特表-19009309IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-9309アモルファス合金リボン及びその製造方法、アモルファス合金リボン片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年1月10日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】アモルファス合金リボン及びその製造方法、アモルファス合金リボン片
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/153 20060101AFI20191129BHJP
   C22C 45/02 20060101ALI20191129BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20191129BHJP
   C22C 38/02 20060101ALI20191129BHJP
   H01F 41/02 20060101ALN20191129BHJP
【FI】
   H01F1/153 141
   H01F1/153 108
   C22C45/02 A
   C21D6/00 C
   C22C38/02
   H01F41/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】特願2019-527732(P2019-527732)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年7月3日
(11)【特許番号】特許第6605182号(P6605182)
(45)【特許公報発行日】2019年11月13日
(31)【優先権主張番号】62/528,450
(32)【優先日】2017年7月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503393227
【氏名又は名称】メトグラス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】東 大地
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直輝
【テーマコード(参考)】
5E041
5E062
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041AA19
5E041BD03
5E041CA02
5E041HB11
5E041HB19
5E041NN01
5E041NN06
5E041NN18
5E062AA02
5E062AB15
(57)【要約】
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボン(以下、合金リボン)を準備する工程と、合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度まで合金リボンを昇温させる工程と、昇温された前記合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程と、を含み、昇温させる工程での昇温及び降温させる工程での降温は、合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する合金リボンを伝熱媒体に接触させることにより行われ、Fe100−a−bSi(a,b:組成中の原子比、c:Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比、13.0原子%≦a≦16.0原子%、2.5原子%≦b≦5.0原子%、0.20原子%≦c≦0.35原子%、79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%)で表される組成を有する合金リボンを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度までアモルファス合金リボンを昇温させる工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、昇温された前記アモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程と、
を含み、
前記昇温させる工程での昇温及び前記降温させる工程での降温は、前記アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する前記アモルファス合金リボンを伝熱媒体に接触させることにより行われ、
下記組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを製造する、アモルファス合金リボンの製造方法。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項2】
前記平均昇温速度が、60℃/秒〜760℃/秒であり、前記平均降温速度が、190℃/秒〜500℃/秒である、請求項1に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項3】
前記昇温させる工程及び前記降温させる工程における引張応力が、10MPa〜75MPaである、請求項1又は請求項2に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項4】
前記bが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
【請求項5】
前記100−a−bが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項6】
前記aが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【請求項7】
走行する前記アモルファス合金リボンを昇温させる伝熱媒体の接触面、及び走行する前記アモルファス合金リボンを降温させる伝熱媒体の接触面は、平面内に配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項8】
下記組成式(A)で表される組成を有し、裁断性を有し、かつ、保磁力Hが1.0A/m以下であるアモルファス合金リボン。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項9】
JIS C 2534(2017)に規定される引裂きぜい性のぜい性コードが3以下である請求項8に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項10】
前記ぜい性コードが2以下である請求項9に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項11】
幅長が25mm以上220mm以下である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項12】
前記bが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
【請求項13】
前記100−a−bが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項14】
前記aが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【請求項15】
請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの切り出し断片であるアモルファス合金リボン片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アモルファス合金リボン及びその製造方法、アモルファス合金リボン片に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス、リアクトル、チョークコイル、モーター、ノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、発電機等に用いられる磁心(コア)の磁性材料として、珪素鋼、フェライト、Fe基アモルファス合金、Fe基ナノ結晶合金、等が知られている。
コアとしては、例えばFe基アモルファス合金又はFe基ナノ結晶合金を用いて作製されたトロイダル磁心(巻コア)が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
また、リボンを脆くすることなく、磁気特性を改良するために連続的に曲線状にインラインアニールするための方法として、アモルファス合金リボンをピンと張り、10℃/秒を上回る速度で加熱し、10℃/秒を上回る速度で冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1:特開2006−310787号公報
特許文献2:国際公開第2015/046140号
