特表-19107223IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-107223電池集電体用クラッド材および電池集電体用クラッド材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月6日
【発行日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】電池集電体用クラッド材および電池集電体用クラッド材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20200501BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】特願2019-557169(P2019-557169)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-231363(P2017-231363)
(32)【優先日】2017年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-95726(P2018-95726)
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】織田 喜光
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS03
5H017BB01
5H017BB06
5H017CC01
5H017EE04
5H017EE05
5H017HH03
5H017HH08
(57)【要約】
本発明の1つの目的は、たとえ電池集電体用クラッド材を50μm以下の厚みに薄肉化した場合であっても、相応な機械的強度を有しているとともに、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物が第1層の外表面から脱落してピンホールが形成されるのを抑制することが可能な電池集電体用クラッド材およびその電池集電体用クラッド材の製造方法を提供することである。
本発明の電池集電体用クラッド材(1)は、AlまたはAl合金から構成される第1層(11)と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層(12)とが圧延により接合された、50μm以下の厚みを有するクラッド材からなり、前記クラッド材では、
前記第1層と前記第2層との間に、0.1μm以上1μm以下の厚みを有し、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物から構成される金属間化合物層(13)が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlまたはAl合金から構成される第1層(11)と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層(12)とが圧延により接合された、50μm以下の厚みを有するクラッド材からなり、
前記クラッド材では、前記第1層と前記第2層との間に、0.1μm以上1μm以下の厚みを有し、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物から構成される金属間化合物層(13)が形成されている、電池集電体用クラッド材(1)。
【請求項2】
前記金属間化合物層は、断面視において、圧延方向に沿って不連続状に形成されている金属間化合物から構成される、請求項1に記載の電池集電体用クラッド材。
【請求項3】
断面視において、圧延方向における単位長さ内の前記金属間化合物の圧延方向の長さの合計が前記単位長さの50%以下である、請求項2に記載の電池集電体用クラッド材。
【請求項4】
断面視において、前記単位長さ内の前記金属間化合物の圧延方向の長さの合計が前記単位長さの10%以上30%以下である、請求項3に記載の電池集電体用クラッド材。
【請求項5】
前記クラッド材の厚みは、10μm以上30μm以下である、請求項1に記載の電池集電体用クラッド材。
【請求項6】
前記第1層の厚みは、前記第2層の厚み以下で、かつ、前記金属間化合物層の厚みよりも大きい、請求項1に記載の電池集電体用クラッド材。
【請求項7】
AlまたはAl合金から構成される第1板材(111)と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2板材(112)とを積層させた状態で圧延することによって、前記第1板材と、前記第2板材とを接合し、
圧延後に、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍し、さらに圧延するとともに、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍することにより前記第1板材と前記第2板材との間にAlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物を形成して、AlまたはAl合金から構成される第1層と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層と、0.1μm以上1μm以下の厚みを有する前記金属間化合物から構成される金属間化合物層とを有し、50μm以下の厚みを有するクラッド材を作製する、電池集電体用クラッド材(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池集電体用クラッド材およびその電池集電体用クラッド材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Alから構成される第1層を含むクラッド材を電池集電体に用いるバイポーラ型二次電池が知られている。そのようなパイポーラ型二次電池が、たとえば、特許第5205713号公報に開示されている。
【0003】
特許第5205713号公報には、バイポーラ型二次電池において正極活物質層と負極活物質層の間に、Alから構成される第1層と、CuまたはNiから構成される第2層とを備える電池集電体用クラッド材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5205713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許第5205713号公報に記載の電池集電体用クラッド材において第2層をCuによって構成すると、たとえば、圧延によって電池集電体に好適な厚みにまでクラッド材を薄肉化しようとした場合には、第2層を構成するCuが破れてピンホールが形成されやすいという不都合があった。したがって、本願発明者は、電池集電体用クラッド材の第2層に対して、軟質なCuに替えて、より硬質であり機械的強度の大きいNiまたはFeを用いることを検討した。
【0006】
また、本願発明者は、NiまたはFeを用いた第2層が硬質になって破れにくくなると考えられるために、電池集電体用クラッド材の厚みをより薄肉化(たとえば50μm以下)することを検討した。ここで、圧延を行うにおいては非常に小さな厚みと考えられる、たとえば50μm以下に薄肉化されたクラッド材を作製する場合には、一旦ある程度の厚みを有するクラッド材(中間クラッド材)を作製し、その後、さらに圧延を行うことによって、クラッド材の厚みを50μm以下にすることが一般的である。また、一般的にNiおよびFeは、Alと比べて塑性変形しにくいので、50μm以下にまで圧延する前に、中間クラッド材に対してNiまたはFeの再結晶温度以上の焼鈍温度で焼鈍を行うことにより、NiまたはFeを軟化させて圧延を行うのがよいと考えられる。
【0007】
しかしながら、電池集電体用クラッド材の厚みをたとえば50μm以下に薄肉化するために焼鈍後にさらに圧延を行った場合には、焼鈍時に形成されるAlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物が、機械的強度の小さいAlから構成され、厚みが薄肉化される第1層の外表面に露出して脱落することによってピンホールが形成されることがある。こうして形成されたピンホールにより、NiまたはFeから構成される第2層が第1層の外表面側に露出する虞があることを見出した。この場合、たとえば、電池集電体用クラッド材の両外表面にバイポーラ型二次電池に相応の正極活物質層および負極活物質層を配置した場合において、露出した第2層が正極活物質層および負極活物質層の双方に直接接触することに起因して、電池の充放電時に第2層を構成するNiまたはFeが溶解する虞があると考えられる。
