(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年3月5日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】組成物及びそれを使用した液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/12 20060101AFI20201120BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20201120BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20201120BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20201120BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20201120BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20201120BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20201120BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
G02F1/13 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
【出願番号】特願2020-540133(P2020-540133)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-160381(P2018-160381)
(32)【優先日】2018年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 士朗
(72)【発明者】
【氏名】呉 偉
(72)【発明者】
【氏名】大石 晴己
【テーマコード(参考)】
4H027
【Fターム(参考)】
4H027BA01
4H027BC04
4H027BD03
4H027BD05
4H027BD07
4H027BD10
4H027BD11
4H027BD20
4H027BD24
4H027CD01
4H027CD05
4H027CE04
4H027CG04
4H027CG05
4H027CK05
4H027CM04
4H027CQ01
4H027CQ02
4H027CQ04
4H027CQ05
4H027CR02
4H027CR05
4H027CT01
4H027CT02
4H027CU01
4H027CU04
4H027CU05
4H027CW02
4H027DH04
(57)【要約】
Δεが正の組成物であって、広い温度範囲の液晶相を有し、粘性が小さく、低温での溶解性が良好で、比抵抗や電圧保持率が高く、熱や光に対して安定であり、更に、高い弾性定数及び相対的に高いε⊥を有する液晶組成物の提供。一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有する正の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(A)を含有し、一般式(B1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有する負の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(B)を含有し、一般式(C1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有する誘電的に中性の化合物からなる成分(C)を含有する組成物であって、組成物全体として正の誘電率異方性を有する液晶組成物を提供する。更に当該組成物を使用したIPS型又はFFS型の表示素子を提供する。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電異方性を有する化合物からなる成分(A)、負の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(B)、更に誘電的に中性な化合物からなる成分(C)を含有する組成物であって、
成分(A)として、一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、
成分(B)として、一般式(B1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、
成分(C)として、一般式(C1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、組成物全体として正の誘電率異方性を有することを特徴とする液晶組成物。
【化1】
(式中、R
1〜R
5は相互に独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、Y
1〜Y
12は相互に独立してH又はFを表すが少なくとも2つはFであり、Y
13及びY
14は相互に独立してF又はClを表し、X
1はF、Cl、CN、CF
3又はOCF
3を表し、mは0又は1を表し、nは1、2又は3を表し、Zは−C
2H
4−、−C≡C−、−COO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は単結合を表し、環A及びBは相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4フェニレン基又は3−フルオロ−1,4−フェニレン基を表すが、nが2又は3の場合、複数のA、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(A1)で表される化合物として、下記一般式(A1−1)〜(A1−7)で表される化合物を少なくとも1種含有する請求項1記載の液晶組成物。
【化2】
(式中、R
1は前記一般式(A1)におけるR
1と同じ意味を表す。)
【請求項3】
前記一般式(B1)で表される化合物として、一般式(B1−1)〜(B1−4)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【化3】
(式中、R
3は前記一般式(B1)におけるR
3と同じ意味を表し、Alkylは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、Alkenylは炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表す。)
【請求項4】
更に前記成分(A)として一般式(M)で表される正の誘電率異方性を有する化合物を少なくとも1種含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化4】
(式中、R
Mは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、n
