特表-19069928IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年4月11日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】エマルション組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20201120BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20201120BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20201120BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20201120BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20201120BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20201120BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20201120BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20201120BHJP
   D01F 6/50 20060101ALI20201120BHJP
   D06M 13/12 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   C08L29/04
   C08L51/00
   C09J129/04
   C09J11/08
   C09D5/02
   C09D7/65
   C09D129/04
   C09D11/023
   D01F6/50 Z
   D06M13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2019-546736(P2019-546736)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-193697(P2017-193697)
(32)【優先日】2017年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬次
(72)【発明者】
【氏名】川崎 雅洋
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
4J040
4L033
4L035
【Fターム(参考)】
4J002AA00X
4J002BE02W
4J002BE03W
4J002BN00X
4J002BN05X
4J002GG02
4J002GH00
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GK01
4J002HA07
4J038CE021
4J038CG142
4J038KA20
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J039AD06
4J039AD09
4J039CA06
4J040DD021
4J040DF022
4J040JB03
4J040KA03
4J040LA02
4J040LA03
4L033AA05
4L033AB01
4L033BA09
4L035EE20
(57)【要約】
コアシェル構造を有する重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含むエマルション組成物であって、
該重合体粒子(A)のシェルを構成する重合体のガラス転移温度が100℃以上であり、
該重合体粒子(A)と該ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が(A):(B)=1:99〜50:50の範囲であるエマルション組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造を有する重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含むエマルション組成物であって、
該重合体粒子(A)のシェルを構成する重合体のガラス転移温度が100℃以上であり、
該重合体粒子(A)と該ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が(A):(B)=1:99〜50:50の範囲であるエマルション組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエマルション組成物を用いてなるフィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のエマルション組成物を含有する接着剤用バインダー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のエマルション組成物を含有するコーティング用バインダー。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のエマルション組成物を含有するビヒクルを含むインク又は塗料。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のエマルション組成物を紡糸してなる繊維。
【請求項8】
請求項7に記載の繊維をアセタール化した繊維。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル構造を有する重合体粒子とポリビニルアルコール系樹脂を含むエマルション組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコールの構成単位からなる単独樹脂に加えて、さらにエチレン等の構成単位を有する共重合樹脂を含み、これらは包装用フィルム、酸素バリアフィルム、接着剤、塗料等広範な用途分野に使用されている。また、ポリビニルアルコールは、その一部をホルムアルデヒドでアセタール化することでビニロン繊維としても利用されている。さらに、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化した重合樹脂はポリビニルブチラールと呼ばれ、各種バインダーや合わせガラスの中間膜等に利用されている。
