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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2021年4月8日
【発行日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】真空蒸着装置用の蒸着源
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20211015BHJP
【FI】
   C23C14/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2020-541465(P2020-541465)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年6月4日
(11)【特許番号】特許第6762460号(P6762460)
(45)【特許公報発行日】2020年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2019-184125(P2019-184125)
(32)【優先日】2019年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 修司
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029CA01
4K029DA08
4K029DB03
4K029DB04
4K029DB06
4K029DB12
4K029DB13
4K029DB14
4K029DB15
4K029DB18
4K029JA10
4K029KA03
4K029KA05
4K029KA09
(57)【要約】
成膜対象物に対する蒸着方向を任意に設定することができて汎用性のある真空蒸着装置用の蒸着源を提供する。
真空チャンバVc内で成膜対象物Swに対して蒸着するための真空蒸着装置DM用の蒸着源ES,ESは、蒸着材料Emが充填される坩堝部61を有する主筒体6と、蒸着材料より上方に位置する主筒体の部分に突設され、放出開口75を有する副筒体7と、坩堝部内に充填される蒸着材料の加熱を可能とする加熱手段8aとを備える。副筒体が放出開口の位相を変えて主筒体に着脱自在に取り付けでき、坩堝部の上面開口61aを開閉自在に閉塞する蓋体62が設けられ、真空雰囲気中にて坩堝部の上面開口を蓋体で閉塞した状態で加熱手段により坩堝内の蒸着材料を加熱して蒸着材料を昇華または気化させ、昇華または気化した蒸着材料がその蒸気圧を保ちつつ副筒体に移送されて放出開口から放出されるように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で成膜対象物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源において、
長手方向が鉛直方向に合致する姿勢で設置され、蒸着材料が充填される坩堝部を有する主筒体と、坩堝部内に充填される蒸着材料より上方に位置する主筒体の部分に突設され、放出開口を有する副筒体と、少なくとも坩堝部に充填される蒸着材料の加熱を可能とする加熱手段とを備え、
副筒体が放出開口の位相を変えて主筒体に着脱自在に取り付けでき、
坩堝部の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体が設けられ、
真空雰囲気中にて坩堝部の上面開口を蓋体で閉塞した状態で加熱手段により坩堝部内の蒸着材料を加熱して蒸着材料を昇華または気化させ、蓋体を開放したときに、昇華または気化した蒸着材料がその蒸気圧を保ちつつ副筒体に移送されて放出開口から放出されるように構成したことを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項2】
請求項1記載の真空蒸着装置用の蒸着源であって、前記放出開口が一方向に長手のスリット孔で構成されるものにおいて、
前記副筒体内に、副筒体に移送された昇華または気化した蒸着材料を放出開口に導く分布孔が形成された分布板が挿設されることを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項3】
