特表-20174951IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2020-174951液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年9月3日
【発行日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20211126BHJP
   B01D 39/18 20060101ALI20211126BHJP
【FI】
   B01D39/16 A
   B01D39/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2021-501742(P2021-501742)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2019-36194(P2019-36194)
(32)【優先日】2019年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】井上 和臣
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】竹上 竜太
(72)【発明者】
【氏名】金村 一秀
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC13
4D019BD01
4D019BD02
4D019CA05
4D019CB06
4D019DA03
(57)【要約】
圧力損失が小さい液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法を提供する。液体フィルターは水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成されるものである。不織布は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成されるものであり、
前記不織布は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、前記膜厚方向に繊維密度差があり、前記膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、前記膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である、液体フィルター。
【請求項2】
前記親水化剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのうち、少なくとも1つである、請求項1に記載の液体フィルター。
【請求項3】
前記不織布は、膜厚が200μm以上2000μm以下である、請求項1または2に記載の液体フィルター。
【請求項4】
前記不織布は、平均貫通孔径が2.0μm以上10.0μm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項5】
前記不織布は、空隙率が75%以上98%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項6】
前記不織布は、臨界湿潤表面張力が72mN/m以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項7】
前記水に不溶の前記高分子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルロース誘導体、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびアクリル樹脂のうち、いずれか1つ、またはこれらの混合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項8】
前記水に不溶の前記高分子が、セルロース誘導体からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項9】
前記不織布の繊維全質量に対する前記親水化剤の含有量は1〜50質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体フィルター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体フィルターの製造方法であって、前記液体フィルターをエレクトロスピニング法を用いて製造する、液体フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成される液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法に関し、特に、圧力損失が小さい液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、繊維径が1μm以下のいわゆるナノファイバーにより構成される不織布は、各種の用途に用いることができるものとして期待されている。ナノファイバーにより構成される不織布は、例えば、液体をろ過するフィルターに利用されており、例えば、特許文献1〜3に提案されている。
特許文献1には、数平均繊維径が500nm以下の微細セルロース繊維から構成される不織布からなる耐水性セルロースシートを含むろ過材が記載されている。耐水性セルロースシートは、微細セルロース繊維の重量比率:1質量%以上99質量%以下、空孔率:50%以上、目付10g/m相当の引張強度:6N/15mm以上、引張強度の乾湿強度比:50%以上のすべてを満足する。
【0003】
また、特許文献2には、白血球などの血液成分を選択的に除去するものとして、セルロースアシレートを含有し、ガラス転移温度が126℃以上であり、平均貫通孔径が0.1〜50μmであり、かつ、比表面積が1.0〜100m2/gである、血液成分選択吸着濾材が記載されている。血液成分選択吸着濾材は、不織布の形態である。
また、特許文献3には、不織布で構成される極細繊維の集合体の平均動水半径が0.5μm〜3.0μmとなるように、および血液成分の流路径(D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.15〜6となるように、入口と出口とを有する容器に充填されている、血漿分離フィルターが記載されている。特許文献3の極細繊維は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、またはポリエチレンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−46843号公報
【特許文献2】国際公開第2018/101156号
【特許文献3】特開平9−143081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノファイバーにより構成される不織布は、ナノファイバーが形成する網目構造がある。不織布を液体のろ材として利用する場合、網目構造による空隙を、液体等のろ過対象物が通過してろ過される。
しかしながら、上述の特許文献1〜3のフィルターでは、ろ過する際の圧力損失が大きいという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、圧力損失が小さい液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成されるものであり、不織布は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である、液体フィルターを提供するものである。
【0008】
親水化剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのうち、少なくとも1つであることが好ましい。
不織布は、膜厚が200μm以上2000μm以下であることが好ましい。
不織布は、平均貫通孔径が2.0μm以上10.0μm未満であることが好ましい。
不織布は、空隙率が75%以上98%以下であることが好ましい。
不織布は、臨界湿潤表面張力が72mN/m以上であることが好ましい。
【0009】
