特表-20067500IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2020-67500抗菌材、積層体、抗菌性積層体、医療用部材、抗菌材の製造方法、抗菌性積層体の製造方法及び抗菌方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年4月2日
【発行日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】抗菌材、積層体、抗菌性積層体、医療用部材、抗菌材の製造方法、抗菌性積層体の製造方法及び抗菌方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20210806BHJP
   A61L 27/30 20060101ALI20210806BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20210806BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20210806BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20210806BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 6/84 20200101ALI20210806BHJP
   A61K 6/802 20200101ALI20210806BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   A61L27/30
   A61L27/40
   A61L27/50
   A61L27/54
   A61L27/04
   A61K6/84
   A61K6/802
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】特願2020-549476(P2020-549476)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-183510(P2018-183510)
(32)【優先日】2018年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-145611(P2019-145611)
(32)【優先日】2019年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】益田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】柳下 崇
【テーマコード(参考)】
4C081
4C089
4F100
【Fターム(参考)】
4C081AB05
4C081AB06
4C081AB34
4C081BA14
4C081CF22
4C081CG01
4C081CG08
4C081DA01
4C081DA02
4C081DB07
4C081DC02
4C081DC03
4C081DC04
4C081DC06
4C081DC11
4C081EA02
4C081EA05
4C081EA06
4C089AA06
4C089BA04
4C089BB01
4C089CA04
4F100AA17B
4F100AB01C
4F100AB10B
4F100AB10C
4F100AB12B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AD00A
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DD01B
4F100GB01
4F100GB07
4F100GB08
4F100GB15
4F100GB31
4F100GB48
4F100GB56
4F100GB66
4F100JC00
4F100JN01
4F100YY00B
(57)【要約】
非金属基板と金属酸化物層とを有する積層体であって、前記金属酸化物層が最表面に存在し、かつ、前記金属酸化物層がアニオンを含み、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以上であることを特徴とする、抗菌性積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属基板と金属酸化物層とを有する積層体であって、
前記金属酸化物層が最表面に存在し、かつ、
前記金属酸化物層がアニオンを含み、
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以上であることを特徴とする、抗菌性積層体。
【請求項2】
前記アニオンが、SO2−、PO3−、C2−、C2−、C2−及びC3−からなる群から選択される、請求項1に記載の抗菌性積層体。
【請求項3】
最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率が3.0atm%以上である、請求項1又は2に記載の抗菌性積層体。
【請求項4】
さらに金属層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項5】
前記金属酸化物層及び金属層に含まれる金属が、バルブ金属である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項6】
前記バルブ金属がアルミニウムである、請求項5に記載の抗菌性積層体。
【請求項7】
最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記バルブ金属の存在比率の合計がXPSで分析したときに10atm%以上であり、かつ、
非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以下である、請求項5又は6に記載の抗菌性積層体。
【請求項8】
前記非バルブ金属が、銀、銅、チタン及びゲルマニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ハロゲン原子が、ヨウ素原子である、請求項7に記載の抗菌性積層体。
【請求項9】
最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記アニオンに由来する原子がイオウ原子であり、かつ、
酸素原子の存在比率がXPSで分析したときに45atm%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項10】
前記金属酸化物層の全光線透過率が30%以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項11】
前記金属酸化物層の厚みが50nm以上10μm以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項12】
最表面に存在する前記金属酸化物層が、その最表面に複数の凸部を有し、
隣接する凸部間の平均間隔が、20〜600nmである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗菌性積層体。
【請求項13】
前記凸部が、針状突起である、請求項12に記載の抗菌性積層体。
【請求項14】
95質量%以上のバルブ金属を含む金属層の表面を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属酸化物層を生成する工程を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗菌性積層体の製造方法。
【請求項15】
前記多塩基酸の濃度が0.3M以上である、請求項14に記載の抗菌性積層体の製造方法。
【請求項16】
前記バルブ金属がアルミニウムであり、前記多塩基酸が濃度3M以上の硫酸である、請求項14又は15に記載の抗菌性積層体の製造方法。
【請求項17】
前記硫酸の濃度が6M以上である、請求項16に記載の抗菌性積層体の製造方法。
【請求項18】
複数の凸部を表面に有する、金属の酸化皮膜を有し、
隣接する凸部間の平均間隔が、20〜400nmである、抗菌材。
【請求項19】
前記凸部が、針状突起である、請求項18に記載の抗菌材。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の抗菌材からなる層を有する、積層体。
【請求項21】
請求項18又は19に記載の抗菌材を有する、医療用部材。
【請求項22】
請求項18又は19に記載の抗菌材を製造する方法であり、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、細孔の径を拡大させる工程との組み合わせを1回以上行うことによって、複数の凸部を表面に有する酸化皮膜を形成する、抗菌材の製造方法。
【請求項23】
菌の増殖を抑えたい箇所に、請求項18又は19に記載の抗菌材を設ける、抗菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌材、積層体、抗菌性積層体、医療用部材、抗菌材の製造方法、抗菌性積層体の製造方法及び抗菌方法に関する。
本願は、2018年9月28日に、日本に出願された特願2018−183510号、及び2019年8月7日に、日本に出願された特願2019−145611号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質、合成抗菌剤等の抗菌性物質は、人や家畜の疾病治療、農畜水産物の生産性の向上、食品の保存等の目的で、医薬品、動物用医薬品、農薬、飼料添加物、食品添加物等として用いられている。
近年、抗菌性物質、抗ウイルス剤等の薬剤に対して抵抗性を有し、薬剤が効かない又は効きにくくなった薬剤耐性菌、薬剤耐性ウイルス等の薬剤耐性微生物の出現が問題になっている。そのため、微生物の増殖の抑制等を目的とした薬剤の使用が制限される傾向にある。
