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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月3日
【発行日】2021年2月25日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/09 20060101AFI20210129BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20210129BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20210129BHJP
【FI】
   H01J37/09 A
   H01J37/28 C
   H01J37/141
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2020-508734(P2020-508734)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年3月29日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度国立研究開発法人科学技術振興機構 先端計測分析技術・機器開発プログラム「超汎用型SEM用球面収差(Cs)/色収差(Cc)補正器の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(71)【出願人】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】川崎 忠寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜視
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033BB01
5C033BB10
5C033SS03
5C033SS07
5C033UU02
(57)【要約】
荷電粒子線装置において円環形状を有する荷電粒子線絞りを用いる場合、荷電粒子線において最も電流密度の高い光軸直上の荷電粒子線は遮られるため、荷電粒子線絞りを最適な搭載位置に配置することが難しい。このため、円環形状の荷電粒子線絞り120とは別に、円孔形状の荷電粒子線絞り119を備え、円環形状の荷電粒子線絞りを荷電粒子線の光軸上に配置する場合と、円孔形状の荷電粒子線絞りを荷電粒子線の光軸上に配置する場合とを切り換え可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞りと、
円環形状を有する第2の荷電粒子線絞りと、
前記第1の荷電粒子線絞り及び前記第2の荷電粒子線絞りを移動させる荷電粒子線絞り器と、
前記荷電粒子線源と前記第1の荷電粒子線絞りまたは前記第2の荷電粒子線絞りとの間に配置される第1の偏向器群と、
前記荷電粒子線を試料に集束する対物レンズと、
前記荷電粒子線が前記試料に照射されることにより放出された二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器で検出された二次荷電粒子に基づき荷電粒子線像を形成するコンピュータとを有し、
前記荷電粒子線を前記第1の偏向器群により前記第1の荷電粒子線絞り上で走査することにより得られる円形の荷電粒子線像が画像の中心で最も明るくなるように前記荷電粒子線の光軸と前記第1の荷電粒子線絞りの位置とを設定した後に前記第1の荷電粒子線絞りから前記第2の荷電粒子線絞りに切り替え、切り替えられた前記第2の荷電粒子線絞りの位置は、前記荷電粒子線を前記第1の偏向器群により前記第2の荷電粒子線絞り上で走査することにより得られる円形の荷電粒子線像が画像の中心にくるように設定される荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源を有する荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線の光軸方向に円環形状を有する荷電粒子線絞りと円孔形状を有する荷電粒子線絞りとが重ね合わされており、前記円環形状を有する荷電粒子線絞りと前記円孔形状を有する荷電粒子線絞りとの間に前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2の荷電粒子線絞りが設定された位置を記憶し、
前記第2の荷電粒子線絞りが選択されることにより、前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線絞り器により前記設定された位置に移動される荷電粒子線装置。
【請求項5】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線を試料に集束する対物レンズと、
