特表-19087932IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧
再表2019-87932磁性材、それを用いた積層磁性材、積層パケットおよび積層コア、並びに、磁性材の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年5月9日
【発行日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】磁性材、それを用いた積層磁性材、積層パケットおよび積層コア、並びに、磁性材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/153 20060101AFI20191018BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20191018BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20191018BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   H01F1/153 108
   H01F27/24 Q
   H01F41/02 C
   H01F27/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2019-537853(P2019-537853)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-210523(P2017-210523)
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-56531(P2018-56531)
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514218241
【氏名又は名称】メトグラス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】内川 晃夫
(72)【発明者】
【氏名】森次 仲男
(72)【発明者】
【氏名】東 大地
【テーマコード(参考)】
5E041
5E062
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041BB04
5E041BC05
5E041BD03
5E041CA02
5E041HB05
5E041HB14
5E041NN01
5E041NN05
5E041NN06
5E041NN13
5E041NN18
5E062AA02
5E062AC06
(57)【要約】
飽和磁束密度に優れた接着剤が付与された磁性材、積層磁性材および積層コアを提供する。磁性材は、軟磁性アモルファス合金リボン1と、前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に配置された樹脂層2とを備え、前記樹脂層は、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む。樹脂は、25以下のショアD硬さを有していてもよく、1以上のショアD硬さを有していてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性アモルファス合金リボンと、
前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に配置された樹脂層とを備え、前記樹脂層に用いる樹脂としてショアD硬さが60以下の樹脂を用いた磁性材。
【請求項2】
前記樹脂層に用いる樹脂としてショアD硬さが25以下の樹脂を用いた請求項1に記載の磁性材。
【請求項3】
前記樹脂層に用いる樹脂としてショアD硬さが1以上の樹脂を用いた請求項1または2に記載の磁性材。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含む請求項1から3のいずれかに記載の磁性材。
【請求項5】
前記樹脂は、ポリスチレン樹脂をさらに含む請求項4に記載の磁性材。
【請求項6】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し、1質量%以上の割合で前記ポリスチレン樹脂を含む請求項5に記載の磁性材。
【請求項7】
前記磁性材は、1.48T以上の磁束密度(B80)を有する請求項1から6のいずれかに記載の磁性材。
【請求項8】
前記樹脂層は0.5μm以上1.45μm以下の厚さを有する請求項1から7のいずれかに記載の磁性材。
【請求項9】
前記軟磁性アモルファス合金リボンは、10μm以上50μm以下の厚さを有する請求項1から8のいずれかに記載の磁性材。
【請求項10】
前記軟磁性アモルファス合金リボンは、
Fe、Si、Bの合計量を100原子%としたとき、
Siが、0原子%以上10原子%以下、
Bが、10原子%以上20原子%以下、
である組成を有する合金からなる、請求項1から9のいずれかに記載の磁性材。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が、複数積層された積層磁性材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が、巻回、または、積層された積層コア。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、少なくとも1つの電磁鋼板とが積層された積層コア。
【請求項14】
前記積層磁性材と、前記少なくとも1つの電磁鋼板との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えた、請求項13に記載の積層コア。
【請求項15】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、
前記積層磁性材の積層方向における端面の少なくとも一部に配置された少なくとも1つの電磁鋼板と、
を含む積層パケット。
【請求項16】
前記電磁鋼板と前記積層磁性材との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えた、請求項15に記載の積層パケット。
【請求項17】
軟磁性アモルファス合金リボンを用意し、
前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に、ショアD硬さが60以下の樹脂と溶媒とを含む接着剤を塗布する、
磁性材の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂はポリエステル樹脂を主成分として含む請求項17に記載の磁性材の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対して1質量%以上のポリスチレン樹脂をさらに含む、請求項18に記載の磁性材の製造方法。
【請求項20】
前記樹脂は、30℃以下のガラス転移温度を有する請求項17から19のいずれかに記載の磁性材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は磁性材、積層磁性材、積層パケットおよびトランス用等の積層コア、並びに、磁性材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファス合金リボンは積層または巻回されてトランスのコアなどに用いられる。取り扱いの利便性のため、複数枚を積層して部品として用いる場合があり、例えば特許文献1に開示されるように、積層のために接着剤が付与された磁性材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、磁束密度の低減防止に優れた、接着剤が付与された磁性材、それを用いた積層磁性材、積層パケットおよび積層コア、並びに磁性材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の磁性材は、軟磁性アモルファス合金リボンと、前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に配置された樹脂層とを備え、前記樹脂層に用いる樹脂として、ショアD硬さが60以下の樹脂を用いる。
【0006】
前記樹脂層に用いる樹脂としてショアD硬さが25以下の樹脂を用いることが好ましい。また、前記樹脂層に用いる樹脂としてショアD硬さが1以上の樹脂を用いることが好ましい。
【0007】
また、前記樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0008】
また、前記樹脂は、ポリスチレン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0009】
また、前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し、1質量%以上の割合で前記ポリスチレン樹脂を含んでいてもよい。
【0010】
また、前記磁性材は、1.48T以上の磁束密度(B80)を有していてもよい。
【0011】
また、前記樹脂層は、0.5μm以上1.45μm以下の厚さを有していてもよい。
【0012】
また、前記軟磁性アモルファス合金リボンは、10μm以上50μm以下の厚さを有していてもよい。
【0013】
前記軟磁性アモルファス合金リボンは、Fe、Si、Bの合計量を100原子%としたとき、Siが、0原子%以上10原子%以下、Bが、10原子%以上20原子%以下、である組成を有する合金であってもよい。
【0014】
本開示の積層磁性材は、上記いずれかに記載の磁性材が、複数積層されている。
【0015】
本開示の積層コアは、上記のいずれかに記載の磁性材が、巻回、または、積層されている。
【0016】
本開示の積層コアは、上記いずれかに記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、少なくとも1つの電磁鋼板とが積層されている。
【0017】
前記積層磁性材と、前記少なくとも1つの電磁鋼板との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えていてもよい。
【0018】
本開示の積層パケットは、上記記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、前記積層磁性材の積層方向における端面の少なくとも一部に配置された少なくとも1つの電磁鋼板とを含む。
【0019】
前記電磁鋼板と前記積層磁性材との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えていてもよい。
【0020】
