(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-504046(P2015-504046A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】グラフェンナノリボン製造用のポリマー前駆体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 49/683 20060101AFI20150109BHJP
C01B 31/02 20060101ALI20150109BHJP
C08G 61/10 20060101ALI20150109BHJP
C07C 15/14 20060101ALI20150109BHJP
【FI】
C07C49/683CSP
C01B31/02 101Z
C08G61/10
C07C15/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-548286(P2014-548286)
(86)(22)【出願日】2012年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月15日
(86)【国際出願番号】IB2012057377
(87)【国際公開番号】WO2013093756
(87)【国際公開日】20130627
(31)【優先権主張番号】61/577,689
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(71)【出願人】
【識別番号】506209857
【氏名又は名称】マクス−プランク−ゲゼルシャフト、ツール、フェルデルング、デァ、ヴィセンシャフテン、イー、ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァブ,マティアス ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】成田 明光
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シンリヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,クラウス
【テーマコード(参考)】
4G146
4H006
4J032
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC16B
4G146AC30B
4G146AD28
4G146AD30
4G146BA13
4G146BA20
4G146BA45
4G146BC50
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB84
4J032CA04
4J032CB01
4J032CB12
4J032CC01
4J032CE03
4J032CE22
4J032CG01
(57)【要約】
一般式(I)のオリゴフェニレンモノマー:
式中
R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、ハロゲン、−OH、−NH
2、−CN、−NO
2または直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のC
1−C
40炭化水素基で、1〜5個のハロゲン(F、Cl、Br、I)、−OH、−NH
2、−CN及び/又は−NO
2で置換されていてもよく、一個以上のCH
2基が、−O−または−S−に置き換わっても、あるいは必要なら置換されたアリール、アルキルアリールまたはアルコキシアリール基で置換されていてもよく;
mは0、1または2である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のオリゴフェニレンモノマー:
【化1】
式中、
R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、ハロゲン、−OH、−NH
2、−CN、−NO
2または直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和C
1−C
40炭化水素基であり、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−OR
3、−NR
32、−CN及び/又は−NO
2で1〜5個置換されていてもよく、一つ以上のCH
2基が、−O−、−S−、−NR
4−、−OC(O)−または−C(O)、または必要なら置換されたアリール、アルキルアリールまたはアルコキシアリール基で置換されていてもよく;
各R
3は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
各R
4は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
mは0、1または2である。
【請求項2】
R1とR2は、それぞれ相互に独立して、H、C1−C30アルキル、C1−C30アルコキシ、C1−C30アルキルチオ、C2−C30アルケニル、C2−C30アルキニル、C1−C30ハロアルキル、C2−C30ハロアルケニルまたはハロアルキニルである請求項1に記載のオリゴフェニレンモノマー。
【請求項3】
mが0である請求項1または2に記載のオリゴフェニレンモノマー。
【請求項4】
R1が直線状または分岐状のC1−C30アルキルであり、R2がHである請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴフェニレンモノマー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のオリゴフェニレンモノマーのグラフェンナノリボン製造用ポリマー前駆体の製造のための利用。
