(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
静電チャック装置は、試料を載置する試料載置面を有するとともに静電吸着用の第1の電極を有する静電チャック部と、静電チャック部に対し試料載置面とは反対側に載置され静電チャック部を冷却する冷却ベース部と、静電チャック部と前記冷却ベース部とを接着する接着層と、を備え、静電チャック部は、接着層の側に凹凸を有しており、第1の電極の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
前記静電チャック部は、前記試料載置面の周囲であって前記試料載置面よりも凹んでいる凹部に、前記試料載置面の周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面を有する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
前記静電チャック部は、前記試料載置面の周囲であって前記試料載置面よりも凹んでいる第2の凹部に、前記試料載置面の周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面を有する、
請求項19に記載の静電チャック装置。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る静電チャック装置1の一例を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る静電チャック装置1の電極の一例を示す平面図である。静電チャック装置1は、静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とを備える。
ここで、静電チャック装置1に固定された座標系を、3次元直交座標系X、Y、Zとする。ここで、3次元直交座標系X、Y、ZのX軸は、水平方向に平行な向きであり、Z軸は、鉛直方向上向きである。上向きとはZ軸の正の向きである。
静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とは、静電チャック装置1を上方から下にみたときに円板状の形状である。静電チャック部2は、絶縁接着層3を挟んで冷却ベース部4の上に設置される。静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とは、静電チャック装置1を上方から下にみたときに円板の中心が重なるように接着されている。
【0040】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、静電チャック装置1を上方から下にみたときに、
図2に示すように円板状である。静電チャック部2は、載置板22と、ウエハ静電吸着用電極23と、支持板24と、FR(Focus Ring:フォーカスリング)静電吸着用第1電極26と、FR静電吸着用第2電極28とを有する。載置板22と、支持板24とは一体化されている。
【0041】
載置板22は、円板の内周部分の上面である試料載置面21aと、円板の外周部分の上面である構造物設置面21bとを有している。
構造物設置面21bは、試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に設けられている。試料載置面21aは、半導体ウエハ等の板状試料が載置される面である。構造物設置面21bは、フォーカスリングが載置される面である。つまり、静電チャック部2は、試料載置面21aの周囲であって試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に、試料載置面21aの周囲を囲む円環状の構造物であるフォーカスリングを設置する構造物設置面21bを有する。
【0042】
フォーカスリング(不図示)は、例えば、試料載置面21aに載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。ウエハの周縁部にフォーカスリングを配置することにより、プラズマに対する電気的な環境を試料載置面と略一致させることができるため、静電チャック部2の試料載置面上のエッチング速度が中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0043】
載置板22及び支持板24は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものであり、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
載置板22の試料載置面21aは、上面に半導体ウエハ等の板状試料を載置する面である。試料載置面21aには、直径が板状試料の厚さより小さい突起部(不図示)が複数所定の間隔で形成され、これらの突起部が板状試料を支える。
【0044】
ウエハ静電吸着用電極23は、静電チャック部2の円板の内周部において、載置板22と支持板24との間に設けられる。ウエハ静電吸着用電極23は、
図2に示すように円板状の電極である。ウエハ静電吸着用電極23は、試料載置面21aと接着面21cとの間及び試料載置面21aと接着面21dとの間に跨って設けられる。
【0045】
ウエハ静電吸着用電極23は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。ウエハ静電吸着用電極23は、ウエハ静電吸着用電極ピン25により支持される。ウエハ静電吸着用電極23は、ウエハ静電吸着用電極ピン25を介して、後述する取出電極端子41と接続されている。
【0046】
ウエハ静電吸着用電極23は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックスにより形成されることが好ましい。
【0047】
支持板24は、絶縁接着層3と接する面である下面に凹面を有する。つまり、静電チャック部2は、絶縁接着層3の側に凹凸を有する。支持板24の下面は、接着面21c及び接着面21dからなる。ここで下向きとはZ軸の負の向きである。
接着面21cは、円板状の支持板24の内周部分に位置する円形の平面である。接着面21cは、支持板24の下面において接着面21dに対して凹んでいる。接着面21dは、円板状の支持板24の外周部分に位置する同心円状の平面である。静電チャック部2を上方からみた場合に、接着面21cの円の中心と試料載置面21aの円の中心とは一致しており、接着面21cの直径は試料載置面21aの直径よりも小さい。つまり、静電チャック部2を上方からみた場合に、接着面21cは試料載置面21aよりも内周部分に位置する。
接着面21cは、試料載置面21aと対向している。接着面21dは、試料載置面21aと対向する内周部分と、構造物設置面21bと対向する外周部分とを有する。試料載置面21aと接着面21cとの間の厚さは、試料載置面21aと接着面21dとの間の厚さより薄い。
【0048】
プラズマエッチング装置において、エッチング速度及びエッチングの方向は、静電チャック部2の試料載置面21a上の電場の強さ及び電気力線の方向に影響される。試料載置面21a上の電場の強さ及び電気力線の方向が面上において不均一である場合、エッチング速度及びエッチングの方向は不均一になり得る。
試料載置面21aにおいて、面内のエッチング速度は、試料載置面21aに載置されるウエハ上のプラズマの密度、プラズマを構成するイオンの加速電圧及びプラズマの温度の分布の影響を受ける。ウエハ上のプラズマの密度、プラズマを構成するイオンの加速電圧及びプラズマの温度の分布は、静電チャック装置1が備えられるプラズマエッチング装置の種類により異なる。
図1では、静電チャック装置1が備えられるプラズマエッチング装置が、単位体積当たりのプラズマ励起されたエッチングガスの内周部分の密度が外周部分の密度に比べて小さなプラズマエッチング装置である場合について説明する。
この場合、試料載置面21aにおいて、内周部分の方が外周部分よりもエッチング速度は遅くなる。したがって、試料載置面21aにおいて、接着面21cと対向する部分の方が、接着面21dと対向する部分よりもエッチング速度は遅くなる。
【0049】
静電チャック部2においては、試料載置面21aと接着面21dとの間の厚さが、試料載置面21aと接着面21cとの間の厚さよりも厚くなっている。従って、試料載置面21aと接着面21dとの間の静電容量は、試料載置面21aと接着面21cとの間の静電容量よりも小さくなり、試料載置面21aにおいて接着面21cと対向する部分の上方のシース電圧が上がる。
静電チャック部2では、試料載置面21aにおいて接着面21cと対向するプラズマ励起されたエッチングガスの密度が低い部分のシース電圧を上げることにより、試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0050】
試料載置面21aと接着面21cとの間の厚さ、試料載置面21aと接着面21dとの間の厚さ及び構造物設置面21bと接着面21dとの間の厚さは、一例として0.7mm以上かつ5.0mm以下に形成されている。
例えば、静電チャック部2の厚さが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部2の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の高周波透過性は低下し、シース電圧も低下する。また、静電チャック部2の熱伝導率が低下すると共に、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、試料載置面21aに載置される板状試料の冷却性能や熱応答性が劣化する。ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記した範囲に限るものではない。
【0051】
ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値が上記下限値よりも低いとウエハ静電吸着用電極23内をうず電流が発生して、同電位となり得る。
試料載置面21a上のシース電圧を調整することにより静電チャック部2の試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させても、ウエハ静電吸着用電極23を流れるうず電流のために試料載置面21a上のシース電圧が均一化され、静電チャック部2の厚さを変えた効果が十分得られなくなる場合がある。
静電チャック装置1は、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値を上記下限値よりも高くすることにより、ウエハ静電吸着用電極23内をうず電流の発生を抑止することができる。一方、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値上記上限値よりも低くすることにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0052】
ウエハ静電吸着用電極23の厚さは0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。ウエハ静電吸着用電極23の厚さは10μmよりも厚く30μmよりも薄いことが好ましい。このような厚さのウエハ静電吸着用電極23は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
ウエハ静電吸着用電極23の厚さが0.5μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。ウエハ静電吸着用電極23の厚さが50μmを越えると、ウエハ静電吸着用電極23と載置板22との間の熱膨張率差、及びウエハ静電吸着用電極23と支持板24との間の熱膨張率差に起因し、ウエハ静電吸着用電極23と載置板22との接合界面、及びウエハ静電吸着用電極23と支持板24との接合界面に剥離もしくはクラックが入り易くなる。
【0053】
FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28は、静電チャック部2の内部において、構造物設置面21bと冷却ベース部4との間に設けられる。
FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28は、
図2に示すようにリング状の電極である。FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28は、構造物設置面21bと接着面21dとの間に設けられる。リング状の電極であるFR静電吸着用第2電極28の直径は、リング状の電極であるFR静電吸着用第1電極26の直径よりも大きい。
【0054】
FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28の面抵抗値は、1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。
FR静電吸着用第1電極26の厚さ及びFR静電吸着用第2電極28の厚さは、0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。FR静電吸着用第1電極26の厚さ及びFR静電吸着用第2電極28の厚さは、10μmよりも厚く30μmよりも薄いことが好ましい。
【0055】
FR静電吸着用第1電極26は、
図2に示すようにリングの円周の一部分において、FR静電吸着用第1電極ピン27により支持される。FR静電吸着用第1電極26は、FR静電吸着用第1電極ピン27を介して、後述する取出電極端子43と接続されている。FR静電吸着用第2電極28は、リングの円周の一部分において、FR静電吸着用第2電極ピン29により支持される。FR静電吸着用第2電極28は、FR静電吸着用第2電極ピン29を介して、後述する取出電極端子45と接続されている。
【0056】
(絶縁接着層)
絶縁接着層3は、冷却ベース部4を静電チャック部2の下面、つまり接着面21c及び接着面21dに貼り付ける。絶縁接着層3は、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂等の有機接着剤により形成されることが好ましい。これらの有機接着剤は、接着硬化後に耐熱性及び絶縁性を有する。絶縁接着層3は、有機接着剤の中でも、特にシリコーン接着剤により形成されることが好ましい。シリコーン接着剤は、ガラス転移温度が低く、耐熱温度が高く、かつゴム弾性を有している。このシリコーン接着剤には、絶縁性のセラミック粉末(酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等)が熱導電性フイラとして添加されることが好ましい。
また、硬化前の接着剤は、ジエル状、もしくは柔軟性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂により形成されることが好ましい。
絶縁接着層3は、一例として厚さ50〜300μm程度に形成される。絶縁接着層3は、厚さ100〜200μm程度に形成されることがより好ましい。
絶縁接着層3は、導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33を有する。絶縁接着層3は、導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33の周囲を覆って形成される。
【0057】
導電性接着層31は、ウエハ静電吸着用電極ピン25を取出電極端子41に貼り付ける。導電性接着層32は、FR静電吸着用第1電極ピン27を取出電極端子43に貼り付ける。導電性接着層33は、FR静電吸着用第2電極ピン29を取出電極端子45に貼り付ける。
導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33は、柔軟性と耐電性を有するシリコーン系の導電性接着剤により形成されることが好ましい。ここでシリコーン系の導電性接着剤とは、シリコーン接着剤に金属、カーボン等の導電性材料が添加された接着剤である。また、導電性材料の形状としては、針状の材料が好ましい。針状の材料は、球状の材料と比較して少量が添加されるだけで導電性が確保できる。
【0058】
(冷却ベース部)
冷却ベース部4は厚さのある円板状であり、静電チャック部2を所望の温度に調整するように構成されている。冷却ベース部4としては、例えば、その内部に水を循環させる流路が形成された水冷ベース等が好ましい。
【0059】
冷却ベース部4を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。
冷却ベース部4の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0060】
冷却ベース部4は、取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45を有する。冷却ベース部4は、取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45の周囲を覆って形成される。取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45は、絶縁性を有する絶縁碍子42、絶縁碍子44及び絶縁碍子46により各々覆われている。
取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45は、冷却ベース部4をZ軸方向に貫通するように設けられている。
【0061】
取出電極端子41は棒状であり、ウエハ静電吸着用電極23に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子41は、導電性接着層31を介して、ウエハ静電吸着用電極ピン25に接続されている。取出電極端子41は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C4に接続されている。
取出電極端子43は棒状であり、FR静電吸着用第1電極26に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子43は、導電性接着層32を介して、FR静電吸着用第1電極ピン27に接続されている。取出電極端子43は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C6に接続されている。
取出電極端子45は棒状であり、FR静電吸着用第2電極28に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子45は、導電性接着層33を介してFR静電吸着用第2電極ピン29に接続されている。取出電極端子45は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C8に接続されている。
可変型直流電源C4はアースC5により接地されている。可変型直流電源C6はアースC7により接地されている。可変型直流電源C8はアースC9により接地されている。
