特表-19124310IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-124310ポリビニルアルコールフィルム、フィルムロールおよびフィルムロールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月27日
【発行日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールフィルム、フィルムロールおよびフィルムロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20201127BHJP
   B65H 75/02 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   C08J5/18CEX
   B65H75/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2019-561076(P2019-561076)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-245934(P2017-245934)
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 涼平
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 信一
(72)【発明者】
【氏名】高藤 勝啓
【テーマコード(参考)】
3F058
4F071
【Fターム(参考)】
3F058AA03
3F058AB01
3F058AC00
3F058BA02
3F058DA04
3F058DB05
4F071AA29
4F071AA81
4F071AC05
4F071AC12
4F071AC14
4F071AE04
4F071AE10
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC14
4F071BC15
4F071BC16
4F071BC17
(57)【要約】
【課題】偏光板性能低下の原因となるフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物を低減したポリビニルアルコールフィルム、フィルムロールおよびフィルムロールの製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリビニルアルコール(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)を含有するポリビニルアルコールフィルムであって、ポリビニルアルコール(A)は平均重合度が500〜7000、ケン化度が99.0モル%以上であり、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の含有量がいずれも0.001〜1質量部であり、ノニオン性界面活性剤(B)に対するアニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計質量比[(C1+C2)/B]が1〜10であり、アニオン性界面活性剤(C1)に対する前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1〜10であるポリビニルアルコールフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)を含有するポリビニルアルコールフィルムであって、ポリビニルアルコール(A)は平均重合度が500〜7000、ケン化度が99.0モル%以上であり、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の含有量がいずれも0.001〜1質量部であり、ノニオン性界面活性剤(B)に対するアニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計質量比[(C1+C2)/B]が1〜10であり、アニオン性界面活性剤(C1)に対する前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1〜10であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
ポリビニルアルコール(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計含有量(B+C1+C2)が0.1〜1質量部である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
さらに可塑剤(D)を含有し、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する可塑剤(D)の含有量が1〜20質量部である、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
フィルムの厚みが10〜80μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項5】
フィルム幅が3m以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムがコアに巻き取られてなるフィルムロール。
【請求項7】
押出製膜法により製造する請求項1〜5のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムをコアに巻き取るフィルムロールの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性に優れ、且つフィルム内部に存在し、偏光板性能低下の原因となるフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物を低減したポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)、フィルムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVAフィルムは、透明性、光学特性、機械的強度、水溶性などに関するユニークな性質を利用して様々な用途に使用されている。特に、その優れた光学特性を利用して、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である偏光板を構成する偏光フィルムの製造原料(原反フィルム)としてPVAフィルムが使用されており、その用途が拡大している。LCD用偏光板には高い光学性能が求められ、その構成要素である偏光フィルムに対しても高い光学性能が要求される。
【0003】