前記加熱手段が前記副筒体内に設けられる発熱体を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空蒸着装置用の蒸着源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内で成膜対象物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂製のシート状の基材は可撓性を有し、加工性も良いことから、その一方の面や両面に、真空雰囲気で所定の金属膜や酸化物膜等の所定の薄膜を単体または多層で成膜したり、エッチングや熱処理を施したりして電子部品や光学部品とすることが知られている。このような真空処理としての成膜処理を施す真空処理装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバを備え、真空チャンバ内には、シート状の基材を繰り出す繰出ローラと、成膜済みの基材を巻き取る巻取ローラと、繰出ローラから繰り出されたシート状の基材を搬送するガイドローラとが設けられている。真空チャンバ内の底面にはまた、一対のガイドローラ間を水平搬送されるシート状の基材の部分に対向配置させて蒸着源が設けられている。
【0003】
蒸着源は、蒸着材料を収容する直方体状の収容箱を備え、収容箱のシート状の基材の部分との対向面(即ち、鉛直方向の上面)には、スリット状の放出開口が設けられている(所謂ラインソース)。そして、収容箱内に蒸着材料を充填した後、真空雰囲気中にて加熱手段により収容箱内の蒸着材料を加熱して昇華または気化させ、この昇華または気化したものを真空チャンバ内との圧力差で放出開口から放出させ、シート状の基材の部分に付着、堆積させて所定の薄膜が蒸着される(所謂デポアップ式成膜)。
【0004】
ところで、成膜対象物としてのシート状の基材の両面に同一の薄膜を夫々成膜(所謂両面成膜)する場合、上記従来例のものでは、その構造上、所謂デポダウン式の成膜には利用できない(言い換えると、成膜対象物に対する蒸着方向を実質的に変更することができない)。このため、両面成膜しようとすると、蒸着源の上方で一対のガイドローラ間を水平搬送される間にシート状の基材の一方の面に薄膜を成膜した後、その表裏を反転させ、再度、蒸着源の上方にシート状の基材を移送して他方の面に薄膜を成膜することなる。結果として、シート状の基材の表裏を反転させる機構や、追加の移送ローラが必要になり、これでは、真空蒸着装置の複雑化やコストアップを招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5543159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、成膜対象物に対する蒸着方向を任意に設定することができて汎用性のある真空蒸着装置用の蒸着源を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内で成膜対象物に対して蒸着するための本発明の真空蒸着装置用の蒸着源は、長手方向が鉛直方向に合致する姿勢で設置され、蒸着材料が充填される坩堝部を有する主筒体と、坩堝部内に充填される蒸着材料より上方に位置する主筒体の部分に突設され、放出開口を有する副筒体と、少なくとも坩堝部に充填される蒸着材料の加熱を可能とする加熱手段とを備え、副筒体が放出開口の位相を変えて主筒体に着脱自在に取り付けでき、坩堝部の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体が設けられ、真空雰囲気中にて坩堝部の上面開口を蓋体で閉塞した状態で加熱手段により坩堝部内の蒸着材料を加熱して蒸着材料を昇華または気化させ、蓋体を開放したときに、昇華または気化した蒸着材料がその蒸気圧を保ちつつ副筒体に移送されて放出開口から放出されるように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、成膜対象物に対して蒸着材料を供給しようとする方向(蒸着方向)に応じて、主筒体に、例えば、放出開口が鉛直方向上方に向く姿勢、放出開口が水平方向に向く姿勢、または、放出開口が鉛直方向下方に向く姿勢で副筒体が取り付けられる。そして、大気雰囲気中にて蓋体を開放した状態で成膜対象物に成膜しようとする薄膜に応じて選択される蒸着材料を坩堝部にその鉛直方向上方から充填する。坩堝部に蒸着材料が充填されると、坩堝部の上面開口を蓋体で閉塞し、真空雰囲気中にて加熱手段を作動させて坩堝内の蒸着材料を加熱する。
