹脂組成物は、熱成形性や溶融成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。また、当該分散媒は、脂肪族ポリエステル(B)を含有するため、金属化合物粒子を良好に分散させることができる。
【0018】
当該分散媒は、金属塩(C1)をさらに含有することが好ましい。当該分散媒が金属塩(C1)をさらに含有することで、得られる樹脂組成物の熱成形性等をより高めることなどができる。
【0019】
当該分散媒100質量部に対する上記金属塩(C1)中の金属元素の含有量が、0.0007質量部以上0.05質量部以下であることが好ましい。金属塩(C1)の含有量を上記範囲とすることで、得られる樹脂組成物の熱成形性、溶融成形性等をより高めることなどができる。
【0020】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該分散媒と、この分散媒に分散された金属化合物粒子(C2)とを含む樹脂組成物(β)である。当該樹脂組成物(β)は、金属化合物粒子(C2)の分散性が良好であり、熱成形性や溶融成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。また、当該樹脂組成物(β)から形成される包装体は、レトルト処理後も酸素遮蔽性が良好である。
【0021】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び金属塩(C1)の混合物と脂肪族ポリエステル(B)とを混合することにより、分散媒を得る工程、及び上記分散媒と金属化合物粒子(C2)とを混合する工程を備え、上記脂肪族ポリエステル(B)の数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、融点が40℃以上120℃以下であり、かつ上記脂肪族ポリエステル(B)が、下記式(I)で表される構造単位を有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と上記脂肪族ポリエステル(B)との質量比(A/B)が、70/30以上99.99/0.01以下である樹脂組成物の製造方法である。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【0022】
当該製造方法によれば、熱成形性や溶融成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる樹脂組成物を製造することができる。また、当該製造方法により得られた樹脂組成物は、金属化合物粒子(C2)の分散性も良好であり、レトルト処理後の酸素遮蔽性が良好な包装体を成形することができる。
【0023】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上記樹脂組成物(α)又は樹脂組成物(β)からなるバリア層、及び上記バリア層の少なくとも一方の面側に配置された熱可塑性樹脂を含む層を備える積層体である。当該積層体は、上記樹脂組成物(α)又は樹脂組成物(β)からなるバリア層を備えるため、熱成形に優れ、かつ良好な酸素遮蔽性等を有する。
【0024】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該積層体を含む包装体である。当該包装体は、良好な酸素遮蔽性等を有するため、食品等の包装体として好適に用いることができる。
【0025】
当該包装体はレトルト用であることが好ましい。当該包装体は、特に上記金属化合物粒子(C2)が乾燥剤である場合などにおいて、レトルト処理後の良好な酸素遮蔽性を有する。従って、当該包装体は、レトルト用の包装体として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる樹脂組成物、このような樹脂組成物を得ることができる分散媒、上記樹脂組成物を用いた積層体、及び上記積層体を含む包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<樹脂組成物(α)>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物(α)は、EVOH(A)と脂肪族ポリエステル(B)とを含有する。当該樹脂組成物(α)は、さらに金属化合物(C)を含有することが好ましい。当該樹脂組成物は、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。また、当該樹脂組成物は、溶融押出成形によりペレット化する際、スクリューへの付着が抑制され、得られるペレットのサイズのバラツキが小さくなるなど、溶融成形性が高い。当該樹脂組成物は、包装体などの成形材料として好適に用いることができる。
【0028】
(EVOH(A))
EVOH(A)は、主構造単位として、エチレン単位(−CH−CH−)及びビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)を有する重合体である。EVOH(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の構造単位を有していてもよい。
【0029】
EVOH(A)のエチレン単位の含有量(すなわち、EVOH(A)中の単量体単位の総数に対するエチレン単位の数の割合)の下限としては20モル%が好ましく、25モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のエチレン単位の含有量の上限としては65モル%が好ましく、55モル%がより好ましい。EVOH(A)のエチレン単位の含有量を上記下限以上とすることで、得られる成形体の高湿度下でのガスバリア性、溶融成形性、黄変等の発生の抑制性等を高めることができる。逆に、EVOH(A)のエチレン単位の含有量を上記上限以下とすることで、得られる成形体のガスバリア性をより高めることができる。
【0030】
EVOH(A)のビニルアルコール単位の含有量の下限としては35モル%が好ましく、45モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のビニルアルコール単位の含有量の上限としては80モル%が好ましく、75モル%がより好ましい。EVOH(A)のビニルアルコール単位の含有量を上記下限以上とすることで、得られる成形体のガスバリア性をより高めることができる。EVOH(A)のビニルアルコール単位の含有量を上記上限以下とすることで、得られる成形体の高湿度下でのガスバリア性、溶融成形性、黄変等の発生の抑制性等を高めることができる。
【0031】
EVOH(A)のケン化度(すなわち、EVOH(A)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合)の下限としては、90モル%が好ましく、99モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のケン化度の上限としては100モル%であってよい。EVOH(A)のケン化度を上記下限以上とすることで、熱成形性や外観特性を高めることができる。
【0032】
EVOH(A)のメルトフローレート(210℃、2160g荷重下)の下限としては、0.1g/10分が好ましく、0.5g/10分がより好ましく、1g/10分がさらに好ましい。一方、このメルトフローレートの上限としては、50g/10分が好ましく、20g/10分がより好ましく、10g/10分がさらに好ましい。メルトフローレートを上記範囲とすることで、熱成形性をより高め、また、得られる成形体に十分な強度等を付与することができる。
【0033】
また、EVOH(A)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOHが上記他の単量体単位を有する場合、EVOHの全構造単位に対する上記他の単量体単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。また、EVOHが上記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.1モル%であってもよい。上記他の単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3−アシロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ペンテン、5−アシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4−アシロキシ−1−ヘキセン、5−アシロキシ−1−ヘキセン、6−アシロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0034】
EVOH(A)は、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の、後変性されたEVOHであってもよい。後変性されたEVOHは溶融成形性が良好になる傾向にある。