【0062】
取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45は、絶縁碍子42、絶縁碍子44及び絶縁碍子46により、金属製の冷却ベース部4に対し各々絶縁されている。
取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45の材料としては、耐熱性に優れた非磁性の導電性材料であれば制限されないが、熱膨張係数がウエハ静電吸着用電極23及び支持板24の熱膨張係数に近似したものが好ましく、例えば、チタン(Ti)などの金属材料からなる。
【0063】
冷却ベース部4は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC1を介して高周波電源C2に接続される。高周波電源C2は、冷却ベース部4にバイアス電圧用のRF(Radio Frequency)電流を印加する。高周波電源C2は、アースC3により接地されている。
【0064】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1は、静電チャック部2と、冷却ベース部4と、接着層(絶縁接着層3)とを備える。
静電チャック部2では、試料を載置する試料載置面21aを有するとともに静電吸着用の第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)を有する。静電チャック部2は、接着層(絶縁接着層3)の側に凹凸を有する。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。
冷却ベース部4は、静電チャック部2に対し試料載置面21aとは反対側に載置され静電チャック部2を冷却する。
接着層(絶縁接着層3)は、静電チャック部2と冷却ベース部4とを接着する。
【0065】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、エッチング速度が遅い部分の静電チャック部2の厚さを薄くし、シース電圧を上げることができるため、静電チャック部2の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度が不均一になってしまうことである。
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記下限値よりも高いことにより、ウエハ静電吸着用電極23内をうず電流の発生を抑止することができる。そのため、静電チャック部2の厚さを変えたことによる試料載置面21a上のシース電圧の調整の効果を弱めることなく、静電チャック部2の試料載置面上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。一方、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記上限値よりも低いことにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0066】
また、冷却ベース部4は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC1を介して高周波電源C2に接続される。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、冷却ベース部4に高周波のバイアス電圧用の高周波電流を印加することができる。このため本実施形態に係る静電チャック装置1では、静電チャック部2の試料載置面上のシース電圧を調整することができるため、静電チャック部2の試料載置面上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0067】
また、ウエハ静電吸着用電極23は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C4に接続される。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、可変型直流電源C4をRF電流から保護することができる。このため本実施形態に係る静電チャック装置1では、ウエハ静電吸着用電極23による試料の吸着を安定化することができるため、ウエハ面内において温度が均一となり、ウエハ温度が均一でないことに起因してエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減することができる。
また、試料載置面21aとウエハとの間にHeガスを充てんすることにより、試料載置面21aとウエハとの間の熱伝達率を向上させることができるとともに、Heガスの圧力を調整し、Heガスの熱伝導率を変化させることにより、ウエハの温度も調整が可能となる。
【0068】
また、静電チャック部2は、試料載置面21aの周囲であって試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に、試料載置面21aの周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面21bを有する。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、フォーカスリングを載置することがきるため、静電チャック部2の試料載置面上のエッチング速度が中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0069】
また、構造物設置面21bと冷却ベース部4との間に、静電吸着用の第3の電極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)を有する。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、フォーカスリングを吸着することができる。そのため、本実施形態に係る静電チャック装置1では、フォーカスリングと構造物設置面21bとの熱伝達率が円周方向に均一となり、フォーカスリングの温度を円周方向に均一にすることができる。
このため本実施形態に係る静電チャック装置1では、静電チャック部2の試料載置面上のエッチング速度が中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができると共に、円周方向に不均一になってしまうことも軽減することができる。
また、フォーカスリングが静電吸着力により固定されていることにより、構造物設置面21bとフォーカスリングとの間のHeガスを充てんすることができ、構造物設置面21bとフォーカスリングとの間の熱伝達率を向上させることができるとともに、Heガスの圧力を調整することにより、Heガスの熱伝導率を変化させてフォーカスリングの温度を調整することもできる。
【0070】
また、第3の電極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第3の電極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。
本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)の面抵抗値を上記下限値よりも高くすることにより、試料載置面21aだけでなく構造物設置面21bを含めた加速電圧の調整機能を維持できる。一方、第3の電極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)の面抵抗値を上記上限値よりも低くすることにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0071】
本実施形態においては、静電チャック装置1が備えられるプラズマエッチング装置が、単位体積当たりのプラズマ励起されたエッチングガスの内周部分の密度の方が外周部分の密度に比べ小さいプラズマエッチング装置である場合について説明したが、本実施形態に係る静電チャック装置は、単位体積当たりの励起エッチングガスの密度が、内周部分の方が外周部分に比べ大きくなるプラズマエッチング装置に備えられてもよい。
図3を参照して、単位体積当たりの励起エッチングガスの密度が、内周部分の方が外周部分に比べ大きくなるプラズマエッチング装置に静電チャック装置が備えられる場合について説明する。
【0072】
(第1の実施形態、第1の変形例)
図3は、本実施形態に係る静電チャック装置1の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置101は、静電チャック部112と、絶縁接着層113と、冷却ベース部114とを備える。
静電チャック装置101(
図3)と静電チャック装置1(
図1)とを比較すると、静電チャック部112が有する支持板24の凹凸の向きが異なる。支持板24は、絶縁接着層113と接する面である下面に凸面を有する。ここで、他の構成要素が持つ機能は静電チャック装置1(
図1)と同じである。静電チャック装置1(
図1)と同じ機能の説明は省略し静電チャック装置101(
図3)と異なる部分を中心に説明する。
【0073】
支持板24の下面は、接着面21f及び接着面21dからなる。接着面21fは、円板状の支持板24の内周部分に位置する円形の平面である。接着面21fは、支持板24の下面において接着面21dに対して出っ張っている。静電チャック部112を上方からみた場合に、接着面21fの円の中心と試料載置面21aの円の中心とは一致しており、接着面21fの直径は試料載置面21aの直径よりも小さい。つまり、静電チャック部2を上方からみた場合に、接着面21fは試料載置面21aよりも内周部分に位置する。
接着面21fは、試料載置面21aと対向している。試料載置面21aと接着面21fとの間の厚さは、試料載置面21aと接着面21dとの間の厚さより厚い。
【0074】
静電チャック部112においては、試料載置面21aと接着面21fとの間の厚さが、試料載置面21aと接着面21dとの間の厚さよりも厚くなっている。従って、試料載置面21aと接着面21fとの間の静電容量は、試料載置面21aと接着面21dとの間の静電容量よりも小さくなり、試料載置面21aにおいて接着面21fと対向する試料載置面21aのシース電圧が下がる。
静電チャック部112では、試料載置面21aにおいて接着面21fと対向する部分のプラズマ励起されたエッチングガスの密度が高い部分のシース電圧を下げることにより、試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0075】
本実施形態においては、ウエハ静電吸着用電極23が単極であり、FR静電吸着用電極が双極(FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28)である場合について説明をしたが、静電吸着用の電極の組み合わせはこれに限らない。
図4を参照して静電吸着用の電極の組み合わせについて説明する。
【0076】
図4は、本実施形態に係る静電吸着用の電極の組み合わせの一例を示す図である。
図4の表において、○の記号は、この○の記号と同じ行に示す電極が、静電チャック装置に備えられていることを示す。×の記号は、この○の記号と同じ行に示す電極が、静電チャック装置に備えられていないことを示す。
例えば、組合せ1は、静電チャック装置1が単極のウエハ静電吸着用電極を備え、FR静電吸着用電極は備えられていない構成を示す。組合せ2は、静電チャック装置1が単極のウエハ静電吸着用電極と、単極のFR静電吸着用電極とを備える構成を示す。
【0077】
ウエハ静電吸着用電極は、双極の電極であってもよい。上述したように、ウエハ静電吸着用電極が単極の場合は、ウエハ静電吸着用電極の抵抗値を所定の値より高くする必要がある。ウエハ静電吸着用電極が双極の電極である場合、例えば、2つのウエハ静電吸着用電極を同心円状に設置する。ウエハ静電吸着用電極が双極の場合は、少なくとも一方のウエハ静電吸着用電極の抵抗値が所定の値より高ければ、他方のウエハ静電吸着用電極の抵抗値は所定の値より高くなくてもよい。
【0078】
FR静電吸着用電極は、ウエハ静電吸着用電極が単極であるか双極であるかに拘わらず、単極であっても双極であってもよい。FR静電吸着用電極が単極の場合は、FR静電吸着用電極の抵抗値を所定の値より高くする必要がある。FR静電吸着用電極が双極の場合は、少なくとも一方のFR静電吸着用電極の抵抗値が所定の値より高ければ、他方のFR静電吸着用電極の抵抗値は所定の値より高くなくてもよい。
また、FR静電吸着用電極は備えられていなくてもよい。
【0079】
(第1の実施形態、第2の変形例)
ここで
図5を参照し、ウエハ静電吸着用電極が双極でありFR静電吸着用電極が単極である場合(
図4における組合せ5の場合)について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態の静電チャック装置の第2の変形例を示す断面図である。
図5に示す静電チャック装置102は、ウエハ静電吸着用電極23a、ウエハ静電吸着用電極23b、及びFR静電吸着用電極26を備える。
ウエハ静電吸着用電極23aは、静電チャック部122の内部において、試料載置面21aと接着面21cとの間に設けられる。ウエハ静電吸着用電極23aは、円板状の電極である。
ウエハ静電吸着用電極23bは、静電チャック部122の内部において、試料載置面21aと接着面21dとの間に設けられる。ウエハ静電吸着用電極23bは、リング状の電極である。
FR静電吸着用電極26は、静電チャック部122の内部において、構造物設置面21bと接着面21dとの間に設けられる。FR静電吸着用電極26は、リング状の電極である。
【0080】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、静電チャック装置が、絶縁接着層の側に凹凸を有する静電チャック部2を備え、静電チャック部の静電容量を調整する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が、静電チャック部と冷却ベース部との間に設けられた誘電体層を備え、静電チャック部の静電容量を調整する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置201と示す。
【0081】
図6は、本実施形態に係る静電チャック装置201の一例を示す断面図である。静電チャック装置201は、静電チャック部212と、絶縁接着層213と、冷却ベース部214と、誘電体層51とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置201(
図6)と第1の実施形態に係る静電チャック装置1(
図1)とを比較すると、静電チャック部212、絶縁接着層213及び冷却ベース部214の形状と、誘電体層51の有無が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0082】
静電チャック部212の支持板224の下面である接着面21eは平面である。冷却ベース部214には、上面の外周部分に凹部が設けられる。誘電体層51は、冷却ベース部214に設けられた凹部に設けられる。つまり、誘電体層51は、静電チャック部212と冷却ベース部214との間に設けられる。誘電体層51は、リング状の形状である。誘電体層51は、リング状の形状の一部において絶縁碍子44及び絶縁碍子46がZ軸方向に貫通する部分を有する。
【0083】
誘電体層51は、静電チャック部212の誘電率より低い材料が用いられる。誘電率を低くすることにより、静電チャック装置201は、誘電体層51の厚みを薄くすることができるため、冷却ベース部214の冷却性能の低下を抑制することができる。
仮に誘電体層が厚い場合、誘電体層が厚くない場合に比べ、誘電体層が静電チャック部212と冷却ベース部214との間に設けられることにより、冷却ベース部214の冷却性能が低下する場合がある。ここで、誘電体層の静電容量は、誘電体の誘電率に比例し誘電体層の厚みに反比例するため、誘電体層は、誘電体の誘電率を小さくすれば静電容量を変えることなく厚みを薄くすることができる。本実施形態においては誘電体層51における誘電体の誘電率は、静電チャック部212の誘電率よりも小さいため、静電容量を変えることなく厚みを薄くすることができる。
誘電体層は、アルミナ材料が溶射等により冷却ベース部214に吹き付けられた被膜として直接成形されてもよい。誘電体層は、セラミックの焼結体が接着剤等により冷却ベース部214に貼り付けられることにより形成されてもよい。
【0084】
絶縁接着層213は、冷却ベース部214と、誘電体層51とを静電チャック部212の下面である接着面21eに貼り付けられる。
【0085】
静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに静電チャック部212と誘電体層51とが重なる部分は、静電チャック部212と誘電体層51とが重ならない部分に比べ静電容量が小さくなる。このため、試料載置面21aにおいて静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに誘電体層51と重なる部分の上方のシース電圧が下がる。
静電チャック部212では、試料載置面21aにおいて静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに誘電体層51と重なる部分の、プラズマ励起されたエッチングガスの密度が高くエッチング速度が速い試料載置面21a部分のシース電圧を低下させることにより、試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0086】
ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、1.0Ω/□よりも大きく1.0×10
10Ω/□よりも低い。ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値が上記下限値よりも低いとウエハ静電吸着用電極23内をうず電流が発生して、同電位となり得る。ウエハ静電吸着用電極23を流れるうず電流のために、静電チャック部2の試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させるために設置された誘電体層51の効果が十分得られなくなる場合がある。
静電チャック装置201では、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値として上記下限値よりも高い値が設定されていることにより、ウエハ静電吸着用電極23内をうず電流の発生を抑止することができる。一方、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値を上記上限値よりも低くすることにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0087】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置201は、静電チャック部212と、冷却ベース部214と、接着層(絶縁接着層213)と、誘電体層51とを備える。