【0003】
薬剤を用いることなく抗菌効果を発揮できる物品としては、例えば、下記のものが提案されている。
(1)複数の微小突起が配置され、隣接する微小突起間の平均距離が30〜90nmであり、微小突起の平均アスペクト比が3.0〜6.25である微小突起構造体を表面に有する抗菌性物品(特許文献1)。
(2)複数の微小突起が配置された微小突起構造体を表面に有する、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層を備え、隣接する微小突起間の平均距離が90〜500nmであり、微小突起の平均アスペクト比が1.0以上3.0未満であり、微細凹凸層の表面における水の静的接触角が30°以下である抗菌性物品(特許文献2)。
(3)複数の微小突起が配置された微小突起構造体を表面に有する、樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸層を備え、隣接する微小突起間の平均距離が50〜500nmであるカビ繁殖抑制部材(特許文献3)。
(4)複数の微小突起が配置された微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層を備え、隣接する微小突起間の平均距離が1μm以下であり、微小突起の高さが80〜1000nmであり、微小突起の97%高さにおける幅Wtと底部における幅Wbとの比(Wt/Wb)が0.5以下である抗菌・抗カビ性物品(特許文献4)。
(5)複数の微小突起が配置された微小突起構造体を表面に有する微細凹凸層を備え、隣接する微小突起間の平均距離が0.5μm超5.0μm以下である抗菌性物品(特許文献5)。
【0004】
抗生剤は、人や家畜の疾病治療、農畜水産物の生産性の向上、食品の保存等の目的で、医薬品、動物用医薬品、農薬、飼料添加物、食品添加物等として用いられている。
近年、複数種類の抗生剤に対して抵抗性を有し、抗生剤が効かない、又は効きにくくなった耐性菌の出現が問題になっている。そのため、耐性菌の出現の抑制等を目的として抗生剤の使用が制限される傾向にある。
【0005】
抗生剤を用いることなく抗菌効果を発揮できる技術としては、例えば、下記のものが提案されている。
(6)250〜350g/Lの硫酸と、15〜25g/Lの硫酸ニッケルと、80〜320g/Lの低重合アクリル樹脂組成物とを含む水溶液を用いて、所定の条件で陽極酸化処理を行う、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化被膜を形成する方法(特許文献6)。
(7)金属材料を基材とする医療用部品であって、前記基材の表面に、微細孔及び/又は微細凹凸を有する皮膜を有し、前記微細孔及び/又は微細凹凸にヨウ素又はヨウ素化合物を含浸した、金属材料製医療用部品(特許文献7)。
(8)低重アクリル樹脂を添加した浴液を用いてアルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化被膜を形成し、更に、有機ゲルマニウムを含有する浴液を用いて、所定の処理条件によりゲルマニウムを含浸させる、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面処理方法(特許文献8)。
(9)アルミニウム又はその合金から形成された母材を、硫酸浴、シュウ酸浴又はこれらの混合浴中に金属の硝酸塩として硝酸銀及び硝酸銅のいずれか一つ又は二つ、或いは金属の硫酸塩としての硫酸銀及び硫酸銅のいずれか一つ又は二つを添加した電解液中にて、交直重畳、マイナス波を流すPR又はマイナス波を流すパルス波の電流を加えて電解処理し、これによって前記母材の表面に陽極酸化被膜を形成すると同時に、添加した硝酸塩又は硫酸塩の金属をこの陽極酸化被膜に析出させる、アルミニウム又はその合金の表面処理方法(特許文献9)。
(10)アルミニウム材を電解浴中で陽極酸化処理すると共にその表面に多孔性陽極酸化皮膜を形成するに際して、前記電解浴中に酸化チタンTiO微粉末を分散させたことを特徴とする陽極酸化アルミニウム材の抗菌処理方法(特許文献10)。
(11)複数の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、前記表面が殺菌効果を有し、前記表面に含まれる窒素元素の濃度が0.7atm%以上である、合成高分子膜(特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−093939号公報
【特許文献2】特開2016−104545号公報
【特許文献3】特開2016−210164号公報
【特許文献4】特開2016−215622号公報
【特許文献5】特開2017−132916号公報
【特許文献6】国際公開第2004/067807号
【特許文献7】国際公開第2011/024216号
【特許文献8】特開2010−001507号公報
【特許文献9】特開2002−047596号公報
【特許文献10】特開2000−064093号公報
【特許文献11】特開2016−153510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1)〜(5)の抗菌性物品等は、微小孔を有するモールドを用いたインプリント法によって製造されており、抗菌性物品における微小突起は硬化性樹脂の硬化物からなる。本発明者らの検討によれば、微小突起が樹脂からなる抗菌性物品では、微小突起の樹脂の種類、隣接する微小突起間の平均距離、菌の種類等によって、抗菌効果が発揮されないケースがある。
【0008】
(6)〜(11)に記載された技術は、抗生剤を使用することなく抗菌効果を発揮し得るものの、菌の種類等によっては、十分な抗菌効果を発揮できないケースがある。
【0009】
本発明は、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる抗菌材、このような抗菌材からなる層を有する積層体、抗菌材を有する医療用部材、抗菌材の製造方法及び抗菌方法を提供すること、並びに、抗生剤を使用することなく、より広く抗菌効果を発揮する抗菌性積層体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 非金属基板と金属酸化物層とを有する積層体であって、
前記金属酸化物層が最表面に存在し、かつ、
前記金属酸化物層がアニオンを含み、
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以上であることを特徴とする、抗菌性積層体。
[2] 前記アニオンが、SO2−、PO3−、C2−、C2−、C2−及びC3−からなる群から選択される、[1]に記載の抗菌性積層体。
[3] 最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率が3.0atm%以上である、[1]又は[2]に記載の抗菌性積層体。
[4] さらに金属層を有する、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[5] 前記金属酸化物層及び金属層に含まれる金属が、バルブ金属である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[6] 前記バルブ金属がアルミニウムである、[5]に記載の抗菌性積層体。
[7] 最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記バルブ金属の存在比率の合計がXPSで分析したときに10atm%以上であり、かつ、
非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以下である、[5]又は[6]に記載の抗菌性積層体。
[8] 前記非バルブ金属が、銀、銅、チタン及びゲルマニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ハロゲン原子が、ヨウ素原子である、[7]に記載の抗菌性積層体。
[9] 最表面に存在する前記金属酸化物層において、
前記アニオンに由来する原子がイオウ原子であり、かつ、
酸素原子の存在比率がXPSで分析したときに45atm%以上である、[1]〜[8]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[10] 前記金属酸化物層の全光線透過率が30%以上である、[1]〜[9]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[11] 前記金属酸化物層の厚みが50nm以上10μm以下である、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[12] 最表面に存在する前記金属酸化物層が、その最表面に複数の凸部を有し、
隣接する凸部間の平均間隔が、20〜600nmである、[1]〜[11]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体。
[13] 前記凸部が、針状突起である、[12]に記載の抗菌性積層体。
[14] 95質量%以上のバルブ金属を含む金属層の表面を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属酸化物層を生成する工程を含む、[1]〜[13]のいずれか1つに記載の抗菌性積層体の製造方法。
[15] 前記多塩基酸の濃度が0.3M以上である、[14]に記載の抗菌性積層体の製造方法。
[16] 前記バルブ金属がアルミニウムであり、前記多塩基酸が濃度3M以上の硫酸である、[14]又は[15]に記載の抗菌性積層体の製造方法。
[17] 前記硫酸の濃度が6M以上である、[16]に記載の抗菌性積層体の製造方法。
【0011】
[18] 複数の凸部を表面に有する、金属の酸化皮膜を有し、
隣接する凸部間の平均間隔が、20〜400nmである、抗菌材。