【0003】
これらの用途の中でも、特にビニロン繊維やフィルムの用途では柔軟化や靱性化の要求が強い。例えばビニロン繊維では、ソフトな風合いや強度保持の目的で、後乳化したエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂の重合体粒子をポリビニルアルコール水溶液に添加して紡糸原液とし、これを紡糸した後アセタール化することが提案されている(特許文献1)。また、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂からなるフィルムの柔軟化では、バリア性を保持するためにブチルゴム等のバリア性の高いゴムをブレンドする等の方法が検討されている。一方、ポリビニルブチラールからなるフィルムの柔軟化では可塑剤を添加する方法等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭47−42050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、重合体粒子を添加する場合、ビニロン繊維やフィルムの製造工程において、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液又は水分散液が高温の条件下となる工程があり、製造条件によっては重合体粒子の凝集が起こり、均一な水溶液又は水分散液が得られないことが大きな課題となっている。また、ゴムをブレンドする場合、工程の履歴によってはミクロな形態が変化するため、実質的には安定した性能のフィルムを得ることが難しい。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高温の条件下においても重合体粒子が凝集しにくいエマルション組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液又は水分散液に、ガラス転移温度(以下、「Tg」と略記することがある。)が100℃以上である重合体をシェルとする重合体粒子を混合することによって、高温の条件下において重合体粒子が凝集しにくいエマルション組成物を得られることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
コアシェル構造を有する重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含むエマルション組成物であって、
該重合体粒子(A)のシェルを構成する重合体のガラス転移温度が100℃以上であり、
該重合体粒子(A)と該ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が(A):(B)=1:99〜50:50の範囲であるエマルション組成物、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温の条件下においても重合体粒子が凝集しにくいエマルション組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、詳細に説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「メタクリレート」と「アクリレート」との総称を意味する。
【0011】
本発明のエマルション組成物は、コアシェル構造を有する重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含み、重合体粒子(A)のシェルを構成する重合体のTgが100℃以上であり、重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が(A):(B)=1:99〜50:50の範囲である。
【0012】
<重合体粒子(A)>
本発明の重合体粒子(A)は、コア及び該コアの少なくとも一部を被覆するシェルからなるコアシェル構造を有する。
【0013】
重合体粒子(A)の平均粒子径に特に限定はないが、マトリックスとなる樹脂によって適する平均粒子径があることが知られているため(例えば、A.Morgolina and S. Wu,Polymer, 29, 2170(1988))、本発明の効果を得るのに効果的な平均粒子径に設定することが好ましく、上記適する平均粒子径の1/10〜10倍とすることが好ましい。また、透明性が必要な用途においては、上記平均粒子径は200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましい。また、上記平均粒子径は1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。
なお、重合体粒子(A)の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0014】
(コア)
コアを構成する重合体は、一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。コアを構成する単量体は特に限定されないが、ラジカル重合性があること、及び水への溶解度が10質量%未満であることが好ましい。水への溶解度が10質量%未満であれば、水相で重合が起こるおそれがないため乳化重合法での製造が容易となる。
【0015】
コアを構成する単量体の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリル酸ラウリル、ドデシル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、インデン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;アクリロニトリル等のその他のビニル化合物;等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
