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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月27日
【発行日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】積層造形物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20191122BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20191122BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20191122BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20191122BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20191122BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20191122BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20191122BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20191122BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20191122BHJP
   B33Y 70/00 20150101ALI20191122BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B22F3/105
   B22F1/00 T
   B22F3/24 B
   C21D6/00 M
   C22C38/00 302N
   C22C38/14
   B33Y80/00
   B33Y10/00
   B33Y70/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2019-538284(P2019-538284)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月17日
(11)【特許番号】特許第6610984号(P6610984)
(45)【特許公報発行日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-241300(P2017-241300)
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福澤 範英
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 功一
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】桑原 孝介
(72)【発明者】
【氏名】福元 志保
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 和也
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA30
4K018BA16
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018FA08
4K018KA18
(57)【要約】
マルエージング鋼でなる積層造形物について、靭性に優れた積層造形物とその製造方法、および、積層造形用金属粉末を提供する。
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる積層造形物であり、上記の積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、この断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下の積層造形物である。
また、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末を用いた積層造形物の製造方法において、積層造形時の熱源出力を50〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とする積層造形物の製造方法である。
そして、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなり、メジアン径D50が200μm以下の積層造形用金属粉末である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる積層造形物であり、
前記積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、前記断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下であることを特徴とする積層造形物。
【請求項2】
硬さが40〜60HRCであることを特徴とする請求項1に記載の積層造形物。
【請求項3】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜20質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層造形物。
【請求項4】
前記マルエージング鋼が、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層造形物。
【請求項5】