水に不溶の高分子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルロース誘導体、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびアクリル樹脂のうち、いずれか1つ、またはこれらの混合物であることが好ましい。
水に不溶の高分子が、セルロース誘導体からなることが好ましい。
不織布の繊維全質量に対する親水化剤の含有量は1〜50質量%であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の液体フィルターをエレクトロスピニング法を用いて製造する、液体フィルターの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力損失が小さい液体フィルターを得ることができる。また、圧力損失が小さい液体フィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の液体フィルターの一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の液体フィルターの一例を示す模式的断面図である。
図3】本発明の実施形態の液体フィルターの測定結果の一例を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態の液体フィルターの異方性を示すグラフである。
図5】従来の不織布の一例を示す模式的断面図である。
図6】従来の不織布の測定結果の一例を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態のろ過装置の第1の例を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態のろ過装置の第2の例を示す模式図である。
図9】本発明の実施形態のろ過装置の第3の例を示す模式図である。
図10】本発明の実施形態のろ過装置の第4の例を示す模式図である。
図11】本発明の実施形態のろ過装置を有するろ過システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α〜数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「具体的な数値で表された角度」、および「具体的な数値で表された温度」は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0013】
(液体フィルター)
図1は本発明の実施形態の液体フィルターの一例を示す模式図であり、図2は本発明の実施形態の液体フィルターの一例を示す模式的断面図である。図3は本発明の実施形態の液体フィルターの測定結果の一例を示すグラフである。
図1に示す液体フィルター10は、水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成されるものであり、不織布は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である。このことから、不織布では、一方の面と他方の面とで繊維密度差がある。繊維密度が連続して変化することについては後に詳細に説明する。
以上の構成により、液体フィルター10は圧力損失が小さい。これにより、液体フィルター10ではろ過に要する力を小さくすることができる。
液体フィルター10のろ過対象物は、液体を含むものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、粒子を含有する液体である。これ以外に、微生物を含む液体もろ過対象物に含まれる。微生物には、細菌、原生動物、酵母、ウイルスおよび藻類が含まれる。液体フィルター10は、例えば、飲料水等からの微粒子、および微生物等を除去することができる。
なお、液体フィルター10において、ろ過対象物、およびろ過できる大きさ等を合わせて分離特性という。
なお、液体フィルター10のろ過には、ろ過の他、ろ別も含まれる。液体フィルター10では、ろ過対象物に代えて、ろ別対象物を供給し、ろ別することもできる。液体フィルター10では、ろ別の際も圧力損失が小さい。
液体フィルター10は、具体的には、図2に示すように、膜厚方向Dtにおいて繊維密度が異なる。図2では、不織布12の裏面12b側の繊維密度が小さく、表面12a側の繊維密度が大きく、膜厚方向Dtに対して繊維密度が連続して変化している。
【0014】
液体フィルター10を構成する不織布は、上述のように、水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で構成されており、貫通孔を有する。不織布12は、膜厚h(図1参照)が200μm以上2000μm以下であることが好ましい。
また、不織布12は、平均貫通孔径が2.0μm以上10.0μm未満であることが好ましく、空隙率が75%以上98%以下であることが好ましい。また、臨界湿潤表面張力が72mN/m以上であることが好ましい。
以下、液体フィルターについて、より具体的に説明する。
【0015】
<不織布>
液体フィルターは上述のように水に不溶の高分子と親水化剤とを含む繊維で形成された不織布により構成される。
不織布としては、平均繊維径が1nm以上5μm以下であり、かつ、平均繊維長が1mm以上1m以下である繊維からなることが好ましく、平均繊維径が100nm以上1000nm未満であり、かつ、平均繊維長が1.5mm以上1m以下であるナノファイバーからなる不織布であることがより好ましく、平均繊維径が100nm以上800nm以下であり、かつ、平均繊維長が2.0mm以上1m以下であるナノファイバーからなる不織布であることが更に好ましい。
なお、平均繊維径および平均繊維長は、例えば、不織布を作製する際の溶液の濃度を調節することで調整することができる。
【0016】
ここで、平均繊維径とは、以下のように測定した値をいう。
繊維からなる不織布の表面の、透過型電子顕微鏡画像、または走査型電子顕微鏡画像を得る。
構成する繊維の大きさに応じて1000〜5000倍から選択される倍率で電子顕微鏡画像を得る。ただし、試料、観察条件および倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)電子顕微鏡画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、この直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ電子顕微鏡画像内で直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上述のような電子顕微鏡画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上述のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維径を読み取る。
このように読み取った繊維径を平均して平均繊維径を求める。
【0017】
また、平均繊維長とは、以下のように測定した値をいう。
すなわち、繊維の繊維長は、上述した平均繊維径を測定する際に使用した電子顕微鏡画像を解析することにより求めることができる。
具体的には、上述のような電子顕微鏡画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。
こうして上述のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。
このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
【0018】
<繊維密度差>
液体フィルターを構成する不織布の構成は上述の通りである。不織布は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小であり、一方の面と他方の面とで繊維密度差がある。繊維密度差は、後述のように、最小繊維密度と最大繊維密度との比である。
液体フィルターを構成する不織布の膜厚方向の繊維密度差について、繊維密度差が小さいとケークろ過になり、処理圧が上昇する。一方、繊維密度差が大きいと、段階ろ過が可能であり、処理圧を小さくできる。
処理圧とは、ろ過時の圧力損失のことである。処理圧が小さいとは、ろ過時の圧力損失が小さいことであり、液体フィルターのろ過時の抵抗が小さいことである。圧力損失が小さいと、ろ過に要する圧力を小さくできる。