【0035】
EVOH(A)としては、エチレン単位含有量、ケン化度、共重合体成分、変性の有無又は変性の種類等が異なる2種以上のEVOHを混合して用いてもよい。
【0036】
当該樹脂組成物(α)におけるEVOH(A)の含有量の下限としては、例えば50質量%であり、70質量%が好ましい。EVOH(A)の含有量を上記下限以上とすることで、得られる成形体に十分な酸素遮蔽性等を付与することができる。一方、このEVOH(A)の含有量の上限としては、例えば99.9質量%が好ましいEVOH(A)の含有量を上記上限以下とすることで、熱成形性をより高めることなどができる。
【0037】
(脂肪族ポリエステル(B))
脂肪族ポリエステル(B)は、繰り返し単位の主鎖中に芳香環を有さないポリエステルである。脂肪族ポリエステル(B)は、芳香環を有さないポリエステルであることが好ましい。
【0038】
脂肪族ポリエステル(B)の数平均分子量(Mn)の下限は1,000であり、2,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。脂肪族ポリエステル(B)の数平均分子量(Mn)が上記下限以上であることにより、得られる成形体からのブリードアウトを十分に抑制することなどができる。一方、この数平均分子量(Mn)の上限は100,000であり、90,000が好ましく、80,000がより好ましい。脂肪族ポリエステル(B)の数平均分子量(Mn)が上記上限以下であることにより、熱成形性、溶融成形性、金属化合物粒子の分散性等を十分に高めることができる。
【0039】
脂肪族ポリエステル(B)の融点の下限は40℃であり、50℃が好ましく、60℃がさらに好ましく、80℃がよりさらに好ましい場合もある。脂肪族ポリエステル(B)の融点が上記下限以上であることにより、得られる成形体からのブリードアウトを十分に抑制することなどができる。一方、この融点の上限は120℃であり、110℃が好ましい。脂肪族ポリエステル(B)の融点が上記上限以下であることにより、熱成形の際に良好な可塑性を発揮し、熱成形性を十分に高めることができる。
【0040】
脂肪族ポリエステル(B)は、下記式(I)で表される構造単位(I)を有する。この構造は核磁気共鳴(NMR)法、熱分解ガスクロマトグラフィーなどで同定できる。
−(CH−OCO− ・・・(I)
(式(I)中、nは、2〜6の整数を表す。)
【0041】
脂肪族ポリエステル(B)が上記構造単位を有することで、熱成形性を十分に高めることができる。上記nは、3〜6が好ましく、4及び5がより好ましく、4がさらに好ましい。
【0042】
脂肪族ポリエステル(B)は、構造単位(I)の繰り返しで構成されていてもよいし、構造単位(I)と他の構造単位(II)との交互繰り返しで構成されていてもよい。構造単位(II)としては、下記式(II)で表される構造単位を挙げることができる。
−R−CO− ・・・(II)
(式(II)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基である。)
【0043】
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基等のアルカンジイル基、エテンジイル基等のアルケンジイル基、エチンジイル機等のアルキンジイル基、シクロヘキサンジイル基等のシクロアルカンジイル基等を挙げることができる。
【0044】
構造単位(I)の繰り返しで構成される脂肪族ポリエステル(B)としては、環状エステルであるラクトンの単独重合体を挙げることができ、具体的には、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン等を挙げることができる。
【0045】
構造単位(I)と構造単位(II)との交互繰り返しで構成される脂肪族ポリエステル(B)としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合体を挙げることができる。脂肪族ジオールとしては、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等を挙げることができる。構造単位(I)と構造単位(II)との交互繰り返しで構成される脂肪族ポリエステル(B)としては、具体的には、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等を挙げることができる。
【0046】
脂肪族ポリエステル(B)は、末端や側鎖が変性されていてもよい。なお、脂肪族ポリエステル(B)は、末端や側鎖に、芳香環を含む官能基を有していてもよい。脂肪族ポリエステル(B)が有していてもよい末端官能基としては、1又は複数のヒドロキシ基を有する有機基、1又は複数のヒドロキシ基を有するポリシロキサニル基等を挙げることができる。ヒドロキシ基を有する有機基としては、1又は複数のヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。脂肪族ポリエステル(B)がこのような末端官能基を有する場合、金属化合物粒子の分散性を高めることなどができる。
【0047】
EVOH(A)及び脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する脂肪族ポリエステル(B)の含有量の下限は0.01質量部であり、0.02質量部が好ましく、0.03質量部がさらに好ましい。脂肪族ポリエステル(B)の含有量が上記下限以上であることにより、脂肪族ポリエステル(B)が熱成形の際に良好な可塑性を発揮し、熱成形性を十分に高めることができる。一方、この含有量は30質量部未満であり、20質量部未満であることも好ましい。この含有量の上限は20質量部であることも好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、5質量部がよりさらに好ましい。脂肪族ポリエステル(B)の含有量の上限が上記範囲であることにより、得られる成形体からのブリードアウトを十分に抑制すること、熱成形性を高めることなどができる。
【0048】
(金属化合物(C))
金属化合物(C)は、金属塩(C1)と金属化合物粒子(C2)とを含むことが好ましい。上記金属化合物(C)の金属成分が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム又はこれらの組み合わせを含むことが好ましく、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム又はこれらの組み合わせを含むことがより好ましい。なお、これらの金属成分は、金属塩(C1)及び金属化合物粒子(C2)の一方又は双方に含まれていてよい。
【0049】
(金属塩(C1))
金属塩(C1)は、当該樹脂組成物(α)の成形性、層間接着性、外観等を改善することができる。金属塩(C1)は、アニオンとカチオンとが解離した状態、あるいは微粒子の状態で存在する。金属塩(C1)が微粒子の状態で存在する場合、この平均粒子径は、通常、0.5μm以下であり、0.1μm以下であってよい。
【0050】
金属塩(C1)としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、周期律表の第4周期に記載されるdブロック金属塩等を挙げることができる。これらの中でも、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。これらの金属塩が含有されている場合、当該樹脂組成物(α)の層間接着性等を高めることができる。
【0051】
アルカリ金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。このアルカリ金属塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0052】
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、ベリリウムなどのカルボン酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0053】
周期律表の第4周期に記載されるdブロック金属の金属塩としては、例えばチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などのカルボン酸塩、リン酸塩、アセチルアセトナート塩等が挙げられる。
【0054】
当該樹脂組成物(α)が、金属塩(C1)を含有する場合、金属塩(C1)中の金属元素の含有量の下限は、EVOH(A)に対し1ppmが好ましく、5ppmがより好ましく、10ppmがさらに好ましく、20ppmが特に好ましい。また金属塩(C1)中の金属元素の含有量の上限は、EVOH(A)に対し10,000ppmが好ましく、5,000ppmがより好ましく、1,000ppmがさらに好ましく、500ppmが特に好ましい。金属塩(C1)の含有量が上記範囲にあることで、層間接着性をより良好に保ちつつ、リサイクルを行った際の熱安定性がより良好となる傾向になる。