【請求項6】
一般式(II)の繰返単位をもつグラフェンナノリボン製造用のポリマー前駆体:
【化2】
式中
R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、ハロゲン、−OH、−NH
2、−CN、−NO
2または直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のC
1−C
40炭化水素基であり、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−OR
3、−NR
32、−CN及び/又は−NO
2で1〜5個置換されていてもよく、一つ以上のCH
2基が、−O−、−S−、−NR
4−、−OC(O)−または−C(O)、または必要なら置換されたアリール、アルキルアリールまたはアルコキシアリール基で置換されていてもよく;
各R
3は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
各R
4は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
mは、0、1または2であり;
nは、2〜100の数字である。
【請求項7】
R1とR2が、それぞれ相互に独立して、H、C1−C30アルキル、C1−C30アルコキシ、C1−C30アルキルチオ、C2−C30アルケニル、C2−C30アルキニル、C1−C30ハロアルキル、C2−C30ハロアルケニル、C2−C30ハロアルキニルである請求項6に記載のポリマー前駆体。
【請求項8】
mが0である請求項6または7に記載のポリマー前駆体。
【請求項9】
R1が直鎖又は分岐鎖のC1−C30アルキルであり、R2がHである請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリマー前駆体。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリマー前駆体の脱水素環化によるグラフェンナノリボンの製造方法。
【請求項11】
上記ポリマー前駆体が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオリゴフェニレンモノマーのディールス・アルダー重合により製造される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法により得られるグラフェンナノリボン。
【請求項13】
液状媒体中に溶解または分散した請求項12に記載の一種以上のグラフェンナノリボンを含む組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の一種以上のグラフェンナノリボンを含む薄膜半導体を有する電子装置、光学装置またはオプトエレクトロニクス装置。
【請求項15】
本装置が、有機電界効果トランジスタ装置、有機光起電装置または有機発光ダイオードである請求項14記載の装置。
【請求項16】
請求項12に記載の一種以上のグラフェンナノリボンの電子装置、光学装置またはオプトエレクトロニクス装置での利用。
【請求項17】
本装置が、有機電界効果トランジスタ装置、有機光起電装置または有機発光ダイオードである請求項16に記載の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノリボン製造用のポリマー前駆体とその製造方法と、ポリマー前駆体の合成用のオリゴフェニレンモノマー、このポリマー前駆体からのグラフェンナノリボンの製造方法、そのオリゴフェニレンモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、グラフェン、即ち原子状の厚みをもつグラファイト薄膜が魅力的な電子特性をもつことがわかり、物理や材料科学の分野で大きな興味を集めている。これのような特性には、優れた電荷キャリアー移動度や量子ホール効果が含まれる。またグラフェンはその化学的強度と材料強度のため、透明導電電極や電荷やエネルギーの貯蔵装置などの用途に理想的な候補となっている。
【0003】
グラフェンナノリボン(GNR)は、母体のグラフェン格子に由来する線状構造物である。これらに特有の性質は、長さ/幅比が大きく形状異方性が大きいことである。現在材料科学では、さらに小型で平坦な高速の炭素系装置や集積回路でのこれらの利用が広く検討されている。グラフェンとは対照的に、アームチェア型GNRは、その幅により調整可能なバンドギャップを示す。最小チャネル幅での架橋が必要な電界効果トランジスタ(FET)などの装置中でGNRを使用する場合、その長さが問題となる。ナノスケール伝導路中の銅または金を置換する場合にも同じことがいえる。同時に、GNRの末端構造が極めて重要である。微小ナノグラフェンのコンピューターシミュレーションと試験結果から、ジグザグ末端で非結合性π電子状態を示すGNRを、スピントロニクスデバイス中の活性成分として使用できることがわかっている。
【0004】
明確な化学組成をもつGNRの設計や化学的合成、加工はかなり複雑であるため、これらの構造物についてはほとんど知られていない。最近では、構造や幅、長さ、末端構造、ヘテロ原子含量が明確なGNRを加工するための合成研究の報告は少ない。GNRのボトムアップ合成の研究は、反応環境に応じてさらに溶液系ルートと表面系ルートの二つに分けられる。
【0005】
オリゴフェニレン前駆体を用いる溶液系アプローチでは、通常、最初の工程でポリマーが作られ、次いでショル型の酸化的脱水素環化により黒鉛構造に変換される。しかしながら、化学アシスト黒鉛化で最終のGNR構造が得られるように芳香族単位を適切に配列することができるように、母体モノマーの設計を慎重に行う必要がある。