【0009】
ここで、蒸着材料が気化性のものであるような場合には、蒸着材料が所定温度に達すると、坩堝部内の蒸着材料が液化し、坩堝部に充填された蒸着材料は、その蒸着材料が持つ蒸気圧曲線に従って上層部分から気化し始める。このとき、坩堝部内の圧力(蒸着材料の分圧)は、所定温度に対応した蒸気圧まで上昇し、蒸気圧律速で気化が抑制される熱的な平衡状態へ移行し、坩堝部内に充填されている蒸着材料の少なくとも上層部分が完全に液化する(このとき、加熱手段がシースヒータのような発熱体である場合、熱的な平衡状態に達した段階でそのヒータ出力は安定する)。この状態で蓋体を開放すると、真空雰囲気中に存する副筒体との分圧の差が平衡状態となるように、気化した蒸着材料はその蒸気圧を保ちつつ副筒体に移送(拡散)され、放出開口から真空雰囲気中に放出される。
【0010】
このように本発明によれば、蒸着材料を加熱して昇華または気化させる部分(主筒体)と、昇華または気化した蒸着材料が移送されて放出される部分(副筒体)とを分ける(即ち、気体移送式の蒸着源とする)と共に、副筒体に設けられる放出開口の位相を変更できる構成を採用したため、所謂デポアップ式やデポダウン式など成膜対象物に対する蒸着方向を任意に設定することができ、汎用性に優れたものとなる。また、坩堝部の上面開口を蓋体で閉塞できる構成を採用したため、主筒体及び副筒体の内部雰囲気が坩堝部内の平衡状態を維持できない条件下では、蓋体の開放を行わないことが可能となり、主筒体及び副筒体の内部への蒸着材料の堆積を防止でき、坩堝部を加熱する加熱手段のみにて蒸気圧制御が可能となる。
【0011】
ここで、例えば、成膜対象物が所定の幅を持つシート状の基材であるような場合、放出開口は、通常、一方向に長手のスリット状のもので構成されるが、主筒体から副筒体に移送された蒸着材料が放出開口から不均一に放出されたのでは、放出開口に対向する成膜対象物にその幅方向に膜厚分布の均一性よく成膜することができない。このとき、例えば蒸着材料の種類が変われば、放出開口から放出されるものの分布も変化することから、スリット状の放出開口から均一性よく蒸着材料が放出されるように蒸着源を構成しておく必要がある。本発明においては、前記副筒体内に、副筒体に移送された昇華または気化した蒸着材料を放出開口に導く分布孔が形成された分布板が挿設されることが好ましい。これによれば、分布板に形成される分布孔の形状や開口面積等を適宜設定すれば、スリット状の放出開口から均一性よく蒸着材料を放出させることができ、しかも、例えば蒸着材料の種類が変わったような場合には、分布孔の形状や開口面積の異なる分布板に取り換えればよく、汎用性に優れたものとなる。
【0012】
本発明においては、前記加熱手段が前記副筒体内に設けられるシースヒータのような発熱体を更に備える構成を採用してもよい。これによれば、発熱体(発熱源)が副筒体内に有ることで、上述のように副筒体の壁面経由の伝熱方式に比べ熱効率が向上し産業上有利な構成となるばかりか、副筒体の内壁を蒸着材料の昇華温度または気化温度より高い温度に加熱しておくことで、副筒体に移送された蒸着材料が付着(堆積)することが確実に防止でき(所謂セルフクリーニング)、しかも、主筒体及び副筒体内における蒸着材料の蒸気圧の安定化を図ることができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の蒸着源を備える真空処理装置の正面から視た断面図。
図2図1のII−II線に沿う断面図。
図3】(a)は、本実施形態の蒸着源を拡大して示す断面図、(b)は、(a)のIIIb−IIIb線に沿う断面図。
図4】蒸着源を拡大して示す平面図。