偏光板は、一般的に、PVAフィルムを染色後に一軸延伸するか、染色しながら一軸延伸するか又は一軸延伸した後に染色して、染色された一軸延伸フィルムをつくり、それをホウ素化合物で固定処理する方法や、前記の一軸延伸・染色処理の際に染色と同時にホウ素化合物で固定処理を行う方法などによって偏光フィルムを製造した後、その偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせることによって製造される。
【0004】
これまでにPVAフィルムやその製造方法に関する多くの技術が知られている。特許文献1には、フィルム製造時に膜面異常の低減効果に優れるアルカノールアミド型の界面活性剤を1種単独もしくは2種併用して添加することが好ましいと記載されている。従来は特許文献1に記載されているフィルムを用いた偏光板で品質が満たされていたが、近年、LCDの高精細化、画像の鮮明化に対する要求が高くなっており、それに伴って偏光フィルムにおける微細なクラックやボイドが問題とされることが多くなってきた。偏光フィルムにクラックやボイドが多く含まれると、フィルムのヘイズが上昇し、そのような偏光フィルムは高精細性や鮮明な画像が要求される用途には使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/146533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フィルム表面の欠点が少なく、且つ、偏光板性能低下の原因となるフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物を低減したPVAフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)およびスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)を所定の比率で含有させたPVA水溶液からなるPVAフィルムは、フィルム表面の欠点が少なく、従来の表面平滑性を維持したままで、偏光板性能低下の原因となるフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物を低減したPVAフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は
[1] ポリビニルアルコール(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)を含有するポリビニルアルコールフィルムであって、ポリビニルアルコール(A)は平均重合度が500〜7000、ケン化度が99.0モル%以上であり、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の含有量がいずれも0.001〜1質量部であり、ノニオン性界面活性剤(B)に対するアニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計質量比[(C1+C2)/B]が1〜10であり、アニオン性界面活性剤(C1)に対する前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1〜10であるポリビニルアルコールフィルム、
[2] ポリビニルアルコール(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計含有量(B+C1+C2)が0.1〜1質量部である、前記[1]に記載のポリビニルアルコールフィルム、
[3] さらに可塑剤(D)を含有し、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する可塑剤(D)の含有量が1〜20質量部である、前記[1]又は[2]に記載のポリビニルアルコールフィルム、
[4]フィルムの厚みが10〜80μmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルム、
[5]フィルム幅が3m以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルム、
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムがコアに巻き取られてなるフィルムロール、
[7] 押出製膜法により製造する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムを、コアに巻き取るフィルムロールの製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPVAフィルムは、フィルム表面の欠点が少なく、偏光板性能低下の原因となるフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物が少ないため、透明性に優れる。したがって、当該PVAフィルムを原反として用いることによって、透明性が高い光学フィルム、特に偏光フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のPVAフィルムはPVA(A)、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)および前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)を含有する樹脂組成物からなる。
【0011】
PVA(A)としては、ビニルエステルを重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたものを使用することができる。ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよいが前者が好ましい。入手性、コスト、PVA(A)の生産性などの観点からビニルエステルとして酢酸ビニルが好ましい。
【0012】
ビニルエステルと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの他のモノマーは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、他のモノマーとして、エチレンおよび炭素数3〜30のオレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0013】
前記ビニルエステル系重合体に占める上記他のモノマーに由来する構造単位の割合に特に制限はないが、ビニルエステル系重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0014】
PVA(A)の重合度に必ずしも制限はないが、重合度が下がるにつれてフィルム強度が低下する傾向があることから200以上であることが好ましく、より好適には300以上、さらに好適には400以上、特に好適には500以上である。また、重合度が高すぎると水溶液あるいは溶融したPVA(A)の粘度が高くなり、製膜が難しくなる傾向があることから、10,000以下であることが好ましく、より好適には9,000以下、さらに好適には8,000以下、特に好適には7,000以下である。ここでPVA(A)の重合度とは、JIS K6726−1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味し、PVA(A)を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
