特表-20022439IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2020-22439熱プレス成形品用複合材料及び熱プレス成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年1月30日
【発行日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】熱プレス成形品用複合材料及び熱プレス成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20200710BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20200710BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20200710BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20200710BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08K7/06
   C08K3/04
   C08J3/12 ACEZ
   C08J5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2020-503330(P2020-503330)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-140989(P2018-140989)
(32)【優先日】2018年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】田口 吉昭
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA58
4F070AB23
4F070AB24
4F070DA41
4F070DC07
4F071AA63
4F071AA81
4F071AA84
4F071AA88
4F071AB03
4F071AD01
4F071AD07
4F071AE15
4F071AF37
4F071AF53
4F071AH07
4F071AH11
4F071AH12
4F071AH15
4F071BA09
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4J002CN011
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002FA046
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性を有しかつ充填材の分散性に優れた熱プレス成形品を製造可能なポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料、およびそれを用いた熱プレス成形品を提供する。
【解決手段】ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と、充填剤と、を含み、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であり、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、熱プレス成形品用複合材料とすることにより上記課題を解決する。ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体のカールフィッシャー水分計で測定される水分量が、0.1ppm以上750ppm以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と、充填剤と、を含み、
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であり、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、熱プレス成形品用複合材料。
【請求項2】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体のカールフィッシャー水分計で測定される水分量が、0.1ppm以上750ppm以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
充填剤が導電性充填剤を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
充填剤が、カーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック及び黒鉛からなる群より選ばれる1種以上を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材料を用いた熱プレス成形品。
【請求項8】
厚みが5mm未満の板状である、請求項7に記載の熱プレス成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プレス成形品用ポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料及び熱プレス成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、高い機械的強度を有するとともに、耐熱性、耐薬品性及び寸法安定性に優れているため、ポリアリーレンサルファイド樹脂を含有する成形品は種々の用途に適用されている。成形品に機能を付与する充填剤をポリアリーレンサルファイド樹脂に混合して成形品を作製する場合、目的とする機能を効率的に発現させるためには成形品中における充填剤の分散の制御が重要視される。従来、ポリアリーレンサルファイド樹脂を含む成形品を得る方法としては、一旦ポリアリーレンサルファイド樹脂と充填剤とを含む複合材料のペレットを溶融押出で作製し、該ペレットを射出成形で成形する方法が広範に用いられている。特許文献1には、ポリアリーレンサルファイド樹脂と導電性カーボンブラックとを含む複合材料のペレットを溶融押出で作製し、該ペレットを射出成形して成形品を得ることが記載されている。しかし、こうした従来の方法では、充填剤の分散性が不十分になる場合がある。
熱プレス成形は、樹脂粉体を樹脂が溶融する温度で加熱プレス成形する成形方法であり、樹脂が流動する程の高温で溶融させる射出成形と比べると成形品の異方性を制御できる特徴がある。また、樹脂を粉体状態で各種充填剤と混合することができるので、充填剤の分散性に優れた成形品を容易に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/093670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた耐熱性を有しかつ充填剤の分散性に優れた熱プレス成形品を製造可能なポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料、およびそれを用いた熱プレス成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に関するものである。
[1]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と、充填剤と、を含み、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であり、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、熱プレス成形品用複合材料。
[2]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体のカールフィッシャー水分計で測定される水分量が、0.1ppm以上750ppm以下である、[1]に記載の複合材料。
[3]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、[1]又は[2]に記載の複合材料。
[4]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の複合材料。
[5]充填剤が導電性充填剤を含有する、[1]から[4]のいずれかに記載の複合材料。
[6]充填剤が、カーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック及び黒鉛からなる群より選ばれる1種以上を含有する、[1]から[5]のいずれかに記載の複合材料。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の複合材料を用いた熱プレス成形品。
