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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年1月2日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】スパッタ成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20201120BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   C23C14/35 B
   C23C14/34 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2020-527680(P2020-527680)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-123681(P2018-123681)
(32)【優先日】2018年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】阪上 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029CA05
4K029DC12
4K029DC39
4K029DC40
4K029DC42
4K029DC43
4K029DC46
(57)【要約】
本発明は、マグネトロンスパッタリングによって成膜を行う際にスパッタリングターゲットの外周部において非エロージョン領域の発生を抑制することができる技術を提供する。本発明は、真空中においてマグネトロンスパッタリング法によって一つの成膜対象物に対して成膜を行うスパッタ成膜装置である。本発明では、一つのスパッタリングターゲット7に対してスパッタ面7aと反対側に配置され、放電時に当該スパッタリングターゲット7のスパッタ面7aに沿う方向に移動するマグネトロン発生用の磁石装置10と、スパッタリングターゲット7の外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部21と、当該内側シールド部21の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部22とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中においてマグネトロンスパッタリング法によって一つの成膜対象物に対して成膜を行うスパッタ成膜装置であって、
一つのスパッタリングターゲットに対してスパッタ面と反対側に配置され、放電時に当該スパッタリングターゲットのスパッタ面に沿う方向に移動するマグネトロン発生用磁石装置と、
前記スパッタリングターゲットの外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部と、
当該内側シールド部の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部とを有するスパッタ成膜装置。
【請求項2】
前記内側シールド部に、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面を覆うように重なる重複部が設けられている請求項1記載のスパッタ成膜装置。
【請求項3】
前記内側シールド部の重複部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の外周部の全域にわたって設けられている請求項2記載のスパッタ成膜装置。
【請求項4】
前記内側シールド部の重複部が、矩形状に形成された前記スパッタリングターゲットの対向する一対の角部と重なるように設けられている請求項2記載のスパッタ成膜装置。
【請求項5】
前記内側シールド部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の方向に張り出した張出部が設けられている請求項1記載のスパッタ成膜装置。
【請求項6】
前記内側シールド部の張出部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の外周部の全域にわたって設けられている請求項5記載のスパッタ成膜装置。
【請求項7】
前記内側シールド部の張出部が、矩形状に形成された前記スパッタリングターゲットの対向する一対の角部に設けられている請求項5記載のスパッタ成膜装置。
【請求項8】
前記スパッタリングターゲットは、その外径が前記成膜対象物の外径より大きくなるように形成されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスパッタ成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、特にマグネトロンスパッタリングによって成膜を行うスパッタ成膜装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネトロンスパッタリング装置においては、磁場を発生させる磁石装置の構造上スパッタリングターゲット(以下、適宜「ターゲット」という。)上に生じる磁場が不均一になるため、磁束密度の高い部分にスパッタガスのイオンが集中し、その部分が磁束密度の低い部分に比べて早く削られるという問題がある。