特許文献3:特表2013−511617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献3では、高温アニールすることで生じる脆化を抑制するために10℃/秒を上回る速度で昇温及び降温を行う。前記アモルファス合金リボンの急速な昇温又は降温を行うために、少なくとも昇温用と降温用の少なくとも2つのローラー状の熱伝導媒体(それぞれホットローラーとコールドローラー)と密着状態を維持させることで熱伝達性を高め、短時間に終了することが記載されている。前記少なくとも2つのローラー状の熱伝導媒体と合金リボンは、熱処理(昇温又は降温)時に密着するため、ローラー半径に起因する曲率による応力が合金リボンに残留する。合金リボンで巻磁心(コア)を作製する際、合金リボンを変形させる必要があるが、前記合金リボンに残留した応力によって、磁気特性が劣化すると推測される。
【0006】
上記のようなローラー巻付けによる冷却方式を採用せずに、アモルファス合金リボンの昇温及び降温の速度を抑えても、アモルファス合金リボンの脆化が緩和される技術が確立できれば、ロール冷却方式以外の種々の冷却方式を選択することが可能になる。
【0007】
また、特許文献3では、合金リボンを平坦な板(フラットな板)として積層したコアの場合、本来の優れた磁気特性を得ることが困難であると推測される。
【0008】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
本開示の実施形態は、熱処理後の合金リボンが平坦な状態での磁気特性に優れ、かつ、裁断性を有するアモルファス合金リボン及びその製造方法並びにアモルファス合金リボン片を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示には、以下の態様が含まれる。
<1> Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程と、前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度(昇温伝熱媒体温度)までアモルファス合金リボンを昇温させる工程と、前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、昇温された前記アモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程と、を含み、
前記昇温させる工程での昇温及び前記降温させる工程での降温は、前記アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する前記アモルファス合金リボンを伝熱媒体に接触させることにより行われ、
下記組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを製造する、アモルファス合金リボンの製造方法である。
【0010】
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【0011】
<2> 前記平均昇温速度が、60℃/秒〜760℃/秒であり、前記平均降温速度が、190℃/秒〜500℃/秒である、前記<1>に記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
<3> 前記昇温させる工程及び前記降温させる工程における引張応力が、10MPa〜75MPaである、前記<1>又は前記<2>に記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
<4> 前記bが、下記範囲を満たす前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法ある。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
<5> 前記100−a−bが、下記範囲を満たす前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
<6> 前記aが、下記範囲を満たす前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【0012】
<7> 走行する前記アモルファス合金リボンを昇温させる伝熱媒体の接触面、及び走行する前記アモルファス合金リボンを降温させる伝熱媒体の接触面は、平面内(好ましくは、同一平面内)に配置されている前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
<8> 下記組成式(A)で表される組成を有し、裁断性を有し、かつ、保磁力Hが1.0A/m以下であるアモルファス合金リボンである。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【0013】
<9> JIS C 2534(2017)に規定される引裂きぜい性のぜい性コードが3以下である前記<8>に記載のアモルファス合金リボンである。
<10> 前記ぜい性コードが2以下である前記<9>に記載のアモルファス合金リボンである。
<11> 幅長が25mm以上220mm以下である前記<8>〜前記<10>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンである。
【0014】
<12> 前記bが、下記範囲を満たす前記<8>〜前記<11>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンである。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
<13> 前記100−a−bが、下記範囲を満たす前記<8>〜前記<12>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンである。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
<14> 前記aが、下記範囲を満たす前記<8>〜前記<13>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンである。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【0015】
<15> 前記<8>〜前記<14>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの切り出し断片であるアモルファス合金リボン片である。
【発明の効果】
【0016】
本開示の実施形態に係る発明によれば、熱処理後の合金リボンが平坦な状態での磁気特性に優れ、かつ、裁断性を有するアモルファス合金リボン及びその製造方法並びにアモルファス合金リボン片が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、アモルファス合金リボンの製造に用いられるインラインアニール装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1に示すインラインアニール装置の伝熱媒体を示す概略平面図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、伝熱媒体の変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示のアモルファス合金リボン(以下、単に「合金リボン」ともいう。)及びその製造方法、アモルファス合金リボン片について、詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「アモルファス合金リボン」とは、長尺の合金リボンを意味する。 本明細書において、「アモルファス合金リボン片」とは、(長尺の)アモルファス合金リボンから切り出された枚葉のアモルファス合金リボンを意味し、好ましくは短冊状もしくは長手方向に対して30°〜60°(45°に対して−15°〜+15°)の角度で切り出されたアモルファス合金リボン片とすることができる。
【0020】
本明細書において、鉄(Fe)、ホウ素(B)、及びケイ素(Si)の各元素の含有比(原子%)は、Fe、B、及びSiの合計を100原子%とした場合の含有比率を意味する。また、炭素(C)の含有比率(原子%)は、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対する含有比率である。
なお、Feの含有比を表す「100−a−b」には、例えば、Nb、Mo、V、W、Mn、Cr、Cu、P、及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む不可避不純物が含まれてもよい。
【0021】
<アモルファス合金リボン及びアモルファス合金リボン片>
本開示のアモルファス合金リボンは、下記組成式(A)で表される組成を有し、裁断性を有し、かつ、保磁力Hを1.0A/m以下の範囲としたものである。
本開示のアモルファス合金リボンは、磁気特性と裁断性、即ち脆化抑制とが両立されている。