円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞りと、
円環形状を有する第2の荷電粒子線絞りと、
前記第1の荷電粒子線絞り及び前記第2の荷電粒子線絞りを移動させる荷電粒子線絞り器と、
前記対物レンズと前記第1の荷電粒子線絞りまたは前記第2の荷電粒子線絞りとの間に配置される第2の偏向器群及び第3の偏向器群と、
前記荷電粒子線が前記試料に照射されることにより放出された二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器で検出された二次荷電粒子に基づき荷電粒子線像を形成するコンピュータとを有し、
前記対物レンズの励磁を周期的に変動させながら前記荷電粒子線を前記第3の偏向器群により前記試料上で走査することにより得られる荷電粒子線像における前記対物レンズの励磁の周期的変動に同期した画像の移動が停止するように前記第2の偏向器群により前記荷電粒子線の経路を調整した後に前記第1の荷電粒子線絞りから前記第2の荷電粒子線絞りに切り替え、切り替えられた前記第2の荷電粒子線絞りの位置は、前記対物レンズの励磁を周期的に変動させながら前記荷電粒子線を前記第3の偏向器群により前記試料上で走査することにより得られる荷電粒子線像における前記対物レンズの励磁の周期的変動に同期した移動が停止するように設定される荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記対物レンズの励磁を周期的に変動させることにより生じる前記対物レンズの励磁の周期的変動に同期した前記荷電粒子線像における画像の移動に代えて、前記荷電粒子線源の加速電圧を周期的に変動させることにより生じる前記加速電圧の周期的変動に同期した前記荷電粒子線像における画像の移動に基づき、前記第2の荷電粒子線絞りの位置が設定される荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記第2の荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源を有する荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線の光軸方向に円環形状を有する荷電粒子線絞りと円孔形状を有する荷電粒子線絞りとが重ね合わされており、前記円環形状を有する荷電粒子線絞りと前記円孔形状を有する荷電粒子線絞りとの間に前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記第2の荷電粒子線絞りが設定された位置を記憶し、
前記第2の荷電粒子線絞りが選択されることにより、前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線絞り器により前記設定された位置に移動される荷電粒子線装置。
【請求項10】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線を試料に集束する対物レンズと、
円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞りと、
円環形状を有する第2の荷電粒子線絞りと、
前記第1の荷電粒子線絞り及び前記第2の荷電粒子線絞りを移動させる荷電粒子線絞り器と、
前記対物レンズと前記第1の荷電粒子線絞りまたは前記第2の荷電粒子線絞りとの間に配置される第2の偏向器群と、
前記試料を透過した前記荷電粒子線を検出する透過パターン検出面と、
前記透過パターン検出面のパターンを観察するカメラとを有し、
前記対物レンズの励磁を周期的に変動させながら前記荷電粒子線を前記試料にスポット照射することにより得られる透過パターンが、前記対物レンズの励磁の周期的変動に同期して同心円状に均一に拡大、縮小するように前記第1の荷電粒子線絞りの位置を調整した後に前記第1の荷電粒子線絞りから前記第2の荷電粒子線絞りに切り替え、切り替えられた前記第2の荷電粒子線絞りの位置は、前記第1の荷電粒子線絞りの位置が調整された状態での前記透過パターンの中心と切り替えられた前記第2の荷電粒子線絞りを通った前記荷電粒子線が前記試料を透過して検出される透過パターンの中心と一致するように設定される荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1の荷電粒子線絞りの位置の調整に代えて、前記第2の偏向器群により前記荷電粒子線の経路を調整する荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記第2の荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源を有する荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線の光軸方向に円環形状を有する荷電粒子線絞りと円孔形状を有する荷電粒子線絞りとが重ね合わされており、前記円環形状を有する荷電粒子線絞りと前記円孔形状を有する荷電粒子線絞りとの間に前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項10において、