【0003】
このようなターゲットが局所的に削られる部分(エロージョン)が生じることを防ぐため、従来より磁石装置を移動させながらスパッタリングを行うようにしている。
【0004】
しかし、このような手段を用いてスパッタリングを行うと、放電によって生成され磁石装置による磁場に捕捉されたプラズマが、電気的に接地された導電部材と接触した場合にプラズマ中のイオンの電荷が導電部材を通って接地部位に流れ、プラズマが消失する。このような事態を回避するために外周磁石のリングの外周全体がスパッタ面の外周部より内側に位置する範囲内で磁石装置を移動させる必要がある。
【0005】
その結果、ターゲットのスパッタ面の外周部にはプラズマが到達せず、スパッタされない非エロージョン領域が残るという問題がある。
このようなターゲットの非エロージョン領域にスパッタ粒子が付着すると、異常放電などにより剥離しパーティクルの発生原因となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−92025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、マグネトロンスパッタリングによって成膜を行う際にスパッタリングターゲットの外周部において非エロージョン領域の発生を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、真空中においてマグネトロンスパッタリング法によって一つの成膜対象物に対して成膜を行うスパッタ成膜装置であって、一つのスパッタリングターゲットに対してスパッタ面と反対側に配置され、放電時に当該スパッタリングターゲットのスパッタ面に沿う方向に移動するマグネトロン発生用磁石装置と、前記スパッタリングターゲットの外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部と、当該内側シールド部の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部とを有するスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部に、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面を覆うように重なる重複部が設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部の重複部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の外周部の全域にわたって設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部の重複部が、矩形状に形成された前記スパッタリングターゲットの対向する一対の角部と重なるように設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の方向に張り出した張出部が設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部の張出部が、前記スパッタリングターゲットのスパッタ面の外周部の全域にわたって設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記内側シールド部の張出部が、矩形状に形成された前記スパッタリングターゲットの対向する一対の角部に設けられているスパッタ成膜装置である。
本発明は、前記スパッタリングターゲットは、その外径が前記成膜対象物の外径より大きくなるように形成されているスパッタ成膜装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、放電時に生成され磁石装置による磁場に捕捉されたプラズマが、ターゲットの外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部によって遮られるため、内側シールド部の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部に到達して接触することが阻止される。
【0010】
その結果、本発明によれば、プラズマ中のイオンの電荷が接地電位の外側シールド部に接触することによるプラズマの消失が回避されるため、ターゲットのスパッタ面の外周部にプラズマが到達し、これによりターゲットのスパッタ面の外周部における非エロージョン領域の発生を抑制することができるので、ターゲットの非エロージョン領域に付着したスパッタ粒子の剥離に起因する成膜特性の低下を防止することができる。
【0011】
本発明において、内側シールド部に、スパッタリングターゲットのスパッタ面を覆うように重なる重複部又はスパッタリングターゲットのスパッタ面の方向に張り出した張出部が設けられている場合には、この重複部によってプラズマの外側シールド部への到達をより確実に阻止することができるので、プラズマの消失に起因するターゲットのスパッタ面の外周部における非エロージョン領域の発生をより抑制して非エロージョン領域を小さくすることができるとともに、スパッタ粒子のターゲットの非エロージョン領域への付着を阻止することができるので、スパッタ粒子の剥離に起因する成膜特性の低下をより一層防止することができる。