前記単量体の中でも、力学特性を確保する観点からは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の炭素数10以下の側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。
【0017】
重合体粒子(A)を含有するエマルション組成物を用いてなるフィルムや繊維等に柔軟性を付与するためには、コアを構成する重合体のTgが各用途での最低使用温度以下であることが好ましい。具体的には、コアを構成する重合体のTgは−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。また、コアを構成する重合体のTgは−100℃以上であることが好ましく、−80℃以上であることがより好ましい。
【0018】
ここで、多元共重合体のTgは下記のFoxの式で求められる。
1/Tg=fw1/Tg1+fw2/Tg2+・・・
なお、上記式においてTgは共重合体のTgを表し、fw1、fw2・・・は各成分の重量分率を表し、Tg1、Tg2・・・は、各成分の単独重合体のTgを表す。
よって、上記式で求められるTgが、使用温度以下となるように共重合の組成比を決定することが好ましい。
【0019】
コアには、架橋剤を添加して共重合することが一般的である。架橋剤を添加することにより、熱成形等の加工工程を経ても形状を保持することが可能となる。また、適度に架橋することによって破断強度等の力学物性を向上させることができる。
通常上記架橋剤には、重合基を2つ有する2官能単量体が好適に使用されるが、3官能以上の多官能単量体を使用してコア重合体内の架橋密度の粗密の幅を大きくし、力学物性等を調整することも可能である。なお、ブタジエンやイソプレン等のジエン系単量体をコア単量体の全部又は一部に用いる場合には、重合後に不飽和二重結合が残存するため、これを架橋部とすることができる。
【0020】
架橋剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)エチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
さらに、コアにはグラフト剤を添加してもよい。グラフト剤を添加することにより、コアとシェルを化学的に結合させることが可能となり、種々の加工工程においても重合体粒子(A)の破壊を防止することができる。なお、ブタジエンやイソプレン等のジエン系単量体をコア単量体の全部又は一部に用いる場合には、重合後に残存する不飽和二重結合をグラフト剤の代用と見なすことができるため、多くの場合はグラフト剤の添加は不要である。
【0022】
グラフト剤の具体例としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0023】
(シェル)
シェルを構成する重合体は、一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
シェルを構成する重合体のTgは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。シェルを構成する重合体のTgが100℃よりも低いと、エマルション組成物を各種用途の製造に用いる際の高温の工程中で重合体粒子(A)が凝集するため、シェルを構成する重合体のTgは高いほど好ましい。ただし、あまりに高すぎるとポリビニルアルコール系樹脂との親和性が低下することがあるため、180℃以下であることが好ましい。
【0024】
シェルを構成する単量体は特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、インデン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;アクリロニトリル等のその他のビニル化合物;等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
前記単量体の中でも、力学特性を確保する観点からは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の炭素数10以下の側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。
【0026】
また、エマルション組成物を各種用途に用いる際に、高温の条件となる製造工程において、シェルが融着して凝集する可能性があるため、シェルを構成する重合体のTgは製造工程の温度以上であることが好ましい。ただし、シェルのTgが上記製造工程の温度以下であってもシェルに十分な架橋を導入することによって重合体粒子(A)同士の融着を抑制することができる。
【0027】
シェルには、必要に応じて連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤を添加することにより、分子量を調整して溶融流動性を確保することが可能となる。さらに、ポリビニルアルコール系樹脂(B)との相互作用の程度を制御することができる。
【0028】
連鎖移動剤の具体例としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,3−プロパンジオール、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル、メルカプト酢酸エチル、メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸nヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸シクロヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸nオクチル、3−メルカプトプロピオン酸nドデシル、3−メルカプトプロピオン酸nトリデシル、メルカプトサクシン酸、ブタンチオール、オクタンチオール、n−ドデカンチオール、t−ドデカンチオール、ヘキサドデカンチオール、オクタドデカンチオール、シクロヘキサンチオール、チオフェノール等のチオール類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド化合物;四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の芳香族化合物が挙げられる。