【0008】
また、ピンホールの形成を抑制する観点では、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物の形成を抑制するために、Alと、NiまたはFeとの間にSUSまたはTiなどの別の金属層を別個設ける構成にすることも考えられる。しかしながら、クラッド材を薄肉化する観点では、別の金属層がAlと、NiまたはFeの間に挿入された分だけ、Alと、NiまたはFeとの一層の薄肉化が必要になるだけでなく、別の金属層自体の薄肉化も必要となるため、50μm以下の薄肉化は容易ではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、たとえ電池集電体用クラッド材を50μm以下の厚みに薄肉化した場合であっても、相応な機械的強度を有しているとともに、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物が第1層の外表面から脱落してピンホールが形成されるのを抑制することが可能な電池集電体用クラッド材およびその電池集電体用クラッド材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面による電池集電体用クラッド材は、AlまたはAl合金から構成される第1層と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層とが圧延により接合された、50μm以下の厚みを有するクラッド材からなり、クラッド材では、第1層と第2層との間に、0.1μm以上1μm以下の厚みを有し、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物から構成される金属間化合物層が形成されている。なお、「Al合金」は、Al(アルミニウム)を50質量%以上含有することにより、Alから主に構成される合金を意味する。また、「Ni合金」は、Ni(ニッケル)を50質量%以上含有することにより、Niから主に構成される合金を意味する。また、「Fe合金」は、Fe(鉄)を50質量%以上含有することにより、Feから主に構成される合金を意味する。また、本明細書に記載される元素の含有割合は、特段の断りがない限り、質量%で記載されている。
【0011】
本発明の第1の局面による電池集電体用クラッド材では、上記のように、金属間化合物から構成される金属間化合物層の厚みを1μm以下にする。これにより、電池集電体用クラッド材が50μm以下の厚みのクラッド材からなることにより、AlまたはAl合金から構成される第1層の厚みが薄肉化された場合であっても、金属間化合物層の厚みが1μm以下で十分に小さいので、硬質の金属間化合物が外表面に露出するのを抑制することができる。この結果、相応の機械的強度を有するNi、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層を用いた電池集電体用クラッド材において、厚みを50μm以下の厚みに薄肉化した場合であっても、金属間化合物が外表面から脱落して第1層にピンホールが形成されるのを抑制することができる。したがって、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層が、こうしたピンホールによって第1層の外表面側に露出するのを抑制することができるので、たとえば、両外表面にバイポーラ型二次電池に相応の正極活物質層および負極活物質層を配置することによって、電池集電体用クラッド材を電極に用いた場合であっても、露出した第2層が正極活物質層および負極活物質層の双方に直接接触するのを抑制することができる。この結果、電池の充放電時に発生する虞がある第2層を構成する金属(Ni、Ni合金、FeまたはFe合金)の溶解を防止することができる。
【0012】
また、本発明の第1の局面による電池集電体用クラッド材では、上記のように、金属間化合物から構成される金属間化合物層の厚みを0.1μm以上にすることによって、金属間化合物層の形成量が不十分であることに起因して第1層と第2層との間の接合強度が過度に低下するのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面による電池集電体用クラッド材において、好ましくは、金属間化合物層は、断面視において、圧延方向に沿って不連続状に形成されている金属間化合物から構成される。このように構成すれば、電池集電体用クラッド材において、金属間化合物が形成されていない部分、すなわち第1層と第2層とが直接接触している部分を形成することができる。これにより、第1層と第2層との間に金属間化合物が介在することに起因する電気伝導性の低下(電気抵抗の増大)を抑制することができる。なお、「不連続状」とは、複数の箇所において圧延方向に分断されることによって、圧延方向に互いに離間した複数の金属間化合物が圧延方向に並んでいる状態を意味する。また、「不連続状に形成される金属間化合物層の厚み」とは、圧延方向の所定の長さ(たとえば、後述するマイクロスコープを用いて得られる圧延方向における単位長さ)の範囲において、分断されている複数の金属間化合物のうちの圧延方向の長さが大きいものから少なくとも10個を選択し、選択した個々の金属間化合物のクラッド方向(クラッド材の厚み方向)の最大厚みを測定し、得られた個々の測定値(最大厚み)に基づいて求められる平均値(平均最大厚み)を意味する。
【0014】
上記第1の局面による電池集電体用クラッド材において、好ましくは、断面視において、圧延方向における単位長さ内の金属間化合物の圧延方向の長さの合計が単位長さの50%以下である。なお、「圧延方向における単位長さ」とは、電池集電用クラッド材(被検体)の接合界面を含む鏡面研磨後の断面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX−5000、拡大率1000倍)を用いて観察像を取得し、取得された観察像(写真を含む)上において、無作為に選択された圧延方向に沿う300μmの長さを意味する。このように構成すれば、電池集電体用クラッド材において、金属間化合物が形成されている部分の割合を小さくして、第1層と第2層とが直接的に接合される部分の割合を大きくすることができる。これにより、第1層と第2層との間に金属間化合物が介在することに起因する電気伝導性の低下(電気抵抗の増大)を効果的に抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、断面視において、単位長さ内の金属間化合物の圧延方向の長さの合計が単位長さの10%以上30%以下である。このように構成すれば、金属間化合物の圧延方向の長さの合計が単位長さの10%以上であることによって、金属間化合物が形成されている割合が過度に小さくなるのを抑制することができるので、第1層と第2層との間の接合強度が過度に低下するのを抑制することができる。また、金属間化合物の圧延方向の長さの合計が単位長さの30%以下であることによって、第1層と第2層との間に金属間化合物が介在することに起因する電気抵抗の増大をより効果的に抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面による電池集電体用クラッド材において、好ましくは、クラッド材の厚みは、10μm以上30μm以下である。このように構成すれば、電池集電体用クラッド材の薄肉化をさらに図ることができる。なお、上記のように、クラッド材の厚みが10μm以上30μm以下の厚みt1にさらに薄肉化されることにより、AlまたはAl合金から構成される第1層の厚みがさらに小さくなった場合であっても、金属間化合物層の厚みを1μm以下にすることによって、硬質の金属間化合物が第1層の外表面に露出して脱落することにより、ピンホールが形成されるのを抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面による電池集電体用クラッド材において、好ましくは、第1層の厚みは、第2層の厚み以下で、かつ、金属間化合物層の厚みよりも大きい。このように構成すれば、第1層の厚みが第2層の厚み以下であることによって、塑性変形しやすいAlまたはAl合金から構成される第1層の割合が大きくなるのを抑制することができるので、圧延時に第1層の圧延に第2層が追随できなくなって発生する変形や破断などの不具合を確実に抑制することができる。また、第1層の厚みが金属間化合物層の厚みよりも大きいことにより、金属間化合物が第1層の外表面に露出して脱落するのを確実に抑制することができる。