【0012】
この場合、内側シールド部の重複部又は張出部が、ターゲットの外周部の全域にわたって設けられている場合には、プラズマの外側シールド部への到達を阻止する能力並びにスパッタ粒子のターゲットの非エロージョン領域への付着阻止能力を向上させることができるので、プラズマの消失に起因するターゲットのスパッタ面の非エロージョン領域の発生をターゲットの外周部の全域にわたって抑制して非エロージョン領域を小さくすることができるとともに、スパッタ粒子のターゲットの非エロージョン領域への付着をターゲットのスパッタ面の外周部の全域にわたって阻止することができる。
【0013】
また、内側シールド部の重複部が、矩形状に形成されたターゲットの対向する一対の角部と重なるように設けられている場合又は張出部が矩形状に形成されたターゲットの対向する一対の角部に設けられている場合には、例えばプラズマの軌道がターゲットの一対の角部において部分的にターゲットからはみ出す場合等において、ターゲットのスパッタ面の外周部における非エロージョン領域の発生を確実で且つ少ない材料でより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)(b):本発明に係るスパッタ成膜装置の第1例を示すもので、図1(a)は、内部構成を示す部分断面図、図1(b)は、要部の内部構成を示す平面図
図2】(a)(b):本発明に係るスパッタ成膜装置の第2例を示すもので、図2(a)は、内部構成を示す部分断面図、図2(b)は、要部の内部構成を示す平面図
図3】(a)(b):本発明に係るスパッタ成膜装置の第3例の目的を説明するための図
図4】同スパッタ成膜装置の第3例の要部の内部構成を示す平面図
図5】(a)(b):本発明に係るスパッタ成膜装置の第4例を示すもので、図5(a)は、内部構成を示す部分断面図、図5(b)は、要部の内部構成を示す平面図
図6】本発明に係るスパッタ成膜装置の第5例の内部構成を示す平面図
図7】複数の磁石装置を用いたスパッタ成膜装置の例を示す部分断面図
図8】同複数の磁石装置を用いたスパッタ成膜装置の例の要部の内部構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)(b)は、本発明に係るスパッタ成膜装置の第1例を示すもので、図1(a)は、内部構成を示す部分断面図、図1(b)は、要部の内部構成を示す平面図である。
【0016】
本例のスパッタ成膜装置1は、マグネトロンスパッタリング方式のもので、後述するように接地電位にされた真空槽2を有している。
【0017】
図1(a)に示すように、真空槽2は、真空槽2内の真空排気を行う真空排気装置3に接続されるとともに、真空槽2内にアルゴン(Ar)ガス等のスパッタガスを導入可能なスパッタガス源4に接続されている。
【0018】
真空槽2内には、基板ホルダ5に保持された基板(成膜対象物)6が配置されるようになっており、この基板6と対向するように、バッキングプレート8に取り付けられたターゲット7が設けられている。
【0019】
図1(a)(b)に示すように、ターゲット7は、その外径が基板6の外径より大きくなるように形成されている。また、ターゲット7の外径よりバッキングプレート8の外径が大きくなるように設定されている。
【0020】
このターゲット7は、例えば金属や金属酸化物からなり、真空槽2内に露出されスパッタリングされるスパッタ面7aが基板6と対向するように配置されている。
【0021】
バッキングプレート8は、絶縁物8aを介して真空槽2の壁面に取り付けられ、これによりバッキングプレート8は真空槽2に対して電気的に絶縁されている。
【0022】
バッキングプレート8は電源装置9に電気的に接続され、このバッキングプレート8を介してターゲット7に対して所定の電力(電圧)を印加するように構成されている。
【0023】
電源装置9からターゲット7に印加する電力の種類は特に限定されるものではなく、直流、交流(高周波、パルス状のものも含む)のいずれであってもよい。
【0024】
ターゲット7(バッキングプレート8)の外周部の周囲には、以下に説明する内側シールド部21と外側シールド部22が設けられている。
【0025】
図1(b)に示すように、本例の内側シールド部21及び外側シールド部22は、それぞれターゲット7及びバッキングプレート8を取り囲むように設けられている。
【0026】
ここで、内側シールド部21は、例えば酸化アルミニウム(Al23)等の絶縁性の材料やチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ステンレス等の導電性の金属材料からなるもので、ターゲット7(バッキングプレート8)の外周部に近接配置されている。
【0027】
そして、この内側シールド部21は、真空槽2内において他の部分に対して絶縁され、その電位が浮遊電位となるように設定されている。
【0028】
本例の内側シールド部21は、矩形の枠形状に形成され(図1(b)参照)、その先端部(図1(a)中に示す上部)がターゲット7のスパッタ面7aより基板6側に突出して真空槽2の後述する磁石装置10側の内壁2aに対する距離がスパッタ面7aに対する距離より大きくなるように構成されている。
【0029】