【0006】
J. Wu、L. Gherghel, D. Watson, J. Li, Z. Wang,C.D. Simpson, U. Kolb, and K. Mullen, Macromoiecules 2003, 36, 7082−7089には、1,4−ビス(2,4,5−トリフェニルシクロペンタジエノン−3−イル)ベンゼンとジエチニルターフェニルの繰り返しディールス・アルダー付加環化により合成される可溶性の分岐状ポリフェニレンの分子内酸化的脱水素環化で得られる黒鉛状ナノリボンの合成が報告されている。得られたこれらのグラフェンリボンは線状ではなく、ポリフェニレン前駆体の構造的なデザインに起因する統計的に分布した「屈曲点」を有している。
【0007】
X. Yang, X. Dou, A. Rouhanipour, L. Zhi, H.J. Rader, and K. Mullen, JACSCommunications, published on Web 03/07/2008には、二次元状グラフェンナノリボンの合成が報告されている。1,4−ジヨード−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼンと4−ブロモフェニルボロン酸の鈴木・宮浦カップリングによりジブロモヘキサフェニルベンゼンが得られ、これがビスボロン酸エステルに変換される。このビスボロン酸エステルとジヨードベンゼンとの鈴木・宮浦重合させると、高立体障害反応でポリフェニレンが得られる。FeCl
3を酸化剤とするポリフェニレンの分子内ショル反応で、グラフェンナノリボンが得られる。
【0008】
Y. Fogel, L. Zhi, A. Rouhanipour, D. Andrienko, H.J. Rader, and K. Mullen, Macromolecules 2009,42,6878−6884には、マイクロ波アシストのディールス・アルダー反応による繰り返し単位中に剛直なジベンゾピレンコアをもつ五種の単分散リボン型ポリフェニレンの同族列の合成が報告されている。得られたポリフェニレンリボンの大きさは、芳香族主鎖中に132〜372個の範囲の炭素原子が含むものであり、6個のジベンゾピレン単位を含んでいる。主鎖が柔軟であり周囲がドデシル鎖で置換されているため、これらのポリフェニレンリボンは有機溶媒に可溶である。他の反応工程では、リボン型の多環芳香族炭化水素(PAH)が脱水素環化で作られる。
【0009】
三つの方法の全てが、最終のグラフェンナノリボンに関する欠点をもつ。
【0010】
第一の方法の場合には、主鎖中に統計的に分布している「屈曲点」のため、得られるグラフェンナノリボンの構造が明確でない。また、A2B2型重合アプローチは化学量論的な差に対する感受性が高いため、分子量が限定される。可溶性を高めるアルキル鎖がグラフェンナノリボンの側鎖として導入されていない。
【0011】
第二の方法は、A2B2型鈴木法のA2B2化学量論に起因する量的な問題と1,4−ジヨード−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼンの立体障害の欠点をもつ。
【0012】
第三の方法は、逐次合成を使用するため非常に構造の明確なグラフェンナノリボン画分を与えるが、高分子量種の加工が難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J. Wu、L. Gherghel, D. Watson, J. Li, Z. Wang,C.D. Simpson, U. Kolb, and K. Mullen, Macromoiecules 2003, 36, 7082−7089
【非特許文献2】X. Yang, X. Dou, A. Rouhanipour, L. Zhi, H.J. Rader, and K. Mullen, JACSCommunications, published on Web 03/07/2008
【非特許文献3】Y. Fogel, L. Zhi, A. Rouhanipour, D. Andrienko, H.J. Rader, and K. Mullen, Macromolecules 2009,42,6878−6884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、新しいグラフェンナノリボンの製造方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、グラフェンナノリボン製造に好適なポリマー前駆体と方法、このようなポリマー前駆体の製造に適当なオリゴフェニレンモノマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーで解決される。
【0016】
【化1】
【0017】
式中
R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、ハロゲン、−OH、−NH
2、−CN、−NO
2、または直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和C
1−C
40炭化水素基であり、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−OR
3、−NR
32、−CN及び/又は−NO
2で1〜5個置換されていてもよく、一つ以上のCH
2基が、−O−、−S−、−NR
4−、−OC(O)−または−C(O)、または必要なら置換アリール、アルキルアリールまたはアルコキシアリール基で置換されていてもよく;
各R
