特表-21006234IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2021-6234紙ストロー用水性接着剤及びそれを用いた紙ストロー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2021年1月14日
【発行日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】紙ストロー用水性接着剤及びそれを用いた紙ストロー
(51)【国際特許分類】
   C09J 129/02 20060101AFI20210816BHJP
   C09J 123/04 20060101ALI20210816BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20210816BHJP
   C09J 125/04 20060101ALI20210816BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   C09J129/02
   C09J123/04
   C09J133/04
   C09J125/04
   C09J109/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
【出願番号】特願2020-555261(P2020-555261)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年7月6日
(11)【特許番号】特許第6810307号(P6810307)
(45)【特許公報発行日】2021年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2019-127055(P2019-127055)
(32)【優先日】2019年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,IT,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田岡 悠太
(72)【発明者】
【氏名】今岡 依理子
(72)【発明者】
【氏名】谷田 達也
(72)【発明者】
【氏名】仲前 昌人
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA031
4J040DA032
4J040DB021
4J040DD022
4J040DD031
4J040DE011
4J040DF031
4J040GA01
4J040LA01
4J040MA09
4J040NA10
(57)【要約】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び水を含有する紙ストロー用水性接着剤であって、当該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99である、接着剤である。当該水性接着剤は、特定の構造を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有することで、高速塗工性、皮膜強度、初期接着性、動的耐水性及び耐酸性のバランスに優れ、高速塗工性、皮膜強度及び耐酸性に特に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び水を含有する紙ストロー用水性接着剤であって、当該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99である、接着剤。
【請求項2】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が水に溶解した、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の粘度平均重合度が200〜5000であり、けん化度が80〜99.7モル%である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)を分散質として含有する水性エマルジョンからなる、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤。
【請求項5】
重合体(B)が、ビニルエステル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン単量体及びジエン単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する単量体単位を、全単量体単位に対して、70質量%以上含有する、請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
前記水性エマルジョンの分散剤がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)である、請求項4又は5に記載の接着剤。
【請求項7】
さらにポリビニルアルコール(C)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤。
【請求項8】
ポリビニルアルコール(C)の粘度平均重合度が200〜5000であり、けん化度が80〜99.7モル%である、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
重合体(B)に対する、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の質量比(A)/(B)が2/98〜80/20である、請求項4〜8のいずれかに記載の接着剤。
【請求項10】
さらに無機充填剤を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤。
【請求項11】
さらに共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物を、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して、0.000001〜0.01質量部含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤を用いて紙基材同士を接着してなる、紙ストロー。
【請求項13】
エチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99であるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する、紙ストロー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する紙ストロー用水性接着剤に関する。詳しくは、初期接着性、動的耐水性、皮膜の硬さ、高速塗工性、及び耐酸性に優れた紙ストロー用水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙ストローは、雑貨やインテリア、部屋の装飾などの工作、アート用として使用されてきた。しかし、近年マイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻化しており、飲料用プラスチックストローの代替品として、環境にやさしい飲料用紙ストローが注目を集めている。
【0003】
現在紙ストローは、一般的な紙管と同様の方法で製造されることが多い。例えば、接着剤を原紙に塗布し、これを金属製芯棒に積層させつつラセン状に巻き付けることにより紙ストローが製造されている。接着剤としては、従来の紙管用接着剤と同様に、澱粉、ポリビニルアルコール(以下、PVAと称することがある)、酢酸ビニル樹脂エマルジョン等が用いられている。
【0004】
従来の紙管用接着剤としては、例えば、酸触媒を用いてビニルエステル系重合体をけん化して得られるPVAを用いた接着剤(特許文献1)や、PVAと硫酸の2価以上の金属塩を含有するクレーからなる接着剤(特許文献2)が報告されており、これらの接着剤は高速塗工性や初期接着力が改善されている。また、特許文献3では、PVAを保護コロイドとして用いて酢酸ビニルモノマーとN−メチロールアクリルアミドを共重合したエマルジョンが提案され、N−メチロールアクリルアミド単量体単位の架橋反応により高い耐水性を達成している。
【0005】
また、PVAの特定の性能を向上させるために、各種変性PVAの開発が行われており、例えば、特許文献4では、従来のPVAと比較して高い耐水性を発現する水性エマルジョンとして、炭素数4以下のα−オレフィン単位を特定の割合で含有するPVAを分散剤とし、エチレン性不飽和単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を用いた(共)重合体を分散質とする水性エマルジョンが提案されている。さらに、特許文献5及び6では、エチレン−ビニルアルコール共重合体を保護コロイドとして、酢酸ビニル、又は酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルを乳化(共)重合する方法が提案されている。これらの方法で得られる水性エマルジョンは、耐水性や初期接着性が改善されている。特許文献7には、溶液安定性および耐水接着性の改善を目的として、エチレン変性PVAを用いた接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−84478
【特許文献2】特開平4−239085
【特許文献3】特開平10−121017
【特許文献4】特開平11−106727
【特許文献5】特開2000−119621
【特許文献6】特開2001−123138
【特許文献7】特開2001−172593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙ストロー用接着剤は、紙管用接着剤に求められる性質(例えば、高速塗工性、初期接着性、皮膜強度、耐水接着性)に加え、紙ストローの用途に特有の性質も求められる。例えば、氷の入った飲料などを攪拌しても耐え得る動的耐水性や、ぶどうジュースなどpHの低い飲料にも使用できる耐酸性である。しかしながら、特許文献1及び2に記載の接着剤は、溶液の安定性や耐水接着性に問題があり、工業的に十分満足のいくものではなかった。また、特許文献3に記載のエマルジョンは耐酸性に問題があったうえに、エマルジョンの安定性が低いため、高速塗工性や皮膜強度も不十分であった。特許文献4〜6に記載のエマルジョンは、皮膜強度や動的耐水性が十分でないうえに、エマルジョンの安定性が低いため、高速塗工性も不十分であった。さらに、特許文献7に記載の接着剤は、高速塗工性が工業的に満足のいくものではなかった。
【0008】
したがって、本発明は、高速塗工性、皮膜強度、初期接着性、動的耐水性及び耐酸性のバランスに優れる、紙ストロー用接着剤を提供することを目的とする。また、上記特性を満たす紙ストローを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する水性接着剤が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び水を含有する紙ストロー用水性接着剤であって、当該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99である、接着剤;
[2]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が水に溶解した、上記[1]に記載の接着剤;
[3]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の粘度平均重合度が200〜5000であり、けん化度が80〜99.7モル%である、上記[1]又は[2]に記載の接着剤;