図5】蒸着源を真空処理室から取り外した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、成膜対象物をシート状の基材Swとし、真空雰囲気中でシート状の基材Swを走行させながら、シート状の基材Swの両面に成膜する場合を例に本発明の真空蒸着装置用の蒸着源の実施形態を説明する。以下においては、搬送ローラとしてのキャンローラの軸線方向が水平方向に一致する姿勢でキャンローラが真空チャンバVc内に収容されているものとし、軸線方向をX軸方向、同一の水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する鉛直方向をZ軸方向とし、上、下といった方向は、真空蒸着装置の設置姿勢で示す図1を基準とする。
【0015】
図1及び図2を参照して、本実施形態の蒸着源ES,ESを備える真空蒸着装置DMは、中央の真空処理室Msと、第1及び第2の各搬送室Ts1,Ts2とを備える真空チャンバVcを備える。特に図示して説明しないが、真空処理室Msと各搬送室Ts1,Ts2とには、排気管を介してターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ等で構成される真空ポンプユニットが接続され、真空雰囲気を形成できるようになっている。真空処理室Msは、直方体状の輪郭を持ち、互いに対向するY軸方向の側壁面を夫々開口したチャンバ本体としての第1チャンバ部1と、第1チャンバ部1の開口11,12をOリング等の真空シールSvを介して密閉可能に夫々覆う隔壁としての第1及び第2の支持プレート2,2と、後述の拡張チャンバEcとで画成されている。この場合、第1及び第2の支持プレート2,2の上面及び下面の所定位置には、Y軸方向に貫通する第1のねじ孔Shが穿設され、また、第1チャンバ部1の開口11,12に第1及び第2の支持プレート2,2を取り付けたとき、第1のねじ孔Shに対応する第1チャンバ部1の壁面部分には、第2のねじ孔Shが穿設されている。そして、第1チャンバ部1の開口11,12への第1及び第2の支持プレート2,2の取付状態で、第1及び第2の各ねじ孔Sh,Shに締結ボルトFb,Fbを締結することで、真空シールSvが第1チャンバ部1の開口11,12の周囲に位置する壁面部分と第1及び第2の支持プレート2,2とに圧接した状態で両者を固定できるようになっている。
【0016】
第1及び第2の支持プレート2,2の互いに配向する側には、第1及び第2の支持フレーム3,3が夫々取り付けられ、第1及び第2の支持プレート2,2のZ軸方向に起立した姿勢が維持できるようにしている。第1の支持フレーム3の下面には、床面Fに敷設したレール部材Rlに摺動自在に移動するスライダ31が設けられ、第1チャンバ部1の開口11からY軸方向一方(図2中、左側)に離間した退避位置と、第1チャンバ部1の開口11を閉塞する密閉位置との間で移動自在となっている(図2参照)。第1チャンバ部1のX軸方向両側には、直方体状の輪郭を持ち、Y軸方向他方の側壁面を開口したチャンバ本体としての第2チャンバ部4,4が夫々連設され、各搬送室Ts1,Ts2が、第2チャンバ部4,4と第1及び第2の支持プレート2,2とで画成されている。この場合、特に図示して説明しないが、上記と同様、第1及び第2の支持プレート2,2の上面及び下面の所定位置には、Y軸方向に貫通する第1のねじ孔Shが穿設され、また、第2チャンバ部4,4の開口11,12に第1及び第2の支持プレート2,2を取り付けたとき、第1のねじ孔Shに対応する第2チャンバ部4,4の壁面部分には、第2のねじ孔Shが穿設されている。そして、第2チャンバ部4,4の開口11,12への第1及び第2の支持プレート2,2の取付状態で、第1及び第2の各ねじ孔Sh,Shに締結ボルトFb,Fbを締結することで、図外の真空シールが第2チャンバ部4,4の開口11,12の周囲に位置する壁面部分と第1及び第2の支持プレート2,2とに圧接した状態で第2チャンバ部4,4を第1及び第2の支持プレート2,2に固定できるようになっている。
【0017】
互いに向かい合う第1チャンバ部1と第2チャンバ部4,4のX軸方向に位置する側壁には、シート状の基材Swの通過を許容する透孔13a,13b,41,42が夫々開設されると共に、第1チャンバ部1と第2チャンバ部4,4の両側壁間の隙間には、この隙間を通過するシート状の基材Swの部分を覆うようにしてロードロックバルブ5が設けられ、真空雰囲気中にて一貫してシート状の基材Swが搬送できると共に真空処理室Msと両搬送室Ts1,Ts2とを隔絶できるようにしている。なお、この種の真空処理装置に利用されるロードロックバルブ5としては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0018】