本開示の磁性材の製造方法は、軟磁性アモルファス合金リボンを用意し、前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に、ショアD硬さが60以下の樹脂と溶媒とを含む接着剤を塗布する。
【0021】
前記樹脂はポリエステル樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0022】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対して1質量%以上のポリスチレン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0023】
前記樹脂は、30℃以下のガラス転移温度を有していてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に、ショアD硬さが60以下の樹脂を用いた樹脂層を形成することにより、優れた磁束密度を備えた磁性材、積層磁性材、積層コア、積層パケットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、磁性材の実施形態の一例を示す斜視図である。
図2図2は、積層磁性材の実施形態の一例を示す斜視図である。
図3】(A)(B)は、積層コアの実施形態の一例を示す斜視図である。
図4図4は、ショアD硬さの値と、磁束密度B80との関係を示す図である。
図5図5は、樹脂層の厚さと、磁束密度B80との関係を示す図である。
図6図6は、樹脂層の厚さと、保磁力Hcとの関係を示す図である。
図7図7は、ポリスチレン樹脂の添加量と、磁気特性(B80、Br、Hc)との関係を示す図である。
図8図8は、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層を備えた磁性材の直流磁気特性を示す図である。
図9図9は、ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂層を備えた磁性材の直流磁気特性を示す図である。
図10】別の積層コアの実施形態の一例を示す斜視図である。
図11A】積層コアを形成する奇数層の四角環構造を示す平面図である。
図11B】積層コアを形成する偶数層の四角環構造を示す平面図である。
図12】積層パケットの実施形態の一例を示す斜視図である。
図13】(A)は図12の概略平面図であり、(B)は図12の概略側面図である。
図14図12の積層パケットを複数繋ぎ合わせた形態を示す概略側面図である。
図15】積層パケットの実施形態の他の例を示す斜視図である。
図16】(A)は図15の概略平面図であり、(B)は図15の概略側面図である。
図17図15の積層パケットを別の積層パケットと繋ぎ合わせた形態を示す概略側面図である。
図18】(A)は積層パケットの実施形態の他の例の概略平面図であり、(B)は(A)の概略側面図である。
図19図18の積層パケットを複数繋ぎ合わせた形態を示す概略側面図である。
図20】(A)は積層パケットの実施形態の他の例の概略平面図であり、(B)は(A)の概略側面図である。
図21図20の積層パケットを複数繋ぎ合わせた形態を示す概略側面図である。
図22】四つの積層パケットを接合した2種の四角環を交互に重ねて積層コアとすることを説明するための概略説明図である。
図23】接合部をステップラップ構造にする際に好適な積層パケットの一例を示す図であり、(A)は積層パケットを水平な机面に載置し、積層パケットを積層方向上方から観察した際の平面図であり、(B)は(A)を側部から観察した際の側面図である。
図24】四つの積層パケットの接合部をステップラップ構造にして接合した積層コアを示す平面図である。
図25】接合部のステップラップ構造を説明するための概略断面図である。
図26】積層パケットの実施形態の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願発明者は、特許文献1に開示されるような接着剤が付与された磁性材を詳細に検討した。アモルファス合金リボンは、磁歪が大きいことが知られている。そのため、層間に接着剤を塗布して積層体を製造しようとすると、接着剤が硬化する際に体積が減少すること、および、加熱して接着した場合にはアモルファス合金リボンと接着剤の熱膨張係数の差があることから、接着剤がアモルファス合金リボンに対して主に面内方向に圧縮応力を付与する状態となる。その結果、所定の磁界を印加した時の磁束密度が低下するという現象が起きる。所定の磁界を印加した時の磁束密度が低下すると、交流コアを励磁した時に発生する騒音が大きくなってしまう。
【0027】
この圧縮応力は、接着剤を構成している樹脂の種類によって異なる。つまり、積層のための樹脂層の種類によって磁気特性、特に、磁束密度B80が大きく異なり得ることが分かった。この知見に基づき、本願発明者は、新規な磁性材を想到した。
【0028】
なお、B80は、80A/mの磁場で磁化したときの磁束密度(T)を表す。また、後述するBrは、80A/mの磁場で磁化した後、磁場を0A/mに変化させた場合の残留磁束密度(T)を表す。
【0029】
以下、本開示の磁性材、積層磁性材、積層コア、積層パケットおよび磁性材の製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の磁性材の一実施形態を示す模式的な斜視図である。尚、図中の形態は模式的に示したものであり、実際の寸法とは必ずしも一致しない。本開示の磁性材11は、軟磁性アモルファス合金リボン1と、軟磁性アモルファス合金リボン1の少なくとも一面に配置された樹脂層2とを備える。磁性材11は、1.48T以上の磁束密度B80を有することが好ましい。軟磁性アモルファス合金リボン1は、電力配電用、変圧器用のコア(磁心)および電子・電気回路用のコアに適した種々の組成を有する軟磁性アモルファス合金リボンから選択することができる。
【0031】
例えば、軟磁性アモルファス合金リボン1は、Fe、SiおよびBの合計量を100原子%としたとき、Siが、0原子%以上10原子%以下、Bが、10原子%以上20原子%以下であり、残部をFeが占める組成を有する。Si量およびB量がこの範囲を外れると、ロール冷却で製造する際にアモルファス合金とすることが難しくなったり、量産性が低下したりしやすい。添加物あるいは不可避的不純物として、Mn、S、C、Al等、Fe、SiおよびB以外の元素を含んでいてもよい。軟磁性アモルファス合金リボン1は上述の組成を有していることが好ましく、結晶構造を持たないアモルファス(非晶質)である。なお、Si量は、3原子%以上10原子%以下が好ましい。また、B量は、10原子%以上15原子%以下が好ましい。また、Fe量は、高いB80を得るために、78原子%以上、さらには79.5原子%以上、さらには80原子%以上、さらには81原子%以上とすることが好ましい。なお、軟磁性アモルファス合金リボン1は、添加物あるいは不可避不純物を含むことができるが、Fe、SiおよびBの割合は、95質量%以上であることが好ましく、さらには98質量%以上であることがより好ましい。また、Feの50%原子未満をCoやNiで置換してもよい。
【0032】
軟磁性アモルファス合金リボン1は薄い帯(条)形状または帯から切断された所定の形状を有している。図1は、切断された所定の形状の一例を示している。軟磁性アモルファス合金リボン1が帯形状を有している場合、軟磁性アモルファス合金リボン1は、コイル状に巻回されていてもよい。尚、帯形状の場合、使用目的に応じて切断して用いることができる。
【0033】
軟磁性アモルファス合金リボン1の幅は、特に限定されないが、例えば、100mm以上とすることができる。リボンの幅が100mm以上であると、実用的な変圧器を好適に作製できる。リボンの幅は、125mm以上であることがより好ましい。一方、リボンの幅の上限は特に限定されないが、例えば、幅が300mmを超えると、幅方向に均一な厚さのリボンを得られないことがあり、その結果、形状が不均一な為に部分的に脆化したり、磁束密度B80が低下する可能性がある。リボンの幅は、275mm以下であることがより好ましい。
【0034】
軟磁性アモルファス合金リボン1の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。厚さが10μm未満であると、軟磁性アモルファス合金リボン1の機械的強度が不十分となる傾向がある。厚さは、15μm以上であることがより好ましく、更に、20μm以上であることがより好ましい。一方、リボンの厚さが50μmを超えると、アモルファス相を安定して得ることが難しくなる傾向がある。厚さは、35μm以下であることがより好ましく、更に、30μm以下であることがより好ましい。
【0035】
軟磁性アモルファス合金リボン1は、結晶構造に由来する異方性がなく、磁壁の移動を妨げる結晶粒界が存在しないため、高磁束密度でありながら高透磁率、低損失の優れた軟磁気特性を有する。また、軟磁性アモルファス合金リボン1は、単体で、1.48T以上の磁束密度B80を有することが好ましい。
【0036】
アモルファス合金リボン1の表面粗さは、JIS B0601−2001に準拠して測定される算術平均粗さRaにて0.20μm〜0.50μmの範囲であることが好ましく、0.20μm〜0.40μmの範囲であることがより好ましい。
【0037】
表面粗さRaが0.20μm以上であると、アモルファス合金リボンを積層したときの層間絶縁を確保する観点で有利である。表面粗さRaが0.40μm以下であると、積層コアの占積率を高める点で有利である。
【0038】
さらに本開示の磁性材は、得られる磁性材の保磁力の増大を抑制できるという副次的な効果を有する。保磁力の増加によるコアロスの増大を抑えられるので、他の軟磁性材料に対する競合優位性を保てる。
【0039】
軟磁性アモルファス合金リボン1は、種々の公知の方法により製造することができる。例えば、上述した組成を有する合金溶湯を用意し、冷却ロール表面に合金溶湯を吐出させることによって、冷却ロールの表面に合金溶湯の膜を形成させ、表面にて形成されたアモルファス合金リボンを、剥離ガスの吹きつけによって冷却ロールの表面から剥離し、巻き取りロールによってロール状に巻き取ることにより得られる。
【0040】
樹脂層2は、軟磁性アモルファス合金リボン1の2つの主面1a、1bのうち、少なくとも一面に配置されている。図1では、主面1aに樹脂層2が配置されている。樹脂層2は、60以下のショアD硬さを有する樹脂を用いて形成される。樹脂層2が他の磁性材との接合に用いられため、樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。本開示において、ショアD硬さとは、タイプDデュロメータ硬さ(durometer hardness)である。デュロメータ硬さとは、デュロメータ硬さ試験機を用いて、タイプDの形状の押針を、規定のスプリングの力で試験片表面に押し付け、そのときの押針の押込み深さから得られる硬さであり、JIS K6253で規定される試験方法によって測定される値をいう。樹脂のショアD硬さが60以下であれば、樹脂層を用いないで積層したものに対し、90%以上のB80を有する積層磁性材が得られる。