[4]エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)を分散質として含有する水性エマルジョンからなる、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接着剤;
[5]重合体(B)が、ビニルエステル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン単量体及びジエン単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する単量体単位を、全単量体単位に対して、70質量%以上含有する、上記[4]に記載の接着剤;
[6]前記水性エマルジョンの分散剤がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)である、上記[4]又は[5]に記載の接着剤;
[7]さらにPVA(C)を含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤;
[8]PVA(C)の粘度平均重合度が200〜5000であり、けん化度が80〜99.7モル%である、上記[7]に記載の接着剤;
[9]重合体(B)に対する、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の質量比(A)/(B)が2/98〜80/20である、上記[4]〜[8]のいずれかに記載の接着剤;
[10]さらに無機充填剤を含む、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の接着剤;
[11]さらに共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物を、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して、0.000001〜0.01質量部含有する、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の接着剤;
[12]上記[1]〜[11]のいずれかに記載の接着剤を用いて紙基材同士を接着してなる、紙ストロー;
[13]エチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99であるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する、紙ストローに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紙ストロー用水性接着剤は、特定の構造を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有することで、高速塗工性、皮膜強度、初期接着性、動的耐水性及び耐酸性のバランスに優れ、高速塗工性、皮膜強度及び耐酸性に特に優れる。さらに、共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物や無機充填材を添加したり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を分散剤として含有する水性エマルジョンとすることにより、前記水性接着剤の初期接着性や動的耐水性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例で用いた重合装置の概略図である。
図2】本発明で用いられるワイドパドル翼の例の概略図である。
図3】実施例において、接着剤の評価に使用した3本ロールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性接着剤は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び水を含有する紙ストロー用水性接着剤であって、当該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99であるものである。
【0014】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)]
本発明の水性接着剤に含まれるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は、エチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99であることを特徴とする。この点について、以下説明する。
【0015】
(エチレン単位のブロックキャラクター)
エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99であることが、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の大きな特徴である。前記ブロックキャラクターが0.90以上であることにより、水性接着剤の高速塗工性及び初期接着性、並びに形成される皮膜の強度が向上する。当該ブロックキャラクターは、好適には0.93以上であり、より好適には0.95以上である。一方、前記ブロックキャラクターは0.99以下である。前記ブロックキャラクターが0.99以下であることにより、水性接着剤の動的耐水性及び形成される皮膜の強度が向上する。
【0016】
なお、前記ブロックキャラクターとは、エチレン単位と、ビニルエステル単位のけん化によって生じるビニルアルコール単位の分布を表した数値であり、0から2の間の値をとる。0が完全にブロック的にエチレン単位又はビニルアルコール単位が分布しているということを示し、値が増加するにつれて交互性が増していき、1がエチレン単位とビニルアルコール単位が完全にランダムに存在し、2がエチレン単位とビニルアルコール単位が完全に交互に存在することを示している。前記ブロックキャラクターは13C−NMRによって以下のとおり求められる。まずエチレン−ビニルアルコール共重合体をけん化度99.9モル%以上にけん化した後、メタノールで十分に洗浄を行い、90℃で2日間減圧乾燥させる。得られた完全けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体をDMSO−dに溶解させた後、得られた試料を500MHzの13C−NMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定する。得られたスペクトルチャートからT.Moritani and H.Iwasaki,11,1251−1259,Macromolecules(1978)に記載の方法で帰属、算出したビニルアルコール・エチレンの2単位連鎖のモル分率(AE)、ビニルアルコール単位のモル分率(A)、エチレン単位のモル分率(E)を用いて下記式よりエチレン単位のブロックキャラクター(η)を求める。
η=(AE)/{2×(A)×(E)}
【0017】
上記で規定されるエチレン単位のブロックキャラクターを有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は、後述する重合工程とけん化工程を含む特別な製造方法によって得ることができる。この製造方法についてはのちに詳細に説明する。本発明者らは、エチレン単位のブロックキャラクターが上述した範囲を満足するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を用いることによって、高速塗工性、皮膜強度、初期接着性、動的耐水性及び耐酸性のバランスに優れ、特に、高速塗工性、皮膜強度及び耐酸性が高い水性接着剤が得られることを見出した。以下、当該エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)についてより詳細に説明する。
【0018】
(エチレン−ビニルエステル共重合体)
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は、エチレンとビニルエステルを共重合してエチレン−ビニルエステル共重合体を得た後に、当該エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することにより得られる。用いられるビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが好ましい。
【0019】
(エチレン単位の含有率)
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位の含有率は1モル%以上20モル%未満である。エチレン単位の含有率が1モル%未満の場合、得られる接着剤の動的耐水性及び高速塗工性が不十分となる。エチレン単位の含有率は、好適には1.5モル%以上であり、より好適には2モル%以上である。一方、エチレン単位の含有率が20モル%以上の場合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体が水に不溶となり、接着剤の調製が困難となる。エチレン単位の含有率は、好適には15モル%以下であり、より好適には10モル%以下であり、さらに好適には8.5モル%以下である。
【0020】
エチレン単位の含有率は、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体の前駆体又は再酢化物であるエチレン−ビニルエステル共重合体のH−NMRから以下の方法により求められる。試料のエチレン−ビニルエステル共重合体の再沈精製をn−ヘキサンとアセトンの混合溶液を用いて3回以上行った後、80℃で3日間減圧乾燥して分析用のエチレン−ビニルエステル共重合体を作製する。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体をDMSO−dに溶解し、80℃でH−NMR(500MHz)測定を行う。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピーク(4.7〜5.2ppm)とエチレン及びビニルエステルの主鎖メチレンに由来するピーク(0.8〜1.6ppm)を用いてエチレン単位の含有率を算出できる。
【0021】
(けん化度)
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のけん化度は、好適には80モル%以上、より好適には82モル%以上、さらに好適には85モル%以上である。一方、けん化度は、好適には99.7モル%以下、より好適には99モル%以下、さらに好適には98.5モル%以下である。けん化度が上記下限値以上の場合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)水溶液の透明性、及び得られる接着剤の動的耐水性がさらに向上する。一方、けん化度が上記上限値以下である場合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を安定に製造しやすいとともに、後述する水性エマルジョンを調製する際に凝集物が発生しづらく重合安定性が向上する。エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のけん化度はJIS K6726(1994年)に準じて測定できる。
【0022】
(粘度平均重合度)