[19] 前記凸部が、針状突起である、[18]に記載の抗菌材。
[20] [18]又は[19]に記載の抗菌材からなる層を有する、積層体。
[21] [18]又は[19]に記載の抗菌材を有する、医療用部材。
[22] [18]又は[19]に記載の抗菌材を製造する方法であり、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、細孔の径を拡大させる工程との組み合わせを1回以上行うことによって、複数の凸部を表面に有する酸化皮膜を形成する、抗菌材の製造方法。
[23] 菌の増殖を抑えたい箇所に、[18]又は[19]に記載の抗菌材を設ける、抗菌方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の抗菌材は、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる。
本発明の積層体は、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる。
本発明の医療用部材は、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる。
本発明の抗菌材の製造方法によれば、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる抗菌材を製造できる。
本発明の抗菌方法によれば、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できる。
【0013】
本発明によれば、抗生剤を使用することなく、より広く抗菌効果を発揮する抗菌性積層体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の抗菌材の一例を示す上面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】本発明の抗菌材の製造工程を示す断面図である。
図4】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
図5】実施例1の抗菌材の酸化皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像である。
図6】実施例1の抗菌材の断面の走査型電子顕微鏡像である。
図7】本発明の抗菌性積層体の製造方法を示す断面図である。
図8】実施例5の陽極酸化被膜付きアルミニウム板の陽極酸化被膜の表面の走査型電子顕微鏡像である。
図9】実施例5の陽極酸化被膜付きアルミニウム板の断面の走査型電子顕微鏡像である。
図10】実施例13の抗菌性積層体の全光線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「〜」を用いて表される数値範囲には、その両端の数値を含むものとする。
「菌」とは、細菌、菌類等を意味する。細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、緑膿菌、レンサ球菌等が挙げられる。菌類としては、糸状菌(カビ、キノコ)、酵母等が挙げられる。酵母としては、サッカロマイセス、シゾサッカロマイセス、クリプトコッカス、カンジタ等が挙げられる。
「XPS」は、X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy)の略称である。
図1図4における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。また、図2図4においては、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0016】
[抗菌材]
本発明の抗菌材は、複数の凸部を表面に有する、金属の酸化皮膜を有する。
図1は、本発明の抗菌材の一例を示す上面図であり、図2は、図1のII−II断面図である。図示例の抗菌材は、金属がアルミニウムの例である。
抗菌材10は、アルミニウム基材12と、アルミニウム基材12の表面に形成された酸化皮膜14とを有する。
【0017】
アルミニウムにおける通常の酸化皮膜は、複数の六角柱状のセルが集合したものであり、セルの中心には、酸化皮膜の表面からアルミニウム基材に向かってセルの軸方向に延びる細孔が形成されている。
図示例の酸化皮膜14においては、各セル16の細孔が後述する細孔径拡大処理によって拡大されて逆円錐状の凹部18が形成されている。細孔が拡大されて凹部18が形成されるに伴い、酸化皮膜14の表面及びその近傍においては、複数のセル16の境界がなす六方格子(図中の破線)及びその近傍に酸化皮膜14が残る。3つのセル16が接する六方格子の格子点及びその近傍では、酸化皮膜14が凹部18に浸食されず、針状突起の凸部20が形成される。2つのセル16が接する六方格子の格子線及びその近傍では、酸化皮膜14が凹部18に浸食されて凸部20よりも高さが低くなった尾根部22が、隣接する凸部20間をつなぐように形成される。
【0018】
金属は、陽極酸化によって細孔を有する酸化皮膜を形成できるものであればよい。金属としては、アルミニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、これら金属の2種以上からなる合金、これら金属の1種以上と他の金属との合金等が挙げられる。金属としては、複数の凸部を有する酸化皮膜を形成しやすい点から、アルミニウム又はその合金が好ましい。
金属基材の形態としては、蒸着膜、箔、板、これら以外の成形品等が挙げられる。
【0019】
隣接する凸部間の平均間隔は、20〜400nmであり、25〜350nmが好ましく、30〜300nmがより好ましい。隣接する凸部間の平均間隔が前記範囲の下限値以上であれば、複数の凸部を有する酸化皮膜を形成しやすい。隣接する凸部間の平均間隔が前記範囲の上限値以下であれば、抗菌効果が発現される。
「隣接する凸部間の平均間隔」は、電子顕微鏡観察によって、凸部の最頂部の中心から隣接する凸部の最頂部の中心までの距離を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0020】
凸部の平均高さは、50〜2500nmが好ましく、70〜2000nmがより好ましい。
「凸部の平均高さ」は、電子顕微鏡観察によって、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との高低差を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0021】
凸部は、抗菌効果がさらに高くなる点から、針状突起であることが好ましい。
針状突起とは、凸部の平均高さを隣接する凸部間の平均間隔で除したアスペクト比が1.5以上である凸部をいう。
凸部のアスペクト比(平均高さ/平均間隔)は、1.5〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜7がさらに好ましい。凸部のアスペクト比が前記範囲の下限値以上であれば、抗菌効果がさらに高くなる。凸部のアスペクト比が前記範囲の上限値以下であれば、凸部の耐久性が良好となる。
【0022】
酸化皮膜は、隣接する凸部間をつなぐように形成された、凸部よりも高さが低くされた尾根部を有することが好ましい。酸化皮膜が隣接する凸部間をつなぐ尾根部を有することによって、凸部が尾根部によって補強され、凸部の耐久性がさらに良好となる。
【0023】
以上説明した本発明の抗菌材にあっては、隣接する凸部間の平均間隔が20〜400nmである複数の凸部を表面に有するため、抗菌効果を発揮できる。また、凸部が金属の酸化皮膜から構成されているため、従来の硬化性樹脂の硬化物から構成された凸部に比べ、優れた抗菌効果を確実に発揮できる。金属の酸化皮膜から構成された凸部が、硬化性樹脂の硬化物から構成された凸部に比べ優れた抗菌効果を発揮できる理由は定かではないが、硬化性樹脂の硬化物に比べ、金属の酸化皮膜の方が硬く、この硬さが抗菌効果の発現に影響しているものと考えられる。
【0024】
[抗菌材の製造方法]
本発明の抗菌材の製造方法は、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、細孔の径を拡大させる工程との組み合わせを1回以上行うことによって、複数の凸部を表面に有する酸化皮膜を形成する方法である。
以下、酸化皮膜が、アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト)である場合を例にとり、本発明の抗菌材の製造方法を詳細に説明する。
【0025】
アルミニウムの酸化皮膜を表面に有する抗菌材は、例えば、下記工程(a)〜(f)を経て製造できる。細孔の配列の規則性はやや低下するが、工程(b)、(c)を行わず、工程(a)の後、工程(d)、(e)を繰り返してもよいし、工程(a)の後、工程(d)を1回だけ行ってもよい。
(a)アルミニウム基材を電解液中、陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と工程(e)を繰り返し行う工程。
【0026】
工程(a):
図3に示すように、アルミニウム基材12を陽極酸化すると、細孔24を有する酸化皮膜14が形成される。陽極酸化で形成される細孔の規則性は初期の段階ではきわめて低いが、陽極酸化を長時間行うことで細孔の規則性が向上する。陽極酸化の時間は5分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。ただし、陽極酸化を長時間行うと細孔の規則性は向上するが、比較的細孔が深くなる傾向にあるため、工程(b)の処理を行い、規則的な細孔の形成のための発生点として用いる。規則性を期待せず細孔を形成するのみであれば、所望の細孔深さとなるまでの処理時間を適宜設定すればよい。
【0027】