前記第2の荷電粒子線絞りが設定された位置を記憶し、
前記第2の荷電粒子線絞りが選択されることにより、前記第2の荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線絞り器により前記設定された位置に移動される荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)や集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam System)といった荷電粒子線装置は、荷電粒子線を試料に集束することで、ナノレベルの観察や解析、加工を行う。これら荷電粒子線装置は、ナノレベルの観察や解析、加工が求められる半導体分野や材料分野、バイオ分野で幅広く用いられている。そして、微細化が進む半導体分野を筆頭に、様々な分野で、さらなる像分解能の向上や加工精度の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、入射プレートと射出プレートとを有し、そのいずれか一方に円形開孔を形成し、他方に円環開孔を形成し、入射プレートと射出プレートとの間に電圧を加えることで円環開孔に形成される電場により正の球面収差を解消する発散をもたらすことにより、簡単な構造で実現可能な球面収差補正器が開示されている。また、非特許文献1には、円環形状の絞りを用いることで、焦点深度が向上されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/174891号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Momoyo Enyama, Koichi Hamada, Muneyuki Fukuda and Hideyuki Kazumi, “Method of improving image sharpness for annular-illumination scanning electron microscopes,” Japanese Journal of Applied Physics 55, 06GD02 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
荷電粒子線装置の絞りとしては円孔形状の開口を有するものが一般的であるが、円環形状の絞りについても知られている。非特許文献1には、円環形状の絞りを用いることで、焦点深度が向上されることが示されている。また、特許文献1には、円環形状の電極と円孔形状の電極とを組み合わせ、2つの電極間に電圧を印加することで球面収差補正効果を得ることが示されている。
【0007】
いずれの場合であっても、荷電粒子線の光軸上に円環形状の絞りまたは円環形状の電極の中心を配置する必要があり、荷電粒子線において最も電流密度の高い光軸直上の荷電粒子線は遮られてしまう。このため、円孔形状を有する絞りであれば荷電粒子線像が最も明るくなる位置を基準として絞りを配置することで、適切な位置に絞りを配置できるのに対して、円環形状の絞りまたは電極の場合は、その最適な搭載位置と荷電粒子線像が最も明るくなる位置とは一致しない。このことが円環形状の絞りまたは電極の最適な搭載位置の調整を難しくしている。本発明の課題は、円環形状の絞りを簡単に適正な位置に調整可能な荷電粒子線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
円環形状の荷電粒子線絞りとは別に、円孔形状の荷電粒子線絞りを備え、円環形状の荷電粒子線絞りを荷電粒子線の光軸上に配置する場合と、円孔形状の荷電粒子線絞りを荷電粒子線の光軸上に配置する場合とを切り換え可能とする。
【発明の効果】
【0009】
円環形状を有する荷電粒子線絞りを荷電粒子線の光軸上に適切かつ容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】荷電粒子線装置の概略図である。
図2A】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図2B】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図2C】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図2D】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図3】第1の調整手順を示すフローチャートである。