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の粘度平均重合度は、好適には200以上、より好適には250以上、さらに好適には300以上、特に好適には400以上である。一方、粘度平均重合度は、好適には5000以下、より好適には4500以下、さらに好適には4000以下、特に好適には3500以下である。粘度平均重合度が上記下限値以上の場合は、得られる水性接着剤の造膜性が優れ、これに起因して動的耐水性がさらに向上する。一方、粘度平均重合度が上記上限値以下の場合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が溶解した水性接着剤の粘度が高くなり過ぎず、取り扱い易い。粘度平均重合度PはJIS K6726(1994年)に準じて測定できる。すなわち、本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)をけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](L/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
【0023】
(他の単量体単位)
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位、エチレン単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位を含有していてもよい。このような他の単量体単位としては、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルに由来する単位等が挙げられる。これらの他の単量体単位の含有率は、使用される目的や用途等によって異なるが、好適には10モル%以下であり、より好適には5モル%未満であり、さらに好適には1モル%未満であり、特に好適には0.5モル%未満である。
【0024】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の製造方法]
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の好適な製造方法は、エチレンとビニルエステルを反応させてエチレン−ビニルエステル共重合体を得た後に、該エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の製造方法であって、エチレン−ビニルエステル共重合体を得る際に、(a)重合槽内で、ワイドパドル翼を用いて、単位体積あたりの撹拌動力Pvが0.5〜10kW/m、フルード数Frが0.05〜0.2となるようにビニルエステルを含む溶液を撹拌しながらエチレン含有ガスと接触させる工程を含む方法である。このような方法でビニルエステルを含む溶液とエチレン含有ガスを接触させることによって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位のブロックキャラクターを上記範囲とすることが可能となる。以下、前記製造方法について詳細に説明する。
【0025】
(重合工程)
重合工程において、エチレンとビニルエステルを反応(共重合)させることによりエチレン−ビニルエステル共重合体を得る。エチレンとビニルエステルとを共重合させる方法としては、エチレンとビニルエステルをアルコール等の有機溶媒中で重合する溶液重合法が好ましい。上記アルコールとしては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられ、メタノールが特に好ましい。重合に使用される開始剤としては、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシジカーボネート等のアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤等の公知の開始剤が挙げられる。
【0026】
重合工程において、得られるエチレン−ビニルエステル共重合体の粘度平均重合度を調節すること等を目的として、連鎖移動剤を共存させてもよい。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン;チオ酢酸等のチオカルボン酸;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。中でも、アルデヒド及びケトンが好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするエチレン−ビニルエステル共重合体(A)の粘度平均重合度に応じて決定されるが、通常、使用するビニルエステル100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0027】
重合操作にあたっては、連続法、半回分法及び回分法のいずれの重合方式も採用できるが、連続法が好ましい。重合反応器としては、連続槽型反応器、回分反応器、管型反応器等が挙げられるが、連続槽型反応器が好ましい。
【0028】
以下、具体的な重合装置とそれを用いた重合工程について、図を参照しながら説明する。図1は、実施例1で用いた重合装置の概略図である。当該装置は、連続槽型反応器であり、重合槽1が導管3、4を介して熱交換器2と接続されたものである。前記熱交換器2内でビニルエステルとエチレンとが向流接触することができる。
【0029】
重合槽1に、複数の導管5、6、7が接続されている。導管の本数や配置は図示した形態に限らない。これらの導管を通して、エチレン、重合開始剤及び有機溶媒が重合槽1に供給される。単位時間当たり重合槽内に導入される原料の割合は、ビニルエステル100質量部に対して、エチレンが0.1〜20質量部、有機溶媒が1〜100質量部、重合開始剤が0.00001〜1質量部であることが好ましい。場合によっては、ビニルエステルや他の単量体を、これらの導管を通して供給することもできる。重合槽1内の反応液は、重合槽1の底部に接続された反応液導出管9から連続的に排出される。
【0030】
重合槽1内には、撹拌翼としてワイドパドル翼を有する撹拌機8が設置されている。前記ワイドパドル翼を用いて、ビニルエステルを含む溶液を撹拌しながらエチレン含有ガスと接触させることにより、エチレンとビニルエステルを反応させてエチレン−ビニルエステル共重合体を得る。
【0031】
ビニルエステルを含む溶液を撹拌する撹拌翼として、ワイドパドル翼を用いることが好ましい。図2に本発明で用いられるワイドパドル翼の例の概略図を示す。図2に示されるように、幅bの広いパドルを有することがワイドパドル翼の特徴である。ワイドパドル翼の幅bは重合槽1の容量等によって適宜調整できるが、後述の通り1〜10mが好ましい。このようなパドルを用いることで溶液が底から液面まで均一に混合されるとともに、ビニルエステルを含む溶液にエチレンが効率的に吸収される。前記ワイドパドル翼は単段(例えば、マックスブレンド翼)であってもよいし、多段(例えば、フルゾーン翼)であってもよい。ビニルエステルにエチレンがさらに効率的に吸収される点から、ビニルエステルを含む溶液の撹拌中に、当該溶液の液面が撹拌翼上端部近傍にあることが好ましい。ワイドパドル翼として、具体的には、マックスブレンド翼(住友重機械プロセス機器株式会社)、フルゾーン翼(株式会社神鋼環境ソリューション)、サンメラー翼(三菱重工業株式会社)、Hi−Fiミキサー翼(綜研化学株式会社)、スーパーミックス翼(佐竹化学機械工業株式会社、スーパーミックス MR203、スーパーミックス MR205)、ベンドリーフ翼(八光産業株式会社)等が挙げられる。
【0032】
重合時における重合槽内のエチレン圧力は0.01〜0.9MPaが好ましく、0.05〜0.8MPaがより好ましく、0.1〜0.7MPaがさらに好ましい。重合槽出口でのビニルエステルの重合率は特に限定されないが、通常、10〜90%が好ましく、15〜85%がより好ましい。
【0033】
重合温度は特に限定されないが、通常、0〜180℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、30〜150℃がさらに好ましい。
【0034】
エチレンとビニルエステルを反応させる際に、重合槽内で、ビニルエステルを含む溶液の単位体積あたりの撹拌動力Pvが0.5〜10kW/mとなるように当該溶液を撹拌することが好ましい。撹拌動力が0.5kW/m未満の場合、ビニルエステルに取り込まれるエチレンの量が不十分になるとともに、反応液の均一性も不十分になり、エチレン単位のブロックキャラクターが上記範囲であるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を得ることができない。撹拌動力は、より好適には1kW/m以上であり、さらに好適には1.5kW/m以上である。一方、撹拌動力が10kW/mを超える場合、運転に使用される動力が非常に大きくなり、工業的に好ましくない。撹拌動力は、より好適には7kW/m以下であり、さらに好適には5kW/m以下である。ビニルエステルを含む溶液の単位体積あたりの撹拌動力Pvは、後述する実施例に記載された方法により測定される。
【0035】
フルード数Frは以下の式で定義される慣性力と重力との比であり、液表面の渦の形状の指標となる。
Fr=n×d/g
n:撹拌翼の回転数(rps)
d:撹拌翼径(m)
g:重力加速度(m/s
【0036】
エチレンとビニルエステルを反応させる際に、重合槽内で、フルード数Frが0.05〜0.2となるようにビニルエステルを含む溶液を撹拌することが好ましい。フルード数Frを上記範囲に調整して液表面の渦の形状を制御することによって、ビニルエステルにエチレンが適度に吸収されるため、エチレン単位のブロックキャラクターが上記範囲にあるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を容易に得ることができるものと考えられる。フルード数Frは、より好適には0.06以上であり、さらに好適には0.07以上である。一方、フルード数Frは、より好適には0.18以下であり、さらに好適には0.15以下である。フルード数Frを上記範囲とするためには撹拌翼の回転数n、または撹拌翼径dを適宜変更すればよい。
【0037】
ワイドパドル翼の撹拌翼径dは、撹拌動力Pv、およびフルード数Frが上記範囲内となるように調整すればよく特に限定されないが、エチレン吸収効率が向上する点から0.5〜5mが好ましい。撹拌翼径dは0.75m以上がより好ましい。一方、撹拌翼径dは4m以下がより好ましい。撹拌翼径dは、回転軸から翼の先端(回転軸から最も遠い点)までの距離を2倍した値である。
【0038】
ワイドパドル翼(パドル)の幅b(高さ方向の長さ)は重合槽1の容量等によって調整すればよく特に限定されないが、エチレン吸収効率が向上する点から1〜10mが好ましい。幅bは1.5m以上がより好ましい。一方、幅bは8m以下がより好ましい。
【0039】
ワイドパドル翼の撹拌翼径dに対する幅(パドルの幅)bの比(b/d)は重合槽1の形状等によって決定すればよく特に限定されないが、エチレン吸収効率が向上する点から1以上が好ましい。一方、前記比(b/d)は、通常2.5以下である。
【0040】
重合槽1の形状は特に限定されないが、通常、略円柱状のものが用いられる。この場合、ワイドパドル翼は、略円柱状の重合槽1内に重合槽1の回転軸とワイドパドル翼の回転軸とが一致するように配置される。重合槽の内径D(m)に対する撹拌翼径d(m)の比(d/D)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、使用される重合槽に応じて適宜調整すればよいが、通常、0.4〜0.9である。重合槽の容量は特に限定されないが、通常、1〜200klである。
【0041】