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下することがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等が挙げられる。
【0028】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7mol/L以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vのとき、隣接する細孔間の間隔が63nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を形成できる。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
【0029】
シュウ酸水溶液を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は0.7mol/L以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜100Vのとき、隣接する細孔間の間隔が100〜200nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を形成できる。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
【0030】
リン酸水溶液を電解液として用いる場合:
リン酸の濃度は2.5mol/L以下が好ましい。シュウ酸の濃度が2.5mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて細孔が壊れることがある。
化成電圧が180〜250Vのとき、隣接する細孔間の間隔が500nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を形成できる。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
【0031】
工程(b):
図3に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、アルミニウム基材12の表面の窪みを陽極酸化の細孔発生点26にすることで細孔の規則性を向上することができる。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0032】
工程(c):
図3に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材12を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔24を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0033】
工程(d):
図3に示すように、細孔24の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0034】
工程(e):
図3に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔24の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔24がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0035】
工程(f):
図3に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の凹部18及び3つの凹部18に囲まれた凸部20が形成された酸化皮膜14を有する抗菌材10が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0036】
複数の凸部を表面に有する酸化皮膜を形成するためには、工程(d)と工程(e)の繰り返し回数を多くする、工程(d)における細孔径拡大処理の時間を長くする等によって、酸化皮膜に上述した尾根部が形成されるまで、細孔の径を拡大すればよい。
隣接する凸部間の平均間隔は、陽極酸化によって形成される酸化皮膜における隣接する細孔間の間隔によって決まる。隣接する細孔間の間隔は、陽極酸化の化成電圧を低くすると小さくなり、化成電圧を高くすると大きくなる傾向がある。
【0037】
[積層体]
本発明の積層体は、上述の本発明の抗菌材からなる層を有する。
図4は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。図示例の積層体は、抗菌材における金属がアルミニウムの例である。
積層体30は、抗菌材からなる層32と、他の基材34とを有する。
抗菌材からなる層32は、他の基材34に接するアルミニウム基材12と、アルミニウム基材12の表面に形成された酸化皮膜14とを有する。
酸化皮膜14は、複数の凹部18と、凹部18に囲まれた凸部20と、隣接する凸部20間をつなぐように形成された、凸部20よりも高さが低くされた尾根部22とを有する。
【0038】
他の基材の材料としては、硬化性樹脂の硬化物、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。
他の基材の形態としては、フィルム、シート、板、これら以外の成形品等が挙げられる。
【0039】
本発明の積層体は、例えば、金属基材と他の基材とを有する積層体を製造し、積層体の金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、細孔の径を拡大させる工程との組み合わせを1回以上行うことによって製造できる。
具体的には、本発明の積層体がアルミニウム蒸着フィルムである場合は、アルミニウム蒸着フィルムの蒸着膜を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、細孔の径を拡大させる工程との組み合わせを1回以上行う。
【0040】
なお、本発明の積層体は、複数の凸部を有する金属の酸化皮膜を最表面に有するものであればよく、図示例の積層体30に限定されない。
例えば、金属基材が完全に陽極酸化されることによって、酸化皮膜14とこれに接する他の基材34とを有する積層体となっていてもよい。他の基材が透明なプラスチックフィルムであり、金属基材がアルミニウムの蒸着膜である場合は、蒸着膜を完全に陽極酸化することによって、複数の凸部を有するアルミナ層がプラスチックフィルムの表面に形成された抗菌性透明バリアフィルムとなる。
【0041】
[抗菌材の用途]
本発明の抗菌材は、例えば、菌の増殖を抑えたい箇所に設ける。
本発明の抗菌材や積層体の用途としては、例えば、以下のものが挙げられる。
医療用部材:医療用部材の詳細については、後述する。
フィルター:空気清浄機のフィルター、空調機器のフィルター、エアフィルター等。
水処理部材:浄水器、シャワーノズル、配管の内面等。
建材:内装材(壁紙、壁材、床材、天井材、ドア面材、カウンター等)、水回り、ウインドフィルム、外装材、手すり等。
包装資材:食品包装用フィルム(アルミニウム蒸着フィルム、バリアフィルム等)、容器、ボトル等。
家電用部材:タッチパネル、ディスプレイの前面材、加湿器タンク、洗濯機の洗濯槽等。
家具:テーブル、椅子、調理器具等。
家庭用品:押入用カビ防止材、屋根裏カビ防止材等。
車両用部材:内装材、つり革、手すり等。
農業用資材:ビニルハウス、水耕栽培施設、配管等。
【0042】
[医療用部材]
本発明の医療用部材は、本発明の抗菌材を有する。
本発明の医療用部材は、本発明の抗菌材からなるものであってもよく、本発明の抗菌材からなる層を有する積層体であってもよく、本発明の抗菌材や積層体と他の部材とを組み合わせたものであってもよい。
本発明の医療用部材は、人工臓器や医療器具そのものであってもよく、人工臓器、医療器具、医療機器等の部品であってもよく、医療施設の一部であってもよく、人工臓器、医療器具、医療機器等の包装資材であってもよい。
【0043】
人工臓器としては、デンタルインプラント(人工歯)、人工心臓、人工関節等が挙げられる。
医療器具としては、手術器具(メス、はさみ、鉗子、ピンセット、開創器、カテーテル、ステント、固定用ボルト等)、注射器、聴診器、打診器、検鏡、担架、歯科用器具(デンタルスケーラー、デンタルミラー等)等が挙げられる。
医療機器としては、手術台、人工透析器、輸液ポンプ、人工心肺装置、透析液供給装置、成分採血装置、人工呼吸器、X線撮影装置、心電計、超音波診断装置、粒子線治療装置、分析装置、ペースメーカ、補聴器、マッサージ器、等が挙げられる。
医療施設の一部としては、病室、手術室、浴室、トイレ等の内装材(壁紙、壁材、床材、天井材、ドア面材、カウンター等)、手すり、ドアノブ等が挙げられる。
【0044】
[抗菌性積層体]
本発明の抗菌性積層体は、非金属基板と金属酸化物層とを有する積層体であって、前記金属酸化物層が最表面に存在し、かつ、前記金属酸化物層がアニオンを含み、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計がXPSで分析したときに1.0atm%以上であることを特徴とする。
本発明の抗菌性積層体は、陽極酸化ポーラスアルミナにAg、Cu又はZn等を担持させることのみによって抗菌性を発揮させたものではない。本発明の抗菌性積層体は、高濃度の電解液で金属を陽極酸化してアニオンを被膜中にドープして、金属そのもので抗菌性を発揮している。
【0045】
<非金属基板>
前記非金属基板は、非金属からなる基板であれば特に限定されないが、例えば、樹脂又はガラスである。
前記樹脂の具体例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン及びナイロンであるが、これらに限定されない。
【0046】
<金属酸化物層>
前記金属酸化物層は、本発明の抗菌性積層体の最表面に存在する。
前記金属酸化物層は、アニオンを含む。
【0047】