3は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
各R
4は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
mは、0、1または2である。
【0018】
好ましくは、R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
1−C
30アルコキシ、C
1−C
30アルキルチオ、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニルまたはハロアルキニル、例えばC
1−C
30パーフルオロアルキルである。より好ましくは、R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、C
1−C
30アルキルまたはC
1−C
30アルコキシである。最も好ましくは、R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、HまたはC
1−C
30アルキルである。
【0019】
C
1−C
30アルキルは、直鎖であっても、可能なら分岐鎖であってもよい。
【0020】
例には、メチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、テトラコシルまたはペンタコシルがあげられる。
【0021】
C
1−C30アルコキシ基は、直鎖または分岐状のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、tert−アミルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシまたはオクタデシルオキシである。
【0022】
「アルキルチオ基」は、エーテル結合の酸素原子が硫黄原子で置き換わった以外は上記アルコキシ基と同じ基である。
【0023】
C
2−C
30アルケニル基は直鎖または分岐状のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、メタリル、イソプロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、n−ペンタ−2,4−ジエニル、3−メチル−ブト−2−エニル、n−オクト−2−エニル、n−ドデス−2−エニル、イソドデセニル、n−ドデス−2−エニルまたはn−オクタデス−4−エニルである。
【0024】
C
2−30アルキニルは、直鎖または分岐状で、非置換又は置換の基であり、例えばエチニル、1−プロピン−3−イル、1−ブチン−4−イル、4−ペンチン−5−イル、2−メチル−3−ブチン−2−イル、1,4−ペンタジイン−3−イル、1,3−ペンタジイン−5−イル、1−ヘキシン−6−イル、シス−3−メチル−2−ペンテン−4−イン−1l−イル、トランス3−メチル−2−ペンテン−4−イン−1−イル、1,3−ヘキサジイン−5−イル、1−オクチン−8−イル、1−ノニン−59−イル、1−デシン−10−イル、または1−テトラコシン−24−イルである。
【0025】
C
1−C
30−パーフルオロアルキルは、非分岐基または分岐基であり、例えば−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2、−(CF
2)
3CF
3または−C(CF
3)
3である。
【0026】
「ハロアルキル基とハロアルケニル基、ハロアルキニル基」は、上述のアルキル基とアルケニル基とアルキニル基をハロゲンで一部又は全部置換することで得られる基である。
【0027】
C
2−C
30アシルは、直鎖または分岐状の、飽和又は不飽和の基であり、例えばエタノイル、プロパノイル、イソブタノイル、n−ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイルまたはドデカノイルである。
【0028】
アリールは、通常必要なら置換されていてもよいC
6−C
30アリールであり、
例えばフェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル、ビフェニリル、ターフェニリル、ピレニル、フルオレニル、フェナントリル、アントリル、テトラシル、ペンタシルまたはヘキサシルである。
【0029】
本発明のある好ましい実施様態では、R
1が、直鎖又は分岐鎖のC
1−C
30アルキルであり、R
2がHである。
【0030】
上記の問題はまた、一般式(II)の繰返単位をもつグラフェンナノリボンの製造用ポリマー前駆体により解決される。
【0031】
【化2】
【0032】
式中
R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、ハロゲン、−OH、−NH
2、−CN、−NO
2または直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和C
1−C
40炭化水素基であり、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−OR
3、−NR
32、−CN及び/又は−NO
2で1〜5個置換されていてもよく、一つ以上のCH
2基が、−O−、−S−、−NR
4−、−OC(O)−または−C(O)、または必要なら置換アリール、アルキルアリールまたはアルコキシアリール基で置換されていてもよく;
各R
3は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
各R
4は、それぞれ互いに独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニル、C
2−C
30ハロアルキニルまたはC
2−C
30アシルであり;