撹拌翼の回転数nは、撹拌動力Pv、およびフルード数Frが上記範囲内となるように調整すればよく特に限定されないが、0.5〜1.35rpsが好ましい。回転数nが0.5rps未満の場合、伝熱面近傍で重合溶液の過冷却が進行しやすくなるため、重合槽の内壁にゲル状物が生成して、長期運転が困難となる場合がある。一方、回転数nが1.35rpsを超えると粘度が低い重合溶液を用いた場合に、当該溶液が飛び跳ねて重合槽の気相部の内壁へ付着する場合がある。このような付着物が固化して重合溶液に混入すると異物が形成されるため、安定した運転ができない場合がある。
【0042】
従来、エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造に際して、撹拌強度の指標である、単位体積あたりの撹拌動力を制御してきた。しかしながら、撹拌動力は、反応液の容量、粘度及び密度、重合槽の形状、並びに撹拌翼の形状及び回転数等の様々な影響を受ける。したがって、撹拌動力を制御しただけでエチレン単位のブロック性を高度に制御することは困難であり、結果として、エチレン連鎖の伸長(エチレン単位のブロック化)を招き、得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体におけるエチレン単位のブロックキャラクターが0.90未満であった。そして、エチレン連鎖の伸長によって分子間の疎水性相互作用が強くなるために、高速塗工性、初期接着性及び皮膜強度が十分とはいえなかった。この問題に対して発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件下において重合反応を進行させることで、従来よりもエチレン連鎖が短い(エチレン単位の位置がランダムな)共重合体が得られることを見出して、これらの性能を向上させることに成功した。
【0043】
エチレン単位のブロックキャラクターをさらに高度に制御できる点から、前記製造方法において、重合工程で使用される前記重合槽が配管を介して熱交換器と接続されたものであって、エチレン−ビニルエステル共重合体を得る際に、(b)前記重合槽の気相部に存在するエチレン含有ガスを前記熱交換器に導入する工程、(c)前記熱交換器にビニルエステルを供給する工程、(d)前記熱交換器の中で、ビニルエステルとエチレン含有ガスを接触させる工程及び(e)前記熱交換器からエチレンが溶解したビニルエステルを導出し、前記重合槽内に導入する工程をさらに含むことが好ましい。ビニルエステルを、熱交換器を経由させずに直接重合槽に供給してもよいが、このように予め熱交換器中でビニルエステルにエチレンを吸収させてから重合槽に供給することによって、ビニルエステルにエチレンが効率的に吸収されるため、エチレン単位のブロックキャラクターが高度に制御される。重合槽に供給するビニルエステルの一部を、熱交換器中でエチレン含有ガスと接触させることもできるが、供給するビニルエステルの全てを、熱交換器中でエチレン含有ガスと接触させることが好ましい。
【0044】
使用する熱交換器は特に限定されないが、エチレンの効率的な吸収の点から表面積の大きい熱交換器が好ましい。例えば、縦型濡壁式熱交換器、縦型濡壁多管式熱交換器、充填塔式あるいは多孔板または泡鐘式吸収器にジャケットおよび/またはコイルを設けた熱交換器等が挙げられる。中でも縦型濡壁多管式熱交換器がより好ましい。
【0045】
図1に示される装置では、熱交換器2として縦型濡壁多管式熱交換器が用いられている。当該熱交換器2にビニルエステル導入管10が接続されており、これを通して熱交換器2の上部にビニルエステルが供給される。原料のビニルエステルとして、ビニルエステルを単独で用いてもよいし、上述した有機溶媒とビニルエステルを含む混合液を用いてもよいが、後者が好ましい。
【0046】
図1に示される熱交換器2には冷媒管11、12が接続されている。管の位置は図示した形態に限らないが、冷媒は熱交換器2の下部に接続された冷媒管12から供給し、熱交換器2の上部に接続された冷媒管11から排出するのが好ましい。このように接続することによって、ビニルエステルを効率的に冷却することができ、エチレン吸収効率がよい。冷却媒体は特に限定されず、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール水溶液、食塩や塩化カルシウムの水溶液、フロンなどを用いることができる。取扱いの容易さやコストなどの理由から、アルコール水溶液、特にメタノール水溶液が好適に用いられる。
【0047】
熱交換器2から気体を排出するための気体排出管13が熱交換器2の上部に接続されている。この気体排出管13には、ミスト分離器(図示せず)が接続されていてもよい。排出された気体中の液滴は、ミスト分離器により除去され、ミストがないエチレンを回収または放出できる。ミスト分離器は、重力・遠心力・静電気力といった外力、または、遮りもしくは篩効果を利用して気体中に浮遊している液滴を分離する装置である。ミスト分離器としては、重力沈降器、サイクロン、電気集塵機、スクラバー、バグフィルター、充填層が挙げられる。中でも、サイクロンが好ましい。
【0048】
熱交換器2の中で、ビニルエステルとエチレン含有ガスを接触させる方法は特に限定されない。例えば、熱交換器2の上部からビニルエステルを流下させるとともに、熱交換器2の下部に加圧されたエチレン含有ガスを供給し、該熱交換器2の中で、両者を向流接触させる方法や、熱交換器2の上部からビニルエステルを流下させるとともに、熱交換器2の上部に加圧されたエチレン含有ガスを供給し、該熱交換器2の中で、両者を並流接触させる方法などが挙げられる。効率的なエチレン吸収の点から、前者が好ましい。
【0049】
図1に示される装置では、2本の導管3、4が重合槽1と熱交換器2とを接続している。エチレン含有ガスは重合槽1から導管3を通って熱交換器2の下部へと導入され、エチレンを吸収したビニルエステルは熱交換器2の下部から導管4を通って重合槽1へと導入される。
【0050】
ビニルエステルは、導入管10を通して熱交換器2へ供給される。熱交換器2の上部に導入されたビニルエステルは、熱交換器2を通過しながらエチレンを吸収する。
【0051】
エチレン含有ガスは、熱交換器2の下部に接続された導管3を通して熱交換器2へと導入される。熱交換器側の導管3は熱交換器2の下部に接続されており、一方、ビニルエステル導入管10は、熱交換器2の上部に接続される。エチレン含有ガスは、ビニルエステルと向流接触しながら熱交換器2内を上昇していく。その結果、ガス中のエチレンがビニルエステルに溶解する。
【0052】
エチレンを吸収したビニルエステルは、導管4を通して重合槽1へ導入される。連続製造の場合は、エチレンは、重合槽1、熱交換器2および導管3、4を循環する。エチレンの一部はビニルエステルに含まれて反応液導出管9から排出されるので、重合槽1に接続されたエチレン供給源から、導管5、6、7の少なくとも1つを介して補充される。
【0053】
(けん化工程)
重合工程で得られたエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することによりエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を得る。このとき、前記エチレン−ビニルエステル共重合体を有機溶媒中において、触媒の存在下で加アルコール分解又は加水分解反応によってけん化することが好ましい。けん化工程で用いられる触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒;または、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。けん化工程で用いられる有機溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用できる。中でも、メタノール、又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。けん化触媒の使用量は、エチレン−ビニルエステル共重合体中のビニルエステル単位に対するモル比で0.001〜0.5が好ましい。当該モル比は、より好適には0.002以上である。一方、当該モル比は、より好適には0.4以下であり、さらに好適には0.3以下である。
【0054】
けん化工程を行った後、粉砕工程と乾燥工程を行ってもよい。さらに粉砕工程は予備粉砕工程と本粉砕工程に分かれていてもよい。けん化工程を行った後、さらに必要に応じて酢酸ナトリウムなどの不純物を除去するための洗浄工程を行ってもよい。
【0055】
(共役二重結合を有する化合物)
本発明の水性接着剤は、さらに共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物を含有することが好ましい。また、前記化合物の含有量が、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して0.000001〜0.01質量部であることがより好ましい。前記化合物を用いることにより、高速塗工性、初期接着性及び皮膜強度がさらに向上する。このメカニズムは定かではないが、極性溶媒中において共役二重結合部位がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位と相互作用することで、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)同士の分子間相互作用が適度に阻害され、安定性に優れた水性接着剤となることに起因すると推定される。前記化合物は、後述する水性エマルジョンの分散剤として含まれていることが好ましい。
【0056】
本発明において共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物は、脂肪族二重結合同士の共役二重結合を有する化合物、又は脂肪族二重結合と芳香環との共役二重結合を有する化合物であることが好ましい。水性エマルジョンを調製する際の重合安定性が良好な点から、前者がより好ましい。また、分子量は1000以下であり、800以下が好ましく、500以下がより好ましい。
【0057】
脂肪族二重結合同士の共役二重結合を有する化合物は、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合とが交互に繋がってなる構造を有するものであって、炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、共役二重結合を有する化合物である。具体的には、2個の炭素−炭素二重結合、1個の炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる共役構造を有する共役ジエン化合物、3個の炭素−炭素二重結合、2個の炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる共役構造を有する共役トリエン化合物(例えば、2,4,6−オクタトリエン)、及びそれ以上の数の炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる共役構造を有する共役ポリエン化合物等が挙げられる。中でも、水性エマルジョンを調製する際の重合安定性が良好な点から、共役ジエン化合物が好ましい。本発明で用いられる共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物には、共役二重結合が1分子中に独立して複数組あってもよく、例えば、桐油のように共役トリエンを同一分子内に3個有する化合物も含まれる。
【0058】