図4】第2の調整手順を示すフローチャートである。
図5】第3の調整手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。ただし、本実施の形態は本発明を実現する一例に過ぎない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0012】
図1に荷電粒子線装置の概略を示す。荷電粒子線装置はその主要部に、荷電粒子線を発生する荷電粒子線源101と、荷電粒子線源101から放出された荷電粒子線を加速する加速電極102と、加速電極102から対物レンズ105下端近傍にかけて配置されたビーム管112と、荷電粒子線源101から放出された荷電粒子線を集束する第1、第2のコンデンサーレンズ103, 104と、荷電粒子線源101から放出される荷電粒子の一部を遮蔽する円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119と、荷電粒子線源101から放出される荷電粒子の一部を遮蔽する円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120と、第1及び第2の荷電粒子線絞り119, 120を移動させる駆動機構を備えた荷電粒子線絞り器121と、第2の荷電粒子線絞り120に電圧を印加する荷電粒子線絞り電源108と、荷電粒子線絞り部よりも荷電粒子線源101側に配置される第1の偏向器群123と、荷電粒子線絞り部よりも試料側に配置される第2の偏向器群124と、試料上で荷電粒子線を走査する第3の偏向器群125と、荷電粒子線を試料に集束する対物レンズ105と、試料114を配置する試料室115と、試料から放出された二次荷電粒子を検出する検出器118と、試料を透過した荷電粒子線を検出する透過パターン検出面126と、検出面のパターンを観察するカメラ127と、検出面とカメラの間に配置される光学レンズ128とを有している。また、前述した荷電粒子光学系の各構成要素を制御する制御器として、荷電粒子線源101を制御する荷電粒子線源制御器151と、加速電極102を制御する加速電極制御器152と、第1、第2のコンデンサーレンズ103, 104を制御する第1、第2のコンデンサーレンズ制御器153, 154と、荷電粒子線絞り器121を制御する荷電粒子線絞り制御器169と、荷電粒子線絞り電源108を制御する荷電粒子線絞り電源制御器158と、第1の偏向器群123を制御する第1の偏向器群制御器163と、第2の偏向器群124を制御する第2の偏向器群制御器164と、第3の偏向器群125を制御する第3の偏向器群制御器165と、対物レンズ105を制御する対物レンズ制御器155とを有し、また検出器118を制御する検出器制御器168と、カメラ127をコントロールするカメラ制御器167とを有している。これらの制御器は、荷電粒子線装置全体の動作の制御および荷電粒子線像の構築を行う統合コンピュータ170により制御される。統合コンピュータ170はコントローラ(キーボード、マウスなど)171、ディスプレイ172と接続されており、オペレータはコントローラ171から照射条件や荷電粒子線絞りの電圧条件や位置条件といった各種指示等を入力し、ディスプレイ172に取得した像や制御画面を表示させることができる。
【0013】
なお、図1の例では、2つのコンデンサーレンズ103, 104を備えているが、対物レンズ105に入射する荷電粒子をコントロールする目的においてコンデンサーレンズの数は問わない。対物レンズ105は、磁路の外に磁場を漏らさないタイプのレンズを備えているが、磁路の外に磁場を漏らすタイプのレンズでもよいし、磁場を漏らすタイプと漏らさないタイプの両方を備える複合対物レンズでもよい。また、コンデンサーレンズ103, 104および対物レンズ105は、前述した目的において、静電レンズでもよく、ブースター光学系やリターディング光学系などのように磁場レンズと静電レンズを併用する対物レンズでもよく、試料114に荷電粒子線を集束する目的においてレンズのタイプは問わない。
【0014】
また、第2の荷電粒子線絞り120に対して電圧を印加しない場合には、荷電粒子線絞り電源108及びそれを制御する荷電粒子線絞り電源制御器158は不要となる。同様に、透過像を観察しない場合には、透過パターン検出面126、カメラ127、光学レンズ128及びカメラ127をコントロールするカメラ制御器167は不要になる。
【0015】