mは、0、1または2であり、
nは、2〜900の数字である。
【0033】
好ましくは、R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、C
1−C
30アルキル、C
1−C
30アルコキシ、C
1−C
30アルキルチオ、C
2−C
30アルケニル、C
2−C
30アルキニル、C
1−C
30ハロアルキル、C
2−C
30ハロアルケニルまたはハロアルキニル、例えばC
1−C
30パーフルオロアルキルである。より好ましくはR
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、H、C
1−C
30アルキルまたはC
1−C
30アルコキシである。最も好ましくは、R
1とR
2は、それぞれ相互に独立して、HまたはC
1−C
30アルキルである。
【0034】
好ましくは、式(I)と(II)のR
2が、Hである。
【0035】
好ましくは、式(I)と(II)のmが、0または1である。より好ましくは、式(I)と(II)のmが、0である。
【0036】
本発明のある好ましい実施様態では、R
1が直鎖又は分岐鎖のC
1−C
30アルキル基で、R
2がHである。
【0037】
一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーをスキーム1に記載のディールス・アルダー反応で反応させて、一般式(II)の繰返単位をもつグラフェンナノリボン製造用のポリマー前駆体として用いられる。
【0038】
このディールス・アルダー反応は、機能性分子や機能性ポリマーの製造によく使われるよく確立された方法である。一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーの一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体へのディールス・アルダー反応は、いろいろな条件で実施できる。例えば、このディールス・アルダー反応を高沸点溶媒中で高温で行うことができる。適当な高沸点溶媒は、ジフェニルエーテルや1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾフェノンである。
【0039】
あるいは、このディールス・アルダー反応を、溶媒を使用せずに200℃〜300℃の温度で実施できる。
【0040】
スキーム1
【0041】
【化3】
【0042】
一般に、この一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体は、2〜900個の繰返単位をもち、その分子量は1000〜600000g/molである。
【0043】
本発明はまた、一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーをディールス・アルダー重合により一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体を製造する方法に関する。
【0044】
本発明はまた、スキーム2による一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体に記載の脱水素環化によるグラフェンナノリボンの製造方法に関する。
【0045】
一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体からの一般式(III)のグラフェンナノリボンの製造は、例えばDCMとニトロメタンの混合物中で塩化第二鉄(III)を酸化剤として実施できる(スキーム2)。温度と一般式(II)の繰返単位をもつポリマー前駆体の性質により、反応時間が2時間〜10日間である。この反応を20℃付近で行うと、反応時間は通常2〜4日間である。副反応を抑えるために、反応中この反応混合物中に不活性ガスを通すことが好ましい。
【0046】
あるいは、一般式(III)のグラフェンナノリボンの製造を、無水DCM中でフェニルヨウ素(III)ビス(トリフルオロアセテート)(PIFA)と三フッ化ホウ素エーテラートを使用して、あるいは無水DCM中でモリブデン(V)ペンタクロライドを使用して行うことができる。
【0047】
一般に、一般式(III)のグラフェンナノリボンの分子量は、1000〜600000g/molの範囲で変動する。
【0048】
スキーム2
【0049】
【化4】
【0050】
スキーム7にまとめて示すように、一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーは、下のスキーム3〜7により、二つの中間体(3−ブロモベンジル4と置換1,3−ビス(コリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8)を経由して合成できる。使用する反応条件と溶媒は単に説明を目的とするものであり、もちろん他の条件や溶媒も使用でき、それらは当業界の熟練者には容易に決定できる。一般式(III)のグラフェンナノリボンの所望の幅により、いろいろな置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8(m=0、1または2)を3−ブロモベンジル4と反応させることができる。適当な置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8は、例えば、1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−0(ただし、m=0(スキーム4)、同8−1(ただし、m=1(スキーム5))、同8−2(ただし、m=2(スキーム6))である。
【0051】