誘電体層51は、静電チャック部212と冷却ベース部214との間に設けられる。
【0088】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、エッチング速度が速い部分の静電チャック部2に誘電体層51を備えることにより、シース電圧を下げることができるため、静電チャック部212の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度が不均一になってしまうことである。
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記下限値よりも高いことにより、ウエハ静電吸着用電極23内をうず電流の発生を抑止することができる。そのため、静電チャック部212の試料載置面上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。一方、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記上限値よりも低いことにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0089】
また、誘電体層51における誘電体の誘電率は、静電チャック部212の誘電率よりも小さい。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、誘電体層51の厚みを薄くすることができるため、静電チャック部212から冷却ベース部214の熱伝達の低下による冷却性能の低下を抑制することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置201では、試料載置面21aの冷却性能の低下を抑制しつつ、静電チャック部212の試料載置面上のエッチングがエッチングガスの密度が不均一であること及び温度が不均一であることによりウエハ面内のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
また、誘電体層51の熱伝導率を、静電チャック部212の熱伝導率より大きくすることにより冷却性能の低下をより抑制することができる。
例えば、静電チャック部212の材質が、Al203材もしくはAl203−SiC材料の場合、誘電体層51の材質としては、AlN材が好適である。
【0090】
本実施形態においては、静電チャック装置1が備えられるプラズマエッチング装置が、単位体積当たりのプラズマ励起されたエッチングガスの内周部分の密度が、外周部分の密度に比べて小さいプラズマエッチング装置である場合について説明したが、本実施形態に係る静電チャック装置は、単位体積当たりのプラズマ励起されたエッチングガスの密度が、内周部分の方が外周部分に比べ大きくなるプラズマエッチング装置に備えられてもよい。
図7を参照して、単位体積当たりの励起エッチングガスの密度が、内周部分の方が外周部分に比べ大きくなるプラズマエッチング装置に静電チャック装置が備えられる場合について説明する。
【0091】
(第2の実施形態、第1の変形例)
図7は、本実施形態に係る静電チャック装置201の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置202は、静電チャック部212と、絶縁接着層213と、冷却ベース部215とを備える。
静電チャック装置202(
図7)と静電チャック装置201(
図6)とを比較すると、誘電体層52が備えられる位置が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は静電チャック装置201(
図6)と同じである。静電チャック装置201(
図6)と同じ機能の説明は省略し静電チャック装置201(
図6)と異なる部分を中心に説明する。
【0092】
冷却ベース部215には、上面の内周部分に凹部が設けられる。誘電体層52は、冷却ベース部215に設けられた凹部に設けられる。つまり、誘電体層52は、静電チャック部212と冷却ベース部215との間に設けられる。誘電体層52は、リング状の形状である。誘電体層52は、リング状の形状の一部において絶縁碍子42がZ軸方向に貫通する部分を有する。
【0093】
静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに静電チャック部212と誘電体層52とが重なる部分は、静電チャック部212と誘電体層52とが重ならない部分に比べ静電容量が小さくなる。このため、試料載置面21aにおいて静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに誘電体層52と重なる部分の試料載置面21aのシース電圧が下がる。静電チャック部212では、試料載置面21aにおいて静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに誘電体層52と重なる部分のエッチング速度が速い場合、誘電体層52を設置することにより試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0094】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、静電チャック装置が、絶縁接着層の側に凹凸を有する静電チャック部2を備え、静電チャック部の静電容量を調整する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が、ウエハ静電吸着用電極と冷却ベース部との間に、試料搭載面調整電極を有し、高周波発生用電源の加速電圧を調整する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置301と示す。
【0095】
図8は、本実施形態に係る静電チャック装置301の一例を示す断面図である。静電チャック装置301は、静電チャック部312と、絶縁接着層313と、冷却ベース部314とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置301(
図8)と第1の実施形態に係る静電チャック装置1(
図1)とを比較すると、静電チャック部312、絶縁接着層313及び冷却ベース部314の形状と、試料搭載面調整電極61aの有無が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第3の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0096】
静電チャック部312は、載置板22と、ウエハ静電吸着用電極23と、支持板24と、FR静電吸着用第1電極26と、FR静電吸着用第2電極28とに加え、試料搭載面調整電極61aを有する。
試料搭載面調整電極61aは、静電チャック部312の載置板22の円板の外周部において、ウエハ静電吸着用電極23と冷却ベース部314との間に設けられる。つまり、静電チャック装置301は、ウエハ静電吸着用電極23と冷却ベース部314との間に、試料搭載面調整電極61aを有している。試料搭載面調整電極61aは、リング状の電極である。
試料搭載面調整電極61aの面抵抗値は、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値よりも低い。
試料搭載面調整電極61aは、面抵抗値がウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値よりも低くすることにより、試料搭載面調整電極61aに印加された電圧が電極内において不均一であること及び発熱、特にRF電流密度が高くなる導電性接合層61c近傍の発熱を軽減することができる。
【0097】
絶縁接着層313は、導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33に加えて、導電性接合層61cを有する。絶縁接着層313は、導電性接合層61cの周囲を覆って形成される。導電性の接合層(接合部)である導電性接合層61cは、例えばろう材により形成される。導電性接合層61cにはRF電流が流れるため、導電性接合層61cの抵抗値は、例えば1mΩより低くし、導電性接合層61cの発熱を抑えることが好ましい。
【0098】
冷却ベース部314は、取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45に加えて、取出電極端子47を有する。冷却ベース部314は、取出電極端子47の周囲を覆って形成される。取出電極端子47は、絶縁碍子48により覆われている。取出電極端子47は、冷却ベース部314をZ軸方向に貫通するように設けられている。取出電極端子47は、絶縁碍子48により、金属製の冷却ベース部314に対し絶縁されている。
【0099】
取出電極端子47は棒状であり、試料搭載面調整電極61aに高周波電圧を印加するように構成されている。取出電極端子47は、導電性接合層61cを介して、試料搭載面調整電極用電極ピン61bに接続されている。
取出電極端子47は、スイッチSW1の制御端子に接続されている。スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、取出電極端子47は、LC共振回路LC1に接続される。取出電極端子47は、LC共振回路LC1を通じてアースC12により接地される。LC共振回路LC1は、可変コンダクタC10と、コンデンサC11とを備える。可変コンダクタC10と、コンデンサC11とは直列に接続されている。スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、取出電極端子47は可変コンダクタC10に接続される。
スイッチSW1が第2端子SW12に接続された場合、取出電極端子47は、マッチングボックスC13を通じて、高周波電源C14に接続される。取出電極端子47は、マッチングボックスC13及び高周波電源C14を通じてアースC15により接地されている。
不図示の制御回路は、スイッチSW1が第1端子SW11に接続されるか、第2端子SW12に接続されるかを切り替える。
【0100】
スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC1のL成分を調整することにより試料搭載面調整電極61aの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部314に流れるRF電流は、可変コンダクタC10及びコンデンサC11を介して流れるため、静電チャック装置301は、冷却ベース部314を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極61aと重なる部分の試料載置面21aの部分のシース電圧を、試料搭載面調整電極61aと重ならない部分シース電圧に比較して相対的に下げることができる。
冷却ベース部314を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極61aと重なる部分の試料載置面21aのシース電圧が下がるため、試料載置面21aにおいて静電チャック部312を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極61aと重なる部分のシース電圧が下がり、試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0101】
スイッチSW1が第2端子SW12に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C14の電圧の大きさ及び高周波電源C2との位相を可変に制御する。
静電チャック装置301では、制御回路が、高周波電源C14の電圧の大きさ、高周波電源C14の電圧の位相、高周波電源C2の電圧の大きさ及び高周波電源C2の電圧の位相を可変に制御することにより、試料載置面21a及び構造物設置面21bのシース電圧の大きさ及び方向を制御することができる。
静電チャック装置301では、試料載置面21aにおいて、試料搭載面調整電極61aと重なる部分のシース電圧を、試料搭載面調整電極と重ならない部分のシース電圧の大きさよりも大きくすることもでき、試料搭載面調整電極61aと重ならない部分のシース電圧の大きさよりも小さくすることもできる。高周波電源C2と高周波電源C14とは、共通の電源であってもよいし、独立な電源であってもよい。
【0102】
マッチングボックスC13は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC13は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C14と、出力側の試料搭載面調整電極61aとのインピーダンスを整合させる。
本実施形態においては、高周波電源C14及びLC共振回路LC1が静電チャック装置301に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置301はLC共振回路LC1を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子47は、スイッチSW1を介さずにマッチングボックスC13に接続される。
【0103】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置301は、静電チャック部312と、冷却ベース部314と、接着層(絶縁接着層313)と、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)とを備える。
静電チャック装置301は、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)と冷却ベース部314との間に、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)を有する。
【0104】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置301では、シース電圧を下げることができるため、静電チャック部312の試料載置面21a上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度及び方向が不均一になってしまうことである。
また、本実施形態に係る静電チャック装置301では、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記下限値よりも高いことにより、ウエハ静電吸着用電極23内をうず電流の発生を抑止することができ、試料搭載面調整電極61aの効果を軽減することなく、静電チャック部312の試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。一方、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が上記上限値よりも低いことにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0105】
また、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)は、可変のコンダクタを介して接地される。
この構成により、冷却ベース部314を流れるRF電流を、可変コンダクタC10及びコンデンサC11を介して流すことができるため、冷却ベース部314のRF加速電圧を調整することができる。このため本実施形態に係る静電チャック装置301では、静電チャック部312の試料載置面21a上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0106】
また、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)の面抵抗値は、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値よりも低い。
この構成により、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)内の電位が不均一になってしまうことや、電極部の発熱を抑制することができる、このため本実施形態に係る静電チャック装置301では、静電チャック部312の試料載置面21a上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0107】
また、冷却ベース部314は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC1を介して高周波電源C2に接続され、冷却ベース部314が接続される高周波電源C2の電圧の大きさ及び高周波電源C2の電圧の位相と、第2の電極(試料搭載面調整電極61a)が接続される高周波電源C14の電圧の大きさ及び高周波電源C14の電圧の位相とが調整される。
この構成により、静電チャック部312の試料載置面21a上の面内のシース電圧の状態を上下に調整することができる。ここでシース電圧の状態を上下に調整するとは、シース電圧を上げたり下げたりして調整することである。
【0108】
(第3の実施形態、第1の変形例)
図9は、本実施形態に係る静電チャック装置301の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置302は、静電チャック部322と、絶縁接着層323と、冷却ベース部324とを備える。
静電チャック装置302(
図9)と静電チャック装置301(
図8)とを比較すると、静電チャック部322において試料搭載面調整電極62aが備えられる位置と、ウエハ静電吸着用電極ピン25の位置とが異なる。ウエハ静電吸着用電極ピン25は、試料搭載面調整電極62aが静電チャック部322の内周部分に備えられることにより、静電チャック部322の外周部分に設置されている。ここで、他の構成要素が持つ機能は静電チャック装置301(
図8)と同じである。静電チャック装置301(
図8)と同じ機能の説明は省略し静電チャック装置301(
図8)と異なる部分を中心に説明する。
【0109】
試料搭載面調整電極62aは、静電チャック部322の載置板22の円板の内周部において、ウエハ静電吸着用電極23と冷却ベース部324との間に備えられる。つまり、試料搭載面調整電極62aは、静電チャック部322の内部に備えられる。試料搭載面調整電極62aは、円板状の電極である。
試料搭載面調整電極62aは、静電チャック部322の内部に備えられるため、静電チャック部322の一般的な構造を保ったまま試料搭載面調整電極62aを設置することができる。
【0110】