X軸方向一方(図1中、左側)に位置する第1の搬送室Ts1には、成膜前のシート状の基材Swが巻回される繰出ローラWrが設けられている。繰出ローラWrの回転軸Waは、第2の支持プレート2に軸支され、真空チャンバVc外に設けられるモータM1により回転駆動されるようになっている。第2の搬送室Ts2には、成膜済みシート状の基材Swを巻き取る巻取ローラUrが設けられている。巻取ローラUrの回転軸Uaもまた、第2の支持プレート2に軸支され、真空チャンバVc外に設けられるモータM2により回転駆動されるようになっている。なお、第1及び第2の各搬送室Ts1,Ts2には、シート状の基材Swの搬送を案内する搬送ローラとしてのガイドローラGrが適宜設けられ、ガイドローラGrの回転軸Gaもまた第2の支持プレート2に夫々軸支されている。
【0019】
真空処理室Msには、ガイドローラGrと、キャンローラCrとが設けられ、キャンローラCrの周囲を搬送される間にシート状の基材Swが冷却されるようになっている。ガイドローラGrとキャンローラCrとの回転軸Ga,Caもまた、第2の支持プレート2に軸支され、キャンローラCrは、真空チャンバVc外に設けられるモータM3により回転駆動されるようになっている。そして、真空処理室Ms内に、X軸方向に水平搬送されるシート状の基材Swの両面に対して成膜処理を行うために本実施形態の2個の蒸着源ES,ESが設けられている。
【0020】
図3及び図4も参照して、各蒸着源ES,ESは、同一構成を有し、主筒体6と副筒体7とを備える。この場合、第1の支持プレート2のY軸方向外側面には、各蒸着源ES,ESを設置しようとする位置や数に応じて拡張チャンバEcが連設されている。拡張チャンバEcの上部には、Z軸方向下方に配置される開閉扉Ed1を有する材料充填室Fsが設けられている。材料充填室Fsには、特に図示して説明しないが、排気管を介してターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ等で構成される真空ポンプユニットとベントバルブとが接続され、(真空チャンバVcに連通する)拡張チャンバEcと別個の真空雰囲気が形成できるようにしている(なお、拡張チャンバEcもまた、真空チャンバVcと別個の真空ポンプユニットにより真空排気できるように構成してもよい)。後述の坩堝部61に蒸着材料Emを充填する場合には、材料充填室Fs内を大気開放した状態でその内部に蒸着材料Emを仕込み、その後に材料充填室Fsを真空排気し、その内部が所定圧力に達すると、開閉扉Ed1と、後述の主筒体6用の開閉扉Ed2とを開放する。これにより、真空チャンバVcを大気開放することなく、後述の坩堝部61に蒸着材料Emを充填できる。なお、公知の構造を持つ材料自動移送機構を設けて蒸着材料Emを投入するようにしてもよい。そして、拡張チャンバEc内に、円筒形状の輪郭を持ち、その長手方向がZ軸方向に合致する姿勢で各蒸着源ES,ESの主筒体6が配置されている。
【0021】
主筒体6は、有底筒状の輪郭を持ち、そのZ軸方向の下部には、所定の充填率で固体の蒸着材料Emが充填される坩堝部61が設けられている。蒸着材料Emとしては、シート状の基材Swに成膜(蒸着)しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択され、例えば、アルミニウム、リチウム、インジウム及びその合金などの金属材料や有機材料が用いられる。主筒体6の上面開口には開閉扉Ed2が設けられ、公知の構造の開閉扉Ed2を閉じると、主筒体6内を密閉できるようになっている。坩堝部61にはまた、その上面開口61aを開閉自在に閉塞する蓋体62が設けられている。この場合、主筒体6内には、アクチュエータ63が設けられ、アクチュエータ63により、蓋体62をZ軸方向に起立させた起立姿勢と、その上面開口61aを閉塞する水平姿勢(図3参照)との間で蓋体62を揺動させると共に、水平姿勢のときに、蓋体62を坩堝部61に向けて押しつけ、蓋体62と坩堝部61との接触面圧を確保することができるようにしている(言い換えると、後述のように、蒸着材料Emの昇華または気化によりその内部圧力が上昇した時でも、蓋体62と坩堝部61との間のコンダクタンスを確保し、蒸着材料Emが主筒体6内へ不都合な漏洩が発生しないようにしている)。なお、このようなアクチュエータ63としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0022】