共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物は、共役二重結合以外の他の官能基を有していてもよい。他の官能基としては、例えばカルボキシ基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホン基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基及びその塩、リン酸基及びその塩、ハロゲン原子等の極性基やフェニル基等の非極性基が挙げられる。水性エマルジョンを調製する際の重合安定性が良好な点から、他の官能基として、極性基が好ましく、カルボキシ基及びその塩、並びに水酸基がより好ましい。他の官能基は、共役二重結合中の炭素原子に直接結合していてもよいし、共役二重結合から離れた位置に結合していてもよい。他の官能基中の多重結合は前記共役二重結合と共役可能な位置にあってもよく、例えば、フェニル基を有する1−フェニル−1,3−ブタジエンやカルボキシ基を有するソルビン酸等も前記共役二重結合を有する化合物として用いられる。また、前記共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物は、非共役二重結合や非共役三重結合を有していてもよい。
【0059】
前記共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物として、具体的には、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、ソルビン酸、ミルセン等の脂肪族二重結合同士の共役二重結合を有する化合物や、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、α-メチルスチレン重合体、1,3−ジフェニル−1−ブテン等の脂肪族二重結合と芳香環との共役二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0060】
前記水性接着剤中の、共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物の含有量は、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して0.000001〜0.01質量部が好ましい。当該含有量は、より好適には0.000002質量部以上であり、さらに好適には0.000003質量部以上である。一方、前記含有量はより好適には0.0075質量部以下であり、さらに好適には0.005質量部以下であり、特に好適には0.0025質量部以下である。
【0061】
本発明において、共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物の添加方法は特に限定されない。例えば、1)エチレン−ビニルエステル共重合体に前記化合物を添加した後にけん化する方法、2)エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化する際に前記化合物を添加する方法、3)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対して、前記化合物を含む液を噴霧する方法、4)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を前記化合物を含む液に含侵した後、乾燥させる方法、5)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記化合物を含有する水溶液を調製した後乾燥させる方法、6)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び上記化合物を含有する水溶液を調製し、該水溶液を分散剤水溶液として乳化重合に供する方法、などが挙げられる。この中でも、上記化合物の含有量の調整しやすさの観点から、2)及び6)の方法が好ましい。
【0062】
(水性接着剤)
こうして得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を用いて本発明の紙ストロー用水性接着剤を製造する。当該接着剤は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び水を含有する水性接着剤である。前記水性接着剤において、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は水に溶解していることが好ましい。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が後述する水性エマルジョンの分散剤として含まれている態様も好ましい。
【0063】
前記水性接着剤は、水と任意の割合で可溶な水溶性有機溶媒(アルコール類、ケトン類等)を含んでいてもよい。前記水性接着剤中の水溶性有機溶媒の含有量は、水と水溶性有機溶媒の合計100質量部に対して、通常50質量部以下であり、10質量部以下が好ましく、前記水性接着剤中に水溶性有機溶媒が実質的に含まれていないことがより好ましい。
【0064】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を水に溶解させる方法としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と水の混合物を加熱する方法が挙げられる。加熱温度は80℃以上が好ましい。こうして得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液からなる水性接着剤は簡便に製造することが可能であり、コスト面で優れる。
【0065】
前記水性接着剤が、エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)を分散質として含有する水性エマルジョンからなるものであることがより好ましい。水性エマルジョンからなる接着剤は、さらに優れた初期接着性及び動的耐水性を有する。
【0066】
重合体(B)に含有されるエチレン性不飽和単量体単位としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体;
アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸単量体;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン単量体;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン単量体;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアクリルアミド単量体;
塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリド等のハロゲン化オレフィン;N−ビニルピロリドン;等に由来する単位が挙げられる。中でも、重合体(B)は、ビニルエステル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン単量体及びジエン単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する単量体単位を含む重合体であることが好ましい。また、重合体(B)の全単量体単位に対する、ビニルエステル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン単量体及びジエン単量体の合計含有量が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。中でも、重合体(B)がビニルエステル単量体単位を、全単量体単位に対して、75質量%以上含有することが特に好ましい。
【0067】
水性エマルジョンに含有される分散剤は特に限定されず、エチレン性不飽和単量体の乳化重合に使用される公知の分散剤が使用される。中でも、得られる接着剤の初期接着性及び動的耐水性がさらに向上する観点から、前記分散剤がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、又は後述するPVA(C)であることが好ましく、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)であることがより好ましい。
【0068】
水性エマルジョンの製造方法としては、分散剤の存在下で、重合開始剤を用いて前記エチレン性不飽和単量体を乳化重合する方法が好ましい。
【0069】
上記方法において、重合槽内へ前記分散剤を仕込む場合、その仕込み方法や添加方法については特に制限はない。重合槽内に分散剤を初期一括で添加する方法や、重合中に連続的に添加する方法を挙げることができる。なかでも、分散剤の前記エチレン性不飽和単量体へのグラフト率を高める観点から、重合槽内に分散剤を初期一括で添加する方法が好ましい。この際、冷水またはあらかじめ加温した温水に分散剤を添加し、分散剤を均一に分散させるため80〜90℃に加温し撹拌する方法が好ましい。分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)やPVA(C)を用いる場合、乳化重合の開始の前にエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)又はPVA(C)を含有する水を加熱してこれらを溶解させたのち、冷却し、窒素置換することが好ましい。加熱温度は80℃以上が好ましい。
【0070】
乳化重合時における、前記分散剤の添加量は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.2〜80質量部である。前記分散剤の添加量が上記下限値以上であると、水性エマルジョン中に分散質粒子の凝集が生じにくく、水性エマルジョンを調製する際の重合安定性が優れる傾向にある。前記分散剤の添加量は、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは2質量部以上であり、最も好ましくは4質量部以上である。一方、上記分散剤の使用量が上記上限値以下である場合には、重合液の粘度が高くなりすぎず、均一に重合を進行しやすかったり、重合熱が効率的に除かれたりする傾向にある。前記分散剤の添加量は、より好ましくは60質量部以下であり、さらに好ましくは50質量部以下であり、特に好ましくは40質量部以下である。
【0071】
上記乳化重合において、重合開始剤としては、乳化重合に通常用いられる水溶性の単独開始剤又は水溶性のレドックス系開始剤を使用できる。これらの開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、レドックス系開始剤が好ましい。
【0072】
水溶性の単独開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化水素、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)等の過酸化物等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0073】