圧力損失は、液体フィルターを挟んで膜厚方向の表面側の静圧と、裏面側の静圧との差である。このため、表面側の静圧と裏面側の静圧を測定して、2つの静圧の差を求めることにより、圧力損失を得ることができる。圧力損失は、差圧計を用いて測定することができる。
ここで、繊維密度は、X線CT(Computed Tomography)画像の輝度と相関関係があり、繊維密度は輝度により特定することができる。例えば、図3に示す結果が得られる。X線CT画像の輝度が高いと、繊維密度が大きい。図3では距離の値が大きくなると、輝度が低くなる傾向を示しており、繊維密度が小さくなっている。
【0019】
膜厚方向の繊維密度差は、膜厚方向の断面X線CT画像解析を行いて求める。まず、断面X線CT画像を取得し、断面X線CT画像において全膜厚を膜厚方向に10等分し、各区間での輝度を積算する。積算した輝度を、輝度が低い方からL1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10とする。本発明では、輝度L1は、不織布の表面および裏面の一方の面の輝度であり、輝度L10は、不織布の表面および裏面の他方の面の輝度である。不織布12の表面12aおよび裏面12bのうち、いずれかの面の繊維密度が最大であり、残りの面の繊維密度が最小である。
膜厚方向に繊維密度差があるとは、輝度の最小値と輝度の最大値との比、L1/L10<0.95であることである。
【0020】
膜厚方向に繊維密度差がある場合、膜厚方向に対して、図4に示すように、繊維密度が大きい方からろ過した場合(圧力曲線50参照)と、繊維密度が小さい方からろ過した場合(圧力曲線52参照)とでは、ろ過に要する圧力が異なる。すなわち、液体フィルター10は、膜厚方向において異方性を有する。ろ過対象物を、膜厚方向において、繊維密度が低密度側から高密度側に通るようにすることにより、圧力損失を小さくできる。すなわち、ろ過に要する圧力を小さくすることができる。
なお、図4は、同じ液体を用い、液体フィルター10の向きだけを変えてろ過を実施した結果を示す。図4の圧力および時間はいずれも無次元化している。
【0021】
ここで、図5は従来の不織布の一例を示す模式的断面図であり、図6は従来の不織布の測定結果の一例を示すグラフである。
図5に示すように、従来の不織布100は、繊維が偏在して分布していない。また、図6に示すX線CT画像の輝度からも繊維密度に偏りが見られない。従来の不織布は、膜厚方向に繊維密度差がなく、繊維密度が特定の方向に対して違っているものではなく、等方的である。このため、ろ過対象物の供給方向を変えても、ろ過に要する圧力に大きな違いはない。
【0022】
上述の膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化しているとは、上述の輝度L1〜L10が、0.9<Ln/Ln+1<1.05であることをいう。ただし、n=1〜9である。
膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化している場合、繊維密度が膜厚方向に対して勾配を有するという。
上述の輝度L1〜L10が、0.9<Ln/Ln+1<1.05を満たさない場合、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化していない。すなわち、繊維密度が膜厚方向に対して勾配がない。上述の膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化していないことを不連続ともいう。
膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化している場合、繊維密度の急激な変化はないことが好ましい。しかしながら、上述の膜厚方向に10等分した10区間のうち、一部の区間で繊維密度の大小が前後することは許容される。すなわち、繊維密度は、L1/L10<0.95を満たせば、上述の膜厚方向に10等分した10区間において、輝度で表される繊維密度が一方向に漸次増加または漸次減少することに限定されるものではなく、繊維密度が同じ区間が隣接してもよい。
【0023】
上述のL1/L10は、0.3≦L1/L10<0.95であることがより好ましく、さらに好ましくは0.4≦L1/L10<0.9であり、最も好ましくは0.5≦L1/L10<0.9である。
膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化することにより、圧力損失を小さくすることができる。例えば、ろ過する液体の総量のうち、処理量が80〜100体積%における圧力損失を小さくすることもできる。
一方、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化していない場合、圧力損失が大きい。
【0024】
<平均貫通孔径>
平均貫通孔径は2.0μm以上10.0μm未満であることが好ましく、より好ましくは2.0μm以上8.0μm未満であり、さらに好ましくは3.0μm以上7.0μm未満であり、最も好ましくは3.0μm以上5.0μm未満である。
平均貫通孔径は、ろ過対象物のサイズに対して小さいと、圧力損失が大きくなる。すなわち、処理圧が大きくなる。平均貫通孔径は、ろ過対象物のサイズに対して大きいと、圧力損失が小さくなる。すなわち、処理圧が小さくなる。
【0025】
平均貫通孔径は、バブルポイント法(JIS(日本工業規格)K3832、ASTM F316-86)/ハーフドライ法(ASTM E1294-89)を用いたパームポロメータにより測定することができる。以下、平均貫通孔径について詳細に説明する。
「平均貫通孔径」については、特開2012−046843号公報の<0093>段落に記載された方法と同様、パームポロメータ(西華産業製 CFE−1200AEX)を用いた細孔径分布測定試験において、GALWICK(Porous Materials,Inc社製)に完全に濡らしたサンプルに対して空気圧を2cc/minで増大させて評価する。具体的には、GALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸;Porous Materials,Inc社製)に完全に濡らした膜状サンプルに対して、膜の片側に2cc/minで空気を一定量送り込み、その圧力を測りながら、膜の反対側へ透過してくる空気の流量を測定する。この方法で、まず、GALWICKに濡れた膜状サンプルについて、圧力と透過空気流量とのデータ(以下、「ウェットカーブ」ともいう。)を得る。次いで、濡れていない、乾燥状態の膜状サンプルでも同様のデータ(以下、「ドライカーブ」ともいう。)を測定し、ドライカーブの流量の半分に相当する曲線(ハーフドライカーブ)とウェットカーブとの交点の圧力を求める。その後、GALWICKの表面張力(γ)、濾材との接触角(θ)および空気圧(P)とを下記式(I)に導入し、平均貫通孔径を算出することができる。
平均貫通孔径=4γcosθ/P ・・・(I)
【0026】
平均貫通孔径の調整方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
((繊維径の制御))
平均貫通孔径の調整方法の1つである繊維径を制御する方法では、エレクトロスピニングでの紡糸時に用いる溶媒、素材の濃度、または電圧等を変更することにより繊維径を制御することができる。繊維径と平均貫通孔径との比例の関係にあるため、繊維径を制御することにより平均貫通孔径を調整することができる。
((加熱融着))
平均貫通孔径の調整方法の1つである加熱融着を用いた方法では、繊維同士を融着させ、平均貫通孔径を小さくすることができる。なお、加熱融着では、繊維径の制御とは異なり平均貫通孔径を小さくすることしかできない。
((カレンダー処理))
平均貫通孔径の調整方法の1つであるカレンダー処理を用いた方法では、ローラー等で加圧して押しつぶし、繊維を密着させることにより、平均貫通孔径を小さくすることができる、なお、カレンダー処理では、繊維径の制御とは異なり平均貫通孔径を小さくすることしかできない。
【0027】
<空隙率>
空隙率は75%以上98%以下であることが好ましく、より好ましくは、85%以上98%以下であり、さらに好ましくは90%以上98%以下である。