【0029】
連鎖移動反応は重合の場であるミセル中で起こり、単量体と連鎖移動剤の比で分子量が決まるため、単量体と同程度にミセルに到達するものにすることが望ましい。即ち、使用する単量体と同程度の親水性、疎水性を有する連鎖移動剤を選ぶことが好ましい。
【0030】
重合体粒子(A)におけるシェルの含有率は、重合体粒子(A)全体の質量に基づいて、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0031】
(重合体粒子(A)の製造方法)
重合体粒子(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合法が採用できる。具体的には、まずコアを構成する単量体を重合してコア粒子を合成した後、そのコア粒子を含むエマルションにシェルを構成する単量体を連続又は断続で添加して重合することによりシェルを形成させ、コアシェル構造を有する重合体粒子(A)を得ることができる。
【0032】
乳化重合において用いる水の量は、生産性の観点では少ないほうが有利だが、エマルションの濃度が高すぎると液粘度や安定性、及び重合熱の除熱等で問題が生ずる。これらの観点から水の量は、コア及びシェルを含めた全単量体1質量部に対して、1〜10質量部の範囲であることが好ましく、1.2〜6質量部の範囲であることがより好ましく、1.5〜3質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0033】
乳化重合で使用する乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、ノニオン−アニオン系等、一般的なものが挙げられる。ノニオン−アニオン系乳化剤とは、ノニオン系乳化剤とアニオン系乳化剤の両方の構造を有するものである。
乳化剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩;天然ロジンの不均化又は水添物のナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩;ラウリル硫酸塩等の脂肪族硫酸化合物のナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤、及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸等のノニオン−アニオン系乳化剤が挙げられる。これら塩の対カチオンとしては、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムが挙げられる。
【0034】
ノニオン系乳化剤は高温に曇点を有することから、エマルション組成物を各種用途に用いる際の製造時に高温となる工程を有する場合には、それが曇点以下の温度であっても乳化性能が低下するため凝集が起こりやすい。凝集を抑制する観点からアニオン系又はノニオン−アニオン系の乳化剤を用いるのが好ましく、また、ミセルの電気二重層の厚みを確保するためノニオン−アニオン系がより好ましい。この場合、反応性乳化剤としてもよいが、上述の非反応性乳化剤と同様にノニオン−アニオン系が好ましい。
【0035】
単量体の水への溶解度がおおよそ1質量%以下の場合、乳化剤添加量と粒子濃度には以下の関係が知られている(参考資料例:「高分子ラテックスの化学」、高分子刊行会、室井宗一著、1995年5月発行)。
粒子濃度=k×(乳化剤濃度)(3/5)
ここで、kは乳化剤種によって異なる定数である。
したがって、目標粒子径と単量体量及び水の量から目標の粒子濃度を算出し、それに見合う乳化剤量を添加すればよい。
通常、乳化剤は重合の初期から水に溶解させておくのが一般的であるが、後添加することも可能であり、また単量体とともに乳化剤を逐次添加してもよい。
【0036】
乳化重合において、保護コロイドを形成する材料を添加してもよい。保護コロイドを形成する材料を添加することにより、重合体粒子(A)の保存安定性やポリビニルアルコール系樹脂(B)との親和性を調整することが可能となる。
保護コロイドを形成する材料としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤やポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0037】
乳化重合において用いる重合開始剤は、基本的には水溶性のアゾ系、パーオキサイド系等の重合開始剤が一般的であるが、必要に応じて油溶性の重合開始剤を用いてもよい。
【0038】
重合開始剤の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノバレイックアシッド)、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンクメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記重合開始剤以外に、前記有機過酸化物又は過酸化水素と遷移金属塩を混合して酸化還元反応によりラジカルを発生させるレドックス重合開始剤系を用いてもよい。
【0040】
前記遷移金属塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、チオ硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)、硫酸銅(I)、チオ硫酸銅(I)、炭酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、水酸化銅(I)、酸化銅(I)、又はそれらの水和物等が挙げられる。
【0041】
さらにレドックス重合開始剤系では必要に応じて還元剤、金属イオンキレート剤、電解質等を添加してもよい。具体的には、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム等の金属イオンキレート剤、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等の電解質等が挙げられる。