[8]厚みが5mm未満の板状である、[7]に記載の熱プレス成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた耐熱性を有しかつ充填材の分散性に優れた熱プレス成形品を製造可能なポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料、およびそれを用いた熱プレス成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0008】
[熱プレス成形品用複合材料]
本実施形態に係る熱プレス成形品用複合材料(以下、単に「複合材料」ともいう。)は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と充填剤とを含む。
【0009】
(ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体)
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体(以下、「樹脂粉体」ともいう。)は、ポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子で構成されている。本明細書において、「微粒子」との用語は、0.1μm〜1000μm程度の平均粒径を有する粒子のことをいい、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による体積基準の算術平均粒子径を意味する。平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920)を用いて測定することができる。
【0010】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、以下の一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂である。
−(Ar−S)− ・・・(I)
(但し、Arは、アリーレン基を示す。)
【0011】
アリーレン基は、特に限定されないが、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等を挙げることができる。ポリアリーレンサルファイド樹脂は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位の中で、同一の繰り返し単位を用いたホモポリマーの他、用途によっては異種の繰り返し単位を含むコポリマーとすることができる。
【0012】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を有する、p−フェニレンサルファイド基を繰り返し単位とするものが好ましい。p−フェニレンサルファイド基を繰り返し単位とするホモポリマーは、極めて高い耐熱性を持ち、広範な温度領域で高強度、高剛性、さらに高い寸法安定性を示すからである。このようなホモポリマーを用いることで非常に優れた物性を備える成形品を得ることができる。
【0013】
コポリマーとしては、上記のアリーレン基を含むアリーレンサルファイド基の中で異なる2種以上のアリーレンサルファイド基の組み合わせが使用できる。これらの中では、p−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基とを含む組み合わせが、耐熱性、成形性、機械的特性等の高い物性を備える成形品を得るという観点から好ましい。p−フェニレンサルファイド基を70mol%以上含むポリマーがより好ましく、80mol%以上含むポリマーがさらに好ましい。なお、フェニレンサルファイド基を有するポリアリーレンサルファイド樹脂は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)である。
【0014】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、一般にその製造方法により、実質的に線状で分岐や架橋構造を有しない分子構造のものと、分岐や架橋を有する構造のものが知られているが、本実施形態においてはその何れのタイプのものについても有効である。
【0015】
ポリアリーレンサルファイド樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法によって製造することができる。例えば、低分子量のポリアリーレンサルファイド樹脂を合成後、公知の重合助剤の存在下で、高温下で重合して高分子量化することで製造することができる。こうして得られたポリアリーレン樹脂を、後述するように、そのままポリアリーレン樹脂粉体として用いるか、又は後述の各種方法で粉砕して微粒子化してポリアリーレン樹脂粉体として用いることができる。
【0016】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の平均粒径は、5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上80μm以下であり、より好ましくは20μm以上50μm以下である。平均粒径を5μm以上100μm以下とすることにより、熱プレス成形品用ポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料において充填剤との均一な混合、均一な分散が可能となる。「平均粒径」の測定方法については、上述のとおりである。
【0017】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体は、最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されず、1以上とすることができる。なお、「最大粒径」とは、(レーザー回折/散乱式粒度分布測定法)により測定した値のうち、最大値のことをいう。最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)を6.5以下にすることにより、熱プレス成形品の物性におけるばらつきを抑制することが可能となる。
【0018】
上記平均粒径を有するポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の製造は、特に限定されず、上記ポリアリーレンサルファイド樹脂の製造方法によって得られたポリアリーレンサルファイド樹脂をそのまま樹脂粉体として用いることもできるし、上記ポリアリーレンサルファイド樹脂をペレット、繊維、フィルム等に成形したものを、ジェットミル、ビーズミル、ハンマーミル、ボールミル、カッターミル、石臼型摩砕機等を用いた乾式粉砕、湿式粉砕、冷凍粉砕により粉砕処理したものを用いることもできる。また、溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を溶解させた後にスプレードライする方法、溶媒中でエマルションを形成した後で貧溶媒に接触させる貧溶媒析出法、溶媒中でエマルションを形成した後で有機溶媒を乾燥除去する液中乾燥法等を用いることもできる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と熱可塑性樹脂とを混ぜ合わせた後、熱可塑性樹脂を溶媒で溶解除去して上記平均粒径を有するポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得る方法を用いることもできる。
【0019】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の示差走査熱量計で測定される融点Tm1は、250℃以上300℃以下であり、好ましくは255℃以上300℃以下であり、より好ましくは260℃以上300℃以下である。融点Tm1を250℃以上300℃以下とすることにより、熱プレス成形品の耐熱性を高めることができるとともに、上記平均粒径及び後述する平均円形度を満たす場合に、充填剤の分散性に優れた熱プレス成形品にすることができる。
なお、融点Tm1は、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される1stRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
【0020】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を構成するポリアリーレン樹脂微粒子は、所定の円形度を有している。すなわち、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体は、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70〜1.00であり、0.80〜1.00であることがより好ましい。平均円形度をこの範囲とすることにより、熱プレス成形品用ポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料において充填剤との均一な混合、均一な分散が可能となる。