スイッチSW1が第2端子SW12に接続された場合、静電チャック装置302は、冷却ベース部324の電圧を下げることができる。試料載置面21aにおいて静電チャック部322を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極62aと重なる部分の試料載置面21aのシース電圧が相対的に下がり、試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0111】
また、第2の電極(試料搭載面調整電極62a)は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC13を介して高周波電源C14に接続される。
この構成により、高周波電源C2と高周波電源C14との位相と電圧を調整することで、第2の電極(試料搭載面調整電極62a)と重なる部分の試料載置面21aのシース電圧を調整することができる。
【0112】
第2の電極(試料搭載面調整電極62a)は、静電チャック部322の内部に備えられる。
この構成により、静電チャック部322の一般的な構造を保ったまま第2の電極(試料搭載面調整電極62a)を設置することができる。
【0113】
(第3の実施形態、第2の変形例)
図10は、本実施形態に係る静電チャック装置301の第2の変形例を示す断面図である。静電チャック装置303は、静電チャック部332と、絶縁接着層333と、冷却ベース部334とを備える。
静電チャック装置303(
図10)と静電チャック装置302(
図9)とを比較すると、試料搭載面調整電極63aが備えられる位置が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は静電チャック装置302(
図9)と同じである。静電チャック装置302(
図9)と同じ機能の説明は省略し静電チャック装置302(
図9)と異なる部分を中心に説明する。
【0114】
試料搭載面調整電極63aは、静電チャック部332と冷却ベース部334との間に備えられる。試料搭載面調整電極63aは、静電チャック部332を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部332の円板の内周部に備えられる。試料搭載面調整電極63aは、円板状の電極である。
【0115】
試料搭載面調整電極63aは、静電チャック部332の下面である接着面21eに接着される。試料搭載面調整電極63aは、例えば金属箔の電極である。試料搭載面調整電極63aと冷却ベース部334との間には、絶縁接着層333に加えポリイミドシート(不図示)を挟むことにより、試料搭載面調整電極63aは冷却ベース部334から絶縁される。
【0116】
試料搭載面調整電極63aを静電チャック部332の内部に備える場合に比べ、試料搭載面調整電極63aを静電チャック部332の下面に備える場合の方が、試料搭載面調整電極63aの設置は容易である。また、試料搭載面調整電極が備えられることにより、静電チャック部322の厚さは厚くなる場合があるが、試料搭載面調整電極63aを静電チャック部332の内部に備える場合に比べ、試料搭載面調整電極63aを静電チャック部332の下面に備える場合の方が、静電チャック部332の厚さを薄くすることができる。
【0117】
第2の電極(試料搭載面調整電極63a)は、前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に備えられる。
この構成により、第2の電極(試料搭載面調整電極63a)を容易に設置することができ、また、静電チャック部332の厚さを薄くすることができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置303では、静電チャック部332の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させる場合に、試料載置面上のシース電圧を調整する効果をもつ第2の電極(試料搭載面調整電極63a)を容易に設置することができる。
【0118】
本実施形態においては、試料搭載面調整電極63aが単数備えられる場合を一例として説明したが、試料搭載面調整電極63aは複数備えられてもよい。試料搭載面調整電極63aは複数備えられる場合については、
図14などを参照して後述する。
【0119】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。
上記第3の実施形態では、静電チャック装置が、ウエハ静電吸着用電極と冷却ベース部との間に、試料搭載面調整電極を有し、高周波発生用電源の加速電圧を調整する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が、構造物設置面と冷却ベース部との間に、FR搭載面調整電極を有し、高周波発生用電源の加速電圧を調整する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置401と示す。
【0120】
図11は、本実施形態に係る静電チャック装置401の一例を示す断面図である。静電チャック装置401は、静電チャック部412と、絶縁接着層413と、冷却ベース部414とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置401(
図11)と第3の実施形態に係る静電チャック装置301(
図8)とを比較すると、静電チャック部412、絶縁接着層413及び冷却ベース部414の形状と、試料搭載面調整電極61aの代わりにFR搭載面調整電極71aが備えられている点が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第4の実施形態では、第3の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0121】
静電チャック部412は、載置板22と、ウエハ静電吸着用電極23と、支持板24と、FR静電吸着用第1電極26と、FR静電吸着用第2電極28とに加え、FR搭載面調整電極71aを有する。
FR搭載面調整電極71aは、静電チャック部412の構造物設置面21bにおいて、静電チャック部412の内部に設けられる。FR搭載面調整電極71aは、FR静電吸着用第1電極26と冷却ベース部414との間に設けられる。つまり、静電チャック装置401は、構造物設置面21bと冷却ベース部414との間に、FR搭載面調整電極71aを有している。また、FR搭載面調整電極71aは、静電チャック部412の内部に備えられる。
FR搭載面調整電極71aはリング状の電極である。FR搭載面調整電極71aは、FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28と絶縁接着層413との間に設けられる。FR搭載面調整電極71aは、FR静電吸着用第1電極26及びFR静電吸着用第2電極28と電気的に絶縁されている。
【0122】
絶縁接着層413は、導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33に加えて、導電性接合層71cを有する。絶縁接着層413は、絶縁接着層413を上方から下に向かってみたときに構造物設置面21bと重なる部分においてFR搭載面調整電極71aの下部に導電性の接合層(接合部)である導電性接合層71cを有する。絶縁接着層413は、導電性接合層71cの周囲を覆って形成される。導電性接合層71cは、例えばろう材により形成される。
【0123】
冷却ベース部414は、取出電極端子41、取出電極端子43及び取出電極端子45に加えて、取出電極端子47を有する。冷却ベース部414は、取出電極端子47の周囲を覆って形成される。取出電極端子47は、絶縁碍子48により覆われている。取出電極端子47は、冷却ベース部414をZ軸方向に貫通するように設けられている。取出電極端子47は、絶縁碍子48により、金属製の冷却ベース部414に対し絶縁されている。
【0124】
取出電極端子47は棒状であり、試料搭載面調整電極71aに高周波電圧を印加するように構成されている。取出電極端子47は、導電性接合層71cを介して、FR搭載面調整電極用電極ピン71bに接続されている。
取出電極端子47は、スイッチSW2の制御端子に接続されている。スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、取出電極端子47は、LC共振回路LC2に接続される。取出電極端子47は、LC共振回路LC2を通じてアースC18により接地されている。LC共振回路LC2は、可変コンダクタC16と、コンデンサC17とを備える。
可変コンダクタC16と、コンデンサC17とは直列に接続されている。スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、取出電極端子47は可変コンダクタC16に接続される。
スイッチSW2が第2端子SW22に接続された場合、取出電極端子47は、マッチングボックスC19を通じて、高周波電源C20に接続される。取出電極端子47は、マッチングボックスC19及び高周波電源C20を通じてアースC21により接地されている。
不図示の制御回路は、スイッチSW2が第1端子SW21に接続されるか、第2端子SW22に接続されるかを切り替える。
【0125】
マッチングボックスC19は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC19は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C20と、出力側のFR搭載面調整電極71aとのインピーダンスを整合させる。
【0126】
スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC2のL成分を調整することによりFR搭載面調整電極71aの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部414に流れるRF電流は、可変コンダクタC16及びコンデンサC17を介して流れるため、静電チャック装置401は、冷却ベース部314を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極71aと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧を下げることができる。
冷却ベース部414を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極71aと重なる部分のRF加速電圧が下がるため、構造物設置面21bにおいて静電チャック部412を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極71aと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧を下げることができる。
【0127】
スイッチSW2が第2端子SW22に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C20の電圧の大きさを可変に制御する。
静電チャック装置401は、制御回路に高周波電源C20の電圧の大きさ、高周波電源C2の電圧の位相及び高周波電源C2の電圧の大きさを及び位相を可変に制御させることにより、冷却ベース部414を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極71aと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧の大きさ及び方向を制御することができる。静電チャック装置401では、高周波電源C2とC20との電圧及び位相を調整することにより構造物設置面21bにかかるシース電圧を大きくすることもでき、小さくすることもできる。
高周波電源C2と高周波電源C20とは、共通の電源であってもよいし、独立な電源であってもよい。
本実施形態においては、高周波電源C20及びLC共振回路LC2が静電チャック装置401に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置401はLC共振回路LC2を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子47は、スイッチSW2を介さずにマッチングボックスC19に接続される。
【0128】
本実施形態においては、FR搭載面調整電極71aが静電チャック部412の内部に備えられる場合を一例として説明したが、FR搭載面調整電極71aが備えられる位置は静電チャック部412の内部に限られない。FR搭載面調整電極71aは、例えば、静電チャック部412の下面である接着面21eと、絶縁接着層413との間に備えられてもよい。つまり、FR搭載面調整電極71aは、静電チャック部412と冷却ベース部414との間に備えられてもよい。FR搭載面調整電極71aが静電チャック部412と冷却ベース部414との間に備えられる場合の具体例については、
図13を参照して後述する。
【0129】
(第4の実施形態、第1の変形例)
図12は、本実施形態に係る静電チャック装置401の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置402は、静電チャック部422と、絶縁接着層423と、冷却ベース部424とを備える。
本変形例に係る静電チャック装置402(
図12)と第4の実施形態に係る静電チャック装置401(
図11)とを比較すると、FR搭載面調整電極72aの設置の手法が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第4の実施形態と同じである。第4の実施形態と同じ機能の説明は省略し、本変形例では、第4の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0130】
静電チャック部422は、載置板22と、ウエハ静電吸着用電極23と、支持板24と、FR静電吸着用第1電極26と、FR静電吸着用第2電極28とに加え、FR搭載面調整電極72aを有する。
FR搭載面調整電極72aは、静電チャック部412の構造物設置面21bにおいて、静電チャック部422の内部に設けられる。FR搭載面調整電極72aは、試料載置面21aに平行な方向について、試料載置面21aと構造物設置面21bとを跨ぐ。FR搭載面調整電極72aは、リング状の電極である。FR搭載面調整電極72aは、ウエハ静電吸着用電極23及びFR静電吸着用第1電極26の一部と重なる部分をもつ。
【0131】
スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC2のL成分を調整することによりFR搭載面調整電極72aの電圧の大きさを可変に制御する。冷却ベース部424に流れるRF電流は、LC共振回路LC2を介して流れるため、静電チャック装置402は、冷却ベース部424を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧及び試料載置面21aのシース電圧を調整することができる。
【0132】
スイッチSW2が第2端子SW22に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C20の電圧の大きさを可変に制御する。
静電チャック装置402は、制御回路に高周波電源C20の電圧の大きさ、高周波電源C2の電圧の位相に対する高周波電源C20の電圧の位相、及び高周波電源C2の電圧の大きさを可変に制御させることにより、冷却ベース部424を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分のRF加速電圧を調整することができる。
静電チャック装置402では、冷却ベース部424を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧及び試料載置面21aのシース電圧の大きさを大きくすることもでき、小さくすることもできる。高周波電源C2と高周波電源C20とは、共通の電源であってもよいし、独立な電源であってもよい。
【0133】
静電チャック装置402は、冷却ベース部424を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分の構造物設置面21bのシース及び試料載置面21aのシース電圧を調整することができる。
【0134】
FR搭載面調整電極72aを備えない場合、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに試料載置面21aの外周部分において、静電チャック部422内の電場は、試料載置面21aに垂直な下向きの方向から構造物設置面21bの方へと傾く場合がある。
静電チャック装置402は、FR搭載面調整電極72aを備えることにより、静電チャック部422の試料載置面21a及び構造物設置面21bのシース電圧の傾いた電場の方向を、試料載置面21aに垂直な下向きの方向へと調整することができる。
【0135】
静電チャック装置402は、静電チャック部422内において試料載置面21aの外周部分の傾いた電場の方向を試料載置面21aに垂直な下向きの方向へと調整することができるため、構造物設置面21bにおいて静電チャック部412を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分の上方のシース電圧の大きさと方向を調整することができる。
【0136】
(第4の実施形態、第2の変形例)
図13は、本実施形態に係る静電チャック装置401の第2の変形例を示す断面図である。静電チャック装置403は、静電チャック部432と、絶縁接着層433と、冷却ベース部434とを備える。
本変形例に係る静電チャック装置403(
図13)と第4の実施形態に係る静電チャック装置401(
図11)とを比較すると、FR搭載面調整電極73aが静電チャック部432と冷却ベース部434との間に備えられる点が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第4の実施形態と同じである。第4の実施形態と同じ機能の説明は省略し、本変形例では、第4の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0137】
FR搭載面調整電極73aは、静電チャック部432の下面である接着面21eに接着される。FR搭載面調整電極73aは、例えば金属箔の電極である。FR搭載面調整電極73aと冷却ベース部434との間には、絶縁接着層433に加えポリイミドシート(不図示)を挟むことにより、FR搭載面調整電極73aは冷却ベース部434から絶縁される。
【0138】