【0041】
ショアD硬さの上限は、40、さらには30、さらには25とすることが好ましい。ショアD硬さの下限は、1、さらには3、さらには10、さらには15とすることが好ましい。ショアD硬さがこれらの範囲の樹脂を用いることで、さらに高いB80を持つ積層磁性材が得られる。
【0042】
樹脂層2に含まれる樹脂のショアD硬さは、磁性材11の状態では、正確な測定が困難である。本願明細書では、樹脂層2に含まれる樹脂のショアD硬さは、上述した試験方法に従って軟磁性アモルファス合金リボン1に配置する前の単体の状態で測定した値、つまり、樹脂の物性としての値を意味する。つまり、樹脂層2は樹脂を含んでおり、この樹脂は、単体で測定した物性値として60以下のショアD硬さを有する。
【0043】
樹脂層2は、軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に、層状の樹脂が配置されることで形成される。樹脂層2を形成するため、具体的には、樹脂と溶媒を含む接着剤を作製し、その接着剤を塗布し、その後、溶媒が蒸発されることで形成される。用いる樹脂は、上記の通り、ショアD硬さが60以下の樹脂が用いられる。この樹脂と溶媒等が混合された接着剤のショアD硬さも、好ましい範囲は、上記と同様である。また、後述するように、樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含んでいてもよい。また、樹脂はポリエステル樹脂に対して1質量%以上のポリスチレン樹脂をさらに含んでいてもよい。後述するように、樹脂は、ガラス転移温度が30℃以下のものを用いることができる。
【0044】
樹脂層2は、容易に剥離しないように、軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1a、1bの少なくとも一面に接着されていることが好ましい。樹脂層2は、軟磁性アモルファス合金リボン1の2つの主面1a、1bにそれぞれ配置されていてもよい。樹脂層の形成方法は、上述した接着剤を、スプレーやコーターで塗布する等、既知の手段を採用できる。樹脂層2は、主面1a、1bの全体に配置されていてもよいし、主面1a、1b上にストライプ状、ドット状等、樹脂層2が配置される領域と樹脂層2が配置されない領域とを含む所定のパターンで設けられていてもよい。
【0045】
所定の形状の磁性材11を積層した後、または、磁性材11をコイル状に巻回した後、加圧しながら熱を加え樹脂層2を軟化させる(熱圧着)。これにより、樹脂層2の主面2aが、磁性材11の他の部分または他の軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1bと接触し、この状態で樹脂層が硬化するまで冷却することで、樹脂層2が積層または巻回された磁性材11の軟磁性アモルファス合金リボン1を互いに接合する。尚、所定の形状の磁性材11は、軟磁性アモルファス合金リボンを所定の形状に切断した後、樹脂層を形成させたものでも良いし、帯状の軟磁性アモルファス合金リボンに樹脂層を形成させた後、所定の形状に切断されたものでも良い。
【0046】
今回の検討において、本発明者は、磁性材11の積層または巻回によって得た積層磁性材や積層コアは、樹脂層2の厚さが同じであっても、用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さが異なれば、磁束密度が変化することを知見した。具体的には、用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さが大きいほど、積層磁性材や積層コアの磁束密度が小さくなることが分かった。詳細な理由は明らかではないが、以下の理由と推察される。つまり、樹脂層2を軟化させて隣接する2つの軟磁性アモルファス合金リボン1を接合する際、熱による樹脂層2および軟磁性アモルファス合金リボン1の膨張/収縮の結果、軟磁性アモルファス合金リボン1は樹脂層2から応力を受ける。樹脂層2のショアD硬さが大きいほど、この応力も大きくなる。そのため、アモルファス合金は磁歪が大きいためにこの応力によって望ましくない磁気異方性が付与され、磁束密度が低下すると考えられる。
【0047】
以下において説明するように、用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さが60以下であれば、磁性材11から得られる積層磁性材や積層コアは、樹脂層2を含まないで軟磁性アモルファス合金リボンのみを積層または巻回させたものに対し、90%以上、さらには93%以上の磁束密度B80が得られる。つまり、積層し固着させることによる磁束密度B80の低減を抑制することができる。アモルファス合金は磁歪が大きく、特にFe基のアモルファス合金は磁歪が約30ppmと大きいため応力感受性が極めて高く、僅かな応力でもその磁束密度が劣化することが一般的に知られている。そのため樹脂を塗布し積層して固着させた後では、磁束密度B80が、塗布しないものより低下する。B80が低下すると騒音が大きくなる。用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さが小さいほど、磁性材11から得られる積層磁性材や積層コアの磁束密度B80が大きくなりやすい(B80の低下が抑制される)。このため、高い磁束密度B80が求められる場合には、用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さは小さいほうが好ましい。ショアD硬さの下限値は特に限定されないが、ショアD硬さが小さくなり過ぎると、B80が小さくなることがある。また、接着剤としての十分な強度が得られないことがある。このため、用いる樹脂または形成する樹脂層2のショアD硬さは1以上であることが好ましい。
【0048】
また、用いる樹脂は、30℃以下のガラス転移温度を備えることが好ましい。これによりB80が高い積層磁性材を得ることができる。この理由は、ガラス転移温度が30℃以下であれば、熱圧着した後に室温まで冷却してもガラス転移が起こらず、樹脂層2が柔らかいままであり、応力が抑えられるものと推察される。
【0049】
樹脂層2の厚さは、0.5μm以上1.45μm以下を満たしていることが好ましい。樹脂層が厚いと、軟磁性アモルファス合金リボンに与える応力が大きくなるので、積層磁性材や積層コアの磁束密度B80が低下しやすい。また、磁性材11から得られる積層磁性材や積層コアで使用できる実効的な磁束密度は、軟磁性アモルファス合金リボン1の占積率と飽和磁束密度の積で表される。積層磁性材やコアに占める磁性材11の体積分率を上げるためにも樹脂層2はあまり厚くできない。これらの理由から樹脂層の厚さは1.45μm以下とすることが好ましい。一方で、樹脂層2が薄くなりすぎると、接着強度が十分に得られない可能性がある。このため、樹脂層の厚さは、0.5μm以上とすることが好ましい。樹脂層の厚さの上限は、1.40μm、さらには1.3μmとすることが好ましい。また、樹脂層の厚さの下限は、0.7μm、さらには1.0μmとすることが好ましい。軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1aおよび主面1bの両方に、樹脂層2を設ける場合には、主面1aの樹脂層2と主面1bの樹脂層2の合計の厚さが、前述した範囲内であることが好ましい。また、表裏の区別が不要であるという観点では、主面1aの樹脂層2と主面1bの樹脂層2とは同じ厚さを有していることが好ましい。
【0050】
用いる樹脂または樹脂層2は、上述した範囲のショアD硬さを有する限り、どのような高分子を主成分として含んでいてもよい。樹脂層2のショアD硬さは、主成分として含まれる高分子樹脂が有するショアD硬さで決定される。高分子樹脂が有するショアD硬さは、高分子の繰り返しユニットの化学構造、高分子の分子量、架橋の割合等によって調整し得る。例えば、ポリエステル樹脂は、主成分(樹脂成分に占める質量割合が最も高い成分)として好適に用いることが可能な高分子樹脂の例であり、化学構造や分子量等を調節することによって、3〜80程度のショアD硬さを有することが可能である。このほか、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ニトリルゴム、エポキシ樹脂、変性オレフィン樹脂等も樹脂層2の主成分として用いることができる。樹脂は、塗布・乾燥後の磁性材の磁束密度B80が大きく、塗布・乾燥後の樹脂層の露出面の粘着性が極めて小さく、かつ、熱を付与することで粘着性が再発現するものが好ましい。これらの特性を持つものとして、上記の樹脂の中で、ポリエステル樹脂を主成分とするものが特に好ましい。
【0051】
用いる樹脂または樹脂層2は、上述した主成分に加えて、副成分および/または不可避的不純物を含んでいてもよい。例えば、樹脂層2は、メラミン等の架橋剤を副成分として含んでいてもよい。また、樹脂層2は、ポリスチレンを副成分として含んでいてもよい。例えば、コイル状に巻き取った状態や、積層された状態で磁性材11を保管する場合、熱圧着する前であっても、磁性材11が互いに付着し、分離するのが容易ではないことがある。このような場合には、用いる樹脂または樹脂層2は、例えば、ポリスチレン樹脂を副成分として含んでいてもよい。これにより、熱圧着する前の樹脂層2の主面の粘着性(タック性)を抑制することができる。
【0052】
特に、用いる樹脂または樹脂層の主成分がポリエステル樹脂である場合、樹脂または樹脂層はポリスチレン樹脂を副成分として含むことが好ましい。ポリシロキサン等の副成分を用いる場合と比べ、磁性材11同士の接着強度が低下することを抑制しやすく、かつ、熱圧着する前の粘着性を抑制することができる。
【0053】