【0022】
また、本開示のアモルファス合金リボン片は、アモルファス合金リボンを所望とする大きさに切り出した断片をいう。
なお、アモルファス合金リボンの組成の説明は、(長尺の)アモルファス合金リボンから切り出されるアモルファス合金リボン片にも当てはまる。
【0023】
本開示のアモルファス合金リボンは、以下の組成式(A)で表される組成を有する。
また、組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボン片は、組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを熱処理した後、アモルファス合金リボンを切断することによって製造されるものである。
熱処理の好ましい態様は、後述する本開示の製造方法における「昇温工程」及び「降温工程」の態様である。
【0024】
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)において、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【0025】
以下、上記組成式(A)についてより詳細に説明する。
組成式(A)中のFeの原子比(原子%)は、「100−a−b」で求められる。Feは、アモルファス合金リボンの主成分であり、磁気特性を決定する主元素である。
なお、Feの含有比を表す「100−a−b」には、例えば、Nb、Mo、V、W、Mn、Cr、Cu、P、及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む不可避不純物も含まれてもよい。この不可避不純物の含有量としては、1原子%以下の範囲であることが好ましい。
【0026】
本開示におけるアモルファス合金リボン及びアモルファス合金リボン片は、上記の組成式(A)で表される組成を有する。即ち、
本開示におけるアモルファス合金リボン(Fe基アモルファス合金の薄片)は、79.0〔=(100−a−b)=(100−16.0−5.0)〕原子%以上のFe(不可避不純物を含む)を含有するFe基アモルファス合金リボン(Fe基アモルファス合金の薄片)である。合金組成中のFeの含有比率を比較的高くすることにより、より効果的に脆化抑制できる。
「100−a−b」は、79.0以上であり、80.5以上が好ましく、81.0以上がより好ましい。
「100−a−b」(原子%)の上限は、a、bに応じて決定され、83.0以下である。
上記のうち、「100−a−b」は、特に下記範囲を満たすことが好ましい。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【0027】
組成式(A)におけるBの原子比aは、13.0原子%以上16.0原子%以下である。Bは、アモルファス合金リボンにおいて、アモルファス状態を安定的に維持する機能を有する。
本開示では、aが13.0原子%以上であることで、Bの上記機能が効果的に発現する。また、aが16.0原子%以下であることで、Feの含有量が確保されるので、アモルファス合金リボン及びアモルファス合金リボン片の飽和磁束密度Bsが向上し、B80を高くすることができる。
中でも、Bの原子比aは、下記範囲を満たすことが好ましい。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【0028】
組成式(A)におけるSiの原子比bは、2.5原子%以上5.0原子%以下である。
Siは、アモルファス合金リボンの結晶化温度を上昇させ、かつ、表面酸化膜を形成させる機能を有する。
本開示では、bが2.5原子%以上であることで、Siの上記機能が効果的に発現する。したがって、より高温での熱処理が可能となる。また、bが5.0原子%以下であることで、Feの含有量が確保されるので、アモルファス合金リボンの飽和磁束密度Bが向上する。
Siの原子比bとしては、下記範囲を満たすことが好ましい。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
【0029】
組成式(A)におけるCの原子比cは、0.20原子%以上0.35原子%以下である。Fe−B−Si系アモルファス合金リボンの組成にC(炭素)が含まれることで、リボンの占積率が向上する。この理由は、Cを加えることで、リボンの表面の平坦性がより向上するためと考えられる。
Cの原子比cの好ましい範囲は、0.23原子%以上0.30原子%以下である。
【0030】
本開示のアモルファス合金リボンは、磁気特性として良好な磁束密度及び保磁力を有している。
本開示のアモルファス合金リボンは、高い磁束密度(B80及びB800)を有する。なお、B80は、80A/mの磁場で磁化した際の磁束密度であり、B800は、800A/mの磁場で磁化した際の磁束密度である。
本開示のアモルファス合金リボンの磁束密度B80は、1.45T以上が好ましく、1.50T以上がより好ましい。磁束密度B80が1.45T以上であると、アモルファス合金リボンから作製されるコアが軟磁性を示し、様々な軟磁性応用部品を得ることができる。
【0031】
また、本開示のアモルファス合金リボンは、保磁力(H)が低く抑えられている。
保磁力は、1.0A/m以下が好ましく、0.8A/m以下がより好ましい。保磁力が1.0A/m以下であると、ヒステリシス損失が低くなり、アモルファス合金リボンから作製されるコアは低鉄損のコアとなる。
【0032】
磁束密度(B80,800)と保磁力(H)は、直流磁化測定装置SK110(メトロン技研株式会社製)を用いて求められる値である。
80は、直流磁化測定装置SK110を用いて磁場強度80A/mにて求められる値であり、B800は、直流磁化測定装置SK110を用いて磁場強度800A/mにて求められる値である。
保磁力(H)は、磁場強度800A/mで測定したヒステリシス曲線より求められる値である。
【0033】
本開示のアモルファス合金リボンは、最高到達温度が410℃以上となる温度域での熱処理後も、脆化が抑えられたものである。アモルファス合金リボンの脆化の程度を表す脆性指標には、後述するように、裁断性、180°曲げ試験、及び引き裂き試験が知られている。
【0034】
本開示のアモルファス合金リボンは、裁断性を備えるものである。裁断性を備えるとは、合金リボンをハサミで裁断することができることを指す。
裁断性は、アモルファス合金リボンの脆化の程度を表す脆性指標となるものである。具体的には、合金リボンを二つの刃で挟んで裁断する裁断具(例えばハサミ)で裁断した際、ほぼ直線的に分割され、直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%以下であることにより評価される。
【0035】
上記の裁断性のほか、第2の脆性指標として180°曲げ試験がある。合金リボンを180°屈曲し、合金リボンの屈曲部分に破断部の発生の有無を目視観察することで評価される。合金リボンの光沢面(鋳造時の自由凝固面)を外側にして屈曲する場合と、合金リボンの非光沢面(鋳造時の冷却ロールに接触する側の表面)を外側にして屈曲する場合と、で評価結果が異なることがある。
また、第3の脆性指標として引き裂き試験による引裂きぜい性評価がある。具体的には、JIS C 2534(2017)に規定される「ぜい性コード」で表される。
JIS C 2534(2017)では、合金リボンの幅が142.2mm未満であるとの記載はないが、「試験片の両鋳造エッジから幅方向に12.7mm及び25.4mm、並びに幅方向中央部の5か所」の記載より、12.7mm+25.4mm=38.1mmの位置が中央部であれば、つまり、合金リボン幅が(38.1mm×2=)76.2mm幅以上であれば、同等の評価が可能であると考えられる。
他方、本開示のように合金リボンの幅が20mm以上であり、かつ、上記のように幅が76.2mm未満であるリボン幅の場合、以下の評価方法とする。
即ち、下記(1)〜(2)で評価して各試験片の脆性スポット数を合計し、得られた脆性スポットの合計数から「ぜい性コード」を決定する。「ぜい性コード」の指標は、小さい数値ほど脆化していないことを示す。なお、脆性スポットとは、アモルファス帯を引き裂いた際に、裂け目の経路、方向の変化、破片分離などのアモルファス帯の損傷が生じた領域を指す。
(1)合金リボンの幅が20mm以上50.8mm未満である場合、5つの試験片でリボン幅方向中央部の1か所の脆性スポット数を合計する。
(2)合金リボンの幅が50.8mm以上76.2mm未満である場合、2つの試験片で、両鋳造エッジから幅方向に12.7mm及び幅方向中央部の3か所の脆性スポット数を合計する。
【0036】
アモルファス合金リボンは、JIS C 2534(2017)に規定される引裂きぜい性のぜい性コードが3以下であることが好ましく、より好ましくは、前記ぜい性コードが2又は1である。
【0037】
アモルファス合金リボンは、厚さが20μm〜30μmであることが好ましい。
厚さが20μm以上であると、アモルファス合金リボンの機械的強度が確保され、アモルファス合金リボン片の破断が抑制される。アモルファス合金リボンの厚さは、22μm以上であることがより好ましい。また、厚さが30μm以下であると、鋳造後のアモルファス合金リボンにおいて、安定したアモルファス状態が得られる。