【0055】
(金属化合物粒子(C2))
金属化合物粒子(C2)は、通常、当該樹脂組成物(α)中に分散した粒子の状態で存在する。金属化合物粒子(C2)の平均粒子径の下限は、1μmが好ましく、1.1μmがより好ましく、1.2μmがさらに好ましい。一方、この平均粒子径の上限は、15μmが好ましく、12μmがより好ましく、8μmがさらに好ましい。金属化合物粒子(C2)の平均粒子径が上記範囲である場合、良好な分散性を有し、樹脂組成物(α)の熱成形性、溶融成形性、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性などがより高まる。
【0056】
金属化合物粒子(C2)を構成する金属化合物としては特に限定されず、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、合金、金属塩などを挙げることができるが、金属塩であることが好ましい。
【0057】
具体的には、金属化合物粒子(C2)は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸マグネシウム、ジクエン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、コハク酸マグネシウム、乳酸カルシウム、ナノクレイ、リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ポリリン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが例示される。ここで、ポリリン酸塩は、二リン酸塩(ピロリン酸塩)、三リン酸塩(トリポリリン酸塩)などを含むものである。この中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸マグネシウム、ジクエン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、コハク酸マグネシウム、乳酸カルシウム、ナノクレイ又はこれらの組み合わせであることが好ましく、リン酸水素二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ジクエン酸三マグネシウム、乳酸カルシウム又はこれらの組み合わせの粒子であることがより好ましく、リン酸水素二ナトリウムの粒子であることがさらに好ましい。これらの成分は乾燥剤として好適に機能し、レトルト処理中に浸入した水を捕捉することで、樹脂組成物(α)中のEVOH(A)の含水率の上昇を抑制する。このため、このような成分の金属化合物粒子(C2)を用いることにより、得られる容器のレトルト処理後の酸素遮蔽性を高めることなどができる。
【0058】
金属化合物(C)に占める金属化合物粒子(C2)の含有比率の下限としては、50質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。金属化合物(C)に占める金属化合物粒子(C2)の含有比率を上記下限以上とすることで、金属化合物粒子(C2)を含有させることによる効果を高めることができる。一方、金属化合物(C)に占める金属化合物粒子(C2)の含有比率の上限としては、例えば99.999質量%であってよい。
【0059】
EVOH(A)及び脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量の下限としては、0.05質量部が好ましく、0.1質量部がより好ましく、0.3質量部がさらに好ましく、0.5質量部がよりさらに好ましい。金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量が上記下限以上であることで、溶融混練の際のスクリューへの付着が抑制され、得られるペレットのバラツキがより小さくなるなど、溶融成形性が向上する。また、得られる成形体における酸素遮蔽性を高めることなどができる。一方、この含有量の上限としては、20質量部が好ましく、12質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、8質量部がさらに好ましく、3質量部がよりさらに好ましい場合もある。金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量が上記上限以下であることで、金属化合物(C)の分散性が高まることなどにより、溶融成形性がより高まり、ペレットのサイズのバラツキが小さくなり、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性も高まる。
【0060】
EVOH(A)中のビニルアルコール単位(Ma)と金属化合物(C)中の金属元素(Mc)とのモル比(Ma/Mc)の下限としては、0.01が好ましく、0.1がより好ましく、1がさらに好ましく、3がよりさらに好ましく、5が特に好ましい。一方、このモル比(Ma/Mc)の上限としては、500が好ましく、200がより好ましく、130がさらに好ましく、30がよりさらに好ましい。上記モル比(Ma/Mc)を上記範囲とすることにより、金属化合物粒子(C2)の分散性がより良好になり、溶融成形性が高まる。このため、ペレタイズ時におけるスクリューへの付着がより抑制され、ペレットのサイズのバラツキがより小さくなる。また、溶融成形性が高まることなどにより、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性も改善される。
【0061】
脂肪族ポリエステル(B)と金属化合物(C)中の金属元素(C’)との質量比(B/C’)の下限としては、0.0005が好ましく、0.001がより好ましく、0.01がさらに好ましく、0.05がよりさらに好ましく、0.1がよりさらに好ましい。一方、この質量比(B/C’)の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、1がさらに好ましく、0.5がよりさらに好ましい。上記質量比(B/C’)を上記範囲とすることにより、金属化合物粒子(C2)の分散性がより良好になり、溶融成形性が高まる。また、溶融成形性が高まることなどにより、得られる包装体のレトルト処理後の酸素遮蔽性も改善される。
【0062】
(他の成分)
当該樹脂組成物は、EVOH(A)、脂肪族ポリエステル(B)及び金属化合物(C)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、酸、ホウ素化合物、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維、EVOH(A)及び脂肪族ポリエステル(B)以外の他の樹脂等を挙げることができる。なお、当該樹脂組成物(α)において、EVOH(A)、脂肪族ポリエステル(B)及び金属化合物(C)以外の他の成分の含有量の上限としては、10,000ppmが好ましいこともあり、1,000ppmがより好ましいこともあり、100ppmがさらに好ましいこともある。また、上記他の成分は、含有しない場合がよいこともある。上記他の成分の含有量を上記上限以下とすることで、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0063】
上記酸としては、カルボン酸化合物及びリン酸化合物が、樹脂組成物(α)の溶融成形時の熱安定性を高める観点から好ましい。樹脂組成物(α)がカルボン酸化合物を含む場合、カルボン酸の含有量の下限は、1ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、50ppmがさらに好ましい。また、カルボン酸の含有量の上限は、10,000ppmが好ましく、1,000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。樹脂組成物(α)がリン酸化合物を含む場合、リン酸化合物の含有量(リン酸根換算含有量)の下限は、1ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、30ppmがさらに好ましい。一方、リン酸化合物の含有量の上限は、10,000ppmが好ましく、1,000ppmがより好ましく、300ppmがさらに好ましい。樹脂組成物(α)がカルボン酸化合物又はリン酸化合物を上記範囲内含むことで、溶融成形時の熱安定性がより良好になる傾向にある。
【0064】
樹脂組成物(α)が上記ホウ素化合物を含む場合、その含有量(ホウ素換算含有量)は、1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、ホウ素化合物の含有量は、2,000ppm以上が好ましく、1,000ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記範囲内であると、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
【0065】