前記金属酸化物層に含まれる金属は、特に限定されないが、バルブ金属が好ましい。
バルブ金属は、酸化力のある酸との接触又は陽極酸化処理等の酸化処理により表面に不働態の酸化皮膜を生じる金属である。バルブ金属の具体例は、アルミニウム、クロム、チタン及びこれらのうち2種以上の合金であるが、これらに限定されない。
前記バルブ金属としては、加工性が良く、安全性が高く、安価であることから、アルミニウムが好ましい。
なお、バルブ金属を除く金属を「非バルブ金属」という。
【0048】
前記金属酸化物層における、前記バルブ金属の存在比率の合計は、XPSで分析したときに10atm%以上であり、15atm%以上が好ましく、20atm%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、通常、40atm%である。
【0049】
XPSによる分析方法及び分析条件は、以下のとおりである。
X線光電子分光分析装置:アルバック・ファイ社製 Quantum−2000
X線源:Monochromated−Al−Kα線(出力16kV 34W)
取り出し角度:45°
測定エリア:300μm
【0050】
前記金属酸化物層における、非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計は、XPSで分析したときに1.0atm%以下が好ましい。下限は特に限定されないが、通常、0.0atm%である。本発明に係る抗菌性積層体は、最表面に銀、銅、酸化チタン、ヨウ素等の抗菌性材料を担持させることのみによって抗菌性を呈するものではなく、酸化皮膜そのものが抗菌性を呈するものである。
【0051】
前記非バルブ金属は、前記金属酸化物層に含まれる金属以外であり、具体的には銀、銅、チタン及びゲルマニウムが挙げられる。
【0052】
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ヨウ素原子がさらに好ましい。
【0053】
XPSによる分析方法及び分析条件は、前記バルブ金属の存在比率の合計の分析方法及び分析条件と同様である。
【0054】
前記金属酸化物層における、前記金属酸化物層に含まれるアニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計は、強い抗菌性を発揮できる観点から、XPS(X線光電子分光法)で分析したときに1.0atm%以上であり、2.5atm%以上が好ましく、3.0atm%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、通常、10atm%である。
【0055】
前記金属酸化物層における、前記金属酸化物層に含まれるアニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子の存在比率の合計を、上記の好ましい範囲とするためには、例えば、後述の[抗菌性積層体の製造方法]により製造すればよい。特に、多塩基酸の種類と濃度を調整することで、前記のアニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の存在比率の合計を調整することができる。
なお、XPSにおいては、ワイドスペクトルのピーク強度から、各元素の表面における存在比率(atm%)を求めることができる。
【0056】
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子は、イオウ原子が好ましい。この場合において、前記金属酸化物層における酸素原子の存在比率は、XPSで分析したときに45atm%以上が好ましく、55atm%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、通常、60atm%である。
【0057】
XPSによる分析方法及び分析条件は、前記バルブ金属の存在比率の合計の分析方法及び分析条件と同様である。
【0058】
前記イオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子がアニオンに由来するか否かは、XPSにおいて、ケミカルシフトで判定できる。
例えば、169.8±1.4にピークが出れば、アニオン由来のイオウ原子であると判定できる。また、290±1.3にピークが出れば、アニオン由来の炭素原子、132.5±0.4にピークが出れば、アニオン由来のリン原子と判定できる。
【0059】
前記アニオンは、硫酸イオン(SO2−)、リン酸イオン(PO3−)、シュウ酸イオン(C2−)、マロン酸イオン(C2−)、リンゴ酸イオン(C2−)及びクエン酸イオン(C3−)からなる群から選択される1種以上が好ましい。中でも、強い抗菌性を発揮できる観点から、硫酸イオンまたはシュウ酸イオンがより好ましく、硫酸イオンが特に好ましい。
【0060】
本発明の抗菌性積層体において、前記金属酸化物層の全光線透過率が、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、通常、95%である。前記金属酸化物層の全光線透過率が50%以上であると、中のものを視認する必要のある透明性の求められる用途において、好適に本発明の材料を用いることができる。
ここで、前記金属酸化物層の全光線透過率は、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」等を参考に従来公知の方法で測定できる。
【0061】
本発明の抗菌性積層体において、前記金属酸化物層の厚みは、50nm以上10μm以下が好ましく、55nm以上1μm以下がより好ましく、60nm以上500nm以下がさらに好ましい。前記金属酸化物層の厚みがこの範囲内であると、後述する陽極酸化処理の時間が長くなることを抑制することができる。
ここで、前記金属酸化物層の厚みは、断面をSEMで観察する等で確認することができる。
【0062】
本発明の抗菌性積層体において、前記金属酸化物層は、その最表面に複数の凸部を有してもよい。この場合において、隣接する凸部間の平均間隔は、20〜600nmの範囲とすればよい。表面に上記範囲の構造を設けることにより、親水性や撥水性などの機能をさらに付与することができる。
前記凸部は、針状突起が好ましい。
【0063】
<金属層>
前記抗菌性積層体は、さらに、金属層を有していてもよい。金属層に含まれる金属は、前記金属酸化物層に含まれる金属と同様であってもよい。また、樹脂フィルム上などに堆積された金属層を陽極酸化する場合、金属層と樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、厚みが数nmの各種金属薄膜を設けてもよい。
【0064】
<抗菌性積層体の使用方法及び用途>
本発明の抗菌性積層体の使用方法は、特に限定されないが、菌の増殖を抑えたい箇所に本発明の抗菌性積層体を配置することが好ましい。
本発明の抗菌性積層体の用途としては、例えば、以下のものが挙げられる。
医療用部材:医療用部材の詳細については、後述する。
フィルター:空気清浄機のフィルター、空調機器のフィルター、エアフィルター等。
水処理部材:浄水器、シャワーノズル、配管の内面等。
建材:内装材(壁紙、壁材、床材、天井材、ドア面材、カウンター等)、水回り、ウインドフィルム、外装材、手すり等。
包装資材:食品包装用フィルム(アルミニウム蒸着フィルム、バリアフィルム等)、容器、ボトル等。
家電用部材:タッチパネル、ディスプレイの前面材、加湿器タンク、洗濯機の洗濯槽等。
家具:テーブル、椅子、調理器具等。
家庭用品:押入用カビ防止材、屋根裏カビ防止材等。
車両用部材:内装材、つり革、手すり等。
農業用資材:ビニルハウス、水耕栽培施設、配管等。
【0065】
前記医療用部材は、本発明の抗菌性積層体のみからなるものであってもよく、本発明の抗菌性積層体と他の部材とを組み合わせたものであってもよい。
前記医療用部材は、人工臓器や医療器具そのものであってもよく、人工臓器、医療器具、医療機器等の部品であってもよく、医療施設の一部であってもよく、人工臓器、医療器具、医療機器等の包装資材であってもよい。
【0066】
人工臓器としては、デンタルインプラント(人工歯)、人工心臓、人工関節等が挙げられる。
医療器具としては、手術器具(メス、はさみ、鉗子、ピンセット、開創器、カテーテル、ステント、固定用ボルト等)、注射器、聴診器、打診器、検鏡、担架、歯科用器具(デンタルスケーラー、デンタルミラー等)等が挙げられる。
医療機器としては、手術台、人工透析器、輸液ポンプ、人工心肺装置、透析液供給装置、成分採血装置、人工呼吸器、X線撮影装置、心電計、超音波診断装置、粒子線治療装置、分析装置、ペースメーカ、補聴器、マッサージ器、等が挙げられる。
医療施設の一部としては、病室、手術室、浴室、トイレ等の内装材(壁紙、壁材、床材、天井材、ドア面材、カウンター等)、手すり、ドアノブ等が挙げられる。
【0067】
[抗菌性積層体の製造方法]
本発明の抗菌性積層体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある。)は、95質量%以上のバルブ金属を含む金属層の表面を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属酸化物層を生成する工程を含む。
【0068】
バルブ金属は、上述したとおりである。
金属層が95質量%以上のバルブ金属を含むとは、バルブ金属の純度が95質量%以上であることを意味する。バルブ金属の純度は、95質量%以上であれば特に限定されないが、99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましく、99.99質量%以上がさらに好ましい。前記バルブ金属の純度が95質量%であると、陽極酸化の際に異種金属が脱落し、表面にマクロな欠陥が発生することを抑制することができる。
【0069】
多塩基酸は、塩基度が2以上の酸である。ここで、塩基度は、その酸の1分子中に含まれる水素原子のうち、金属原子で置き換えられる水素原子の数である。