空隙率は高い程ケークろ過になりにくく、処理圧が上昇しにくい。すなわち、圧力損失が上昇しにくい。このため、ろ過の際に、ろ過対象物の供給速度を速くすることができる。一方、空隙率が低いとケークろ過に移行しやすく、処理圧が上昇する傾向、すなわち、圧力損失が大きくなる傾向になる。なお、空隙率が98%を超えるものを作製することは困難である。
空隙率は、以下のようにして算出する。
まず、空隙率をPr(%)とし、不織布10cm角の膜厚をHd(μm)と、不織布10cm角の質量をWd(g)とするとき、Pr=(Hd−Wd×67.14)×100/Hdを用いて算出する。
【0028】
<膜厚>
液体フィルターは不織布の膜厚h(図1参照)が200μm以上2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以上1000μm以下である。
なお、不織布の膜厚h(図1参照)は、液体フィルターの膜厚である。
膜厚が、一定の厚さ以上でないと繊維密度差が生じない。膜厚が薄すぎると、除去したい成分を除去しきれないため、フィルター性能の低下につながる。
また、膜厚が厚すぎると、全てのろ過対象物等の分離対象物を透過させるために大きな圧力が必要となり、圧力損失が大きくなる傾向にある。
膜厚は、走査型電子顕微鏡を用いて、不織布の断面観察を実施し、断面画像を得る。断面画像を用いて、不織布の膜厚となる箇所を10点測定し、その平均値を膜厚とした。
【0029】
<臨界湿潤表面張力>
臨界湿潤表面張力(CWST)は濡れ性を表すパラメータである。
臨界湿潤表面張力(CWST)が72mN/m(ミリニュートンパーメータ)以上であり、臨界湿潤表面張力(CWST)は85mN/m以上であることが好ましい。
臨界湿潤表面張力(CWST)が高いと、ろ過対象物が不織布上で濡れ広がりやすくなり、有効面積が大きくなり、圧力損失が小さくなる傾向になる。
臨界湿潤表面張力(CWST)が低いと、有効面積が小さくなり、圧力損失が大きくなる傾向になる。臨界湿潤表面張力(CWST)は、親水化剤量またはアルカリ処理によって制御することができる。
【0030】
臨界湿潤表面張力(CWST)の定義は以下の通りである。
臨界湿潤表面張力は、測定する表面に適用する液体の表面張力を2mN/m〜4mN/mずつ変えながら、表面への各液体の吸収または非吸収を観察することにより求めることができる。
CWSTの単位はmN/mであり、吸収される液体の表面張力と隣りの吸収されない液体の表面張力との平均値として定められる。例えば、吸収される液体の表面張力が27.5mN/mであり、吸収されない液体の表面張力が52mN/mである。表面張力の間隔が奇数、例えば、3であれば、不織布は低い値により近いかまたは高い値により近いかの判断をすることができ、これに基づいて、27または28が不織布に割り当てられる。
CWSTを測定する上で、表面張力が約2〜約4mN/mだけ逐次変化する一連の試験用標準液体を作る。少なくとも2つの引き続く表面張力の標準液体の各々の3〜5mm直径の液体を、不織布に載置して10分間放置し、10〜11分後に観察する。“湿潤”であれば、10分間以内に、10個の液滴のうち、少なくとも9個が不織布に吸収、すなわち、湿潤することとして定められる。
【0031】
非湿潤は10分間以内に2個以上の液滴の非湿潤、すなわち、非吸収により定められる。連続した高いまたは低い表面張力の液体を用いて、表面張力が最も狭い間隔の一対のうち1つが湿潤し、そしてもう1つが非湿潤であることが認められるまで試験を続ける。
次いで、CWSTはこの範囲内であり、便宜上、2つの表面張力の平均をCWSTを特定する1つの数として使用できる。2つの試験液体が3mN/m異なるとき、試験片がどちらか近いかの判断をし、整数をそのように割り当てる。表面張力の異なる溶液を種々の方法で作ることができる。具体例を以下に示す。
水酸化ナトリウム水溶液94〜115(mN/m)
塩化カルシウム水溶液90〜94(mN/m)
硝酸ナトリウム水溶液75〜87(mN/m)
純粋な水72.4(mN/m)
酢酸水溶液38〜69(mN/m)
エタノール水溶液22〜35(mN/m)
【0032】
<水に不溶の高分子>
水に不溶の高分子とは、純水への溶解度が0.1質量%未満である高分子のことである。
水に不溶の高分子は、具体的なものとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルロース誘導体、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびアクリル樹脂のうち、いずれか1つ、またはこれらの混合物であることが好ましい。セルロース誘導体は生体物質吸着が他の素材に比べて小さいため、成分一致率が良好になる。このため、水に不溶の高分子は、セルロース誘導体がより好ましい。
なお、セルロース誘導体とは、天然高分子であるセルロースが有するヒドロキシ基の一部に化学修飾を施した変性セルロースをいう。ヒドロキシ基の化学修飾としては、特に制限されないが、ヒドロキシ基のアルキルエーテル化、ヒドロキシアルキルエーテル化、および、エステル化が挙げられる。セルロース誘導体は、1分子中に少なくとも1つのヒドロキシ基を有する。セルロース誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース(アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、および、ニトロセルロースが挙げられる。
また、不織布を構成する繊維において、水に不溶の高分子の含有量は、不織布の繊維全質量に対して、50〜99質量%が好ましく、70〜93質量%がより好ましく、85〜93質量%がさらに好ましい。
水に不溶の高分子の含有量が50質量%未満であると、不織布を形成する繊維の強度が低下し、ろ過によって形状変化しやすくなり、処理圧の上昇を招く。一方、水に不溶の高分子の含有量が99質量%よりも大きいと親水化剤の量が減り、不織布を形成する繊維の親水化効果が小さくなる。このため、水に不溶の高分子の含有量は50〜99質量%であることが好ましい。
【0033】
<親水化剤>
親水化剤とは、純水への溶解度が1質量%以上である材料のことである。
親水化剤は、具体的なものとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのうち、少なくとも1つであることが好ましく、親水化剤としては、ポリビニルピロリドンが最も好ましい。
ポリビニルピロリドンはヒドロキシプロピルセルロースに比べて親水性が高いため、不織布の臨界湿潤表面張力(CWST)が高くなる。カルボキシメチルセルロースは素材自体の親水性はポリビニルピロリドンと同等であるが、ポリビニルピロリドンに比して、水に不溶の高分子との相溶性に劣るため、強度がやや弱く処理圧が上昇する傾向にあり、かつ素材の生体分子吸着が大きいためろ過後の成分一致が劣る。
また、不織布を構成する繊維において、親水化剤の含有量は、不織布の繊維全質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、7〜15質量%がさらに好ましい。
親水化剤の含有量が50質量%を超えると、不織布を形成する繊維の強度が低下し、ろ過によって形状変化しやすくなり、処理圧の上昇を招く。一方、親水化剤の含有量が1質量%未満では親水化剤の量が少なく、不織布を形成する繊維親水化効果が小さくなる。このため、親水化剤の含有量は1〜50質量%であることが好ましい。
【0034】
(液体フィルターの製造方法)
上述のように、液体フィルターは、水に不溶の高分子および親水化剤を含む繊維で形成され、かつ膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差を有する不織布により構成される。
エレクトロスピニング法とも呼ばれる電界紡糸法を用いて、液体フィルターが製造される。これにより、圧力損失が小さい液体フィルターを製造することができる。
エレクトロスピニング法を用いた製造方法について説明する。まず、例えば、上述の水に不溶の高分子および親水化剤が溶媒に溶解している溶液を、5℃以上40℃以下の範囲内の一定温度としてノズルの先端から出し、溶液とコレクタとの間に電圧をかけて、溶液からコレクタ上に設けた支持体上にファイバを噴出してナノファイバーを収集することにより、ナノファイバー層、すなわち、不織布を得ることができる。この場合、ファイバを噴出している際に、溶液とコレクタとの間に印加する電圧を調整して、繊維密度を変化させ、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である不織布を得ることができる。また、溶液の濃度を調整することによっても繊維密度を変化させ、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化し、膜厚方向に繊維密度差があり、膜厚方向における一方の面の繊維密度が最大であり、膜厚方向における他方の面の繊維密度が最小である不織布を得ることができる。