FR搭載面調整電極73aを静電チャック部432の内部に備える場合に比べ、FR搭載面調整電極73aを静電チャック部432の下面に備える場合の方が、FR搭載面調整電極73aの設置は容易である。また、FR搭載面調整電極が備えられることにより、静電チャック部432の厚さは厚くなる場合があるが、FR搭載面調整電極73aを静電チャック部432の内部に備える場合に比べ、FR搭載面調整電極73aを静電チャック部432の下面に備える場合の方が、静電チャック部432の厚さを薄くすることができる。そのため、冷却ベース部434に印加された高周波電流が静電チャック部432を伝搬するときの透過性も改善される。
【0139】
本実施形態においては、FR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aが単数備えられる場合を一例として説明したが、FR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aは複数備えられてもよい。
図14は、第3の実施形態の試料搭載面調整電極及び本実施形態に係るFR搭載面調整電極の組み合わせの一例を示す表である。
図14の表において、○の記号は、この○の記号と同じ行に示す単数または複数の電極が、静電チャック装置に備えられることを示す。×の記号は、この○の記号と同じ行に示す単数または複数の電極が、静電チャック装置に備えられていないことを示す。
【0140】
ウエハ搭載部とは、静電チャック部を上方から下に向かってみたときに試料載置面21aと重なる部分に、試料搭載面調整電極が備えられる場合を示す。中間部とは、静電チャック部を上方から下に向かってみたときに試料載置面21a及び構造物設置面21bの両方と重なる部分に、FR搭載面調整電極が備えられる場合を示す。FR部とは、静電チャック部を上方から下に向かってみたときに構造物設置面21bと重なる部分に、FR搭載面調整電極が備えられる場合を示す。
試料搭載面調整電極、またはFR搭載面調整電極が備えられる位置は、静電チャック部の内部、または静電チャック部と冷却ベース部との間である。
【0141】
例えば、組合せ2は、静電チャック装置が、複数のFR搭載面調整電極を、静電チャック部を上方から下に向かってみたときに構造物設置面21bと重なる部分に、静電チャック部の内部、または静電チャック部と冷却ベース部との間に備える構成を示す。
【0142】
ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、試料搭載面調整電極及びFR搭載面調整電極の面抵抗値よりも高い。試料搭載面調整電極及びFR搭載面調整電極が備えられていない場合、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、所定の値より高くなくてもよい。
【0143】
FR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aが複数備えられる場合、静電チャック装置は、複数のFR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aに印加されるRF加速電圧及び周波数の位相を変化させることができる。静電チャック装置は、複数のFR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aに印加されるRF加速電圧及び周波数の位相を変化させることにより、静電チャック部412を上方から下に向かってみたときに複数のFR搭載面調整電極71aまたはFR搭載面調整電極72aと重なる部分の構造物設置面21b及び試料載置面21aのシース電圧の大きさと方向を調整することができる。
【0144】
(第3の実施形態、第3の変形例)
ここで
図15を参照し、静電チャック装置に試料搭載面調整電極が複数設けられる場合(
図14における組合せ12の場合)について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態の静電チャック装置の第3の変形例を示す断面図である。
図15に示す静電チャック装置304は、静電チャック部342、絶縁接着層343、及び冷却ベース部344を備える。
試料搭載面調整第1電極64a及び試料搭載面調整第2電極65aは、静電チャック部342と冷却ベース部344との間に備えられる。
試料搭載面調整第1電極64aは、静電チャック部342を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部342の試料載置面21aと接着面21eとが重なる部分の円板の内周部に備えられる。試料搭載面調整第1電極64aは、円板状の電極である。
試料搭載面調整第2電極65aは、静電チャック部342を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部342の試料載置面21aと接着面21eとが重なる部分の円板の外周部に備えられる。試料搭載面調整第2電極65aは、リング状の電極である。
【0145】
(第4の実施形態、第3の変形例)
ここで
図16を参照し、静電チャック装置にFR搭載面調整電極が複数設けられる場合(
図14における組合せ2の場合)について説明する。
図16は、本発明の第4の実施形態の静電チャック装置の第3の変形例を示す断面図である。
図16に示す静電チャック装置403は、静電チャック部422、絶縁接着層423、及び冷却ベース部424を備える。
FR搭載面調整第1電極74a及びFR搭載面調整第2電極75aは、静電チャック部422の構造物設置面21bにおいて、静電チャック部422の内部に設けられる。
FR搭載面調整第1電極74aは、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部422の構造物設置面21bと接着面21eとが重なるリング状の部分の内周部に備えられる。FR搭載面調整第1電極74aは、リング状の電極である。
FR搭載面調整第1電極74aは、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに、FR静電吸着用第1電極26と重なる部分を有する。FR搭載面調整第1電極74aは、リング状の形状の一部においてFR静電吸着用第1電極ピン27がZ軸方向に貫通する部分を有する。
FR搭載面調整第2電極75aは、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部422の構造物設置面21bと接着面21eとが重なるリング状の部分の外周部に備えられる。FFR搭載面調整第2電極75aは、リング状の電極である。
FR搭載面調整第2電極75aは、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに、FR静電吸着用第2電極28と重なる部分を有する。FR搭載面調整第2電極75aは、リング状の形状の一部においてFR静電吸着用第2電極ピン29がZ軸方向に貫通する部分を有する。
FR搭載面調整第1電極74aと、FR搭載面調整第2電極75aと、FR静電吸着用第1電極ピン27と、FR静電吸着用第2電極ピン29とは電気的に絶縁されている。
【0146】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置401は、静電チャック部412と、冷却ベース部414と、接着層(絶縁接着層413)と、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)とを備える。
静電チャック装置401は、構造物設置面と冷却ベース部414との間に、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)を有する。
第4の電極(FR搭載面調整電極71a)は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC19を介して高周波電源C20に接続される、または、可変のコンダクタ(可変コンダクタC16)を介して接地される。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置401では、冷却ベース部414を上方から下に向かってみたときに第4の電極(FR搭載面調整電極71a)と重なる部分のRF加速電圧を調整することができるため、構造物設置面21bにおいて静電チャック部412を上方から下に向かってみたときに第4の電極(FR搭載面調整電極71a)と重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧を調整することができる。
【0147】
また、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)は、静電チャック部412の内部、または、静電チャック部412と冷却ベース部414との間に備えられる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置401においては、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)が静電チャック部412の内部に備えられる場合、静電チャック部412の一般的な構造を保ったまま第4の電極(FR搭載面調整電極71a)を設置することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置401では、静電チャック部412の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させる場合に、静電チャック部412の一般的な構造を保ったまま第4の電極(FR搭載面調整電極71a)を設置することができる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置403においては、第4の電極(FR搭載面調整電極73a)が静電チャック部432と冷却ベース部434との間に備えられる場合、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)を容易に設置することができ、また、静電チャック部432の厚さを薄くすることができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置403では、静電チャック部432の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させる場合に、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)を容易に設置することができる。
【0148】
また、第4の電極(FR搭載面調整電極72a)は、試料載置面21aに平行な方向について、試料載置面21aと構造物設置面21bとを跨ぐ。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置402では、静電チャック部422内の電場の方向を調整することができるため、構造物設置面21bにおいて静電チャック部422を上方から下に向かってみたときにFR搭載面調整電極72aと重なる部分の上方のシース電圧の大きさと方向を調整することができる。
【0149】
また、第4の電極(FR搭載面調整電極71a)は、複数あってよい。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置403では、複数の第4の電極(FR搭載面調整電極74a及び75a)に印加されるRF加速電圧及び周波数の位相を変化させることができるため、静電チャック部422を上方から下に向かってみたときに複数の第4の電極(FR搭載面調整電極74a及び75a)と重なる構造物設置面21bのシース電圧の大きさと方向を調整することができる。
【0150】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第5の実施形態について詳しく説明する。
上記第3の実施形態の第2の変形例では、試料搭載面調整電極が絶縁接着層に配置される場合について説明をした。本実施形態では、試料搭載面高周波電極が有機材料部に配置される場合について説明する。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置501と示す。
【0151】
図17は、本実施形態に係る静電チャック装置501の一例を示す断面図である。静電チャック装置501は、静電チャック部512と、有機材料部513と、冷却ベース部514とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置501(
図17)と第3の実施形態の第2の変形例に係る静電チャック装置303(
図10)とを比較すると、有機材料部513と、試料搭載面高周波電極81aが備えられている点が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第3の実施形態の第2の変形例と同じである。
第3の実施形態の第2の変形例と同じ機能の説明は省略し、第5の実施形態では、第3の実施形態の第2の変形例と異なる部分を中心に説明する。
【0152】
有機材料部513は、静電チャック部512と冷却ベース部514との間に備えられる。有機材料部513は、導電性接着層31、導電性接着層32及び導電性接着層33に加えて、試料搭載面高周波電極81aを有する。取出電極端子547は、有機材料部513をZ軸方向に貫通し試料搭載面高周波電極81aに接続される。有機材料部513は、試料搭載面高周波電極81a及び取出電極端子547の周囲を覆って形成される。
【0153】
試料搭載面高周波電極81aは、有機材料部513に設けられる。試料搭載面高周波電極81aは、円板状の薄膜電極である。試料搭載面高周波電極81aは、例えば金属箔の電極である。試料搭載面高周波電極81aは、有機材料部513の内部に設けられることにより冷却ベース部514から絶縁される。
【0154】
試料搭載面高周波電極81aを静電チャック部512の内部に備える場合に比べ、試料搭載面高周波電極81aを有機材料部513に備える場合の方が、試料搭載面高周波電極81aの製造は容易である。また、試料搭載面高周波電極81aを静電チャック部512の内部に備える場合に比べ、試料搭載面高周波電極81aを有機材料部513に備える場合の方が、静電チャック部512の厚さを薄くすることができる。
【0155】
取出電極端子547は棒状であり、試料搭載面高周波電極81aに高周波電圧を印加するように構成されている。取出電極端子547は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC22を介して高周波電源C23に接続される。高周波電源C23は、取出電極端子547を通じて試料搭載面高周波電極81aに高周波電圧を印加する。高周波電源C23は、アースC24により接地されている。
【0156】
静電チャック装置501は、試料搭載面高周波電極81aに高周波電圧を印加することにより、試料載置面21aにおいて静電チャック部512を上方から下に向かってみたときに試料搭載面高周波電極81aと重なる部分の上方のシース電圧を下げ、試料載置面21a上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度が不均一になってしまうことである。
【0157】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置501は、静電チャック部512と、冷却ベース部514と、有機材料部513と、高周波用の第5の電極(試料搭載面高周波電極81a)とを備える。
有機材料部513は、静電チャック部512と冷却ベース部514との間に配置される。
高周波用の第5の電極(試料搭載面高周波電極81a)は有機材料部513に設けられる。
【0158】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置501では、高周波用の第5の電極(試料搭載面高周波電極81a)の製造及び設置を容易にすることができる。また、静電チャック装置501は、静電チャック部512の厚さを薄くすることができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置501では、静電チャック部512の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させる場合に、高周波用の第5の電極(試料搭載面高周波電極81a)の製造及び設置を容易にすることができる。
【0159】
(第6の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第6の実施形態について詳しく説明する。
図18は、本実施形態に係る静電チャック装置1001の一例を示す断面図である。
図19は、本実施形態に係る静電チャック装置1001の電極の一例を示す平面図である。静電チャック装置1001は、静電チャック部1002と、絶縁接着層1003と、冷却ベース部1004とを備える。ここで、静電チャック装置1001に固定された座標系を、3次元直交座標系X、Y、Zとする。ここで、3次元直交座標系X、Y、ZのX軸は、水平方向に平行な向きであり、Z軸は、鉛直方向上向きである。上向きとはZ軸の正の向きである。
静電チャック部1002と、絶縁接着層1003と、冷却ベース部1004とは、静電チャック装置1001を上方から下にみたときに円板状の形状である。静電チャック部1002は、絶縁接着層1003を挟んで冷却ベース部1004の上に設置される。静電チャック部1002と、絶縁接着層1003と、冷却ベース部1004とは、静電チャック装置1001を上方から下にみたときに円板の中心が重なるように接着されている。
【0160】
(静電チャック部)
静電チャック部1002は、
図19に示すように円板状である。静電チャック部1002は、載置板1022と、ウエハ静電吸着用電極1023と、支持板1024と、FR(Focus Ring:フォーカスリング)静電吸着用第1電極1026と、FR静電吸着用第2電極1028とを有する。載置板1022と、支持板1024とは一体化されている。
【0161】
載置板1022は、円板の内周部分の上面である試料載置面1021aと、静電チャック上面斜面1021bと、円板の外周部分の上面である構造物設置面1021cとを有している。静電チャック上面斜面1021bとは、試料載置面1021aと構造物設置面1021cとを接続する斜面である。
構造物設置面1021cは、試料載置面1021aよりも凹んでいる凹部に設けられている。試料載置面1021aは、半導体ウエハ等の板状試料が載置される面である。構造物設置面1021cは、フォーカスリングが載置される面である。つまり、静電チャック部1002は、試料載置面1021aの周囲であって試料載置面1021aよりも凹んでいる凹部に、試料載置面1021aの周囲を囲む円環状の構造物であるフォーカスリングを設置する構造物設置面1021cを有する。
【0162】
フォーカスリング(不図示)は、例えば、試料載置面1021aに載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。ウエハの周縁部にフォーカスリングを配置することにより、プラズマに対する電気的な環境を試料載置面と略一致させることができるため、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチング速度の中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0163】