たとえば、ポリスチレン樹脂の含有量は、ポリエステル樹脂に対して1質量%以上の割合とすることができる。ポリスチレン樹脂は比較的、比重が小さいため、磁性材11を作製する際、樹脂層2の主面2a近傍に集まる。ポリスチレン樹脂は、炭素の主鎖に対して水素のみを側鎖に含むため、極性が小さい。このため、樹脂層2の主面2aに位置することによって、樹脂層2の主面2aの粘着性を抑制することができる。ポリエステル樹脂に対してポリスチレン樹脂の量が1質量%未満である場合、粘着性の抑制効果が十分ではない。ポリスチレン樹脂の量の下限値は、3質量%以上、さらには6質量%以上が好ましい。また、ポリスチレン樹脂は、ポリエステル樹脂の量よりも少ない範囲であればよいが、ポリエステル樹脂に対して30質量%を超える場合は、B80が低下しやすい。30質量%以下であれば、例えば、得られる積層磁性材は、樹脂層を用いない積層磁性材のB80に対して、93%以上のものが得られる。ポリスチレン樹脂の量の上限値は、25質量%、さらには20質量%、さらには15質量%が好ましい。なお、ポリエステル樹脂とポリスチレン樹脂の含有量は、樹脂層を適当な溶媒に溶解し、ガスクロマトグラフィーやIR分析(赤外分光法分析: infrared spectroscopy)にて算出が可能である。例えば、IR分析において、ポリスチレン樹脂とポリエステル樹脂の2種が混合された樹脂を分析する場合には、周波数が1510cm−1と1370cm−1のスペクトルの強度比(1510cm−1/1370cm−1)を元に、ポリスチレン樹脂の含有量を算出できる。
【0054】
磁性材11の製造方法を説明する。磁性材11は、軟磁性アモルファス合金リボン1に樹脂層2を配置することによって作製することができる。具体的には、軟磁性アモルファス合金リボン1を用意し、軟磁性アモルファス合金リボン1の少なくとも一面に、ショアD硬さが60以下の樹脂と溶媒とを含む接着剤を塗布することによって得られる。好ましくは、塗布後に溶媒の少なくとも一部を蒸発させる。
【0055】
まず、上述した組成を有する軟磁性アモルファス合金リボン1を用意する。軟磁性アモルファス合金リボン1はコイル状に巻き取られた長尺の形状を有していてもよいし、所定の形状に切断されていてもよい。
【0056】
次に、樹脂の塗布について説明する。樹脂の主成分と、必要に応じて用意した副成分とを酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンなどの適当な溶媒に溶解させ、熱可塑性の接着剤を得る。均一な樹脂層2を形成できる限り、主成分および副成分は溶媒に完全に溶解せず、分散していてもよい。主成分および副成分と溶媒との割合は、接着剤を軟磁性アモルファス合金リボン1上に配置するのに適した濃度となるように調整することができる。調製した接着剤をコーター等によって、軟磁性アモルファス合金リボン1に塗布する。
【0057】
接着剤の塗布後、接着剤から溶媒を蒸発させる。例えば、80℃以上200℃以下の温度で、1分以上30分以下の時間、接着剤が塗布された軟磁性アモルファス合金リボン1を加熱し、溶媒を蒸発させる。これにより、接着剤から溶媒が除去され、樹脂が軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1aに塗布される。これにより樹脂層2が配置された磁性材11が得られる。
【0058】
溶媒を蒸発させた状態では、樹脂層2は、弱い力で軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1aに接着されている。
【0059】
磁性材11によれば、軟磁性アモルファス合金リボン1の少なくとも一面にショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層2が設けられているため、磁性材11を積層または巻回し、熱圧着によって積層磁性材やコアを得た場合に、樹脂層2がない場合に対して、90%以上、さらには93%以上の高い磁束密度B80を得ることが可能である。また、樹脂層2が副成分としてポリスチレン樹脂を含むことによって、熱圧着前には表面の接着性がほとんどなく、取り扱い性に優れた磁性材11を実現することが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
図2は、本開示の積層磁性材の一実施形態を示す模式的な斜視図である。本開示の積層磁性材12は、複数の軟磁性アモルファス合金リボン1と、複数の軟磁性アモルファス合金リボン1間に配置された樹脂層2とを備える。
【0061】
積層磁性材12は短冊形状を有する第1の実施形態の磁性材11を複数積層し、熱圧着させることによって作製されている。熱圧着は、例えば、積層方向において、0.1MPa以上0.4MPa以下の圧力をプレス機で印加しながら、80℃以上200℃以下の温度で、1分以上15分以下の時間、積層体を保持する(熱圧着)手段を採用できる。これにより、樹脂層2が軟化し、軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1aおよび樹脂層2の上に位置する他の磁性材11の軟磁性アモルファス合金リボン1の主面1bの微小な凹凸に入りこむ。その後、積層体を室温まで冷却し、プレス機から取り出すことによって、積層磁性材12が得られる。これにより、複数の磁性材11が積層一体化された積層磁性材12が得られる。
【0062】
その後、必要により、歪取りのためのアニール処理を行うこともできる。アニール処理により、熱圧着によって軟磁性アモルファス合金リボン1に付与される歪が緩和されるので、コアロスが低減できる。アニール処理は、積層磁性材を熱処理してもよいし、後述の積層コアをアニール処理してもよい。アニール処理は、最高温度が100℃以上200℃以下とすることが好ましい。100℃以上であれば、磁気特性の向上効果が十分に見込める。また、200℃以下であれば、樹脂層が溶融することを抑制できる。最高温度の下限は110℃とすることがさらに好ましい。また、最高温度での熱処理時間は0.1h以上20h以下が好ましい。0.1h以上であれば、磁気特性の向上効果が十分に見込める。また、20h以下であれば、樹脂層が溶融することを抑制できるとともに、製造時間を短縮化できる。
【0063】
また、軟磁性アモルファス合金リボンは、薄帯長手方向に磁化容易方向を持つように熱処理されたものがトランス用のリボンとして有効である。そのような軟磁性アモルファス合金リボンを得るための方法として、熱処理する場合に、例えば、張架した状態で熱処理(テンションアニール)する方法、又は薄帯長手方向に磁場をかけた状態で熱処理する方法、張架しながら薄帯長手方向に磁場をかけた状態で熱処理する方法、等が好適である。このような熱処理を施された軟磁性アモルファス合金リボンに樹脂層を形成して、磁性材を構成すればよい。
【0064】
積層磁性材12において、隣接する一対の軟磁性アモルファス合金リボン1は間に位置する樹脂層2によって接着されている。樹脂層2と各軟磁性アモルファス合金リボン1との間は、磁性材11に比べて、機械的結合によって、より強力に接着されている。熱圧着時の保持温度と室温との温度差による軟磁性アモルファス合金リボン1の収縮量および樹脂層2の収縮量は異なり、軟磁性アモルファス合金リボン1は樹脂層2から応力を受け得る。しかし、樹脂層2は60以下のショアD硬さを有しており、軟磁性アモルファス合金リボン1に与える応力は比較的小さい。よって、積層磁性材12において、応力による磁気特性の低下、特に、磁束密度の低下が抑制される。よって高い磁束密度B80を備えた積層磁性材12が得られる。
【0065】
積層磁性材12は、例えば、2〜50枚程度の軟磁性アモルファス合金リボン1を積層させて構成することができ、例えば、角型トランス用コアの部品として好適に用いることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図3は、トランス用に用いる本開示の積層コアの一実施形態を示す模式的な斜視図である。図3(a)は、積層磁性材12を環状になるように4つ組み合わせた積層コア13である。なお、積層磁性材12を、さらに積層方向に複数積層させて、この積層コアの磁路として用いることもできる。また、図3(b)は、磁性材11をコイル状に巻回した積層コア13である。どちらの積層コアも、磁性材11からなる。巻回した積層コア13は、コイル状に巻回された軟磁性アモルファス合金リボン1と巻回された軟磁性アモルファス合金リボン1の間に配置された樹脂層2とを含む。
【0067】
第2の実施形態で説明したように、巻回した積層コア13は、熱圧着によって軟磁性アモルファス合金リボン1と樹脂層2との界面には機械的結合が形成され、軟磁性アモルファス合金リボン1の内側の環とその外側に位置する環とは、樹脂層2によって接合されている。
【0068】
積層コア13において、軟磁性アモルファス合金リボン1は、60以下のショアD硬さの樹脂からなる樹脂層2によって接着されているため、応力による磁束密度の低下が抑制される。よって積層コア13は高い磁束密度B80を備える。
【0069】
(第4の実施形態)
以下、積層コアの別の実施形態について説明する。
【0070】
積層コアの別の実施形態は、複数枚の磁性材と少なくとも1つの電磁鋼板とを積層した積層コアである。この実施形態では、積層コアは、積層磁性材の積層方向における両方の端面の少なくとも一部に電磁鋼板が配置された積層パケットを用い、複数の積層パケットが積層されたものとすることができる。電磁鋼板は、積層磁性材の積層方向における両方の端面のそれぞれの少なくとも一部に配置することが好ましく、端面の略全体に配置されていてもよい。ここで積層方向における端面とは、積層された複数の磁性材のそれぞれの主面のうち、最も下および上に位置する面、つまり、上面および下面を意味する。
【0071】
磁性材と電磁鋼板、積層磁性材と電磁鋼板の間にも、ショアD硬さが60以下の樹脂を塗布して樹脂層を形成することができる。その後、熱圧着することで、磁性材同士だけでなく、磁性材と電磁鋼板、積層磁性材と電磁鋼板が、樹脂層により機械的に固定される。これにより、積層磁性材における効果と同様に、高い磁束密度B80を備える積層パケットや積層コアを得ることができる。
【0072】
また、積層コアの別の実施形態において、閉磁路の積層コアを複数のコアブロックで構成する。このコアブロックは、複数の積層パケットを積層して構成することができる。
【0073】
コアブロックは、積層コアの形状が例えば四辺形(正方形又は矩形等)である場合、四辺形の四つの辺をなす構造部分を指し、複数の積層パケットを積層した積層物がクランプ等で一時的に拘束固定された状態のもの、及び樹脂等で固定された状態のものが含まれる。
【0074】
積層コアは、コアブロックが複数の積層パケットを用いて構成されているので、極めて薄い磁性材の取り扱いが容易になるだけでなく、任意の形状及び大きさの積層コアにおける組み立て作業性が飛躍的に改善される。つまり、積層コアは、複数の磁性材を積み重ねた積層磁性材や、その積層磁性材の積層方向における端面の少なくとも一部に電磁鋼板を配置された積層パケットを一単位として、組み上げられる。これにより、積層コアに求められる任意の形状及び大きさに適用し得、製造時の積み精度、及び磁性材に必要な強度を安定的に確保することが可能である。
【0075】
また、積層パケットは、積層磁性材と電磁鋼板が、積層面で固定された構造とすることもできる。
【0076】
