(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年8月20日
【発行日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/317 20060101AFI20211119BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20211119BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211119BHJP
【FI】
C07C67/317
C07C69/24
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2020-572064(P2020-572064)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2019-25398(P2019-25398)
(32)【優先日】2019年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年9月19日に発行された「第122回触媒討論会、討論会A予稿集、第470頁、一般社団法人触媒学会」において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年9月26日、北海道教育大学函館校にて開催された、第122回触媒討論会において発表
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水垣 共雄
(72)【発明者】
【氏名】金田 清臣
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰照
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC11
4H006BA14
4H006BA26
4H006BA55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
4H006BJ20
4H006BN10
4H006KA31
4H006KC12
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
本発明の目的は、不均一系反応により、ジカルボン酸モノエステルを還元して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造する方法を提供する。
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法は、下記触媒の存在下で、基質としての下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルを還元して、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを製造することを特徴とする。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記触媒の存在下で、基質としての下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルを還元して、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを製造する、ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【化1】
(式中、Rは単結合又は2価の炭化水素基を示し、R’は1価の炭化水素基を示す)
【請求項2】
基質の転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルの選択率が70%以上であり、下記式(3)で表されるラクトンの選択率が5%以下である、請求項1に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
【化2】
(式中、Rは単結合又は2価の炭化水素基を示し、R’は1価の炭化水素基を示す)
【請求項3】
触媒が、金属種としてM1とM2を、M11モルに対してM2を0.05〜1モルの範囲で含有する請求項1又は2に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
触媒の使用量(M1金属換算)が、基質の0.01〜30モル%である請求項1〜3の何れか1項に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
水の存在下で還元反応を行う請求項1〜4の何れか1項に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
金属種として下記M1とM2が下記担体に担持されてなり、ジカルボン酸モノエステルを還元して、対応するヒドロキシカルボン酸エステルを得るのに使用される、ジカルボン酸モノエステル還元触媒。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸モノエステルを還元してヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法に関する。本願は、2019年2月15日に日本に出願した、特願2019−025398号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
地球規模の二酸化炭素排出量削減のために、バイオマス資源から有用化成品への効率的変換反応の開発が強く望まれている。バイオマス由来の化合物としては、たとえばコハク酸モノメチルエステル等のジカルボン酸モノエステルが挙げられる。そして、ジカルボン酸モノエステルを水素化して得られるヒドロキシカルボン酸エステルは、プラスチック原料、医薬中間体、化粧品原料等として有用である。その他、乳化剤として有用な脂肪酸ヒドロキシカルボン酸エステル塩の原料としても有用である。
【0003】
ジカルボン酸モノエステルを水素化してヒドロキシカルボン酸エステルを得る方法としては、還元剤としてボラン・テトラヒドロフラン(BH
3・THF)錯体を使用した、均一系反応による方法が知られている。しかし、この方法では当量の還元剤が必要である点、温度管理を厳密に行う必要がある点、及び多段階反応を行う点など、工業的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法としては不向きであった。
【0004】
一方、不均一系反応としては、ジカルボン酸モノエステルを、Ru及びGeを活性炭に担持した触媒を使用して水素化する方法が知られている(特許文献1)。しかし、この方法では、エステル基が優先的に還元されるため、例えばアジピン酸エステルを水素化すれば、主に1,6−ヘキサンジオールやオキシカプロン酸が得られることが記載されている。
【0005】