第一の反応経路では、中間体の3−ブロモベンジル4を、市販の1−ブロモ−3−ヨードベンゼン1とエチニルベンゼン2(スキーム3)から二段経路で合成できる。1と2の園頭型のカップリングを、3−ブロモジフェニルアセチレン3の合成に使用できる。この反応は、ヨウ化銅(I)とパラジウム(II)触媒の存在下、室温でTHFとトリエチルアミンの混合物中で実施できる。1−ブロモ−3−ヨードベンゼン1のヨウ素炭素結合が高反応性であるため、このカップリングは、所望位置である3位でのみ進行する。
【0052】
第二の工程では、3−ブロモジフェニルアセチレン3のアセチレン基の酸化で3−ブロモベンジル4が得られる。この工程は、ジメチルスルホキシド中高温で、ヨウ素の存在下でブロモジフェニルアセチレン3を撹拌して行われる。
【0053】
スキーム3
【0054】
【化5】
【0055】
スキーム4に、文献既知のハロゲン化トルエン5から出発して置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−0を合成する経路を示す。なお式中で、XとYは、独立してCl、Br、IまたはHから選ばれる。第一の工程は、ハロゲン化トルエン5のベンジル位のブロモ化によるハロゲン化ベンジルブロミド6の合成である。この工程は、四塩化炭素中、N−ブロモスクシンイミド(NBS)と過酸化ベンゾイルの存在下でハロゲン化トルエン5を還流下で加熱して行うことができる。このハロゲン化ベンジルブロミド6を、さらにハロゲン化1,3−ビス(フェニル)プロパン−2−オンにまで反応させる。これは、鉄(0)ペンタカルボニルと水酸化カリウムとベンジルトリエチルアンモニウムクロライドを用いながら、このハロゲン化ベンジルブロミド6を、ジクロロメタンと水の反応混合物中で還流下に加熱して行われる。この反応経路の最後の反応工程は、いずれかの所望の置換または非置換ハロゲン化物R
1X’またはR
2X’を用いて行うことができる。なお、X’は、Cl、BrまたはIから選ばれ、R
1とR
2は上の定義と同じである。例えば、ヨウ化亜鉛(II)とパラジウム(0)触媒を使って室温で、置換1,3−ビ(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−0を得ることができる。XとYがともにHである場合は、この反応工程を除くことができる。
【0056】
スキーム4
【0057】
【化6】
【0058】
置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−1(m=1)の合成をスキーム5に示す。置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−1は、市販の2−ブロモ−1−ヨード−5−メチルベンゼン9とフェニルボロン酸10から出発して4段階経路で合成できる。9と10の鈴木クロスカップリングにより2−ブロモ−5−メチル−ビフェニル11を合成することができる。この反応は、高温でトルエンとエタノールと水の反応混合物中で、炭酸カリウムと触媒量のテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)の存在下で行うことができる。ヨウ素炭素結合は反応性が高いため、このカップリングは主に、所望位置である1位のヨウ素原子で起こる。次の工程では、2−ブロモ−5−メチルビフェニル11のベンジル位置をブロモ化して官能化ビフェニル12を得る。この工程は、N−ブロモスクシンイミド(NBS)と過酸化ベンゾイルを使用し、四塩化炭素中でブロモ−5−メチル−ビフェニル11を還流下で加熱して行うことができる。
【0059】
スキーム5
【0060】
【化7】
【0061】
この官能化ビフェニル12をさらに、1,3−ビス(ブロモビフェニル)プロパン−2−オン13にまで反応させることができる。これは、ジクロロメタンと水の反応混合物中で、鉄(0)ペンタカルボニルと水酸化カリウムとベンジルトリエチルアンモニウムクロライドの存在下でこの官能化ビフェニル12を煮沸して行う。最後の工程では、炭酸カリウムとテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)の存在下での1,3−ビス(ブロモビフェニル)プロパン−2−オン13とアリールボロン酸ピナコールエステル14の鈴木クロスカップリングで、置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−1(m=1)が得られる。R
1とR
2は上記の定義通りである。
【0062】
スキーム6に置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−2(m−=2)の合成を示す。置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−2の合成は、市販の2−ブロモ−4−クロロ−1−ヨードベンゼン16と上記の置換フェニルボロン酸ピナコールエステル14から出発する。置換2−ブロモ−4−クロロビフェニル17の合成に鈴木クロスカップリングを使用できる。この反応は、例えば高温で、トルエンとエタノールと水の反応混合物中で炭酸カリウムとテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)の存在下で行うことができる。正確に1.00等量の置換フェニルボロン酸ピナコールエステル14を使用することが好ましい。次いで、フェニルボロン酸10を使用して2−ブロモ−4−クロロビフェニル17を第二の鈴木反応で変換して、置換クロロトリスフェニレン18を得る。必要な条件は前の工程と同じであるが、より高温である。
【0063】
スキーム6
【0064】
【化8】
【0065】