上記他の樹脂としては、具体的にはポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。その含有量は樹脂組成物(α)に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましく、2質量部以下が最も好ましい。
【0066】
当該樹脂組成物(α)の形状としては、特に限定されず、溶液状、ペースト状、粉末状、ペレット状等のいずれであってもよいが、取扱性等の点から、粉末状又はペレット状であることが好ましい。
【0067】
<樹脂組成物(α)の製造方法>
当該樹脂組成物(α)の製造方法は、特に限定されず、各成分を混合することによって得ることができるが、以下の方法により製造することが好ましい。
【0068】
すなわち、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、
EVOH(A)を合成する工程(工程1)、
EVOH(A)と金属塩(C1)とを混合する工程(工程2)
EVOH(A)及び金属塩(C1)の混合物と脂肪族ポリエステル(B)とを混合することにより、分散媒を得る工程(工程3)、及び
上記分散媒と金属化合物粒子(C2)とを混合する工程(工程4)
を備える。
【0069】
(工程1)
工程1は、EVOH(A)を合成する工程である。EVOH(A)は、従来公知の方法により合成することができる。通常、エチレンとビニルエステルとを共重合し、得られたエチレン−ビニルエステル共重合をケン化することにより、EVOH(A)を得ることができる。
【0070】
上記エチレンとビニルエステルとの共重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を採用できる。無溶媒又はアルコールなどの溶液中で重合を進行させる塊状重合法又は溶液重合法が、通常採用される。高重合度の変性エチレン−ビニルエステル共重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。
【0071】
溶液重合法において用いられる溶媒は特に限定されないが、アルコールが好適に用いられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールがより好適に用いられる。重合反応液における溶媒の使用量は、目的とするEVOHの粘度平均重合度や、溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、反応液に含まれる溶媒と全単量体との重量比(溶媒/全単量体)は、0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲から選択される。
【0072】
重合に用いられる触媒としては、例えば2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾ系開始剤;イソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤などを用いることができる。
【0073】
重合温度としては、20〜90℃であり、好ましくは40〜70℃である。重合時間としては、2〜15時間であり、好ましくは3〜11時間である。重合率は、仕込みのビニルエステルに対して10〜90%であり、好ましくは30〜80%である。重合後の溶液中の樹脂分は、5〜85%であり、好ましくは20〜70%である。
【0074】
所定時間の重合後又は所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応のビニルエステルを除去する。未反応のビニルエステルを除去する方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から上記共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み、塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応のビニルエステルを除去した共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
【0075】
次に、上記共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、上記共重合体をケン化する。ケン化方法は、連続式、回分式のいずれも可能である。このアルカリ触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。
【0076】
ケン化の条件としては、例えば回分式の場合、共重合体溶液濃度が10〜50%、反応温度が30〜65℃、触媒使用量がビニルエステル構造単位1モル当たり0.02〜1.0モル、ケン化時間が1〜6時間である。
【0077】
ケン化反応後のEVOHは、アルカリ触媒、酢酸ナトリウムや酢酸カリウムなどの副生塩類、その他不純物を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。ここで、ケン化反応後のEVOHを、イオン交換水等の金属イオン、塩化物イオン等をほとんど含まない水で洗浄する際、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等を一部残存させてもよい。
【0078】
(工程2)
工程2は、EVOH(A)と金属塩(C1)とを混合する工程である。EVOH(A)と金属塩(C1)との混合方法としては特に限定されず、例えば金属塩(C1)が溶解した溶液に、EVOH(A)のペレット又はストランドを浸漬させる方法を挙げることができる。本方法は、金属塩(C1)をEVOH(A)中に均質に分散させることができる点で好ましい。上記金属塩(C1)を溶解する溶媒としては、水が好適に用いられる。
【0079】
EVOH(A)と金属塩(C1)とを混合する他の方法としては、EVOH(A)を含むペレット等を調製する際に、金属塩(C1)を添加して混練する方法も挙げられる。この添加する方法としては、乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法などが例示される。
【0080】
その他、EVOH(A)を合成する際のケン化工程等で生じる金属塩を残存させることによって、混合物を得てもよい。さらには、上記各方法を組み合わせて、混合物を得てもよい。また、市販の金属塩(C1)を含有するEVOH組成物を用意し、これを混合物として用いてもよい。
【0081】
(工程3)
工程3は、上記工程2で得られた混合物と脂肪族ポリエステル(B)とを混合する工程である。これにより、分散媒が得られる。上記混合方法は特に限定されず、ヘンシエルミキサーやタンブラーを用いて行うことができる。また溶融混練によっても行うことができる。溶融混練する場合には、樹脂の溶融混練に用いられる一般的な装置を採用することができる。混練装置としては、一軸押出機、二軸押出機などの連続混練装置を用いてもよいし、バンバリーミキサーなどのバッチ式混練装置を用いてもよい。
【0082】
溶融混練する際の温度は、EVOH(A)が溶融可能な温度であれば特に限定されないが、190℃以上260℃以下であることが好ましい。溶融混練温度を190℃以上とすることで、EVOH(A)の溶融が十分になる。溶融混練温度の下限は、210℃がより好ましい。一方、溶融混練温度を260℃以下とすることで、EVOH(A)等の分解を抑制することができる。溶融混練温度の上限は、245℃がより好ましい。
【0083】
工程3におけるEVOH(A)と脂肪族ポリエステル(B)との質量比(A/B)の下限は70/30であり、80/20が好ましく、90/10がより好ましい。一方、この質量比(A/B)の上限は、99.99/0.01であり、99.98/0.02が好ましく、99.97/0.03がより好ましい。
【0084】
(工程4)
工程4は、工程3で得られた分散媒と金属化合物粒子(C2)とを混合する工程である。分散媒と金属化合物粒子(C2)とを混合する方法は特に限定されないが、通常、溶融混練により好適に行うことができる。上記分散媒に金属粒子化合物(C2)の水溶液を液添してもよい。取扱い性、得られる樹脂組成物の溶融成形性、レトルト処理後の酸素遮蔽性等の観点から、好ましくは粉体状の金属化合物粒子(C2)を分散媒に対して添加することが好ましい。溶融混練する場合には、樹脂の溶融混練に用いられる一般的な装置を採用することができる。混練装置としては、一軸押出機、二軸押出機などの連続混練装置を用いてもよいし、バンバリーミキサーなどのバッチ式混練装置を用いてもよい。
【0085】
溶融混練する際の温度は、EVOH(A)が溶融可能な温度であれば特に限定されないが、190℃以上260℃以下であることが好ましい。溶融混練温度を190℃以上とすることで、EVOH(A)の溶融が十分になる。溶融混練温度の下限は、210℃がより好ましい。一方、溶融混練温度を260℃以下とすることで、EVOH(A)等の分解を抑制することができる。溶融混練温度の上限は、245℃がより好ましい。