平均円形度は、動的画像解析法/粒子状態分析計を用いて、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体中の4500粒の微粒子について、面積Aと周囲長Pから円形度を以下の式(II)から算出し、その平均値とする。
円形度=(4×π×A)/P ・・・(II)
【0021】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体は、カールフィッシャー水分計で測定される水分量が0.1ppm以上750ppm以下であることが好ましく、1ppm以上500ppm以下であることがより好ましい。水分量をこの範囲とすることにより熱プレス成形品用ポリアリーレンサルファイド樹脂複合材料の作製時において、充填剤との混合性や分散性を良好に制御でき、また、熱プレス成型時の溶融状態におけるガスの発生やボイド(気孔)の発生を抑制することができる。
【0022】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体は、示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下であることが好ましく、20〜800Pa・sであることがより好ましく、50Pa・s以上800Pa・s以下とすることもできる。ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の溶融粘度を上記範囲とすることにより、熱プレス成形時の加工性や成形品外観、および機械物性を向上することができる。溶融粘度の調整は、ポリアリーレンサルファイド樹脂の重合時のモノマー仕込み比を調整すること、重合時間を制御すること、及び溶融粘度が異なるポリアリーレンサルファイド樹脂をブレンドすることなどで行うことができる。なお、溶融粘度を10Pa・s以上にすることで、重量平均分子量を15,000以上にすることができる。
【0023】
(充填剤)
充填剤としては、各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を挙げることができる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、カーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイト等の珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
好ましい繊維状充填剤は、導電性充填剤であり、特に好ましい繊維状充填剤は、カーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブから選択される1種以上である。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。
繊維状充填剤の平均繊維長は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体との分散性を高める点で、150μm以下であることが好ましい。なお、平均繊維長は、例えば、株式会社ニコレ製画像測定器LUZEXFSを用いて測定することができる。
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。好ましい粉粒状充填剤は、導電性充填剤であり、特に好ましい粉粒状充填剤は、カーボンブラック及び黒鉛から選択される1種以上である。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
粉粒状充填剤、板状充填剤の平均粒径は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体との分散性を高める点で、500nm以下、又は400nm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、上記した樹脂微粒子と同じ方法で測定することができる。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0024】
充填剤の含有量は、ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、10〜400質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜350質量部である。また、充填剤の含有量は、複合材料中9〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは、13〜78質量%である。
【0025】
また、複合材料には、その他の成分として、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、結晶核剤等の添加剤が、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、複合材料中0.01〜3質量%配合されていてもよい。
【0026】
また、複合材料には、ポリオキシメチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶性樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂やポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー等の非晶性熱可塑性樹脂等のその他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、複合材料中20質量%以下含有することもできる。
【0027】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体及び充填剤、並びに必要に応じて含有しても良い添加剤等を含む複合材料を得るための各種成分の混合方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、振とうによる混合方法、ボールミル等の粉砕を伴う混合方法、ヘンシェルミキサー等の攪拌翼による混合方法等を用いることができる。
【0028】
[熱プレス成形品]
熱プレス成形品は、上記したポリアリーレンサルファイド樹脂粉体及び充填剤を含む複合材料を用いて形成された熱プレス成形品である。上記した複合材料は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体中に充填剤が均一に混合されて、均一に分散されているので、結果、得られる熱プレス成形品の強度や耐熱性等の物性を均一化することができ、信頼性の高い成形品とすることができる。よって、この熱プレス成形品は、高温下(例えば、250℃以上となり得る環境下)で使用される自動車部品、半田リフロー工程にて実装される電気・電子部品、燃料電池用セパレータ、プラスチックマグネット等の金属材料との複合材料及びセラミックとの複合材料等として好ましく用いることができる。
【0029】
熱プレス成形品の製造は、上記した複合材料を、加熱プレス成形機により、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の上記融点Tm1以上の温度(例えば250℃〜400℃)でプレス成形して得ることができる。成形時の圧力は、特に限定されず、所望の厚みに成形できる圧力とすることができる。成形品の厚みは、用途及び/又は求められる性能に応じて適宜選択され、例えば、5mm未満とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0031】
[ポリアリーレンサルファイド樹脂]
実施例及び比較例で用いたポリアリーレンサルファイド樹脂は、以下のとおりである。
PPS1:ポリフェニレンサルファイド樹脂、株式会社クレハ製「フォートロンKPS」、(溶融粘度:30Pa・s(剪断速度:1216sec−1、310℃))
PPS2:ポリフェニレンサルファイド樹脂、株式会社クレハ製「フォートロンKPS」、(溶融粘度:130Pa・s(剪断速度:1216sec−1、310℃))
【0032】
[実施例1、2]
