特表-19186937IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクの特許一覧
<>
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000003
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000004
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000005
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000006
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000007
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000008
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000009
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000010
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000011
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000012
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000013
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000014
  • 再表WO2019186937-荷電粒子線装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月3日
【発行日】2021年2月25日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/09 20060101AFI20210129BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20210129BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20210129BHJP
【FI】
   H01J37/09 A
   H01J37/153 B
   H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2020-508735(P2020-508735)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年3月29日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度国立研究開発法人科学技術振興機構 先端計測分析技術・機器開発プログラム「超汎用型SEM用球面収差(Cs)/色収差(Cc)補正器の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(71)【出願人】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】本村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 忠寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜視
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033BB01
5C033JJ07
5C033UU10
(57)【要約】
荷電粒子線用の電磁レンズが有する正の球面収差を補正する装置として、円孔電極と円環電極を組み合わせた球面収差補正装置が知られている。この球面収差補正装置では円孔電極と円環電極の間に電圧を印加した際に、円孔電極に生じる凸レンズ効果によって、荷電粒子線装置のフォーカスが変化してしまう。このため、荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源(101)と、円環形状を有する荷電粒子線絞り(120)と、荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源(108)とを有する荷電粒子線装置において、荷電粒子線絞り電源は、荷電粒子線の電荷と逆極性となる電圧を荷電粒子線絞りに印加するよう構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
円環形状を有する荷電粒子線絞りと、
前記荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源とを有し、
前記荷電粒子線絞り電源は、前記荷電粒子線の電荷と逆極性となる電圧を前記荷電粒子線絞りに印加する荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記荷電粒子線絞りが形成され、前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線絞り板と、