【0086】
上記工程3と工程4とは連続的に行うことができる。すなわち、EVOH(A)及び金属塩(C1)の混合物に、脂肪族ポリエステル(B)を添加し、続いて金属化合物粒子(C2)を添加することにより、工程3及び工程4を行うことができる。
【0087】
なお、各成分の好適な形態については、「樹脂組成物(α)」の実施形態として上述したとおりである。
【0088】
当該樹脂組成物(α)は、他の製造方法によって得ることもできる。例えば、当該樹脂組成物(α)が金属化合物(C)を含有しない場合、EVOH(A)と脂肪族ポリエステル(B)とを溶融混練、ドライブレンド等の公知の方法により混合することで、樹脂組成物(α)を得ることができる。また、EVOH(A)と金属塩(C1)の混合物に対して、脂肪族ポリエステル(B)と金属化合物(C2)とを同時に添加してもよいし、金属化合物(C2)及び脂肪族ポリエステル(B)の順に添加してもよい。各成分の混合は、ドライブレンドで行ってもよい。さらに、市販のEVOH(A)を用いる場合は、工程1を行わなくてよく、金属塩(C1)を含有させない場合は、工程2を行わなくてよい。
【0089】
また、上記工程2〜4等において、上述した他の成分をあわせて混合することができる。例えば、酸やホウ素化合物は、EVOHを含む組成物のペレット等を調製する際に組成物に添加して混練する方法が好適に採用される。この組成物に添加する方法も、特に限定されないが、乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法、溶液に浸漬させる方法などが例示される。これらの中で均質に分散させる観点から、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法又は溶液に浸漬させる方法が好ましい。これらの方法に用いられる溶媒は特に限定されないが、添加剤の溶解性、コスト的メリット、取り扱いの容易性、作業環境の安全性等の観点から水が好適に用いられる。
【0090】
<分散媒>
本発明の一実施形態に係る分散媒は、金属化合物粒子の分散媒であって、EVOH(A)と脂肪族ポリエステル(B)とを含有する。当該分散媒において、EVOH(A)及び脂肪族ポリエステル(B)の合計100質量部に対する脂肪族ポリエステル(B)の含有量が、0.01質量部以上30質量部未満である。当該分散媒に金属化合物粒子を分散させて得られる樹脂組成物は、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。また、当該分散媒は、脂肪族ポリエステル(B)を含有するため、金属化合物粒子を良好に分散させることができ、溶融成形性にも優れる。当該分散媒に金属化合物粒子を分散させて得られる樹脂組成物からは、レトルト処理後の酸素遮蔽性が高い包装体を得ることができる。
【0091】
当該分散媒は、金属塩(C1)をさらに含有することが好ましい。当該分散媒100質量部に対する金属塩(C1)中の金属元素の含有量の下限としては、0.0007質量部が好ましく、0.001質量部がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、0.05質量部が好ましく、0.04質量部がより好ましい。当該分散媒に対して金属塩(C1)を好ましくは上記範囲で含有させることにより、得られる樹脂組成物の熱成形性等をより高めることなどができる。
【0092】
当該分散媒は、上述した「樹脂組成物(α)」から金属化合物粒子(C2)を除いたものとみなすことができる。従って、当該分散媒におけるEVOH(A)、脂肪族ポリエステル(B)、金属塩(C1)等の詳細な又は好適な形態、EVOH(A)及び脂肪族ポリエステル(B)の合計含有量に対する脂肪族ポリエステル(B)の含有量、任意成分等は、樹脂組成物(α)と同様とすることができる。
【0093】
当該分散媒におけるEVOH(A)の含有量の下限としては、例えば50質量%であり、70質量%が好ましい。EVOH(A)の含有量を上記下限以上とすることで、この分散媒を含む樹脂組成物から得られる成形体に十分な酸素遮蔽性等を付与することができる。一方、このEVOH(A)の含有量の上限としては、例えば99.9質量%が好ましいEVOH(A)の含有量を上記上限以下とすることで、熱成形性、溶融成形性等をより高めることなどができる。
【0094】
当該分散媒において、EVOH(A)、脂肪族ポリエステル(B)及び金属塩(C1)以外の他の成分の含有量の上限としては、10,000ppmが好ましいこともあり、1,000ppmがより好ましいこともあり、100ppmがさらに好ましいこともある。また、上記他の成分は、含有しない場合がよいこともある。上記他の成分の含有量を上記上限以下とすることで、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0095】
<分散媒の製造方法>
当該分散媒の製造方法は、特に限定されず、各成分を混合することによって得ることができる。例えば、上述した樹脂組成物の製造方法における工程1〜工程3により、当該分散媒を得ることができる。また、EVOH(A)と脂肪族ポリエステル(B)とを溶融混練することによって得ることができる。溶融混練方法は、樹脂組成物(α)の製造方法において記載した方法を参照することができる。
【0096】
<樹脂組成物(β)>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物(β)は、当該分散媒と、この分散媒に分散された金属化合物粒子(C2)とを含む樹脂組成物である。当該樹脂組成物(β)は、金属化合物粒子(C2)の分散性が良好であり、熱成形性に優れ、かつブリードアウトが抑制された成形体を得ることができる。また、当該樹脂組成物は、溶融成形性にも優れ、レトルト処理後の酸素遮蔽性が高い包装体を得ることができる。
【0097】
当該樹脂組成物(β)は、具体的成分として、EVOH(A)、脂肪族ポリエステル(B)、金属化合物(C)(金属塩(C1)及び金属化合物粒子(C2))及びその他の任意成分を含む。すなわち、当該樹脂組成物(β)の成分組成は、実質的には上述した樹脂組成物(α)と同一である。当該樹脂組成物(β)の各成分及び含有量等の詳細な及び好適な形態は、上述した樹脂組成物(α)と同様である。
【0098】
<樹脂組成物(β)の製造方法>
当該樹脂組成物(β)の製造方法は、特に限定されず、例えば上述した樹脂組成物の製造方法における工程4により、当該樹脂組成物(β)を得ることができる。すなわち、当該分散媒と金属化合物粒子(C2)とを溶融混練等により混合することによって得ることができる。また、分散媒の製造と樹脂組成物(β)の製造とを連続的に行ってもよい。すなわち、例えば、EVOH(A)と金属塩(C1)との混合物(I)に対して、脂肪族ポリエステル(B)を添加して溶融混練することで分散媒を得て、続けてこの分散媒に金属化合物粒子(C2)を添加して溶融混練することで樹脂組成物(β)を得てもよい。溶融混練方法は、樹脂組成物(α)の製造方法において記載した方法を参照することができる。
【0099】
<樹脂組成物の使用方法>
当該樹脂組成物(α)及び樹脂組成物(β)(以下、両樹脂組成物をまとめて単に「樹脂組成物」ともいう。)は、溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形物に成形される。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。溶融成形温度はEVOH(A)の融点等により異なるが、150〜270℃程度が好ましい。
【0100】
<積層体>
当該樹脂組成物は、当該樹脂組成物のみの単層からなる成形体としても使用可能であるが、当該樹脂組成物からなる少なくとも1層を含む積層体とすることが好適である。すなわち、本発明の一実施形態に係る積層体は、当該樹脂組成物からなるバリア層、及び上記バリア層の少なくとも一方の面側に配置された熱可塑性樹脂を含む層(熱可塑性樹脂層)を備える積層体である。
【0101】
当該積層体の層構成としては、バリア層をBarrier、接着性樹脂層をTie、熱可塑性樹脂層をPで表わすと、Barrier/P、P/Barrier/P、Barrier/Tie/P、P/Tie/Barrier/Tie/P等が挙げられるが、これに限定されない。ここで示されたそれぞれの層は単層であってもよいし、場合によっては多層であってもよい。
【0102】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル等を挙げることができ、ポリオレフィンが好ましい。
【0103】
ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、アイオノマー等を挙げることができる。
【0104】
接着性樹脂層を形成する接着性樹脂としては、バリア層と熱可塑性樹脂層とを接着できるものであれば特に限定されないが、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)結合させて得られるカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体のことをいう。