【0038】
アモルファス合金リボンの各々は、長手方向と直交する幅長が20mm以上であることが好ましく、幅長が20mm〜220mm以下であることが好ましく、幅長が25mm〜220mm以下であることがより好ましい。
アモルファス合金リボンの幅長が20mm以上であると、生産性良くコア作製が可能である。また、アモルファス合金リボンの幅長が220mm以下であると、幅方向の厚さや磁気特性のばらつきを抑制でき、安定生産性を確保し易い。
【0039】
既述の本開示のアモルファス合金リボンは、Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンが用いられ、組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンが作製される方法であれば、特に制限はなく、任意の製造方法を選択すればよい。
中でも、本開示のアモルファス合金リボンは、好ましくは、Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程(以下、「リボン準備工程」ともいう。)と、アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度までアモルファス合金リボンを昇温させる工程(以下、「昇温工程」ともいう。)と、前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、昇温されたアモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程(以下、「降温工程」ともいう。)と、を有する方法(本開示のアモルファス合金リボンの製造方法)により製造される。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
なお、組成式(A)中におけるa、b、及びcの詳細及び好ましい態様については、既述の通りである。
【0040】
アモルファス合金リボンを加熱して一定温度以上になると、アモルファス相を保った状態で構造緩和が進行する。さらに、結晶化温度以上にまで加熱すると結晶化が始まる。
アモルファス合金リボンは構造緩和により、その優れた磁気特性が顕在化する。他方、並行してアモルファス合金リボンの脆化が進行する。従来より、優れた磁気特性と脆性抑制の両立は困難とされていた。
本開示のアモルファス合金リボンでは、所定のアモルファス合金組成の合金リボンを、所定の温度プロファイル(昇温速度、最高到達温度、降温速度)で、所定の引張応力を合金リボン長尺方向にかけて熱処理をすることで、合金リボンの脆化が抑制され、かつ、優れた磁気特性が得られる。また、引張応力が付されることで、合金リボンの長尺方向(鋳造方向)に磁気異方性を付与することができる。
【0041】
<リボン準備工程>
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程を有する。
アモルファス合金リボンは、軸回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出する液体急冷法等の公知の方法によって製造することができる。但し、アモルファス合金リボンを準備する工程は、必ずしもアモルファス合金リボンを製造する工程である必要はなく、予め製造されたアモルファス合金リボンを単に準備する工程であってもよい。
【0042】
<昇温工程>
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度まで昇温させる工程を有する。
【0043】
本工程では、アモルファス合金リボンを上記の平均昇温速度に調節し、上記最高到達温度まで昇温できる方法であれば、いずれの方法で熱処理してもよい。
熱処理する場合、アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させながら伝熱媒体(本工程では昇温伝熱媒体)に接触させることにより、アモルファス合金リボンを昇温してもよい。
【0044】
なお、「張架した状態で走行」とは、アモルファス合金リボンが、引張応力が加えられた状態で連続走行することをいう。降温工程においても同様である。
アモルファス合金リボンに加えられる引張応力は、5MPa〜100MPaの範囲とされ、10MPa〜75MPaが好ましく,20MPa〜50MPaがより好ましい。
引張応力が5MPa以上であると、製造されるアモルファス合金リボンにおける、磁気異方性を付与することができる。また、引張応力が100MPa以下であると、アモルファス合金リボンの破断を抑制することができる。
張架されたアモルファス合金リボンの引張応力は、合金リボンを連続走行させる装置(例えば、後述のインラインアニール装置)での走行制御機構で制御され、走行制御機構で制御される張力を合金リボンの断面積(幅×厚さ)で除した値として求められる。
【0045】
本開示のアモルファス合金リボンの熱処理方法では、一定の組成を選択した上で、製造したアモルファス合金リボンの平均昇温速度を800℃/秒未満に抑えて加熱する。これにより、磁気特性と耐脆化とを両立することができる。張架することで、高温で短時間の熱処理により良好な磁気特性を得ることができる。
【0046】
平均昇温速度としては、上記と同様の理由から、50℃/秒以上800℃/秒未満とし、60℃/秒以上760℃/秒以下が好ましい。
【0047】
平均昇温速度とは、昇温前(例えば、後述のように伝熱媒体に接触させる前)のアモルファス合金リボンの温度と、アモルファス合金リボンの最高到達温度(=昇温伝熱媒体の温度)と、の温度差を、アモルファス合金リボンが伝熱媒体に接触している時間(秒)で除した値を意味する。
具体的には、例えば図1に示すインラインアニール装置の場合、アモルファス合金リボンの走行方向における、加熱室20の進入口より10mm上流の地点で放射温度計により測定されたリボン温度(加熱前のアモルファス合金リボンの温度、一般に室温(20℃〜30℃))と、昇温伝熱媒体の温度(=最高到達温度、例えば460℃)と、の温度差を、昇温伝熱媒体に接触している時間(秒)で除して求められる。なお、前記加熱室入口より10mm上流の地点で放射温度計での測定が困難である場合、又は室温が不明の場合は、25℃と設定できる。
【0048】
インラインアニール装置とは、例えば、図1図4に示すように、巻出しロールから巻取りロールに亘って、長尺のアモルファス合金リボンに対して昇温工程〜降温(冷却)工程を含む連続した熱処理工程を施すインラインアニール工程を行う装置を指す。
【0049】
昇温伝熱媒体の温度は、410℃〜480℃に調整されることが好ましい。
本工程では、アモルファス合金リボンを410℃〜480℃の最高到達温度まで昇温させる。この温度域でアモルファス合金リボンを張架することでリボン長手方向に磁気異方性を与えることができる。
最高到達温度は、昇温伝熱媒体の温度と同一温度である。
「昇温伝熱媒体の温度」及び「最高到達温度」は、合金リボンが接触する昇温伝熱媒体の表面に熱電対を設置して測定される温度である。
【0050】
また、本開示のアモルファス合金リボンの製造方法では、熱処理時の最高到達温度は410℃以上とされる。即ち、本開示のアモルファス合金リボンは、最高到達温度が410℃以上となる温度域での熱処理後も、脆化が抑えられている。また、本開示のアモルファス合金リボンの熱処理時の最高到達温度が480℃以下とされる。アモルファス合金リボンの熱処理時の最高到達温度が410℃未満であるか、又は480℃を超える場合は、保磁力(H)が1.0A/mを超え、優れた磁気特性が得られ難くなる。即ち、上記のように、熱処理時の最高到達温度を410℃〜480℃とすることで、脆化が抑制され、かつ、優れた磁気特性(低い保磁力)が得られる。
なお、平均昇温速度を200℃/秒以上の場合、最高到達温度が450℃未満であると、ぜい性コードが小さくなりやすい。平均昇温速度が300℃/秒以上の場合、または、500℃/秒以上の場合も、最高到達温度が450℃未満であると、ぜい性コードが小さくなりやすい。
【0051】
リボンを伝熱媒体側から吸引して、リボンと伝熱媒体との接触度合いを高めて昇温される態様が好ましい。この場合、伝熱媒体がリボンとの接触面に吸引孔を有し、吸引孔において減圧吸引することによりリボンを伝熱媒体の吸引孔を有する面に吸引吸着させてもよい。これにより、合金リボンの伝熱媒体への接触性が向上し、昇温しやすく、昇温速度の調整が容易になる。
また、本工程では、昇温後、伝熱媒体上にて、アモルファス合金リボンの温度を一定時間保持してもよい。
【0052】
<降温工程>
次に、本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、上記の昇温工程で昇温されたアモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として上記の最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程を有する。