前記荷電粒子線絞り板の電位を周囲の構造物の電位と分離する絶縁材とを有し、
前記絶縁材は前記荷電粒子線の経路から見えない位置に配置される荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記荷電粒子線絞り板に複数の前記荷電粒子線絞りが形成される荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記荷電粒子線絞りが形成され、前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線絞り板を有し、
前記荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線絞り板の前記荷電粒子線源側では円環形状をしており、その裏側では前記円環形状よりも大きい径の筒形状をしている荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記荷電粒子線絞りが形成され、前記荷電粒子線絞り電源により電圧が印加される荷電粒子線絞り板を有し、
前記荷電粒子線絞りは、前記荷電粒子線絞り板の前記荷電粒子線源側では円環形状をしており、その裏側では前記円環形状から径が次第に広がる円錐形状をしている荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1において、
凹部を有し、前記荷電粒子線絞りが前記凹部にオサエ部材により固定される荷電粒子線絞り支持台と、
前記荷電粒子線絞り支持台の電位を周囲の構造物の電位と分離する絶縁材とを有し、
前記絶縁材は前記荷電粒子線の経路から見えない位置に配置される荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記オサエ部材は、ねじにより前記荷電粒子線絞りを前記荷電粒子線絞り支持台に固定するまたは、オサエ板を介して前記荷電粒子線絞りを前記荷電粒子線絞り支持台に固定する荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記荷電粒子線絞りが固定された荷電粒子線絞りユニットと、
凹部を有し、前記荷電粒子線絞りユニットの外径が前記凹部の内径と嵌め合いとされる荷電粒子線絞り支持台と、
前記荷電粒子線絞りユニットを前記荷電粒子線絞り支持台に固定するオサエ部材と、
前記荷電粒子線絞り支持台の電位を周囲の構造物の電位と分離する絶縁材とを有し、
前記絶縁材は前記荷電粒子線の経路から見えない位置に配置される荷電粒子線装置。
【請求項9】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
円環形状を有する第1の荷電粒子線絞りと、
前記第1の荷電粒子線絞りに対して前記荷電粒子線の光軸方向に配置され、円環形状を有する第2の荷電粒子線絞りと、
前記第1の荷電粒子線絞りに前記荷電粒子線の電荷と逆極性となる電圧を印加する荷電粒子線絞り電源とを有し、
前記第1の荷電粒子線絞りは前記第2の荷電粒子線絞りよりも前記荷電粒子線源側に配置される荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2の荷電粒子線絞りの厚みは、前記第1の荷電粒子線絞りの厚みよりも薄い荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項9において、
前記第2の荷電粒子線絞りの開口幅は、前記第1の荷電粒子線絞りの開口幅よりも細い荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項9において、
前記第1の荷電粒子線絞りと前記第2の荷電粒子線絞りとは電気的に独立とされ、
前記第1の荷電粒子線絞りと前記第2の荷電粒子線絞りとの間に設けられるスペーサは、前記第1の荷電粒子線絞りに接する第1のスペーサと前記第2の荷電粒子線絞りに接する第2のスペーサと前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとの間に介在する絶縁材とを有し、前記絶縁材は前記荷電粒子線の経路から見えない位置に配置される荷電粒子線装置。
【請求項13】
荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
円環形状を有する荷電粒子線絞りと、
前記荷電粒子線の電荷と逆極性となる電圧を前記荷電粒子線絞りに印加する荷電粒子線絞り電源と、
前記荷電粒子線を集束させて試料上に照射する対物レンズと、
前記荷電粒子線が前記試料上に照射されることにより放出された二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器で検出された二次荷電粒子に基づき荷電粒子線像を形成するコンピュータと、
前記コンピュータに接続されるディスプレイとを有し、