すなわち、不均一系反応によりジカルボン酸モノエステルを還元して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に得る方法が見いだされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−35464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、不均一系反応により、ジカルボン酸モノエステルを還元してヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、温和な条件下で、効率よくジカルボン酸モノエステルを還元して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、効率よくジカルボン酸モノエステルを還元して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ジカルボン酸モノエステルを効率よく還元してヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造する用途に使用する触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記特定の触媒を使用すると、ジカルボン酸モノエステルを速やかに還元してヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は下記触媒の存在下で、基質としての下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルを還元して、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを製造する、ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【化1】
(式中、Rは単結合又は2価の炭化水素基を示し、R’は1価の炭化水素基を示す)
【0010】
本発明は、また、基質の転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルの選択率が70%以上であり、下記式(3)で表されるラクトンの選択率が5%以下である前記ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【化2】
(式中、Rは単結合又は2価の炭化水素基を示し、R’は1価の炭化水素基を示す)
【0011】
本発明は、また、触媒が、金属種としてM
1とM
2を、M
11モルに対してM
2を0.05〜1モルの範囲で含有する前記ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、触媒の使用量(M
1金属換算)が、基質の0.01〜30モル%である前記ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、水の存在下で還元反応を行う前記ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、金属種として下記M
1とM
2が下記担体に担持されてなり、ジカルボン酸モノエステルを還元して、対応するヒドロキシカルボン酸エステルを得るのに使用される、ジカルボン酸モノエステル還元触媒を提供する。
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、ジカルボン酸モノエステルから、温和な条件下で、ワンステップで、効率よく且つ選択的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、効率よく且つ選択的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる。
そして、このようにして得られるヒドロキシカルボン酸エステルは、プラスチック原料、医薬中間体、化粧品原料等として有用である。その他、乳化剤として有用な脂肪酸ヒドロキシカルボン酸エステル塩の原料としても有用である。従って、本発明の製造方法は工業的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法として好適である。
【0016】
また、本発明の、M
1とM
2が、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイトに担持されてなる触媒は、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、ジカルボン酸モノエステルを還元してヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に得るための触媒として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(触媒)
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法は、金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒を、少なくとも1種使用することを特徴とする。
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
【0018】
担体に担持されるM
1とM
2は、金属単体であってもよく、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体等であってもよい。
【0019】
M
1の担持量(金属換算)は、担体の、例えば1〜50重量%程度、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。M
1を過剰に担持しても、触媒活性は飽和して横ばい状態となり、反応を促進する効果は得られない。一方、M
1の担持量が上記範囲を下回ると、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向がある。
【0020】
M
2の担持量(金属換算)は、担体の、例えば0.01〜20重量%程度、好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%、最も好ましくは0.05〜0.8重量%、とりわけ好ましくは0.1〜0.6重量%である。M
2の担持量が上記範囲を外れると、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造することが困難となる傾向がある。
【0021】
本発明における触媒は、M
1とM
2の界面に触媒活性点を有すると考えられる。そして、M
1とM
2の一方が過剰になると、過剰の金属種によってもう一方の金属種が覆われて界面が減少し、触媒活性点が減少するためか、触媒活性が低下してヒドロキシカルボン酸エステルの収率が低下する傾向がある。
【0022】
そのため、M
1とM
2の担持量は特定の範囲であることが好ましく、M
11モルに対するM
2の担持量は、例えば0.05〜1モルの範囲であることが好ましい。また、M
11モルに対するM
2の担持量の上限は、好ましくは0.5モル、特に好ましくは0.4モル、最も好ましくは0.35モル、とりわけ好ましくは0.3モルである。M
11モルに対するM
2の担持量の下限は、好ましくは0.07モル、特に好ましくは0.1モル、最も好ましくは0.15モル、とりわけ好ましくは0.2モルである。
【0023】
本発明における触媒は、M
1とM
2以外の第3金属種の担持量が、M
1とM
2の合計担持量の例えば200モル%以下、好ましくは150モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下、とりわけ好ましくは1モル%以下である。第3金属種の担持量が上記範囲を上回ると、触媒活性点が減少するためか、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
【0024】
本発明においては、M
1とM
2を担体に担持した状態で使用する。担体に担持することにより、M
1とM
2の界面面積を稼ぐことができ、触媒活性点を多く露出させることができる。
【0025】
また、本発明においては、M
1とM
