(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年3月26日
【発行日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】光ファイバ冷却装置及び光ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/042 20060101AFI20210802BHJP
H01S 3/063 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
H01S3/042
H01S3/063
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2020-548204(P2020-548204)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2018-177066(P2018-177066)
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-177067(P2018-177067)
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小西 大介
(72)【発明者】
【氏名】村上 政直
(72)【発明者】
【氏名】安原 亮
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE12
5F172AF03
5F172AF06
5F172AM04
5F172AM08
5F172EE13
5F172NQ34
5F172NS01
5F172NS09
5F172NS18
(57)【要約】
光ファイバ冷却装置5は、筐体33と、液状金属Mと、チラー装置37とを備えている。筐体33は、第1光ファイバ17の一部と第2光ファイバ19を収納する。液状金属Mは、筐体33内に配置されている。チラー装置37は、液状金属Mを冷却する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に配置された液状金属と、
前記液状金属を冷却する冷却装置と、
を備えた、光ファイバ冷却装置。
【請求項2】
前記光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有しており、
前記接続部が前記収納部に収納されている、請求項1に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項3】
前記液状金属を前記収納部から出して戻す循環装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記循環装置の一部において前記液状金属を冷却する、請求項1又は2に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項4】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項5】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる、請求項4に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項6】
光ファイバと、
前記光ファイバを冷却するための光ファイバ冷却装置とを、備え、
前記光ファイバ冷却装置は、
光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に配置された液状金属と、
前記液状金属を冷却する冷却装置と、を有する、
光ファイバレーザ装置。
【請求項7】
光ファイバを冷却する装置であって、
前記光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に配置された液状金属と、
前記収納部を外側から冷却することで、前記液状金属を冷却する冷却装置と、
を備えた、光ファイバ冷却装置。
【請求項8】
前記光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有しており、
前記接続部が前記収納部に収納されている、請求項7に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項9】
前記収納部は、
前記液状金属を収納する空間を構成する内壁面を有する金属製本体と、
前記内壁面に形成された脆化防止コートと、を有する、請求項7又は8に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項10】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項7〜9のいずれかに記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項11】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる、請求項10に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項12】