前記ディスプレイに表示されるGUI画面の操作画面のスライドバー、または前記コンピュータに接続されるコントローラの制御スイッチにより、前記荷電粒子線絞り電源が前記荷電粒子線絞りに印加する電圧が制御される荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記ディスプレイは前記荷電粒子線像を表示するライブ画面を有する荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)や集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam System)といった荷電粒子線装置は、荷電粒子線を試料に集束することで、ナノレベルの観察や解析、加工を行う。これら荷電粒子線装置は、ナノレベルの観察や解析、加工が求められる半導体分野や材料分野、バイオ分野で幅広く用いられている。そして、微細化が進む半導体分野を筆頭に、様々な分野で、さらなる像分解能の向上や加工精度の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、入射プレートと射出プレートとを有し、そのいずれか一方に円形開孔を形成し、他方に円環開孔を形成し、入射プレートと射出プレートとの間に電圧を加えることで円環開孔に形成される電場により正の球面収差を解消する発散をもたらすことにより、簡単な構造で実現可能な球面収差補正器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/174891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される球面収差補正器は、円孔電極(円形開孔が設けられているプレートを指す)と円環電極(円環開孔が設けられているプレートを指す)の間に電圧を印加することにより、円孔電極に凸レンズ効果が生じることにより、荷電粒子線のフォーカスが変化してしまう。また、円孔電極と円環電極とを異なる電位とするために、その間に絶縁シートを介して円孔電極と円環電極とを配置する必要がある。この絶縁材がチャージアップすると、円孔電極と円環電極との間に所望の電圧を印加することができず、収差補正性能が劣化するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態である荷電粒子線装置においては、荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、円環形状を有する荷電粒子線絞りと、荷電粒子線絞りに電圧を印加する荷電粒子線絞り電源とを有し、荷電粒子線絞り電源は、荷電粒子線の電荷と逆極性となる電圧を荷電粒子線絞りに印加する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
荷電粒子線絞りに電圧を印加した際に生じるフォーカス変化を抑制しつつ、球面収差補正効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】荷電粒子線装置の概略図である。
図2A】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図2B】荷電粒子線絞りの断面図である。
図2C】荷電粒子線絞りの断面図である。
図2D】荷電粒子線絞りの断面図である。
図3】荷電粒子線絞り部の構成を示す概略図である。
図4】荷電粒子線絞りの支持構造を示す概略図である。
図5】荷電粒子線絞りの支持構造を示す概略図である。
図6】荷電粒子線絞りの支持構造を示す概略図である。
図7】荷電粒子線絞りの支持構造を示す概略図である。
図8】GUI画面の一例である。
図9A】2枚の円環形状絞りを用いた荷電粒子線絞りの構造を示す概略図である。
図9B】2枚の円環形状絞りを絶縁する場合のスペーサの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許文献1の収差補正器の収差補正効果は、円環開孔の近傍で等電位線が屈曲することで得られている。本願発明者らが、荷電粒子線装置の分解能を向上させるため鋭意検討した結果、円孔電極をなくし、円環形状の荷電粒子線絞りに所定の電圧を印加することにより、収差補正効果を得ることが可能であるとの知見を得た。前述の通り、円孔電極が存在することにより荷電粒子線のフォーカスずれを生じさせる。しかしながら、荷電粒子光学系を構成する鏡筒内は比較的安定した電場環境が形成されており、荷電粒子線絞りを円環形状とし、円孔電極がなくとも、この円環形状の荷電粒子線絞りに対して所定の電圧を印加することで収差補正効果を得られることを見出した。ただし、円孔電極の作用は円環状の開口の近傍で等電位線を安定的に作り出すことであると考えられ、円孔電極がある場合よりも大きな電圧を印加する必要性は認められる。荷電粒子線が電子の場合は、電子のもつ負電荷と逆極性となる正の電圧を印加し、荷電粒子線が正イオンである場合には、正イオンのもつ正電荷と逆極性となる負の電圧を円環形状の荷電粒子線絞りを印加すればよい。
【0011】
本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。本実施の形態は本発明を実現する一例に過ぎない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0012】