【0042】
前記重合開始剤又はレドックス重合開始剤系は重合初期から水中に添加しておいてもよく、連続又は断続で添加してもよい。特にレドックス重合開始剤系では重合開始剤系の消費速度が速いことが多いため、これを補うために重合開始剤系を追加添加することが望ましい。
【0043】
乳化重合で重合体粒子(A)を製造する際、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等が挙げられる。具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等のヒンダートフェノール化合物、ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のヒンダートアミン化合物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加量は、用いた単量体100質量部に対して通常0.05〜5質量部程度である。これらの添加は、乳化重合の終了後の乳化液に添加する方法が一般的であるが、重合反応に影響しないものであれば重合初期から添加しておくこともできる。
【0044】
また、重合系を安定化させるためにコア単量体の一部を一括投入し、重合の場である粒子を生成させてから残りの単量体を連続追加する方法(シード重合法)を採用してもよい。これは、少量の単量体を加えた状態でしばらく撹拌することで単量体が分配されたミセル濃度が安定化するという効果を有するが、加える単量体量が少ないと十分に分配されず、効果が表れない。一方、加える単量体量が多すぎる場合にはミセルが肥大化するためこれを安定化するために乳化剤が使われ、ミセル濃度が減少する。この場合、重合の場であるミセルの濃度低下により重合速度が低下するだけでなく、粒子径が大きくなる。以上のような観点から、最初に一括添加するコア単量体量は、コア単量体全体の0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、上記コア単量体量は、コア単量体全体の10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。
【0045】
<ポリビニルアルコール系樹脂(B)>
ポリビニルアルコール系樹脂(B)としては、ポリビニルアルコール単独重合樹脂、ポリビニルブチラール、及びビニルアルコール単位を含む共重合樹脂が挙げられる。これらのポリビニルアルコール系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
ビニルアルコール単位を含む共重合樹脂の例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等が挙げられる。
重合体粒子(A)と混合するためには、ポリビニルアルコール系樹脂(B)に用いる樹脂を水溶液とすることが望ましいが、水に不溶な樹脂の場合には水分散液として用いてもよい。また、エマルション組成物製造の過程で水溶液となる場合には、その工程で重合体粒子(A)を混合することも可能である。
【0046】
<エマルション組成物>
前記重合体粒子(A)と前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)の水溶液又は分散液を混合することでエマルション組成物が得られる。ただし、ポリビニルアルコール単独重合樹脂の水溶液は、高濃度になると、溶液中で結晶化が起こり3次元構造をつくってゲル状となるため、濃度によっては加温することが望ましい。また、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂のような水に不溶な樹脂でも、水に微分散させることでコアシェル構造を有する重合体粒子(A)と均一に混合することができる。ポリビニルブチラールでも樹脂自体を微分散させるという手法で均一なエマルション組成物を得ることができるが、ポリビニルブチラールの場合には、ポリビニルアルコール単独重合樹脂の水溶液に重合体粒子(A)を混合した後、アセタール化する方法を採用することもできる。
【0047】
本発明のエマルション組成物では、重合体粒子(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が(A):(B)=1:99〜50:50であり、5:95〜40:60の範囲が好ましく、10:90〜30:70の範囲がより好ましい。重合体粒子(A)の上記質量比が1よりも少ないとエマルション組成物を各種用途に用いる際に重合体粒子(A)の有する靱性付与効果や柔軟化効果などが不足する。また、重合体粒子(A)の上記質量比が50よりも大きいと、エマルション組成物を各種用途に用いる際の高温の製造工程で重合体粒子(A)が著しく凝集する。
【0048】
<用途>
本発明のエマルション組成物は、包装用フィルムや酸素バイアフィルム等の各種フィルム、接着剤やコーティング剤等に用いられるバインダー、インクや塗料に含まれるビヒクル、及び繊維等に好適に用いることができる。
【0049】
フィルムは、前記エマルション組成物からキャスト法により得ることができる。乾燥に熱風を用いると表面が乾燥して膜ができるため、内部まで乾燥するのに時間を要するだけでなく泡噛み等の問題も発生しやすい。そのため、キャストの下面側から加熱してフィルム化することが望ましい。さらに、ドラムロールを用いることで連続製膜も可能である。
【0050】
繊維は、前記エマルション組成物から湿式紡糸法によって得ることができ、コアシェル構造を有する重合体粒子(A)を分散させた繊維とすることができる。即ち、エマルション組成物を紡糸液とし、凝固液中にノズルより吐出することで繊維を得ることができる。ただし、ポリビニルアルコール単独重合樹脂は、そのままでは水に溶解するため、繊維化した後にホルムアルデヒドでアセタール化した繊維として、水に不溶とすることが望ましい。
【実施例】
【0051】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
<ガラス転移温度(Tg)>