この置換トリスフェニレニルボロン酸ピナコールエステル19は、1,4−ジオキサン中での還流下で、塩基としての酢酸カリウムと触媒量のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)と2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(XPhos)の存在下で、クロロトリスフェニレン18と1,4−フェニルジボロン酸のビス(ピナコール)エステルとから製造できる。トルエンとエタノールと水の混合物での還流下での、塩基としての炭酸カリウムとテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)を用いる19と1,3−ビス(ブロモビフェニル)プロパン−2−オン13の鈴木クロスカップリングで、置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8−2が得られる。
【0066】
この中間体の3−ブロモベンジル4と置換1,3−ビス(オリゴフェニレニル)プロパン−2−オン8(m=0、1または2)のカップリングを、クネーフェナーゲル縮合を用いて行うことができる(スキーム7)。これは、tert−ブタノールと水の混合物中で80℃で、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドの存在下で、4と8を反応させて行うことができる。得られる置換2,5−ビス(オリゴフェニレニル)−3−(3−ブロモフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン20をさらに、園頭クロスカップリング反応で、トリメチルシリルアセチレンとビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムクロライド(II)とヨウ化銅(I)を用いて反応させる。これにより、置換2,5−ビス(オリゴフェニレニル)−3−(3−トリメチルシリルアセチルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン21が得られる。塩基として炭酸カリウムを使用すると、最終的に一般式(I)のオリゴフェニレンモノマーが生成する。THFとメタノールの1:1混合物を使用するとこの反応は円滑に進行する。
【0067】
スキーム7
【0068】
【化9】
【0069】
本明細書に開示されるグラフェンナノリボンを使用するいろいろな製品、例えば電子機器や光学装置、オプトエレクトロニクス装置(例えば、電界効果トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ)や太陽電池、有機発光ダイオード(OLED))、相補型金属酸化物半導体(CMOS)、相補型インバータ、Dフリップフロップ、整流器、リングオシレータも、またその製造方法も、本発明の範囲に含まれる。
【0070】
したがって本発明はまた、半導体材料の製造方法を提供する。これらの方法は、液状媒体(溶媒または溶媒混合物)中に溶解または分散した一種以上の本発明のグラフェンナノリボンを含む組成物を製造し、この組成物を支持体上に塗布して半導体材料前駆体を与え、この半導体前駆体を処理(例えば、加熱)して本明細書に開示の一種以上のグラフェンナノリボンを含む半導体材料(例えば、薄膜半導体)を与えることを含むことができる。いろいろな実施様態では、この液状媒体が、有機溶媒であるか、無機溶媒(例えば水)、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施様態では、この組成物が、さらに、洗剤と分散剤、バインダー、相溶化剤、硬化剤、開始剤、湿潤剤、消泡剤、湿潤剤、pH改質剤、殺菌剤、静菌剤から独立して選ばれる一種以上の添加物を含むことができる。例えば、界面活性剤及び/又はポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる)が、分散剤、バインダー、相溶化剤、及び/又は消泡剤として含まれていてもよい。いくつかの実施様態では、上記の塗布工程を、印刷により行うことができ、例えばインクジェット印刷やいろいろな接触印刷技術(例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リソグラフィー印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクト印刷)により行うことができる。他の実施様態では、この塗布工程を、スピンコーティング、ドロップ塗装、ゾーン塗装、浸漬塗装、ブレード塗装、吹き付けまたは真空濾過で行うことができる。
【0071】
本発明はまた、製品を、具体的には本発明の半導体材料と基板成分及び/又は誘電体成分とからなる複合物を含むいろいろな製品を提供する。この基板成分は、ドープされたケイ素、酸化インジウムスズ(ITO)、ITO塗布ガラス、ITO塗布ポリイミドまたは他のプラスチック、アルミニウムまたは他の金属の単独とポリマーまたは他の基板上に塗布されたもの、ドープされたポリチオフェン等から選ぶことができる。誘電体成分は、無機の誘電体材料、例えばいろいろな酸化物(具体的には、SiO
2、Al
2O
3、HfO