なお、「積層面」とは、積層された複数のアモルファス合金リボン及び電磁鋼板の各厚みに相当する側面が集まって形成される面を指す。
【0077】
積層磁性材と電磁鋼板を固定する具体的な構造としては、積層磁性材から電磁鋼板までの積層面で塗布された樹脂層(以下、積層面樹脂層という)により固定する方法を採用できる。
【0078】
積層面に配置する樹脂層として、エポキシ系樹脂を用いることができる。積層パケットにおける、積層磁性材を形成する複数の磁性材と電磁鋼板とは、積み重ねただけでは位置ずれを起こす等により所定の形状を保ち難いが、エポキシ系樹脂を用いて少なくとも一部が固定されることで、長期間にわたって安定的に所望とする形状を維持することができる。
【0079】
積層コアは、図24に示すように、閉磁路は、四つのコアブロックが四角環状に接合されて形成されており、互いに隣り合う二つのコアブロック間に、それぞれの積層パケットのコアブロックの長手方向の端部が互いに接合された接合部を有し、前記接合部は、前記積層パケットの積層磁性材の端部が前記長手方向に対して傾斜角θで傾斜し、かつ前記積層磁性材を前記長手方向にずらして形成された階段状の傾斜面で、互いに接合される態様が好ましい。尚、具体的な構造は後述する。
【0080】
前記積層磁性材の端部における傾斜角θは、コアブロックの長手方向に対して30°〜60°の傾斜角(すなわち、45°に対して−15°〜+15°の振れ角)で傾斜させて形成されている態様がより好ましい。
【0081】
例えば四つの積層パケットを四角環状に接合することで、閉磁路のコアブロックを作製することができるが、積層磁性材の磁化容易方向が長手方向で、かつ積層磁性材が矩形状である場合、積層磁性材の長手方向の端部は、磁束が別の積層磁性材に向けて曲がりながら流れるので、磁化容易方向とは異なる方向に磁束が流れることとなり、鉄損と皮相電力が増加しやすい。前記の実施形態とすることで、コアブロックの角部分においても、流れる磁束の方向と、積層磁性材の磁化容易方向を揃えやすくなるので、エネルギー損失を低く抑えることができる。
【0082】
積層コアは、図18図19に示すように、互いに隣り合う二つのコアブロック間に、それぞれの積層パケットが前記積層方向における端面で互いに接合する接合部を有し、前記接合部において、一方のコアブロックにおける積層パケットの電磁鋼板と、他方のコアブロックにおける積層パケットの電磁鋼板と、が対向配置されて接している態様が好ましい。
【0083】
接合部では、二つのコアブロックの端部が互いに重なった状態にあるため、一方のコアブロックの電磁鋼板と、他方のコアブロックの電磁鋼板と、が互いに向き合う状態であると、滑り性を保持しやすく、コアブロック間における積層パケットの抜き差しが容易になり、積層コアの組み立て又は解体が容易に行える。
【0084】
一般的に冷間圧延とその後に表面被膜を形成することで製造される電磁鋼板は、液体急冷法により作製するアモルファス合金リボンより表面精度が高い、すなわち表面粗さは小さい。
【0085】
電磁鋼板の表面粗さRaと磁性材の表面粗さRaとの差の絶対値としては、0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。両者の表面粗さRaの差の絶対値が0.2μm以下であると、積層鉄心の占積率を高くできる点で有利である。
【0086】
本開示の実施形態の積層コアにおいて、積層パケットは、二つの積層磁性材と、二つの積層磁性材の、互いに対向する側とは反対側の各端面に配置された二つの第1の電磁鋼板と、前記二つの積層構造の間に配置された第2の電磁鋼板と、を有し、前記二つの積層磁性材は、一方の積層磁性材の長手方向の一端と他方の積層磁性材の長手方向の一端とが、前記長手方向において互いに重なる位置から前記長手方向にずらされ、前記二つの積層磁性材が一部で重なる状態で配置されている構造が好ましい。
【0087】
このような態様では、極めて薄厚の磁性材の取り扱いが容易であり、かつ、積層パケット同士の接合が容易に行える。また、あらかじめ積み重ねられた積層パケットでコアブロックが製造されるので、積み精度に優れ、生産性にも優れたものとなる。
【0088】
また、二つの積層磁性材の間に配置される第2の電磁鋼板は、積層パケットの長手方向の全長に相当する積層磁性材の表面全体に配置し得る大きさの1枚の電磁鋼板で構成されてもよいし、二つの積層磁性材の各々の端面の全面に配置し得る大きさの2枚の電磁鋼板を用いて構成されてもよい。
【0089】
これらの態様の積層コアにおいて、積層磁性材は、電磁鋼板の短手方向の表面全体に配置されている態様が好ましい。積層されている複数の磁性材の、長手方向と直交する短手方向(幅長)の長さが、電磁鋼板の、長手方向と直交する短手方向(幅長)の長さと同等以上であるので、積層面において電磁鋼板が突出せず、積層磁性材の積層面同士を密に接触させることができる等、ハンドリングが容易になり、組立性が向上する。更に、積層コアにおける軟磁性アモルファス合金リボンの体積分率が高くなり、エネルギー損失がより低く抑えられる。
【0090】
(実施例)
種々の樹脂材料を用いて樹脂層を形成し磁性材を作製し、その磁性材を積層して積層磁性材を作製して、特性を測定した結果を説明する。また、積層パケットを用いた積層コアの具体的な実施例を説明する。
【0091】
(実施例及び比較例1)
種々のショアD硬さを有するポリエステル樹脂を用いて磁性材を作製し、その磁性材を積層して、積層磁性材を作製し、磁束密度B80を測定した。
【0092】
下記表1に示すように、6種のポリエステル樹脂a1、b2、b3、g1、h1、i1を含む接着剤を用意した。各ポリエステル樹脂のショアD硬さは表に示す通りである。また、接着剤中のポリエステル樹脂の濃度は30質量%であり、残部は溶媒である。
【0093】
長さ200mm、幅25mm、厚さ24.4μmの軟磁性アモルファス合金リボンを用意した。軟磁性アモルファス合金リボンの組成は、FeとSiとBを100原子%として、Fe:82原子%、Si:4原子%、B:14原子%である。なお、Cu、Mn等の不可避不純物は、0.5質量%以下であった。
【0094】
各ポリエステル樹脂を含む接着剤を軟磁性アモルファス合金リボンに4μmの厚さで塗布し、100℃で保持することによって溶媒を蒸発させ、磁性材を得た。そして、それぞれの樹脂毎に4枚の磁性材を作製した。その後、各ポリエステル樹脂の樹脂層が形成された軟磁性アモルファス合金リボン(磁性材)を4枚と樹脂層を形成してない軟磁性アモルファス合金リボンを1枚積層し、0.25MPaの圧力を加えながら150℃で5分保持し熱圧着させ、5枚の軟磁性アモルファス合金リボンを積層し一体化させて積層磁性材を作製した。それぞれの積層磁性材は試料A1、B2、B3、G1、H1、I1である。
【0095】
作製した試料に80A/mの磁場強度を印加し、磁束密度B80を測定した。また、樹脂層を形成せずに、軟磁性アモルファス合金リボンを5枚、自重で積層した試料Cを作製し、磁束密度B80を測定した。B80の測定にはメトロン技研社製のSK110を用いた。表1に測定結果を示す。また、図4にショアD硬さと、B80との関係を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1及び図4から分かるように、ショアD硬さの値が20である試料H1のB80が最も高い。樹脂層を形成しなかった試料CのB80は1.580であるが、その90%以上のB80(1.422T以上)を持つ試料が、ショアD硬さが4から50の樹脂を用いた試料G1、H1、I1、A1、B2で、得られている。さらには、ショアD硬さが20と25の樹脂を用いた試料H1、I1は、試料Cの93%以上のB80(1.469T以上)が得られている。
【0098】
なお、樹脂は、ガラス転移温度が30℃以下のものを用いた場合に、B80が高い積層磁性材を得ることができている。
【0099】
(実施例2)
ショアD硬さが20(ガラス転移温度4℃)であるポリエステル樹脂(樹脂h1)を用いた接着剤を、軟磁性アモルファス合金リボンに塗布して種々の厚さで樹脂層を形成した磁性材を作製した。そして、その磁性材を積層して、積層磁性材を作製し、磁束密度B80を測定した。各試料に用いた磁性材の樹脂層の厚さを表2に示す。それ以外は、実施例1と同様にして試料を作製、測定を行った。接着性は端部を触指によって評価した。
【0100】
表2に作製した試料における樹脂層の厚さと、B80の値を示す。また、積層磁性材を形成する際の接着性を評価した結果を表2に示す。図5に樹脂層の厚さと、B80、および、図6に樹脂層の厚さとHcとの関係を示す。
【0101】
【表2】
【0102】
表2および図5から分かるように、樹脂層の厚さが大きくなると、B80は低下する。これは、樹脂層が厚くなると、軟磁性アモルファス合金リボンへ印加される応力が増大し、それによって磁区構造が変化し、磁気異方性が付与されて磁束密度が低下したものと推察される。また、1.3μm以下であれば、積層コアのB80が1.50以上となり、樹脂層を含まない積層磁性材に対して93%以上(94.9%)の磁束密度B80が得られる。なお、表2、および図5には示していないが、樹脂層の厚さが1.45μmを超えたものは、積層コアのB80が1.40T未満(88.6%)となる場合があった。
【0103】
一方、上述したように樹脂層の厚さが小さくなるほど、磁束密度B80は大きくなるため、樹脂層の厚さは小さいほど好ましい。また、表2および図6から分かるように、樹脂層の厚さが小さくなるほど、保磁力Hcが小さくなり、コアロスの低減に寄与できるので、好ましい。しかし樹脂層の厚さが小さくなりすぎると十分な接着性が得られない可能性がある。表2に示すように、厚さが1.08μmであれば、良好な接着性が得られており、厚さが0.92μmになると、接着性が少し低下している。
【0104】
(実施例3)
ポリスチレン樹脂を樹脂層に添加することによりタック性(粘着性)の改善の効果を確認した。ショアD硬さ20(ガラス転移温度4℃)のポリエステル樹脂(樹脂h1)に対して、表3に記載する含有量となるようにポリスチレン樹脂を含有させ、接着剤を作製した。本実施例においては、溶媒(酢酸エチル)中のポリエステル樹脂の濃度が30質量%のポリエステル溶液と、溶媒(メチルエチルケトン)中のポリスチレン樹脂の濃度が53質量%であるポリスチレン溶液を混合し、表3に示すポリスチレン樹脂の含有量となるように混合した。具体的には、ポリエステル溶液の質量をA、ポリスチレン溶液の質量をBとして、B×0.53/(A×0.30+B×0.53)として、試料E1は0質量%、試料E2は2.6質量%、試料E3は5.0質量%、試料E4は7.4質量%、試料E5は9.6質量%、試料E6は17.5質量%、試料E7は30.0質量%となるようにした。
【0105】