主筒体6の外周面には、先端に取付フランジ64aを備える、Y軸方向にのびる円筒
の分岐管部64が突設され、開閉扉Ed2を閉じた状態では、主筒体6の内部雰囲気は、分岐管部64のみが連通する対象となっている。分岐管部64は、第1の支持プレート2に設けた透孔21に挿通してその先端が真空処理室Msまで突出している。分岐管部64のZ軸方向の高さ位置は、少なくとも坩堝部61内に充填される蒸着材料Emの上層部分より上方に位置するように設定されている。主筒体6内にはまた、加熱手段としてのシースヒータ8a(発熱体)が設けられ、シースヒータ8aに図外の電源から通電することで、坩堝部61内の蒸着材料Emだけでなく、主筒体6内の内面や蓋体62をその全面に亘って加熱できるようにしている。
【0023】
真空処理室Ms内に位置する副筒体7は、両端に取付フランジ64aに対応する取付フランジ71,72を備える円筒形状の輪郭を持ち、シート状の基材Swの幅より長くなるように定寸されている。そして、取付フランジ64aと、Y軸方向一方の取付フランジ71とを当接させた状態で、締結手段としてのボルトBoで両者を締結することで、主筒体6に副筒体7が着脱自在に取り付けられ、ホルダHdで位置決め支持されている。ホルダHdは、第1の支持プレート2の内壁に固定される基端ブロックHd1と、基端ブロックHd1で片持ち支持されてY軸方向にのびる2本の支柱部Hd2とを備え、各支柱部Hd2には、Y軸方向に所定間隔で支持ブロックHd3が設けられている。支持ブロックHd3は副筒体7を点接触で支持するように構成され(即ち、位置決めはするが、自重以外の面圧が加わらないようにして)、接触による熱伝導が極小となるようになっている(図3(b)参照)。ここで、上記点接触とは、自重による面圧により永久変形を発生させない程度とした支持面積とする設計思想をいう。通常は妥当な安全率を見込み、接触面積を決定し、熱抵抗を最大化する。抵抗増大を意図する意味で、支持ブロックを伝導率の低いセラミックとしてもよく、例えば金属に替え、汎用のアルミナ製ネジを支持ブロックとして利用することで、さらに熱伝導を下げることも可能である。加えて、主筒体6に副筒体7の周囲にリフレクタ(図示せず)を設け、接触熱伝導のみでなく放射熱伝導についても抵抗値を上昇させる構成とすることでより熱損失が少ない構成とすることがより望ましい。
【0024】
主筒体6に対する副筒体7の固定方法は、上記に限定されるものではなく、例えば、クランプ等を用いることもできる。このとき、副筒体7をその孔軸(Y軸に一致)回りに所定の角度だけ回転させて固定すれば、後述の放出開口75の位相が任意に変更できるようになる。本実施形態では、第1の搬送室Ts1側に位置する蒸着源ESでは、放出開口75がZ軸方向上方を向く姿勢とされ、第2の搬送室Ts2側に位置する蒸着源ESでは、放出開口75がZ軸方向下方を向く姿勢とされる(図1参照)。Y軸方向他方の取付フランジ72には、副筒体7内を閉塞する蓋板73が装着され、この蓋板73が、後述の分布板76を保持するようにしている。このとき、主筒体6と副筒体7の内部雰囲気は連通し、かつ、この内部雰囲気と外部との連通口は後述する放出開口75以外には存在しない状態となる。また、蓋板73と、Y軸方向他方の取付フランジ72とを当接させた状態で、締結手段としてのボルトBoで両者を締結することで、蓋板73が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0025】