光ファイバと、
前記光ファイバを冷却する光ファイバ冷却装置と、を備え、
前記光ファイバ冷却装置は、
前記光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に配置された液状金属と、
前記収納部を外側から冷却することで、前記液状金属を冷却する冷却装置と、を有する、光ファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ冷却装置及び光ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の媒体として光ファイバケーブルを用いたレーザ装置、いわゆる光ファイバレーザ装置が開発されている。光ファイバレーザ装置は、光ファイバのコアに添加された希土類イオン等のレーザ媒質に対して、半導体レーザ等の励起光源から励起光を入光させることにより、レーザ光を発振又は増幅させる装置である。
ここで、光ファイバに含まれるレーザ活性物質は励起光を吸収することによって発熱する。この発熱により、励起光からレーザ光への変換効率が変化するので、レーザ光の安定した出力を行うためには光ファイバの温度を一定にするのが望ましい。また、近年では、レーザ発振器の高出力化が進んでいるので、ファイバ内での発熱量が増大して損傷する場合がある。
特に近年において、加工の高速化(生産性向上)のために、より高出力なファイバレーザが必要である。レーザは一般的に励起光源出力を向上することで、レーザ出力が増加する。しかし、励起光源出力の増加に伴う発熱も同時に増加する。例えば、Er添加フッ化物ファイバの波長2.8μm帯域のレーザ発振では、波長変換量子効率は30%程度であり、残りの70%は発振に寄与しないエネルギーとして、最終的に熱となる。そして、フッ化物ファイバはおよそ摂氏300度で軟化するので、レーザの高出力化に伴って熱的影響を無視できない。
つまり、いかに光ファイバケーブルを冷却するかは、安定したレーザ特性、増幅特性等を発揮するための重要な課題である。
そこで、光ファイバ装置は、一般に、冷却装置を有している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−23274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光ファイバ冷却装置では、光ファイバをヒートシンクに対して金属製の放熱部材を介して密着させている。この装置では、放熱部材として銅やアルミといった金属は熱伝導に優れるが、固体であるので冷却対象の形状に合せて加工が必要である。また、固体金属は、高い加工精度を求められるので、密着性が不十分となる恐れがある。
その場合は、効率よく光ファイバを冷却することができない。
なお、樹脂やグリスは密着性が高いが熱伝導が低いので、冷却性に劣る。
【0005】
本発明の目的は、光ファイバ冷却装置の冷却性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る光ファイバ冷却装置は、収納部と、液状金属と、冷却装置とを備えている。
収納部は、光ファイバの少なくとも一部を収納する。
液状金属は、収納部内に配置されている。
冷却装置は、液状金属を冷却する。
この装置では、光ファイバを冷却する性能が向上する。液状金属が常温で液状であるので光ファイバとの密着性に優れ、熱伝導が良い(例えば、水の約27.5倍)からである。したがって、光ファイバ冷却装置の冷却性能が向上する。
【0008】
光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有していてもよい。
接続部が収納部に収納されていてもよい。
この装置では、光ファイバの冷却が効率的に行われる。接続部が最も発熱する部分だからである。
【0009】
光ファイバ冷却装置は、液状金属を収納部から出して戻す循環装置をさらに備えていてもよい。
冷却装置は、循環装置の一部において液状金属を冷却してもよい。
この装置では、冷却装置の設置の自由度が高くなる。
【0010】
液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含んでいてもよい。
この装置では、光ファイバを冷却する性能がさらに向上する。
【0011】
液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなっていてもよい。
この装置では、光ファイバを冷却する性能がさらに向上する。
本発明の他の見地に係る光ファイバレーザ装置は、光ファイバと、前記光ファイバ冷却装置とを備えている。
【0012】
本発明の他の見地に係る光ファイバ冷却装置は、光ファイバを冷却する装置であって、収納部と、液状金属と、冷却装置とを備えている。
収納部は、光ファイバの少なくとも一部を収納する。
液状金属は、収納部内に配置されている。
冷却装置は、収納部を外側から冷却することで、液状金属を冷却する。
この装置では、光ファイバを冷却する性能が向上する。液状金属が常温で液状であるのでファイバとの密着性に優れ、熱伝導が良い(例えば、水の約27.5倍)からである。したがって、光ファイバ冷却装置の冷却性能が向上する。