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末をステージ上に敷き詰める作業と、該ステージ上に敷き詰めた前記金属粉末に熱源を走査しながら照射する作業とを繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成する積層造形物の製造方法において、
前記金属粉末に熱源を走査しながら照射するときの熱源出力を50〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とすることを特徴とする積層造形物の製造方法。
【請求項6】
前記積層造形工程で形成された物品に、さらに、溶体化処理および時効処理を含む熱処理工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項7】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜20質量%であることを特徴とする請求項5または6に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項8】
前記マルエージング鋼が、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co;0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなることを特徴とする請求項5または6に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項9】
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなり、メジアン径D50が200μm以下であることを特徴とする積層造形用金属粉末。
【請求項10】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜20質量%であることを特徴とする請求項9に記載の積層造形用金属粉末。
【請求項11】
前記マルエージング鋼が、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなることを特徴とする請求項9に記載の積層造形用金属粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金型、押出し(エジェクター)ピンといった金型用部品や、その他の工具製品、構造部品等に用いることができる積層造形物と、その製造方法に関する。また、本発明は、これら積層造形物の製造に用いることができる積層造形用金属粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、複雑な形状を有する金属製品(部品)をニアネットシェイプで容易に形成できる手段として、積層造形法が注目されている。積層造形法とは、一般的には3Dプリンティングとも呼ばれる、付加製造技術(additive manufacturing)のことである。そして、積層造形法の種類として、例えば、金属粉末に熱源を照射して溶かしながら積層していくパウダースプレー法や、ステージ上に敷き詰めた金属粉末に熱源を照射して溶融し、これを凝固させる作業を繰り返して積層していくパウダーベッド法がある。
積層造形法によれば、複雑な形状を有する金属製品を、従来の機械加工工程を大きく省略して作製できるので、難加工性の金属材料を用いることができる。そして、難加工性の金属材料は、専ら、高強度の金属材料でもあるので、複雑な形状を有して、かつ耐久寿命の長い金属製品を作製することができる。
【0003】
高強度の金属材料として、マルエージング鋼がある。マルエージング鋼とは、例えば、18質量%程度のNiを含有した鋼に、Co、Mo、Ti、Al等の時効硬化元素を添加した時効硬化型の超強力鋼である。そして、マルエージング鋼は、靭性にも優れることから、マルエージング鋼を各種工具や構造部品の材料に用いることで、これら製品の寿命向上に有効である。そして、マルエージング鋼を金属材料に用いて、上記の積層造形法によって作製した積層造形物が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第11/149101号パンフレット
【特許文献2】中国特許出願公開第106825566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルエージング鋼でなる積層造形物は、複雑な製品形状に対応できた上で、高強度や優れた靭性が期待できる。しかし、実際に積層造形されたものの中には、マルエージング鋼の成分組成に対して、それに見合う程の十分な靭性を達成しないものがあった。
本発明の目的は、マルエージング鋼でなる積層造形物について、靭性に優れた積層造形物とその製造方法を提供するものである。そして、これら積層造形物の製造に用いることができる積層造形用金属粉末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる積層造形物であり、上記の積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、この断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下の積層造形物である。そして、この積層造形物について、硬さを40〜60HRCとすることができる。
【0007】
また、本発明は、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末をステージ上に敷き詰める作業と、このステージ上に敷き詰めた金属粉末に熱源を走査しながら照射する作業とを繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成する積層造形物の製造方法において、上記の金属粉末に熱源を走査しながら照射するときの熱源出力を50〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とする積層造形物の製造方法である。