レドックス系開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせたものを使用できる。酸化剤としては、過酸化物が好ましい。還元剤としては、金属イオン、還元性化合物等が挙げられる。酸化剤と還元剤の組み合わせとしては、過酸化物と金属イオンとの組み合わせ、過酸化物と還元性化合物との組み合わせ、過酸化物と、金属イオン及び還元性化合物とを組み合わせたものが挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素、クメンヒドロキシパーオキサイド、t−ブチルヒドロキシパーオキサイド等のヒドロキシパーオキサイド、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)、過酢酸t−ブチル、過酸エステル(過安息香酸t−ブチル)等が挙げられる。金属イオンとしては、Fe2+、Cr2+、V2+、Co2+、Ti3+、Cu+等の1電子移動を受けることのできる金属イオンが挙げられる。還元性化合物としては、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトール、ロンガリット、アスコルビン酸が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1種以上の酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群から選ばれる1種以上の還元剤との組み合わせが好ましく、過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群から選ばれる1種以上の還元剤との組み合わせがより好ましい。
【0074】
また、乳化重合に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、アルカリ金属化合物、界面活性剤、緩衝剤、重合度調節剤等を適宜使用してもよい。
【0075】
アルカリ金属化合物は特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等を含む化合物が挙げられる。前記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属イオンそのものであってもよく、アルカリ金属を含む化合物であってもよい。
【0076】
前記アルカリ金属化合物を用いる場合、その含有量(アルカリ金属換算)は、用いられるアルカリ金属化合物の種類に応じて適宜選択することができるが、水性接着剤の固形分の合計に対して、100〜15000ppmが好ましく、120〜12000ppmがより好ましく、150〜8000ppmがさらに好ましい。アルカリ金属化合物の含有量が100ppm以上の場合、水性エマルジョンを調製する際の乳化重合の安定性が優れる傾向にあり、15000ppm以下の場合、水性エマルジョンからなる皮膜が着色しにくい。なお、アルカリ金属化合物の含有量は、ICP発光分析装置により測定することができる。本明細書において、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
【0077】
アルカリ金属を含む化合物としては、具体的には、弱塩基性アルカリ金属塩(例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ金属硝酸塩)、強塩基性アルカリ金属化合物(例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド)等が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
弱塩基性アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)、アルカリ金属カルボン酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等)、アルカリ金属硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム等)、アルカリ金属ハロゲン化物塩(塩化セシウム、ヨウ化セシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等)、アルカリ金属硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム等)が挙げられる。これらのうち、水性エマルジョンが塩基性を帯びる観点から、解離時に弱酸強塩基の塩として振舞うことが可能なアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属重炭酸塩が好ましく、アルカリ金属カルボン酸塩がより好ましい。
【0079】
これらの弱塩基性アルカリ金属塩を用いた場合、乳化重合において当該弱塩基性アルカリ金属塩がpH緩衝剤として作用をすることで、乳化重合を安定に進めることができる。
【0080】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれを使用してもよい。非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルスルフォネート、ヒドロキシアルカノールのサルフェート、スルフォコハク酸エステル、アルキル又はアルキルアリールポリエトキシアルカノールのサルフェート及びホスフェート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル)100質量部に対して2質量部以下であることが好ましい。界面活性剤の使用量が2質量部を超えると、耐水性、耐温水性及び耐煮沸性が低下することがあるため好ましくない。
【0081】
緩衝剤としては、酢酸、塩酸、硫酸等の酸;アンモニア、アミン荷性ソーダ、荷性カリ、水酸化カルシウム等の塩基;又はアルカリ炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩等が挙げられる。重合度調節剤としては、メルカプタン、アルコール等が挙げられる。
【0082】
乳化重合の温度は、特に限定されないが、20〜85℃程度が好ましく、40〜85℃程度がより好ましい。
【0083】
前記分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を用いた場合、得られる水性エマルジョンを水性接着剤として使用することができる。分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、分散質としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)とを含む水性エマルジョンは、さらに優れた初期接着性及び動的耐水性を有する。
【0084】
乳化重合後の水性エマルジョンに、さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液を添加することが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液としては、上述したものが用いられる。前記水性エマルジョンがエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)以外の分散剤を用いて得られるものである場合、当該水性エマルジョンにエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液を添加することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する水性接着剤を得ることができる。こうして得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が溶解した水性エマルジョンからなる水性接着剤は、さらに優れた動的耐水性を有する上に、形成される皮膜の強度もさらに向上する。なかでも、分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、分散質としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)とを含む前記水性エマルジョンに、さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液を添加することが好ましい。こうして得られる、分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、分散質としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)とを含む粒子が分散し、かつエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が溶解した水性エマルジョンは、水性接着剤として特に優れた性能を有する。
【0085】
本発明の水性接着剤中のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の含有量は0.1質量%以上が好ましい。当該含有量が0.1質量%未満の場合、高速塗工性、皮膜強度、初期接着性、動的耐水性及び耐酸性のいずれかが低下するおそれがある。エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の含有量は1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が特に好ましく、6質量%以上が最も好ましい。一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の含有量は50質量%以下が好ましい。当該含有量が50質量%を超える場合、水性接着剤の粘度が高くなりすぎて、取り扱い難くなるおそれがある。当該含有量は35質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、18質量%以下が特に好ましく、13質量%以下が最も好ましい。
【0086】
前記エマルジョンにおいて、重合体(B)に対する、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の質量比(A)/(B)が2/98〜80/20であることが好ましい。当該質量比(A)/(B)が2/98以上の場合は、皮膜強度がさらに向上して、得られるストローの強度がさらに向上する。この点からは、前記質量比(A)/(B)は5/95以上がより好ましく、8/92以上がさらに好ましく、10/90以上が特に好ましく、12/88以上が最も好ましい。極めて高い強度を有するストローが得られる点からは、前記質量比15/85以上が好ましく、17/83以上がより好ましい。一方、前記質量比(A)/(B)が80/20以下の場合は、動的耐水性がさらに向上する。この点からは、前記質量比(A)/(B)は70/30以下がより好ましく、60/40以下がさらに好ましく、50/50以下が特に好ましい。動的耐水性が極めて高いストローが得られる点からは、前記質量比(A)/(B)が40/60以下が好ましく、30/70以下がより好ましい。
【0087】
本発明の水性接着剤は、さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)以外のPVA(C)を含んでいてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)とPVA(C)を併用することにより、性能を維持しつつ、コストを抑えることができる。本発明の水性接着剤において、PVA(C)は水に溶解していることが好ましい。また、PVA(C)が前記水性エマルジョンの分散剤として含まれている態様も好ましい。PVA(C)を含む水性接着剤は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、PVA(C)及び水を含む混合物を加熱することによりこれらを溶解させる方法;エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液とPVA(C)の水溶液とを混合する方法;分散剤としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と、分散質としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)とを含む前記水性エマルジョンと、PVA(C)の水溶液を混合する方法;分散剤としてPVA(C)と、分散質としてエチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(B)とを含む前記水性エマルジョンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液を混合する方法;等により得ることができる。PVA(C)の水溶液は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の水溶液と同様の方法により得ることができる。