副筒体7の外周面には、一方の取付フランジ71からY軸方向に離間させてレーストラック状の輪郭を持つ突条74が設けられると共に、突条74で囲繞されるようにしてY軸方向に長手のスリット状の放出開口75が開設されている。蒸着源ES,ESの取付状態では、放出開口75が真空処理室Ms内で搬送されるシート状の基材Swの部分に対向するようになっている。副筒体7内にはまた、主筒体6から副筒体7に移送される、昇華または気化した蒸着材料Emが、放出開口75に導かれる際に通過する分布孔76aが形成された分布板76が挿設されている。分布板76は、図4に示すように、放出開口75を跨いで副筒体7のY軸方向略全長に亘ってのびる長さと、放出開口75より広い幅(X軸方向の長さ)を有する。分布孔76aは、放出開口75の直下に位置させて形成された単一の長孔で構成され、主筒体6側からそのY軸方向他方に設けて連続してその開口面積が増加するようにしてものである。開口面積の増加量は、シート状の基材Swに成膜したときのY軸方向(シート状の基材Swの幅方向)における膜厚分布を考慮して適宜設定される。
【0026】
上記実施形態では、単一の長孔で分布孔76aを構成するものを例に説明するが、シート状の基材Swに成膜したときの膜厚分布を略均一にできるものであれば、これに限定されるものではなく、例えば、面積の異なる孔を複数個開設して構成することもできる。また、上記実施形態では、分布板76を用いるものを例に説明するが、放出開口75を主筒体6側からそのY軸方向他方に設けて連続してその開口面積が増加するようにして、分布板76を省略することもできる。更に、副筒体7内には、加熱手段としてのシースヒータ8b(発熱体)が設けられ、シースヒータ8bに図外の電源から通電することで、副筒体7の内面や分布板76表面をその全面に亘って加熱できるようにしている。本実施形態では、副筒体7内にシースヒータ8bを設けているが、坩堝部61内の蒸着材料Emを加熱するときに放射や伝熱で主筒体6や副筒体7が十分に加熱できるのであれば、これを省略することもできる。
【0027】
上記真空蒸着装置DMにて、シート状の基材Swを走行させながら、シート状の基材Swの両面に成膜する場合、先ず、上述のように材料充填室Fs内に仕込み、開閉扉Ed1,Ed2を開け、アクチュエータ63により蓋体62を起立姿勢にした状態で、各蒸着源の各蒸着源ES,ESの坩堝部61に所定の充填率で蒸着材料Emを充填する。このとき、真空チャンバVcの一方の搬送室Tc1には、繰出ローラWrにシート状の基材Swが巻回され、その先端部が、真空処理室Ms内の各ガイドローラGr及びキャンローラCrに夫々巻き掛けられた後、他方の搬送室Tc2に案内され、ガイドローラGrを経て巻取ローラUrに取り付けられ、この状態で真空処理室Ms及び両搬送室Ts1,Ts2が所定圧力まで真空排気された待機状態となっている。
【0028】
蒸着材料Emを充填した後、蓋体62を水平姿勢にすると共に開閉扉Ed1,Ed2を夫々閉じる。そして、各拡張チャンバEc内が所定圧力に達すると、シースヒータ8a,8bに通電されて坩堝部61を含む各蒸着源ES,ESの主筒体6と副筒体7とが加熱される。ここで、蒸着材料Emが気化性の材料であるような場合には、蒸着材料Emが所定温度に達すると、坩堝部61内の蒸着材料Emが液化し、坩堝部61に充填された蒸着材料Emは、その蒸着材料Emが持つ蒸気圧曲線に従って上層部分から気化し始める。このとき、坩堝部61内の圧力(蒸着材料Emの分圧)は、所定温度に対応した蒸気圧まで上昇し、蒸気圧律速で気化が抑制される熱的な平衡状態へ移行し、坩堝部61内に充填されている蒸着材料Emが液化する(シースヒータ8aの通電電流(ヒータ出力)が安定する)。
【0029】
次に、モータM1〜M3を回転駆動して、シート状の基材Swを一定の速度で走行させると共に、アクチュエータ63により蓋体62を起立姿勢にする。すると、真空雰囲気中の真空処理室Ms内に存する副筒体7との分圧の差が平衡状態となるように、気化した蒸着材料Emはその蒸気圧を保ちつつ主筒体6を経て副筒体7に移送(拡散)され、分布板76により放出開口75へと導かれて、放出開口75から真空雰囲気中に放出される。このとき、蒸着源ESでは、放出開口75を上向きとしているため、デポアップでシート状の基材Swの一方の面に成膜される。そして、キャンローラCrの周囲を搬送される間でシート状の基材Swが一旦冷却され、次に、蒸着源ESでは、放出開口75を下向きとしているため、デポダウンでシート状の基材Swの他方の面に成膜される。両面に成膜されたシート状の基材Swは、他の搬送室Ts2へと搬送されて巻取ローラUrに巻き取られ、他の搬送室Tc2を大気開放した後、成膜処理済みのシート状の基材Swが回収される。
【0030】