製造装置としては、例えば、特許第6132820号公報に示されるナノファイバー製造装置等を利用することができる。溶液は、水に不溶の高分子および親水化剤が溶解したものを含んでおり、水に不溶の高分子と親水化剤とが別々にノズルから射出して紡糸したものではない。
【0035】
(ろ過装置)
上述の液体フィルターを用いてろ過装置を構成することができる。ろ過装置は、液体フィルターと同様に圧力損失が小さい。
ろ過装置は、液体フィルターを有し、ろ過対象物が、膜厚方向において、繊維密度が低密度側から高密度側に通るように液体フィルターが配置されている。液体フィルターを、ろ過対象物が、膜厚方向において繊維密度が低密度側から高密度側に通るように配置することにより、圧力損失を小さくすることができる。これにより、ろ過に要する圧力を小さくできる。
また、ろ過装置としては、液体フィルター以外に、例えば、平均貫通孔径が0.2μm以上1.5μm以下かつ空隙率が60%以上95%以下の多孔質体を有する構成でもよい。この場合、液体フィルターと多孔質体とは、ろ過対象物が液体フィルターと多孔質体との順で通過するように配置されている。
以下、ろ過装置について具体的に説明する。
【0036】
図7は本発明の実施形態のろ過装置の第1の例を示す模式図であり、図8は本発明の実施形態のろ過装置の第2の例を示す模式図である。図9は本発明の実施形態のろ過装置の第3の例を示す模式図であり、図10は本発明の実施形態のろ過装置の第4の例を示す模式図である。
なお、図7図10のろ過装置において、図1に示す液体フィルター10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図7に示すろ過装置20は、例えば、円筒状のケース22の内部22aに円盤状の液体フィルター10が設けられている。ケース22は、一方の底部22bには、底部22bの中心に連結管24が設けられている。連結管24は回収部26に接続されている。
ケース22は、底部22bの反対側の端が開口している。開口している部分を開口部22cという。開口部22cから、ろ過対象物が供給されて、液体フィルターにより、ろ過されて、ケース22の底部22bから連結管24を経て、ろ過後のろ過対象物が回収部26に貯留される。
なお、ろ過装置20では、ろ過対象物に代えて、ろ別対象物を供給し、ろ別することもできる。この場合、開口部22cから、ろ別対象物が供給されて、液体フィルターにより、ろ別されて、ケース22の底部22bから連結管24を経て、ろ別後のろ別対象物が回収部26に貯留される。
【0038】
また、ろ過装置20は、図8に示すように、加圧部28を有する構成でもよい。加圧部28は、ケース22の開口部22cに設けられる。加圧部28は、開口部22cに設けられケース22の内部22aと隙間がなく配置されるガスケット28aと、ガスケット28aを開口部22cから底部22bに向う方向または、その逆方向に移動させるためのプランジャー28bとを有する。プランジャー28bを底部22bに向かって移動させることにより、ケース22の内部22aのろ過対象物を、液体フィルター10を透過させてろ過することができる。
なお、加圧部28を有する場合、ケース22の外面22dに、ケース22の内部22aと連通する供給管27を設けてもよい。供給管27は、液体フィルター10よりも開口部22c側に設けられる。
また、加圧部28を有するろ過装置20でも、ろ過対象物に代えて、ろ別対象物を供給し、ろ別することもできる。
【0039】
また、ろ過装置20は、図9に示すように、液体フィルター10以外に、フィルター機能を有するものを有する構成でもよい。フィルター機能を有するものとしては、液体フィルター10とは分離特性が異なるものであることが好ましい。これにより、液体フィルター10で、ろ過しきれないものについてもろ過でき、分離精度を高くできる。
なお、図9に示すろ過装置20は、図7に示すろ過装置20に比して、液体フィルター10のケース22の底部22b側に多孔質体14が設けられている点が異なり、それ以外の構成は、図7に示すろ過装置20と同じである。
例えば、液体フィルター10を構成する不織布12の裏面12bに接して多孔質体14が設けられている。ろ過対象物は、液体フィルター10側から供給される。図9に示すろ過装置20において、液体フィルター10を一次フィルターといい、多孔質体14を二次フィルターともいう。
多孔質体14は、例えば、平均貫通孔径が0.2μm以上1.5μm以下かつ空隙率が60%以上95%以下であり、液体フィルター10とは分離特性が異なる。
多孔質体14は、例えば、不織布12と同じもので構成することができ、不織布12を構成する水に不溶の高分子および親水化剤を含む繊維で構成することができる。多孔質体14の平均貫通孔径、および空隙率の規定は、液体フィルター10と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図9に示すろ過装置20では、液体フィルター10と多孔質体14とを設けることにより、液体フィルター10で、ろ過しきれないものについてもろ過でき、分離精度を高くすることができる。
図9に示すろ過装置20においても、図8に示すろ過装置20と同様に加圧部28を設ける構成とすることができる。加圧部28は図8に示すろ過装置20と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、図8に示すろ過装置20と同様に供給管27を設けてもよい。
また、多孔質体14は、上述の構成に限定されるものではなく、液体フィルター10の分離特性、ろ過対象物、またはろ別対象物に応じたものを適宜利用することができるが、上述のように液体フィルター10と分離特性が異なることが好ましい。
また、液体フィルター10以外に多孔質体14を1つ設けたが、これに限定されるものではなく、多孔質体14のようなフィルター機能を有するものを、複数設けてもよい。
なお、液体フィルター10と多孔質体14とは接しても設けることに限定されるものではなく、液体フィルター10と多孔質体14とは、液体フィルター10の膜厚方向において離間して配置してもよい。
【0041】
なお、上述のいずれのろ過装置20においても、液体フィルター10を1つ設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、複数設けてもよい。例えば、複数の液体フィルター10を膜厚方向に離間して配置してもよい。
【0042】
また、上述のいずれのろ過装置20においても、液体フィルター10の位置はケース22の内部22aであれば、特に限定されるものではなく、ケース22の底部22bから離間していても、ケース22の底部22bに接していてもよい。液体フィルター10は、ケース22に対して、不織布を平膜状にハウジング(図示せず)に設けて、ケース22内に設置してもよい。
また、上述のいずれのろ過装置20においても、回収部26はなくてもよく、また、連結管24と回収部26がなく底部22bが閉塞した構成でもよい。底部22bを閉塞した場合、底部22bにろ過したものを溜めるようにしてもよい。
また、底部22bを閉塞した場合、ろ過したものを外部に取り出すために、底部22bに、ケース22の内部22aと連通する開口を設けてもよい。
【0043】
(ろ過システム)
なお、上述のいずれのろ過装置20も単独で使用されることに限定されるものではない。ここで、図11は、本発明の実施形態のろ過装置を有するろ過システムの一例を示す模式図である。
図11に示すろ過システム30のように、複数のろ過装置20を設け、各ろ過装置20を自動的に、ろ過対象物をろ過させる構成でもよい。
図11において、図7に示すろ過装置20と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図11に示すろ過システム30は、供給部32と、供給部32に配管34により接続された複数のろ過装置20と、供給部32を制御する制御部36とを有する。