2を担体に担持してなる触媒を使用するため、反応終了後に、濾過、遠心分離等の物理的な分離手段により容易に触媒と反応生成物を分離することができ、反応生成物と分離され、回収された触媒は、そのままで、又は洗浄、乾燥等を施した後に、再利用することができる。本発明においては、前記の通り、高価な触媒を繰り返し利用することができるので、ヒドロキシカルボン酸エステルの製造コストを大幅に削減することができる。
【0026】
担体としては、なかでも、ジカルボン酸モノエステルからヒドロキシカルボン酸エステルを選択的且つ収率よく製造することができる点で、ハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトが好ましく、特にハイドロキシアパタイトが好ましい。
【0027】
担体としては、なかでも、ジカルボン酸モノエステルからヒドロキシカルボン酸エステルを選択的且つ収率よく製造することができる点で、ハイドロキシアパタイト又はハイドロタルサイトが好ましく、特にハイドロキシアパタイトが好ましい。
【0028】
ハイドロキシアパタイトとしては、例えば、商品名「リン酸三カルシウム」(和光純薬工業(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0029】
本発明における触媒は、ジカルボン酸モノエステルを還元してヒドロキシカルボン酸エステルを得るための還元触媒として好適に使用することができる。
【0030】
(触媒の調製方法)
本発明における触媒は、例えば、含浸法により調製することができる。
【0031】
含浸法は、上記金属種を含む化合物(=金属化合物)を溶媒(例えば、水等)に溶解して得られる溶液(例えば、水溶液)に担体を浸漬して、前記金属化合物を担体に含浸させた後、焼成することにより金属種を担体に担持させる方法である。溶液中の金属化合物濃度や、担体の浸漬時間等を調整することにより、金属種の担持量を制御することができる。
【0032】
そして、担体に、M
1を含む化合物を溶媒に溶解して得られる溶液(以後、「M
1含有溶液」と称する場合がある)とM
2を含む化合物を溶媒に溶解して得られる溶液(以後、「M
2含有溶液」と称する場合がある)を順次含浸させる方法(=逐次含浸法)や、担体にM
1含有溶液とM
2含有溶液を同時に含浸させる方法(=共含浸法)により調製することができる。共含浸法により触媒を調製する場合は、M
1含有溶液とM
2含有溶液の混合液中に担体を含浸し、その後焼成を行えばよいが、逐次含浸法により触媒を調製する場合は、担体をM
1含有溶液とM
2含有溶液に順次浸漬し、その都度焼成を行うことが好ましい。
【0033】
本発明においては、なかでも、共含浸法によりM
1とM
2を担持して得られた触媒が、とりわけ選択的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる点で好ましい。
【0034】
例えば、M
1としてのPtとM
2としてのMoが、担体としてのハイドロキシアパタイトに、共含浸法により担持された触媒(例えば、Pt−Mo/HAP)は、Pt化合物(例えば、H
2PtCl
6等)とMo化合物[例えば、(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O等]を水に溶解して得られる溶液中にハイドロキシアパタイトを浸漬し、その後、溶媒を留去してから、ハイドロキシアパタイトを焼成することにより調製することができる。
【0035】
前記溶液中に担体を浸漬する際の温度は、例えば10〜80℃程度である。
【0036】
前記溶液中に担体を浸漬する時間は、例えば1〜30時間程度、好ましくは1〜5時間である。
【0037】
焼成は、例えばマッフル炉等を使用して、300〜700℃で1〜5時間加熱することにより行われる。
【0038】
また、焼成後、更に還元処理を施してもよい。還元処理に使用する還元剤としては、例えば、水素(H
2)等が挙げられる。
【0039】
還元処理温度及び時間としては、例えば0〜600℃(好ましくは、100〜200℃)の温度で、0.5〜5時間程度(好ましくは、0.5〜2時間)である。
【0040】
上記調製方法により得られた触媒は、その後、洗浄処理(水や有機溶媒等により洗浄)、乾燥処理(真空乾燥等により乾燥)等を施してもよい。
【0041】
(基質)
本発明においては基質として、下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルを使用する。
【化3】
【0042】
前記式中、Rは単結合又は2価の炭化水素基を示し、R’は1価の炭化水素基を示す。
【0043】
前記Rにおける2価の炭化水素基には、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、及びこれらから選択される2個以上の基が結合してなる2価の基が含まれる。
【0044】
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜6)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン、1−メチルビニレン、プロペニレン、1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−ペンテニレン、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜10(好ましくは、炭素数2〜6)の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基等が挙げられる。
【0045】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレン(例えば、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン)、シクロヘプチレン基等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数3〜6)のシクロアルキレン基;シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、シクロオクテニレン基等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数3〜6)のシクロアケニレン基等が挙げられる。
【0046】
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン(例えば、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン)、ビフェニレン、ナフチレン、ビナフチレン、アントラセニレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
【0047】
前記炭化水素基から選択される2個以上の基が結合してなる2価の基としては、例えば、シクロヘキシレンビス(メチレン)[例えば、1,2−シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3−シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4−シクロヘキシレンビス(メチレン)]、フェニレンビス(メチレン)(例えば、1,2−フェニレンビス(メチレン)、1,3−フェニレンビス(メチレン)、1,4−フェニレンビス(メチレン))等が挙げられる。
【0048】
前記R’における1価の炭化水素基には、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、及びこれらから選択される2個以上の基が結合してなる1価の基が含まれる。
【0049】