重合度 = ([η]×10/8.29)(1/0.62)
【0015】
PVA(A)のけん化度に特に制限はなく、例えば60モル%以上のPVA(A)を使用することができるが、PVAフィルムを偏光フィルム等の光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用する場合などにおいては、PVA(A)のけん化度は95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。ここでPVA(A)のけん化度とは、PVA(A)が有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル系モノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)を意味する。PVA(A)のけん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
【0016】
PVA(A)は、1種のPVAを単独で用いてもよいし、重合度、けん化度、変性度などが異なる2種以上のPVAを併用してもよい。但し、PVAフィルムが、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有するPVA;酸無水物基を有するPVA;アミノ基等の塩基性官能基を有するPVA;これらの中和物など、架橋反応を促進させる官能基を有するPVAを含有すると、PVA分子間の架橋反応によって当該PVAフィルムの二次加工性が低下することがある。したがって、光学フィルム製造用の原反フィルムのように、優れた二次加工性が求められる場合においては、PVA(A)における、酸性官能基を有するPVA、酸無水物基を有するPVA、塩基性官能基を有するPVAおよびこれらの中和物の含有量はそれぞれ0.1質量%以下であることが好ましく、いずれも含有しないことがより好ましい。
【0017】
前記樹脂組成物におけるPVA(A)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いられるノニオン性界面活性剤(B)としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ノニオン性界面活性剤(B)が、炭素数9以上のアルキル鎖(アルキル基)を有するノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。このようなノニオン性界面活性剤は、PVAフィルム内で凝集しやすく、PVAフィルムの透明性を悪化させ易かった。それに対して本発明では、炭素数9以上のアルキル鎖(アルキル基)を有するノニオン性界面活性剤とともに、アニオン性界面活性剤(C1)を併用することによって、高い透明性を有するPVAフィルムを得ることができる。そして、ノニオン性界面活性剤(B)として炭素数9以上のアルキル鎖を有するノニオン性界面活性剤を含むものを用いることによって、製膜時におけるスジ状の欠点の発生をさらに低減させることができる。上記の観点から、アルキル鎖の炭素数(アルキル鎖長)は10以上であることがより好ましい。一方、アルキル鎖の炭素数は30以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記アルキル鎖は直鎖であってもよいし分岐鎖であってもよいが、直鎖であることが好ましい。また上記のアルキル鎖はノニオン性界面活性剤(B)の主鎖部分(最長鎖)中に含まれることが好ましい。ノニオン性界面活性剤(B)における前記アルキル鎖を有するノニオン性界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、ノニオン性界面活性剤(B)が実質的に前記アルキル鎖を有するノニオン性界面活性剤のみを含有することがより好ましい。
【0020】
また、前記のアルキル鎖を有するノニオン性界面活性剤(B)がアルカノールアミド型のノニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、脂肪酸のジアルカノールアミドを含むことがより好ましい。ノニオン系界面活性剤(B)におけるアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、ノニオン性界面活性剤(B)が実質的にアルカノールアミド型のノニオン性界面活性剤のみを含有することが特に好ましい。
【0021】
本発明で用いられるアニオン性界面活性剤(C1)としては、例えば、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ラウリン酸トリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン等のカルボン酸型;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等の硫酸エステル型;ラウリルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸等のリン酸エステル型、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸タウリンナトリウム等のスルホン酸型が挙げられる。これらは1種のアニオン系界面活性剤のみを単独で用いてもよいし、2種以上のアニオン系界面活性剤を併用してもよい。
【0022】
アニオン性界面活性剤(C1)が、炭素数9以上のアルキル鎖(アルキル基)を有するアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。このようなアニオン性界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤(B)を分散させる効果があり、液滴の発生原因となる活性剤の凝集物が発生しにくくなるため、より透明なフィルムとなる。さらに、ノニオン性界面活性剤(B)と同様にアニオン性界面活性剤(C1)が炭素数9以上のアルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤を含むと製膜時におけるスジ状の欠点の発生がさらに低減する。上記のような観点から、上記アルキル鎖の炭素数(アルキル鎖長)は10以上であることがより好ましい。一方、上記アルキル鎖の炭素数は30以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。上記のアルキル鎖は直鎖であってもよいし分岐鎖であってもよいが、直鎖であることが好ましい。また上記のアルキル鎖はアニオン性界面活性剤(C1)の主鎖部分(最長鎖)中に含まれることが好ましい。アニオン性界面活性剤(C1)における前記アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、アニオン性界面活性剤(C1)が実質的に前記アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤のみを含有することがより好ましい。