供給部32は、各ろ過装置20にろ過対象物を供給するものであり、ろ過対象物を貯留する貯留部(図示せず)と、貯留部から、ろ過装置20にろ過対象物を供給するためのポンプ(図示せず)とを有する。ポンプは、例えば、シリンジポンプが用いられる。シリンジポンプ等のポンプは制御部36により制御され、ポンプにより貯留部からろ過対象物が、ろ過装置20に供給されて、ろ過されて、回収部26で回収される。
ろ過システム30でも、ろ過装置20は、図8に示すように加圧部28を有する構成でもよい。この場合、加圧部28のプランジャー28bを移動させる駆動部(図示せず)を設ける。駆動部と、ポンプとを制御部36に制御することにより、上述のようにろ過を自動的に実行することができる。
液体フィルター10は圧力損失が小さいことから、ろ過システム30では、ろ過に要する圧力を小さくでき、かつろ過に要する時間を短くすることができる。このため、ろ過システム30では、消費電力を少なくできる。
なお、ろ過システム30でも、ろ過対象物に代えて、ろ別対象物を供給し、ろ別することもできる。
【0045】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の液体フィルターおよび液体フィルターの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1〜13と比較例1〜5の液体フィルターを作製した。各液体フィルターを用いて、以下に示す粒子ろ過試験を実施し、初期ろ過圧および終点ろ過圧を評価した。
【0047】
〔評価〕
粒子ろ過試験は、アクリルの単分散粒子を含有する粒子分散水溶液を用いて、ろ過を実施したものであり、液体フィルターとしての基礎物性を評価する試験である。
粒子ろ過試験では、液体フィルターを直径25mmに打ち抜き、フィルターホルダー(SWINNEX, ミリポア社製)にOリングとともにセットした。
粒子分散水溶液は、粒径が1μm、3μm、5μm、8μm、10μm、および15μmの各単分散粒子を、それぞれ水500mL(ミリリットル)に対して0.1質量%含有させて、粒子分散水溶液を500mL用意した。
なお、単分散粒子には、綜研化学株式会社製のアクリル単分散粒子 MX−80H3wT(品番、粒径1μm)、MX−300(品番、粒径3μm)、MX−500(品番、粒径5μm)、MX−800(品番、粒径8μm)、およびMX−1000(品番、粒径10μm)、MX−1500H(品番、粒径15μm)を用いた。
【0048】
液体フィルターの低密度側を一次側、すなわち、粒子分散水溶液を供給する側に配置し、液体フィルターの表面に対して垂直方向に粒子分散水溶液500mLを流して、ろ過した。
ろ過時の圧力損失をリアルタイムで計測し、粒子分散水溶液の処理量が0〜100mLの時の平均圧力損失を初期ろ過圧とし、粒子分散水溶液の処理量が400〜500mLの時の平均圧力損失を終点ろ過圧とした。初期ろ過圧は、ろ過する液体の総量のうち、処理量が0〜20体積%の平均圧力損失である。終点ろ過圧は、ろ過する液体の総量のうち、処理量が80〜100体積%の平均圧力損失である。
ろ過時の圧力損失は、以下のようにしてリアルタイムで計測した。
液体フィルターの上流側および下流側のそれぞれに圧力計を設置して圧力を測定し、圧力計の出力をGRAPHTEC株式会社製 GL840を用いて1秒間隔で記録した。なお、圧力計に長野計器株式会社製、小形デジタル圧力計GC31(商品名)を用いた。
初期ろ過圧の評価、および終点ろ過圧の評価では、いずれも平均圧力損失が10kPa未満をAとし、平均圧力損失が10kPa以上20kPa未満をBとし、平均圧力損失が20kPa以上をCとした。
【0049】
〔液体フィルター〕
(平均貫通孔径)
平均貫通孔径は、バブルポイント法(JIS(日本工業規格)K3832、ASTM F316-86)/ハーフドライ法(ASTM E1294-89)を用いたパームポロメータにより測定した。
(空隙率)
空隙率は、上述のように、空隙率をPr(%)とし、不織布10cm角の膜厚をHd(μm)と、不織布10cm角の質量をWd(g)とするとき、Pr=(Hd−Wd×67.14)×100/Hdを用いて算出した。
【0050】
(臨界湿潤表面張力(CWST))
濡れ性を表す臨界湿潤表面張力(CWST)は、親水化剤量またはアルカリ処理によって制御した。以下に、臨界湿潤表面張力(CWST)の測定方法を示す。
異なる表面張力を有する溶液を調製する。水平にした液体フィルター上に溶液10μLを静かに10滴載せ、10分間放置する。10滴中9滴以上が湿潤した場合、液体フィルターはその表面張力の溶液に湿潤したと判定する。湿潤した場合、湿潤した溶液よりも高い表面張力を有する溶液を用いて同様に滴下し、10滴中2滴以上が湿潤しなくなるまで繰り返し行う。10滴中2滴以上が湿潤しない場合、液体フィルターはその表面張力の溶液に湿潤しないと判定し、湿潤した溶液と湿潤しない溶液の表面張力の平均値を液体フィルターの臨界湿潤表面張力(CWST)とする。
なお、湿潤した溶液と湿潤しない溶液の表面張力の差は2mN/m以内とし、測定は温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS(日本工業規格) K7100)で行う。これと異なる温度または湿度での測定では、換算表がある場合、表を用いてぬれ張力を算出する。また、滴下した溶液が湿潤したと判定する基準は、液体フィルターと溶液の接触角を90°以下とする。
なお、酢酸水溶液(54〜70mN/m)、水酸化ナトリウム水溶液(72〜100mN/m)を臨界湿潤表面張力(CWST)測定に使用し、調製した溶液の表面張力は臨界湿潤表面張力(CWST)を測定した環境と同一条件下で自動表面張力計(協和界面化学製、Wilhelmy平板法)にて測定を行った。
(膜厚)
膜厚は、走査型電子顕微鏡を用いて、不織布の断面観察を実施し、断面画像を得る。断面画像を用いて、不織布の膜厚となる箇所を10点測定し、その平均値を膜厚とした。
【0051】
(繊維密度差)
繊維密度差は、液体フィルターの膜厚方向のX線CT(Computed Tomography)画像を取得し、断面X線CT画像において全膜厚を膜厚方向に10等分する。10等分した各区間での輝度を積算した。積算した輝度を、輝度が低い側からL1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10とし、L1/L10の値を求め、この値を繊維密度差とした。実施例1〜13および比較例1〜5では、不織布の表面および裏面のうち、いずれかの面の繊維密度が最大であり、残りの面の繊維密度が最小であるため、輝度L1と輝度L10とは、それぞれ表面の輝度または裏面の輝度である。
また、上述の輝度L1〜L10について、0.9<Ln/Ln+1<1.05を満たすか否かを確認した。0.9<Ln/Ln+1<1.05を満たす場合、繊維密度勾配の欄に「連続」と記載し、満たさない場合、繊維密度勾配の欄に「不連続」と記載した。実施例1〜13は、膜厚方向に対して繊維密度が連続して変化している。
【0052】
なお、下記表1および表2中、アルファベット表記で示す材質は、それぞれ以下に示す通りの材質である。
CAP:セルロースアセテートプロピオネート
CMC:カルボキシメチルセルロース
PET:ポリエチレンテレフタレート
PP:ポリプロピレン
PSU:ポリスルホン
PVP:ポリビニルピロリドン
【0053】
実施例1〜13および比較例1〜5の平均貫通孔径、空隙率、臨界湿潤表面張力(CWST)、膜厚、繊維密度差、繊維密度勾配、材質、および製造方法を下記表1および表2に示す。
以下、実施例1〜13および比較例1〜5について説明する。
【0054】
〔実施例1〕
実施例1は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用い、エレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
エレクトロスピニング法を用いた不織布については、特許第6132820号公報に記載のナノファイバー製造装置を用い、ノズルから出る紡糸溶液の温度を20℃とし、ノズルから出る紡糸溶液の流量を20mL/時とし、かつ溶液とコレクタとの間に印加する電圧を10〜40kVの範囲で調整して、コレクタ上に配置された、厚み25μmのアルミニウムシートからなる支持体にナノファイバーを収集させて不織布を得た。