1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基等の炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜5)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル基等の炭素数2〜10(好ましくは、炭素数2〜5)の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基等が挙げられる。
【0050】
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数3〜6)のシクロアルキル基;シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル基等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数3〜6)のシクロアケニル基等が挙げられる。
【0051】
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ビナフチル、アントラセニル基等の炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。
【0052】
前記炭化水素基から選択される2個以上の基が結合してなる1価の基としては、例えば、シクロヘキシルメチル、ベンジル基等が挙げられる。
【0053】
前記1価の炭化水素基及び2価の炭化水素基は置換基を1個又は2個以上有していてもよい。前記置換基としては、例えば、C
1-5アルコキシ基、C
6-10アリールオキシ基、C
7-11アラルキルオキシ基、オキソ基、ハロゲン原子、ハロC
1-5アルキル基等が挙げられる。
【0054】
[ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法]
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法は、上記触媒の存在下で基質、すなわちジカルボン酸モノエステル、が有するカルボキシル基を還元して(好ましくは、分子状水素で還元して)、対応するヒドロキシカルボン酸エステルを製造することを特徴とする。
【0055】
上記触媒は、基質中にエステル基が存在していても、カルボキシル基のみを選択的に還元するため、下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルから、下記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルが選択的に得られる[1]。
また、下記式(1)で表されるジカルボン酸モノエステル中のカルボキシル基の還元反応は、分子内脱水縮合反応より速やかに進行するため、下記式(3)で表されるラクトンの副生を抑制することができる[2]。
【0056】
【化4】
(式中、R、R’は上記に同じ)
【0057】
上記触媒の使用量(触媒に含まれるM
1金属換算)は、基質の、例えば0.01〜30モル%程度、好ましくは0.1〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%、最も好ましくは1〜5モル%である。
【0058】
また、触媒の使用量(触媒に含まれるM
2金属換算)は、基質の、例えば0.01〜10モル%程度、好ましくは0.05〜5モル%、特に好ましくは0.1〜2モル%である。
【0059】
触媒を上記範囲で使用すると、温和な条件下で、効率よく基質を水素化して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的に製造することができる。触媒の使用量が上記範囲を下回ると、ヒドロキシカルボン酸エステルの収率が低下する傾向がある。
【0060】
還元反応(若しくは、水素化反応)に使用する水素の供給は、例えば水素雰囲気下で反応を行う方法や、水素ガスをバブリングする方法等により行われる。
【0061】
本発明では上記触媒を使用するため、温和な条件下で基質が有するカルボキシル基の還元を速やかに進行させることができ、還元反応時の水素圧は、例えば、10MPa以下、好ましくは8MPa以下、特に好ましくは6MPa以下、最も好ましくは5MPa以下(例えば、1〜5MPa)である。
【0062】
また、還元反応の反応温度は、例えば50〜200℃、好ましくは100〜180℃、特に好ましくは120〜160℃、最も好ましくは120〜150℃である。
【0063】
還元反応の反応時間は、例えば1〜36時間程度、好ましくは5〜30時間、特に好ましくは5〜20時間である。
【0064】
還元反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0065】
還元反応は液相で行うことが好ましい。すなわち、本発明における還元反応は液相反応が好ましい。ジカルボン酸モノエステルは沸点が高いので、還元反応を気相で行うと反応生成物が分解し、ヒドロキシカルボン酸エステルの収率が低下する傾向がある。
【0066】
液相で反応を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒;1,4−ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;トルエン、ヘキサン、ドデカン等の炭化水素系溶媒;1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などを挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明においては、なかでも、人体に安全であり、環境に優しい点で、水が好ましい。すなわち、本発明における還元反応は水の存在下で行うことが好ましい。また、本発明においては、上記[2]の反応により式(3)で表されるラクトンが副生した場合にも、水の存在下で還元反応を行うと、副生したラクトンのエステル開環反応が進行して、式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを生成することができる。従って、本発明では、とりわけ、水の存在下で還元反応を行うことが、式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを高収率で得ることができる点で好ましい。
【0068】
溶媒全量における水の使用量は、例えば1重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上、とりわけ好ましくは90重量%以上である。従って、溶媒全量における水以外の溶媒(例えば有機溶媒、特にTHF等のエーテル系有機溶媒)の使用量は、例えば90重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。
【0069】
溶媒の使用量は、バッチ式で反応させる場合は基質の初期濃度が例えば0.01〜10重量%程度となる範囲が好ましい。
【0070】
本発明では、上記触媒を使用するため、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の塩基から選択される1種又は2種以上が反応系に存在せずとも、基質の還元反応を速やかに進行させることができる。また、本発明では、前記酸や塩基を使用してもよいが、これらの使用量(2種以上含有する場合はその総量)は、基質1モルに対して、例えば0.001モル未満であることが好ましく、実質的に使用しないことが特に好ましい。反応系に前記酸や塩基が前記範囲を超えて存在すると、後処理にて中和処理が必要となるが、中和処理により塩が副生し、副生した塩を除去することで製品にロスが発生するためである。また、前記酸や塩基は腐食性を有するため、使用する反応器の材質が制限されるためである。