そして、上記の積層造形工程で形成された物品に、さらに、溶体化処理および時効処理を含む熱処理工程を行う積層造形物の製造方法とすることができる。
【0008】
そして、本発明は、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなり、メジアン径D50が200μm以下の積層造形用金属粉末である。
【0009】
本発明の場合、上記のマルエージング鋼は、好ましくは、Coの含有量が0〜20質量%である。そして、上記のマルエージング鋼は、例えば、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マルエージング鋼でなる積層造形物の靭性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明例および比較例の積層造形物の積層方向に平行な断面をEPMA(電子線マイクロアナライザー)で分析したときのTiの元素マッピング画像(a)と、この画像(a)を二値化処理した画像(b)とを示す図である。
図2】本発明例および比較例の熱処理工程後の積層造形物の積層方向に平行な断面をEPMAで分析したときのTiの元素マッピング画像(a)と、この画像(a)を二値化処理した画像(b)とを示す図である。
図3】本発明例の熱処理工程後の積層造形物の積層方向に平行な断面をEPMAで分析したときのTiの元素マッピング画像(a)と、この画像(a)を二値化処理した画像(b)とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴は、マルエージング鋼でなる積層造形物の靭性の劣化が、その成分組成中のTiと、積層造形法という特別な製造工程との関係に起因して、生じていることを見いだした点にある。以下、本発明の各要件について、その好ましい要件も合わせて、説明する。
【0013】
(1)本発明の積層造形物は、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなるものである。
マルエージング鋼にとって、Tiは、時効処理後の組織中に強化相であるNiTiを形成して、マルエージング鋼に強度を付与する元素である。但し、Ti含有量が多すぎると、凝固時の組織中に顕著なTi偏析が生じて、かつ、この顕著なTi偏析が時効処理後の組織中にまで残留して、マルエージング鋼の靭性が劣化する。よって、本発明では、Ti含有量を0.1〜5.0質量%とする。好ましくは0.5質量%以上である。より好ましくは1.0質量%以上である。さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、好ましくは4.0質量%以下である。より好ましくは3.0質量%以下である。さらに好ましくは2.5質量%以下である。
【0014】
(2)本発明の積層造形物は、その積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、この断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下のものである。
上述の通り、マルエージング鋼のTi含有量を5.0質量%以下とすることで、組織中のTi偏析を軽減して、マルエージング鋼の靭性を確保することができる。しかし、これが積層造形物となると、マルエージング鋼のTi含有量が上記の5.0質量%以下に抑えられていても、積層造形法という特別な製造工程に起因して、その成分組成に見合う程の十分な靭性を達成しないものがあった。
【0015】
つまり、本発明に係る0.1〜5.0質量%のTiを含んだマルエージング鋼であっても、その凝固時の組織中には少なからずTi偏析を生じ得るところ、これが積層造形法によるものであると、凝固組織が積層方向に伸長して形成されやすい。よって、マルエージング鋼中の合金元素が濃化した最終凝固部も積層方向に沿った長い形状となりやすく、この合金元素が濃化した最終凝固部が“線状の”偏析となる。
そして、積層造形されたマルエージング鋼の物品には、後に溶体化処理および時効処理の熱処理工程が行われて、組織中のTiがNiTiの強化相を形成するところ、Tiが濃化した偏析部では、NiTiが他の部位よりも多く形成される。そして、この多く形成されたNiTiの形状も“線状”となるため、これが使用中における亀裂の伝播を助長すると考えられる。その結果、マルエージング鋼でなる積層造形物の場合、それがTiを含有することで、特に、その積層方向と直交する方向(言わば、熱源の走査方向)の靭性が劣化しやすくなると考えられる。
【0016】
そこで、Tiを含有するマルエージング鋼でなる積層造形物の靭性を向上させるためには、上記の線状のTi偏析を軽減することが有効である。そして、溶体化処理および時効処理の熱処理工程後においては、線状を呈したNiTiを減らすことが有効である。すなわち、上記の熱処理工程前においては、積層造形物の積層方向に平行な断面に分布する線状のTi偏析の“長さ”を縮小する(断面のTi濃度を平準化する)ことである。また、上記の熱処理工程後においては、積層造形物の積層方向に平行な断面に分布する線状のNiTiの“長さ”を縮小する(NiTiの形状を等方的にする)ことである。そして、本発明においては、上記の熱処理工程の前または後において、積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、この断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下である。そして、好ましくは10μm未満である。
【0017】