また、本実施例においては、実施例1と同様のサイズを有する軟磁性アモルファス合金リボンを3枚用意し、2枚の表面に接着剤を厚さ4μmで塗布した。その後100℃で2〜4分乾燥させ、樹脂層を形成し、2枚の軟磁性アモルファス合金リボンを重ねた。さらに接着剤を塗布していない軟磁性アモルファス合金リボンを樹脂層の上に配置し、試料E1〜E7を得た。
【0106】
タック性の評価は、各試料に、半径1cmの円形領域に2.5kgの荷重を配置し、室温(25℃)および60℃で24時間放置した後、荷重を取り除き、一番上に配置された軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことによって評価した。
【0107】
結果を表3に示す。表3において、「良好」は、抵抗なく軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことができたことを示す。また、「可」は、抵抗はあるものの、軟磁性アモルファス合金リボンを引きはがすことができたことを示す。また、「不可」は、軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことが難しかったことを示す。
【0108】
【表3】
【0109】
試料E1〜E7の磁気特性としてB80、残留磁束密度Br、保磁力Hcを測定した。結果を表3に示す。また、ポリスチレンの含有量とこれらの磁気特性との関係を図7に示す。
【0110】
表3から、ポリスチレン樹脂を含有しない試料E1では、室温では、抵抗はあるものの、軟磁性アモルファス合金リボンを引きはがすことができた。但し、60℃では軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことが難しかった。しかし、ポリスチレン樹脂の含有量が2.6質量%の試料E2では、室温、60℃とも、抵抗はあるものの、軟磁性アモルファス合金リボンを引きはがすことができた。また、ポリスチレン樹脂の含有量が5.0質量%の試料E3では、60℃では、抵抗はあるものの、軟磁性アモルファス合金リボンを引きはがすことができ、さらには、室温では、粘着性を抑制(タックフリー)して、抵抗なく軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことができた。また、ポリスチレン樹脂の含有量が7.4質量%、9.6質量%、17.5質量%、30.0質量%の試料E4、E5、E6、E7では、室温、60℃とも、粘着性を抑制(タックフリー)して、抵抗なく軟磁性アモルファス合金リボンを剥がすことができ、磁性材の状態における作業性の取り扱いに優れていた。
【0111】
一方、図7に示すように、ポリスチレン樹脂の含有量が増大すると磁気特性が低下する傾向にある。特にB80が低下する傾向にある。また、ポリスチレン樹脂の量が増大すると、樹脂層の熱圧着時の接着性が低下し、十分な接着強度を得ることができなくなる場合がある。
【0112】
(実施例4)
積層磁性材を作製し、直流磁気特性を測定した結果を説明する。ショアD硬さが20(ガラス転移温度4℃)であるポリエステル樹脂(樹脂h1)を用い、積層した磁性材の数が10であることを除き実施例1と同様の積層磁性材の試料F1を作製した。また、ショアD硬さが43であるポリエチレン樹脂を用い、積層した磁性材の数が10であることを除き実施例1と同様の積層磁性材の試料F2と、樹脂層を形成せずに、軟磁性アモルファス合金リボンを10枚積層した試料F3を、作製した。
【0113】
各試料の直流磁気特性を測定した。測定には、メトロン技研社製のSK110を用いた。測定結果を図8および図9に示す。また、各試料のB80、Br、Hcを測定した。また、残留磁束密度Brと飽和磁束密度Bsの比である角型比Br/Bsを求めた。測定結果を表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
表4および図8図9から分かるように、樹脂層のショアD硬さが60以下であることによって、樹脂層がない場合の90%以上の磁気密度B80(1.4355T以上)が得られていることが分かる。また、ショアD硬さが20の樹脂層を用いた積層磁性材の試料F1は、樹脂層がない場合の93%以上の磁気特性B80が得られていることが分かる。また、試料F1は、25%を超える良好な角型比が得られていることがわかる。つまり、試料F1の積層磁性材はコアロスが小さいものである。
【0116】
以上の結果から、本開示によれば、積層磁性材を作製したときに、樹脂層がない場合と同等程度の磁気特性を実現することが可能な、樹脂層付きの磁性材が得られることが分かった。
【0117】
(実施例5)
以下、図面を参照して、積層コアの具体的な実施例を詳述する。但し、積層コアの実施例は、以下に示す実施例に制限されるものではない。
【0118】
以下に説明する積層コアの実施例について、図10図22を参照して説明する。この積層コアは、複数の磁性材が積層された二つの積層磁性材と、二つの積層磁性材の、互いに対向する側とは反対側の各端面に配置された二つの第1の電磁鋼板と、二つの積層磁性材の間に配置された第2の電磁鋼板と、を有する積層パケットを単位片とし、積層パケットを積み重ねて作製された四角環構造の積層コアを一例に詳細に説明する。
【0119】
図10に示す積層コアは、四つのコアブロック(積層パケット)10A、10B、10C及び10Dを備え、四つのコアブロックが互いに90°の角度をなして四角環状に配置され、四つのコアブロックはそれぞれ長手方向の端部で接合されている。四つのコアブロックは、それぞれ互いに隣り合う二つのコアブロック間において、各コアブロック同士が90°の角度をなすように接合されて四角環構造が形成されている。四つのコアブロックを四角環状に接合することで、閉磁路を形成している。また、四つのコアブロックは、それぞれ、積層パケットを積み重ねた積層体となっている。
【0120】
積層コアにおける積層パケットの一例を図12に示す。この積層パケットは、複数の磁性材が積層された二つの積層磁性材23と、二つの積層磁性材の、互いに対向する側とは反対側の各端面に配置された二つの電磁鋼板25A(第1の電磁鋼板)と、二つの積層磁性材の間に配置された単一の電磁鋼板25B(第2の電磁鋼板)と、を積み重ねて形成されたものである。
【0121】
なお、図10は、積層コア100を概念的に示す斜視図である。図10では、四角環状に配置されている四つのコアブロック10A、10B、10C及び10Dの配置面をxy平面(x軸及びy軸を含む平面)とし、xy平面の法線方向をz軸方向とする。
【0122】
また、四つのコアブロック10A、10B、10C及び10Dは、外観上、全て長さL−w1、幅w1、及び高さTが同一の形状(直方体)を有しており、積層コア100は、長さLの正方形の四角環となっている。尚、それぞれのコアブロックは以下で説明するとおり、端部で重なり合っている。
【0123】
積層コア100の磁路は、同一の積層パケットを複数個用い、複数個の積層パケットを正方形の環の形状に配置して各積層パケットの長手方向の両端部を互いに接合することで作製されている。すなわち、積層コア100は、四つの積層パケットを接合した正方形の環状体を1層としてz方向に積み重ねた形態である。積層コア100は、正方形に形成されている例であるが、正方形に限られず、長方形等の他の四辺形とすることができる。
【0124】
積層コア100のように、積層パケットを用いて積層コアを作製する場合には、環状体の奇数番目の層(奇数層)と偶数番目の層(偶数層)とで積み方を変える必要はないが、場合により、図11A及び図11Bに示すように、奇数層(第1層、第3層・・・)と偶数層(第2層、第4層・・・)とで積み方を変えることもできる。具体的には、積層コア100をなす環状体は、奇数層と偶数層とを図22に示すように交互に重ねて形成されてもよい。
【0125】
奇数層は、図11Aに示すように、積層パケット20Aの一端上に積層パケット20Dの一端を重ね、積層パケット20Dの他端上に積層パケット20Cの一端を重ね、積層パケット20Cの他端上に積層パケット20Bの一端を重ね、積層パケット20Bの他端上に積層パケット20Aの他端を重ねた四角環構造を有している。
【0126】
また、偶数層は、図11Bに示すように、奇数層における重ね方向とは逆方向に重ねて四角環構造としている。具体的には、積層パケット30Aの一端上に積層パケット30Bの一端を重ね、積層パケット30Bの他端上に積層パケット30Cの一端を重ね、積層パケット30Cの他端上に積層パケット30Dの一端を重ね、積層パケット30Dの他端上に積層パケット30Aの他端を重ねた四角環構造を有している。
【0127】
積層コア100は、図22に示すように、上記した奇数層と偶数層とを交互に所望の積層数(積層パケット数)になるように積層(例えば図22のように第1層(奇数層)C1、第2層(偶数層)C2、第3層(奇数層)C3・・・が順に積層)されて作製されたものである。積層コア100では、四角環の4辺のそれぞれに11個の積層パケットが積層された構造となっている。
【0128】
積層コア100を形成しているコアブロック10A、10B、10C及び10Dは、それぞれ図12に示す構造の積層パケット20を重ねて形成されている。そのため、極めて薄厚の磁性材の取り扱いが容易になり、積み精度に優れた積層コアを作製することができる。
【0129】
積層パケット20は、図12に示すように、複数の磁性材21が積層された積層磁性材を有する二つの積層磁性材23と、二つの積層磁性材23の、互いに対向する側とは反対側の各端面に配置された二つの電磁鋼板(第1の電磁鋼板)25Aと、二つの積層磁性材23の間に配置された電磁鋼板(第2の電磁鋼板)25Bと、を備えている。積層磁性材23は直方体状であり、一方を他方に対して長手方向端部の端面の位置が揃わないようにずらして配置されている。積層磁性材23と電磁鋼板25A、25Bは積層面樹脂層27で固定されている。
【0130】
積層磁性材23は、複数の磁性材が積層されたものであり、二つの積層磁性材における磁性材の積層数は同一である。積層コアでは、1つの積層磁性材には30枚の磁性材が積層されている。したがって、この積層パケット20における磁性材の積層数は60枚である。なお、磁性材のサイズは、長さ426mm×幅142mmである。端部のずらし幅(ずらした長さ)は磁性材の幅142mmと同じである。
【0131】
電磁鋼板25Aは、磁性材の積層磁性材23と幅方向(短手方向)が同一寸法となっている。すなわち、積層磁性材23は、電磁鋼板の短手方向の幅全域にわたって配置されている。また、電磁鋼板25Aの長手方向の長さは、上下2つの積層磁性材23を合わせた長さと同じ、568mmである。
【0132】