【0018】
本発明の第2の局面による電池集電体用クラッド材の製造方法は、AlまたはAl合金から構成される第1板材と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2板材とを積層させた状態で圧延することによって、AlまたはAl合金から構成される第1板材と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2板材とを接合し、圧延後に、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍し、さらに圧延するとともに、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍することによって、第1板材と第2板材との間にAlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物を形成して、AlまたはAl合金から構成される第1層と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層と、上記いずれかの金属間化合物から構成される0.1μm以上1μm以下の厚みを有する金属間化合物層とを有し、50μm以下の厚みを有するクラッド材を作製する。
【0019】
本発明の第2の局面による電池集電体用クラッド材の製造方法では、上記のように、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍を行うことによって、金属間化合物から構成される金属間化合物層の厚みを1μm以下に制御することができる。これにより、相応の機械的強度を有するNi、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層を用い、50μm以下の厚みを有するクラッド材を、たとえ焼鈍後にさらに圧延することによって作製した場合であっても、硬質の金属間化合物がAlまたはAl合金から構成される第1層の外表面に露出するのを抑制することができる。この結果、金属間化合物が第1層の外表面から脱落することによってピンホールが形成されるのを抑制することができるので、こうして第1層に形成されたピンホールからNi、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層が第1層の外表面側に露出するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、たとえ電池集電体用クラッド材を50μm以下の厚みに薄肉化した場合であっても、相応な機械的強度を有しているとともに、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物が第1層の外表面から脱落することによってピンホールが形成されるのを抑制することが可能な電池集電体用クラッド材およびその電池集電体用クラッド材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態による電池集電体用クラッド材の断面構成例を示した図である。
図2】本発明の一実施形態による電池集電体用クラッド材を用いたバイポーラ型二次電池の構成例を示した模式図である。
図3】参考例1として断面視で示す、金属間化合物が不連続状に形成されたクラッド材の図(写真)である。
図4】参考例2として平面視で示す、金属間化合物が不連続状(網状)に形成されたクラッド材の図(写真)である。
図5】本発明の一実施形態による電池集電体用クラッド材の製造方法を説明するための模式図である。
図6】本発明の実施例1の断面を示した写真である。
図7】比較例1の断面を示した写真である。
図8】本発明の実施例2の断面を示した写真である。
図9】比較例2の断面を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による電池集電体用クラッド材1の構成について説明する。
【0024】
本発明の一実施形態による図1に示す電池集電体用クラッド材1(以降、クラッド材1と称する)は、図2に示す充放電可能なバイポーラ型二次電池100(以降、電池100と称する)の集電体として用いられる。具体的には、図1および図2に示すように、クラッド材1は、厚み方向(Z方向)の一方側(Z1側)の表面上に正極活物質層101が形成されるとともに、他方側(Z2側)の表面上に負極活物質層102が形成されるように構成されている。これにより、クラッド材1は、正極活物質層101および負極活物質層102が形成された状態で、電池100のバイポーラ型電極103(集電体)として用いられる。
【0025】
このバイポーラ型電極103は、図2に示すような電池100の中間電極として用いられるように構成されている。具体的には、電池100においては、複数のバイポーラ型電極103は、電解質層104を介して厚み方向に積層されている。この際、バイポーラ型電極103同士は、電解質層104を介して、互いに異なる極が厚み方向に対向するように配置されている。そして、最外層に配置された電極105および106から、放電時において電池100の外部に電気(電力)が取り出されるとともに、充電時において電池100の外部から電気(電力)が取り込まれるように構成されている。
【0026】
クラッド材1は、図1に示すように、クラッド方向(Z方向)において50μm以下の長さ(厚み)t1を有する箔状の部材である。なお、クラッド材1の厚みt1は、バイポーラ型電極103の厚みおよびそれを用いた電池100の厚みを小さくするために、30μm以下であるのが好ましい。また、クラッド材1の厚みt1は、クラッド材1の作製が容易でなくなるのを抑制するため、かつ、クラッド材1の取扱時の破損を抑制するために、10μm以上であるのが好ましく、20μm以上であるのがより好ましい。
【0027】
また、クラッド材1は、AlまたはAl合金から構成される第1層11と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層12とがクラッド方向(Z方向)に積層された状態で圧延により接合されている。つまり、クラッド材1は、第1層11と第2層12を有する2層構造のクラッド材からなる。なお、第1層11は、電池100の厚み方向の一方側(Z1側、正極活物質層101側)に配置されているとともに、第2層12は、電池100の厚み方向の他方側(Z2側、負極活物質層102側)に配置されている。
【0028】
また、第1層11を構成するAl(純アルミニウム)としては、約99質量%以上のAlを含むA1000系(たとえばA1050、JIS規格)を用いることが可能である。また、第1層11を構成するAl合金としては、A3003(JIS規格)などのAl−Mn合金、A5052(JIS規格)などのAl−Mg合金、A6061(JIS規格)などのAl−Mg−Si合金などを用いることが可能である。
【0029】
また、第2層12を構成するNi(純ニッケル)としては、約99質量%以上のNiを含むNW2200系(たとえばNW2200、JIS規格)を用いることが可能である。また、第2層12を構成するNi合金としては、NW4400系(たとえばNW4400、JIS規格)のNi−Cu合金などを用いることが可能である。
【0030】