載置板1022及び支持板1024は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものであり、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
つまり、静電チャック部1002は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体、酸化アルミニウム焼結体のいずれか1つ以上からなる。
載置板1022の試料載置面1021aは、上面に半導体ウエハ等の板状試料を載置する面である。試料載置面1021aには、直径が板状試料の厚さより小さい突起部(不図示)が複数所定の間隔で形成され、これらの突起部が板状試料を支える。
【0164】
ウエハ静電吸着用電極1023は、静電チャック部2の円板の内周部において、載置板1022と支持板1024との間に設けられる。ウエハ静電吸着用電極1023は、
図19に示すように円板状の電極である。ウエハ静電吸着用電極1023は、試料載置面1021aと接着面1021dとの間に跨って、かつ試料載置面1021aと接着面斜面1021eとの間に跨って設けられる。
【0165】
ウエハ静電吸着用電極1023は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。ウエハ静電吸着用電極1023は、ウエハ静電吸着用電極ピン1025により支持される。ウエハ静電吸着用電極1023は、ウエハ静電吸着用電極ピン1025を介して、後述する取出電極端子1041と接続されている。
【0166】
ウエハ静電吸着用電極1023は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
【0167】
支持板1024は、絶縁接着層1003と接する面である下面に凹部を有する。つまり、静電チャック部1002は、絶縁接着層1003の側に凹部を有する。支持板1024の下面は、接着面1021d、接着面斜面1021e及び外周部接着面1021fからなる。ここで下向きはZ軸の負の向きである。
接着面1021dは、円板状の支持板1024の内周部分に位置する円形の平面である。接着面1021dは、支持板1024の下面において外周部接着面1021fに対して凹んでいる。外周部接着面1021fは、円板状の支持板1024の外周部分に位置する同心円状の平面である。接着面斜面1021eは、接着面1021dと外周部接着面1021fとを接続する斜面である。つまり、静電チャック部1002の凹部の外周は、斜面となっている。ここで凹部の外周とは、凹部の凹んでいる部分とこの凹部が設けられた面とを接続する面である。
【0168】
静電チャック部1002を上方から下に向かってみた場合に、接着面1021dの円の中心と試料載置面1021aの円の中心とは一致しており、接着面1021dの直径は試料載置面1021aの直径よりも小さい。つまり、静電チャック部1002を上方から下に向かってみた場合に、接着面1021dは試料載置面1021aよりも内周部分に位置する。
接着面1021dは、試料載置面1021aと対向している。外周部接着面1021fは、構造物設置面1021cと対向している。静電チャック部1002を上方から下に向かってみたときに、接着面斜面1021eは、試料載置面1021a及び静電チャック上面斜面1021bと重なる部分をもつ。つまり、静電チャック部1002の凹部の一部である接着面斜面1021eは、静電チャック部1002を上方から下に向かってみたときに構造物設置面1021cまで伸びている。接着面斜面1021eと接着面1021dとの成す内角度A1は、95度よりも大きく165度よりも小さく、より好ましくは105度よりも大きく155度よりも小さい。
プラズマエッチング装置において、エッチング速度及びエッチングの方向は、プラズマにより励起された単位面積当たりのガスの密度、静電チャック部1002の試料載置面1021a上の電場の強さ(シース電圧)及び電気力線の方向に影響される。
試料載置面1021a上の単位面積当たりの励起されたガスの密度、電場の強さ及び電気力線の方向が面上において不均一である場合、エッチング速度及びエッチングの方向は不均一になり得る。
試料載置面1021aにおいて、単位体積当たりのプラズマにより励起エッチングガスの密度は、エッチング装置により異なる。
単位体積当たりの励起エッチングガス内周部分の方が外周部分に比べ少ない場合は、試料載置面1021aにおいて、内周部分の方が外周部分よりもエッチング速度は遅くなる。
【0169】
静電チャック部1002の底面には、座繰り加工を施して凹部が設けられている。静電チャック部1002においては、試料載置面1021aと接着面1021dとの間の厚さが、試料載置面1021aと接着面斜面1021eとの間の厚さよりも薄くなっている。
従って、試料載置面1021aと接着面1021dとの間の静電容量は、試料載置面1021aと接着面斜面1021eとの間の静電容量よりも大きくなる。このため、試料載置面1021aにおいて接着面1021dと対向する部分の上方のシース電圧が下がり、試料載置面1021a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0170】
また、静電チャック部1002の底面の凹部は接着面斜面1021eを有しているため、静電チャック部1002の外周部において、試料載置面1021aと接着面斜面1021eとの間の静電容量が、試料載置面1021aと接着面1021dとの間の静電容量に比べ急激に変化することを抑制することができる。
図24を参照して、静電チャック部1002の底面の凹部が接着面斜面1021eを有しているため、静電チャック部1002の厚みが異なる部分において静電容量の急激な変化が抑制されることについて説明する。
【0171】
図24は、比較例の静電チャック装置A101の一例を示す図である。静電チャック部A102は、円板の内周部分の上面である試料載置面A21aと、円板の外周部分の上面である構造物設置面A21cとを有している。
静電チャック部A102は下面に凹部を有する。静電チャック部A102の下面は、接着面A21dと、外周部接着面A21fとからなる。接着面A21dは、静電チャック部A102の下面において外周部接着面A21fに対して凹んでいる。
【0172】
静電チャック部A102においては、試料載置面A21aと接着面A21dとの間の厚さが、試料載置面A21aと外周部接着面A21fとの間の厚さよりも薄くなっている。
従って、試料載置面A21aと接着面A21dとの間の静電容量は、試料載置面A21aと外周部接着面A21fとの間の静電容量よりも大きくなる。
ここで、静電チャック部A102の部分P1では、静電容量の大きさが、試料載置面A21aと接着面A21dとの間の静電容量から、試料載置面A21aと外周部接着面A21fとの間の静電容量へと急激に変化する。
静電チャック装置A101では、静電チャック部A102の部分P1において静電容量が急激に変化するため、静電チャック部A102を上方からみたときに試料載置面A21aが部分P1と重なる部分において試料載置面A21a上のエッチング速度は不均一となり得る。
一方、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、静電チャック部1002の底面の凹部が接着面斜面1021eを有しているため、静電チャック部1002の厚みが異なる部分において静電容量の急激な変化が抑制される。
【0173】
試料載置面1021aと接着面1021dとの間の厚さ、試料載置面1021aと接着面斜面1021eとの間の厚さは、一例として0.7mm以上かつ5.0mm以下に形成されている。
例えば、静電チャック部1002の厚さが0.7mmを下回ると、静電チャック部1002の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部1002の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部1002の高周波透過性は低下し、シース電圧が低下する。また、静電チャック部1002の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部1002の熱伝達率が低下し、静電チャック部1002の熱容量が大きくなり、載置される板状試料の冷却性能や熱応答性が劣化する。ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記した範囲に限るものではない。
【0174】
静電チャック部1002の底面に座繰り加工を施して凹部を設ける際、凹部の深さを形成する側面が底面と垂直である場合、静電チャック部1002において、座繰り加工を施した部分と、座繰り加工を施していない部分とでは静電容量が大きく変化してしまう。
静電チャック部1002において試料載置面1021aの部分毎に静電容量が大きく変化してしまうと、外周部における急激な電場の強さの変化及び電場の方向の変化が生じ得る。
また、静電チャック部1002の底面に座繰り加工を施して凹部を設ける際、凹部の深さを形成する側面が底面と垂直である場合、側面の厚さが薄くなり座繰り加工を施した部分の機械的な強度が低下し、静電チャック部1002が割れてしまう危険性がある。
【0175】
静電チャック部1002では、底面に座繰り加工を施して設けられた凹部は、外周部において側面の代わりに接着面斜面1021eとなっている。静電チャック部1002では、接着面斜面1021eが設けられることにより、座繰り加工を施した部分と、座繰り加工を施していない部分の静電容量が大きく変化してしまうことを抑制できるため、外周部における急激な電場の強さの変化及び電場の方向の変化を抑制することができる。
【0176】
また、静電チャック部1002では、凹部の一部である接着面斜面1021eは構造物設置面1021cまで伸びていることにより、静電チャック部1002の厚さを試料載置面1021aと構造物設置面1021cとで同じにすることができるため、静電チャック部1002の外周部分においてシース電圧の電場の強さ及び電場の方向を調整することができる。
また、静電チャック部1002では、接着面斜面1021eと接着面1021dとの成す内角度A1は、95度よりも大きく165度よりも小さく、より好ましくは105度よりも大きく155度よりも小さい。そのため、電場の強さ及び電場の方向の急激な変化を抑制することができ、静電チャック部1002の底面の凹部の外周部分である接着面斜面1021eから亀裂が発生することを抑制することができる。
【0177】
ウエハ静電吸着用電極1023の面抵抗値は、1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。ウエハ静電吸着用電極1023の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。ウエハ静電吸着用電極1023の面抵抗値が上記下限値よりも低いとウエハ静電吸着用電極1023内をうず電流が発生して、同電位となり得る。ウエハ静電吸着用電極1023を流れるうず電流のために、静電チャック部2の試料載置面1021a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させる効果が十分得られなくなる場合がある。静電チャック装置1001は、ウエハ静電吸着用電極1023の面抵抗値を上記下限値よりも高くすることにより、ウエハ静電吸着用電極1023内をうず電流の発生を抑止することができる。一方、ウエハ静電吸着用電極1023の面抵抗値を上記上限値よりも低くすることにより、良好な吸着特性を維持することができる。
【0178】
ウエハ静電吸着用電極1023の厚さは0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。ウエハ静電吸着用電極1023の厚さは10μmよりも厚く30μmよりも薄いことが好ましい。このような厚さのウエハ静電吸着用電極1023は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
ウエハ静電吸着用電極1023の厚さが0.5μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。ウエハ静電吸着用電極1023の厚さが50μmを越えると、ウエハ静電吸着用電極1023と載置板1022との間の熱膨張率差、及びウエハ静電吸着用電極1023と支持板1024との間の熱膨張率差に起因し、ウエハ静電吸着用電極1023と載置板1022との接合界面、及びウエハ静電吸着用電極1023と支持板1024との接合界面に剥離もしくはクラックが入り易くなる。
【0179】
FR静電吸着用第1電極1026及びFR静電吸着用第2電極1028は、静電チャック部1002の内部において、構造物設置面1021cと冷却ベース部1004との間に設けられる。FR静電吸着用第1電極1026及びFR静電吸着用第2電極1028は、
図19に示すようにリング状の電極である。FR静電吸着用第1電極1026及びFR静電吸着用第2電極1028は、構造物設置面1021cと外周部接着面1021fとの間に設けられる。
リング状の電極であるFR静電吸着用第2電極1028の直径は、リング状の電極であるFR静電吸着用第1電極1026の直径よりも大きい。
【0180】
FR静電吸着用第1電極1026は、
図19に示すようにリングの円周の一部分において、FR静電吸着用第1電極ピン1027により支持される。FR静電吸着用第1電極1026は、FR静電吸着用第1電極ピン1027を介して、後述する取出電極端子1043と接続されている。FR静電吸着用第2電極1028は、リングの円周の一部分において、FR静電吸着用第2電極ピン1029により支持される。FR静電吸着用第2電極1028は、FR静電吸着用第2電極ピン1029を介して、後述する取出電極端子1045と接続されている。
【0181】
(絶縁接着層)
絶縁接着層1003は、冷却ベース部1004を静電チャック部1002の下面、つまり接着面1021d、接着面斜面1021e及び外周部接着面1021fに貼り付ける。
絶縁接着層1003は、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ等の有機接着剤により形成されることが好ましい。これらの有機接着剤は、接着硬化後に耐熱性及び絶縁性を有する。シリコーン樹脂は、ガラス転移温度が低く、耐熱温度が高く、かつゴム弾性を有している。このシリコーン樹脂には、絶縁性のセラミック粉末(酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等)を添加されることが好ましい。
また、硬化前の接着剤は、ジエル状、もしくは柔軟性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂により形成されることが好ましい。
絶縁接着層1003は、導電性接着層1031、導電性接着層1032及び導電性接着層1033を有する。絶縁接着層1003は、導電性接着層1031、導電性接着層1032及び導電性接着層1033の周囲を覆って形成される。
【0182】
導電性接着層1031は、ウエハ静電吸着用電極ピン1025を取出電極端子1041に貼り付ける。導電性接着層1032は、FR静電吸着用第1電極ピン1027を取出電極端子1043に貼り付ける。導電性接着層1033は、FR静電吸着用第2電極ピン1029を取出電極端子1045に貼り付ける。
導電性接着層1031、導電性接着層1032及び導電性接着層1033は、柔軟性と耐電性を有するシリコーン系の導電性接着剤(シリコ接着剤に金属、カーボン等の導電性材料を添加)により形成されることが好ましい。また、導電材の形状として、針状の導電性材料は球状導電性材料に比較して、少量の添加で導電性が確保できることより、より好ましい。
【0183】
(冷却ベース部)
冷却ベース部1004は厚さのある円板状であり、静電チャック部1002を所望の温度に調整するように構成されている。冷却ベース部1004は、上面として内周上面1401aと、斜面1401bと、外周上面1401cとを有している。内周上面1401aは、静電チャック部1002の凹部である接着面1021dに対応した凸部である。斜面1401bは、内周上面1401aと外周上面1401cとを接続する斜面である。
冷却ベース部1004としては、例えば、その内部に水を循環させる流路が形成された水冷ベース等が好ましい。
【0184】
冷却ベース部1004を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた非磁性の金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)等が好適に用いられる。
静電チャック部1002の材料が酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体または酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体である場合、静電チャック部1002と冷却ベース部1004との熱膨張差を小さくするため、冷却ベース部1004を構成する材料としてはチタン(Ti)が好ましい。
冷却ベース部1004の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0185】
冷却ベース部1004は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC1007を介して高周波電源C1008に接続される。高周波電源C1008は、冷却ベース部1004にバイアス電圧用のRF電流を印加する。高周波電源C1008は、アースC1009により接地されている。
【0186】
冷却ベース部1004は、取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045を有する。冷却ベース部1004は、取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045の周囲を覆って形成される。取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045は、絶縁性を有する絶縁碍子1042、絶縁碍子1044及び絶縁碍子1046により各々覆われている。
取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045は、冷却ベース部1004を貫通するように設けられている。
【0187】