一方、外側シールド部22は、例えばチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ステンレス等の導電性の金属等の材料からなり、内側シールド部21の周囲に設けられている。
【0030】
そして、本例の外側シールド部22は、矩形の枠形状に形成され(図1(b)参照)、その先端部(図1(a)中に示す上部)がターゲット7のスパッタ面7aより基板6側に突出して真空槽2の後述する磁石装置10側の内壁2aに対する距離がスパッタ面7aに対する距離より大きくなるように構成されている。
【0031】
この外側シールド部22は、例えば真空槽2とともに接地電位に設定され、スパッタ粒子を基板6に導くための所謂アースシールドの役割を果たすものである。
【0032】
バッキングプレート8の裏面側には磁石装置10が設けられている。
図1(a)(b)及び後述する図3(a)に示すように、磁石装置10は、ターゲット7のスパッタ面7a上に磁場を発生させる向きで設置された中心磁石11と、中心磁石11の周囲に連続的な形状で設置された外周磁石12とを有している。
【0033】
中心磁石11はバッキングプレート8と平行な磁石固定板13上に例えば長方体形状に配置され、外周磁石12は磁石固定板13上で中心磁石11の周縁部から所定距離をおいて環状に形成され、中心磁石11を取り囲むように配置されている。
【0034】
中心磁石11の周囲を取り囲む環状の外周磁石12は、必ずしも一つの継ぎ目のない環形状であることを意味しない。すなわち、中心磁石11の周囲を取り囲む形状であれば、複数の部品から構成されていてもよいし、ある部分に直線的な形状を有していてもよい。また、閉じた円環又は円環を閉じたまま変形させた形状でもよい(本例では、矩形形状のものが示されている。)。
なお、本例の磁石装置10は、外周磁石12(磁石固定板13)の外径がターゲット7の外径より小さくなるようにその寸法が設定されている。
【0035】
外周磁石12と中心磁石11は、互いに異なる極性の磁極を対向させて配置されている。すなわち、中心磁石11と外周磁石12はターゲット7のスパッタ面7aに対して互いに異なる極性の磁極を向けるように配置されている。
【0036】
磁石装置10の磁石固定板13の裏面側には、例えばXYステージ等の移動装置14が配置され、磁石装置10は移動装置14に取り付けられている。
移動装置14は制御部15に接続され、制御部15からの制御信号によって、磁石装置10をターゲット7のスパッタ面7aに沿って中心磁石11の延びる方向(長手方向)に対して直交する方向に往復移動させるように構成されている。
【0037】
本例では、制御部15は、磁石装置10を、外周磁石12の外周部全体がターゲット7のスパッタ面7aの外周部より内側に入る位置と、外周磁石12の外周部の一部(本例では磁石装置10の移動方向側の部分121及び122)がターゲット7のスパッタ面7aの外周部の外側にはみ出る位置との間を往復移動させるように構成されている(図1(a)参照)。
【0038】
そして、上述した内側シールド部21との関係においては、磁石装置10は、外周磁石12の外周部全体がターゲット7のスパッタ面7aの周囲を取り囲む内側シールド部21の内周部に対して内側に入る位置と、外周磁石12の外周部の一部(本例では磁石装置10の移動方向側の部分121及び122)が内側シールド部21の内周部に対して外周部側にはみ出る位置との間で移動するよう構成されている。
【0039】
このような構成を有する本例において、基板6上にスパッタリングによって成膜を行う場合には、真空槽2内を真空排気するとともに、真空槽2内にスパッタガスを導入し、電源装置9からバッキングプレート8を介してターゲット7に所定の負電圧を印加する。
【0040】
そして、上述したように、磁石装置10を、外周磁石12の外周部全体がターゲット7のスパッタ面7aの周囲を取り囲む内側シールド部21の内周部に対して内側に入る位置と、外周磁石12の外周部の一部が内側シールド部21の内周部に対して外周部側にはみ出る位置との間で往復移動させる。
【0041】
以上の動作により、ターゲット7と基板6の間で放電が生じ、ターゲット7上のスパッタガスが電離され、プラズマ化する。
このプラズマ中に存在するスパッタガスのイオンは、磁石装置10によって発生させた磁場に捕捉される。
【0042】
本例では、ターゲット7に負電圧が印加されており、スパッタガスのイオンは負電位のターゲット7のスパッタ面7aに衝突し、ターゲット材料の粒子(スパッタ粒子)を弾き飛ばす。
このスパッタ粒子が、上述した基板6の表面に到達して付着し、ターゲット材料の膜が基板6に形成される。
【0043】
一方、ターゲット7のスパッタ面7aから弾き飛ばされたスパッタ粒子の一部は、ターゲット7のスパッタ面7aに再付着することになる。
【0044】
以上述べたような本例のスパッタ成膜装置1にあっては、放電時に生成され磁石装置10による磁場に捕捉されたスパッタガスのプラズマが、ターゲット7の外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部21によって遮られるため、内側シールド部21の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部22に到達して接触することが阻止される。