特に、筐体を直接冷却しているので、構造が簡素化し、液状金属の冷却効果が高くなる。
【0013】
光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有していてもよい。
接続部が収納部に収納されていてもよい。
この装置では、光ファイバの冷却が効率的に行われる。接続部が最も発熱する部分だからである。
【0014】
収納部は、金属製本体と、脆化防止コートとを有していてもよい。金属製本体は、液状金属を収納する空間を構成する内壁面を有していてもよい。脆化防止コートは、内壁面に形成されていてもよい。脆化防止コートは液状金属に浸食されない材料とする。
この装置では、収納部が金属製であるので、熱伝導が良い。そのため、液状金属を冷却する効果が高くなる。
また、脆化防止コートによって、収納部の金属製本体が液状金属に対して保護される。したがって、金属製本体の脆化が防止される。
【0015】
液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含んでいてもよい。
この装置では、光ファイバを冷却する性能がさらに向上する。
【0016】
液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなっていてもよい。
この装置では、光ファイバを冷却する性能がさらに向上する。
本発明の他の見地に係る光ファイバレーザ装置は、光ファイバと、前記光ファイバ冷却装置とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光ファイバ冷却装置では、冷却性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の光ファイバ及び光ファイバ冷却装置の模式的構成図。
【
図2】第1光ファイバ(非添加フッ化物ファイバ)の断面図。
【
図3】第2光ファイバ(Er添加フッ化物ファイバ)の断面図。
【
図4】光ファイバ冷却装置の制御構成を示すブロック図。
【
図5】第2実施形態の光ファイバ及び光ファイバ冷却装置の模式的構成図。
【
図6】光ファイバ冷却装置の制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
(1)レーザ発振器
図1を用いて、レーザ発振器1の構成を説明する。
図1は、光ファイバ及び光ファイバ冷却装置の模式的構成図である。
【0020】
レーザ発振器1は、一般的に、励起光源から励起光が入射されると、レーザ発振する。励起光源は、励起光を発振するものであり、例えば半導体レーザである。
レーザ発振器の動作原理を説明する。レーザ発振器では、光ファイバの入力端から入射された励起光がコアを通過することで、コア内で励起光が吸収される。その後、誘導放出により、コア内部にて発光が増幅され、さらに光ファイバ内部を両端のミラーにより反射を繰り返すことにより、出力端からのレーザ発振に至る。
【0021】
本実施形態では、レーザ発振器1は、励起光L1の入射によってレーザ光を発振するレーザ共振器3と、レーザ共振器3を冷却する光ファイバ冷却装置5とを有している。
レーザ共振器3は、光ファイバ15を有する。光ファイバ15は、レーザ媒体及び共振器として機能し、励起光の照射により発生したレーザ光を増幅させてレーザ発振させる。
【0022】
(2)光ファイバ
光ファイバ15は、第1光ファイバ17と、第2光ファイバ19とを有している。第1光ファイバ17は、入力端17d及び出力端17eを有している。入力端17dには、第1エンドキャップ25aが接続されている。
第2光ファイバ19は、入力端19dと出力端19eとを有している。
第1光ファイバ17の出力端17eと第2光ファイバ19の入力端19dが第1接続部21によって融着接続されている。第2光ファイバ19は、複数回巻かれた環状部19fを形成している。
第2光ファイバ19の出力端19eには、第1光ファイバ17と同じ構成の第3光ファイバ20が、第2接続部22によって融着接続されている。
【0023】
第1光ファイバ17は、
図2に示すように、コア17aと、クラッド17bと、バッファ17cとを有する。
図2は、第1光ファイバ(非添加フッ化物ファイバ)の断面図である。
第1光ファイバ17は、非添加フッ化物ファイバであり、励起光を伝播するために用いられる。
コア17aは、例えばZBLANガラスであり、希土類は添加されていない。
クラッド17bは、コア17aの外周においてコア17aを覆うように形成されており、コア17aの屈折率よりも小さな屈折率を有する層である。
バッファ17cは、コア17a及びクラッド17bを外部刺激から保護するための層である。
【0024】
第2光ファイバ19は、希土類元素をドープしたフッ化物ファイバである。
第2光ファイバ19は、励起光により励起されることで、中赤外の波長(具体的には、2.8μm近辺)のレーザ光を出射する。第2光ファイバ19は、入力端19dから導入した励起光により励起され、第2光ファイバ19にドープされた物質により決まる波長のレーザ光を発生する。
【0025】
第2光ファイバ19は、