電磁鋼板25Bは、2つの積層磁性材23の間に配置され、2つの積層磁性材23の一方の表面全体に接すると共に、他方の表面と一部において接している。したがって、電磁鋼板25Bは、2つの積層磁性材23の間に配置され、かつ、一方の積層磁性材の積層方向の表面全体を覆い、一部が露出した状態にある。
【0133】
なお、電磁鋼板25Aと隣接する積層磁性材の間、及び、電磁鋼板25Bと隣接する積層磁性材の間は、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層が配置される。熱圧着することで、磁性材と電磁鋼板、積層磁性材と電磁鋼板が、樹脂層により機械的に固定される。
【0134】
電磁鋼板の主平面の表面粗さは、JIS B0601−2001に準拠して測定される算術平均粗さRaにて0.10μm〜0.20μmの範囲であることが好ましく、0.1μm〜0.15μmの範囲であることがより好ましい。
【0135】
電磁鋼板の表面粗さRaが0.20μm以下であると、電磁鋼板同士が接している場合等において滑り性が良好になり、製造効率を高める点で有利である。
【0136】
ここで、図13を参照して積層パケット20について更に説明する。
【0137】
図13(A)は、図12に示す積層パケット20を水平な机面に載置し、電磁鋼板25Aを上方より平面視した際の平面図である。また、図13(B)は、図12に示す積層パケット20を側部からみた側面図である。なお、図13では、図12中の積層面樹脂層27を図示していない。
【0138】
この積層パケット20は、図13(A)のように、一方を他方に対して長手方向端部(長さy1又はy2(L−w1)の方向における端部)の端面の位置が揃わないようにずらして配置された二つの積層磁性材23によって、図10に示す長さLの四角環の1辺をなしている。尚、ずらしている長さ(ずらし幅)は積層磁性材の幅w1と同じである。
【0139】
積層パケット20は、積層パケット20を側部からみた図13(B)に示されるように、電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25B/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層構造を有している。積層磁性材23はアモルファス合金リボン同士が、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層により接合されている。さらに、積層磁性材23と電磁鋼板25A、積層磁性材23と電磁鋼板25Bも、同じ樹脂層により接合されている。さらに、それぞれは、積層面樹脂層27によって固定されている。
【0140】
そして、積層コア100では、図14に示すように、電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25B/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層部分において、電磁鋼板25Bの一部が二つの積層磁性材23により共有されている。
【0141】
二つの積層磁性材23の一方は、図13(B)に示すように、電磁鋼板25Aが配置されている側と反対側に電磁鋼板25Bが配置されている。二つの積層磁性材23は、電磁鋼板25Bの面方向かつ長手方向に互いにずらして配置されている。これにより、一方の積層磁性材23では、電磁鋼板25Bの表面の一部が露出し、他方の積層磁性材23では、電磁鋼板25Aが配置されている側と反対側の表面が露出した状態になっている。また、図12に示す積層パケット20を使用する場合、図14に示すように複数の積層パケット20を組み合わせることで段差なく繋ぎ合わせることができる。
【0142】
その他、積層パケットは、図15図17に示すように、二つの積層磁性材23の間に、積層磁性材23の互いに向き合う両表面の全面に配置される、積層磁性材23より長尺の単一の電磁鋼板25Cを挟んで積層したものでもよい。
【0143】
具体的には、図15のように、電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25C/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層部分を有する積層パケット120でもよい。積層磁性材23はアモルファス合金リボン同士が、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層により接合されている。さらに、積層磁性材23と電磁鋼板25A、積層磁性材23と電磁鋼板25Cも、同じ樹脂層により接合されている。さらに、それぞれは、積層面樹脂層27によって固定されている。
【0144】
この場合、図16に示すように、電磁鋼板25Cは、一方を他方に対して長手方向端部の端面の位置が揃わないようにずらして配置された2つの積層磁性材で規定される合計の長さ(図16中の距離L)、つまり積層パケット120の長手方向の全長と同一の長さと幅長とを有している。電磁鋼板25Cは、電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25C/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層部分において電磁鋼板25Cが二つの積層磁性材23により共有され、積層部分以外の部分(二つの積層磁性材23が重なっていない部分)では、電磁鋼板25Cが一方の積層磁性材及び他方の積層磁性材の表面の一部を覆って配置され、電磁鋼板25Cが露出する状態にある。
【0145】
図15に示す積層パケット120を使用する場合、図17に示すように、異なる積層パケット121を用意することで複数の積層パケットを繋ぎ合わせた形態を得ることができる。
【0146】
更に、積層パケットの他の変形例として、図18図19に示すように、二つの積層磁性材23間に二枚の電磁鋼板が配置された構造であってもよい。具体的には、図18のように、複数の磁性材が積層された二つの積層磁性材23と、二つの積層磁性材の、互いに対向する側とは反対側の一方面にそれぞれ配置された二つの電磁鋼板25Aと、二つの積層磁性材が互いに対向する側の他方面にそれぞれ配置された二つの電磁鋼板25Bと、を積み重ねた積層パケット220でもよい。この場合、それぞれ二枚の電磁鋼板で挟んだ積層磁性材23は、電磁鋼板25Bの面方向かつ長手方向に互いにずらして配置されることにより、積層パケットの薄帯片が重なっていない部分の電磁鋼板25Bの表面の一部が露出する状態になっている。
【0147】
積層パケット220は、図18のように、電磁鋼板で挟んだ二つの積層磁性材23の一方を他方に対して長手方向端部(長さy1又はy2の方向における端部)の端面の位置が揃わないようにずらして作製されている。積層パケット220は、積層パケットを側部からみた図18(B)に示されるように、電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25B/電磁鋼板25B/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層構造を有している。二枚の電磁鋼板25Bは、重ねた状態で共有されている。積層磁性材23はアモルファス合金リボン同士が、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層により接合されている。さらに、積層磁性材23と電磁鋼板25A、積層磁性材23と電磁鋼板25Bも、同じ樹脂層により接合されている。
【0148】
図18に示す積層パケット220を使用する場合、図19に示すように複数の積層パケット220を組み合わせて繋ぎ合わせた形態とすることができる。この積層パケット220によれば、部分的に厚さが異なることがない。この積層パケットを積み重ねる場合、電磁鋼板25Bが2重に重なる部分が生じてしまうので、電磁鋼板25Bの厚さは出来るだけ薄い方が好ましい。
【0149】
また、積層パケットの他の変形例として、図20図21に示すように、二つの積層磁性材23間には電磁鋼板を設けず、互いに対向する側とは反対側の各端面に電磁鋼板25Aが配置された構造となっていてもよい。本変形例によると、後述の積層コアにて説明するステップラップ形状となり、鉄損を低く抑える点で好ましい。
【0150】
具体的には、図20のように、複数の磁性材が積層された二つの積層磁性材23と、二つの積層磁性材の、互いに対向する側とは反対側の一方面にそれぞれ配置された二つの電磁鋼板25Aと、を積み重ねた積層パケット320でもよい。この場合、一方面に電磁鋼板が配置された二つの積層磁性材23は、一方を他方に対して長手方向端部(長さy1又はy2の方向における端部)の端面の位置が揃わないように面方向かつ長手方向に互いにずらして配置されることにより、積層パケットの積層磁性材が重なっていない部分の積層磁性材の表面の一部が露出する状態になっている。
【0151】
積層パケット320は、積層パケットを側部からみた図20(B)に示されるように、電磁鋼板25A/積層磁性材23/積層磁性材23/電磁鋼板25Aの積層構造を有している。積層磁性材23はアモルファス合金リボン同士が、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層により接合されている。さらに、積層磁性材23と電磁鋼板25Aも、同じ樹脂層により接合されている。図20に示す積層パケット320を使用する場合、図21に示すように複数の積層パケット320を組み合わせて繋ぎ合わせた形態とすることが可能である。
【0152】
積層面樹脂層27は、例えば電磁鋼板25A/積層磁性材23/電磁鋼板25B/積層磁性材23/電磁鋼板25A等の積層部分における積層面(薄帯片及び電磁鋼板の各厚みに相当する側面が集まって形成される面)に付設されており、積層部分において電磁鋼板及び積層磁性材を固定している。
【0153】
積層面樹脂層27は、エポキシ系樹脂を用いて形成されている。積層磁性材と電磁鋼板の積層面において、両者に渡る少なくとも一部に硬化性の樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)を塗布して硬化させることにより、積層面樹脂層が形成されている。
【0154】
上記した実施形態では、図12及び図15のように、複数の磁性材を積層してなる二つの積層磁性材を、一方の積層磁性材の一端が他方の積層磁性材の一端から積層磁性材長手方向の他端に向けて所定距離ずれた状態で配置した形態の積層パケットを中心に説明したが、このような形態に限られるものではない。
【0155】
具体的な例として、コアブロックは、図26に示す、複数の磁性材21を積層した積層磁性材23とこの積層磁性材23を挟む二つの電磁鋼板25Aからなる積層パケット420を用いてもよい。また側面には積層面樹脂層27が形成されている。
【0156】
(実施例6)
本開示の別の積層コアの実施形態について図23図25を参照して説明する。