【0045】
その結果、本例によれば、プラズマ中のイオンの電荷が接地電位の外側シールド部22に接触することによるプラズマの消失が回避されるため、ターゲット7のスパッタ面7aの外周部にプラズマが到達し、これによりターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生を抑制することができるので、ターゲット7の非エロージョン領域に付着したスパッタ粒子の剥離に起因する成膜特性の低下を防止することができる。
【0046】
図2(a)(b)は、本発明に係るスパッタ成膜装置の第2例を示すもので、図2(a)は、内部構成を示す部分断面図、図2(b)は、要部の内部構成を示す平面図である。以下、上記第1例と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0047】
図2(a)(b)に示すように、本例のスパッタ成膜装置1Aは、ターゲット7のスパッタ面7aを覆うように重なる重複部21aが設けられている内側シールド部21Aを有している。
【0048】
ここで、内側シールド部21Aの重複部21aは、ターゲットのスパッタ面7aに対して若干の隙間を有する矩形枠状に形成され、その開口部の縁部21bがターゲット7の外径より若干小さい内径を有するように構成されている。
【0049】
そして、これにより、本例の内側シールド部21Aの重複部21aは、ターゲット7のスパッタ面7aの外周部を全域にわたって覆うように形成されている。
【0050】
このような構成を有する本例によれば、ターゲット7の外周部の全域にわたって設けられた内側シールド部21Aの重複部21aによってプラズマの外側シールド部22への到達をその内周部の全域にわたって確実に阻止することができるので、プラズマの消失に起因するターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生をターゲット7の外周部の全域にわたって抑制して非エロージョン領域を小さくすることができる。また、スパッタ粒子のターゲット7の非エロージョン領域への付着をターゲット7のスパッタ面7aの外周部の全域にわたって阻止することができるので、スパッタ粒子の剥離に起因する成膜特性の低下をより一層防止することができる。
【0051】
その他の作用効果については上述した例と同一であるのでその詳細な説明は省略する。
【0052】
図3(a)(b)は、本発明に係るスパッタ成膜装置の第3例の目的を説明するための図である。
また、図4は、同スパッタ成膜装置の第3例の要部の内部構成を示す平面図である。以下、上記第1、2例と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0053】
この種のマグネトロンスパッタリング装置では、磁石装置として、図3(a)に示す上述した磁石装置10のように、長方体状の中心磁石11と枠状の外周磁石12を組み合わせたものを用いた場合に、以下のような課題がある。
【0054】
すなわち、このような磁石装置10を用いてスパッタリングを行うと、スパッタ時の放電によって生成されたプラズマ中のイオンは、磁石装置10によって発生させた磁場トラックに捕捉されて、磁石装置10に対応する軌道を描いて運動する。
この場合、磁石装置10は矩形状に形成されていることから、発生する磁場トラックも矩形に近い形状になる。
【0055】
しかし、実際の装置では、図3(a)(b)に示すように、放電によって生成されたプラズマ30中のイオンは、磁石装置10の例えば外周磁石12の短辺12s側から長辺12l側に方向を変えて移動する際にプラズマ30のプラズマ密度が高くなること等の理由により、磁石装置10の外周磁石12の短辺12s側から長辺12l側にイオンが方向を変えて移動する角部12c、12d(対応するターゲット7の短辺7s側から長辺7l側にイオンが方向を変えて移動する角部7c、7d)において生ずる、プラズマ30の外側に張り出す形状の部分31、32に沿って運動をすることになる。
【0056】
その結果、このようなプラズマ30の外側に張り出す形状の部分31、32に沿ってイオンが運動すると、例えばアースシールド等の接地電位の導電部材に接触するとプラズマ30中のイオンの電荷が導電部材を通って接地部位に流れ、プラズマ30の一部が消失してしまい、ターゲット7のスパッタ面7a(図1a参照)においてスパッタされない非エロージョン領域が残るという課題がある。
【0057】
図4は、上述した課題を解決するための手段を示すものである。
図4に示すように、第3例のスパッタ成膜装置1Bにおいては、内側シールド部21Bにおいて、矩形状に形成されたターゲット7の対向する一対の角部7c、7dと重なるように重複部21c、21dを設けるようにしたものである。
【0058】
特に本例の場合は、内側シールド部21Bにおいて、上述したプラズマ30の外側に張り出す形状の部分31、32に対応する、ターゲット7の対向する一対の角部7c、7d、すなわち、図3(a)(b)に示す磁石装置10の外周磁石12の短辺12s側から長辺12l側にイオンが方向を変えて移動する角部12c、12dにそれぞれ対応するターゲット7の角部7c、7dと重なるようにそれぞれ重複部21c、21dが設けられている。
【0059】