図3に示すように、ダブルクラッドファイバであり、コア19aと、第1クラッド19bと、第2クラッド19cと、バッファ19gとを有している。
図3は、第2光ファイバ(Er添加フッ化物ファイバ)の断面図である。
コア19aは、希土類元素としてエルビウム(Er)をドープしたZBLANガラスである。ZBLANガラスは、ジルコニウム(Zr)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)を主成分とするフッ化物ガラスである。なお、添加物質は、レーザ発振する物質であれば何でもよく、例えば、イッテルビウム(Yb)のような他の希土類元素でもよい。
【0026】
第1クラッド19b及び第2クラッド19cは、コア19aの外周においてコア19aを覆うように形成されており、コア19aの屈折率よりも小さな屈折率を有する層である。また、第1クラッド19b及び第2クラッド19cには、希土類元素は添加されていない。
バッファ19gはコア19a及び第1クラッド19bと第2クラッド19cを外部からの物理的圧力から保護するための層である。
上記の構造により、第2光ファイバ19は、主に励起光を波長2.8μm帯域の光に変換することができる。具体的には、第1クラッド19bにおいて、主に波長2.8μm帯域の光を反射させて、コア19aを伝搬させる。また、第2クラッド19cにおいて、主に励起光を反射させて、第1クラッド19bとコア19aを伝搬させる。コア19aを励起光が通過すると、吸収が起こり、波長2.8μm帯域の光に変換される。
第2光ファイバ19の環状部19fは、コア19a内を伝播する光が第1クラッド19bに漏れない最小半径よりも大きな半径で曲げられている。
【0027】
第2光ファイバ19には、
図1に示すように、高反射FBG(Fiber Bragg Grating)23と、低反射FBG25とが描き込まれている。高反射FBG23は、第2光ファイバ19の入力端19d近傍つまり第1接続部21近傍に描き込まれている。低反射FBG25は、第2光ファイバ19の出力端19eに近い側に描き込まれている。
高反射FBG23は、レーザ共振器3において、レーザ光として発振させる特定の波長を持つ光を全反射する反射部である。
低反射FBG25は、レーザ共振器3において、レーザ光として発振させる特定の波長を持つ光のうち、一部のみを透過し、残りを反射する反射部である。
【0028】
第1エンドキャップ25aは、励起光及びレーザ光を透過する光透過性であり、且つ潮解性を有さない。また、第1エンドキャップ25aは、融点が第1光ファイバ17の融点以上とすることが好ましく、第1光ファイバ17の端面の冷却のために熱伝導率は第1光ファイバ17の熱伝導率よりも高いことが好ましい。また、第1エンドキャップ25aは、第1光ファイバ17との接合を強固にするために、線膨張係数が第1光ファイバ17と同程度のものが好ましい。具体的には、第1エンドキャップ25aは、フッ化カルシウムなどの結晶とすることができる。第1エンドキャップ25aは、他にも石英などの結晶であってもよい。
なお、第2エンドキャップ25bは、第1エンドキャップ25aと同じ構成である。
第3光ファイバ20は、レーザ光が内部で反射する前に出射される長さを有している。また、第3光ファイバ20は、レーザ媒質であるエルビウムなどの希土類元素がドープされていないため、励起光が入射されても発熱しない。
【0029】
以上の光ファイバ15の構成により、レーザ共振器3が形成されている。レーザ共振器3では、第2光ファイバ19のコア19aにドープされた希土類元素に吸収されて、基底準位と準安定準位との間に反転分布が生じて光が放出される。こうして放出された光は、第2光ファイバ19の光増幅作用と高反射FBG23及び低反射FBG25の作用とによって、レーザ発振する。出力光は、第2光ファイバ19の出力端19eから出力される。
出力光は、ダイクロイックミラー27へ誘導される。ダイクロイックミラー27は、励起光源からの励起光L2は透過するが、レーザ光L3は透過することなく反射する。ダイクロイックミラー27で反射したレーザ光L3を出力として、種々の目的に使用される。
ダンパ29(例えば、光出力を測る機能を有する装置)は、ダイクロイックミラー27の下流側に配置されており、ダイクロイックミラー27が透過した励起光L2を吸収し測定できる。これにより出力を制御装置(例えば、制御部51)で監視できる。
【0030】
(3)光ファイバ冷却装置
光ファイバ冷却装置5は、冷却された液状金属Mを用いて光ファイバ15を冷却する装置である。光ファイバ冷却装置5は、筐体33(収納部の一例)と、循環装置35と、チラー装置37(冷却装置の一例)と、を有している。
筐体33は、箱状に形成されており、第2光ファイバ19を保持するとともに、第2光ファイバ19を直接に冷却するための装置である。筐体33は、第2光ファイバ19の環状部19fを収容する内部空間33aを有している。この構造により、筐体33によって第2光ファイバ19は保持される。筐体33は、例えば、アクリル製である。
さらに、内部空間33aには、液状金属Mが充填されている。内部空間33aには、液状金属Mが循環可能な環状の通路が形成されている。