なお、成膜処理済みのシート状の基材Swを回収した後(即ち、生産終了後)に、次の生産に向けて、作業者が、蒸着材料Emの種類の変更に伴う分布板76の交換、副筒体7のクリーニングやシースヒータ8a,8bの交換といったメンテナンスを実施する場合、第1の支持プレート2と第1チャンバ1とを互いに締結する締結ボルトFbの全てを取り外す。そして、真空チャンバVcを大気開放した後、スライダ31を介して、支持フレーム3をX軸方向一方に移動させる(図5参照)。これにより、真空処理室Msから離間した広い空間に副筒体7を取り出すことができ、メンテナンスの作業性を向上することができる。
【0031】
以上によれば、蒸着材料Emを加熱して昇華または気化させる部分(主筒体6)と、昇華または気化した蒸着材料Emが移送されて放出される部分(副筒体7)とを分ける(即ち、気体移送(拡散)式の蒸着源ES,ESとする)と共に、副筒体7に設けられる放出開口75の位相を変更できる構成を採用したため、所謂デポアップ式やデポダウン式などシート状の基材Swに対する蒸着方向を任意に設定することができ、汎用性に優れたものとなる。また、副筒体7に、蓋板73に固定される分布板76を挿設するようにしたため、分布板76に形成される分布孔76aの形状や開口面積等を適宜設定すれば、スリット状の放出開口75から均一性よく蒸着材料Emを放出させることができ、しかも、例えば蒸着材料Emの種類が変わったような場合には、分布孔76aの形状や開口面積の異なる分布板76に取り換えればよく、汎用性に優れたものとなる。
【0032】
更に、発熱体(発熱源)8bが副筒体7内に有ることで、上述のように副筒体7の壁面経由の伝熱方式に比べ熱効率が向上し産業上有利な構成となるばかりか、副筒体7の内壁やその内部に設けた分布板76などの部品を蒸着材料Emの昇華温度または気化温度より高い温度に加熱しておくことで、副筒体7に移送された蒸着材料Emが付着(堆積)することが確実に防止でき(所謂セルフクリーニング)、しかも、主筒体6及び副筒体7内における蒸着材料Emの蒸気圧の安定化を図ることができ、有利である。また、蒸着材料Emの再補充に際しては、真空チャンバVcを大気雰囲気に戻すといった操作を不要にできるため、生産性を向上することもできる。尚、発熱体8bとして、シースヒータ以外の公知のものを用いることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、成膜対象物をシート状の基材Swとしたが、これに限定されるものではなく、矩形の基板に対する成膜にも本発明の蒸着源ES,ESは利用でき、そのときには、基板の姿勢に応じて、放出開口75が鉛直方向上方に向く姿勢、放出開口75が水平方向に向く姿勢、または、放出開口75が鉛直方向下方に向く姿勢とすることができる。但し、坩堝部61は、その物理的特性からZ軸方向で鉛直を保つことが好ましい。これは、充填効率及び蒸着時の蒸着材料Emの気液界面における面積の変動を抑える構成とするためである。また、キャンローラCrで巻き掛けられたシート状の基材Swの部分(即ち、冷却されている部分)に対して成膜するとき、副筒体7のY軸の軸線をX−Z平面上に設定し、放出開口75をY軸回りに回転させてキャンローラCrに対向する位置に向ければよい(この場合、主筒体6のZ軸の軸線は鉛直を保つようにする)。なお、キャンローラCrの回転軸線が水平ではない(X−Z平面に対して回転軸線が垂直でない)場合は、放出開口75をキャンローラCrに添わせるように副筒体7の軸線を傾斜させるように設定すればよい。他方、成膜時にシート状の基材Swの冷却が必要な場合には、図1に示す真空蒸着装置DMにおいて、シート状の基材Swの成膜面と背向する側で蒸着源ES,ESの各放出開口75に対峙させて冷却ローラや冷却パネル(図示せず)を配置すればよい。
【符号の説明】
【0034】
DM…真空蒸着装置、Ec…拡張チャンバ、Em…蒸着材料、ES,ES…蒸着源、Sw…シート状の基材(成膜対象物)、Vc…真空チャンバ、6…主筒体、61…坩堝部、61a…上面開口、62…蓋部、7…副筒体、75…放出開口、76…分布板、76a…分布孔、8a…シースヒータ(加熱手段)、8b…シースヒータ(発熱体)。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】