【0088】
PVA(C)の粘度平均重合度が200〜5000であることが好ましい。PVA(C)のけん化度は80〜99.7モル%であることが好ましい。PVA(C)の粘度平均重合度及びけん化度はJIS K6726(1994年)に準じて測定できる。
【0089】
PVA(C)の製造方法は特に限定されない。例えば、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをけん化する公知の方法が挙げられる。PVA(C)の製造に用いられるビニルエステルとして、エチレン−ビニルエステル共重合体の製造に用いられるものとして上述したものが挙げられる。
【0090】
PVA(C)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位を含有していてもよい。このような他の単量体単位としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に含有されることがある、ビニルアルコール単位、エチレン単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位として上述したものが挙げられる。PVA(C)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位の含有率は、使用される目的や用途等によって異なるが、好適には10モル%以下であり、より好適には5モル%未満であり、さらに好適には1モル%未満であり、特に好適には0.5モル%未満である。
【0091】
前記水性接着剤がPVA(C)を含む場合、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対するPVA(C)の質量比(C)/(A)は1/99〜50/50が好ましい。質量比(C)/(A)をこのような範囲とすることにより、前記水性接着剤の性能を維持しつつ、コストを低減することができる。質量比(C)/(A)は40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましく、25/75以下が特に好ましい。
【0092】
前記水性接着剤がさらに無機充填剤を含むことが好ましい。これにより、初期接着性がさらに向上する。前記無機粒子としては、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、酸化チタン等が挙げられる。前記水性接着剤における、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対する、前記無機充填材の質量比[無機充填材/共重合体(A)]は、1/99〜99.5/0.5が好ましい。質量比[無機充填材/共重合体(A)]は10/90以上がより好ましく、30/70以上がさらに好ましい。一方、質量比[無機充填材/共重合体(A)]は、80/20以下がより好ましく、75/25以下がさらに好ましい。
【0093】
本発明の水性接着剤における固形分含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。一方、前記固形分含有量は、60質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。当該固形分含有量が10質量%以上の場合は前記水性接着剤の粘度安定性が優れる傾向にある。一方、当該固形分含有量が60質量%以下の場合はオープンタイムが長く取扱い性に優れる傾向にある。
【0094】
前記水性接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含有していても構わない。このような添加剤としては、有機溶剤(トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アルコール、ケトン、エステル、含ハロゲン系溶剤等)、架橋剤、可塑剤、沈殿防止剤、増粘剤、流動性改良剤、防腐剤、消泡剤、有機充填剤、湿潤剤、着色剤、結合剤、保水剤、ポリエチレンオキサイド、防黴剤、消臭剤、香料等が挙げられる。
【0095】
また、前記添加剤として、ポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダなどのリン酸化合物の金属塩や水ガラスなどの無機物の分散剤;ポリアクリル酸およびその塩;アルギン酸ソーダ;α−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などのアニオン性高分子化合物とその金属塩;高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などのノニオン界面活性剤などの界面活性剤も挙げられる。これらを添加することにより、接着剤の流動性が向上する。動的耐水性をさらに向上させるために、水溶性金属化合物、コロイド状無機物、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン付加物およびグリオキザール系樹脂から選ばれる一種あるいは二種以上の架橋剤を含有させることもできる。ここで、水溶性金属化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、乳酸チタン等が挙げられる。コロイド状無機物としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が挙げられる。ポリアミドアミンエピクロルヒドリン付加物としては、例えば、各種ポリアミドアミンにエピクロルヒドリンを付加したものが挙げられる。グリオキザール系樹脂としては、例えば、尿素−グリオキザール系樹脂等が挙げられる。また、水溶性金属塩あるいはコロイド状無機物及びポリアミドアミンエピクロルヒドリン付加物あるいはグリオキザール系樹脂を併用することにより、動的耐水性がより向上する。また、性能を損なわない範囲で、メチロール基含有化合物(樹脂)、エポキシ化合物(樹脂)、アジリジン基含有化合物(樹脂)、オキサゾリン基含有化合物(樹脂)、カルボジイミド化合物、アルデヒド化合物(樹脂)等も上記架橋剤と併用することもできる。また、接着力をさらに向上させるために、硼酸;硼砂;グリセリンやエチレングリコールなどの多価アルコールの硼酸エステルなどの水溶性硼素化合物、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等も添加できる。さらに、他の添加剤として、澱粉、カゼイン、ゼラチン、グアーガム、アラビアガム、アルギン酸ソーダ類などの天然糊剤;カルボキシメチルセルロース、酸化澱粉、メチルセルロースなどの加工天然糊剤なども添加できる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記水性接着剤中のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、重合体(B)、PVA(C)、共役二重結合を有する分子量1000以下の化合物、水、水溶性有機溶媒、アルカリ金属化合物、及び無機充填材以外の他の添加剤の合計は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0097】
前記水性接着剤を用いて紙基材同士を接着してなる、紙ストローが本発明の好適な実施態様である。当該紙ストローは、強度、動的耐水性及び耐酸性に優れる。また、初期接着性及び高速塗工性に優れる本発明の接着材を用いることにより、このような紙ストローを効率良く製造できる。
【0098】
前記紙ストローは、一般的な製造方法により得ることができ、例えば、前記水性接着剤をテープ状の紙基材に塗布し、金属製芯棒に当該紙基材を積層させつつラセン状に巻き付けた後、乾燥させる方法等により製造することができる。
【0099】
エチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満であり、エチレン単位のブロックキャラクターが0.90〜0.99である前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する紙ストローも好適に用いられる。エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)は皮膜強度、動的耐水性及び耐酸性に優れるため、紙ストロー用の紙基材の製造に用いる紙加工剤等としても好適に用いられる。このようにエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を含有する紙ストローもまた、強度、動的耐水性及び耐酸性に優れる。
【実施例】
【0100】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
【0101】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体の粘度平均重合度及びけん化度]
エチレン−ビニルアルコール共重合体の粘度平均重合度及びけん化度は、JIS K6726(1994年)に記載の方法により求めた。
【0102】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン単位のブロックキャラクター]
エチレン−ビニルアルコール共重合体をけん化度99.9モル%以上にけん化後、メタノールで十分に洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間した共重合体をDMSO−dに溶解し、600MHzの13C−NMRを用いて、80℃で測定した。得られたスペクトルチャートからT.Moritani and H.Iwasaki,11,1251−1259,Macromolecules(1978)に記載の方法で帰属、算出したビニルアルコール・エチレンの2単位連鎖のモル分率(AE)、ビニルアルコール単位のモル分率(A)、エチレン単位のモル分率(E)を用いて下記式よりエチレン単位のブロックキャラクター(η)を求めた。
η=(AE)/{2×(A)×(E)}
【0103】
調製した水性接着剤の初期接着性、動的耐水性、皮膜の硬さ、高速塗工性、耐酸性は以下に示す方法で評価した。
【0104】
(1)初期接着性
20℃、65%RHの雰囲気下で、水性接着剤をクラフト紙にNo.6のワイヤーバーで塗布し、貼合後、ハンドロールで3回圧締した。そして、圧締完了から、手で剥離させた際に、クラフト紙同士が剥離せずに、クラフト紙が完全に破れるようになるまでの時間を測定した。以下の基準にしたがって評価した。
A:10秒未満で完全にクラフト紙が破れた
B:10秒以上30秒未満で完全にクラフト紙が破れた
C:30秒以上で1分未満で完全にクラフト紙が破れた
D:1分以上で完全にクラフト紙が破れた
【0105】
(2)動的耐水性
20℃、65%RHの雰囲気下で、水性接着剤をクラフト紙にNo.6のワイヤーバーで塗布し、貼合後、ハンドロールで3回圧締し、24時間養生した。得られた積層クラフト紙を30℃の水に24時間、スターラーでゆっくり攪拌しながら、浸漬した後、濡れた状態でクラフト紙端を互いに引き剥がすようにして、その接着状態を観察し、以下の基準で評価した。