【0031】
循環装置35は、液状金属Mを筐体33から出して戻す装置である。循環装置35は、配管43とポンプ45とを有している。配管43は、筐体33の内部空間33aに設けられた流入ポート33bと流出ポート33cに接続されている。
チラー装置37は、循環装置35の一部において、筐体33の内部空間33aを流れる液状金属Mを冷却する。チラー装置37は、配管43において、例えば二重管構造によって水を用いて液状金属Mを冷却する。
液状金属Mは、筐体33の内部空間33aからポンプ45によって配管43を介して、チラー装置37に送られる。液状金属Mはチラー装置37によって冷却される。その後、液状金属Mは配管43を介して筐体33に戻される。
【0032】
液状金属Mは、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含んでいる。具体的には、液状金属Mは、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる。ガリウム、インジウム、スズの合金は、熱伝導率が約16.5[W/mK]である。
この装置では、液状金属Mが常温で液状であるので第2光ファイバ19との密着性に優れ、熱伝導性が良い(例えば、水の約27.5倍)。したがって、冷却性能が向上する。
【0033】
内部空間33aに液状金属Mの流れFが生じることから、熱量を吸収した液状金属Mが内部空間33aに滞留することがなく、熱量の吸収効率をより高めることができる。
ガリウム、インジウム、スズの合金は、例えば、Ga
14In
3Sn
2、Ga
17In
4Sn
2、Ga
22In
4Sn
3、Ga
25In
5Sn
4、Ga
25In
6Sn
3を含む。
特に、第1接続部21と、第2光ファイバ19の入力端19dが液状金属Mに接して冷却されていることで、発熱防止効果が優れている。
【0034】
(4)制御構成
図4を用いて、光ファイバ冷却装置5の制御構成を説明する。
図4は、光ファイバ冷却装置の制御構成を示すブロック図である。
光ファイバ冷却装置5は、制御部51を有している。制御部51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。制御部51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
制御部51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
【0035】
制御部51の各要素の機能は、一部又は全てが、制御部51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
制御部51には、循環装置35のポンプ45、チラー装置37が接続されている。制御部51は、これら及び他の装置を制御可能である。
制御部51には、図示しないが、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0036】
(5)動作
最初に、励起光源(図示せず)において、励起光が発振される。励起光は、光ファイバ15に具体的には第1エンドキャップ25aを通って第1光ファイバ17の入力端17dに入射する。
励起光は第1光ファイバ17から第2光ファイバ19へと送られる。励起光は、高反射FBG23を通って第2光ファイバ19に入射する。この後、励起光によってコア19aの活性物質が励起され、活性物質から光が放出される。この後、活性物質から放出された光は、コア19a内を伝搬されながら高反射FBG23と低反射FBG25との間で往復する。この結果、特定の波長を持つ光がレーザ光として第2光ファイバ19から低反射FBG25を透過して外部へ出射される。具体的には、レーザ光は、第3光ファイバ20及び第2エンドキャップ25bを通って外部に出射される。
【0037】
そして、励起光L2は、ダイクロイックミラー27を透過し、ダンパ29(例えば、光出力を測る機能を有する装置)に吸収され測定される。それに基づいて、制御装置(例えば、制御部51)が出力を監視できる。一方、第2光ファイバ19のコア19a内で生成されたレーザ光L3は、ダイクロイックミラー27で反射されて、外部に出力される。
以上のレーザ発振動作において、光ファイバ15は発熱するが、光ファイバ15は、光ファイバ冷却装置5によって効率よく冷却される。
これにより、光ファイバ15を効率良くかつより均一に冷却することができ、それにより冷却効率の向上できる。従って、レーザ発振器1では、レーザ光の出力の低下の防止を図ることができ、レーザ光の安定した出力を得ることができる。
【0038】
2.第2実施形態
(1)レーザ発振器
図5を用いて、レーザ発振器101の構成を説明する。
図5は、第2実施形態の光ファイバ及び光ファイバ冷却装置の模式的構成図である。
なお、第1実施形態と共通する構造については、適宜省略する。
【0039】
レーザ発振器101は、一般的に、励起光源から励起光が入射されると、レーザ発振する。励起光源は、励起光を発振するものであり、例えば半導体レーザである。
【0040】
本実施形態では、レーザ発振器101は、励起光L1の入射によってレーザ光を発振するレーザ共振器3と、レーザ共振器3を冷却する光ファイバ冷却装置105とを有している。