【0023】
前記のアルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤(C1)が、硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。アニオン性界面活性剤(C1)における硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、アニオン性界面活性剤(C1)が実質的に硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤のみを含有することが特に好ましい。
【0024】
本発明で用いられる前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)は、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸タウリンナトリウム等のスルホン酸型が挙げられる。これらは1種のアニオン系界面活性剤のみを単独で用いてもよいし、2種以上のアニオン系界面活性剤を併用してもよい。
【0025】
前記スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)が、炭素数9以上のアルキル鎖(アルキル基)を有するスルホン酸系アニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。このようなスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)は、アニオン性界面活性剤(C1)に比べて耐熱性が高く、製膜工程中でよりノニオン性界面活性剤(B)を分散させる効果があり、フィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物が発生しにくくなるため、より透明なフィルムとなる。一方で、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)は表面張力低下能が悪く、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)のみでは製膜時に厚薄ムラが生じるため、アニオン性界面活性剤(C1)とスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)は併用系であることが必要である。さらに、ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)と同様に、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)が炭素数9以上のアルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤を含むと、製膜時におけるスジ状の欠点の発生がさらに低減する。上記の観点から、上記アルキル鎖の炭素数(アルキル鎖長)は10以上であることがより好ましい。一方、上記アルキル鎖の炭素数は30以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることが特に好ましい。上記アルキル鎖は直鎖でも分岐鎖でもよいが、直鎖であることが好ましい。また上記アルキル鎖はスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の主鎖部分(最長鎖)中に含まれることが好ましい。スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)における前記アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)が実質的に前記アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤のみを含有することがより好ましい。
【0026】
前記のアルキル鎖を有するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)が、アルキルスルホン酸塩類のアニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)におけるアルキルスルホン酸塩類のアニオン性界面活性剤の含有量は90質量%以上であることが好ましく、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)が実質的にアルキルスルホン酸塩類のアニオン系界面活性剤のみを含有することが特に好ましい。
【0027】
前記樹脂組成物における、ノニオン性界面活性剤(B)に対するアニオン性界面活性剤(C1)および前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計質量比[(C1+C2)/B]が1〜10、アニオン性界面活性剤(C1)に対するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1〜10である必要がある。合計質量比[(C1+C2)/B]が1未満である場合、アニオン性界面活性剤の添加量が少なすぎるため、ノニオン性界面活性剤を分散させる効果が小さく、フィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物を発生してフィルムの透明性が低下する。合計質量比[(C1+C2)/B]が10以上である場合、ノニオン性界面活性剤の添加量が少なく、膜面安定性に欠けてスジ状欠点が発生する。また、アニオン性界面活性剤(C1)に対するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1未満の場合、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の添加量が少なく、ノニオン性界面活性剤の分散効果が低くなり、活性剤由来の凝集物が発生してフィルムの透明性を悪化させる。質量比(C2/C1)が10以上の場合、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)は表面張力低下能が悪いため、膜面安定性に欠けてスジ状欠点が発生する。
【0028】