A:完全にクラフト紙が破れた
B:一部クラフト紙が破れた
C:クラフト紙同士を剥離する際に抵抗を感じた
D:クラフト紙同士を剥離する際にほとんど抵抗を感じなかった
【0106】
(3)皮膜の硬さ(ヤング率の測定)
幅10mmのフィルムを、20℃、65%RHの雰囲気のもとで1週間調湿した後、オートグラフで引張り試験(チャック間隔は20mm、引張り速度は100mm/min)を行った後、以下の基準で皮膜の硬さを評価した。
A:ヤング率が40kgf/mm以上
B:ヤング率が30kgf/mm以上40kgf/mm未満
C:ヤング率が20kgf/mm以上30kgf/mm未満
D:ヤング率が20kgf/mm未満
【0107】
(4)高速塗工性
3本ロールを用いて以下の実施例及び比較例により得られた水性接着剤を評価した。このとき使用した3本ロールを図3に示す。各ロールの表面温度を30℃に調整した。ロール[II]とロール[III]の間に調整した水性接着剤[IV]を加えて、ロール[I]の表面速度を100m/分となるように回転することにより、ジャンピング現象を観察し評価した。ロール[I]とロール[II]の間から水性接着剤の液滴が飛び出す(ジャンピング現象)かどうかを目視にて下記の基準で判定した。
A:全く液滴が飛び出さなかった
B:少数の液滴が飛び出した
C:多数の液滴が飛び出した
【0108】
(5)耐酸性試験
20℃、65%RHの雰囲気下で、水性接着剤をクラフト紙にNo.6のワイヤーバーで塗布し、貼合後、ハンドロールで3回圧締し、24時間養生した。得られた積層クラフト紙を20℃のぶどうジュース(pH3.5)に24時間、スターラーでゆっくり攪拌しながら、浸漬した後、濡れた状態でクラフト紙端の相間剥離の有無を観察し、以下の基準に従って評価した。
A:層間剥離なし
B:層間剥離あり
【0109】
(共重合体(A−1)の製造)
使用した重合装置の概略図を図1に示す。撹拌翼8としてマックスブレンド翼[株式会社神鋼環境ソリューション製、撹拌翼径(直径)d:1.1m、翼(パドル)幅b:1.5m]を備えた略円柱状の重合槽1[容量:7kl、槽内径D:1.8m]に、槽内エチレン圧力が0.23MPaとなるように導管5からエチレンを、3L/hrの速度で導管6から重合開始剤の2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1質量%メタノール溶液を、それぞれ導入した。また、導入管10と熱交換器2とを介して、酢酸ビニル含有液(酢酸ビニル:777L/hr、メタノール:170L/hr)を重合槽1に導入した。また、エチレン含有ガスを重合槽1から導管3を介して熱交換器2に導入した。酢酸ビニル含有液は管の表面に沿って流下することでエチレンを吸収し、導管4を介して重合槽1に注ぎ込まれ、反応液と混合され、エチレンとの連続重合に供された。重合槽1内の液面が一定になるように導管9から重合液を連続的に取り出した。重合槽1出口における酢酸ビニルの重合率が30%になるよう調整した。また単位体積あたりの撹拌動力Pvは2.2kW/mであり、フルード数Frは0.13となるように調整した。翼(パドル)全体が反応液に浸かり、なおかつ液面と翼(パドル)の上端とが近接した状態で反応液を撹拌した。重合槽における反応液の滞留時間は5時間であった。重合槽出口の温度は60℃であった。連続的に取り出した重合液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度32%)を得た。
【0110】
前記重合工程で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度32質量%)に、けん化触媒である水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度4質量%)を、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比が0.012となるように添加した。さらに、ソルビン酸のメタノール溶液(濃度10質量%)を、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して固形分換算で0.00009質量部添加し、得られた混合物をスタティックミキサーで混合した後、ベルト上に載置し、40℃で18分保持してけん化反応を進行させた。その後、前記混合物を粉砕、乾燥し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A−1)(以下、共重合体(A−1)と称する)を得た。得られた共重合体(A−1)のエチレン単位の含有率は2モル%であり、粘度平均重合度は1700であり、けん化度は98.5モル%であり、エチレン単位のブロックキャラクターは0.95、ソルビン酸の量はエチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、0.00018質量部であった。
【0111】
(共重合体(A−2)、(A−3)、(A−5)、(A−6)及びPVA−7の製造)
重合時におけるエチレン、酢酸ビニル、メタノール及び開始剤のフィード量、重合率、撹拌翼の種類、撹拌動力Pv、フルード数Fr並びにけん化時におけるエチレン−ビニルエステル共重合体溶液の濃度、水酸化ナトリウムのモル比並びに共役二重結合を含む化合物の種類及び添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法によりエチレン−ビニルアルコール共重合体(共重合体(A−2)、(A−3)、(A−5)、(A−6))及びPVA(PVA−7)を製造した。製造時の重合条件及びけん化条件、得られた重合体の重合度、けん化度、エチレン単位及びブロックキャラクター、並びに共役二重結合を含有する化合物の種類及び含有量を表1にまとめて示す。
【0112】
(共重合体(A−4)の製造)
撹拌翼8として2段傾斜パドル翼[撹拌翼径(直径)d:1.5m、翼(パドル)幅b:0.88m]を備えた重合槽1[容量:7kl、槽内径D:1.8m]に、槽内エチレン圧力が0.61MPaとなるように導管5からエチレンを、9L/hrの速度で導管6から重合開始剤の2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1質量%メタノール溶液を、それぞれ導入した。また、導入管7から酢酸ビニル含有液(酢酸ビニル:751L/hr、メタノール:190L/hr)を重合槽1に導入した。重合槽1内の液面が一定になるように導管9から重合液を連続的に取り出した。重合槽1出口の重合率が43%になるよう調整した。また撹拌動力Pvは2kW/mであり、フルード数Frは0.18となるように調整した。重合槽における反応液の滞留時間は5時間であった。重合槽出口の温度は60℃であった。連続的に取り出した重合液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A−4)のメタノール溶液(濃度40%)を得た。エチレン−ビニルエステル共重合体溶液の濃度及び水酸化ナトリウムのモル比を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法によりけん化工程を行うことによりエチレン−ビニルアルコール共重合体(A−4)を製造した。製造時の重合条件及びけん化条件、得られた重合体の重合度、けん化度、エチレン単位及びブロックキャラクター、並びに共役二重結合を含有する化合物の種類及び含有量を表1にまとめて示す。
【0113】
[実施例1]
(水性接着剤の作製)
得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体(A−1)の粉体(15部)を撹拌している水(85部、20℃)に投入し、95℃まで加熱してエチレン−ビニルアルコール共重合体を溶解して水性接着剤を得た。得られた水性接着剤の初期接着性、動的耐水性、皮膜の硬さ、高速塗工性及び耐酸性を上述の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0114】
[実施例2]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A−1)の粉体(15部)と炭酸カルシウム(30部)を十分ドライブレンドした後、撹拌している水(85部、20℃)に投入し、95℃まで加熱してエチレン−ビニルアルコール共重合体を溶解して水性接着剤を得た。実施例1と同様にして水性接着剤の製造及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
[実施例3]
(水性エマルジョンEm−1の製造)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水275gを仕込み95℃に加温した。PVA−7を19.5g添加し、45分間攪拌して溶解させた。さらに、酢酸ナトリウムを0.3g添加し、混合して溶解させた。次に、このPVA−7が溶解した水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで攪拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸の20質量%水溶液2.4g及び5質量%過酸化水素水3.2gをショット添加後、酢酸ビニル27gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量が1%未満)を確認した。酒石酸の10質量%水溶液1g及び5質量%過酸化水素水3.2gをショット添加後、酢酸ビニル251gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度を80℃に維持して重合を完結させ、固形分50質量%のポリ酢酸ビニル系水性エマルジョン(Em−1)を得た。
【0116】
(水性接着剤の作製)
得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体(A−2)の粉体(12部)を撹拌している水(88部、20℃)に投入し、95℃まで加熱してエチレン−ビニルアルコール共重合体を溶解させて濃度12%の水溶液を得た。得られた共重合体(A−2)の水溶液(100部)と水性エマルジョンEm−1(107部)を室温でブレンドして水性接着剤を得た。得られた水性接着剤の初期接着性、動的耐水性、皮膜の硬さ、高速塗工性及び耐酸性を上述の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0117】
[実施例4〜11及び比較例1〜4]
(水性エマルジョンEm−2〜Em−8の製造)
表2の通り、実施例3のPVA−7に代えて、共重合体(A−2)〜(A−5)を所定量用いたこと、及び固形分含有量を変更したこと以外は実施例3と同様にして水性エマルジョンを調製した。なお、共重合体(A−6)水に不溶であり、水性エマルジョンが得られなかった。
【0118】
(水性接着剤の作製)
表2の通り、Em−1〜Em−8を所定量用いたこと、及び共重合体(A−1)、(A−2)、(A−4)、(A−5)またはPVA−7の水溶液を所定量用いたこと以外は実施例3と同様にして水性接着剤を得た。得られた水性接着剤の初期接着性、動的耐水性、皮膜の硬さ、高速塗工性及び耐酸性を上述の方法に従って評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【符号の説明】
【0121】
1 重合槽
2 熱交換器
3〜7 導管
8 撹拌機
9 反応液導出管
10 ビニルエステル導入管
11、12 冷媒管
13 気体排出管
21 マックスブレンド翼
22 スーパーミックス MR203
23 スーパーミックス MR205
24 フルゾーン翼
図1
図2
図3
【国際調査報告】