【0105】
当該積層体は、各層を形成する樹脂組成物等を共押出又は共射出すること等によって得ることができる。また、シート、フィルム、パイプ、パリソンなどの当該積層体を二次加工することにより、各種成形品(フィルム、シート、チューブ、ボトルなど)を得ることができる。二次加工により得られる成形品としては、例えば以下のようなものが挙げられる。なお、このような二次加工により得られる成形品も、本発明の一実施形態としての積層体に含まれる。
【0106】
(1)当該積層体(フィルム、シートなど)を一軸又は二軸方向に延伸し、必要に応じて熱処理することにより得られる共延伸シート又はフィルム
(2)当該積層体(フィルム、シートなど)を圧延することにより得られる圧延シート又はフィルム
(3)当該積層体(フィルム、シートなど)を真空成形、圧空成形、真空圧空成形等、熱成形することにより得られるトレーカップ状容器
(4)当該積層体(パイプなど)をストレッチブロー成形することなどにより得られるボトル、カップ状容器
(5)当該積層体(パリソンなど)を二軸延伸ブロー成形することなどにより得られるボトル状容器
【0107】
当該積層体の用途は特に限定されず、例えば包装用フィルム、深絞り容器、カップ状容器、ボトル等の包装体として好適に用いられる。中でも、酸素劣化が嫌われる内容物、特に食品を包装する包装体(容器)として好適である。
【0108】
特に当該包装体は、レトルト用の包装体として特に好適である。レトルト処理としては、100℃以上に加熱して加圧する通常のレトルト処理以外にも、スチームレトルト処理、ウォーターカスケードレトルト処理、マイクロウェーブレトルト処理なども採用される。また、当該包装体は、レトルト処理に限られず、ホット充填、殺菌処理、ボイリング処理が行われる包装体としても好適である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0110】
なお、ポリエステルの数平均分子量及び融点(Tm)、並びに金属化合物粒子の平均粒子径は、以下の方法により測定した。
【0111】
(数平均分子量)
各ポリエステルの数平均分子量について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、ポリメタクリル酸メチルの分子量換算値として求めた。測定条件は以下の通りである。
装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC−8320」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H(S)」2本連結
カラム温度:40℃
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール、流速:0.2mL/分
検出器:RI、試料濃度:0.1重量%(20mMトリフルオロ酢酸ナトリウム塩含有ヘキサフルオロイソプロパノール溶液)
【0112】
(融点(Tm))
各ポリエステルについて、TA Instruments製の示差走査型熱量計「Q2000」を用い、20℃から250℃までを10℃/分の速度で昇温し測定されるピーク温度より融点(Tm)を求めた。
【0113】
(平均粒子径)
各樹脂組成物を材料とし、東洋精機製作所社の押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.5、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件にて単層製膜を行い、単層フィルムを得た。
シリンダー温度:供給部180℃、圧縮部220℃、計量部220℃
ダイ温度:220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量:1.2kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.0m/分
フィルム厚み:20μm
形状測定レーザマイクロスコープ「VK−X200」(非接触式、キーエンス社製)を用いて、得られた単層フィルムを観察し、金属化合物粒子(C2)の粒子径を測定した。測定はn=10で行い、その平均値を平均粒子径とした。
【0114】
<合成例1>EVOHの合成
(エチレン−酢酸ビニル共重合体の重合)
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口及びディレー(逐次添加)溶液添加口を備える250L加圧反応槽に酢酸ビニル83.0kg、メタノール26.6kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が3.6MPaとなるようにエチレンを仕込んだ。開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解し、濃度2.5g/Lの開始剤溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記重合槽内温を60℃に調整した後、上記開始剤溶液362mLを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を3.6MPaに、重合温度を60℃に維持し、上記開始剤溶液を用いて1120mL/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。5.0時間後に重合率が40%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いでラシヒリングを充填した塔の上部から得られた共重合体溶液を連続的に供給し、塔下部よりメタノールを吹き込み塔頂部よりメタノールと未反応酢酸ビニルモノマーの混合蒸気を流出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルモノマーを除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAc)のメタノール溶液を得た。
【0115】
(ケン化)
得られたEVAc溶液にメタノールを加えて濃度が15質量%となるように調整したEVAcのメタノール溶液253.4kg(溶液中のEVAc 38kg)に、76.6L(EVAc中の酢酸ビニルユニットに対してモル比0.4)のアルカリ溶液(NaOHの10質量%メタノール溶液)を添加して60℃で4時間撹拌することにより、EVAcのケン化を行った。反応開始から6時間後、9.2kgの酢酸と60Lの水を添加して上記反応液を中和し、反応を停止させた。
【0116】
(洗浄)
中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器社製「H−130」回転数1200rpm)を用いて、上記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら洗浄し、上記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cm(東亜電波工業社製「CM−30ET」で測定)であった。
【0117】
(造粒)
このようにして得られた粉末状のEVOHを乾燥機を用いて60℃、48時間乾燥した。乾燥した粉末状のEVOH20kgを、80Lの水/メタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=4/6)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、上述のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。
【0118】
(精製)
このようにして得られた含水EVOHペレット40kg及びイオン交換水150Lを、高さ900mm、開径600mmの金属製ドラム缶に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。次に、30kgの含水EVOHペレットに対して150Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水EVOHペレット30kgに対して150Lのイオン交換水を加えて、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を6回繰り返すことで、ケン化工程での副生物等の不純物の除去された含水EVOHペレット(w−EVOH−1)を得た。6回目の洗浄を行った後の洗浄液の伝導度を東亜電波工業社製「CM−30ET」で測定した結果、上記洗浄液の伝導度は3μS/cmであった。得られた含水EVOHペレットの含水率は200質量%であった。
【0119】
<調製例>