なお、上記の「線状のTi濃化部」とは、連続する細長い形のTi濃化部のことである。そして、このTi濃化部の細長い形が直線状や曲線状であるときに、上記の「線状のTi濃化部」は、例えば、この直線や曲線の長さである「Ti濃化部の長さ」が、直線や曲線の長手方向に垂直な方向の最大幅の凡そ3倍以上長い形態として確認できる。そして、上記の「線状のTi濃化部の長さが15μm以下」とは、上記の連続する細長い形のTi濃化部について、その長さを15μm以下に規制するものである。これは、上記の長さが「0μm」の場合(つまり、連続する細長い形のTi濃化部自体がない場合)も含んでいる。
一方、本発明の積層造形物の積層方向に平行な断面には、上記の線状ではない、点状のTi濃化部は存在していてもよい。この点状のTi濃化部は、上記の「線状のTi濃化部」以外のTi濃化部とすることができる。点状のTi濃化部は、その略等方的な形状によって、大きさによらず、上述した亀裂の伝播を助長する経路となり難いことから、積層造形物の靭性を劣化させる影響度が小さい。
【0018】
上記の「線状のTi濃化部の長さ」を測定するための、断面のTi濃度分布の「面分析」には、例えば、EPMA(電子線マイクロアナライザー)を利用することができる。まず、積層造形物の中心部の位置から、この積層造形物の積層方向に平行な断面を採取する。このとき、上記の断面が「積層方向に平行な断面であること」は、積層造形物の仕様や積層造形物中の積層跡等から確認することができる。そして、この断面について、倍率100倍の縦800μm×横800μmの領域を、縦横それぞれ400点の等間隔の位置(計160000点の位置)で、EPMA分析することで、この断面の平均のTi濃度Aを知ることができる。そして、この平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有するTi濃化部の分布状況を示す元素マッピング画像を得ることができる(図1(a))。このとき、この元素マッピング画像を、上記のTi濃度Bの臨界値を閾値として二値化処理することで、Ti濃化部を明確に視認することができる(図1(b))。そして、この二値化された画像から、線状のTi濃化部の長さを確認することができる。
なお、この二値化された画像において、Ti濃化部は、各分析位置の画素の集合(黒色の点群)で表示されているところ、これが「線状」であることは、それぞれの画素が、縦、横、斜めで“隣接している”ことで確認が可能である。
【0019】
本発明に係る「線状のTi濃化部」を、上記の縦800μm×横800μmの領域の一つまたは二つ以上で確認したときに、本発明の「線状のTi濃化部の長さが15μm以下である」というのは、「長さが15μmを超える線状のTi濃化部が、縦800μm×横800μmの領域当たり、1.0個未満である」と言うこともできる。この「1.0個未満」は、「0個」の場合も含んでいる。
【0020】
(3)本発明の積層造形物は、好ましくは、Coの含有量が0〜20質量%であるマルエージング鋼でなるものである。
マルエージング鋼にとって、Coは、製品の強度および靭性の向上効果を有する元素である。この点において、本発明の積層造形物には、選択元素として、Coを含有させることができる。好ましくは0.1質量%以上である。より好ましくは0.2質量%以上である。さらに好ましくは0.3質量%以上である。
【0021】
一方で、Coは、高価な元素である。そして、多すぎると、積層造形物の硬度上昇に伴って、靭性を劣化させる元素である。よって、Coを含有する場合であっても、その上限は20質量%とすることが好ましい。なお、本発明の積層造形物は、上述の通り、その組織中の線状のTi濃化部を抑制していることで、靭性が改善されている。よって、この点において、本発明では、靭性の向上元素であるCoの含有量を、低く制限することができる。好ましくは15質量%以下に制限することができる。より好ましくは10質量%以下に、さらに好ましくは5質量%以下に制限することができる。
【0022】
(4)本発明の積層造形物は、好ましくは、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなるものである。
【0023】
・C:0.1質量%以下
Cは、通常、マルエージング鋼の特徴である高靭性の低炭素マルテンサイト組織を得るために規制される元素である。よって、本発明において、Cは0.1質量%以下に制限することが好ましい。より好ましくは0.08質量%以下に、さらに好ましくは0.05質量%以下に制限する。
【0024】
・Ni:14〜22質量%
Niは、TiやMo等と金属間化合物を形成して強度の向上に寄与する、マルエージング鋼として成立させるために必要な根幹的元素である。よって、Niの含有量は、14質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは16質量%以上である。
但し、Niが多すぎると、オーステナイト組織が安定化して、マルテンサイト組織が形成され難くなる。よって、Niの含有量は、22質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは19質量%以下である。
【0025】
・Mo:0.1〜15.0質量%
Moは、時効処理時に金属間化合物であるNiMoを形成して、金属組織を析出強化または固溶強化し、マルエージング鋼の強度向上の効果を有する元素である。よって、Moの含有量は、0.1質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
但し、Moが多すぎると、Feと粗大な金属間化合物を形成して、マルエージング鋼の靭性が低下する。よって、Moの含有量は、15.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下である。
【0026】
・Al:3.0質量%以下