図1に荷電粒子線装置の概略を示す。荷電粒子線装置はその主要部に、荷電粒子線を発生する荷電粒子線源101と、荷電粒子線源101から放出された荷電粒子線を加速する加速電極102と、加速電極102から対物レンズ105下端近傍にかけて配置されたビーム管112と、荷電粒子線源から放出された荷電粒子線を集束する第1、第2のコンデンサーレンズ103, 104と、荷電粒子線源101から放出した荷電粒子の一部を遮蔽する円環形状を有する荷電粒子線絞り120と、荷電粒子線絞り120を電気的に絶縁する絶縁材123と、荷電粒子線絞り120や荷電粒子線絞りを支持する支持材や駆動機構など荷電粒子線絞りを移動させる上で必要な一連の部品を含む荷電粒子線絞り器121と、荷電粒子線絞り120に電圧を印加する荷電粒子線絞り電源108と、荷電粒子線を試料114に集束する対物レンズ105と、試料114を配置する試料室115と、試料114から放出された二次荷電粒子を検出する検出器118とを有している。また、前述した荷電粒子光学系の各構成要素を制御する制御器として、荷電粒子線源101を制御する荷電粒子線源制御器151と、加速電極102を制御する加速電極制御器152と、第1と第2のコンデンサーレンズ103, 104を制御する第1、第2のコンデンサーレンズ制御器153, 154と、荷電粒子線絞り器121を制御する荷電粒子線絞り制御器169と、荷電粒子線絞り電源108を制御する荷電粒子線絞り電源制御器158と、対物レンズ105を制御する対物レンズ制御器155とを有し、また検出器118を制御する検出器制御器168を有している。これらの制御器は、荷電粒子線装置全体の動作の制御および検出器118で検出された二次荷電粒子線より荷電粒子線像の構築を行う統合コンピュータ170により制御される。統合コンピュータ170はコントローラ(キーボード、マウスなど)171、ディスプレイ172と接続されており、オペレータはコントローラ171から照射条件や荷電粒子線絞りの電圧条件や位置条件といった各種指示等を入力し、ディスプレイ172に取得した像や制御画面を表示させることができる。その他、荷電粒子線装置は、荷電粒子線を走査、シフトするための偏向系などの構成を備えているが、図1では省略している。
【0013】
なお、図1の例では、2つのコンデンサーレンズ103, 104を備えているが、対物レンズ105に入射する荷電粒子をコントロールする目的においてコンデンサーレンズの数は問わない。対物レンズ105は、磁路の外に磁場を漏らさないタイプのレンズを備えているが、磁路の外に磁場を漏らすタイプのレンズでもよいし、磁場を漏らすタイプと漏らさないタイプの両方を備える複合対物レンズでもよい。また、コンデンサーレンズ103, 104および対物レンズ105は、前述した目的において静電レンズでもよく、ブースター光学系やリターディング光学系などのように磁場レンズと静電レンズとを併用する対物レンズでもよく、試料114に荷電粒子線を集束する目的においてレンズのタイプは問わない。
【0014】
また、図1では、ビーム管112はGND電位(基準電位)となっているが、ブースター光学系では所定の電圧が印加される。荷電粒子線の経路を覆う目的において、形状および構成部材の数は問わない。また、二次荷電粒子を検出する検出器118は、図1のように試料室115に配置されてもよいし、荷電粒子光学系が実装されるカラム内に配置されてもよい。また、試料室115とカラム内との両方に配置されてもよい。二次荷電粒子を検出する目的において、その数と配置場所は問わない。また、図1は、荷電粒子線カラムを1つ備える荷電粒子線装置であるが、複数の荷電粒子線カラムを備える複合荷電粒子線装置でも構わない。
【0015】
荷電粒子線絞り部の構成を図2Aに示す。(a)に上面図、(b)に断面図を示している。図2Aの例では、荷電粒子線絞り120は荷電粒子線絞り板124に直接形成されており、荷電粒子線絞り板124に対して荷電粒子線絞り電源108より電圧が印加される。荷電粒子線絞り板124はネジ140により荷電粒子線絞り板支持台125に取り付けられ、荷電粒子線絞り板支持台125は絶縁材123に支持されている。これに限られず、荷電粒子線絞り板124と荷電粒子線絞り板支持台125が一体で形成されていてもよい。また、荷電粒子線絞り板124に電圧を印加するため、絶縁材123により周辺の構造物と電位を分離可能としている。その目的において、絶縁材ではなく高抵抗の導電性部材を用いても構わない。また、荷電粒子線絞り120は、荷電粒子線絞り板124に1つまたは複数配置されている。複数配置されている場合には、1つの絞りが汚染または損傷した場合でも、別の絞りに切り替えて直ぐ観察や加工を再開できるといった利点がある。また、複数配置された荷電粒子線絞り120の形状は同一でなくてもよい。この場合、加速電圧など観察条件や加工条件の違いによって適した荷電粒子線絞りを使い分けることができる利点がある。
【0016】