このような構成を有する本例によれば、ターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生を確実で且つ少ない材料でより効果的に抑制することができる。
【0060】
図5(a)(b)は、本発明に係るスパッタ成膜装置の第4例を示すもので、図5(a)は、内部構成を示す部分断面図、図5(b)は、要部の内部構成を示す平面図である。
【0061】
また、図6は、本発明に係るスパッタ成膜装置の第5例の内部構成を示す平面図である。以下、上記第1例と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0062】
図5(a)(b)に示すように、本例のスパッタ成膜装置1Cは、ターゲット7のスパッタ面7aの方向に張り出した張出部23aが設けられている内側シールド部23を有している。
【0063】
ここで、内側シールド部23の張出部23aは、ターゲット7のスパッタ面7aに対して若干の隙間を有する矩形枠状に形成され、その開口部の縁部23bがターゲット7の外径より若干大きい内径を有するように構成されている。
【0064】
すなわち、本例の内側シールド部23の張出部23aは、上述した第2例と異なり、ターゲット7のスパッタ面7aと重ならないように設けられている。
【0065】
このような構成を有する本例においても、ターゲット7の外周部の全域にわたって設けられた内側シールド部23の張出部23aによってプラズマの外側シールド部22への到達をその内周部の全域にわたって確実に阻止することができるので、プラズマの消失に起因するターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生をターゲット7の外周部の全域にわたって抑制して非エロージョン領域を小さくすることができる。
【0066】
一方、図6に示すように、第5例のスパッタ成膜装置1Dにおいては、内側シールド部23において、矩形状に形成され、かつ、上述したプラズマ30の外側に張り出す形状の部分31、32に対応する、ターゲット7の対向する一対の角部7c、7dの近傍に、ターゲット7のスパッタ面7aの方向に張り出した張出部23c、23dを設けるようにしたものである。
この場合、張出部23c、23dは、ターゲット7のスパッタ面7aと重ならないように設けられている。
【0067】
このような構成を有する第4例及び第5例によれば、ターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生を確実で且つより少ない材料で効果的に抑制することができる。
【0068】
その他の作用効果については上述した例と同一であるのでその詳細な説明は省略する。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施の形態では一つの磁石装置を用いた場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、以下に説明するように、複数の磁石装置を並べて配置する場合にも適用することができる。
【0070】
図7は、複数の磁石装置を用いたスパッタ成膜装置の例を示す部分断面図、図8は、同複数の磁石装置を用いたスパッタ成膜装置の例の要部の内部構成を示す平面図である。以下、上記例と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0071】
図7及び図8に示すように、本例のスパッタ成膜装置1Eは、図1(a)(b)に示す第1例のスパッタ成膜装置1と同一の内側シールド部21と外側シールド部22が設けられた真空槽2を有するもので、この真空槽2内のバッキングプレート8の裏面側に、磁石装置10aが設けられている。
【0072】
本例における磁石装置10aは、上述した磁石固定板13上に、複数個(本例では5個)の磁石手段10A〜10Eが設けられている。
【0073】
これら磁石手段10A〜10Eは、同一の構成を有し、それぞれバッキングプレート8と平行な細長い板状の磁石固定部16a上に、ターゲット7のスパッタ面7a上に磁場を発生させる向きで設置された中心磁石11aと、中心磁石11aの周囲に連続的な形状で設置された外周磁石12aとを備えている。
【0074】
中心磁石11aは磁石固定部16aと同一方向に延びる細長の例えば長方体形状に配置され、外周磁石12aは磁石固定部16a上において磁石固定部16aと同一方向に延びる細長の環状に形成され、かつ、中心磁石11aの周縁部に対して所定距離をおいて中心磁石11aを取り囲むように配置されている。
【0075】
各磁石手段10A〜10Eにおいて、中心磁石11aの周囲を取り囲む環状の外周磁石12aは、上述した磁石装置10と同様に、必ずしも一つの継ぎ目のない環形状であることを意味しない。すなわち、中心磁石11aの周囲を取り囲む形状であれば、複数の部品から構成されていてもよいし、ある部分に直線的な形状を有していてもよい。また、閉じた円環又は円環を閉じたまま変形させた形状でもよい(本例では、矩形形状のものが示されている。)。
【0076】
各磁石手段10A〜10Eの外周磁石12aと中心磁石11aは、互いに異なる極性の磁極を対向させて配置され、これにより中心磁石11aと外周磁石12aはターゲット7のスパッタ面7aに対して互いに異なる極性の磁極を向けるように構成されている。