Alは、マルエージング鋼材料の溶製工程における脱酸剤として利用できる元素である。そして、溶製後のマルエージング鋼中のAlが多すぎると、金属組織に非金属介在物が増加して、マルエージング鋼の靭性が低下する。よって、Alの含有量は、3.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
なお、マルエージング鋼にAlを含有させた場合、AlはNiと金属間化合物を形成して、金属組織を析出強化する効果を有する。よって、Alを含有する場合、Alの含有量は、0.01質量%以上とすることができる。より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
【0027】
本発明に係るマルエージング鋼では、上記の元素種を選択的に含み、残部がFeおよび不純物でなる成分組成を基本的な成分組成とすることができる。
【0028】
(5)本発明の積層造形物は、例えば、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末をステージ上に敷き詰める作業と、このステージ上に敷き詰めた金属粉末に熱源を走査しながら照射する作業とを繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成する積層造形物の製造方法において、上記の金属粉末に熱源を走査しながら照射するときの熱源出力を50〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とする積層造形物の製造方法によって作製することが可能である。
【0029】
上記の積層造形物の製造方法は、特に、従来知られるパウダーベッド法に基づくものである。例えば、所定の金属粉末をステージ上に敷き詰めて、このステージ上に敷き詰めた金属粉末に熱源を走査しながら照射し、部分的に金属粉末を溶融させて、凝固させる作業を、熱源の走査方向の上方に重ねて繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成するものである。上記の熱源には、例えば、レーザーや電子ビームを利用できる。
そして、上記の所定の金属粉末に、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末を用いて、かつ、上記の熱源の照射時の条件を下記の特別なものに調整することで、形成された物品中における線状のTi濃化部(Ti偏析)を抑制でき、積層造形物の靭性を改善することができる。
【0030】
まず、熱源の出力が高すぎると、熱源を照射中の金属の溶融部が深くなって、凝固時に強い偏析が生じ、その結果、長い「線状のTi濃化部」が形成されやすくなる。しかし、熱源の出力が低すぎると、金属粉末を十分に溶融できなくなり、凝固後の造形物中には、金属粉末の隙間に由来する空孔が多く形成されてしまう。したがって、熱源の出力を50〜330Wとすることが好ましい。より好ましくは100W以上である。さらに好ましくは150W以上、よりさらに好ましくは200W以上、特に好ましくは250W以上である。
【0031】
次に、熱源の走査速度が速すぎると、金属粉末が十分な熱を得られないことによって、金属粉末が十分に溶融せず、その結果、凝固後の造形物中に上記の空孔が多く形成されやすくなる。しかし、熱源の走査速度が遅すぎると、熱源を照射中の金属の溶融部が深くなって、その結果、長い「線状のTi濃化部」が形成されやすくなる。また、熱源の走査速度が遅すぎると、金属粉末に過剰な熱が与えられて、溶湯の流動が盛んになり、これがガスを巻き込むことで、凝固後の造形物に気泡が混入しやすい。よって、走査速度を480〜3000mm/秒とすることが好ましい。より好ましくは500mm/秒以上である。さらに好ましくは800mm/秒以上である。また、より好ましくは2000mm/秒以下である。さらに好ましくは1500mm/秒以下である。
【0032】
そして、上記の積層造形物の製造方法では、さらに、走査ピッチを0.02〜0.20mmとすることが可能である。走査ピッチとは、走査する熱源について、隣合うビーム照射位置の離間距離(ビームの中心位置の間隔)のことである。走査ピッチが大きくなりすぎると、熱源の照射時に、敷き詰められた金属粉末を全面で溶融することが難しくなって、これも凝固後の造形物の内部に空孔が形成される要因となり得る。そして、走査ピッチが小さくなりすぎると、熱源を照射中の金属の溶融部が深くなって、長い「線状のTi濃化部」が形成されやすくなる。よって、走査ピッチを0.02〜0.20mmとすることが好ましい。より好ましくは0.05mm以上である。また、より好ましくは0.15mm以下である。
【0033】
なお、一走査あたりの積層厚さが大きすぎると、熱源の照射時に、敷き詰められた金属粉末の全体に熱が伝わり難くなって、金属粉末が十分に溶融しなくなる。「一走査あたりの積層厚さ」とは、積層造形するときに敷き詰めた「一層毎の金属粉末層の厚さ」のことである。そして、一走査あたりの積層厚さが小さすぎると、所定の積層造形物の大きさにするまでの積層数が多くなって、積層造形工程に要する時間が長くなる。よって、一走査あたりの積層厚さを10〜200μmとすることが好ましい。より好ましくは20μm以上である。さらに好ましくは30μm以上である。また、より好ましくは100μm以下である。さらに好ましくは80μm以下、よりさらに好ましくは60μm以下である。
【0034】
積層造形工程時の雰囲気は、例えば、アルゴンガス等の不活性雰囲気や、窒素ガスとすることができる。また、減圧環境下(真空を含む)にすることもできる。特に、熱源に電子ビームを利用するときに、造形時の雰囲気を減圧環境下(真空を含む)にすることが好ましい。
【0035】