前記樹脂組成物において、PVA(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)とスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の合計含有量(B+C1+C2)が0.1〜1質量部であることが好ましい。当該合計含有量が1質量部を超える場合、ノニオン系界面活性剤(B)、アニオン系界面活性剤(C1)又はスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の添加量が多すぎるため、フィルム内部で液滴を形成し、フィルムの透明性を低下させる場合がある。前記合計含有量は0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましい。一方、前記合計含有量が0.1質量部未満の場合、得られるPVAフィルムにおいて、スジ状の欠点が増加するとともに、表面が荒れて平滑性が不良となる場合がある。前記合計含有量は、0.1質量部以上が好ましい。
【0029】
PVAフィルムに柔軟性を付与できる観点から、本発明のPVAフィルムは可塑剤(D)をさらに含有することが好ましい。好ましい可塑剤(D)としては多価アルコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、PVA(A)との相溶性や入手性などの観点から、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましい。
【0030】
可塑剤(D)の含有量は、PVA(A)100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0031】
前記樹脂組成物は、PVA、界面活性剤、脂肪族モノアルコールおよび可塑剤以外の他の成分を、必要に応じてさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、水分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、充填剤(無機物粒子・デンプン等)、防腐剤、防黴剤、上記した成分以外の他の高分子化合物などが挙げられる。前記樹脂組成物中の他の成分の含有量は10質量%以下が好ましい。
【0032】
本発明のPVAフィルムの厚みは特に制限されず、PVAフィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば300μm以下とすることができる。本発明のPVAフィルムを偏光フィルム等の光学フィルム製造用の原反フィルムとして使用する場合には当該厚みは10〜80μmの範囲内であることが好ましい。なお、PVAフィルムの厚みは、任意の10ヶ所において測定された値の平均値として求めることができる。
【0033】
本発明のPVAフィルムの形状は特に制限されないが、より均一なPVAフィルムを連続して円滑に製造できる点や、得られたPVAフィルムを用いて光学フィルム等を製造する場合などにおいて連続して使用する点などから長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムの長さ(流れ方向の長さ)は特に制限されず、用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜30,000mの範囲内とすることができる。長尺のフィルムはコアに巻き取るなどしてフィルムロールとすることが好ましい。
【0034】
本発明のPVAフィルムの幅に特に制限はなく、例えば0.5m以上とすることができる。近年幅広の偏光フィルムが求められていることから、当該幅は1m以上であることが好ましく、3m以上であることがより好ましく、4.5m以上であることがさらに好ましく、5.0m以上であることが特に好ましく、5.5m以上であることが最も好ましい。一方、PVAフィルムの幅があまりに広すぎると、PVAフィルムを製膜するための製膜装置の製造費用が増加したり、さらには、実用化されている製造装置で光学フィルムを製造する場合において均一に延伸することが困難になったりすることから、PVAフィルムの幅は7.5m以下であることが好ましく、7.0m以下であることがより好ましく、6.5m以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明によれば表面平滑性が良好なPVAフィルムが得られる。PVAフィルムの表面平滑性の程度に特に制限はないが、JIS B0601:2001で規定される表面平滑性Raが2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.3μm以下であることがさらに好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。このように表面平滑性が良好なPVAフィルムによれば、光透過率が高くて透明性に優れた光学フィルムを容易に得ることができる。
【0036】
本発明によれば透明性が良好なPVAフィルムが得られる。PVAフィルムの透明性の程度に特に制限はないが、カラーメーターで規定される濁度が3.00以下であることが好ましく、2.00以下であることがさらに好ましく、1.50以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明のPVAフィルムの製造方法に特に制限はなく、例えば、PVA(A)、ノニオン系界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)、前記C1と相違するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)、液体媒体、および必要に応じてさらに上記した可塑剤やその他の成分を含有する製膜原液を用いて、流延製膜法や溶融押出製膜法など公知の方法により製造することができる。なお、製膜原液は、PVA(A)が液体媒体に溶解してなるものであってもよいし、PVA(A)が溶融したものであってもよい。
【0038】
製膜原液における上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
【0039】
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50〜90質量%の範囲内であることが好ましく、55〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなりすぎず製膜が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が90質量%以下であることにより、製膜原液の粘度が低くなりすぎず得られるPVAフィルムの厚み均一性が向上する。
【0040】