前記多塩基酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸(二塩基酸)、リン酸(三塩基酸)、シュウ酸(二塩基酸)、マロン酸(二塩基酸)、リンゴ酸(二塩基酸)及びクエン酸(三塩基酸)が挙げられる。
前記多塩基酸としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、硫酸、リン酸及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、硫酸がさらに好ましい。
本発明の製造方法は、前記多塩基酸を1種使用してもよいし、2種以上使用してもよい。
【0070】
前記多塩基酸の濃度は、0.04M(0.04mol/dm)以上であれば特に限定されないが、0.3M(0.3mol/dm)以上が好ましく、3M(3mol/dm)以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、濃度によって酸化力を有するようになる場合は、酸化力を有しない濃度が好ましい。
前記バルブ金属がアルミニウムであり、前記多塩基酸が硫酸である場合は、前記硫酸の濃度は、3M(0.3mol/dm)以上が好ましく、6M(6mol/dm)以上がより好ましい。濃度の上限は、通常、15M(15mol/dm)以下であり、12M(12mol/dm)以下が好ましい。
【0071】
本発明の製造方法において、陽極酸化は、1回に限定されず、2回以上行ってもよい。2回以上行うときは、多塩基酸の種類及び濃度を変更してもよい。
【0072】
以下では、バルブ金属としてアルミニウムを用いる場合を例にとり、本発明の製造方法を具体的に説明する。
【0073】
本発明の抗菌性積層体は、例えば、以下の(a)及び(b)の処理を経て製造できる。
(a)アルミニウム基材を電解液中、陽極酸化して酸化皮膜を形成する
(b)アルミニウム基材を陽極酸化したものを非金属基材に貼り付ける
【0074】
上記(a)の処理について、図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、アルミニウム基材112を陽極酸化すると、細孔124を有する酸化皮膜114が形成され、陽極酸化被膜付きアルミニウム板110が得られる。陽極酸化で形成される細孔の規則性は、陽極酸化を長時間行うほど向上する。しかし、本発明の抗菌性積層体の抗菌性は、細孔の規則性に影響されるものではないので、長時間の陽極酸化を行う必要はない。
【0075】
アルミニウムの純度は95%以上が好ましく、99%以上がより好ましく、99.5%以上がさらに好ましく、99.9%以上がいっそう好ましい。アルミニウムの純度が高いほど、陽極酸化に要する時間を短くできることがある。
【0076】
電解液としては、硫酸、シュウ酸水溶液又はリン酸水溶液が好ましい。
硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.3M以上であり、3M以上が好ましく、3〜4.5Mがより好ましい。陽極酸化の際の通電時間は、30秒〜15分が好ましく、1〜10分がより好ましく、1〜5分がさらに好ましい。陽極酸化の際の印加電圧は、15〜50Vが好ましく、20〜30Vがより好ましい。陽極酸化の際の電解液の温度は、0〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
シュウ酸水溶液を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は0.01M以上が好ましく、0.01〜0.7Mがより好ましく、0.01〜0.1Mがさらに好ましい。陽極酸化の際の通電時間は、30秒〜15分が好ましく、1〜10分がより好ましく、1〜5分がさらに好ましい。陽極酸化の際の印加電圧は、50〜100Vが好ましく、60〜100Vがより好ましい。陽極酸化の際の電解液の温度は、0〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
リン酸水溶液を電解液として用いる場合、リン酸の濃度は0.01M以上が好ましく、0.01〜2.5Mがより好ましく、0.05〜1Mがさらに好ましい。陽極酸化の際の通電時間は、1〜15分が好ましく、1〜10分がより好ましく、5〜10分がさらに好ましい。陽極酸化の際の印加電圧は、100〜300Vが好ましく、150〜250Vがより好ましい。陽極酸化の際の電解液の温度は、0〜20℃が好ましく、0〜10℃がより好ましい。
【0077】
(b)の処理により、抗菌性積層体が得られる。本処理において用いる非金属基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン等からなる樹脂基板、これらの積層体を用いることが好ましい。
【0078】
(b)の処理を行わず、アルミニウム基材を非金属基材に貼り付けた後、(a)の陽極酸化処理を行ってもよい。また、スパッタリングや蒸着などの方法により、非金属基材上にアルミニウムを成膜したものを、アルミニウム基材として(a)の陽極酸化処理に供しても良い。非金属基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン等からなる樹脂基板、これらの積層体を用いることが好ましい。
【0079】
また、(a)の陽極酸化処理により、アルミニウム基材を完全に陽極酸化することで、金属酸化物層を透明にすることができる。この際に、抗菌性積層体を透明にするために、樹脂基板としては透光性の樹脂基板を用いることが好ましい。アルミニウム基材を完全に陽極酸化する工程に必要な時間を短縮するため、アルミニウム基材は薄膜であることが好ましい。具体的には、アルミニウム基材の厚みは、50nm以上1μm以下であることが好ましく、55nm以上500nm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の実施の形態は、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
【0081】
[実施例1]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
電解研磨したアルミニウム板について、0.3mol/Lシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度17℃の条件で60分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部又は全部を除去した。
工程(c):
酸化皮膜を除去したアルミニウム板について、0.3mol/Lシュウ酸水溶液中、直流40V、温度17℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、30℃の5質量%リン酸に11分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
細孔径拡大処理したアルミニウム板について、0.3mol/Lシュウ酸水溶液中、直流40V、温度17℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
工程(d)及び工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い、平均間隔100nmの略円錐形状の凹部及び凹部に囲まれた凸部を有する酸化皮膜(アルマイト)が形成された抗菌材(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。また、抗菌材の酸化皮膜の表面の走査型電子顕微鏡像を図5に示し、抗菌材の断面の走査型電子顕微鏡像を図6に示す。
【0082】
[実施例2]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
電解研磨したアルミニウム板について、0.3mol/L硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部又は全部を除去した。
工程(c):
酸化皮膜を除去したアルミニウム板について、0.3mol/L硫酸中、直流25V、温度17℃の条件で6秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、30℃の10質量%リン酸に4分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
細孔径拡大処理したアルミニウム板について、0.3mol/L硫酸中、直流25V、温度17℃の条件で6秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
工程(d)及び工程(e)を合計で5回繰り返し、平均間隔63nmの略円錐形状の凹部及び凹部に囲まれた凸部を有する酸化皮膜(アルマイト)が形成された抗菌材(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0083】
[実施例3]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
電解研磨したアルミニウム板について、0.05mol/Lシュウ酸水溶液中で、直流80V、温度17℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部又は全部を除去した。
工程(c):
酸化皮膜を除去したアルミニウム板について、0.05mol/Lシュウ酸水溶液中、直流80V、温度17℃の条件で15秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、30℃の5質量%リン酸に15分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