そして、本発明の積層造形物は、例えば、メジアン径D50(体積基準の累積粒度分布の50%粒径)が200μm以下である、0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼からなる金属粉末を層状に敷き詰める工程と、この敷き詰められた金属粉末を走査熱源によって逐次溶融し、凝固することで凝固層を形成する工程とを備え、上記の金属粉末を層状に敷き詰める工程と上記の凝固層を形成する工程とを繰り返して複数の層状の凝固層を形成する積層造形物の製造方法によって、作製することが可能である。
上記の金属粉末のD50を200μm以下とすることで、金属粉末を均等に敷き詰められる点で好ましい。より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。なお、下限については、例えば、走査熱源を照射中に金属粉末が飛散し難いという点で、10μmが好ましい。より好ましくは20μmである。
上記の走査熱源には、やはり、レーザーや電子ビームを利用できる。そして、この走査熱源の直径を、上記の金属粉末のD50よりも大きくすることで、金属粉末の集合を均等に溶融できる点で好ましい。このとき、上記の走査熱源の直径は、例えば、その熱源のフォーカスの幅で特定することができる。
【0036】
(6)上記の積層造形工程で形成された物品には、さらに、溶体化処理および時効処理を含む熱処理工程を行うことが好ましい。
マルエージング鋼は、通常、溶体化処理および時効処理が行われてから、製品として使用される。溶体化処理を行うことで、低炭素マルテンサイト組織による高靭性を得ることができる。そして、この後に時効処理を行うことで、各種の金属間化合物を組織中に析出させて、例えば、硬さを40〜60HRCに調整して、より優れた高強度と高靭性とを得ることができる。好ましくは42HRC以上である。また、好ましくは55HRC以下、より好ましくは50HRC以下、さらに好ましくは48HRC以下である。そして、本発明のマルエージング鋼でなる積層造形物の場合、上記の溶体化処理は、積層造形工程で組織中に形成されたTi濃化部(Ti偏析)の解消にとって、より好ましい処理である。
【0037】
溶体化処理温度は、800℃以上とすることが好ましい。より好ましくは830℃以上である。そして、さらに好ましくは900℃以上、よりさらに好ましくは950℃以上、特に好ましくは1000℃以上である。溶体化処理温度を高くすることで、Ti偏析の解消効果が向上する。但し、溶体化処理温度が高くなりすぎると、旧オーステナイト粒が粗大化するため、積層造形物の強度および靭性が低下する。よって、溶体化処理温度は、1200℃以下とすることが好ましい。より好ましくは1100℃以下、さらに好ましくは1050℃以下である。
そして、溶体化処理時間(溶体化処理温度での維持時間)は、10分以上とすることが好ましい。より好ましくは30分以上、さらに好ましくは45分以上である。溶体化処理時間を長くすることで、Ti偏析の解消効果が向上する。但し、溶体化処理時間が長くなりすぎると、旧オーステナイト粒径が粗大化する。よって、溶体化処理時間は、120分以下とすることが好ましい。より好ましくは100分以下、さらに好ましくは80分以下である。
【0038】
時効処理温度は、400℃以上とすることが好ましい。より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上、よりさらに好ましくは550℃以上である。時効処理温度を高くすることで、NiTiの析出による強度向上の効果が向上する。但し、時効処理温度が高くなりすぎると、金属間化合物が粗大化して、金属間化合物の析出量に見合った強度が十分に得られなくなる。よって、時効処理温度は、700℃以下とすることが好ましい。より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは640℃以下、よりさらに好ましくは630℃以下である。600℃以下にすることもできる。
そして、時効処理時間(時効処理温度での維持時間)は、60分以上とすることが好ましい。より好ましくは100分以上、さらに好ましくは150分以上である。時効処理時間を長くすることで、形成される金属間化合物量が増加する。但し、時効処理時間が長くなりすぎると、金属間化合物が粗大化し、強度が低下する。よって、時効処理時間は、600分以下とすることが好ましい。より好ましくは400分以下、さらに好ましくは200分以下である。
【実施例1】
【0039】
ガスアトマイズ法によって、表1の成分組成を有するD50が35.6μmのマルエージング鋼の金属粉末を準備した。そして、この金属粉末を用いて、パウダーベッド法による積層造形工程を実施して、縦15mm×横60mm×高さ15mmの積層造形物でなる物品を作製した。積層造形には、EOS社製EOS−M290を使用した。造形時の雰囲気はアルゴンガスとした。表2に積層造形工程の条件を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
以上の積層造形工程によって得た条件1、2の積層造形物の硬さは、条件1の積層造形物が37.0HRC、条件2の積層造形物が37.8HRCであった。そして、これらの積層造形物について、その積層方向に平行な断面を、以下のEPMAによって面分析し、その断面におけるTi濃度の分布状態を調べた。まず、積層造形物の中心部の位置から、この積層造形物の積層方向に平行な断面を採取した。次に、この断面の縦800μm×横800μmの領域を、走査型電子顕微鏡(倍率100倍)で観察して、この観察した領域を、縦横それぞれ400点の等間隔の位置(計160000点の位置)で、EPMAで分析した。その結果、この断面の平均のTi濃度Aは、条件1(本発明例)の積層造形物で2.05質量%、条件2(比較例)の積層造形物で1.99質量%であった。
【0043】