また、第2層12を構成するFe(純鉄)としては、C(炭素)および他の不純物元素(Si(珪素)、Mn(マンガン)、P(リン)、S(硫黄)など)をほとんど含まない、たとえば電解鉄(Cが0.005質量%以下、他の不純物元素の合計が0.02質量%以下)およびアームコ鉄(Cが0.01質量%以下、他の不純物元素の合計が0.03質量%以下)の他、JIS規格の冷間圧延鋼板および鋼帯(たとえばSPCC、SPCD、SPCEなど)などを用いることが可能である。また、第2層12を構成するFe合金としては、フェライト系ステンレス鋼(たとえばJIS規格のSUS430など)のFe−Cr合金、オーステナイト系ステンレス鋼(たとえばJIS規格のSUS301、SUS304、SUS316Lなど)、Fe−Ni−Cr合金などを用いることが可能である。
【0031】
また、第2層12を構成するNi、Ni合金、FeまたはFe合金は、一般的にCuよりも機械的強度が大きいため、たとえばCuによって構成するよりもクラッド材1の機械的強度を向上させることができる。
【0032】
また、第1層11の厚みt2は、第2層12の厚みt3以下である。なお、第1層11の厚みt2は、第1層11の厚みt2および第2層12の厚みt3を合計したクラッド材1の厚みt1の30%以下であるのが好ましい。
【0033】
また、クラッド材1では、第1層11と第2層12との間(界面)に、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物(単に金属間化合物13aという)から構成される金属間化合物層13が形成されている。この金属間化合物13aは、第1層11の一部と第2層12の一部とが焼鈍時の熱により互いに結合して合金化したものである。金属間化合物13aを構成する化合物としては、第2層12がNiまたはNi合金から構成される場合はAl−Ni合金(たとえばAlNiやAlNiなど)が挙げられ、第2層12がFeまたはFe合金から構成される場合はAl−Fe合金(たとえばAlFe、AlFe、AlFe、AlFe、AlFeなど)が挙げられる。この金属間化合物13aから構成される金属間化合物層13は、第1層11と第2層12との接合強度を大きくする機能を有している。また、金属間化合物13aを構成するAl−Ni合金またはAl−Fe合金は、第1層11を構成するAlまたはAl合金、および、第2層12を構成するNi、Ni合金、FeまたはFe合金よりも硬さが十分に大きく、塑性変形しにくく、そして脆い。
【0034】
ここで、本実施形態のクラッド材1では、クラッド方向(Z方向)における金属間化合物層13の長さ(厚み)t4は、0.1μm以上1μm以下でありクラッド材1の厚みt1、第1層11の厚みt2および第2層12の厚みt3のいずれと比べても非常に小さい。なお、金属間化合物層13の厚みt4は、0.4μm以下であるのが好ましい。これにより、金属間化合物層13の厚みが1μm以下で十分に小さいことにより、金属間化合物13aが機械的強度の小さい第1層11を突き破って第1層11側の外表面1aに露出することが抑制される。
【0035】
また、本実施形態では、図1に示すように、クラッド材1において、金属間化合物層13は、断面視において、圧延方向に沿って不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成される。つまり、金属間化合物層13では、圧延方向において互いに離間した複数の金属間化合物13aが圧延方向に沿って並んでいる。ここで、金属間化合物層13は、圧延方向における単位長さL内で確認することができる個々の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が、単位長さLの50%以下になるように形成されているのが好ましい。つまり、単位長さL内において、第1層11と第2層12とが50%を超える範囲で直接接触しているのが好ましい。これにより、第1層11や第2層12よりも電気抵抗が大きい金属間化合物13aが過度に形成されていることに起因して、クラッド材1の電気伝導性が低下するのを抑制することができる。なお、金属間化合物層13は、単位長さL内で確認することができる個々の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が、単位長さLの30%以下になるように形成されているのがより好ましい。一方、第1層11と第2層12との接合強度が過度に低下するのを抑制するために、金属間化合物層13は、単位長さL内で確認することができる個々の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が、10%以上になるように形成されているのが好ましい。
【0036】
また、金属間化合物層13において、金属間化合物13aが形成されている箇所では、第1層11と金属間化合物13aとの界面と、第2層12と金属間化合物13aとの界面との2個の界面が存在している。一方、第1層11と第2層12とが直接接触している箇所(金属間化合物13aが形成されていない箇所)では、第1層11と第2層12との界面の1個の界面が存在している。この結果、金属間化合物13aが形成されている箇所は、界面が多いことに起因して、第1層11と第2層12とが直接接触している箇所よりも電気伝導性が劣る。
【0037】
ここで、参考例として、不連続状に形成されている金属間化合物から構成された金属間化合物層を確認しやすいクラッド材の写真を示す。図3は、参考例1として示す、Alから構成されている第1層(Al層)と、Niから構成されている第2層(Ni層)と、1μmよりも大きな厚みの金属間化合物層を有するクラッド材の一例としての写真(断面視)である。なお、図3の写真では、クラッド材の断面を観察しやすくするために複数枚のクラッド材(1枚のクラッド材の厚みは25μm)を積層させた状態で、クラッド材の断面を観察している。この参考例1と同様に、本実施形態のクラッド材1は、不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成される、0.1μm以上1μm以下の厚みを有する金属間化合物層13を有している。
【0038】
また、図4は、参考例2として示す、参考例1と同様に、Alから構成されている第1層(Al層)と、Niから構成されている第2層(Ni層)と、不連続状に形成されている金属間化合物から構成される金属間化合物層を有するクラッド材(クラッド材の厚みは25μm)の一例としての写真(平面視)である。図4に示す写真では、黒色部分(明度が低い部分)が金属間化合物であり、白色部分(明度が高い部分)が第2層(Ni層)である。なお、クラッド材に有する金属間化合物層(金属間化合物)は、たとえば、被検体(クラッド材)を水酸化ナトリウム20mass%の水溶液へ浸漬(たとえば10分間)し、AlまたはAl合金から構成される第1層(たとえば上記のAl層)を溶解除去して接合界面を露出させることによって観察することができる。図4に示す写真を得る際にも、上記の方法により、第1層(Al層)を溶解させて金属間化合物が位置する接合界面を露出させている。
【0039】
この図4に示す参考例2では、金属間化合物層は、金属間化合物同士が平面的に網目のように繋がることによって、その網目の内部に金属間化合物が形成されていない不連続状の形態(このような形態を網状と呼ぶ)に形成されている。なお、金属間化合物がより少ない場合は、金属間化合物同士が平面視において網状に繋がるまでには至らない離間した形態(このような形態を島状と呼ぶ)に形成されると考えられる。また、上記のように平面視において網状や島状の形態を有する金属間化合物によって形成されている金属間化合物層は、断面視において圧延方向に沿って不連続状に並んでいる金属間化合物によって形成されていると考えられる。
【0040】
図3に示した参考例1と同様に、本実施形態の金属間化合物層13は、断面視において、金属間化合物13aが大きく偏った状態で形成されておらず、圧延方向に概ね均等的に分散した状態で形成されている金属間化合物13aから構成されている。また、図4に示した参考例2と同様に、本実施形態の金属間化合物層13は、第1層11を除いた状態におけるクラッド方向(Z2方向)または第2層12を除いた状態におけるクラッド方向(Z1方向)からの平面視において、金属間化合物13aが大きく偏った状態で形成されておらず、島状または網状に形成されている金属間化合物13aから構成されている。
【0041】
また、第1層11の厚みt2および第2層12の厚みt3は、金属間化合物層13の厚みt4よりも大きい。
【0042】
次に、図1図2および図5を参照して、一実施形態におけるクラッド材1の製造プロセスについて説明する。