【0053】
本工程では、アモルファス合金リボンを上記の平均降温速度に調節し、上記降温伝熱媒体温度まで降温できる方法であれば、いずれの方法で行われてもよい。
降温処理は、アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させながら伝熱媒体(本工程では降温伝熱媒体)に接触させることにより、アモルファス合金リボンを降温してもよい。
【0054】
アモルファス合金リボンに加えられる引張応力は、昇温工程と同様に、5MPa〜100MPaの範囲とされ、10MPa〜75MPaが好ましく,20MPa〜50MPaがより好ましい。
引張応力が5MPa以上であると、製造されるアモルファス合金リボンにおける、磁気異方性を付与することができる。また、引張応力が100MPa以下であると、アモルファス合金リボンの破断を抑制することができる。
張架されたアモルファス合金リボンの引張応力は、上記の通り、合金リボンを連続走行させる装置(例えば、後述のインラインアニール装置)での走行制御機構で制御され、走行制御機構で制御される張力を合金リボンの断面積(幅×厚さ)で除した値として求められる。
【0055】
降温伝熱媒体の温度(降温伝熱媒体温度)は、200℃以下の温度域が好ましい。
ここで、降温伝熱媒体温度とは、本工程で降温させた際の到達温度を指し、200℃、150℃、100℃、又は室温(例えば20℃)等の温度であってもよく、適宜設定することができる。
「降温伝熱媒体温度」は、合金リボンが接触する昇温伝熱媒体の表面に熱電対を設置して測定される温度である。
【0056】
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法では、既述のように一定の組成を選択し、昇温工程を経た後、更に、平均降温速度を600℃/秒未満に抑えてアモルファス合金リボンを降温させる。これにより、優れた磁気特性と脆化抑制とを両立することができる。
【0057】
平均降温速度としては、上記と同様の理由から、150℃/秒以上600℃/秒未満が好ましく、190℃/秒以上600℃/秒未満がより好ましく、190℃/秒以上500℃/秒以下が更に好ましい。
【0058】
平均降温速度とは、例えば最高到達温度から降温伝熱媒体の温度まで降温した場合、アモルファス合金リボンの最高到達温度(=昇温伝熱媒体の温度)と降温伝熱媒体の温度と、の温度差を、アモルファス合金リボンが昇温伝熱媒体を離れた時点から降温伝熱媒体を離れた時点までの時間(秒)で除した値を意味する。
具体的には、例えば図1に示すインラインアニール装置の場合、アモルファス合金リボンの走行方向における昇温伝熱媒体(図1中の加熱プレート22)の温度(=最高到達温度)と、降温伝熱媒体(図1中の冷却プレート32)の温度と、の温度差を、昇温伝熱媒体から離れた時点から降温伝熱媒体から離れた時点までの時間(秒)で除して求められる。
ここでは、冷却室が1つであるが、複数の冷却室を連結して備えている場合(最上流の冷却室を第1の冷却室、第1の冷却室より下流の冷却室を第2の冷却室、等ということがある。)には、アモルファス合金リボンの走行方向最上流の(第1の)冷却室での平均降温速度(最高到達温度と第1の降温伝熱媒体の温度との温度差を、アモルファス合金リボンが昇温伝熱媒体を離れた時点から第1の降温伝熱媒体を離れた時点までの時間(秒)で除した値)とする。
【0059】
上記の昇温工程及び降温工程で用いられる伝熱媒体としては、プレート、ツインロール、等が挙げられる。
伝熱媒体の材質としては、銅、銅合金(青銅、真鍮、等)、アルミニウム、鉄、鉄合金(ステンレス等)、などが挙げられる。このうち、銅、銅合金、又はアルミニウムが熱電率(熱伝達率)が高く好ましい。
伝熱媒体は、Niめっき、Agめっき等のめっき処理が施されていてもよい。
【0060】
冷却方法としては、昇温用の伝熱媒体から合金リボンを離した後に大気に曝して冷却する方法でもよいが、冷却速度の観点から、冷却器を使用して合金リボンを強制冷却することが好ましい。冷却器としては、リボンに冷風を送って冷却する非接触型の冷却器でもよく、上記の伝熱媒体の温度を例えば200℃以下としてリボンを接触させて降温する接触型の冷却器でもよい。伝熱媒体がリボンとの接触面に吸引孔を有し、吸引孔において減圧吸引することによりリボンを伝熱媒体の吸引孔を有する面に吸引吸着させてもよい。これにより、合金リボンの伝熱媒体の接触性が向上し、降温しやすく、降温速度の調整が容易になる。
【0061】
降温に際して伝熱媒体を用いる場合、昇温工程で加熱された合金リボンを昇温工程の伝熱媒体から離し、合金リボンを降温することが好ましい。この場合、冷却器としてリボンに冷風を送って降温する非接触型の冷却器でもよい。合金リボンの降温速度の観点からは、伝熱媒体の温度を100℃以下として合金リボンを接触させて降温する接触型の冷却器を用いた態様が好ましい。伝熱媒体としては、昇温工程で使用可能なものと同様の伝熱媒体を使用することができる。
【0062】
降温に伝熱媒体を用い、降温伝熱媒体温度まで合金リボンを接触させて降温する態様は、昇温工程からの降温が連続的に行いやすい。合金リボンの伝熱媒体への接触は、昇温工程での最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温する際の平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として行われる。
この場合、本開示のアモルファス合金リボンの製造では、走行するアモルファス合金リボンを昇温させる伝熱媒体(昇温伝熱媒体)の接触面、及び走行するアモルファス合金リボンを降温させる伝熱媒体(降温伝熱媒体)の接触面は、それぞれ平面状態で配置されている場合が好ましく、平面状態の各接触面は同一平面内に配置されることがより好ましい。平面状態の各接触面が同一平面上に配置されることで、昇温工程からの降温がより一層連続的に行いやすくなる。
【0063】
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、図1図4に示す、加熱室及び冷却室を備えたインラインアニール装置を用いて実施されることが好ましい。
【0064】
図1に示されるように、インラインアニール装置100は、合金リボンの巻回体11から合金リボン10を巻き出す巻き出しローラー12(巻き出し装置)と、巻き出しローラー12から巻き出された合金リボン10を加熱する加熱プレート(伝熱媒体)22と、加熱プレート22によって加熱された合金リボン10を降温する冷却プレート(伝熱媒体)32と、冷却プレート32によって降温された合金リボン10を巻き取る巻き取りローラー14(巻き取り装置)と、を備える。図1では、合金リボン10の走行方向を、矢印Rで示している。
【0065】
巻き出しローラー12には、合金リボンの巻回体11がセットされている。
巻き出しローラー12が矢印Uの方向に軸回転することにより、合金リボンの巻回体11から合金リボン10が巻き出される。
この一例では、巻き出しローラー12自体が回転機構(例えばモーター)を備えていてもよいし、巻き出しローラー12自体は回転機構を備えていなくてもよい。
巻き出しローラー12自体は回転機構を備えていない場合でも、後述の巻き取りローラー14による合金リボン10の巻き取り動作に連動し、巻き出しローラー12にセットされた合金リボンの巻回体11から合金リボン10が巻き出される。
【0066】
図1中、丸で囲った拡大部分に示すように、加熱プレート22は、巻き出しローラー12から巻き出された合金リボン10が接触しながら走行する第1平面22Sを含む。この加熱プレート22は、第1平面22Sに接触しながら第1平面22S上を走行している合金リボン10を、第1平面22Sを介して加熱する。これにより、走行中の合金リボン10が、安定的に急速加熱される。
【0067】
加熱プレート22は、不図示の熱源に接続されており、この熱源から供給された熱によって所望とする温度に加熱されている。加熱プレート22は、熱源に接続されることに代えて、又は、熱源に接続されることに加えて、加熱プレート22自身の内部に熱源を備えていてもよい。
加熱プレート22の材質としては、ステンレス、Cu、Cu合金、Al合金、等が挙げられる。
【0068】
加熱プレート22は、加熱室20に収容されている。
加熱室20は、加熱プレート22に対する熱源とは別に、加熱室の温度を制御するための熱源を備えていてもよい。
加熱室20は、合金リボン10の走行方向(矢印R)の上流側及び下流側のそれぞれに、合金リボンが進入又は退出する開口部(不図示)を有している。合金リボン10は、上流側の開口部である進入口を通って加熱室20内に進入し、下流側の開口部である退出口を通って加熱室20内から退出する。
【0069】
また、図1中、丸で囲った拡大部分に示すように、冷却プレート32は、合金リボン10が接触しながら走行する第2平面32Sを含む。この冷却プレート32は、第2平面32Sに接触しながら第2平面32S上を走行している合金リボン10を、第2平面32Sを介して降温する。
【0070】