Mは1、2又は3を表し、
G
Mは
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、の基(a)及び基(b)上の水素原子はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
Z
Mは−CH
2CH
2−、−CF
2O−、−COO−、−C≡C−又は単結合を表し、
G
M及びZ
Mが複数存在する場合は同一でも異なっていてもよく、
Y
M1及びY
M2は相互に独立してフッ素原子又は水素原子を表し、
X
Mはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基を表す。但し前記一般式(A1)で表される化合物を除く。)
【請求項5】
更に前記成分(B)として一般式(K)で表される負の誘電率異方性を有する化合物を少なくとも一種含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化5】
(式中、R
K1及びR
K2は相互に独立して炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、n
K1及びn
K2は相互に独立して0、1又は2を表すが、n
K1+n
K2は1又は2であり、Y
K1及びY
K2は相互に独立してフッ素原子又は塩素原子を表し、G
K1及びG
K2は相互に独立して、
【化6】
を表す。n
K1、n
K2が2の場合、複数のG
K1、G
K2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記一般式(C1)で表される化合物として、一般式(C1−1)〜(C1−11)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも一種含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化7】
(式中、R
4、R
5は独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(C1)で表される化合物として、一般式(C1−1)〜(C1−5)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有する請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
25℃における弾性定数K11とK33の平均値が12pN以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いるIPS型又はFFS型の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス素子に適した液晶組成物及びこの組成物を含有するアクティブマトリクス素子に関する。特に、誘電率異方性が正である液晶組成物並びにこれを含有するIPSモード、FFSモード、ECBモード、TNモード、OCBモード、PSAモード等の素子
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に用いられるようになっている。表示方式に基づいた代表的な分類はTN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、TFTを用いたVA(vertical alignment)型やPSA(polymer sustained alignment)型、水平配向モードとしてはIPS(in−plane switching)型、FFS(fringe field switching)型等がある。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は水分、空気、熱、光などの外的刺激に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であり、かつ低い電圧で駆動できる事が求められる。
【0003】
VA型、PSA型ディスプレイでは誘電率異方性(Δε)が負の液晶組成物が主に用いられており、TN型、STN型、IPS型、FFS型では主にΔεが正の液晶組成物が用いられている。これらの液晶組成物は、個々の表示素子にとってΔε及び屈折率異方性(Δn)を最適な値とするために、数種類から数十種類の化合物から構成される。素子としての高速応答性、低い動作電圧、広い動作温度範囲、高い信頼性を達成するため、液晶組成物はΔεの絶対値やΔn等を最適な値に維持しつつ、粘度(η)が小さく、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(T
N-I)、低温での析出や相変化が起こらない優れた保存安定性を備える必要があり、更に熱や光、水分等の刺激に対しても安定でなければならない。また、水平配向型ディスプレイのIPS型やFFS型は、原理的にVA型やPSA型のディスプレイと比較してコントラストで劣るという問題があるため、コントラスト改善に対する継続的な要求がある。コントラストはディスプレイのON輝度(最大透過率)とOFF輝度(黒表示の輝度)の比で表されるため、FFS型やIPS型ディスプレイにおいては、従来から要求される液晶組成物としての諸特性に加えて、表示素子とした際に高い透過率及び/又はより低減された黒輝度を実現可能な液晶組成物が要求されている。
【0004】
FFS型やIPS型ディスプレイにおけるOFF輝度(黒表示の輝度)は主に素子構成により左右されるが、液晶組成物の物性値にも影響され、一般的には小さいΔnと高い弾性定数を備える液晶組成物がOFF輝度の低減に有効である事が知られている。然しながらΔnが過度に小さい液晶組成物を用いると、セルギャップ(d)との積を一定に保つために厚いセルギャップが必要となり、応答速度の悪化を招くので好ましくない。一方で、高い弾性定数を有する液晶組成物を用いる場合、戻りの応答速度が高速化され、厚ギャップ化も不要となるため黒輝度低減の手法として好ましい。
【0005】
FFS型やIPS型ディスプレイの透過率は、液晶組成物の誘電率異方性を構成する2成分の値(ε//及びε⊥)の比率を変更することで改善することが知られている。特に、誘電的に正の液晶組成物を用いたFFS型表示素子の場合は、画素電極上に発生する略垂直方向の電界によって直上の液晶分子がチルトアップするため、透過率が低下するという問題がある。これを解決する方法として、誘電的に負の液晶組成物を用いる方法、誘電的に正であるがε⊥値が相対的に大きい液晶組成物を用いる方法などが提案されている。然しながら、誘電率的に負の液晶組成物を用いた場合、液晶組成物の粘性が大きいため応答速度が遅くなるという欠点に加えて、一般的に表示画像の焼付きが起こりやすいという問題を有している。後者は、近年様々な液晶組成物が開発されているが、液晶組成物の有する物理的、化学的特性はそれぞれトレードオフの関係になっており、すべてを満足する組成物を得ることは依然として難しい。特にFFSモードでは、TFT基板自体の電気容量の大きさや非対称な電界などから、短時間あるいは長時間のパターン表示後に予期せぬ焼付き現象が発生しやすく、ディスプレイの高信頼性化の観点から解決が望まれている。