【0043】
まず、図5に示すように、AlまたはAl合金から構成される長尺の第1板材111と、Ni、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される長尺の第2板材112とを準備する。なお、第1板材111および第2板材112は、共に焼鈍により適度に軟化されている。なお、第1板材111をある程度加工硬化させることによって、第1板材111の機械的強度を、第2板材112の機械的強度に近づけることもできる。また、第1板材111および第2板材112の厚みの調整は、第1板材111の厚みと第2板材112の厚みとの比率が最終製品(後述する最終圧延後)となるクラッド材1における第1層11の厚みt2と第2層12の厚みt3との比率と略一致するように行う。なお、一例として、第1板材111の厚みを0.4mmとし、第2板材112の厚みを0.8mmとする。
【0044】
そして、長尺の第1板材111と第2板材112とを板厚方向(Z方向)に積層した状態で、第1板材111および第2板材112の延びる方向に沿って所定の圧下率で圧延(クラッド圧延)を行う。この際、圧延ローラ201を用いて常温下で冷間圧延を行うことができる。これにより、第1板材111aと第2板材112aとが板厚方向(クラッド方向、Z方向)に積層された状態で接合された長尺の接合材101aが作製される。なお、クラッド圧延時の圧下率は、第1板材111aと第2板材112aとを確実に接合させるために、50%以上であるのが好ましい。一例として、0.4mmの厚みの第1板材111と、0.8mmの厚みの第2板材112を50%の圧下率でクラッド圧延を行った場合、第1板材111aの厚みおよび第2板材112aの厚みは、それぞれ、0.2mmおよび0.4mmになるとともに、接合材101aの厚みt11aは、0.6mmになる。
【0045】
その後、焼鈍炉202を用いて、接合材101aに対して350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍(第1の焼鈍)を行うことによって、接合材101aと同じ厚みの長尺のクラッド材101bを作製する。この際、非酸化雰囲気下で焼鈍(第1の焼鈍)を行うのが好ましいとともに、焼鈍時間は数分(10分未満)であるのが好ましい。なお、第2板材112aがNiまたはNi合金から構成されている場合は通常のNiまたはNi合金の焼鈍と比べて、また、第2板材112aがFeまたはFe合金から構成されている場合は通常のFeまたはFe合金の焼鈍と比べて、本実施形態の焼鈍(第1の焼鈍)の焼鈍温度(350℃以上550℃以下)は低く、かつ、短時間(数分)で行われる。これにより、AlまたはAl合金から構成される第1層と比べて、再結晶温度が高いNi、Ni合金、FeまたはFe合金のうちのいずれか1つから構成されている第2層は、再結晶が起こらない一方、回復が起こり、ある程度圧延が容易になる。また、再結晶温度が低いAlまたはAl合金から構成されている第1層は、ある程度焼鈍される。
【0046】
この焼鈍炉202を用いた焼鈍(第1の焼鈍)の際に、第1板材111aのAlと第2板材112aのNiとが反応することによって、または第1板材111aのAlと第2板材112aのFeとが反応することによって、クラッド材101bにおいて、第1板材111aを用いた第1層111bと第2板材112aを用いた第2層112bとの間に、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物(金属間化合物13a)から構成される金属間化合物層113aが形成される。ここで、金属間化合物層113aは、焼鈍後(後述する中間圧延前)において、連続状に形成されている。なお、「連続状」とは、「不連続状」とは異なり、金属間化合物層が、圧延方向に略分断されることなく繋がっており、圧延方向に沿って層状に延びている状態を意味する。また、焼鈍後(後述する中間圧延前)において、金属間化合物層113aの厚みt14aは1μm未満であり、最終製品(後述する最終圧延後)となるクラッド材1における金属間化合物層13の厚みt4(図1参照)よりも小さい。
【0047】
そして、クラッド材101bに対して、所定の圧下率で圧延(中間圧延)を行うことにより、長尺のクラッド材101cを作製する。この際、圧延ローラ203を用いて常温下で冷間圧延を行うことができる。この中間圧延により、クラッド材101cの厚みt11bがクラッド材101bの厚みt11aよりも小さくされる。ここで、金属間化合物層113aを構成する金属間化合物13aは、第1層111bを構成するAlまたはAl合金および第2層112bを構成するNi、Ni合金、FeまたはFe合金と比べて、硬さが十分に大きく、塑性変形しにくく、そして脆い。これにより、中間圧延において、第1層111bおよび第2層112bは、圧延方向に優先的に延ばされるとともに厚みが小さくなる一方、硬質の金属間化合物13aから構成される金属間化合物層113aは圧延方向にほとんど延ばされずに、厚みt14aはほとんど小さくならない。この結果、金属間化合物層113aを構成する金属間化合物13aが脆さに起因して圧延に追随できずに圧延方向の複数の位置で分断されることによって、圧延方向において個々の金属間化合物13aが分散している形態の金属間化合物層113b、すなわち不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成される金属間化合物層113bが形成される。
【0048】
ここで、金属間化合物層113aを構成する金属間化合物13aが圧延方向にほとんど延ばされない点を考慮すると、中間圧延時の圧下率をR1(%)とした場合に、金属間化合物層113bでは、断面視において、圧延方向における単位長さL(図1参照)内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が、(L×(100−R1)/100)の近傍の値になると考えられる。
【0049】
一例として、0.4mmの厚みの第1板材111および0.8mmの厚みの第2板材112を用いて圧延(クラッド圧延)された0.6mmの厚みt11aのクラッド材101bを、さらに50%の圧下率R1で中間圧延を行った場合、第1層111cの厚みおよび第2層112cの厚みは、それぞれ、0.1mmおよび0.2mmになるとともに、クラッド材101cの厚みt11bは、0.3mmになる。また、この場合、金属間化合物層113bでは、断面視において、圧延方向における単位長さL内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計は、0.5L(単位長さLの50%)の近傍の値になると考えられる。
【0050】
その後、焼鈍炉204を用いて、クラッド材101cに対して350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍(第2の焼鈍)を行うことによって、長尺のクラッド材101dを作製する。この焼鈍炉204を用いる焼鈍(第2の焼鈍)では、焼鈍炉202を用いた焼鈍(第1の焼鈍)と同様に、非酸化雰囲気下で焼鈍を行うのが好ましいとともに、焼鈍時間は数分(10分未満)であるのが好ましい。
【0051】
この焼鈍(第2の焼鈍)の際においても、焼鈍炉202を用いた焼鈍(第1の焼鈍)の際と同様に、第1層111cのAlと第2層112cのNi(またはFe)とが反応する。これにより、クラッド材101dにおいて、先の焼鈍(第1の焼鈍)時に金属間化合物13aが形成されていない箇所では、第1層111dと第2層112dとの間(界面)に、AlおよびNiを含有する金属間化合物、またはAlおよびFeを含有する金属間化合物(金属間化合物13a)が形成され、先の焼鈍(第1の焼鈍)時に金属間化合物13aが形成されている箇所では、隣接する第1層111cまたは第2層112cとさらに反応して、金属間化合物13aが若干大きくなる。これにより、第1層111dと第2層112dとの間に、金属間化合物層113cを有するクラッド材101dが作製される。ここで、中間圧延によって不連続状に分断されていた金属間化合物13aが焼鈍炉204を用いた焼鈍(第2の焼鈍)によって連続状に形成されるため、焼鈍炉204を用いた焼鈍後(後述する最終圧延前)において、金属間化合物層113cは、連続状に形成されている金属間化合物13aから構成される。また、金属間化合物層113cの厚みt14bは、0.1μm以上1.0μm以下である。