図1(a)は、条件1、2の積層造形物について、上記のEPMAによる面分析で得られた領域のTiの元素マッピング画像である。図1(a)において、本来のカラー画像であれば、上記の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)の式で求められる値以上のTi濃度B(条件1で3.08質量%以上、条件2で2.99質量%以上)でなるTi濃化部は、周囲(Ti濃度Aの部分)と色調の異なる点状や線状の分布で示されている。
図1(b)は、図1(a)の元素マッピング画像に、上記のTi濃度Bの臨界値を閾値とした二値化処理を行って、Ti濃化部の形状を明確化した画像である。図1(b)において、白地に分散する黒色の点群(画素の集合)がTi濃化部である。そして、図1(b)をもって、条件2の積層造形物には、隣接した画素の集合でなる、長さが21μmの線状のTi濃化部(丸囲み部)が認められた。なお、条件1の積層造形物は、例えば、粒径が10μmの点状のTi濃化部は認められたが(丸囲み部)、長さが15μmを超える線状のTi濃化部は認められなかった。
【実施例2】
【0044】
実施例1で作製した条件1、2の積層造形物でなる物品に、溶体化処理および時効処理の熱処理工程を行った。溶体化処理としては、850℃で1時間の保持を行い、炉冷した。そして、その後、時効処理として、600℃で3時間の保持を行い、空冷した。熱処理工程後の硬さは、条件1の積層造形物が45.9HRC、条件2の積層造形物が47.3HRCであった。
そして、以上の熱処理工程を行って得た条件1、2の積層造形物(以下、「積層造形製品」と記す。)について、その積層方向に平行な断面を、実施例1と同じ要領のEPMAによって面分析し、その断面におけるTi濃度の分布状態を調べた。
【0045】
上記の分析の結果、断面の平均のTi濃度Aは、条件1の積層造形製品で2.14質量%、条件2の積層造形製品で2.00質量%であった。
図2(a)は、条件1、2の積層造形製品について、上記のEPMAによる面分析で得られた領域のTiの元素マッピング画像である。図2(a)において、本来のカラー画像であれば、上記の平均のTi濃度Aに対して、Ti濃度B(条件1で3.21質量%以上、条件2で3.00質量%以上)でなるTi濃化部は、周囲(Ti濃度Aの部分)と色調の異なる点状や線状の分布で示されている。そして、図2(b)は、図2(a)の元素マッピング画像に、上記のTi濃度Bの臨界値を閾値とした二値化処理を行った画像である。図2(b)において、条件1の積層造形製品のTi濃化部は、直径が10μmにも満たない程の小さな点状のものが数点確認された。そして、線状のものは、長さが8μmのTi濃化部が確認されたが(丸囲み部)、長さが15μmを超える線状のTi濃化部は認められなかった。これに対して、条件2の積層造形製品には、隣接した画素の大きな集合でなる、長さが22μmの線状のTi濃化部(丸囲み部)が認められた。
【0046】
そして、以上の熱処理工程を行って得た積層造形製品について、その積層方向と直交する方向(レーザーの走査方向)の靭性を調べた。靭性の調査は、上記の積層造形製品から、その積層方向にノッチの長さ方向が合うように、シャルピー試験片を採取して、JIS Z 2242に則した5Uノッチシャルピー試験を実施した。その結果、条件2の積層造形製品の衝撃値は19.7J/cmであった。これに対して、条件1の積層造形製品の衝撃値は21.6J/cmであり、20.0J/cm以上であった。条件1の積層造形製品は、各種の工具製品や構造部品として使用するのに十分な靭性を有していた。
【実施例3】
【0047】
実施例1で作製した条件1の積層造形物でなる物品に、実施例2と別の溶体化処理および時効処理の熱処理工程を行った。溶体化処理は、1020℃で1時間の保持を行い、炉冷した。そして、その後、時効処理では、600℃で3時間の保持を行い、空冷した。熱処理工程後の硬さは45.4HRCであった。
【0048】
以上の熱処理工程を行って得た条件1の積層造形製品について、その積層方向に平行な断面を、実施例1と同じ要領のEPMAによって面分析し、その断面におけるTi濃度の分布状態を調べた。その結果、断面の平均のTi濃度Aは2.06質量%であった。そして、このTi濃度Aに対するTi濃度B(つまり、Ti濃化部)は、3.09質量%以上のものとして確認した。
図3(a)は、上記のEPMAによる面分析で得られた領域のTiの元素マッピング画像である。そして、図3(b)は、図3(a)の元素マッピング画像に、実施例1と同じ要領の二値化処理を行った画像である。図3(b)において、条件1の積層造形製品には、長さが8μmの線状のTi濃化部が確認されたが(丸囲み部)、長さが15μmを超えるものは認められなかった。
【0049】
そして、この条件1の積層造形製品に、実施例2と同じ要領の5Uノッチシャルピー試験を実施した。その結果、衝撃値は39.8J/cmであり、30.0J/cm以上であった。条件1の積層造形製品は、各種の工具製品や構造部品として使用するのに十分な靭性を有していた。

図1
図2
図3

【手続補正書】
【提出日】2019年7月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる積層造形物であり、
前記積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、前記断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下であることを特徴とする積層造形物。
【請求項2】
硬さが40〜60HRCであることを特徴とする請求項1に記載の積層造形物。
【請求項3】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜20質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層造形物。
【請求項4】