また、図1では、ビーム管112は一般的にはGND電位(基準電位)とされるが、ブースター光学系では所定の電圧が印加される。荷電粒子線の経路を覆う目的において、形状および構成部材の数は問わない。また、二次荷電粒子を検出する検出器118は、図1のように試料室115に配置されてもよいし、荷電粒子光学系が実装されるカラム内に配置されてもよい。また、試料室115とカラム内との両方に配置されてもよい。二次荷電粒子を検出する目的において、その数と配置場所は問わない。また、図1は、荷電粒子線カラムを1つ備える荷電粒子線装置であるが、複数の荷電粒子線カラムを備える複合荷電粒子線装置でも構わない。
【0016】
図2A〜Dを用いて荷電粒子線絞り部の構成について説明する。図2Aに示すように、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119及び円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120は荷電粒子絞り支持台122に支持されている。(a)は上面図、(b)は断面図であり、荷電粒子線絞り119, 120はそれぞれオサエネジ129により支持台122に固定されている。なお、上面図に見えるオサエネジ129の溝129bはオサエネジ129を支持台122の凹部にねじ込むために設けられているものである。以下に荷電粒子線絞り部の変形例を示すが、上面図はいずれもほぼ同等のため、省略する。
【0017】
第2Bは、特許文献1に記載のように、円環形状の荷電粒子線絞り120に対して円孔形状の荷電粒子線絞り219を荷電粒子線の光軸方向に沿って重ね合わせ、2つの絞りの間に電圧を印加することにより収差補正機能を持たせるようにしたものである。この場合、重ね合わせした円環形状の荷電粒子線絞り120と円孔形状の荷電粒子線絞り219とを異なる電位とするために、2つの絞りは絶縁材130を介して支持台122に支持させるとともに、円環形状の荷電粒子線絞り120と円孔形状の荷電粒子線絞り219との間は絶縁性スペーサ131により絶縁されている。2つの絞りの間に電圧を生じさせるため、円孔形状の荷電粒子線絞り219にオサエネジ129を介して電圧を印加すればよい。
【0018】
図1の例は、円環形状の第2の荷電粒子絞り120に対して電圧を印加する荷電粒子線絞り電源108が設けられているが、図2Aに示されるように、第1の荷電粒子線絞り119と第2の荷電粒子線絞り120とは導電体の支持台122を介して電気的に導通していても構わないし、図2Cに示されるように第2の荷電粒子線絞り120が絶縁材130を介して支持台122に固定されていても構わない。また、絞りの固定方法もオサエネジ129による固定方法に限定されるわけではなく、図2Dのように、スペーサ132とオサエ板133によって固定してもよい。荷電粒子線絞り器121の駆動機構は、支持台122を移動させることにより、第1の荷電粒子線絞り119と第2の荷電粒子線絞り120との切り替え、及びそれぞれの絞りの位置の調整を行う。支持台122の移動は、手動による駆動でも良いし、ステッピングモータやピエゾ素子を備えた電動駆動でも良い。
【0019】
円環形状を有する荷電粒子線絞りの調整方法について説明する。本実施の形態においては、まず、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119に対して、荷電粒子線の光軸調整を含む荷電粒子線像を取得するために必要な調整を行う。円孔形状の絞りは荷電粒子線絞りの一般的な形状であるから、この調整は一般的な荷電粒子線装置でユーザーが通常行う操作である。次に、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119から、円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120に変更する。このとき、第2の荷電粒子線絞り120を、円孔形状の第1の荷電粒子線絞り119が配置されていた位置に基づき配置する。これにより、ユーザーは、難しい操作を行うことなく円環絞りを用いた荷電粒子線像を取得することができる。具体的な調整手順を以下に説明する。これらの調整手順においては、統合コンピュータ170により荷電粒子光学系の各制御器が制御されて実施される。
【0020】
(1)第1の調整手順
図3を用いて第1の調整手順について説明する。まず、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119を荷電粒子線の光軸近傍に移動する(ステップ31)。荷電粒子線絞り部より荷電粒子線源101側に配置された第1の偏向器群123を用いて荷電粒子線を走査する(ステップ32)。これは、荷電粒子線が荷電粒子線絞り上を走査することに相当する。従って、検出器118の出力は、荷電粒子線が絞りの円孔部を走査されているときは、大きく(明るく)、荷電粒子線が円孔部以外を走査されているときは小さく(暗く)なる。従って、荷電粒子線の走査位置に基づき画像を表示すると円形の画像(荷電粒子線像)が表示される。ステップ32の走査により表示される円形が、画像(観察視野)の中心で最も明るくなるように荷電粒子線の光軸と第1の荷電粒子線絞りの位置を調整する(ステップ33)。これは一般的な荷電粒子線装置において実施される荷電粒子線絞りの位置調整に相当する。