すなわち、Δεの絶対値やΔn等を最適な値に調整可能であり、ηが小さく、高いT
N-Iを有し、低温での析出や相変化が起こらない優れた保存安定性を備え、熱や光及び水分等の刺激に対して安定であり、更に、高い弾性定数を備え、IPS型又はFFS型の液晶表示素子とした際に高いコントラストを発揮し、焼付きの発生を抑制することが可能な具体的な液晶組成物については、継続的に強い要求が存在している。
【0006】
IPS型やFFS型等の横電界型液晶表示を志向した液晶組成物として、例えば、式(1)や式(2)で表される誘電的に中性なアルケニル化合物を用いた液晶組成物が開示されている(特許文献1から3)。
【0007】
【化1】
【0008】
(Alkenylはアルケニル基であり、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルコキシアルキル基等である。)
しかしながら、これらの発明では高度化された現在の要求には十分に答えられておらず、前述した課題を同時に解決可能な液晶組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−529214
【特許文献2】特開2009−191264
【特許文献3】特開2006−328399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、Δεが正の組成物であって、広い温度範囲の液晶相を有し、ηが小さく、低温で析出や相変化を起こさず保存安定性が良好で、比抵抗や電圧保持率(VHR)が高く、熱や光に対して安定であり、更に、高い弾性定数及び相対的に高いε⊥を有する液晶組成物を提供することにある。更にこれを用いることで、高速応答性に優れ、動作温度範囲が広く、焼付きの発生が抑制され、コントラストに優れたFFS型、IPS型の液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々の液晶化合物及び種々の化学物質を検討し、特定の液晶化合物を組み合わせることにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、正の誘電異方性を有する化合物からなる成分(A)、負の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(B)、更に誘電的に中性な化合物からなる成分(C)を含有する組成物であって、成分(A)として、一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、成分(B)として、一般式(B1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、成分(C)として、一般式(C1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、組成物全体として正の誘電率異方性を有することを特徴とする液晶組成物を提供することを目的とする。更に当該組成物を使用したIPS型又はFFS型の表示素子を提供することを目的とする。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R
1〜R
5は相互に独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、Y
1〜Y
12は相互に独立してH又はFを表すが少なくとも2つはFであり、Y
13及びY
14は相互に独立してF又はClを表し、X
1はF、Cl、CN、CF
3又はOCF
3を表し、mは0又は1を表し、nは1、2又は3を表し、Zは−C
2H
4−、−C≡C−、−COO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は単結合を表し、環A及びBは相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4フェニレン基又は3−フルオロ−1,4−フェニレン基を表すが、nが2又は3の場合、複数のA、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の液晶組成物は、液晶温度範囲が広く、粘性が低く、低温で析出や相変化を起こさず保存安定性が良好で、熱や光に対する比抵抗や電圧保持率の変化が極めて小さいため、製品の実用性が高い。また、当該組成物を用いた液晶表示素子は動作温度範囲が広く、高速応答性、信頼性に優れ、保存安定性が良好である。特にFFS型又はIPS型の表示素子に用いた場合に、透過率が高く黒輝度が低減されるため高いコントラストを発揮し、更に焼付きの発生を抑制することができるため非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、
正の誘電異方性を有する化合物からなる成分(A)、負の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(B)、更に誘電的に中性な化合物からなる成分(C)を含有する組成物であって、
成分(A)として、一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、
成分(B)として、一般式(B1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、
成分(C)として、一般式(C1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、組成物全体として正の誘電率異方性を有することを特徴とする液晶組成物であり、更にこれを用いた液晶表示素子
【0017】
本明細書において、正の誘電率異方性を有する化合物とはΔεの値が1.5より大きい化合物をいい、負の誘電率異方性を有する化合物とはΔεの値が−1.5より小さい化合物をいい、誘電的に中性の化合物とはΔεの値が−1.5以上且つ1.5以下の化合物をいう。
【0018】
本発明の組成物は、誘電的に正の成分(A)として、一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を含有するが、一般式(A1)で表される化合物は1種を使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
(式中、R
1は炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、Y
1〜Y
12は相互に独立してH又はFを表すが少なくとも2つはFであり、X
1はF、Cl、CN、CF
3又はOCF
3を表す。)
一般式(A1)で表される化合物は、液晶組成物の正の誘電率異方性を上昇させ、屈折率異方性を適切に調節し、相溶性(低温安定性)を高め、更に組成物のε⊥の値を相対的に上昇させる目的でも用いることができ、好ましい化合物は以下の一般式(A1−1)〜(A1−7)で表される化合物で与えられる。