【0052】
そして、クラッド材101dに対して、所定の圧下率で圧延(最終圧延)を行うことにより、最終製品としての長尺のクラッド材1(図1参照)を作製する。この際、圧延ローラ205を用いて常温下で冷間圧延を行うことができる。この最終圧延により、クラッド材1の厚みt1がクラッド材101dの厚みt11bよりも小さくされる。ここで、最終圧延においても、中間圧延と同様に、第1層111dおよび第2層112dは、圧延方向に優先的に延ばされるとともに厚みが小さくなる一方、硬質の金属間化合物層113cは圧延方向にほとんど延ばされずに、厚みt14bはほとんど小さくならない。この結果、金属間化合物13aから構成された金属間化合物層113cが脆さに起因して圧延に追随できずに圧延方向の複数の位置で分断されることによって、圧延方向において個々の金属間化合物13aが分散している形態の金属間化合物層13、すなわち不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成された金属間化合物層13が形成される。
【0053】
この際、金属間化合物層113cの厚みt14bが0.1μm以上1.0μm以下で十分に小さいので、第1層111dの厚みが第1層11の厚みt2(図1参照)になるまで小さくされたとしても、硬質の金属間化合物13aが第1層111dの外表面(第1層11の外表面1a)に露出するのが抑制される。この結果、硬質の金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出して脱落することに起因して、第1層11の外表面1aにピンホールが形成されるのが抑制されるので、第2層12が第1層11の外表面1a側に露出するのが抑制される。
【0054】
ここで、最終圧延時の圧下率をR2(%)とした場合に、中間圧延時と同様に、金属間化合物層13では、断面視において、圧延方向における単位長さL(図1参照)内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が、(L×(100−R2)/100)の近傍の値になると考えられる。
【0055】
一例として、0.4mmの厚みの第1板材111および0.8mmの厚みの第2板材112を用いて上記のように圧延(クラッド圧延)された0.3mmの厚みt11bのクラッド材101dを、さらに略80%(83.3%)の圧下率で最終圧延を行った場合、第1層11の厚みt2および第2層12の厚みt3は、それぞれ、0.015mm(すなわち15μm)および0.035mm(すなわち35μm)になるとともに、クラッド材1の厚みt1は、0.050mm(すなわち50μm)になる。また、金属間化合物層13では、圧延方向における単位長さL内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計は、0.2L(単位長さLの20%)の近傍の値になると考えられる。つまり、金属間化合物層13が、断面視において、単位長さL内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が単位長さLの50%以下で、かつ、10%以上30%以下(おおよそ20%)になるように、不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成される。したがって、最終製品のクラッド材1において、金属間化合物層13の単位長さLに対する上記割合(不連続状の度合い)は、最終圧延における圧下率をR2(%)として、100−R2(%)に略一致する。
【0056】
また、本実施形態では、図5に示すように、クラッド圧延、焼鈍(第1の焼鈍)、中間圧延、焼鈍(第2の焼鈍)および最終圧延は、搬送方向に搬送されながら、連続的に行われる。これにより、長尺のクラッド材1が連続的に作製される。
【0057】
その後、図1に示すように、クラッド材1の表面上に、正極活物質層101および負極活物質層102が配置されることによって、バイポーラ型電極103が作製される。この際、第2層12が第1層11の外表面1a側に露出するのが抑制されているので、露出した第2層12が正極活物質層101および負極活物質層102の双方に直接接触するのが抑制される。そして、作製されたバイポーラ型電極103は、図2に示すように、電池100に用いられる。
【0058】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、金属間化合物13aから構成される金属間化合物層13の厚みを1μm以下にする。これにより、クラッド材1が50μm以下の厚みに薄肉化されることにより、AlまたはAl合金から構成される第1層11の厚みが小さくなった場合であっても、金属間化合物層13の厚みt4が1μm以下で十分に小さいので、硬質の金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出するのを抑制することができる。この結果、相応の機械的強度を有するNi、Ni合金、FeおよびFe合金のうちのいずれか1つから構成される第2層12を用いたクラッド材1において、厚みt1を50μm以下の厚みに薄肉化した場合であっても、金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出して脱落することにより、第1層11の外表面1aにピンホールが形成されるのを抑制することができる。したがって、こうしたピンホールにより、Ni、Ni合金、FeまたはFe合金から構成される第2層12が第1層11の外表面1a側に露出するのを抑制することができるので、両外表面に相応の正極活物質層101および負極活物質層102を配置することによってクラッド材1を電池100の電極(バイポーラ型電極103)に用いた場合に、露出した第2層12が正極活物質層101および負極活物質層102の双方に直接接触するのを抑制することができる。この結果、電池100の充放電時に発生する虞がある第2層12を構成するNi、Ni合金、FeまたはFe合金の溶解を防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、金属間化合物13aから構成される金属間化合物層13の厚みを0.1μm以上にすることによって、金属間化合物層13の形成量が不十分であることに起因して第1層11と第2層12との間の接合強度が過度に低下するのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、金属間化合物層13を、断面視において、圧延方向に沿って不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成する。これにより、クラッド材1において、金属間化合物13aが形成されていない部分、すなわち第1層11と第2層12とが直接接触している部分を形成することができる。この結果、第1層11と第2層12との間に金属間化合物13aが介在することに起因する電気伝導性の低下(電気抵抗の増大)を抑制することができる。また、金属間化合物層13が不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成されていることにより、金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出した際に脱落しやすい場合であっても、金属間化合物層13の厚みt4が1μm以下で十分に小さいので、金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出すること自体を抑制することができる。これにより、金属間化合物13aが第1層11の外表面1aから露出して脱落するのを確実に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、好ましくは、金属間化合物層13を、断面視において、圧延方向における単位長さL内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が単位長さLの50%以下(より好ましくは、30%以下)になるように、不連続状に形成されている金属間化合物13aから構成する。