【0157】
図24に、積層コア300の平面図を示す。この積層コア300は、四つのコアブロック140A、140B、140C、140Dが四角環状に接合されて形成された、閉磁路のコアである。互いに隣り合う二つのコアブロック間では、それぞれの積層パケットの長手方向の端部が互いに接合された接合部を有し、この接合部は、積層パケットの積層磁性材の端部が前記長手方向に対して傾斜角θ1で傾斜し、かつ積層磁性材を前記長手方向にずらして形成された階段状の傾斜面で、互いに接合されている。
【0158】
なお、積層コア100と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0159】
積層パケット140は、図23に示すように、5個の積層磁性材30と、5個の積層磁性材30を挟むように配置された一対の電磁鋼板35と、を備えている。積層磁性材30は軟磁性アモルファス合金リボン同士が、ショアD硬さが60以下の樹脂が塗布されて形成された樹脂層により接合されている。さらに、積層磁性材30同士、ならびに積層磁性材30と電磁鋼板35Aも、同じ樹脂層により接合されている。また、5個の積層磁性材30及び二つの電磁鋼板35は、積層磁性材及び電磁鋼板が重ねられて形成される積層面にエポキシ系樹脂を塗布し硬化されることで形成された不図示の積層面樹脂層によって固定化されている。
【0160】
なお、図23(A)は、積層パケットを水平な机面に載置し、積層パケットを積層方向上方から観察した際の平面図であり、図23(B)は、積層パケットを側部から観察した際の側面図である。図23では、積層パケットの各磁性材及び積層面樹脂層を図示していない。
【0161】
積層パケット140は、図23に示すように、5個の積層磁性材30をそれぞれあらかじめ定められた距離t1ずつずらして積層することにより形成されており、積層磁性材の積層方向の両方の端面には、二つの電磁鋼板35が、それぞれ積層磁性材と同様に長手方向に距離t1ずつずらして積層された積層パケットとされている。積層された積層磁性材30の各々は、複数の磁性材が積層されたものである。
【0162】
積層磁性材30は、図23(A)に示すように、長手方向の長さが長さLである長方形の両端が、長手方向に対して45°の傾斜角(θ1=45°)をもって切断されて形成された、下底及び上底の長さがそれぞれL1、L2の台形状とされている。図示しないが、電磁鋼板についても同様である。
【0163】
次に、四角環を形成する積層パケット同士が接合する接合部を説明する。積層コア300における接合部は、ステップラップ構造による接合形態となっている。積層コア300を形成する四角環は、上記のように、四つのコアブロックの積層パケットをそれぞれの長手方向両端を互いに接合することで形成されている。積層パケットの各々は、長手方向両端には、θ1の傾斜角で斜めに形成された積層磁性材による階段状の段差が形成されている。
【0164】
このような積層パケットを四つ用意し、例えば図24に示すように、まず、積層パケット140Aの、接合部となる二つの領域(w2×w2四方の領域)のうちの一方の領域の視認面の上に、積層パケット140Bの、接合部となる二つの領域(w2×w2四方の領域)のうちの他方の領域の非視認面(裏面)を重ね、積層パケット140Bの一方の領域の視認面の上に、積層パケット140Cの、接合部となる二つの領域(w2×w2四方の領域)のうちの他方の領域の非視認面(裏面)を重ね、積層パケット140Cの一方の領域の視認面の上に、積層パケット140Dの、接合部となる二つの領域(w2×w2四方の領域)のうちの他方の領域の非視認面(裏面)を重ね、積層パケット140Dの一方の領域の視認面の上に積層パケット140Aの他方の領域の非視認面を重ねた四角環構造とすることができる。
【0165】
積層コア300では、四つの積層パケット140A〜140Dが接合されて形成された四角環構造を複数個積み重ねることにより、所望の形状を有する積層コアを作製することができる。積層コア300では、四角環構造を積み重ねて作製された積層コアの四つの辺をなす構造部分がコアブロックである。具体的には、図示しないが、四角環構造が積まれることで例えば積層パケット140Aが積まれて形成された積層部分がコアブロックである。
【0166】
例えば、積層パケット140Aの前記二つの領域のうちの一方の領域の視認面の上に、積層パケット140Bの前記二つの領域のうちの他方の領域の非視認面(裏面)を重ねる場合、視認面に形成されている階段状の段差部と、非視認面に形成されている階段状の段差部と、が互いに向き合って複数の接合面が形成される。つまり、図25のように、例えば積層パケット140Aと積層パケット140Bとの間における磁性材の接合場所Rが階段状にずれて存在する構造(ステップラップ構造)となる。この積層コアの角の突出した部分は切除して、突出を無くすこともできる。
【0167】
このようなステップラップ構造は、接合場所が順次ずれて存在するため、接合場所で局所的に磁束が集中する現象が生じにくく、鉄損及び皮相電力を低く抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本開示の磁性材および積層磁性材は、種々の用途の磁性材料として好適に用いられる。例えば、電力配電用、変圧器用のコア、電子・電気回路用のコアに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0169】
1、1 軟磁性アモルファス合金リボン
2、2 樹脂層
11、21 磁性材
12、23、30 積層磁性材
13、100、300 積層コア
10A、10B、10C、10D コアブロック
20、20A、20B、20C、20D、30A、30B、30C、30D、120、120A、140、140A、140B、140C、140D、210、220、320、420 積層パケット
25A、25B、25C、35 電磁鋼板
27 積層面樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26

【手続補正書】
【提出日】2019年7月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性アモルファス合金リボンと、
前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に配置された樹脂層とを備え、前記樹脂層に用いる樹脂として、ポリエステル樹脂および前記ポリエステル樹脂に対し1質量%以上の割合のポリスチレン樹脂を主成分および副成分として含む樹脂を用いた磁性材。
【請求項2】
前記樹脂は、1以上60以下のショアD硬さを有する、請求項1に記載の磁性材。
【請求項3】
前記樹脂は、1以上25以下のショアD硬さを有する請求項1に記載の磁性材。
【請求項4】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し3質量%以上30質量%以下の割合で前記ポリスチレン樹脂を含む、請求項1から3のいずれかに記載の磁性材。
【請求項5】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し6質量%以上15質量%以下の割合で前記ポリスチレン樹脂を含む、請求項1から3のいずれかに記載の磁性材。
【請求項6】
前記樹脂は、抑制された粘着性を有し、かつ、熱を付与することで粘着性が再発現可能である、請求項1から5のいずれかに記載の磁性材。
【請求項7】
前記磁性材は、1.48T以上の磁束密度(B80)を有する請求項1から6のいずれかに記載の磁性材。
【請求項8】
前記樹脂層は0.5μm以上1.45μm以下の厚さを有する請求項1から7のいずれかに記載の磁性材。
【請求項9】
前記軟磁性アモルファス合金リボンは、10μm以上50μm以下の厚さを有する請求項1から8のいずれかに記載の磁性材。
【請求項10】
前記軟磁性アモルファス合金リボンは、
Fe、Si、Bの合計量を100原子%としたとき、
Siが、0原子%以上10原子%以下、
Bが、10原子%以上20原子%以下、
である組成を有する合金からなる、請求項1から9のいずれかに記載の磁性材。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が、複数積層された積層磁性材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が、巻回、または、積層された積層コア。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、少なくとも1つの電磁鋼板とが積層された積層コア。
【請求項14】
前記積層磁性材と、前記少なくとも1つの電磁鋼板との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えた、請求項13に記載の積層コア。
【請求項15】
請求項1から10のいずれかに記載の磁性材が複数積層された積層磁性材と、
前記積層磁性材の積層方向における端面の少なくとも一部に配置された少なくとも1つの電磁鋼板と、
を含む積層パケット。
【請求項16】
前記電磁鋼板と前記積層磁性材との間に、ショアD硬さが60以下の樹脂を含む樹脂層をさらに備えた、請求項15に記載の積層パケット。
【請求項17】
軟磁性アモルファス合金リボンを用意し、
前記軟磁性アモルファス合金リボンの少なくとも一面に、ポリエステル樹脂および前記ポリエステル樹脂に対し1質量%以上の割合のポリスチレン樹脂を主成分および副成分として含む樹脂と溶媒とを含む接着剤を塗布する、
磁性材の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂は、30℃以下のガラス転移温度を有する請求項17に記載の磁性材の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂は、1以上60以下のショアD硬さを有する、請求項17に記載の磁性材の製造方法。
【請求項20】
前記樹脂は、1以上25以下のショアD硬さを有する請求項17に記載の磁性材の製造方法。
【請求項21】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し3質量%以上30質量%以下の割合で前記ポリスチレン樹脂を含む、請求項17から20のいずれかに記載の磁性材の製造方法。
【請求項22】
前記樹脂は、前記ポリエステル樹脂に対し6質量%以上15質量%以下の割合で前記ポリスチレン樹脂を含む、請求項17から20のいずれかに記載の磁性材の製造方法。
【請求項23】
前記樹脂は、抑制された粘着性を有し、かつ、熱を付与することで粘着性が再発現可能である、請求項17から22のいずれかに記載の磁性材の製造方法。
【国際調査報告】