【0022】
(式中、R
1は前記一般式(A1)におけるR
1と同じ意味を表す。)
一般式(A1)で表される化合物の組成物中における好ましい含有量は、下限値として、2質量%であり、4質量%であり、6質量%であり、8質量%であり、上限値として、30質量%であり、26質量%であり、22質量%であり、18質量%であり、14質量%である。
【0023】
本発明の組成物は、誘電的に負の成分(B)として、一般式(B1)で表される化合物を含有するが、一般式(B1)で表される化合物は1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0025】
(式中、R
2、R
3は相互に独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、Y
13及びY
14は相互に独立してF又はClを表し、mは0又は1を表す。)
一般式(B1)で表される化合物は、液晶組成物のε⊥を高める目的で使用されるだけでなく、同時に高い信頼性や広いネマチック温度範囲、低い粘性や高い弾性定数などを与えることができ、好ましい化合物は以下の一般式(B1−1)〜(B1−4)で表される化合物で与えられる。
【0027】
(式中、R
3は前記一般式(B1)におけるR
3と同じ意味を表し、Alkylは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、Alkenylは炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表す。)
一般式(B1)の化合物の組成物中における好ましい含有量は、下限値として2質量%であり、4質量%であり、5質量%であり、7質量%であり、8質量%であり、上限値として、25質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、16質量%であり、15質量%であり、14質量%であり、12質量%であり、10質量%である。
【0028】
本発明の組成物は、誘電的に中性の成分(C)として、一般式(C1)で表される群から選ばれる誘電的に中性の化合物を含有する。一般式(C1)で表される化合物は1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0030】
(式中、R
4、R
5は相互に独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、nは1、2又は3を表し、Zは−C
2H
4−、−C≡C−、−COO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は単結合を表し、環A及びBは相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4フェニレン基又は3−フルオロ−1,4−フェニレン基を表すが、nが2又は3の場合、複数のA、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(C1)で表される好ましい化合物は以下の式(C1−1)〜(C1−11)で表される化合物で与えられる。
【0032】
(式中、R
4、R
5は独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。)
一般式(C1)の化合物の好ましい含有量は、下限値として、10質量%であり、14質量%であり、18質量%であり、22質量%であり、25質量%であり、28質量%であり、30質量%であり、上限値として、90質量%であり、85質量%であり、80質量%であり、75質量%であり、70質量%であり、66質量%であり、63質量%であり、60質量%であり、57質量%であり、55質量%である。
【0033】
本発明の組成物は、正の誘電率異方性を有する成分(A)として、一般式(A1)で表される化合物以外に、下記一般式(M)で表される化合物を任意に含有することができる。一般式(M)で表される化合物は、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
(式中、R
Mは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、n
Mは1、2又は3を表し、
G
Mは
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、の基(a)及び基(b)上の水素原子はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
Z
Mは−CH
2CH
2−、−CF
2O−、−COO−、−C≡C−又は単結合を表し、
G
M及びZ
Mが複数存在する場合は同一でも異なっていてもよく、
Y
M1及びY
M2は相互に独立してフッ素原子又は水素原子を表し、
X
Mはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基を表す。但し前記一般式(A1)で表される化合物を除く。)
一般式(M)で表される好ましい化合物は以下の一般式(M1)〜(M16)で表される化合物で与えられる。
【0038】
(式中、R
Mは前記一般式(M)におけるR
Mと同じ意味を表す。)
一般式(M1)〜(M16)で表される化合物はいずれも液晶表示素子の駆動電圧を低下させる目的で用いることができる。一般式(M)の化合物の好ましい含有量は、下限値として、2質量%であり、4質量%であり、6質量%であり、8質量%であり、上限値として、40質量%であり、35質量%であり、30質量%であり、26質量%であり、22質量%であり、18質量%であり、14質量%である。
【0039】
また、組成物中における一般式(A1)で表される化合物と一般式(M)で表される化合物との合計の含有量(すなわち、組成物中における成分(A)の含有量)は、好ましくは下限値として、2質量%であり、4質量%であり、6質量%であり、8質量%であり、好ましくは上限値として、30質量%であり、26質量%であり、22質量%であり、18質量%であり、14質量%である。
【0040】
本発明の組成物は、負の誘電率異方性を有する成分(B)として、一般式(B1)で表される化合物以外に、下記一般式(K)で表される化合物を任意に含有することができる。一般式(K)で表される化合物は、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
(式中、R
K1及びR
K2は相互に独立して炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、n
K1及びn
K2は相互に独立して0、1又は2を表すが、n
K1+n
K2は1又は2であり、Y
K1及びY
K2は相互に独立してフッ素原子又は塩素原子を表し、G
K1及びG
K2は相互に独立して、
【0044】
を表す。n
K1、n
K2が2の場合、複数のG
K1、G