図2B〜Dに荷電粒子線絞りの断面図を示す。荷電粒子線絞り120aは形成される板の上側(荷電粒子線源側)から下側(対物レンズ側)まで同じ円環形状をしている(図2B)。一方、荷電粒子線絞り120b, 120cでは、板の上側が円環形状をしており、その裏側である板の下側は、円環形状よりも径の大きい筒形状(120b:図2C)または円環形状から径が次第に広がる円錐形状(120c:図2D)をしている。荷電粒子線絞り120を通過する荷電粒子線の一部は、荷電粒子線絞りの側壁に衝突し、二次荷電粒子(電子)を発生する。例えば、荷電粒子線装置が電子顕微鏡であった場合、荷電粒子線絞りの側壁で発生した二次電子が試料まで到達した場合には、試料に照射する電子線が広がったのと同様な影響を与え、観察性能の劣化を引き起こす可能性がある。したがって、特に荷電粒子線源101が電子源である場合においては、荷電粒子線絞り120の側壁への衝突を軽減することができる図2C図2Dのような形状の方が、図2Bの形状よりも好ましい。但し、荷電粒子線絞り120による球面収差補正効果は、絞りの円環部に形成される電場によってもたらされるため、円環部の厚みは薄すぎてはならないし、円環部の強度の観点からもある程度厚みがある方が望ましい。このような理由から、円環部の厚みは、1μm以上が望ましい。なお、荷電粒子線絞り板124の厚みは10μm程度以上とする。絞り板124に絞り120を形成する方法については、金型によるプレスによる成形、エッチングによる成形、FIBによる成形等が可能である。
【0017】
また、絶縁材123に荷電粒子が衝突するとチャージアップを引き起こすことから、少なくとも荷電粒子線源101から発生される荷電粒子線が絶縁材123に照射されることがないように、絶縁材123は荷電粒子線の経路から見えない位置にあることが望ましい。一例として図1に示すように、絶縁材123をビーム管112の外側に配置すると、荷電粒子線の経路から見えない構造を容易に実現することができる。
【0018】
また、図2Aでは、荷電粒子線絞り120は長方形の板材に形成されているが、図3に示すように絞り板124を円盤状とし、ネジ140により円盤状の支持台125に支持されるようにしても良い。この例では、絞り120の光軸調整を行うために、支持台125に対して位置調整用部材141a〜dを設けている。また、円盤状の支持台125を支える絶縁材123は、図に示すような筒形状でもよいし、複数のブロックから構成されていてもよい。これにより、絞りの電位と周辺の構造物との電位とを分離することができる。この場合も、絶縁材123は、荷電粒子線の経路から見えない構造である方が望ましいため、ビーム管112の外側に配置されている。また、この場合についても、荷電粒子線絞り120の形状は図2C図2Dのようなものであることが望ましい。
【0019】
以下に、荷電粒子線絞り120の支持構造の変形例を説明する。図4は、荷電粒子線絞り120(絞りが形成される板の形状は問わない、円形や方形等)を、荷電粒子線絞り支持台122に固定する支持構造である。(a)に上面図、(b)に断面図を示している。この例では、荷電粒子線絞り支持台122の凹部に荷電粒子線絞り120を載せ、その上から側面にネジが切ってあるオサエネジ126で押さえる構成となっている。凹部は例えば支持台122に座ぐり加工により形成する。また、図の例ではネジ部が上部(荷電粒子線源側)にあるが、ネジ部が下部(対物レンズ側)にあっても構わない。なお、オサエネジ126の溝126bはオサエネジ126を支持台122にねじ込むために設けられている。
【0020】
図4のタイプの支持構造の変形例を説明する。上面図は図4の上面図とほぼ同等であるため、いずれも断面図のみを示す。図5図6は、荷電粒子線絞り支持台122に荷電粒子線絞り120を載せ、これを別のオサエ板127を介してネジ140によりねじ止めしている。図5は1枚の板に荷電粒子線絞りが1つ形成されている例であり、図6は1枚の絞り板に荷電粒子線絞りが複数形成されている例である。本構成では、ネジを用いて直接または間接的に荷電粒子線絞りを固定する方法を示したが、オサエ部材としてはネジ以外による固定も可能である。但し、荷電粒子線絞り120は消耗品であることから、支持台から容易に着脱できる構成が望ましい。
【0021】
また、図7に、荷電粒子線絞りユニット128を荷電粒子線絞りユニット支持台129に固定する構成を示す。荷電粒子線絞りユニット128の外径と荷電粒子線絞りユニット支持台129における支持部の内径とを嵌め合いとし、荷電粒子線絞りユニット128における荷電粒子線絞りの位置を精度良くコントロールすれば、着脱や交換によって生じる荷電粒子線絞りの位置ズレを抑制することができる。図7の構造でも着脱容易とするため、ネジ140により荷電粒子線絞りユニット支持台129に結合されるオサエ板127により、荷電粒子線絞りユニット128は荷電粒子線絞りユニット支持台129に固定されている。荷電粒子線絞りユニット128における荷電粒子線絞り120の位置を精度良くコントロールする方法としては、荷電粒子線絞りユニット128を組立てた後に、FIBなどを用いて荷電粒子線絞りユニット128の中心に荷電粒子線絞り120を加工する方法などが考えられる。なお、図4図7の構造においても、荷電粒子線絞り120及び荷電粒子線絞り支持台122の電位を周囲の構造物の電位と分離可能とするため、絶縁材を介して荷電粒子線絞り器121に支持される必要がある。これは図2Aと同様の構成とすることで実現可能である。
【0022】
以上、説明した支持構造は、電圧が印加される部材全てが露出した構成となっているが、それら部材の一部を、荷電粒子線装置のGND(基準電位)である部材で覆っても構わない。
【0023】