PPS1を気流式ジェットミル(株式会社セイシン企業製、縦型ジェット粉砕機SKジェット・オー・ミル)を用いて、乾式粉砕処理してポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。この樹脂粉体の融点Tm1、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を、後述の方法で測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と導電性カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、#3050B、平均粒径40nm)とを表1に示す含有割合で、ヘンシェルミキサーで混合して複合材料とした後に、3gを直径40mmのアルミニウム製リングに充填し、熱プレス成形機(株式会社東洋精機製作所製「Mini Test Press−10」)を用いて、温度310℃、圧力5MPaの条件でプレスして、熱プレス成形品(直径40mm、厚み2mmの板状成形品)を製造した。この熱プレス成形品の表面性、充填剤の分散性について後述の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0033】
[実施例3]
PPS1に替えてPPS2を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、実施例1と同様にして複合材料を得、実施例1と同様にして熱プレス成形体を製造した。実施例1と同様にして、熱プレス成形品の表面性、充填剤の分散性を評価した。結果を表1に示した。
【0034】
[比較例1]
PPS1をメッシュミル型粉砕機(株式会社ホーライ製、HA−2542)を用いて凍結粉砕処理してポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子を得た以外は、実施例1と同様にしてポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、実施例1と同様にして複合材料を得、実施例1と同様にして熱プレス成形品を製造した。実施例1と同様にして、熱プレス成形品の表面性、充填剤の分散性を評価した。結果を表1に示した。
【0035】
[比較例2]
PPS2を粉砕処理せずに使用して、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体とした。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、実施例1と同様にして複合材料を得、実施例1と同様にして熱プレス成形品を製造した。実施例1と同様にして、熱プレス成形品の表面性、充填剤の分散性を評価した。結果を表1に示した。
【0036】
[比較例3]
PPS2を粉砕処理せずに使用して、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体とした。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、実施例1と同様にして複合材料を得、実施例1と同様にして熱プレス成形品の製造を試みたが、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体と導電性カーボンブラックとの接着が不十分であり成形不可であった。
【0037】
[測定]
(融点Tm1)
示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)を用いて、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度を融点Tm1として測定した。
【0038】
(水分量)
カールフィッシャー水分計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製、CA−200)を用いて、試料0.5gを280℃、200mL/minの窒素気流下の条件で水分量を測定した。
【0039】
(溶融粘度)
キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)を用いて、シリンダー温度310℃及びせん断速度1216sec−1の条件で、ISO 11443に準拠し、見かけの溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ10mmのオリフィスを用いた。
【0040】
(平均粒径及び最大粒径)
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−920)を用いて、平均粒径及び最大粒径を測定した。なお、平均粒径は、体積基準の算術平均粒子径である。
【0041】
(円形度)
動的画像解析法/粒子状態分析計(株式会社セイシン企業製、PITA−3)を用いて、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体中の4500粒の微粒子について、面積Aと周囲長Pから円形度を以下の式(II)から算出し、その平均値を樹脂粉体の平均円形度とした。
円形度=(4×π×A)/P ・・・(II)
【0042】
[評価]
(表面性)
実施例及び比較例で得られた熱プレス成形品について、外観を目視にて観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表1に示した。
良 :成形品の表面が滑らかであり、ボイドが確認されなかった。
不良:成形品の表面がざらついており、ボイドが確認された。
【0043】
(充填剤の分散性)
充填剤の分散性を、熱プレス成形品の表面抵抗値を指標として評価した。すなわち、実施例及び比較例で得られた熱プレス成形品について、表面抵抗値を任意の4箇所で抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製、ロレスターGP、電極;微小領域測定用PSPプローブ)を用いて測定した。上記より測定した4箇所の表面抵抗値について、最大値から最小値を除した値をばらつきとして算出し、以下の基準に従って評価した。結果を表1に示した。
良 :上記ばらつきが20.0未満であった。
不良:上記ばらつきが20.0以上であった。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、本実施形態に係る樹脂粉体を用いた実施例の熱プレス成形品は、充填剤の分散性に優れており、高品質な熱プレス成形品であることが分かる。また、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を用いるとともにその融点Tm1が250℃以上300℃以下であるので、耐熱性が優れている。

【手続補正書】
【提出日】2020年1月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体100質量部と、平均繊維長が150μm以下のカーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブ、平均粒径が500nm以下のカーボンブラック及び黒鉛からなる群より選ばれる1種以上を含有する導電性充填剤10〜400質量部と、を含み、
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であり、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、熱プレス成形品用複合材料。
【請求項2】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体のカールフィッシャー水分計で測定される水分量が、0.1ppm以上750ppm以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料を用いた熱プレス成形品。
【請求項6】
厚みが5mm未満の板状である、請求項に記載の熱プレス成形品。

【手続補正書】
【提出日】2020年5月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体100質量部と、平均繊維長が150μm以下のカーボン繊維、ミルドカーボンファイバー、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブ、平均粒径が500nm以下のカーボンブラック及び黒鉛からなる群より選ばれる1種以上を含有する導電性充填剤10〜400質量部と、を含み、
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であり、動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、熱プレス成形品用複合材料。
【請求項2】
導電性充填剤が、平均粒径が500nm以下のカーボンブラック及び黒鉛からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体のカールフィッシャー水分計で測定される水分量が、0.1ppm以上750ppm以下である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料を用いた熱プレス成形品。
【請求項7】
厚みが5mm未満の板状である、請求項に記載の熱プレス成形品。
【国際調査報告】