【0071】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0072】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法では、温和な条件下でも、基質を効率よく転化することができる。反応開始から30時間後(好ましくは20時間後)の基質の転化率は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0073】
そして、上記触媒を使用すれば、カルボキシル基の還元反応が極めて速やかに進行するため、ジカルボン酸モノエステルの分子内脱水縮合反応が進行してラクトンが副生するのを防止或いは抑制することができる。
【0074】
そのため、基質であるジカルボン酸モノエステルの転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、上記式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルの選択率は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。そして、上記式(3)で表されるラクトンの選択率は、例えば5%以下、好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0075】
従って、本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法によれば、ワンステップの簡便な方法で、また、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、ラクトンの副生を抑制して、ヒドロキシカルボン酸エステルを選択的且つ高収率で製造することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
実施例1
(触媒の調製:共含浸法)
H
2PtCl
6 0.0898gと(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O 0.0088gを水50mLに溶解して得られた溶液中に、室温(25℃)条件下で、ハイドロキシアパタイト(HAP、商品名「リン酸三カルシウム」、和光純薬工業(株)製)1gを4時間浸漬した。浸漬後、ロータリーエバポレーターにて減圧下で水を留去し、粉末を得た。その後、得られた粉末を空気雰囲気下、マッフル炉にて500℃で3時間焼成して触媒(1)[Pt−Mo/HAP、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.485重量%、Mo/Pt(モル比)=0.25]を得た。
【0078】
実施例2〜5
テフロン(登録商標)製内筒を備えたオートクレーブに、下記表に記載の基質1ミリモルと触媒(1)100mg[基質の2モル%のPt、0.5モル%のMo(金属換算)]、及び水3mLを仕込み、水素圧5MPaの条件下、110℃で下記表に記載の時間反応させて反応生成物を得た。HPLCを使用して基質の転化率(conv.[%])を測定し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を使用して各反応生成物の収率(yield[%])を測定した。
【0079】
結果を下記表にまとめて示す。
【表1】
【0080】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 下記触媒の存在下で、基質としての式(1)で表されるジカルボン酸モノエステルを還元して、式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを製造する、ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
[2] M
1の担持量(金属換算)が担体の1〜50重量%である、[1]に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[3] M
2の担持量(金属換算)が担体の0.01〜20重量%である、[1]又は[2]に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[4] M
11モルに対するM
2の担持量が0.05〜1モルである、[1]〜[3]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[5] M
1とM
2以外の第3金属種の担持量(2種以上担持されている場合にはその総量)が、M
1とM
2の合計担持量の200モル%以下である、[1]〜[4]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[6] 担体が、ハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトである、[1]〜[5]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[7] 担体が、ハイドロキシアパタイト又はハイドロタルサイトである、[1]〜[5]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[8] M
1が、ロジウム、白金、ルテニウム、又はイリジウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[9] M
1が、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[10] M
1が、ロジウム、白金、又はルテニウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[11] M
1が、白金、ルテニウム、又はイリジウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[12] M
1が、ロジウム又は白金である、[1]〜[7]の何れか1項に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[13] M
1が、白金又はルテニウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[14] M
1が、白金又はイリジウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[15] M
1が、白金又はパラジウムである、[1]〜[7]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[16] M
2が、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウムである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[17] M
2が、モリブデン、タングステン、又はレニウムである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[18] M
2が、バナジウム、モリブデン、又はタングステンである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[19] M
2が、モリブデン又はタングステンである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[20] M