レーザ共振器3は、光ファイバ15を有する。光ファイバ15は、レーザ媒体及び共振器として機能し、励起光の照射により発生したレーザ光を増幅させてレーザ発振させる。
【0041】
(2)光ファイバ
光ファイバ15は、第1実施形態のものと同じである。したがって、ここでは説明を省略する。
【0042】
(3)光ファイバ冷却装置
光ファイバ冷却装置105は、冷却された液状金属Mを用いて光ファイバ15を冷却する装置である。光ファイバ冷却装置105は、筐体133(収納部の一例)と、チラー装置137(冷却装置の一例)と、を有している。
筐体133は、箱状に形成されており、第2光ファイバ19を保持するとともに、第2光ファイバ19を直接に冷却するための装置である。筐体133は、第2光ファイバ19の環状部19fを収容する内部空間133aを有している。この構造により、筐体133によって第2光ファイバ19は保持される。
【0043】
さらに、内部空間133aには、液状金属Mが充填されている。内部空間133aには、液状金属Mが循環可能な環状の通路が形成されている。
チラー装置137は、筐体133の外部から、筐体133の内部空間133aに滞留する液状金属Mを冷却する。
この装置では、光ファイバ15を冷却する性能が向上する。液状金属が常温で液状であるので光ファイバ15との密着性に優れ、熱伝導が良い(例えば、水の約27.5倍)からである。したがって、光ファイバ冷却装置105の冷却性能が向上する。
特に、筐体133を直接冷却しているので、構造が簡素化し、液状金属Mの冷却効果が高くなる。
【0044】
チラー装置137は、筐体133の少なくとも一側面に接触している。チラー装置137は、筐体133の複数の側面に接触していてもよいし、筐体133の一部又は全部を覆った状態で筐体133に接触していてもよい。
【0045】
筐体133は、金属製であり、内部空間133aを構成する内壁面には脆化防止コートが形成されている。この場合、筐体133が金属製であるので、熱伝導が良い。そのため、液状金属Mを冷却する効果が高くなる。脆化防止コートは、例えば、熱やUV光で硬化する樹脂であり、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)樹脂である。
また、脆化防止コートによって、収納部の金属製本体が液状金属Mに対して保護される。したがって、金属製本体の脆化が防止される。
【0046】
液状金属Mは、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含んでいる。具体的には、液状金属Mは、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる。ガリウム、インジウム、スズの合金は、熱伝導率が約16.5[W/mK]である。
この装置では、液状金属Mが常温で液状であるので第2光ファイバ19との密着性に優れ、熱伝導性が良い(例えば、水の約27.5倍)。したがって、冷却性能が向上する。
【0047】
ガリウム、インジウム、スズの合金は、例えば、Ga
14In
3Sn
2、Ga
17In
4Sn
2、Ga
22In
4Sn
3、Ga
25In
5Sn
4、Ga
25In
6Sn
3を含む。
特に、第1接続部21と、第2光ファイバ19の入力端19dが液状金属Mに接して冷却されていることで、発熱防止効果が高くなっている。
【0048】
(4)制御構成
図6を用いて、光ファイバ冷却装置105の制御構成を説明する。
図6は、光ファイバ冷却装置の制御構成を示すブロック図である。
光ファイバ冷却装置105は、制御部51を有している。制御部51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。制御部51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
制御部51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
【0049】
制御部51の各要素の機能は、一部又は全てが、制御部51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
制御部51には、チラー装置137が接続されている。制御部51は、これら及び他の装置を制御可能である。
制御部51には、図示しないが、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0050】
(5)動作
レーザ発振動作は、第1実施形態と同じである。従って、ここでは説明を省略する。
レーザ発振動作において、光ファイバ15は発熱するが、光ファイバ15は、光ファイバ冷却装置105によって効率よく冷却される。
これにより、光ファイバ15を効率良くかつより均一に冷却することができ、それにより冷却効率の向上できる。従って、レーザ発振器101では、レーザ光の出力の低下の防止を図ることができ、レーザ光の安定した出力を得ることができる。
【0051】