このよう構成すれば、クラッド材1において、金属間化合物13aが形成されている部分の割合を小さくして、第1層11と第2層12とが直接接触している部分の割合を大きくすることができる。これにより、第1層11と第2層12との間に金属間化合物13aが介在することに起因する電気伝導性の低下(電気抵抗の増大)を効果的に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、好ましくは、金属間化合物層13を、断面視において、圧延方向における単位長さL内の金属間化合物13aの圧延方向の長さdの合計が単位長さLの10%以上になるように形成されている金属間化合物13aから構成する。これにより、金属間化合物13aが形成されている割合が過度に小さくなるのを抑制することができるので、第1層11と第2層12との間の接合強度が過度に低下するのを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、クラッド材1の厚みt1を10μm以上30μm以下にすることによって、クラッド材1の薄肉化をさらに図ることができる。なお、クラッド材1が10μm以上30μm以下の厚みt1にさらに薄肉化されることにより、第1層11の厚みt2がさらに小さくなった場合(たとえば、15μm)であっても、金属間化合物層13の厚みを1μm以下にすることによって、硬質の金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出して脱落することにより、第1層11の外表面1aにピンホールが形成されるのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、第1層11の厚みt2が第2層12の厚みt3以下であることによって、塑性変形しやすいAlまたはAl合金から構成される第1層11の割合が大きくなるのを抑制することができるので、圧延時に第1層11の圧延に第2層12が追随できなくなるのを確実に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1層11の厚みt2が金属間化合物層13の厚みt4よりも大きいことにより、金属間化合物13aが第1層11の外表面1aに露出して脱落するのを確実に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の製造方法では、350℃以上550℃以下の温度条件下で焼鈍(上記の第1の焼鈍および第2の焼鈍)を行うことによって、金属間化合物13aから構成される金属間化合物層13の厚みを1μm以下に制御することができる。
【0068】
(実施例)
図6図7図8および図9を参照して、本発明の効果を確認するために行った実験を説明する。
【0069】
〈実施例1〉
実施例1では、第1板材111として厚み0.3mmのAl板を用いるとともに、第2板材112として厚み0.6mmのNi板を用いてクラッド材を作製した。
【0070】
まず、第1板材111と第2板材112とを板厚方向(Z方向)に積層した状態で、第1板材111および第2板材112の延びる方向に沿って、常温下で約61%の圧下率でクラッド圧延を行い、接合材101aを作製した。作製した接合材101aの全体厚みは、0.35mmとなった。
【0071】
クラッド圧延後、焼鈍炉202を用いて、非酸素雰囲気下において接合材101aに対して450℃で3分間の焼鈍(第1の焼鈍)を行い、クラッド材101bを作製した。
【0072】
焼鈍(第1の焼鈍)後、クラッド材101bに対して、常温下で約86%の圧下率で中間圧延をさらに行い、クラッド材101cを作製した。この中間圧延により、クラッド材101cの全体厚みは50μmとなった。
【0073】
中間圧延後、焼鈍炉204を用いて、クラッド材101cに対して450℃で3分間の焼鈍(第2の焼鈍)を行い、クラッド材101dを作製した。
【0074】
そして、焼鈍(第2の焼鈍)後、クラッド材101dに対して、圧下率54%で最終圧延を行い、クラッド材1を作製した。作製したクラッド材1は、第1層(Al層)の厚みと第2層(Ni層)の厚みとの比が1:2であり、全体厚みが23μmとなった。
【0075】
図6は、実施例1のクラッド材の写真(断面視)である。実施例1の完成したクラッド材のAl層およびNi層の厚みをそれぞれ5箇所測定し、平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、測定した5箇所の第1層(Al層)の厚みは、それぞれ10.6μm、10.9μm、7.2μm、6.3μmおよび6.8μmと6μm以上11μm以下の範囲となった。また、第1層(Al層)の5箇所の厚みの平均は8.4μmであった。
【0078】
また、測定した5箇所の第2層(Ni層)の厚みは、それぞれ12.0μm、12.5μm、15.8μm、16.2μmおよび15.9μmと12μm以上16.5μm以下の範囲となった。また、第2層(Ni層)の5箇所の厚みの平均は14.5μmであった。
【0079】
また、実施例1では、図6に示すように、金属間化合物層が圧延方向において複数に分断されていた。金属間化合物層を構成する個々の金属間化合物のクラッド材の厚み方向における大きさ(厚み)が約0.6μm以上0.7μm以下(1μm未満)であったため、金属間化合物層の厚みは約0.7μm(1μm未満)となった。また、個々の金属間化合物の圧延(長手)方向の長さは15μm以下となった。
【0080】
〈比較例1〉
比較例1は、第2の焼鈍温を580℃に変更した以外は実施例1と同じ材料および同じ方法でクラッド材を作製した。
【0081】
図7は、比較例1のクラッド材1の写真(断面視)である。比較例1の完成したクラッド材の第1層(Al層)および第2層(Ni層)の厚みをそれぞれ5箇所測定し、平均値を求めた。その結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
表2に示すように、測定した5箇所の第1層(Al層)の厚みは、それぞれ8.7μm、7.7μm、6.3μm、11.9μmおよび8.9μmと6μm以上12μm以下の範囲となった。また、第1層(Al層)の5箇所の厚みの平均は8.7μmであった。
【0084】
また、測定した5箇所の第2層(Ni層)の厚みは、それぞれ14.5μm、14.9μm、16.8μm、13.3μmおよび14.9μmと13μm以上17μm以下の範囲となった。また、第2層(Ni層)の5箇所の厚みの平均は14.9μmであった。
【0085】
また、比較例1では、図7に示すように、金属間化合物層が圧延(長手)方向において複数に分断されていた。金属間化合物層を構成する個々の金属間化合物のクラッド材の厚み方向における大きさ(厚み)が約6μmであったため、金属間化合物層の厚みは約6μmとなった。また、比較例1では、図7に示すように、金属間化合物にひび割れ(クラック)が発生していた。
【0086】
実施例1および比較例1において形成された金属間化合物層を構成する金属間化合物(たとえば、Al−Ni合金)は、第1層を構成するAlおよび第2層を構成するNiよりも硬さが十分大きい。そのため、圧延したとしても金属間化合物層は厚みが小さくならなかったと考えられる。一方で、金属間化合物は脆いため、金属間化合物層が圧延に追従できず、金属間化合物層が分断されて不連続状に形成されたと考えられる。
【0087】
また、圧延によって金属間化合物層の厚みが小さくなりにくいことから、第1の焼鈍または第2の焼鈍によって、完成したクラッド材の金属間化合物層の厚みが決定されると考えられる。いいかえれば、焼鈍によって金属間化合物がどれだけ成長するかにより完成したクラッド材の金属間化合物層の厚みが決まると考えられる。
【0088】
そのため、第2の焼鈍の温度が比較例1よりも低い実施例1は、第2の焼鈍の温度が低いことにより金属間化合物の成長が抑制されたため、金属間化合物層の厚みが1μm未満になったと考えられる。一方、比較例1は、第2の焼鈍によって金属間化合物が成長したため、金属間化合物層の厚みが1μmよりも大きくなったと考えられる。このことから、本発明者は、第2の焼鈍の温度を580℃未満(たとえば550℃以下)にすることにより、第1の焼鈍後に第2の焼鈍を行ったとしても金属間化合物層の厚みを1μm以下にすることができることを見出した。