K2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(K)で表される好ましい化合物は以下の一般式(K1)〜(K6)で表される化合物で与えられる。
【0046】
(式中、R
K1及びR
K2は前記一般式(K)におけるR
K1及びR
K2と同じ意味を表す。)
一般式(K1)〜(K6)で表される化合物はいずれも液晶表示素子の透過率を上昇させる目的で用いることができる。一般式(K)の化合物の好ましい含有量は、下限値として、3質量%であり、4質量%であり、6質量%であり、8質量%であり、上限値として、20質量%であり、17質量%であり、15質量%であり、13質量%であり、10質量%である。
【0047】
また、組成物中における一般式(B1)で表される化合物と一般式(K)で表される化合物との合計の含有量(すなわち、組成物中における成分(B)の含有量)は、好ましくは下限値として、2質量%であり、4質量%であり、6質量%であり、8質量%であり、好ましくは上限値として、30質量%であり、26質量%であり、22質量%であり、18質量%であり、14質量%である。
【0048】
本発明の組成物の総量に対しての一般式(A1)、(B1)、(C1)、(M)及び(K)で表される化合物の合計の好ましい含有量の下限値は、80%であり、85%であり、88%であり、90%であり、92%であり、93%であり、94%であり、95%であり、96%であり、97%であり、98%であり、99%であり、100%である。好ましい含有量の上限値は、100%であり、99%であり、98%であり、95%である。
【0049】
本願発明の組成物は、分子内に過酸(−CO−OO−)構造等の酸素原子同士が結合した構造を持つ化合物を含有しないことが好ましい。
【0050】
組成物の信頼性及び長期安定性を重視する場合にはカルボニル基を有する化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して5%以下とすることが好ましく、3%以下とすることがより好ましく、1%以下とすることが更に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0051】
UV照射による安定性を重視する場合、塩素原子が置換している化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して15%以下とすることが好ましく、10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0052】
分子内の環構造がすべて6員環である化合物の含有量を多くすることが好ましく、分子内の環構造がすべて6員環である化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることが更に好ましく、実質的に分子内の環構造がすべて6員環である化合物のみで組成物を構成することが最も好ましい。
【0053】
組成物の酸化による劣化を抑えるためには、環構造としてシクロヘキセニレン基を有する化合物の含有量を少なくすることが好ましく、シクロヘキセニレン基を有する化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0054】
粘度の改善及びT
N-Iの改善を重視する場合には、水素原子がハロゲンに置換されていてもよい2−メチルベンゼン−1,4−ジイル基を分子内に持つ化合物の含有量を少なくすることが好ましく、前記2−メチルベンゼン−1,4−ジイル基を分子内に持つ化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0055】
本願において実質的に含有しないとは、意図せずに含有する物を除いて含有しないという意味である。
【0056】
本発明における組成物は、更に一般式(Q)及び/又は一般式(R)で表される末端基を有する化合物を含有することができる。これらの化合物は、構造を適切に選択することによって液晶組成物の相溶性や熱・光に対する安定性、更には表示素子とした際の焼付き現象に代表される信頼性を改善することができる。
【0060】
(式中、RはH、O・又は炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を表し、波線は結合手を意味する。)
一般式(Q)で表される末端基を有する化合物は、具体的には、下記の一般式(Q−a)から一般式(Q−e)で表される化合物であることが好ましい。
【0062】
式中、R
Q1は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基を表し、R
Q2は炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は分岐鎖状アルキル基を表し、R
Q3は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシ基又は分岐鎖状アルコキシ基を表し、R
Q4は炭素原子数1から16の直鎖状アルキレン基又は分岐鎖状アルキレン基であって、当該アルキレン基中の1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−に置換されていてもよく、L
Qは炭素原子数1から8の直鎖状アルキレン基又は分岐鎖状アルキレン基を表し、W
1及びW
2は−CH
2−又はO原子を表し、排他的に−CH
2−であるか、又は排他的にO原子であることが好ましい。一般式(Q−a)から一般式(Q−e)で表される化合物中、一般式(Q−a)、(Q−c)及び一般式(Q−e)で表される化合物が更に好ましい。中でも、一般式(Q−e)で表される化合物を用いた場合、一般式(A1)、一般式(B1)及び一般式(C1)を同時に含有する液晶組成物において、優れた低温安定性や信頼性に関して相乗効果を発揮する点で特に好ましい。
【0063】
本願発明の組成物において、一般式(Q)で表される化合物を1種含有する事が好ましいが、2種以上を含有してもよい。含有量は0.001%から1%であることが好ましく、0.001%から0.1%が更に好ましく、0.001%から0.08%が特に好ましい。
【0064】
一般式(R)で表される末端基を有する化合物は、例えば(Tinuvin770、BASF)等の市販されている化合物を転用することもできるし、WO17/154590の段落[0036]〜[0037]に記載された、液晶組成物に好適に使用できる化合物を用いることもできる。
【0065】
本願発明の組成物において、一般式(R)で表される末端基を有する化合物は1種含有することが好ましく、1〜3種含有することがより好ましい。含有量は0.001%から0.5%であることが好ましく、0.001%から0.2%が更に好ましく、0.001%から0.1%が特に好ましい。
【0066】