上述の水に不溶の高分子および親水化剤をジクロロメタン80質量%、およびメタノール20質量%の混合溶媒中に総固形分濃度10質量%となるように溶解し、紡糸溶液として用いた。なお、実施例1、ならびに以下に示す実施例2〜11および比較例1〜5において記載する水に不溶の高分子と親水化剤の比率は上述の固形分の内訳である。これは、水に不溶の高分子と親水化剤との不織布の繊維全質量に対する比率と同じことである。
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が混合溶媒中に総固形分のうち、90質量%であることを、表1の「素材」の欄に「CAP/90%」と表す。ポリビニルピロリドン(PVP)が混合溶媒中に総固形分のうち、10質量%であることを、表1の「親水化剤」の欄に「PVP/10%」と表す。
以下の説明では、単に実施例1では、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%という。以下、これ以外の物質についても、実施例1と同様に表す。
実施例1は、平均貫通孔径が5.0μmであり、空隙率が97%であり、臨界湿潤表面張力が85mN/mであり、膜厚が800μmであり、繊維密度差が0.70であり、繊維密度勾配が連続である。
【0055】
〔実施例2〕
実施例2は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例2は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、膜厚および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例2は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.9μmであり、膜厚が4000μmであり、繊維密度差が0.76である。
〔実施例3〕
実施例3は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例3は、後述する表1に示すように平均貫通孔径および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例3は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.2μmであり、繊維密度差が0.94である。
【0056】
〔実施例4〕
実施例4は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例4は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、および臨界湿潤表面張力を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が97.5質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が2.5質量%である。実施例4は、実施例1に比して、ポリビニルピロリドン(PVP)の量を少なくして臨界湿潤表面張力を小さくしており、臨界湿潤表面張力が40mN/mであり、平均貫通孔径が3.9μmである。
【0057】
〔実施例5〕
実施例5は、水に不溶の高分子にポリスルホン(PSU)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、ポリスルホン(PSU)には、ソルベイ社製ユーデル(登録商標) P−3500 LCD MBを用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例5は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、空隙率、臨界湿潤表面張力および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、ポリスルホン(PSU)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例5は、実施例1とは水に不溶な高分子が異なる。実施例5では、水に不溶な高分子と親水化剤との組み合わせにより臨界湿潤表面張力を小さくしており、臨界湿潤表面張力が72mN/mであった。また、実施例5は、実施例1に比して、平均貫通孔径が3.5μmであり、空隙率が90%であり、臨界湿潤表面張力が72mN/mであり、繊維密度差が0.85である。
【0058】
〔実施例6〕
実施例6は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、カルボキシメチルセルロース(CMC)には、富士フイルム和光純薬株式会社製 品番035−01337を用いた。
実施例6は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、空隙率、および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、カルボキシメチルセルロース(CMC)が10質量%である。実施例6は、実施例1に比して、平均貫通孔径が3.3μmであり、空隙率が94%であり、繊維密度差が0.92である。
〔実施例7〕
実施例7は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例7は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、空隙率、および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が45質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が55質量%である。実施例7は、実施例1に比して、平均貫通孔径が3.6μmであり、空隙率が95%であり、繊維密度差が0.94である。
【0059】
〔実施例8〕
実施例8は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例8は、後述する表1に示すように平均貫通孔径、膜厚および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例8は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.9μmであり、膜厚が90μmであり、繊維密度差が0.94である。
〔実施例9〕
実施例9は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例9は、後述する表1に示すように平均貫通孔径および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例9は、実施例1に比して、平均貫通孔径が1.8μmであり、繊維密度差が0.90である。
【0060】
〔実施例10〕
実施例10は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例10は、後述する表2に示すように平均貫通孔径および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例10は、実施例1に比して、平均貫通孔径が12.5μmであり、繊維密度差が0.90である。
〔実施例11〕
実施例11は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例11は、後述する表2に示すように平均貫通孔径、空隙率および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例11は、実施例1に比して、平均貫通孔径が6.2μmであり、空隙率が72%であり、繊維密度差が0.92である。
【0061】
〔実施例12〕
実施例12は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例12は、後述する表2に示すように平均貫通孔径、膜厚および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例12は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.3μmであり、膜厚が2000μmであり、繊維密度差が0.72である。