冷却プレート32は、冷却機構(例えば水冷機構)を有していてもよいし、特段の冷却機構を有していなくてもよい。
冷却プレート32の材質としては、ステンレス、Cu、Cu合金、Al合金、等が挙げられる。
【0071】
冷却プレート32は、冷却室30に収容されている。
冷却室30は、冷却機構(例えば水冷機構)を有していてもよいが、特段の冷却機構を有していなくてもよい。即ち、冷却室30による冷却の態様は、水冷であってもよいし、空冷であってもよい。
冷却室30は、合金リボン10の走行方向(矢印R)の上流側及び下流側のそれぞれに、合金リボンが進入又は退出する開口部(不図示)を有している。合金リボン10は、上流側の開口部である進入口を通って冷却室30内に進入し、下流側の開口部である退出口を通って冷却室30内から退出する。
【0072】
巻き取りローラー14は、矢印Wの方向に軸回転する回転機構(例えばモーター)を備えている。巻き取りローラー14の回転により、合金リボン10が所望とする速度で巻き取られる。
【0073】
インラインアニール装置100は、巻き出しローラー12と加熱室20との間に、合金リボン10の走行経路に沿って、ガイドローラー41、ダンサーローラー60(引張応力調整装置の一つ)、ガイドローラー42、並びに、一対のガイドローラー43A及び43Bを備えている。引張応力の調整は、巻き出しローラー及び12巻き取りローラー14の動作制御によっても行われる。
ダンサーローラー60は、鉛直方向(図4中の両側矢印の方向)に移動可能に設けられている。このダンサーローラー60の鉛直方向の位置を調整することにより、合金リボン10の引張応力を調整できる。ダンサーローラー62についても同様である。
巻き出しローラー12から巻き出された合金リボン10は、これらのガイドローラー及びダンサーローラーを経由して、加熱室20内に導かれる。
【0074】
インラインアニール装置100は、加熱室20と冷却室30との間に、一対のガイドローラー44A及び44B、並びに、一対のガイドローラー45A及び45Bを備えている。
加熱室20から退出した合金リボン10は、これらのガイドローラーを経由して冷却室30内に導かれる。
【0075】
インラインアニール装置100は、冷却室30と巻き取りローラー14との間に、合金リボン10の走行経路に沿って、一対のガイドローラー46A及び46B、ガイドローラー47、ダンサーローラー62、ガイドローラー48、ガイドローラー49、並びに、ガイドローラー50を備えている。
ダンサーローラー62は、鉛直方向(図4中の両側矢印の方向)に移動可能に設けられている。このダンサーローラー62の鉛直方向の位置を調節することにより、合金リボン10の引張応力を調整できる。
冷却室30から退出した合金リボン10は、これらのガイドローラー及びダンサーローラーを経由して、巻き取りローラー14に導かれる。
【0076】
インラインアニール装置100において、加熱室20の上流側及び下流側に配置されたガイドローラーは、合金リボン10と加熱プレート22の第1平面とを全面的に接触させるために、合金リボン10の位置を調整する機能を有する。
インラインアニール装置100において、冷却室30の上流側及び下流側に配置されたガイドローラーは、合金リボン10と冷却プレート32の第2平面とを全面的に接触させるために、合金リボン10の位置を調整する機能を有する。
【0077】
図2は、図1に示すインラインアニール装置100の加熱プレート22を示す概略平面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。
図2及び図3に示すように、加熱プレート22の第1平面(即ち、合金リボン10との接触面)には、複数の開口部24(吸引構造)が設けられている。各開口部24は、それぞれ、加熱プレート22を貫通する貫通孔25の一端を構成している。
【0078】
この一例では、複数の開口部24が、合金リボン10との接触領域全体に渡り、二次元状に配置されている。
複数の開口部24の具体的な配置は、図2に示される配置には限定されない。複数の開口部24は、図2に示されるように、合金リボン10との接触領域全体に渡り、二次元状に配置されていることが好ましい。
また、開口部24の形状は、平行部(平行な2辺)を有する長尺形状となっている。開口部24の長さ方向は、合金リボン10の進行方向に対して直角な方向となっている。
開口部24の形状は、図2に示される形状には限定されず、図2に示される形状以外の長尺形状、楕円形状(円形状を含む)、多角形状(例えば長方形)、等のあらゆる形状を適用できる。
【0079】
インラインアニール装置100では、不図示の吸引装置(例えば、真空ポンプ)によって貫通孔25の内部空間を排気することにより(矢印S参照)、走行中の合金リボン10を加熱プレート22の開口部24が設けられた第1平面22Sに吸引することができる。これにより、走行中の合金リボン10を、より安定的に加熱プレート22の第1平面22Sに接触させることができる。
なお、この一例では、貫通孔25が、加熱プレート22の、第1平面22Sから第1平面22Sとは反対側の平面までを貫通している。貫通孔は、第1平面22Sから加熱プレート22の側面までを貫通していてもよい。
【0080】
図4は、本実施形態における加熱プレートの変形例(加熱プレート122)を示す概略平面図である。
図4に示されるように、この変形例では、加熱プレート122が、合金リボン10の走行方向(矢印R)について、3つの領域(領域122A〜122C)に分割されている。
領域122A〜122Cには、図2に示す加熱プレート22と同様に、それぞれ複数の開口部124A、124B、124Cが、合金リボン10との接触領域全体に渡り、二次元状に配置されている。開口部124A、124B、124Cの各々は、加熱プレート122を貫通する貫通孔の一端を構成し、各領域における複数の貫通孔には、それぞれ複数の貫通孔と連通する排気管126A、126B及び126Cが取り付けられている。そして、排気管126A、126B及び126Cを通じて不図示の吸引装置(例えば、真空ポンプ)によって貫通孔の内部空間を排気することにより(矢印S参照)、走行中の合金リボン10を加熱プレート122の開口部124A、124B及び124Cが設けられた第1平面に吸引することができる。
【0081】
〜昇温工程及び降温工程の好ましい態様〜
昇温工程及び降温工程の好ましい一態様として、伝熱媒体を備えたインラインアニール装置を用い、合金リボンを、合金リボンとの接触面が互いに同一平面内に位置する昇温伝熱媒体及び降温伝熱媒体に接触させて張力を加えながら熱処理することにより、アモルファス合金リボンを作製する態様(以下、「態様X」という。)が挙げられる。
【0082】
アモルファス合金リボン片は、アモルファス合金リボンを切断して切り出したものである。
アモルファス合金リボン片の切り出し(即ち、アモルファス合金リボンの切断)は、シャーリングなどの公知の切断手段を用いて行うことができる。
【0083】
上述したアモルファス合金リボンを得る工程において、アモルファス合金リボンを巻き取って巻回体とした場合には、アモルファス合金リボン片を切り出す工程では、アモルファス合金リボンの巻回体からアモルファス合金リボンを巻き出し、巻き出されたアモルファス合金リボンからアモルファス合金リボン片を切り出す。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1、2、比較例1〜5)
<アモルファス合金リボンの作製>
軸回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出する液体急冷法により、Fe80.8Si3.915.30.32(原子%;実施例1及び比較例1、2)、Fe81.3Si4.014.70.25(原子%;実施例2及び比較例3、4)、又はFe81.0Si8.111.80.30(原子%;比較例5)の組成を有する、幅長30mm、厚さ25μmのアモルファス合金リボンを製造した。
【0086】
次に、加熱室に伝熱媒体を備えた図1と同様に構成されたインラインアニール装置を用い、アモルファス合金リボンを張架した状態で、上記のアモルファス合金リボンを加熱室に進入させ、進入したアモルファス合金リボンを上述した態様Xにて伝熱媒体に接触させて熱処理した。熱処理は、伝熱媒体の温度を下記の範囲で変えて行った。続いて、冷却室に進入させてアモルファス合金リボンを、昇温時の最高到達温度から25℃まで降温した。熱処理時の平均昇温速度及び平均降温速度は、表1〜表3に示す通りである。その後、熱処理が施されたアモルファス合金リボンを冷却室から退出させた。その後、アモルファス合金リボンを巻き取って巻回体とした。
【0087】
製造条件は、以下に示す通りである。
<製造条件>
伝熱媒体:ブロンズ製プレート
最高到達温度(昇温伝熱媒体の温度):下記表1〜表3参照
アモルファス合金リボンに加える引張応力:25MPa
インラインアニール処理速度:0.2m/秒
アモルファス合金リボンと昇温伝熱媒体との接触時間:6.0秒
アモルファス合金リボンと降温伝熱媒体との接触時間:6.0秒
平均昇温速度:下記表1〜表3参照