円環形状を有する荷電粒子線絞り120を用いる場合、荷電粒子線絞り120に電圧を印加することによって生じるレンズは、円環開口部に発生する凹レンズとなる。この凹レンズを用いて、対物レンズ等の凸レンズの持つ正の球面収差を補正する。このため、荷電粒子線絞り120への電圧印加前にフォーカス調整がなされていれば、荷電粒子線絞り120への電圧印加後にフォーカスボケは殆ど発生しない。これは、適正な収差補正効果を得るために荷電粒子線絞り120に印加する電圧を探索する上で非常に有利となる。荷電粒子線絞り120に電圧を印加することでフォーカスボケが発生するとなると、荷電粒子線絞り120への印加電圧を変更する度に、フォーカス調整を行わなければ像質の改善を確認することができない。すなわち、荷電粒子線絞り120への印加電圧の調整とフォーカスの調整とを繰り返し行う必要がある。しかし、本実施例ではフォーカスボケが発生しないので、荷電粒子線絞り120の印加電圧を変更しながら、リアルタイムで像質の改善を確認できる。
【0024】
図8にディスプレイ172に表示される収差補正量を調整するためのGUI画面の一例を示す。GUI画面800には、荷電粒子線像を表示するライブ画面801とライブ画面801の像質を見ながら画質を制御する制御画面804とが設けられている。図では、制御画面804は、各パラメータの大きさを調整するためのスライドバー802、各パラメータの値を直接数値入力するための数値入力欄803が設けられている。そのパラメータの一つとして「収差補正」805が設けられている。この値を制御することにより、荷電粒子線絞り120への印加電圧が制御され、収差補正量を調整することができる。GUI画面800による調整のみならず、コントローラ171(操作卓)にツマミのような制御スイッチを設けて印加電圧を調整し、最も像質が良くなる電圧に調整するようにすることもできる。このように、円孔電極をなくし、円環形状を有する荷電粒子線絞り120に電圧を印加することで球面収差補正を実現することにより、操作性を大きく向上させることができる。
【0025】
図9Aに荷電粒子線の光軸方向に沿って配置された2枚の円環形状を有する荷電粒子線絞りを用いた絞り部の構造を示す。この荷電粒子線絞りでは、上側(荷電粒子線源側)の荷電粒子線絞り120dに対して荷電粒子線絞り電源に電圧を印加する。本構成においても、前述した収差補正効果を得られる点は同じである。さらに、本構成では、上側(荷電粒子線源側)の荷電粒子線絞り120dに対して側壁で生じた二次荷電粒子の多くが、下側(対物レンズ側)の荷電粒子線絞り120eで遮られる。これにより、二次荷電粒子による観察性能の劣化を抑制することができる。また、図の例では、上側の円環絞り120dの厚みよりも、下側の円環絞り120eの厚みの方が薄くなっている。これは、上側の円環絞り120dは、球面収差補正効果を実現し、下側の円環絞り120eは、主に試料に到達する二次荷電粒子を極力抑制することを目的としているためである。このように絞りの厚みに差異を設けるのが好ましい構成ではあるが、上下同一の円環絞りを用いた場合でも一定の効果は、期待できる。また、試料に到達する二次荷電粒子を抑制するという観点から、下側の円環絞り120eの開口幅dを、上側の円環絞り120dの開口幅dより細くしても良い。また、図では2枚の荷電粒子線絞り120d, 120eは、導電性スペーサ130を介して接触しており、電気的に導通しているが、電気的に独立した構成としてもよい。上側の荷電粒子線絞り120dにのみ電圧が印加され、下側の荷電粒子線絞り120eに電圧が印加されない場合には、各荷電粒子線絞りの役割がはっきりする。但し、2枚の円環絞りを電気的に独立させる場合には、絶縁材を荷電粒子線の経路から見えないようにする構成が望ましい。図9Bに絶縁材の配置を考慮したスペーサの(a)上面図、(b)断面図、(c)下面図を示す。この例ではスペーサ900は、内側スペーサ901とそれよりも径の大きい外側スペーサ902とを有し、内側スペーサ901と外側スペーサ902とは絶縁材903を介して接続されている。荷電粒子線はスペーサ900の開口部904を通過するため、絶縁材903は荷電粒子線の経路から見えない位置に配置することができる。
【符号の説明】
【0026】
101:荷電粒子線源、102:加速電極、103:第1のコンデンサーレンズ、104:第2のコンデンサーレンズ、105:対物レンズ、108:荷電粒子線絞り電源、112:ビーム管、114:試料、115:試料室、118:検出器、120:円環形状を有する荷電粒子線絞り、121:荷電粒子線絞り器、122:荷電粒子線絞り支持台、123:絶縁材、124:荷電粒子線絞り板、125:荷電粒子線絞り板支持台、126:オサエネジ、127:オサエ板、128:荷電粒子線絞りユニット、129:荷電粒子線絞りユニット支持台、130:導電性スペーサ、151:荷電粒子線源制御器、152:加速電極制御器、153:第1のコンデンサーレンズ制御器、154:第2のコンデンサーレンズ制御器、155:対物レンズ制御器、158:荷電粒子線絞り電源制御器、168:検出器制御器、169:荷電粒子線絞り制御器、170:統合コンピュータ、171:コントローラ、172:ディスプレイ。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】