上記の製膜原液を用いて、本発明のPVAフィルムを製造する際の具体的な製造方法に特に制限はないが、例えば当該製膜原液を金属板、ガラス板等の支持体上に流涎し、該支持体上で乾燥させる流延製膜法や、押出機で加熱溶融した当該製膜原液を金属ドラムや金属ベルト等の支持体上に吐出し、該支持体上で乾燥させる押出製膜法を採用できる。中でも連続的に製造でき、生産効率が良好である点から、押出製膜法が好ましい。得られたフィルムに対し、必要に応じて、乾燥ロールや熱風乾燥装置によりさらに乾燥したり、熱処理装置により熱処理を施したり、調湿装置により調湿したりしてもよい。製造されたPVAフィルムは、コアに巻き取るなどしてフィルムロールとすることが好ましい。また、製造されたPVAフィルムの幅方向の両端部を切り取ってもよい。
【0041】
本発明のPVAフィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム、特殊集光フィルム等の光学フィルムを製造するための原反フィルムとして好適に使用することができる。本発明のPVAフィルムを用いることによって、光透過率が高くて品質が高い光学フィルムを得ることができる。また、本発明のPVAフィルムは、包装材料、ランドリーバッグ等の水溶性フィルム、人工大理石等を製造する際の離型フィルムなどとして使用することもできる。なかでも、本発明のPVAフィルムは、偏光フィルム製造用の原反フィルムとして好適に使用される。
【0042】
前記PVAフィルムを染色する工程と延伸する工程とを有する偏光フィルムの製造方法が本発明の好適な実施態様である。当該製造方法がさらに固定処理工程、乾燥処理工程、熱処理工程等を有していてもよい。染色と延伸の順序は特に限定されず、延伸処理の前に染色処理を行ってもよいし、延伸処理と同時に染色処理を行ってもよいし、または延伸処理の後に染色処理を行ってもよい。また、延伸、染色などの工程は複数回繰り返してもよい。特に延伸を2段以上に分けると均一な延伸を行いやすくなるため好ましい。
【0043】
PVAフィルムの染色に用いる染料としては、ヨウ素または二色性有機染料(例えば、DirectBlack 17、19、154;DirectBrown 44、106、195、210、223;DirectRed 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;DirectBlue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;DirectViolet 9、12、51、98;DirectGreen 1、85;DirectYellow 8、12、44、86、87;DirectOrange 26、39、106、107などの二色性染料)などを使用することができる。これらの染料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。染色は、通常、上記染料を含有する溶液中にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0044】
PVAフィルムを延伸する方法として、一軸延伸方法および二軸延伸方法が挙げられ、前者が好ましい。PVAフィルムを流れ方向(MD)等に延伸する一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれで行ってもよいが、得られる偏光フィルムの性能および品質の安定性の観点から湿式延伸法が好ましい。湿式延伸法としては、PVAフィルムを、純水、添加剤や水溶性の有機溶媒等の各種成分を含む水溶液、または各種成分が分散した水分散液中で延伸する方法が挙げられる。湿式延伸法による一軸延伸方法の具体例としては、ホウ酸を含む温水中で一軸延伸する方法、前記染料を含有する溶液中や後述する固定処理浴中で一軸延伸する方法などが挙げられる。また、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で一軸延伸してもよいし、その他の方法で一軸延伸してもよい。
【0045】
一軸延伸する際の延伸温度は特に限定されないが、湿式延伸する場合は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜70℃、さらに好ましくは30〜65℃の範囲内の温度が採用され、乾熱延伸する場合は好ましくは50〜180℃の範囲内の温度が採用される。
【0046】
一軸延伸処理の延伸倍率(多段で一軸延伸を行う場合は合計の延伸倍率)は、偏光性能の点からフィルムが切断する直前までできるだけ延伸することが好ましく、具体的には4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、5.5倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率の上限はフィルムが破断しない限り特に制限はないが、均一な延伸を行うためには8.0倍以下であることが好ましい。
【0047】
偏光フィルムの製造にあたっては、一軸延伸されたPVAフィルムへの染料の吸着を強固にするために、固定処理を行うことが好ましい。固定処理としては、一般的なホウ酸および/またはホウ素化合物を添加した処理浴中にPVAフィルムを浸漬する方法等を採用することができる。その際に、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0048】
一軸延伸処理、または一軸延伸処理と固定処理を行ったPVAフィルムを次いで乾燥処理や熱処理を行うことが好ましい。乾燥処理や熱処理の温度は30〜150℃が好ましく、特に50〜140℃であることが好ましい。温度が低すぎると、得られる偏光フィルムの寸法安定性が低下しやすくなる。一方、温度が高すぎると染料の分解などに伴う偏光性能の低下が発生しやすくなる。
【0049】
上記のようにして得られた偏光フィルムの両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にすることができる。その場合の保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、保護膜を貼り合わせるための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などが一般に使用されており、そのうちでもPVA系接着剤が好ましく用いられる。
【0050】
上記のようにして得られた偏光板は、アクリル系などの粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶ディスプレイ装置の部品として使用することができる。偏光板をガラス基板に貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどを同時に貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
[面荒れ状欠点の評価方法]