〔実施例13〕
実施例13は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
実施例13は、後述する表2に示すように平均貫通孔径、膜厚および繊維密度差を変更した以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。実施例13は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.0μmであり、膜厚が250μmであり、繊維密度差が0.80である。
【0062】
〔比較例1〕
比較例1は、ポリプロピレン(PP)を用いて、スパンボンド法により、膜厚が500μmの不織布を製造した。比較例1は、平均貫通孔径が2.9μmであり、空隙率が80%であり、臨界湿潤表面張力が30mN/mであり、膜厚が500μmであり、繊維密度差が0.99であり、かつ繊維密度勾配がない。すなわち、比較例1は、繊維密度の異方性がなく等方的である。
なお、ポリプロピレン(PP)には、日本ポリプロ株式会社製 WINTEC(登録商標) WSX02を用いた。
〔比較例2〕
比較例1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて、メルトブロー法により、膜厚が350μmの不織布を製造した。比較例2は、平均貫通孔径が4.5μmであり、空隙率が82%であり、臨界湿潤表面張力が65mN/mであり、膜厚が350μmであり、繊維密度差が0.99であり、かつ繊維密度勾配がない。すなわち、比較例2は、繊維密度の異方性がなく等方的である。
なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)には、ユニチカ株式会社製SA−1206を用いた。
【0063】
〔比較例3〕
比較例3は、親水化剤を用いることなく、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)だけを用いた。セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用いた。
比較例3は、後述する表2に示すように平均貫通孔径、空隙率、臨界湿潤表面張力、膜厚および繊維密度差を変更し、かつ繊維密度勾配がない状態とした以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を製造し、液体フィルターとした。なお、比較例3は、実施例1に比して、平均貫通孔径が4.8μmであり、空隙率が90%であり、臨界湿潤表面張力が40mN/mであり、膜厚が200μmであり、繊維密度差が0.99であり、かつ繊維密度勾配がない。すなわち、比較例3は、繊維密度の異方性がなく等方的である。
【0064】
〔比較例4〕
比較例4は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
比較例4は、後述する表2に示すように繊維密度差を変更し、かつ繊維密度勾配を不連続にした以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により膜厚が400μmの不織布を形成した後、一旦停止し除電器(MILTY社製 静電気除去ピストル Zerostat 3(商品名))にて不織布の表面を除電した。続いて、除電した不織布の表面に同様の条件でエレクトロスピニング法による紡糸を再度行い、総膜厚が800μmとなるようにした。このようにして繊維密度が不連続な不織布を作製して液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。比較例4は、実施例1に比して、繊維密度差が0.88である。
〔比較例5〕
比較例5は、水に不溶の高分子にセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、親水化剤にポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)には、イーストマンケミカルジャパン株式会社製CAP−482−20(商品名)を用い、ポリビニルピロリドン(PVP)には、K−90 株式会社日本触媒製を用いた。
比較例5は、後述する表2に示すように平均貫通孔径、膜厚および繊維密度差を変更し、かつ繊維密度勾配を不連続とした以外は、実施例1と同様にエレクトロスピニング法により不織布を3つ製造し、3つの不織布を積層して液体フィルターとした。なお、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)が90質量%であり、ポリビニルピロリドン(PVP)が10質量%である。比較例4は、1つの不織布の繊維密度勾配が連続であるが、液体フィルターとしては繊維密度が不連続である。比較例5は、実施例1に比して、平均貫通孔径が5.2μmであり、膜厚が250μmであり、繊維密度差が0.93である。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1および表2に示すように、実施例1〜13は比較例1〜5に比して、初期ろ過圧、および終点ろ過圧が優れており、圧力損失が小さい液体フィルターであった。
比較例1は、液体フィルターの構成および製造方法が異なり、親水化剤がなく臨界湿潤表面張力(CWST)が小さく、繊維密度差も小さい。また、平均貫通孔径および空隙率が小さく、膜厚も薄く、圧力損失が大きかった。
比較例2は、液体フィルターの構成および製造方法が異なり、親水化剤がなく臨界湿潤表面張力(CWST)が小さく、繊維密度差も小さい。また、平均貫通孔径および空隙率が小さく、膜厚も薄く、圧力損失が大きかった。
比較例3は、親水化剤がなく臨界湿潤表面張力(CWST)が小さく、繊維密度差が小さい。また、平均貫通孔径および空隙率が小さく、膜厚も薄く、圧力損失が大きかった。
比較例4は、繊維密度勾配が不連続であり、圧力損失が大きかった。
比較例5は、3枚積層した構成であり、液体フィルターとしては繊維密度勾配が不連続であり、圧力損失が大きかった。
【0068】
実施例1、実施例2、実施例8、実施例12、および実施例13から、膜厚が200μm〜2000μmの範囲であると初期ろ過圧、および終点ろ過圧がより優れるため好ましい。
実施例1と実施例3とから、繊維密度差が大きい方が圧力損失が小さくなるため好ましい。
実施例1と実施例4と実施例5とから、臨界湿潤表面張力が大きいと、特に臨界湿潤表面張力が72mN/m以上であると、圧力損失が小さくなるため好ましい。
【0069】
実施例1と実施例6とから、親水化剤は初期ろ過圧、および終点ろ過圧がより優れるポリビニルピロリドン(PVP)が好ましい。ポリビニルピロリドン(PVP)は、他の素材に比べて水に不溶の高分子との相溶性が高く、親水性も高い。
実施例1と実施例7とから、親水化剤の含有量は50質量%以下であると、初期ろ過圧、および終点ろ過圧がより優れるため好ましい。親水化剤の含有量が50質量%以下では、不織布を形成する繊維の強度が抑制され、ろ過によって形状変化しにくい。
実施例1と実施例9と実施例10とから、平均貫通孔径は2.0μm以上10.0μm未満であると、初期ろ過圧、および終点ろ過圧がより優れるため好ましい。なお、平均貫通孔径が大きい場合、繊維径を大きくする必要があるが、エレクトロスピニング法による紡糸時に溶媒が乾燥するのに時間がかかるため、作製した不織布の繊維同士が溶着してしまう。結果として繊維密度差および空隙率が小さくなりろ過圧の上昇につながる。
実施例1と実施例11とから、空隙率が75%以上98%以下であると、初期ろ過圧、および終点ろ過圧がより優れるため好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10 液体フィルター
12 不織布
12a 表面
12b 裏面
14 多孔質体
20 ろ過装置
22 ケース
22a 内部
22b 底部
22c 開口部
22d 外面
24 連結管
26 回収部
27 供給管
28 加圧部
28a ガスケット
28b プランジャー
30 ろ過システム
32 供給部
34 配管
36 制御部
50 圧力曲線
52 圧力曲線
100 従来の不織布
Dt 膜厚方向
h 膜厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】