平均降温速度:下記表1〜表3参照
【0088】
昇温伝熱媒体及び降温伝熱媒体の温度は、合金リボンが接触する伝熱媒体の表面に設置された熱電対により測定した。
平均昇温速度は、アモルファス合金リボンの走行方向における、加熱室20の進入口より上流10mmの地点で放射温度計により測定されたアモルファス合金リボン温度(加熱前のリボン温度=通常は室温であり、本実施例では25℃である。)と、最高到達温度(=昇温伝熱媒体(図1中の加熱プレート22)の温度;350℃〜530℃に設定)と、の温度差を、伝熱媒体に接触している時間(秒)で除して求めた。
平均降温速度は、アモルファス合金リボンの走行方向における、昇温伝熱媒体(図1中の加熱プレート22)の温度(=最高到達温度)と、25℃の降温伝熱媒体(図1中の冷却プレート32)の温度と、の温度差を、アモルファス合金リボンが昇温伝熱媒体から離れた時点から降温伝熱媒体から離れた時点までの時間(秒)で除して求めた。
【0089】
ここで、インラインアニールにおいて、アモルファス合金リボンの走行速度を一定とする、即ち、昇温伝熱媒体とアモルファス合金リボンとの接触時間を一定とした場合、昇温伝熱媒体の温度(=最高到達温度)を変えることによって、平均昇温速度を制御することができる。例えば、後記の表4のインラインアニール処理速度0.5m/秒の場合、昇温前の合金リボンの温度を25℃とし、昇温伝熱媒体に接触している時間を2.4秒とし、昇温伝熱媒体の温度(=アモルファス合金リボンの最高到達温度)を380℃〜510℃の間で変化させると、平均昇温速度は148℃/秒〜202℃/秒の間で制御することができる。
【0090】
<アモルファス合金リボン片の作製>
次に、インラインアニール処理を行った後のアモルファス合金リボンの巻回体からアモルファス合金リボンを巻き出し、巻き出されたアモルファス合金リボンを裁断することにより、長手方向長さが280mmであるアモルファス合金リボン片を切り出した。アモルファス合金リボンの裁断は、シャーリングにより行った。
【0091】
<測定及び評価>
各実施例及び各比較例にて作製したアモルファス合金リボンについて、以下の方法により、脆性指標(裁断性、180°曲げ試験、及び引裂きぜい性)の評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0092】
−第1の脆性指標:裁断性−
伝熱媒体の温度によって平均昇温速度もしくは平均降温速度及び最高到達温度を変えて作製された複数のアモルファス合金リボンを用い、アモルファス合金リボンをステンレス製ハサミ(Westcott社製、製品名:Westcott 8" All Purpose Preferred Stainless Steel Scissors)で裁断した。この際の裁断性の有無を以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
有り:ほぼ直線的に分割され、直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%以下である。
無し:直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%を超える。
【0093】
−第2の脆性指標:180°曲げ試験−
伝熱媒体の温度によって平均昇温速度又は平均降温速度と最高到達温度とを変えて作製された複数のアモルファス合金リボンを用い、アモルファス合金リボンの光沢面(鋳造時の自由凝固面)を外側にして180°屈曲させる180°曲げ試験、及びアモルファス合金リボンの非光沢面(鋳造時の冷却ロール接触面)を外側にして180°屈曲させる180°曲げ試験を行い、合金リボンの屈曲部分に破断部の発生の有無を目視観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
無し:合金リボンの屈曲部分に破断部の発生がない。
有り:合金リボンの屈曲部分に破断部の発生がある。
【0094】
−第3の脆性指標:引裂きぜい性−
幅が76.2mm以上の合金リボンについては、JIS C 2534(2017)8.4.4.2に記載の方法で評価した。また、幅が20mm以上76.2mm未満の合金リボンについては、前述の方法で評価した。
【0095】
−保磁力(H)−
直流磁化測定装置SK110(メトロン技研株式会社製)を用い、磁場強度800A/mで測定したヒステリシス曲線より求めた。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
表1、表2に示すように、Fe量が80.5原子%以上である組成で、最高到達温度480℃以下では、裁断性を有する結果が得られている。
表1に示すように、合金組成Fe80.8Si3.915.30.32において、実施例1では、最高到達温度410〜480℃、平均昇温速度64〜76℃/秒、平均降温速度193〜228℃/秒の条件では、保磁力Hは1.00A/m以下であり、裁断性を有している。最高到達温度410℃、平均昇温速度64℃/秒、平均降温速度193℃/秒の条件では、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性については、ぜい性コードが1であり、良好であった。最高到達温度420℃の条件では、保磁力Hは0.80と小さく、180°曲げ試験では破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性については、ぜい性コードが3であり、良好であった。
他方、比較例1では、最高到達温度が400℃(410℃未満)と低いため、保磁力Hが1.0A/mを超えて1.60A/mと大きい値である。また、比較例2では、最高到達温度が490℃で、480℃を超えているためHが1.20A/mと大きい。裁断性は有するが、180°曲げ試験では破断部が観察され、引裂きぜい性については、ぜい性コードが5であり、脆いリボンであることが分かった。
【0100】
表2に示すように、合金組成Fe81.3Si4.014.70.25において、実施例2では、最高到達温度410〜480℃、平均昇温速度64〜76℃/秒、平均降温速度193〜228℃/秒の条件では、保磁力Hは0.90A/m以下であり、裁断性を有している。最高到達温度410℃、平均昇温速度64℃/秒、平均降温速度193℃/秒の条件では、保磁力Hは0.70A/mと小さく、180°曲げ試験では破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性については、ぜい性コードも2であり良好であった。
他方、比較例3では、最高到達温度が380℃未満と熱処理温度が低いため、保磁力Hが1.0A/mを超えて1.10A/mと大きい値である。比較例4では、熱処理時の最高到達温度が500℃で、480℃を超えているため、Hが2.00A/mと大きい。また、裁断性も無く、脆いリボンであることが分かった。
【0101】
表3の比較例5は、合金組成が組成式(A)から外れる例であり、全ての熱処理条件においてHが1.10以上と大きい値を示した。
【0102】
以上のように、組成式(A)を満たす合金組成(Fe100−a−bSi)とし、特定の平均昇温速度及び平均降温速度の下で一定の最高到達温度を維持して、アモルファス合金リボンを特定範囲の引張応力で張架した状態で走行させて熱処理することにより、優れた磁気特性(低い保磁力H)を備え、かつ、裁断性を有する、即ち脆化抑制が図られたアモルファス合金リボンが得られた。
【0103】
(実施例3〜5、比較例6〜11)
軸回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出する液体急冷法により、Fe81.7Si3.714.60.28(原子%)の組成を有する、幅142.2mm、厚さ25μmのアモルファス合金リボンを作製した。
次に、上述した態様Xにより、伝熱媒体を備えたインラインアニール装置を用い、上記アモルファス合金リボンを伝熱媒体に接触させ、最高到達温度及びインラインアニール処理速度を表5〜表7に示すように設定して熱処理を施した。熱処理が施されたアモルファス合金リボンを伝熱媒体から退出させ、冷却室30に冷却用の伝熱媒体を用いて室温(25℃)まで降温した。その後、アモルファス合金リボンを巻き取り、アモルファス合金リボンの巻回体とした。製造条件は、以下に示す通りである。
次いで、実施例1と同様にして、アモルファス合金リボン片を作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を下記表5〜表7に示す。
【0104】
<製造条件>
伝熱媒体:ブロンズ製プレート
(昇温伝熱媒体:昇温プレート、降温伝熱媒体:降温プレート)
伝熱媒体の温度:下記表5〜表7参照
アモルファス合金リボンに加える引張応力:40MPa
アモルファス合金リボンと伝熱媒体との接触時間:下記表4参照
平均昇温速度:下記表5〜表7参照
平均降温速度:下記表5〜表7参照
最高到達温度(昇温伝熱媒体の温度):下記表5〜表7参照
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【0109】