細孔径拡大処理したアルミニウム板について、0.05mol/Lシュウ酸水溶液中、直流80V、温度17℃の条件で15秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
工程(d)及び工程(e)を合計で5回繰り返し、平均間隔200nmの略円錐形状の凹部及び凹部に囲まれた凸部を有する酸化皮膜(アルマイト)が形成された抗菌材(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0084】
[実施例4]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
電解研磨したアルミニウム板について、0.1mol/Lリン酸水溶液中で、直流195V、温度0℃の条件で60分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部又は全部を除去した。
工程(c):
酸化皮膜を除去したアルミニウム板について、0.1mol/Lリン酸水溶液中、直流195V、温度0℃の条件で90秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、30℃の10質量%リン酸に35分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
細孔径拡大処理したアルミニウム板について、0.1mol/Lリン酸水溶液中、直流195V、温度0℃の条件で90秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
工程(d)及び工程(e)を合計で4回繰り返し、平均間隔500nmの略円錐形状の凹部及び凹部に囲まれた凸部を有する酸化皮膜(アルマイト)が形成されたアルミニウム板(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
平均間隔100nmの略円錐形状の凹部を有する酸化皮膜が形成されたアルミニウム板をモールドとして用意した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの20質量部、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート(東亞合成社製、アロニックスM−260、ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位は13)の70質量部、ヒドロキシエチルアクリレートの10質量部及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)184)の1.5質量部を混合し、アクリル系硬化性樹脂組成物を得た。
【0086】
モールドの凹部側の表面にアクリル系硬化性樹脂組成物を塗布し、この上に厚さ80μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記す。)フィルムを被せた。
紫外線照射機を用いて、積算光量1000mJ/cmでPETフィルム越しに紫外線を照射し、アクリル系硬化性樹脂組成物の硬化を行った後、モールドを分離し、複数の凸部を有する硬化樹脂層が表面に形成されたPETフィルム(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0087】
[比較例2]
平均間隔200nmの略円錐形状の凹部を有する酸化皮膜が形成されたアルミニウム板をモールドとして用いた以外は、比較例1と同様にして複数の凸部を有する硬化樹脂層が表面に形成されたPETフィルム(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0088】
[比較例3]
平均間隔500nmの略円錐形状の凹部を有する酸化皮膜が形成されたアルミニウム板をモールドとして用いた以外は、比較例1と同様にして複数の凸部を有する硬化樹脂層が表面に形成されたPETフィルム(供試品)を得た。凸部の平均間隔、平均高さ、アスペクト比を表1に示す。
【0089】
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)に準拠し、実施例1〜4、比較例1〜4の供試品について抗菌性試験を行った。
【0090】
1.供試菌
黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus NBRC 12732
大腸菌:Escherichia coli NBRC 3972
【0091】
2.試験片の調製
供試品(50mm×60mm)を75%エタノールに20分間浸漬した後、十分に乾燥させたものを試験片とした。試験片は、例ごとに3個用意した。
無加工試験片としては、下記のものを用意した。
実施例1〜4、比較例1:対照品としてアルミニウム板(50mm×50mm)を75%エタノールに20分間浸漬した後、十分に乾燥させたものを無加工試験片とした。無加工試験片は、例ごとに6個用意した。
比較例1〜3:対象品として市販のアクリルフィルムを用いた。対照品(50mm×50mm)を75%エタノールに20分間浸漬した後、十分に乾燥させたものを無加工試験片とした。無加工試験片は、例ごとに6個用意した。
【0092】
3.試験菌液の調製
供試菌を普通寒天培地に移植し、35℃で24時間培養した後、1白金耳を再度普通寒天培地に移植し、35℃で20時間培養した。この菌体を1/500濃度普通ブイヨン培地に均一に分散させたものを試験菌液とした。
【0093】
4.試験操作
試験片の加工面に試験菌液0.4mLを滴下し、その上から試験片と同様の処理をしたポリエチレンテレフタレート板(40mm×40mm)を被せ、試験菌液が全体に行き渡るように押さえつけた。また、無加工試験片についても同様な操作を行い、試験片3個及び無加工試験片3個を温度35℃、相対湿度90%以上で24時間静置した。無加工試験片の残り3個については、試験菌液接種直後の菌数測定に用いた。
【0094】
5.菌数測定
24時間静置後の試験片及び無加工試験片を、それぞれ滅菌ストマッカー袋に入れ、これにSCDLPブイヨン培地10mLを加え、菌液を十分に洗い出して試料とした。試料1mLを、標準寒天培地を用いて35℃で48時間培養した後、生菌数を測定した。接種直後の無加工試験片についても同様の操作を行った。
【0095】
6.抗菌活性値
下記式から抗菌活性値を求めた。結果を表1に示す。抗菌活性値が黄色ブドウ球菌、大腸菌の両方において2.0以上であれば、抗菌効果があると判断される。
R=(U−U)−(A−U
ただし、Uは、無加工試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値であり、Uは、無加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値であり、Aは、試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値である。なお、生菌数は、試験片1cm当たりに換算した値とした。
【0096】
【表1】
【0097】
[実施例5]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、0.3M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
陽極酸化被膜付きアルミニウム板の表面の走査型電子顕微鏡像を図8に示し、陽極酸化被膜付きアルミニウム板の断面の走査型電子顕微鏡像を図9に示す。
【0098】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0099】
[実施例6]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、0.05Mシュウ酸水溶液中で、直流80V、温度17℃の条件で100秒間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
【0100】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0101】
[実施例7]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、0.1Mリン酸水溶液中で、直流195V、温度0℃の条件で8分間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
【0102】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0103】
[比較例4]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化したアルミニウム板(50mm×50mm)を供試品とした。
【0104】
[比較例5]
アクリルフィルム(50mm×50mm)を供試品とした。
【0105】
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)に準拠し、実施例5〜7、比較例4、5の供試品について抗菌性試験を行った。
【0106】
1.供試菌
黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus NBRC 12732
大腸菌:Escherichia coli NBRC 3972
【0107】
2.試験片の調製
供試品(50mm×60mm)を75%エタノールに20分間浸漬した後、十分に乾燥させたものを試験片とした。試験片は、例ごとに2個用意した。
【0108】
3.試験菌液の調製
供試菌を普通寒天培地に移植し、35℃で24時間培養した後、1白金耳を再度普通寒天培地に移植し、35℃で20時間培養した。この菌体を1/500濃度の普通ブイヨン培地に均一に分散させたものを試験菌液とした。
【0109】
4.試験操作