取出電極端子1041は棒状であり、ウエハ静電吸着用電極1023に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1041は、導電性接着層1031を介して、ウエハ静電吸着用電極ピン1025に接続されている。取出電極端子1041は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C1001に接続されている。
取出電極端子1043は棒状であり、FR静電吸着用第1電極1026に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1043は、導電性接着層1032を介して、FR静電吸着用第1電極ピン1027に接続されている。取出電極端子1043は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C1003に接続されている。
取出電極端子1045は棒状であり、FR静電吸着用第2電極1028に直流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1045は、導電性接着層1033を介してFR静電吸着用第2電極ピン1029に接続されている。取出電極端子1045は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C1005に接続されている。
可変型直流電源C1001はアースC1002により接地されている。可変型直流電源C1003はアースC1004により接地されている。可変型直流電源C1005はアースC1006により接地されている。
【0188】
取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045は、絶縁碍子1042、絶縁碍子1044及び絶縁碍子1046により、金属製の冷却ベース部1004に対し各々絶縁されている。
取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045の材料としては、耐熱性に優れた非磁性の導電性材料であれば制限されないが、熱膨張係数がウエハ静電吸着用電極1023及び支持板1024の熱膨張係数に近似したものが好ましく、例えば、チタン等の金属材料からなる。
【0189】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1001は、静電チャック部1002と、冷却ベース部1004と、接着層(絶縁接着層1003)とを備える。
静電チャック部1002では、試料を載置する試料載置面1021aを有するとともに静電吸着用の第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)を有する。静電チャック部1002は、接着層(絶縁接着層1003)の側に第1の凹部(接着面1021d)を有し、第1の凹部(接着面1021d)の外周は斜面(接着面斜面1021e)となっている。
冷却ベース部1004は、静電チャック部1002に対し試料載置面1021aとは反対側に載置され静電チャック部1002を冷却する。冷却ベース部1004は、静電チャック部1002の第1の凹部(接着面1021d)に対応した第1の凸部(内周上面1401a)を有している。
接着層(絶縁接着層1003)は、静電チャック部1002と冷却ベース部1004とを接着する。
【0190】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、エッチング速度が速い部分の静電チャック部1002の厚さを厚くし、シース電圧を下げることができるため、高周波電源の数を増やすことなく、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度が不均一になってしまうことである。
また、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、座繰り加工を施した部分と、座繰り加工を施していない部分の静電容量が大きく変化してしまうことを抑制できるため、外周部における急激な電場の強さの変化及び電場の方向の変化を抑制することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、高周波電源の数を増やすことなく、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0191】
また、静電チャック部1002は、試料載置面1021aの周囲であって試料載置面1021aよりも凹んでいる第2の凹部に、試料載置面1021aの周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面1021cを有する。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、フォーカスリングを載置することがきるため、静電チャック部1002の試料載置面1021a上のエッチング速度が中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0192】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、静電チャック部1002の第1の凹部の一部(接着面斜面1021e)が、構造物設置面1021cまで伸びている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、構造物設置面1021c上のシース電圧の電場の強さ及び電場の方向を調整することができる。
【0193】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、静電チャック部1002の第1の凹部の外周の斜面(接着面斜面1021e)の内角度A1が、95度よりも大きく165度よりも小さく、より好ましくは105度よりも大きく155度よりも小さい。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、電場の強さ及び電場の方向の急激な変化を抑制することができ、静電チャック部1002の底面の凹部の外周部分である接着面斜面1021eから亀裂が発生することを抑制することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、高周波電源の数を増やすことなく、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0194】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも高く1.0×10
10Ω/□よりも低い。第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の面抵抗値は、2.0Ω/□よりも高く、1.0×10
7Ω/□よりも低いことが好ましい。
本実施形態に係る静電チャック装置1001では、第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の面抵抗値を上記下限値よりも高くすることにより、ウエハ静電吸着用電極1023内をうず電流の発生を抑止することができる。そのため、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。一方、第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の面抵抗値を上記上限値よりも低くすることにより、良好な吸着特性を維持することができる。
第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の厚さは0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。第6の電極(ウエハ静電吸着用電極1023)の厚さは10μmよりも厚く30μmよりも薄いことが好ましい。
【0195】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、例えば、静電チャック部1002は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体、酸化アルミニウム焼結体のいずれか1つ以上からなる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1001では、プラズマエッチング等の半導体製造プロセスにおける耐久性が向上し、機械的強度も保持される。このため、プラズマエッチング等の半導体製造プロセスにおける耐久性が向上し、機械的強度も保持された状態において、静電チャック部1002の試料載置面上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0196】
(第7の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第7の実施形態について詳しく説明する。
上記第6の実施形態では、静電チャック装置が、絶縁接着層の側に凹部を有する静電チャック部1002を備え、エッチング速度が不均一になってしまうことを軽減する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が、静電チャック部と冷却ベース部との間に設けられた誘電体層をさらに備え、エッチング速度が不均一になってしまうことを軽減する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置1201と示す。
【0197】
図20は、本実施形態に係る静電チャック装置1201の一例を示す断面図である。静電チャック装置1201は、静電チャック部1002と、絶縁接着層1003と、冷却ベース部1214と、誘電体層1051aと、誘電体層1051bとを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置1201(
図20)と第6の実施形態に係る静電チャック装置1001(
図18)とを比較すると、誘電体層1051a及び誘電体層1051bの有無が異なる。
ここで、他の構成要素が持つ機能は第6の実施形態と同じである。第6の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第7の実施形態では、第6の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0198】
誘電体層1051a及び誘電体層1051bは、静電チャック部1212と冷却ベース部1214との間に備えられる。誘電体層1051aは、冷却ベース部1214の内周部分である内周上面1401aに設けられた凹部に備えられる。誘電体層1051aはリング状の形状であり、リング状の中心を絶縁碍子1042が貫通している。誘電体層1051bは、冷却ベース部1214の外周部分である外周上面1401cに設けられた凹部に備えられる。誘電体層1051bはリング状の形状であり、リング状の形状の一部において絶縁碍子1044が貫通する部分を有する。
【0199】
座繰加工により静電チャック部1002の底面に凹部を設けるだけでは、シース電圧の微調性を行うことは容易ではない。静電チャック装置1201では、静電チャック部1002の上面の電場の強度の強い部分に誘電体層1051a及び誘電体層1051bを設置している。
静電チャック部1002を上方から下に向かってみたときに静電チャック部1002と誘電体層1051a及び誘電体層1051bとが重なる部分は、静電チャック部1002と誘電体層1051a及び誘電体層1051bとが重ならない部分に比べ静電容量が小さくなる。このため、静電チャック部1002の上面において静電チャック部1002を上方から下に向かってみたときに誘電体層1051a及び誘電体層1051bと重なる部分の上方のシース電圧が下がり、静電チャック部1002の上面のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0200】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1201では、誘電体層1051a及び誘電体層1051bは、静電チャック部1002と冷却ベース部1214との間に設けられる。
【0201】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1201では、静電チャック部1002の上面の電場の強度の強い部分に誘電体層1051a及び誘電体層1051bを備えることにより、静電チャック部1002の上面のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0202】
(第8の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第8の実施形態について詳しく説明する。
上記第6の実施形態では、静電チャック装置が、絶縁接着層の側に凹部を有する静電チャック部を備え、エッチング速度が不均一になってしまうことを軽減する場合について説明をした。本実施形態では、絶縁接着層の厚みが、静電チャック部を上方から下に向かってみたときに構造物設置面と重なる部分の方が、静電チャック部の凹部と重なる部分よりも厚い場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置1301と示す。
【0203】
図21は、本実施形態に係る静電チャック装置1301の一例を示す断面図である。静電チャック装置1301は、静電チャック部1002と、絶縁接着層1313と、冷却ベース部1314とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置1301(
図21)と第6の実施形態に係る静電チャック装置1001(
図18)とを比較すると、絶縁接着層1313及び冷却ベース部1314の形状が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第6の実施形態と同じである。
第6の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第8の実施形態では、第6の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0204】
冷却ベース部1314は、上面として内周上面1401aと、斜面1431bと、外周上面1431cとを有している。斜面1431bは、内周上面1401aと外周上面1431cとを接続する斜面である。ここで、外周上面1431cは、第6の実施形態に係る静電チャック装置1001(
図18)の外周上面1401cに比べ上下方向の高さが低い。
外周上面1431cの高さが低いことに応じて、静電チャック部1002と冷却ベース部1314とを接着する絶縁接着層1313は、接着面1021dと接する部分の厚みよりも、外周部接着面1021fと接する部分の厚みの方が大きい。つまり、接着面1021dと冷却ベース部1314との間における絶縁接着層1313の厚みよりも、構造物設置面1021cに対応する位置における絶縁接着層1313の厚みの方が大きい。接着面斜面1021eの内角度A1よりも、斜面1431bの内角度A3の方が小さい。また、接着面斜面1021eの内角度A2よりも、斜面1431bの内角度A4の方が大きい。
【0205】
静電チャック装置1301では、構造物設置面1021cに対応する位置における絶縁接着層1313の厚みを厚くすることにより、構造物設置面1021cに対応する位置における絶縁接着層1313に加わる応力を緩和することができ、絶縁接着層1313の剥離や静電チャック部1002の変形を抑制することができる。また、静電チャック装置1301では、接着工程において接着剤の流れがよくなり、絶縁接着層1313の厚さが不均一になってしまうことを低減することができる。また、静電チャック装置1301では、試料載置面1021aに載置される試料の温度を高くし、FRの温度を高くすることができ、構造物設置面1021c上における反応ガスの再析出を軽減することができる。
【0206】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、第1の凹部の底面(接着面1021d)と冷却ベース部1314との間における接着層(絶縁接着層1313)の厚みよりも、構造物設置面1021cに対応する位置における接着層(絶縁接着層1313)の厚みの方が大きい。
【0207】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、外周部の接着層(絶縁接着層1313)を厚くすることにより、外周部の接着層(絶縁接着層1313)に加わる応力を緩和することができ、接着層(絶縁接着層1313)の剥離や静電チャック部1002の変形を抑制することができる。また、静電チャック装置1301では、接着工程において接着剤の流れがよくなり、接着層(絶縁接着層1313)の厚さが不均一になってしまうことを低減することができる。また、静電チャック装置1301では、試料載置面1021aに載置される試料の温度を高くし、FRの温度を高くすることができ、構造物設置面1021c上における反応ガスの再析出を軽減することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、高周波電源の数を増やすことなく、ウエハの面内のエッチングが不均一になってしまうことを軽減することができる。
【0208】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、静電チャック部1002の第1の凹部の外周の斜面(接着面斜面1021e)の内角度A1よりも、冷却ベース部1314の第1の凸部の斜面(斜面1431b)の内角度A3の方が小さい。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、接着工程において接着剤の流れがよくなり、接着層(絶縁接着層1313)の厚さが不均一になってしまうことを低減することができる。このため、本実施形態に係る静電チャック装置1301では、高周波電源の数を増やすことなく、ウエハの面内のエッチングが不均一になってしまうことを軽減することができる。
【0209】
(第9の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第9の実施形態について詳しく説明する。
上記第6の実施形態では、静電チャック装置が、絶縁接着層の側に凹部を有する静電チャック部を備え、エッチング速度が不均一になってしまうことを軽減する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が静電チャック部と冷却ベース部との間に、試料搭載面調整電極を有し、高周波発生用電源の加速電圧を調整する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置1401と示す。
【0210】