表5〜表7では、同一の合金組成で、処理速度(アモルファス合金リボンの搬送速度)を0.5m/秒、1.0m/秒又は1.5m/秒と変えることにより、平均昇温速度及び平均降温速度が異なる条件の熱処理条件となっている。
表5の実施例3では、最高到達温度410〜480℃、平均昇温速度160〜190℃/秒、平均降温速度120〜142℃/秒の条件で、Hは0.70A/m以下であり、裁断性を有する。また、最高到達温度410℃、平均昇温速度160℃/秒、平均降温速度120℃/秒の条件では、Hは0.70A/mと小さく、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは3であり良好であった。実施例3では、最高到達温度を410℃以上として引張応力をかけて熱処理を行っていることで磁気異方性が付与されており、結果として低いHが得られている。後処理として、磁気異方性を付与するための磁場中処理は不要である。
他方、比較例6では、最高到達温度が380℃(410℃未満)と低いため、保磁力Hが1.0A/mを超えて1.10A/mと大きい値である。比較例7では、最高到達温度が510℃(480℃超)と高いため、裁断性が無い。
【0110】
表6の実施例4では、最高到達温度410〜480℃、平均昇温速度321〜379℃/秒、平均降温速度241〜284℃/秒の条件で、Hは0.90A/m以下であり、裁断性を有する。最高到達温度410℃、平均昇温速度321℃/秒、平均降温速度241℃/秒の条件では、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは1であり良好であった。最高到達温度420℃、平均昇温速度329℃/秒、平均降温速度247℃/秒の条件では、Hは0.80A/mと小さく、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは1であり良好であった。最高到達温度440℃、平均昇温速度346℃/秒、平均降温速度259℃/秒の条件では、Hは0.75A/mと小さく、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは2であり良好であった。最高到達温度450℃、平均昇温速度354℃/秒、平均降温速度266℃/秒の条件では、Hは0.75A/mと小さく、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは3であり良好であった。実施例4でも、実施例3と同様に、最高到達温度を410℃以上として引張応力をかけて熱処理により磁気異方性が付与されており、低いHが得られている。磁気異方性を付与するための後処理は不要である。
他方、比較例8では、最高到達温度が390℃(410℃未満)と低いため、保磁力Hが1.0A/mを超えて1.10A/mと大きい値である。比較例9では、最高到達温度が510℃(480℃超)と高いため、裁断性が無い。
【0111】
表7の実施例5では、最高到達温度440〜480℃、平均昇温速度519〜569℃/秒、平均降温速度377〜414℃/秒の条件で、Hは0.85A/m以下であり、裁断性を有する。最高到達温度440℃、平均昇温速度519℃/秒、平均降温速度377℃/秒の条件では、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは1であり良好であった。最高到達温度450℃、平均昇温速度531℃/秒、平均降温速度386℃/秒の条件では、Hは0.75A/mと小さく、180°曲げ試験で破断部は観察されなかった。また、引裂きぜい性評価でのぜい性コードは2であり良好であった。実施例5でも、実施例3と同様に、最高到達温度を410℃以上として引張応力をかけて熱処理することにより磁気異方性が付与され、低いHが得られている。磁気異方性を付与するための後処理は不要である。
他方、比較例10では、最高到達温度が390℃(410℃未満)と低いため、保磁力Hが1.0A/mを超えて2.00A/mと大きい値である。比較例11では、最高到達温度が530℃(480℃超)と高いため、裁断性が無い。
【0112】
2017年7月4日に出願された米国仮出願62/528,450の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4

【手続補正書】
【提出日】2019年8月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度までアモルファス合金リボンを昇温させる工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力5MPa〜100MPaで張架した状態で、昇温された前記アモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程と、
を含み、
前記昇温させる工程での昇温及び前記降温させる工程での降温は、前記アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する前記アモルファス合金リボン伝熱媒体との接触面に接触しながら走行することにより行われ、
下記組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを製造する、アモルファス合金リボンの製造方法。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項2】
前記平均昇温速度が、60℃/秒〜760℃/秒であり、前記平均降温速度が、190℃/秒〜500℃/秒である、請求項1に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項3】
前記昇温させる工程及び前記降温させる工程における引張応力が、10MPa〜75MPaである、請求項1又は請求項2に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項4】
前記bが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
【請求項5】
前記100−a−bが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項6】
前記aが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【請求項7】
走行する前記アモルファス合金リボンを昇温させる伝熱媒体の接触面、及び走行する前記アモルファス合金リボンを降温させる伝熱媒体の接触面は、平面内に配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
【請求項8】
Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなり、下記組成式(A)で表される組成を有し、裁断性を有し、かつ、保磁力Hが1.0A/m以下であるアモルファス合金リボン。
Fe100−a−bSi … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項9】
JIS C 2534(2017)に規定される引裂きぜい性のぜい性コードが3以下である請求項8に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項10】
前記ぜい性コードが2以下である請求項9に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項11】
幅長が25mm以上220mm以下である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
【請求項12】
前記bが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
【請求項13】
前記100−a−bが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
【請求項14】
前記aが、下記範囲を満たす請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボン。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
【請求項15】
請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの切り出し断片であるアモルファス合金リボン片。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
降温伝熱媒体の温度(降温伝熱媒体温度)は、200℃以下の温度域が好ましい。
ここで、降温伝熱媒体温度とは、本工程で降温させた際の到達温度を指し、200℃、150℃、100℃、又は室温(例えば20℃)等の温度であってもよく、適宜設定することができる。
「降温伝熱媒体温度」は、合金リボンが接触する温伝熱媒体の表面に熱電対を設置して測定される温度である。
【国際調査報告】