本発明における組成物は、更に紫外線吸収剤を含有することもできる。使用可能な紫外線吸収剤は特に制限されないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系などの市販の紫外線吸収剤を使用することもできる。紫外線吸収剤は1種含有する事が好ましいが、2種以上を含有してもよい。含有量は0.001%から1%であることが好ましく、0.001%から0.1%が更に好ましく、0.001%から0.05%が特に好ましい。
【0067】
本発明の液晶組成物のT
N-Iは、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上が特に好ましい。
【0068】
本発明の液晶組成物のΔnは、ディスプレイの光学設計に応じて適切に選択することができるが、0.07〜0.16の範囲であることが好ましく、0.08〜0.14であることがより好ましく、0.09〜0.12の範囲であることが特に好ましい。
【0069】
本発明の液晶組成物の誘電率異方性は、Δεとε⊥との比によりその好ましい様態を特定することができる。ε⊥/Δεの値として、0.8以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.3以上がより更に好ましく、1.5以上が特に好ましい。
【0070】
本発明の組成物は、高分子安定化した液晶表示素子を作製するために、重合性化合物を含有することができる。使用できる重合性化合物として、光などのエネルギー線により重合が進行する光重合性モノマーなどが挙げられ、構造として、例えば、ビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体などの六員環が複数連結した液晶骨格を有する重合性化合物などが挙げられる。更に具体的には、一般式(XX)
【0072】
(式中、X
201及びX
202はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
Sp
201及びSp
202はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは2から7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)が好ましく、
Z
201は−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CY
1=CY
2−(式中、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、フッ素原子又は水素原子を表す。)、−C≡C−又は単結合を表し、
M
201は1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルコキシ基により置換されていても良い。)で表される二官能モノマーが好ましい。
【0073】
X
201及びX
202は、何れも水素原子を表すジアクリレート誘導体、何れもメチル基を有するジメタクリレート誘導体の何れも好ましく、一方が水素原子を表しもう一方がメチル基を表す化合物も好ましい。これらの化合物の重合速度は、ジアクリレート誘導体が最も早く、ジメタクリレート誘導体が遅く、非対称化合物がその中間であり、その用途により好ましい態様を用いることができる。PSA表示素子においては、ジメタクリレート誘導体が特に好ましい。
【0074】
Sp
201及びSp
202はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−を表すが、PSA表示素子においては少なくとも一方が単結合であることが好ましく、共に単結合を表す化合物又は一方が単結合でもう一方が炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−を表す態様が好ましい。この場合炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0075】
Z
201は、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0076】
M
201は任意の水素原子がフッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルコキシ基により置換されていても良い1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表すが、置換されていても良い1,4−フェニレン基又は単結合が好ましい。M
201が単結合以外の環構造を表す場合、Z
201は単結合以外の連結基も好ましく、M
201が単結合の場合、Z
201は単結合が好ましい。
【0077】
これらの点から、一般式(XX)において、Sp
201及びSp
202の間の環構造は、具体的には次に記載する構造が好ましい。
【0078】
一般式(XX)において、M
201が単結合を表し、環構造が二つの環で形成される場合において、Sp
201及びSp
202の間の環構造は次の式(XXa−1)から式(XXa−5)で表されることが好ましく、式(XXa−1)から式(XXa−3)がより好ましく、式(XXa−1)が特に好ましい。
【0080】
(式中、両端はSp
201又はSp
202に結合するものとする。)
これらの骨格を含む重合性化合物は重合後の配向規制力がPSA型液晶表示素子に最適であり、良好な配向状態が得られることから、表示ムラが抑制されるか、又は、全く発生しない。
【0081】
以上のことから、重合性モノマーとしては、一般式(XX−1)〜一般式(XX−4)が特に好ましく、中でも一般式(XX−2)が最も好ましい。
【0083】
(式中、ベンゼンはフッ素原子により置換されていても良く、SP
20は炭素原子数2から5のアルキレン基を表す。)
本発明の組成物にモノマーを添加する場合において、重合開始剤が存在しない場合でも重合は進行するが、重合を促進するために重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0084】
本発明の重合性化合物を含有した組成物は、これに含まれる重合性化合物が紫外線照射により重合することで液晶配向能が付与され、組成物の複屈折を利用して光の透過光量を制御する液晶表示素子に使用される。液晶表示素子として、AM−LCD(アクティブマトリックス液晶表示素子)、TN(ネマチック液晶表示素子)、STN−LCD(超ねじれネマチック液晶表示素子)、OCB−LCD及びIPS−LCD(インプレーンスイッチング液晶表示素子)に有用であるが、AM−LCDに特に有用であり、透過型あるいは反射型の液晶表示素子に用いることができる。
【0085】
本発明の組成物を用いた液晶表示素子は高速応答性と信頼性に優れ、広い動作温度範囲を実現した有用なものであり、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に好適に使用できる。また、FFS型又はIPS型表示素子に使用した場合に高い透過率と低減された黒輝度による優れたコントラストを実現できることから、IPS型及びFFS型表示素子用の液晶組成物として特に適している。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0087】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0088】