水に酢酸0.364g/L、及び酢酸ナトリウム0.455g/Lとなるようそれぞれの成分を溶解した水溶液94.5Lに、上記合成例1にて得られた含水率200%の含水EVOHペレット10.5kgを投入して、25℃で6時間、時々攪拌しながら浸漬を行った。浸漬後の含水EVOHペレットを遠心脱液により脱水した後、熱風乾燥機中80℃で3時間、引き続き120℃で24時間乾燥した。これにより、EVOHと金属塩との混合物である乾燥EVOH樹脂組成物のペレット(EVOH−1)を得た。なお、本実施例で用いたEVOHについてビニルアルコール単位含有量及びケン化度を核磁気共鳴(NMR)法によって分析したところ、ビニルアルコール単位含有量(Ma)は68モル%、ケン化度(DS)は99.98モル%以上であった。
【0120】
(金属イオンの定量)
上記EVOH−1を凍結粉砕により粉砕した。得られたEVOH−1の粉末10gとイオン交換水50mLを100mL共栓付き三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌、加熱抽出した。得られた抽出液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。上記の希釈された抽出液を、パーキンエルマージャパン社製ICP発光分光分析装置「Optima 4300 DV」を用いて、以下に示す各観測波長で手量分析することで、各金属イオンの量を定量した。
Na :589.592nm
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
その結果、EVOH−1は金属イオンとしてナトリウムイオンを8.7μmol/g(EVOH100質量部に対して0.02質量部)含んでいた。
【0121】
<合成例2>ポリエステルB1の合成
特許4493993号の製造例8の記載に準拠して、1,4−ブタンジオールとコハク酸との共重合体である脂肪族ポリエステル(ポリエステルB1)を得た。得られたポリエステルB1の数平均分子量は69,700であり、融点(Tm)は108℃であった。また、ポリエステルB1は、上記式(I)(n=4)で表される構造単位を有するものであった。
【0122】
<比較合成例1>ポリエステルb1の合成
特表2011−518941号の実施例2の記載に準拠して、1,4−ブタンジオールとp−フタル酸ジメチルとの共重合体である芳香族ポリエステル(ポリエステルb1)を得た。得られたポリエステルb1の数平均分子量は56,500であり、融点(Tm)は124℃であった。また、ポリエステルb1は、上記式(I)(n=4)で表される構造単位を有するものであった。
【0123】
<その他のポリエステル>
その他、以下の市販のポリエステルを使用した。
・ポリエステルB2:和光純薬工業株式会社製のポリ−ε−カプロラクトン(数平均分子量は10,000であり、融点(Tm)は60℃であった。また、上記式(I)(n=5)で表される構造単位を有するものであった。)
・ポリエステルB3:ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperplast1018(数平均分子量は4,500であり、融点(Tm)は60℃であった。また、上記式(I)(n=4)で表される構造単位を有するものであった。)
【0124】
<実施例1>
EVOH(調製例で得られた、金属塩を含む混合物(EVOH−1))99.48質量部に対して、ポリエステルB1を0.52質量部添加し、ドライブレンドして、実施例1の樹脂組成物のペレットを得た。
【0125】
<実施例2>
EVOH(調製例で得られた、金属塩を含む混合物(EVOH−1))99.48質量部に対して、ポリエステルB1を0.52質量部添加し、二軸押出機(東洋精機製作所社の「2D25W」、D(mm)=25、L/D=20、押出温度:220℃)を用いて、窒素雰囲気下で溶融押出を行い、実施例2の樹脂組成物のペレットを得た。
【0126】
<実施例3〜10、比較例1〜3>
用いたポリエステルの種類、及びEVOHとポリエステルの含有量(混合比)を表1に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3〜10及び比較例1〜3の各樹脂組成物のペレットを得た。
【0127】
[評価]
(熱成形性)
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた各樹脂組成物を中間層とし、ホモポリプロピレン〔PP、日本ポリプロ社の「EA7AD」、MI=1.4g/10分(230℃、2160g荷重)〕を内外層、無水マレイン酸変性ポリプロピレン〔三井化学社の「アドマーQF500」、MI=5.3g/10分(230℃、2160g荷重)〕を接着樹脂(AD)層とする構成で、T型ダイを備えた共押出機にて3種5層(PP/AD/樹脂組成物/AD/PP=厚み230μm/10μm/20μm/10μm/230μm)で全体厚みが500μmの熱成形用シートを得た。なお押出機及び押出条件は以下の通りである。
押出機:
樹脂組成物:単軸押出機(東洋精機株式会社 ラボ機ME型CO−EXT)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
PP:単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所 GT−32−A)
口径 32mmφ、L/D=28、スクリュー フルフライトタイプ
AD:単軸押出機(株式会社テクノベル SZW20GT−20MG−STD)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
押出条件:
樹脂組成物:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/230℃
PP:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/200/210/230℃
AD:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/220℃
得られた熱成形用シートを熱成形機(浅野製作所製)にてシート温度170℃にて、カップ形状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形(圧空:5kg/cm、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃を使用)を行った。得られた成形体の角部の形状を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:透けることなく均一に引き延ばされていた。
B:引き伸ばしに偏りがあり一部透けていた。
【0128】
(ブリードアウト抑制性)
実施例1〜10及び比較例2〜3で得られた各樹脂組成物を材料とし、東洋精機製作所社の押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.5、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件にて単層製膜を行い、単層フィルムを得た。
シリンダー温度:供給部180℃、圧縮部220℃、計量部220℃
ダイ温度:220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量:1.2kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.0m/分
フィルム厚み:20μm
【0129】
得られた20μmの単層フィルムを40℃/100%RHの条件下に7日間保管した。その後、目視及び触感にてブリードアウトを確認し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:ブリードアウトが発生していなかった。
B:少しブリードアウトの発生が見られた。
C:顕著にブリードアウトの発生が見られた。
【0130】
【表1】
【0131】
上記表1に示されるように、所定量の脂肪族ポリエステル(ポリエステルB1、B2、又はB3)を用いた実施例1〜10は、熱成形性が良好であり、脂肪族ポリエステルのブリードアウトの発生も抑制されていることがわかる。
【0132】
<実施例11>
EVOH(99.48質量部)とポリエステルB1(0.52質量部)とをドライブレンドした。次いで、この混合物(分散媒)100質量部を二軸押出機(JSW日本製鋼所のSuper TEX 44αII、L/D=45.5、ダイ温度:220℃)を用いて金属化合物粒子としてのリン酸水素二ナトリウムの粒子(平均粒子径2.8μm)4.71質量部をサイドフィードしながら、窒素雰囲気下で溶融押出を行った。これにより、実施例11の樹脂組成物のペレットを得た。なお、EVOHは、調製例で得られた、金属塩を含む混合物(EVOH−1)として、ドライブレンドに供した。
【0133】