【0021】
次に、円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120を荷電粒子線の光軸近傍に移動し(ステップ34)、ステップ32と同様に、第1の偏向器群123を用いて荷電粒子線を走査する(ステップ35)。荷電粒子線絞り上では、荷電粒子線のビーム径は荷電粒子線絞りの径よりも広がっているため、荷電粒子線の走査位置に基づき表示される画像は、絞りの形状に関わらず第1の荷電粒子線絞りのときと同様、円形の画像(荷電粒子線像)が表示される。ステップ35の走査により表示される円形が、画像(観察視野)の中心にくるように第2の荷電粒子線絞りの位置を調整する(ステップ36)。ステップ33において、荷電粒子線の光軸は第1の荷電粒子線絞り119の中心を通るように調整されている。したがって、第1の荷電粒子線絞りを第2荷電粒子線絞りに取り換え、第1の偏向器群123により荷電粒子線を走査させたときに表示される円形の画像(荷電粒子線像)が画像(観察視野)の中心に来ない理由は第2荷電粒子線絞りが第1荷電粒子線絞りのあった位置にないためである。そこで、円形の画像を画像の中心にもってくるように第2荷電粒子線絞りの位置を調整することで、第2の荷電粒子線絞り120が第1の荷電粒子線絞り119のあった位置にくるように調整される。なお、このときに中心にきた円形の画像は最も明るくなる位置とは限らない。
【0022】
(2)第2の調整手順
図4を用いて第2の調整手順を説明する。第1の調整手順よりも荷電粒子線装置の光軸を精度よく調整するため、第1の調整手順で円環形状を有する荷電粒子線絞りの調整を実施した後に、第2の調整手順により微調整を行うようにしてもよい。
【0023】
まず、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119を光軸近傍に移動する(ステップ41)。対物レンズ105の励磁を周期的に変動させながら、第3の偏向器群125により試料上で荷電粒子線を走査する(ステップ42)。その際、光軸が対物レンズ105の中心を通過していない場合には、表示される画像の中心が対物レンズ105の励磁変動に同期して移動する。そこで、荷電粒子線絞り部より試料側に配置された第2の偏向器群124を用いて、画像の移動が停止するように荷電粒子線の経路を調整する(ステップ43)。画像の移動が停止した状態は、荷電粒子線が対物レンズ105の中心を通過していることに相当する。
【0024】
次に、円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120を光軸近傍に移動する(ステップ44)。ステップ42と同様に、対物レンズ105の励磁を周期的に変動させながら、試料上で荷電粒子線を走査する(ステップ45)。画像の移動が停止するように、今度は、第2の荷電粒子線絞り120の位置を調整する(ステップ46)。これは、第1の荷電粒子線絞り119が挿入されていた状態における荷電粒子線の光軸が、第2の荷電粒子線絞り120の中心を通過するよう調整されたことに相当する。
【0025】
なお、前述したステップ42および45において、対物レンズ105の励磁を周期的に変化させる代わりに、荷電粒子線源制御器151により、荷電粒子線の加速電圧を周期的に変化させることで、同様の調整を行うこともできる(ステップ42aおよび45a)。
【0026】
(3)第3の調整手順
図5を用いて第3の調整手順を説明する。第3の調整手順では透過パターンを用いて調整する。やはり第1の調整手順よりも荷電粒子線装置の光軸を精度よく調整するため、第1の調整手順で円環形状を有する荷電粒子線絞りの調整を実施した後に、第3の調整手順により微調整を行うようにしてもよい。
【0027】
まず、円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り119を光軸近傍に移動する(ステップ51)。荷電粒子線を試料上の一点にスポット照射させ、試料下部の透過パターン検出面126、レンズ128およびカメラ127を用いて、透過パターンを表示させる(ステップ52)。この場合、透過パターンの形状は円形となる。ステップ52で表示させたパターンは、対物レンズ105の励磁変動、すなわち荷電粒子線のフォーカス変化に連動して拡大、縮小する。フォーカスを変動させながら、透過パターンが同心円状に均一に拡大、縮小するように第1の荷電粒子線絞り119の位置を調整する(ステップ53)。上記のようなパターンの変化が同心円状に均一になった状態が、荷電粒子線の光軸と荷電粒子線絞りの中心が一致したことに相当する。
【0028】