2が、モリブデン又はレニウムである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[21] M
2が、バナジウム又はモリブデンである、[1]〜[15]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[22] 反応開始から30時間後の基質の転化率が80%以上である、[1]〜[21]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[23] 基質の転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、式(2)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルの選択率が70%以上であり、式(3)で表されるラクトンの選択率が5%以下である、[1]〜[22]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[24] 触媒が、金属種としてM
1とM
2を、M
11モルに対してM
2を0.05〜1モルの範囲で含有する、[1]〜[23]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[25] 触媒の使用量(M
1金属換算)が、基質の0.01〜30モル%である、[1]〜[24]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[26] 水の存在下で還元反応を行う、[1]〜[25]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[27] 溶媒全量における水の占める割合が70重量%以上である、[26]に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[28] 酸及び塩基の使用量(2種以上含有する場合はその総量)が基質1モルに対して0.001モル未満である、[1]〜[27]の何れか1つに記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[29] 前記酸が塩酸、硫酸、リン酸、及び酢酸から選択される少なくとも1種の酸である、[28]に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[30] 前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素カリウムから選択される少なくとも1種の塩基である、[28]又は[29]に記載のヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
[31] 金属種として下記M
1とM
2が下記担体に担持されてなり、ジカルボン酸モノエステルを還元して、対応するヒドロキシカルボン酸エステルを得るのに使用される、ジカルボン酸モノエステル還元触媒。
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、又はハイドロタルサイト
[32] M
1の担持量(金属換算)が担体の1〜50重量%である、[31]に記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[33] M
2の担持量(金属換算)が担体の0.01〜20重量%である、[31]又は[32]に記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[34] M
11モルに対するM
2の担持量が0.05〜1モルである、[31]〜[33]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[35] M
1とM
2以外の第3金属種の担持量(2種以上担持されている場合にはその総量)が、M
1とM
2の合計担持量の200モル%以下である、[31]〜[34]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[36] 担体が、ハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトである、[31]〜[35]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[37] 担体が、ハイドロキシアパタイト又はハイドロタルサイトである、[31]〜[35]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[38] M
1が、ロジウム、白金、ルテニウム、又はイリジウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[39] M
1が、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[40] M
1が、ロジウム、白金、又はルテニウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[41] M
1が、白金、ルテニウム、又はイリジウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[42] M
1が、ロジウム又は白金である、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[43] M
1が、白金又はルテニウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[44] M
1が、白金又はイリジウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[45] M
1が、白金又はパラジウムである、[31]〜[37]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[46] M
2が、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウムである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[47] M
2が、モリブデン、タングステン、又はレニウムである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[48] M
2が、バナジウム、モリブデン、又はタングステンである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[49] M
2が、モリブデン又はタングステンである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[50] M
2が、モリブデン又はレニウムである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
[51] M
2が、バナジウム又はモリブデンである、[31]〜[45]の何れか1つに記載のジカルボン酸モノエステル還元触媒。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の製造方法によれば、ジカルボン酸モノエステルから、温和な条件下で、環境に優しい水を溶媒として使用して、ワンステップで、効率よく且つ選択的にヒドロキシカルボン酸エステルを製造することができる。
そして、このようにして得られるヒドロキシカルボン酸エステルは、プラスチック原料、医薬中間体、化粧品原料等として有用である。
【国際調査報告】