図22は、本実施形態に係る静電チャック装置1401の一例を示す断面図である。静電チャック装置1401は、静電チャック部1412と、絶縁接着層1413と、冷却ベース部1414とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置1401(
図22)と第6の実施形態に係る静電チャック装置1001(
図18)とを比較すると、本実施形態に係る静電チャック装置1401(
図22)は、試料搭載面調整電極1061a及び構造物設置面調整電極1062aを有している点が異なる。
ここで、他の構成要素が持つ機能は第6の実施形態と同じである。第6の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第9の実施形態では、第6の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0211】
試料搭載面調整電極1061aは、静電チャック部1412と絶縁接着層1413との間に備えられる。つまり、試料搭載面調整電極1061aは、静電チャック部1412と冷却ベース部1414との間に備えられる。試料搭載面調整電極1061aは、静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部1412の円板の内周部の接着面1021dと重なる部分に備えられる。試料搭載面調整電極1061aは、円板状の電極である。
構造物設置面調整電極1062aは、絶縁接着層1413と冷却ベース部1414との間に備えられる。構造物設置面調整電極1062aは、静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部1412の円板の外周部の外周部接着面1021fと重なる部分に備えられる。
構造物設置面調整電極1062aは、リング状の電極である。構造物設置面調整電極1062aは、ウエハ静電吸着用電極1023と、FR静電吸着用第1電極1026と、FR静電吸着用第2電極1028と電気的に絶縁されている。構造物設置面調整電極1062aは、導電性接着層1032がZ軸の方向に貫通する部分を有する。
試料搭載面調整電極1061aは、取出電極端子1047に接合される。試料搭載面調整電極1061aは、円板状の電極である。
【0212】
試料搭載面調整電極1061a及び構造物設置面調整電極1062aは、例えば金属箔の電極である。構造物設置面調整電極1062aと冷却ベース部1414との間には、ポリイミドシート(不図示)を挟むことにより、構造物設置面調整電極1062aは冷却ベース部1414から絶縁される。
ポリイミドシートは、試料搭載面調整電極1061aと絶縁接着層1413との間にも挟まれてもよい。
【0213】
取出電極端子1047は棒状であり、試料搭載面調整電極1061aに交流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1047は、試料搭載面調整電極1061aに直接接続されている。
取出電極端子1047は、スイッチSW1001の制御端子に接続されている。スイッチSW1001が第1端子SW1011に接続された場合、取出電極端子1047は、LC共振回路LC1001に接続される。取出電極端子1047は、LC共振回路LC1001を通じてアースC1015により接地される。
LC共振回路LC1001は、可変コンダクタC1013と、コンデンサC1014とを備える。可変コンダクタC1013と、コンデンサC1014とは直列に接続されている。スイッチSW1001が第1端子SW1011に接続された場合、取出電極端子1047は可変コンダクタC1013に接続される。
スイッチSW1001が第2端子SW1012に接続された場合、取出電極端子1047は、マッチングボックスC1010を通じて、高周波電源C1011に接続される。取出電極端子1047は、マッチングボックスC1010及び高周波電源C1011を通じてアースC1012により接地される。
不図示の制御回路は、スイッチSW1001が第1端子SW1011に接続されるか、第2端子SW1012に接続されるかを切り替える。
【0214】
スイッチSW1001が第1端子SW1011に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC1001のL成分を調整することにより試料搭載面調整電極1061aの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部1414に流れるRF(Radio Frequency)電流は、可変コンダクタC1013及びコンデンサC1014を介して流れるため、静電チャック装置1401は、冷却ベース部1414を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極1061aと重なる部分のRF加速電圧を下げることができる。
冷却ベース部1414を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極1061aと重なる部分のRF加速電圧が下がるため、試料載置面1021aにおいて静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極1061aと重なる部分の上方のシース電圧が下がり、試料載置面1021a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0215】
スイッチSW1001が第2端子SW1012に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C1011の電圧の大きさを可変に制御する。
マッチングボックスC1010は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC1010は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C1011と、出力側の試料搭載面調整電極1061aとのインピーダンスを整合させる。
本実施形態においては、高周波電源C1011及びLC共振回路LC1001が静電チャック装置1401に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置1401はLC共振回路LC1001を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子1047は、スイッチSW1001を介さずにマッチングボックスC1010に接続される。また、本実施形態においては、高周波電源C1017及びLC共振回路LC1002が静電チャック装置1401に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置1401はLC共振回路LC1002を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子1049は、スイッチSW1002を介さずにマッチングボックスC1016に接続される。
【0216】
取出電極端子1049は棒状であり、構造物設置面1021cに交流電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1049は、構造物設置面調整電極1062aに直接接続されている。取出電極端子1049と構造物設置面調整電極1062aとは同じ材質であることが好ましい。
取出電極端子1049は、スイッチSW1002の制御端子に接続されている。スイッチSW1002が第1端子SW1021に接続された場合、取出電極端子1049は、LC共振回路LC1002に接続される。取出電極端子1049は、LC共振回路LC1002を通じてアースC1021により接地される。
LC共振回路LC1002は、可変コンダクタC1019と、コンデンサC1020とを備える。可変コンダクタC1019と、コンデンサC1020とは直列に接続されている。スイッチSW1002が第1端子SW1021に接続された場合、取出電極端子1049は可変コンダクタC1019に接続される。
スイッチSW1002が第2端子SW1022に接続された場合、取出電極端子1049は、マッチングボックスC1016を通じて、高周波電源C1017に接続される。取出電極端子1049は、マッチングボックスC1016及び高周波電源C1017を通じて、アースC1018により接地される。
不図示の制御回路は、スイッチSW1002が第1端子SW1021に接続されるか、第2端子SW1022に接続されるかを切り替える。
【0217】
スイッチSW1002が第1端子SW1021に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC1002のL成分を調整することにより構造物設置面調整電極1062aの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部1414に流れるRF電流は、可変コンダクタC1019及びコンデンサC1020を介して流れるため、静電チャック装置1401は、冷却ベース部1414を上方から下に向かってみたときに構造物設置面調整電極1062aと重なる部分のRF加速電圧を下げることができる。
冷却ベース部1414を上方から下に向かってみたときに構造物設置面調整電極1062aと重なる部分のRF加速電圧が下がるため、構造物設置面1021cにおいて静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに構造物設置面調整電極1062aと重なる部分の上方のシース電圧が下がり、構造物設置面1021c上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0218】
スイッチSW1002が第2端子SW1022に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C1017の電圧の大きさを可変に制御する。
マッチングボックスC1016は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC1016は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C1017と、出力側の構造物設置面調整電極1062aとのインピーダンスを整合させる。
【0219】
試料搭載面調整電極1061aが、静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに、静電チャック部1412の円板の内周部の接着面1021dと重なる部分に備えられるため、静電チャック部1412では、ウエハ静電吸着用電極ピン1025は、接着面1021dの外周側の試料搭載面調整電極1061aと重ならない部分において備えられる。
【0220】
絶縁接着層1413では、接着面1021dと接する面の内周部分において取出電極端子1047が貫通している。導電性接着層1034は、取出電極端子1047と重ならないように接着面1021dと接する面の外周部分に備えられる。
【0221】
冷却ベース部1414は、取出電極端子1041、取出電極端子1043及び取出電極端子1045に加えて、取出電極端子1047及び取出電極端子1049を有する。取出電極端子1047は、冷却ベース部1414の内周上面1401aの内周部を貫通して備えられる。取出電極端子1049は、外周上面1401cの内周部分を貫通して備えられる。取出電極端子1041は、取出電極端子1047と重ならないよう、内周上面1401aの外周部分において冷却ベース部1414を貫通して備えられる。
取出電極端子1047は、絶縁碍子1048により覆われている。取出電極端子1049は、絶縁碍子1050により覆われている。冷却ベース部1414は、絶縁碍子1048及び絶縁碍子1050の周囲を覆って形成される。取出電極端子1047は、絶縁碍子1048により、金属製の冷却ベース部1414に対し絶縁されている。取出電極端子1049は、絶縁碍子1050により、金属製の冷却ベース部1414に対し絶縁されている。
【0222】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1401は、静電チャック部1412と冷却ベース部1414との間に、RF印加またはLC成分の電極層(試料搭載面調整電極1061a及び構造物設置面調整電極1062a)を備える。
【0223】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1401では、シース電圧を上げ下げすることにより調整することができるため、静電チャック部1412上のエッチング速度及びエッチング方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0224】
(第10の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第10の実施形態について詳しく説明する。
上記第9の実施形態では、静電チャック装置が静電チャック部と冷却ベース部との間に、試料搭載面調整電極を有し、高周波発生用電源の加速電圧を調整する場合について説明をした。本実施形態では、1以上の試料搭載面高周波電極が静電チャック部と金属性ベースを接続する有機材料部の内部に配置される場合について説明する。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置1501と示す。
【0225】
図23は、本実施形態に係る静電チャック装置1501の一例を示す断面図である。静電チャック装置1501は、静電チャック部1412と、有機材料部1513と、金属性ベース1514とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置1501(
図23)と第9の実施形態に係る静電チャック装置1401(
図22)とを比較すると、有機材料部1513と、金属性ベース1514が備えられ、試料搭載面調整電極1071aが有機材料部1513の内部に備えられている点が異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第9の実施形態と同じである。第9の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第10の実施形態では、第9の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0226】
有機材料部1513は、静電チャック部1412と金属性ベース1514との間に備えられる。有機材料部1513は、導電性接着層1032、導電性接着層1033及び導電性接着層1034に加えて、試料搭載面調整電極1071aを内部に有する。取出電極端子1547は、有機材料部1513を貫通し試料搭載面調整電極1071aに接続される。取出電極端子1547と試料搭載面調整電極1071aとは同じ材質であることが好ましい。有機材料部1513は、試料搭載面調整電極1071a及び取出電極端子1547の周囲を覆って形成される。
試料搭載面調整電極1071aは、有機材料部1513の内部の有機材料部1513を上方から下に向かってみたときに内周上面1401aと重なる部分の内周部分において備えられる。
【0227】
試料搭載面調整電極1071aは、有機材料部1513に設けられる。試料搭載面調整電極1071aは、円板状の薄膜電極である。試料搭載面調整電極1071aは、例えば金属箔の電極である。試料搭載面調整電極1071aは、有機材料部1513の内部に設けられることにより金属性ベース1514から絶縁される。
【0228】
試料搭載面調整電極1071aを静電チャック部1412の内部に備える場合に比べ、試料搭載面調整電極1071aを有機材料部1513に備える場合の方が、試料搭載面調整電極1071aの製造は容易である。また、試料搭載面調整電極1071aを静電チャック部1412の内部に備える場合に比べ、試料搭載面調整電極1071aを有機材料部1513に備える場合の方が、静電チャック部1412の厚さを薄くすることができる。
【0229】
取出電極端子1547は棒状であり、試料搭載面調整電極1071aに高周波電圧を印加するように構成されている。取出電極端子1547は、試料搭載面調整電極1071aに直接接続されている。取出電極端子1547は、スイッチSW1001の制御端子に接続されている。
【0230】
静電チャック装置1501は、試料搭載面調整電極1071aに高周波電圧を印加することにより、試料載置面1021aにおいて静電チャック部1412を上方から下に向かってみたときに試料搭載面調整電極1071aと重なる部分の上方のシース電圧を下げ、試料載置面1021a上のエッチング速度及びエッチング方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0231】
本実施形態においては、一例として試料搭載面調整電極1071aが有機材料部1513の内部に1つ備えられる場合について説明したが、試料搭載面調整電極は、有機材料部1513の内部に複数備えられてもよい。試料搭載面調整電極が、有機材料部1513の内部に複数備えられる場合、複数の試料搭載面調整電極は、有機材料部1513を上方から下に向かってみた場合に内周上面1401aと重なる部分において、複数の試料搭載面調整電極が互いに重ならないように備えられる。複数の試料搭載面調整電極の形状は、円板状またはリング状であり、円板状またはリング状を組み合わせてもよい。
【0232】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1501は、静電チャック部1412と、金属性ベース1514と、有機材料部1513と、RF電圧印加用またはLC調整用の1以上の第7の電極(試料搭載面調整電極1071a)とを備える。
金属性ベース1514は、静電チャック部1412に対し試料載置面1021aとは反対側に載置されRF電圧を印加することが可能である。
有機材料部1513は、静電チャック部1412と金属性ベース1514との間に配置される。
RF電圧印加用またはLC調整用の1以上の第7の電極(試料搭載面調整電極1071a)は有機材料部1513に設けられる。
【0233】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1501では、シース電圧を下げることができるため、静電チャック部1412上のエッチング速度及びエッチング方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。また、静電チャック装置1501では、高周波用の第5の電極(試料搭載面調整電極1071a)の製造及び設置を容易にすることができる。また、静電チャック装置1501では、静電チャック部1412の厚さを薄くすることができる。また、静電チャック装置1501では、金属性ベース1514に高周波のバイアス電圧用のRF電流を印加することができる。
【0234】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。