【0089】
〈実施例2〉
実施例2では、第1板材111として厚み0.3mmのAl板と、第2板材112として厚み0.6mmのFe板を用意し、クラッド材を作製した。
【0090】
まず、用意した第1板材111と第2板材112とを板厚方向(Z方向)に積層した状態で、第1板材111および第2板材112の延びる方向に沿って、常温下で72.2%の圧下率でクラッド圧延を行い、接合材101aを作製した。作製した接合材101aの全体厚みは、0.25mmとなった。
【0091】
クラッド圧延後、焼鈍炉202を用いて、非酸素雰囲気下において接合材101aに対して350℃で3分間の焼鈍(第1の焼鈍)を行うことによって、クラッド材101bを作製した。
【0092】
焼鈍(第1の焼鈍)後、クラッド材101bに対して、常温下で80%の圧下率で中間圧延を行い、クラッド材101cを作製した。この中間圧延により、クラッド材101cの全体厚みは50μmとなった。
【0093】
中間圧延後、焼鈍炉204を用いて、クラッド材101cに対して350℃で3分間の焼鈍(第2の焼鈍)を行った。
【0094】
そして、焼鈍(第2の焼鈍)後、クラッド材101dに対して、圧下率50%で最終圧延を行い、全体厚みが25μmのクラッド材を作製した。
【0095】
図8は、実施例2のクラッド材の写真(断面視)である。完成したクラッド材の第1層(Al層)および第2層(Fe層)の厚みをそれぞれ5箇所測定し、平均値を求めた。その結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示すように、測定した5箇所の第1層(Al層)の厚みは、それぞれ8.1μm、8.3μm、8.6μm、6.0μmおよび9.0μmと6μm以上9μm以下の範囲となった。また、第1層(Al層)の5箇所の厚みの平均は8.0μmであった。
【0098】
また、測定した5箇所の第2層(Fe層)の厚みは、それぞれ17.3μm、16.6μm、16.4μm、16.9μmおよび16.4μmと16μm以上17.5μmの範囲となった。また、第2層(Fe層)の5箇所の厚みの平均は16.7μmであった。
【0099】
また、実施例2では、図8に示すように、金属間化合物層が圧延(長手)方向において連続状に形成されており、破断が見られなかった。金属間化合物から構成される金属間化合物層の厚みは約0.3μm(1μm未満)となった。
【0100】
〈比較例2〉
比較例2は、第2の焼鈍を580℃で1分間に変更した以外は実施例2と同じ材料および同じ方法でクラッド材を作製した。
【0101】
図9は、比較例2のクラッド材の写真(断面視)である。完成したクラッド材の5箇所の第1層(Al層)および第2層(Fe層)の厚みを測定し、平均値を求めた。その結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示すように、測定した5箇所の第1層(Al層)の厚みは、それぞれ6.0μm、6.6μm、7.9μm、7.6μmおよび6.6μmと6μm以上8μm以下の範囲となった。また、第1層(Al層)の5箇所の厚みの平均は6.9μmであった。これは、実施例2の第1層(Al層)よりも厚みが小さくなったことを示す。
【0104】
また、測定した5箇所の第2層(Fe層)の厚みは、それぞれ19.3μm、18.0μm、18.3μm、16.4μmおよび18.0μmと16μm以上19.5μm以下の範囲となった。また、第2層(Fe層)の5箇所の厚みの平均は18.0μmであった。
【0105】
また、比較例2では、図9に示すように、金属間化合物層が圧延(長手)方向において複数に分断されており、金属間化合物が第1層(Al層)を突き破り露出している部分もあった。金属間化合物層を構成する個々の金属間化合物のクラッド材の厚み方向における大きさ(厚み)が約7μmであったため、金属間化合物層の厚みは約7μmとなった。また、個々の金属間化合物の圧延(長手)方向の長さは15μmとなった。
【0106】
実施例2および比較例2において形成された金属間化合物層を構成する金属間化合物(たとえば、Al−Fe合金)は、第1層を構成するAlおよび第2層を構成するFeよりも硬さが十分大きい。そのため、圧延したとしても金属間化合物層は厚みが小さくならなかったと考えられる。また、比較例2では、金属間化合物は脆いため、金属間化合物層が圧延に追従できず、分断されて不連続状に形成されたと考えられる。
【0107】
また、圧延によって金属間化合物層の厚みが小さくなりにくいことから、第1の焼鈍または第2の焼鈍によって、完成したクラッド材の金属間化合物層の厚みが決定されると考えられる。いいかえれば、焼鈍によって金属間化合物がどれだけ成長するかにより完成したクラッド材の金属間化合物層の厚みが決まると考えられる。
【0108】
そのため、第2の焼鈍の温度が比較例2よりも低い実施例2は、第2の焼鈍の温度が低いことにより金属間化合物の成長が抑制されたため、金属間化合物層の厚みが1μm未満になったと考えられる。一方、比較例2は、第2の焼鈍によって金属間化合物が成長し、金属間化合物層の厚みが1μmよりも大きくなったと考えられる。このことから、本発明者は、第2の焼鈍の温度を580℃未満(たとえば550℃以下)にすることにより、第1の焼鈍後に第2の焼鈍を行ったとしても金属間化合物層の厚みを1μm以下にすることができることを見出した。
【0109】
また、比較例2では、第1の焼鈍の温度を比較例1よりも低くするとともに、第2の焼鈍を同じ温度で短い時間行ったが、第2比較例の金属間化合物は大きく成長し第1層(Al層)を突き破っていた。このことから、第2層がFeで構成される場合は、第2層がNi層で構成されるよりも焼鈍の温度の影響を受け易く、成長が促進されることを本発明者は見出した。
【0110】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0111】
たとえば、上記実施形態では、本発明の電池集電体用クラッド材1をバイポーラ型二次電池のバイポーラ型電極103に用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の電池集電体用クラッド材を、モノポーラ型二次電池のモノポーラ型電極として用いてもよい。つまり、第1層または第2層のいずれか一方にのみ、正極活物質層または負極活物質層が配置されてもよい。本発明の電池集電体用クラッド材を、液体の電解質を用いるリチウムイオン二次電池などに用いてもよい。本発明の電池集電体用クラッド材を、表面上に正極活物質層(または負極活物質層)を形成することによって正極(または負極)に用いてもよい。本発明の電池集電体用クラッド材を、電池端子用として、電池の正極(または負極)と正極端子(または負極端子)との接続に用いてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、電池集電体用クラッド材1の製造方法として、クラッド圧延、焼鈍(第1の焼鈍)、中間圧延、焼鈍(第2の焼鈍)および最終圧延の順に行われる例(図5参照)を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電池集電体用クラッド材の製造方法としては、少なくともクラッド圧延、焼鈍(第1の焼鈍)およびその焼鈍後の圧延(最終圧延)がこの順で行われればよい。つまり、焼鈍(第1の焼鈍)と最終圧延との間において、中間圧延および焼鈍(第2の焼鈍)は行われなくてもよい。また、焼鈍(第1の焼鈍)と最終圧延との間において、中間圧延および焼鈍(第2の焼鈍)を交互に複数回行ってもよい。また、最終圧延後に最終の焼鈍(第3の焼鈍)を行ってもよい。この場合、0.1μm以上1.0μm以下の厚みを有する金属間化合物層が、第1層および第2層の間に、不連続状ではなく連続状に形成されている金属間化合物から構成される、電池集電体用クラッド材を作製することも可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 電池集電体用クラッド材
11 第1層
12 第2層
13 金属間化合物層
13a 金属間化合物
111、111a 第1板材
112、112a 第2板材
L 単位長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】