合成例により得られた重合体粒子(A)を含む溶液から塩析法によって固形分を取り出し、十分乾燥させた後、示差走査熱量計によりTgを求めた。なお、コアとシェルのTgが同時に測定されることから、昇温時に測定される示差走査熱量測定(DSC)曲線から求められる中間点のうち、高い温度の方がシェルのTgとなる。
装置;DSC822(メトラー トレド社製)
条件;昇温速度10℃/min
【0053】
<平均粒子径測定>
合成例により得られた重合体粒子(A)である重合体平均粒子1〜4を含む溶液をイオン交換水で約100倍に希釈し、動的光散乱法により測定した。
装置:nano Partica SZ−100 (株式会社堀場製作所製)
【0054】
<高温試験>
実施例又は比較例で得られたエマルション組成物をオートクレーブに入れ、内温93℃で4時間保持した。40℃に冷却してから液を取り出し、重合体粒子(A)の凝集塊の生成有無を目視で確認した後、上記と同様に動的散乱法によって凝集塊の平均粒子径を測定した。
装置:nano Partica SZ−100 (株式会社堀場製作所製)
【0055】
[合成例1](重合体粒子1;ポリ(トリシクロデシルメタクリレート)シェル)
イオン交換水300質量部を還流管付の反応容器に仕込み、ラテムルASK(乳化剤、アルケニルコハク酸ジカリウム、花王株式会社製)35.7質量部、及び過硫酸カリウム0.2質量部を添加した。室温で窒素置換を約30分行った後、60℃に昇温し、その温度で15分保持してからブチルアクリレート100質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.5質量部、アリルメタクリレート1.0質量部の混合物を約1時間かけて連続添加した。添加終了後、1時間反応を追込んだ後、別途窒素置換しておいたシェル層の単量体であるトリシクロデシルメタクリレート12.5質量部を約10分かけて連続添加した。添加終了後、1時間保持し、さらに100℃に昇温して1時間加熱し、重合体粒子1を含む溶液を得た。
動的光散乱で測定した重合体粒子1の平均粒子径は58.3nmであった。また、DSCで測定したシェルのTgは、178℃であった。
【0056】
[合成例2](重合体粒子2;ポリ(トリシクロデシルメタクリレート)シェル)
合成例1において、乳化剤にラテムルE−108MB(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王株式会社製)を用いた以外は合成例1と同様の方法で重合体粒子2を含む溶液を得た。
動的光散乱で測定した重合体粒子2の平均粒子径は61.3nmであった。また、DSCで測定したシェルのTgは、175℃であった。
【0057】
[合成例3](重合体粒子3;ポリメチルメタクリレート(PMMA)シェル)
合成例1において、シェルの単量体をメチルメタクリレートに変更した以外は合成例1と同様の方法で重合体粒子3を含む溶液を得た。
動的光散乱で測定した重合体粒子3の平均粒子径は59.8nmであった。DSCで測定したシェルのTgは、117℃であった。
【0058】
[合成例4](重合体粒子4;シェルなし)
イオン交換水300質量部を還流管付の反応容器に仕込み、ラテムルASK(乳化剤、アルケニルコハク酸ジカリウム、花王株式会社製)35.7質量部、及び過硫酸カリウム0.2質量部を添加した。室温で窒素置換を約30分行った後、60℃に昇温し、その温度で15分保持してからブチルアクリレート100質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.5質量部、アリルメタクリレート1.0質量部の混合物を約1時間かけて連続添加した。添加終了後、1時間保持し、さらに100℃に昇温して1時間加熱し、重合体粒子4を含む溶液を得た。
動的光散乱で測定した重合体粒子4の平均粒子径は52.2nmであった。
【0059】
[実施例1](エマルション組成物1)
重合度2400、鹸化度98%のポリビニルアルコールの10質量%水溶液と重合体粒子1を、固形分換算で重合体粒子1とポリビニルアルコール系樹脂の質量比が20:80となるように混合し、エマルション組成物1を調製した。
この組成物について上記高温試験を行ったところ、高温試験の条件では巨大凝集塊の生成は見られなかった。上記高温試験後の動的光散乱で測定した凝集塊の平均粒子径を表1に示す。
【0060】
[実施例2,3](エマルション組成物2,3)
実施例1において、重合体粒子2又は重合体粒子3を用いる以外は実施例1と同じ方法でエマルション組成物2,3を得た。
この組成物について上記高温試験を行ったところ、高温試験の条件では巨大凝集塊の生成は見られなかった。上記高温試験後の動的光散乱で測定した平均粒子径を表1に示す。
【0061】
[比較例1](エマルション組成物4)
実施例1において、重合体粒子4を用いる以外は実施例1と同じ方法でエマルション組成物4を得た。
このエマルション組成物について上記高温試験を行ったところ、液が白濁し、ミリオーダーの重合体粒子4の巨大凝集塊の生成が目視で確認できた。凝集が著しいため動的光散乱の測定は不可と判断した。
【0062】
【表1】
【0063】
[実施例4](エマルション組成物を用いてなるフィルム)
ホットプレート上にガラス板を設置し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)を敷いて60℃に加温した。次いで、実施例1において高温試験を行った後のエマルション組成物をワイヤーバーで流延し、乾燥させてフィルム1を得た。フィルムは折り曲げてもヒビや折り曲げた跡が生じず柔軟であった。
【0064】
[比較例2](ポリビニルアルコール(PVA)プレーンフィルム)
実施例1のエマルション組成物の代わりに、重合度2400、鹸化度98%のポリビニルアルコールの10質量%水溶液を用いた以外は実施例4と同様の方法でフィルム2を得た。フィルムは折り曲げるとヒビが生じてしまい柔軟ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、高温においても凝集しにくいエマルション組成物が提供される。このエマルション組成物を用いることで、凝集塊の無いフィルムや繊維等が得られる。

【国際調査報告】