得られた樹脂組成物のペレットについて、上記「金属イオンの定量」と同様の方法にて、各金属イオンを定量した。上記各金属イオンの合計量が、得られた樹脂組成物中の金属化合物の金属元素の含有量とみなすことができる。得られた樹脂組成物中の金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量は、EVOHとポリエステルB1との合計100質量部に対して1.48質量部となった。なお、この金属元素は、金属塩中の金属元素と金属化合物粒子中の金属元素とを含むものである。
【0134】
<実施例12>
EVOH(99.48質量部)と、ポリエステルB1(0.52質量部)と、金属化合物粒子としてのリン酸水素二ナトリウムの粒子(平均粒子径2.8μm)4.71質量部とをドライブレンドした。次いで、この混合物を二軸押出機(JSW日本製鋼所のSuper TEX 44αII、L/D=45.5、ダイ温度:220℃)を用いて、窒素雰囲気下で溶融押出を行った。これにより、実施例12の樹脂組成物のペレットを得た。なお、EVOHは、調製例で得られた、金属塩を含む混合物(EVOH−1)として、ドライブレンドに供した。
【0135】
得られた樹脂組成物のペレットについて、上記「金属イオンの定量」と同様の方法にて、各金属イオンを定量した。得られた樹脂組成物中の金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量は、EVOHとポリエステルB1との合計100質量部に対して1.48質量部となった。
【0136】
<実施例13>
EVOH(99.48質量部)とポリエステルB1(0.52質量部)とをドライブレンドした。次いで、この混合物(分散媒)100質量部を二軸押出機(JSW日本製鋼所のSuper TEX 44αII、L/D=45.5、ダイ温度:220℃)を用いて金属化合物粒子としてのリン酸水素二ナトリウムの粒子(平均粒子径2.8μm)4.71質量部の水溶液を添加しながら、窒素雰囲気下で溶融押出を行った。これにより、実施例13の樹脂組成物のペレットを得た。なお、EVOHは、調製例で得られた、金属塩を含む混合物(EVOH−1)として、ドライブレンドに供した。
【0137】
得られた樹脂組成物のペレットについて、上記「金属イオンの定量」と同様の方法にて、各金属イオンを定量した。得られた樹脂組成物中の金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量は、EVOHとポリエステルB1との合計100質量部に対して1.48質量部となった。
【0138】
<実施例14〜25、比較例4〜7>
用いたポリエステル及び金属化合物粒子の種類、及びEVOHとポリエステルと金属化合物中の金属元素の含有量(混合比)を表2に示す通りとしたこと以外は実施例11と同様にして、実施例14〜25及び比較例4〜7の各樹脂組成物のペレットを得た。表2には、各樹脂組成物におけるEVOH中のビニルアルコール単位(Ma)と金属化合物(C)中の金属元素(Mc)とのモル比(Ma/Mc)、及び脂肪族ポリエステル(B)と金属化合物(C)中の金属元素(C’)との質量比(B/C’)もあわせて示す。なお、金属化合物の含有量は、配合する金属化合物粒子の量で調整した。各金属化合物粒子は、市販品を用いた。金属化合物粒子は、粉砕により粒径を適宜調整した。
【0139】
[評価]
(スクリューへの付着量)
実施例11〜25及び比較例4〜7で得られた各樹脂組成物を材料とし、東洋精機製作所社の押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件にて単層製膜を行い、単層フィルムを得た。
シリンダー温度:供給部180℃、圧縮部220℃、計量部220℃
ダイ温度:220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量:1.2kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.0m/分
フィルム厚み:20μm
【0140】
上記単層フィルムの押出を48時間行った後、続けて2kgのLDPE(日本ポリエチレン社の「ノバテックLD LA320」)を投入し、押出機、アダプター及びダイのパージングを行った。LDPEが流れきった後に運転を止めてスクリューを取り出し、スクリューに残ったLDPEを除去し、劣化したスクリュー付着物を回収し、得られたスクリュー付着物の質量を秤量した。付着量を表2に示す。なお、スクリューへの付着量は劣化物発生量の指標となり、スクリューへの付着量が少ない程、外観に優れた成形品が得られ、フィッシュアイ、ストリークなどの問題が起こりにくくなる。
【0141】
(ペレットの半値全幅)
ペレットサイズのバラツキ抑制の指標として、実施例11〜25及び比較例4〜7で得られた各樹脂組成物のペレットの円相当径(半径)の粒度分布を、ヴァーダー・サイエンティフィック社の「CAMSIZER XT」を用い、ISO 13322−2(2006年)に準拠した動的画像解析法によって算出された円相当径から求めた。なお、それぞれ、樹脂組成物のペレット500gを用いて上記測定を行った。得られた粒度分布から、半値全幅(mm)を求めた。測定値を表2に示す。
【0142】
(レトルト処理後酸素透過速度)
酸素遮断性の評価として、レトルト処理後酸素透過速度を測定した。まず、実施例11〜25及び比較例4〜7で得られた各樹脂組成物を中間層とし、ホモポリプロピレン〔PP、日本ポリプロ社の「EA7AD」、MI=1.4g/10分(230℃、2160g荷重)〕を内外層、無水マレイン酸変性ポリプロピレン〔三井化学社の「アドマーQF500」、MI=5.3g/10分(230℃、2160g荷重)〕を接着樹脂(AD)層とする構成で、T型ダイを備えた共押出機にて3種5層(PP/AD/樹脂組成物/AD/PP=厚み368μm/16μm/32μm/16μm/368μm)で全体厚みが500μmの多層シートを得た。なお押出機及び押出条件は以下の通りである。
押出機:
樹脂組成物:単軸押出機(東洋精機株式会社 ラボ機ME型CO−EXT)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
PP:単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所 GT−32−A)
口径 32mmφ、L/D=28、スクリュー フルフライトタイプ
AD:単軸押出機(株式会社テクノベル SZW20GT−20MG−STD)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
押出条件:
樹脂組成物:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/230℃
PP:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/200/210/230℃
AD:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/220℃
【0143】
得られた多層シートを10cm×10cmに切り出し、レトルト殺菌装置(日阪製作所社の「RCS−60−10RSTXG−FAM」)の棚に載せた。そして、切り出した多層シートが完全に熱水に浸漬する熱水式レトルト殺菌処理を以下の条件で実施した。
レトルト処理温度:120℃
時間:30分
圧力:0.15MPa
上記レトルト処理後の多層シートを20℃、内層100%RH/外層65%RHの条件下で2か月間調湿した。その後、同条件下でMocon社の「OX−TORAN MODEL 2/21」を用いて、JIS K 7126(等圧法)記載の方法に準じて酸素透過速度の測定を行った。測定結果は、樹脂組成物の層20μmあたりの酸素透過速度として換算した。測定結果を表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
上記表2に示されるように、実施例11〜25は、スクリューへの付着量が少なく、ペレットの半値全幅が小さい値となった。実施例11〜25の樹脂組成物は、溶融成形を安定的に行うことができ、溶融成形性に優れることがわかる。また、実施例11〜25は、レトルト処理後の酸素遮蔽性も高いことがわかる。
【0146】
なお、同じ製法(金属化合物粒子の添加方法)で製造した実施例11、14〜25の中で比較すると、金属化合物(C)中の金属元素(C’)の含有量が比較的少ない又は多く、金属化合物粒子の粒径も比較的大きく、モル比(Ma/Mc)も比較的小さい又は大きい実施例17、23及び24や、脂肪族ポリエステル(B)の質量と金属化合物(C)中の金属元素(C’)の質量との比(B/C’)が比較的小さい又は大きい実施例15及び19〜22が、効果がやや劣る結果となった。
【0147】
また、製造方法(金属化合物粒子の添加方法)の異なる実施例11〜13で比較すると、EVOHと金属塩と脂肪族ポリエステルとを含む分散媒に、金属化合物粒子を溶融混練により混合する実施例10により得られる樹脂組成物が、最も効果に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、容器等の成形材料などとして好適に用いることができる。
【国際調査報告】