3.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(1)第1実施形態及び第2実施形態では、第2光ファイバ19を複数回巻いて環状にしているが、これに限定されず、第2光ファイバ19の曲げ半径の条件を満たす範囲であれば、どのような形状に曲げていてもよい。
【0052】
(2)光ファイバの用途は、レーザ発振に限定されない。
(3)光ファイバの内部構成及び長手方向構成は、前記実施形態に限定されない。
(4)第2実施形態において、流体金属及び光ファイバを収納する収納部の形状、材質は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、光ファイバ冷却装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 :レーザ発振器
3 :レーザ共振器
5 :光ファイバ冷却装置
15 :光ファイバ
17 :第1光ファイバ
17a :コア
17b :クラッド
17c :バッファ
19 :第2光ファイバ
19a :コア
19b :第1クラッド
19c :第2クラッド
19d :バッファ
21 :第1接続部
23 :高反射FBG
25 :低反射FBG
33 :筐体
33a :内部空間
35 :循環装置
37 :チラー装置
43 :配管
45 :ポンプ
51 :制御部
61 :冷却用管
61a :流路
M :液状金属
【手続補正書】
【提出日】2020年12月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に光ファイバの少なくとも一部と密着するように配置された液状金属と、
前記液状金属を冷却する冷却装置と、
を備えた、光ファイバ冷却装置。
【請求項2】
前記光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有しており、
前記接続部が前記収納部に収納されている、請求項1に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項3】
前記液状金属を前記収納部から出して戻す循環装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記循環装置の一部において前記液状金属を冷却する、請求項1又は2に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項4】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項5】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる、請求項4に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項6】
光ファイバと、
前記光ファイバを冷却するための光ファイバ冷却装置とを、備え、
前記光ファイバ冷却装置は、
光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に光ファイバの少なくとも一部と密着するように配置された液状金属と、
前記液状金属を冷却する冷却装置と、を有する、
光ファイバレーザ装置。
【請求項7】
光ファイバを冷却する装置であって、
前記光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に光ファイバの少なくとも一部と密着するように配置された液状金属と、
前記収納部を外側から冷却することで、前記液状金属を冷却する冷却装置と、
を備えた、光ファイバ冷却装置。
【請求項8】
前記光ファイバは、第1光ファイバと、第2光ファイバと、両者の接続部とを有しており、
前記接続部が前記収納部に収納されている、請求項7に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項9】
前記収納部は、
前記液状金属を収納する空間を構成する内壁面を有する金属製本体と、
前記内壁面に形成された脆化防止コートと、を有する、請求項7又は8に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項10】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、水銀、スズ、鉛、銅、亜鉛及びビスマスからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項7〜9のいずれかに記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項11】
前記液状金属は、ガリウム、インジウム、スズの合金からなる、請求項10に記載の光ファイバ冷却装置。
【請求項12】
光ファイバと、
前記光ファイバを冷却する光ファイバ冷却装置と、を備え、
前記光ファイバ冷却装置は、
前記光ファイバの少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部内に配置された液状金属と、
前記収納部を外側から冷却することで、前記液状金属を冷却する冷却装置と、を有する、光ファイバレーザ装置。
【国際調査報告】