前記マルエージング鋼が、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層造形物。
【請求項5】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜5質量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の積層造形物。
【請求項6】
0.1〜5.0質量%のTiを含有するマルエージング鋼でなる金属粉末をステージ上に敷き詰める作業と、該ステージ上に敷き詰めた前記金属粉末に熱源を走査しながら照射する作業とを繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成する積層造形物の製造方法において、
前記金属粉末に熱源を走査しながら照射するときの熱源出力を50〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とすることを特徴とする積層造形物の製造方法。
【請求項7】
前記積層造形工程で形成された物品に、さらに、溶体化処理および時効処理を含む熱処理工程を行うことを特徴とする請求項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項8】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜20質量%であることを特徴とする請求項またはに記載の積層造形物の製造方法。
【請求項9】
前記マルエージング鋼が、質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co;0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成でなることを特徴とする請求項またはに記載の積層造形物の製造方法。
【請求項10】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜5質量%であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の積層造形物の製造方法。
【請求項11】
質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜5%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成のマルエージング鋼でなり、メジアン径D50が200μm以下であることを特徴とする積層造形用金属粉末。
【請求項12】
前記マルエージング鋼は、Tiの含有量が0.5質量%以上であることを特徴とする請求項11に記載の積層造形用金属粉末。
【請求項13】
前記マルエージング鋼は、Tiの含有量が4.0質量%以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の積層造形用金属粉末。
【請求項14】
前記マルエージング鋼は、Moの含有量が10.0質量%以下であることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載の積層造形用金属粉末。
【請求項15】
前記マルエージング鋼は、Moの含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の積層造形用金属粉末。
【請求項16】
前記マルエージング鋼は、Alの含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする請求項11ないし15のいずれかに記載の積層造形用金属粉末。
【請求項17】
前記マルエージング鋼は、Alの含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項11ないし16のいずれかに記載の積層造形用金属粉末。
【請求項18】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項11ないし17のいずれかに記載の積層造形用金属粉末。

【手続補正書】
【提出日】2019年9月20日
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜5%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成のマルエージング鋼でなる積層造形物であり、
前記積層造形物の積層方向に平行な断面のTi濃度の分布を面分析したときに、前記断面の平均のTi濃度Aに対して、(1.5×A)以上のTi濃度Bを有する線状のTi濃化部の長さが15μm以下であることを特徴とする積層造形物。
【請求項2】
硬さが40〜60HRCであることを特徴とする請求項1に記載の積層造形物。
【請求項3】
質量%で、C:0.1%以下、Ni:14〜22%、Co:0〜20%、Mo:0.1〜15.0%、Ti:0.1〜5.0%、Al:3.0%以下、残部Feおよび不純物の成分組成のマルエージング鋼でなる金属粉末をステージ上に敷き詰める作業と、該ステージ上に敷き詰めた前記金属粉末に熱源を走査しながら照射する作業とを繰り返し行う積層造形工程によって物品を形成する積層造形物の製造方法において、
前記金属粉末に熱源を走査しながら照射するときの熱源出力を250〜330W、走査速度を480〜3000mm/秒とすることを特徴とする積層造形物の製造方法。
【請求項4】
前記積層造形工程で形成された物品に、さらに、溶体化処理および時効処理を含む熱処理工程を行うことを特徴とする請求項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項5】
前記マルエージング鋼は、Coの含有量が0〜5質量%であることを特徴とする請求項3または4に記載の積層造形物の製造方法。
【国際調査報告】