【0077】
そして、このような構成を有する磁石手段10A〜10Eは、隣接する外周磁石12aの長手方向の側部が対向するように同一方向に向けて近接配置されている。
【0078】
本例の磁石装置10aでは、上記第1例の場合と同様に、磁石固定板13が上述した移動装置14に取り付けられており、制御部15からの制御信号によって、磁石装置10aをターゲット7のスパッタ面7aに沿って各磁石手段10A〜10Eの延びる方向(長手方向)に対して直交する方向に往復移動させるように構成されている。
【0079】
そして、本例では、磁石装置10aの磁石手段10A〜10Eのうち、磁石装置10aの移動方向の両側に位置する磁石手段10A及び磁石手段10Eにおける外周磁石12aの移動方向側の部分12a1及び12a2の縁部間の距離が、当該移動方向についてのターゲット7の当該移動方向について縁部間の長さより小さくなるように各磁石手段10A〜10Eの寸法及び配置位置が設定されている(図8参照)。
【0080】
なお、本例においては、磁石装置10aの各磁石手段10A〜10Eの外周磁石12aのそれぞれについて、磁石装置10aの移動方向に対して直交する方向の縁部間の距離が、ターゲット7の当該移動方向に対して直交する方向の縁部間の長さより小さくなるように各磁石手段10A〜10Eの寸法及び配置位置が設定されている。
【0081】
そして、磁石装置10aを、外周磁石12aの外周部全体がターゲット7のスパッタ面7aの外周より内側に入る位置と、外周磁石12aの外周部の一部(本例では磁石装置10aの移動方向側の部分12a1及び12a2)がターゲット7のスパッタ面7aの外周部の外側にはみ出る位置との間を往復移動させるように構成されている。
【0082】
一方、上述した内側シールド部21との関係においては、磁石装置10aは、外周磁石12aの外周部全体がターゲット7のスパッタ面7aの周囲を取り囲む内側シールド部21の内周部に対して内側に入る位置と、外周磁石12aの外周部の一部(本例では移動方向側の部分12a1及び12a2)が内側シールド部21の内周部に対して外周部側にはみ出る位置との間で移動するよう構成されている。
【0083】
以上述べた本例のスパッタ成膜装置1Eにおいては、放電時に生成され磁石装置10aの各磁石手段10A〜10Eによる磁場に捕捉されたスパッタガスのプラズマが、ターゲット7の外周部の周囲に近接配置され浮遊電位にされた内側シールド部21によって遮られるため、内側シールド部21の周囲に設けられ接地電位にされた導電性材料からなる外側シールド部22に到達して接触することが阻止される。
【0084】
その結果、本例によれば、上述した第1〜第4例の場合と同様に、プラズマ中のイオンの電荷が接地電位の外側シールド部22に接触することによるプラズマの消失が回避されるため、ターゲット7のスパッタ面7aの外周部にプラズマが到達し、これによりターゲット7のスパッタ面7aの外周部における非エロージョン領域の発生を抑制することができるので、ターゲット7の非エロージョン領域に付着したスパッタ粒子の剥離に起因する成膜特性の低下を防止することができる。
【0085】
さらに、本例においては、複数の磁石手段10A〜10Eを有する磁石装置10aを用いていることから、磁場への電力集中が緩和され、これにより投入電力を大きくすることができるという効果がある。
【0086】
なお、上述した例では、5個の磁石手段10A〜10Eを有する磁石装置10aを設けた場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、6個以上の磁石手段を有する場合にも適用することができる。
【0087】
また、本例の磁石装置10aは、上述した第2例〜第5例のスパッタ成膜装置1A〜1Dにも適用することができる。
【0088】
特に、本例の磁石装置10aを用いてスパッタリングを行う場合において、プラズマ中のイオンが、磁石装置10aの各磁石手段10A〜10Eの外周磁石12aの短辺側から長辺側にイオンが方向を変えて移動する対向する角部において生ずる、プラズマの外側に張り出す形状の部分に沿って運動をするときには、上述した第3例のスパッタ成膜装置1B並びに第5例のスパッタ成膜装置1Dと組み合わせることが有効である。
【0089】
すなわち、本例の磁石装置10aでは、各磁石手段10A〜10Eに対して短辺側から長辺側にイオンが方向を変えて移動する対向する角部において、上述したようなプラズマの外側に張り出す形状の部分に沿ってイオンは運動をするが、このプラズマ中のイオンは、磁石装置10aの全体についても、例えば図8に示すように磁石装置10aの移動方向両端の磁石手段10A、10Eの外周磁石12aの短辺側から長辺側にイオンが方向を変えて移動する対向する角部12c、12dにおいて、プラズマの外側に張り出す形状の部分に沿って運動をするようになるからである。
【符号の説明】
【0090】
1……スパッタ成膜装置
2……真空槽
6……基板(成膜対象物)
7……スパッタリングターゲット
7a…スパッタ面
7c、7d…角部
7l…長辺
7s…短辺
8……バッキングプレート
10…磁石装置
11…中心磁石
12…外周磁石
21…内側シールド部
22…外側シールド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】