T
N-I :ネマチック相から等方相への転移温度(℃)
T
-N :スメクチック相(又は固体層)からネマチック相への転移温度(℃)
Δn :25℃における屈折率異方性
n
o :25℃における常光屈折率
アッベ屈折計を用い、589nm光源に対する屈折率を測定した。
【0089】
Δε :25℃、1kHzにおける誘電率異方性
ε⊥ :25℃、1kHzにおける垂直方向の誘電率
配向処理の異なる2種類のセル(ホメオトロピック配向、ホモジニアス配向、基板間厚み10ミクロン)に液晶を封入し、1KHzの交流電界を印加してキャパシタンスを測定してεllとε⊥を求め、その差分からΔεを決定した。
【0090】
η :20℃におけるバルク粘度(mPa・s)
γ
1 :25℃における回転粘性係数(mPa・s)
Vth:厚さ6ミクロンのTNセルに液晶を封入し、25℃、クロスニコル偏光板下において透過率が10%変化する電圧を測定した。
【0091】
K
11、K
33:厚さ30ミクロンのホモジニアス配向セルに液晶を封入し、1KHzの電圧(V)を0から30Vまで印加して25℃における電気容量(C)の変化を計測し、得られたC−VカーブのフィッティングからK
11とK
33を求めた。
【0092】
K
22:厚さ20ミクロンのTNセルに1KHzの電圧(V)を0から30Vまで印加して得られる25℃での電気容量(C)の変化を計測し、得られたC−Vカーブの閾値電圧(Vc)から、下記式に従いK
22を求めた。
K
22 = 〔K
33-4[(Vc/π)
2×ε
0・Δε-K
11]〕/2
(式中、VcはTNセルにおける閾値電圧(V)をあらわし、Πは円周率を表し、ε0は真空の誘電率をあらわす。)
透過率(T):液晶組成物を封入したFFSセル(セルギャップ3.5ミクロン、電極幅3ミクロン、電極間距離4ミクロン、SiN
x絶縁層厚み4000Å、配向膜は電極長手方向から5°傾けてラビング処理)に、25℃において、クロスニコル偏光板下で60Hzの矩形派電圧を印加した際のV−Tカーブを測定し、最大透過率を決定した。バックライトには約5,000カンデラ/平方メールのLED面光源を用いた。
【0093】
VHR:液晶組成物を封入した配向膜付きガラスセル(セルギャップ3.5ミクロン、アンチパラレル、配向膜は日産化学製のSE−7492を使用)を、周波数3Hz,印加電圧1V、印加パルス64μs、60℃の条件で測定した際の電圧保持率(%)。
【0094】
耐熱試験後VHR:上述の液晶セルを120℃の恒温槽中に1時間保持した後、前記方法と同様に測定した際の電圧保持率(%)。
【0095】
耐光試験後VHR:上述の液晶セルを約30,000カンデラ/平方メートルのLEDバックライト直上に配置し、100時間LEDを照射した際の電圧保持率(%)。
【0096】
焼付き特性:透過率(T)測定と同様に初期のV−Tカーブを測定した。得られたカーブから透過率(T)が98%となる電圧(V98)及び23%となる電圧(V23)を決定した。続いて、バックライト照射下でV98を25℃で48時間印加した。その後、V23を印加してストレス後透過率(T
st)を測定し、ストレス前後でのV23印加における透過率の比(T
st/T)を求めた。
【0097】
低温保存性(LTS):低温での保存性評価は、組成物を調製後、厚さ3.5ミクロンのFFSセルに組成物を封入し、これを−30℃又は−40℃の温度制御式試験槽の中で保存し、定期的に目視で組成物の相変化又は析出物の発生を観察した。たとえば「>480hr」は480時間経過時点で相変化及び析出が確認されなかったことを意味する。
(環構造)
【0098】
【化21】
【0099】
(側鎖構造及び連結構造)
【0100】
【表1】
【0101】
(比較例1〜2)
特開2009−191264の例2に記載された液晶組成物、及び特開2006−328399の例33に記載された液晶組成物を調整した。これらを選択した理由は、当該組成物がIPS型液晶表示素子用に好適に使用できると記載されているからである。物性値は当該文献に記載の値をそのまま転記し、ε⊥/Δεは新たに算出した。なお、表中の含有率は組成物に対する質量%を表す。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例1〜4)
以下に本願の構成要件を満足する組成物を調整しその効果を確認した。なお、表中の含有率は組成物に対する質量%を表す。
【0105】
【表4】
【0106】
上表に記載の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。実施例1の組成物は広い液晶温度範囲、大きいε⊥/Δε、極めて小さいγ
1、高いK
avgを有していた。また、VHR及び耐熱試験後VHRはほぼ変化がなく高い値を示した。当該液晶組成物を封入したFFSセルを電気光学特性測定装置(シンテック、OPTIPRO)を用いて測定したところ、高い透過率、高いコントラストを示し、応答速度は十分に高速であった。また、当該セルのLTS試験を行った結果、−30℃、−40℃ともに720時間経過時点でも析出等の発生は見られなかった。実施例1の液晶組成物はIPS型又はFFS型液晶表示素子に好適に使用できる。
【0107】
同様にして実施例2〜4の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
実施例2〜4の組成物も、実施例1と同様に広い液晶温度範囲、大きいε⊥/Δε、極めて小さいγ
1、高いK
avgを有していた。また、VHR及び耐熱試験後VHRはほぼ変化がなく高い値を示した。当該液晶組成物を封入したFFSセルを電気光学特性測定装置(シンテック、OPTIPRO)を用いて測定したところ、高い透過率、高いコントラストを示し、応答速度は十分に高速であった。また、当該セルのLTS試験を行った結果、−30℃、−40℃ともに720時間経過時点まで析出等の発生は見られなかった。
【0112】
実施例1及び比較例1〜2の液晶組成物をそれぞれ封入したFFSセルの最大透過率及びコントラストの測定結果を示す。なお、最大透過率は、比較例2の透過率を100%として規格化した。コントラストは、電圧オフ時透過率(黒表示)に対する最大透過率の比として算出した。実施例1の液晶組成物は、高い透過率及び高いコントラストを示すことがわかった。
【0113】
【表8】
【0114】
実施例2〜4の液晶組成物についても同様にFFSセルの透過率及びコントラストを測定したところ、実施例1と同様に比較例1〜2より有意に高い透過率と大きいコントラストを示すことが確認された。
(実施例5〜8)
実施例1〜4の組成物に一般式(Q−e)で表される成分として、下記の式(Q−e−1)で表される化合物を500ppm添加した液晶組成物をそれぞれ調製した(実施例5〜8)。得られた組成物の物性値及びFFSセルにおける透過率とコントラストは式(Q−e−1)の化合物添加前の液晶組成物と同等であった。
【0115】