面荒れ状欠点は製膜時の流れ方向(MD方向)に連続して凹凸が発生する欠点で、光源を用いてフィルム面を透過した光を白い壁に投影させた際にはまだら状のMD方向の明暗模様が確認できる。面荒れ状欠点があるフィルムは表面の凹部分と凸部分の高低差が0.2μm以上あり、前記まだら状の明暗模様として明確に視認可能である。前記明暗模様が明確に視認できたものを前記高低差が0.2μm以上である面荒れ状欠点とみなし、以下の方法にて目視で観察評価した。具体的には、実施例または比較例で得られたPVAフィルムから切り出したサンプル片をMD方向が上下になるように吊り下げ、フィルム面から350cm離れた位置に、フィルム面上で530−580ルクスの照度を持つ株式会社エスワン製ハロゲンランプ光源を設置し、フィルム面に対し垂直に光を投射した。次いでフィルムを透過した光をフィルムから10cm離れた白い壁に投影させたときに観察される明暗模様が長さ方向に10m以上連続して存在したものを面荒れ状欠点として評価し、以下の基準で判定した。
◎:面荒れ状欠点が幅方向のうち1割未満の割合しかない
○:面荒れ状欠点が幅方向の1割以上5割未満の割合で存在する
△:面荒れ状欠点が幅方向の5割以上8割未満の割合で存在する
×:面荒れ状欠点が幅方向の8割以上の割合で存在する
【0053】
[スジ状欠点の評価方法]
スジ状欠点は製膜時の流れ方向(MD方向)に連続した1本線が見られる欠点で、光源を用いてフィルム面を透過した光を白い壁に投影させた際にはMD方向に連続した線状の明模様もしくは暗模様が確認できる。スジ状欠点があるフィルムは表面の凹部分もしくは凸部分の高低差が0.2μm以上あり、前記線状の明模様もしくは暗模様として明確に視認可能である。前記明模様もしくは暗模様が明確に視認できたものを前記高低差が0.2μm以上であるスジ状欠点とみなした。そして前記面荒れ状欠点を観察評価した方法と同様にしてスジ状欠点を観察評価した。なお本願では前記明模様もしくは暗模様が流れ方向に10m以上連続して存在するものをスジ状欠点として数え、以下の基準で判定した。
◎:スジ状欠点がない
○:スジ状欠点が幅方向に1本存在する
△:スジ状欠点が幅方向に2本存在する
×:スジ状欠点が幅方向に3本以上存在する
【0054】
[活性剤由来の凝集物の測定方法]
以下の実施例で得られたPVAフィルムから、1cm×1cmのサンプルを採取した。フィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物の測定は、株式会社Nikоn製の位相差顕微鏡「ECLIPSE80i」を用いてフィルム内に存在する活性剤由来の凝集物を計測した。倍率を1000倍にして、1か所の測定点を厚み方向に5分割して1分割ごとにフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物の個数とサイズを観察し、サイズごとの個数平均値を算出する。これを幅長さ方向に5等分した位置の5点で測定し、その5点を平均した値について、以下の基準で評価した。
◎:1.2μm以上のサイズの液滴が平均2個以下存在する
○:1.2μm以上のサイズの液滴が平均2個より多く5個以下存在する
△:1.2μm以上のサイズの液滴が平均5個より多く10個以下存在する
×:1.2μm以上のサイズの液滴が平均10個より多く存在する
【0055】
実施例1
PVA(A)として、重合度2400、けん化度99.9モル%のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)のチップを用いた。当該PVAのチップ100質量部を35℃の蒸留水2500質量部に24時間浸漬した後、遠心脱水を行い、PVA含水チップを得た。得られたPVA含水チップ中の揮発分率は70質量%であった。当該PVA含水チップ333質量部(乾燥状態のPVAは100質量部)に対して、グリセリンを12質量部、ノニオン性界面活性剤(B)としてラウリン酸ジエタノールアミドを0.04質量部、アニオン性界面活性剤(C1)としてラウリル硫酸ナトリウムを0.1質量部、スルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)としてアルキルスルホン酸ナトリウムを0.1質量部混合した後、得られた混合物を一軸押出機で加熱溶融(最高温度130℃)して製膜原液とした。
【0056】
この製膜原液を熱交換器で100℃に冷却した後、390cm幅のコートハンガーダイから表面温度が90℃であるドラム上に吐出し、押出製膜した。さらに熱風乾燥装置を用いて乾燥し、次いで、製膜時のネックインにより厚くなったフィルムの両端部を切り取ることにより、膜厚60μm、幅300cmのPVAフィルムを連続的に製造した。製造されたPVAフィルムのうちの長さ10000m分を円筒状のコアに巻き取ってフィルムロールとした。得られたPVAフィルムについて上記した方法により面荒れ状欠点、スジ状の欠点および液滴を評価した結果を表1に示す。
【0057】
実施例2〜5、比較例1〜6
ノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)およびスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の使用量を表1に示されるとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルム(およびフィルムロール)の製造および評価を行った。結果を表1に示す。なお比較例3のフィルムは表面性が顕著に劣っていることが目視で確認できたため、面荒れ状欠点の評価を省略した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示されるとおり、PVA(A)100質量部に対するノニオン性界面活性剤(B)、アニオン性界面活性剤(C1)およびスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)がそれぞれ0.001〜1質量部であり、それらの質量比[(C1+C2)/B]が1〜10の範囲であり、アニオン性界面活性剤(C1)に対するスルホン酸系アニオン性界面活性剤(C2)の質量比(C2/C1)が0.1〜10の範囲である実施例1〜3は面荒れ状欠点、スジ状欠点が少なく、かつ1.2μm以上のサイズのある大きな活性剤凝集物も少なかった。また質量比[(C1+C2)/B]が1〜10の範囲から外れるPVAフィルム(比較例3〜6)は面荒れ状欠点とスジ状欠点、または活性剤凝集物の評価のうち少なくともいずれかが劣っていた。さらに、合計含有量(B+C1+C2)が0.1〜1質量部から外れるPVAフィルム(比較例4〜6)はいずれもフィルム内部に存在する活性剤由来の凝集物が多く、フィルムの透明性が低下した。
【0060】
上記実施例で示されているとおり、本発明のPVAフィルムは、面荒れ状、スジ状の欠点が少なく、しかもフィルム内部の活性剤の分散性が良好なため透明性にも優れる。このようなPVAフィルムを原反フィルムとして用いることによって、光透過率が高く品質の高い光学フィルム、特に偏光フィルムが得られる。また、本発明のPVAフィルムを原反フィルムとして用いることによって、光学フィルム等を高い歩留まりで製造することが可能になり、コストが低減される。

【国際調査報告】