実施例5〜7については、試験片の加工面に試験菌液0.4mLを滴下し、その上から試験片と同様の処理をしたポリエチレンテレフタレート板(40mm×40mm)を被せ、試験菌液が全体に行き渡るように押さえつけた。
比較例4、5については、試験片の片面について同様の操作を行った。
試験片3個を温度35℃、相対湿度90%以上で24時間静置した。
【0110】
5.菌数測定
24時間静置後の試験片を、それぞれ滅菌ストマッカー袋に入れ、これにSCDLPブイヨン培地10mLを加え、菌液を十分に洗い出して試料とした。試料1mLを、標準寒天培地を用いて35℃で48時間培養した後、生菌数を測定した。
測定結果を表1に示した。なお、実施例5〜7、比較例4、5の生菌数は、試験片2個から得られた結果の平均値である。
【0111】
6.初発菌数の測定
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化したアルミニウム板(50mm×50mm)を75%エタノールに20分間浸漬した後、十分に乾燥させたものを無加工試験片とした。無加工試験片は、3個用意した。
無加工試験片の片面に試験菌液0.4mLを滴下し、その上から試験片と同様の処理をしたポリエチレンテレフタレート板(40mm×40mm)を被せ、試験菌液が全体に行き渡るように押さえつけた。無加工試験片を滅菌ストマッカー袋に入れ、これにSCDLPブイヨン培地10mLを加え、菌液を十分に洗い出して試料とした。試料1mLを、標準寒天培地を用いて35℃で48時間培養した後、生菌数(初発菌数)を測定した。測定結果を表1に示した。生菌数は3個の試験片から得られた結果の平均値である。
【0112】
7.抗菌性の評価
初発菌数に比べて生菌数が1/100以下(1%以下)になったものについて、抗菌性ありと評価した。評価を表1に示した。
抗菌性あり・・・○
一部菌に抗菌性あり・・・△
抗菌性なし・・・×
[結果の説明]
実施例5、6は、黄色ブドウ球菌、大腸菌の増殖を強く抑制していた。電解液に硫酸を使用した実施例5は、特に優れた抗菌性を示した。リン酸を電解液として用いた実施例7は黄色ブドウ球菌の増殖を抑制できたが、大腸菌に対しては効果が弱かった。
【0113】
特に強い効果を示した、硫酸を電解液として用いた供試品について、JIS Z 2801:2010よりも厳しい条件下で、さらに効果の検証を行った。
【0114】
[実施例8]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、0.3M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
【0115】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0116】
[実施例9]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、0.3M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行った。さらに、熱処理(300℃、10分)を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0117】
[実施例10]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、6M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行った。
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0118】
[実施例11]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、8M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
【0119】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
【0120】
[実施例12]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
電解研磨したアルミニウム板について、12M硫酸中で、直流25V、温度17℃の条件で1分間陽極酸化を行い、陽極酸化被膜付きアルミニウム板を得た。
【0121】
得られた陽極酸化被膜付きアルミニウム板をポリエチレン板に貼り付けて、抗菌性積層体(供試品)を製造した。
[実施例13]
厚さ0.2mmのポリプロピレンフィルム基材(アクリサンデー社製PPクラフトフィルムPF−11)の表面に、スパッタリング法により厚み50nm、純度99.999%のアルミニウム層を成膜し、アルミニウム積層プリプロピレンフィルムを得た。
得られたアルミニウム積層プリプロピレンフィルムを、ディップコーターを用いて2mm/分の速さで徐々に電解液に浸漬させながら、直流25V、温度17度の条件で陽極酸化し、成膜したアルミニウム層がほぼ完全に陽極酸化された抗菌性積層体(供試品)を製造した。電解液には12M硫酸を用いた。得られた積層体は、アルミニウム層が完全に陽極酸化されており、透光性であった。
【0122】
[比較例6]
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化したアルミニウム板(50mm×50mm)を供試品とした。
【0123】
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)の内容を一部改変し、実施例8〜13、比較例6の供試品について抗菌性試験を行った。具体的には、菌液調整の際、菌体を均一に分散する普通ブイヨン培地の濃度を、JIS規格よりも5倍濃い1/100濃度とした。それ以外は、実施例5〜7と同様の作業を行い、生菌数を測定した。測定結果を表2に示した。なお、生菌数は3個の試験片から得られた結果の平均値である。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
[抗菌性試験の結果の説明]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)よりも細菌が増殖しやすい環境下で行った試験では、実施例8、9は、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制できたが、大腸菌に対しては効果が弱かった。一方、実施例10〜13は、黄色ブドウ球菌、大腸菌の双方の増殖を強く抑制できた。
実施例8、9から、熱処理の有無によっては、抗菌性に違いが出なかった。
【0127】
[XPS分析]
実施例8〜12で用いた試験片の表面について以下の条件で測定を行ない、金属酸化物層の表面における、各原子の存在比率を求めた。
X線光電子分光分析装置:アルバック・ファイ社製Quantum−2000
X線源:Monochromated−Al−Kα線(出力16kV、34W)
取り出し角度:45°
測定エリア:300μm□
得られた結果を表4に示す。なお、表中の数字はatm%を表している。
【0128】
[XPS分析の結果の説明]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)よりも細菌が増殖しやすい環境下で行った試験でも効果を示した試験片の表面からは、硫酸電解液のアニオン由来のSが検出された。さらに、陽極酸化に使用する電解液の濃度により、表面の電解液由来のアニオン由来元素を多くできることが明らかになった。また、実施例8、9から、熱処理の有無によっては、表面状態に大きな違いは発生しなかった。また、Cのピーク位置はC−C、C−H結合に由来する285evにシャープなピークが観察され、カルボキシル基に由来する290±1.3evに目立ったピークが観測されなかったために、Cはアニオン由来ではなく、表面に付着した汚れ等に由来するものと判断した。
【0129】
【表4】
【0130】
[透過率の測定]
実施例13で得られた抗菌性積層体及びその製造に用いたポリプロピレンフィルム基材(ブランクフィルム)について、全光線透過率の測定を行った。測定にはJIS K 7136:2000に準拠したヘイズメーター:スガ試験機社製を用いた。結果を図10に示す。結果から明らかなように、実施例13で得られた抗菌性積層体は可視光の全波長帯の光を透過していた。
【0131】
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)の内容を一部改変し、アクリル板、アルミニウム板(アルミ板)及び実施例13の供試品について抗菌性試験を行った。具体的には、菌液調整の際、菌体を均一に分散する普通ブイヨン培地の濃度を、JIS規格よりも10倍濃い1/50濃度、25倍濃い1/20、50倍濃い1/10とし、それぞれの培地濃度で抗菌性試験を実施した。測定結果を表5に示した。なお、生菌数は3個の試験片から得られた結果の平均値である。
【0132】
【表5】
【0133】
[抗菌性試験の結果の説明]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)よりも大きく細菌が増殖しやすい環境下で行った試験であっても、実施例13の抗菌性積層体は黄色ブドウ球菌、大腸菌の双方の増殖を強く抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の抗菌材及び抗菌性積層体は、薬剤を用いることなく優れた抗菌効果を発揮できることから、医療用部材、食品用包装資材等として有用である。
【符号の説明】
【0135】
10 抗菌材
12 アルミニウム基材
14 酸化皮膜
16 セル
18 凹部
20 凸部
22 尾根部
24 細孔
26 細孔発生点
30 積層体
32 抗菌材からなる層
34 他の基材
110 陽極酸化被膜付きアルミニウム板
112 アルミニウム基材
114 酸化皮膜
124 細孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】