【化22】
【0116】
次いで、実施例1〜8及び比較例1、2の組成物についてLTS、VHR及び焼付き特性を評価した結果を下表に示す。
【0117】
【表9】
【0118】
実施例1〜4の組成物は、耐熱試験後及び耐光試験後において比較例1及び2よりも高いVHRを示した。また、焼付き特性も比較例に比べて小さい値を示しており、ストレス前後でV−Tカーブの変化が小さく、焼付きが発生しにくいことがわかる。また、式(Q−e−1)を添加した実施例5〜8の組成物は、実施例1〜4よりもLTSの保持時間が長くなっており、更に耐熱及び耐光試験VHRが大幅に改善している。また、焼付き特性は1.0であり、ストレスによる焼付き現象が全く発生しなかったことがわかる。
【0119】
以上より、本願発明の組成物は、広い温度範囲の液晶相を有し、粘性が小さく、低温での溶解性が良好で、比抵抗や電圧保持率が高く、熱や光に対して安定であり、更に、高い弾性定数及び相対的に高いε⊥とε⊥/Δεを有しており、液晶表示素子とした際に、高速応答性や信頼性に優れ、動作温度範囲が広く、透過率やコントラストに優れるため、FFS型又はIPS型の液晶表示素子用の液晶組成物として好適に使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2020年8月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電異方性を有する化合物からなる成分(A)、負の誘電率異方性を有する化合物からなる成分(B)、更に誘電的に中性な化合物からなる成分(C)を含有する組成物であって、
成分(A)として、一般式(A1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、
成分(B)として、一般式(B1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種
と、一般式(K)で表される化合物を少なくとも1種とを含有し、
成分(C)として、一般式(C1)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有し、組成物全体として正の誘電率異方性を有することを特徴とする液晶組成物。
【化1】
(式中、R
1〜R
5は相互に独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、Y
1〜Y
12は相互に独立してH又はFを表すが少なくとも2つはFであり、Y
13及びY
14は
Fを表し、X
1は
F、CN、CF
3又はOCF
3を表し、mは0又は1を表し、nは1、2又は3を表し、Zは−C
2H
4−、−C≡C−、−COO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は単結合を表し、環A及びBは相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4フェニレン基又は3−フルオロ−1,4−フェニレン基を表すが、nが2又は3の場合、複数のA、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】
(式中、RK1及びRK2は相互に独立して炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、nK1及びnK2は相互に独立して0、1又は2を表すが、nK1+nK2は1又は2であり、YK1及びYK2はフッ素原子を表し、GK1及びGK2は相互に独立して、【化3】
を表す。nK1、nK2が2の場合、複数のGK1、GK2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(A1)で表される化合物として、下記一般式(A1−1)〜(A1−7)で表される化合物を少なくとも1種含有する請求項1記載の液晶組成物。
【化4】
(式中、R
1は前記一般式(A1)におけるR
1と同じ意味を表す。)
【請求項3】
前記一般式(B1)で表される化合物として、一般式(B1−1)〜(B1−4)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【化5】
(式中、R
3は前記一般式(B1)におけるR
3と同じ意味を表し、Alkylは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、Alkenylは炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表す。)
【請求項4】
更に前記成分(A)として一般式(M)で表される正の誘電率異方性を有する化合物を少なくとも1種含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化6】
(式中、R
Mは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜5の環状アルキル基、炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数2〜5の直鎖状アルケニル基を表し、n
Mは1、2又は3を表し、
G
Mは
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、の基(a)及び基(b)上の水素原子はそれぞれ独立してシアノ基
又はフッ素原子で置換されていても良く、
Z
Mは−CH
2CH
2−、−CF
2O−、−COO−、−C≡C−又は単結合を表し、
G
M及びZ
Mが複数存在する場合は同一でも異なっていてもよく、
Y
M1及びY
M2は相互に独立してフッ素原子又は水素原子を表し、
X
Mはフッ素原子
、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基を表す。但し前記一般式(A1)で表される化合物を除く。)
【請求項5】
前記一般式(C1)で表される化合物として、一般式(C1−1)〜(C1−11)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも一種含有する請求項1〜
4のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化7】
(式中、R
4、R
5は独立して炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(C1)で表される化合物として、一般式(C1−1)〜(C1−5)で表される群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有する請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
25℃における弾性定数K11とK33の平均値が12pN以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いるIPS型又はFFS型の液晶表示素子。
【国際調査報告】