次に、円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り120を、光軸近傍に移動する(ステップ54)。ステップ52と同様に、荷電粒子線を試料上の一点にスポット照射させ透過パターンを表示させる(ステップ55)。この場合、透過パターンの形状は円環形状となる。ステップ53の状態の透過パターンの中心と、ステップ55で第2の荷電粒子線絞り119を挿入した際の透過パターンの中心が一致するように第2の荷電粒子線絞り119の位置を調整する(ステップ56)。これは、第1の荷電粒子線絞り119が挿入されていた状態における荷電粒子線の光軸が、第2の荷電粒子線絞り120の中心を通過するよう調整されたことに相当する。
【0029】
なお、前述したステップ53において、第1の荷電粒子線絞り120の位置を調整する代わりに、荷電粒子線絞り部より試料側に配置された第2の偏向器群124を用いて、荷電粒子線の経路を調整して透過パターンの変化を同心円状に均一にすることで、同様の調整を行うこともできる(ステップ53a)。
【0030】
以上第1〜第3の調整手順を説明した。これらの調整手順において、絞りを手動で移動させてもよいが、電動駆動機能を備えた荷電粒子線絞り器を荷電粒子線装置が備える制御器で制御できるとより便利である。電動駆動機構を実現する一つの例として、第1の荷電粒子線絞り119と第2の荷電粒子線絞り120とを切り替えるような大きな移動は、ステッピングモータで行い、各荷電粒子線絞りの位置を微調するような精度を要求される移動はピエゾ素子を用いて行う構成が考えられる。また、大きな移動のためのステッピングモータまたはピエゾ素子と微調整用のステッピングモータまたはピエゾ素子を用いる構成としても良い。また、単一のステッピングモータまたはピエゾ素子を用いて大きな移動と精度の高い移動を両立するのでも構わない。電動駆動機構を実現する目的において、その手段は問わない。
【0031】
さらに、荷電粒子線絞りの位置を記憶するようにし、ディスプレイ172に荷電粒子線絞りの位置を表示したり、予め調整した適正な第2の荷電粒子線絞り120の位置を記憶しておき、ユーザーは第2の荷電粒子線絞りを選択するだけで、荷電粒子線絞り器121により第2の荷電粒子線絞り120が記憶された位置に設定されたりしてもよい。これにより、ユーザーは、簡単に最適な位置に配置された荷電粒子線絞りを用いて観察または加工を行うことができユーザビリティーを向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
101:荷電粒子線源、102:加速電極、103:第1のコンデンサーレンズ、104:第2のコンデンサーレンズ、105:対物レンズ、108:荷電粒子線絞り電源、112:ビーム管、114:試料、115:試料室、118:検出器、119:円孔形状を有する第1の荷電粒子線絞り、120:円環形状を有する第2の荷電粒子線絞り、121:荷電粒子線絞り器、123:第1の偏向器群、124:第2の偏向器群、125:第3の偏向器群、126:透過パターン検出面、127:カメラ、128:光学レンズ、129:オサエネジ、130:絶縁材、131:絶縁性スペーサ、132:スペーサ、133:オサエ板、151:荷電粒子線源制御器、152:加速電極制御器、153:第1のコンデンサーレンズ制御器、154:第2のコンデンサーレンズ制御器、155:対物レンズ制御器、158:荷電粒子線絞り電源制御器、163:第1の偏向器群制御器、164:第2の偏向器群制御器、165:第3の偏向器群制御器、167:カメラ制御器、168:検出器制御器、169:荷電粒子線絞り制御器、170:統合コンピュータ、171:コントローラ、172:ディスプレイ。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5

【手続補正書】
【提出日】2020年9月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
2Bは、特許文献1に記載のように、円環形状の荷電粒子線絞り120に対して円孔形状の荷電粒子線絞り219を荷電粒子線の光軸方向に沿って重ね合わせ、2つの絞りの間に電圧を印加することにより収差補正機能を持たせるようにしたものである。この場合、重ね合わせした円環形状の荷電粒子線絞り120と円孔形状の荷電粒子線絞り219とを異なる電位とするために、2つの絞りは絶縁材130を介して支持台122に支持させるとともに、円環形状の荷電粒子線絞り120と円孔形状の荷電粒子線絞り219との間は絶縁性スペーサ131により絶縁されている。2つの絞りの間に電圧を生じさせるため、円孔形状の荷電粒子線絞り219にオサエネジ129を介して電圧を印加すればよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】