2)から製造でき、また有機誘電体材料、例えばいろいろな高分子材料(具体的には、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)や、自己組織化超格子/自己組織化ナノ誘電性(SAS/砂)材料(例えば、Yoon、M−H.ら著、PNAS、102(13):4678−4682(2005)に記載のもの)、ハイブリッド有機/無機誘電体材料(例えば、US200770181961A1に記載のもの)から製造できる。この複合物は、一個以上の電気接点を持つことができる。このようなソース電極やドレイン電極、ゲート電極に適当な材料には、金属(例えば、Au、Al、Ni、Cu)や、透明導電性酸化物(例えば、ITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))が含まれる。本明細書に記載の一個以上の複合物の例には、いろいろな有機電子装置や光学装置、オプトエレクトロニクス装置(例えば有機薄膜トランジスタ(OTFT)、具体的には有機電界効果トランジスタ(OFET))に、また、センサー、キャパシター、単極性回路、相補型回路(例えば、インバータ回路)などが含まれる。
【0072】
本発明のグラフェンナノリボンの使用か好ましい他の製品は、光起電装置または太陽電池である。本発明の化合物は、広い光吸収を示し、及び/又は大きく正にシフトした還元電位を持つため、このような用途に好ましい。したがって、本明細書に記載のグラフェンナノリボンは、光起電装置中でn型半導体として使用でき、これは、隣接するp型半導体材料とともにpn接合を形成している。これらの化合物は薄膜半導体の形であってよく、支持体上に塗布して複合物を形成することができる。このような装置での本発明の化合物の利用は、当業界の熟練者には公知のことである。
【0073】
したがって、本発明のもう一つの側面は、本発明の半導体材料を含む有機電界効果トランジスタの製造方法に関する。本発明の半導体材料は、いろいろな種類の有機電界効果トランジスタの製造に使用でき、例えばトップゲート・トップコンタクトキャパシター構造物やトップゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・トップコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物の製造に使用できる。
【0074】
特定の実施様態では、トップコンタクト構造で、ドープされたケイ素基板上に形成されたこのグラフェンナノリボンを用い、SiO
2を誘電体として使用して、OTFT装置を製造することができる。特定の実施様態では、少なくとも本発明のグラフェンナノリボンを含むこの活性半導体層を、室温あるいは高温で形成できる。他の実施様態では、少なくとも本発明のグラフェンナノリボンを含むこの活性半導体層を、上述のようにスピンコーティングまたは印刷で形成できる。トップコンタクト装置には金属製接点を、シャドウマスクを用いてフィルム上に形成することができる。
【0075】
以下の実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。
【0076】
実施例
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】ポリマー前駆体IIaの粗生成物のMALDl−TOFによるMS分析の(表1、項目1、マトリックス:TCNQ、直線モード)
【
図2】ポリマー前駆体IIaの粗生成物のMALDl−TOFによるMS分析(表1、項目1、マトリックス:TCNQ、リフレクトロンモード)
【
図3】ポリマー前駆体IIaの四量体と五量体、六量体、七量体の化学式と正確な質量、分子量 (4量体=C
216H
274、正確な質量=2868.14、分子量=2870,49 5量体=C
270H
342、 正確な質量=3584.68;分子量=3587.60 6量体=C
324H
410、正確な質量=4301.21、分子量=4304.72 7量体=C
378H
478、正確な質量=5017.74、分子量=5021.84)
【
図4】GPCで分別後のポリマー前駆体IIaの分散度(表1、項目2、THF、PSS)
【
図5】グラフェンナノリボンIIIa(粉末)のラマンスペクトル
【
図6】(a)ポリマー前駆体IIaのTHF分散液(14pg/mL)と(b)ガラス基板上にTHF分散液を滴下塗布して得たグラフェンナノリボンIIIaのUV−VIS吸収スペクトルの比較
【
図7】NMP中の剥離溶液中のグラフェンナノリボンIIIaのUV−VIS吸光スペクトル
【
図8】いろいろなゲートバイアスVGでのグラフェンナノリボンの出力特性
【
図9】ソーズドレインバイアスVSDが−60Vの時のグラフェンナノリボンIIIaの移動曲線
【0078】
実施例1
3−ブロモジフェニルアセチレン(3)の調整
【0079】
【化10】
【0080】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼン1(5.03g、17.8mmol)とエチニルベンゼン−2:(2.08g、20.4mmol)のTHF(50mL)とトリエチルアミン(50mL)の混合物の脱泡溶液に、ヨウ化銅(I)(52.7mg、0.277mmol)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)(376mg、0.536mmol)を添加した。室温で18時間撹拌後にこの反応混合物をろ過して沈殿物を除いた。このろ液をジエチルエーテルで希釈し、塩化アンモニウムの飽和水溶液で二回、塩水で3回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。茶褐色の粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:ヘキサン)、標記化合物を無色の油として得た(4.46g、98%収率)。
【0081】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ7.25(t,J=7.9Hz,1H),7.35−7.41(m,3H),7.46−7.57(m,4H),7.70(t,J=1.7Hz,1H).
13C−NMR(75MHz、CDCl
3):δ87.77,90.65,122.16,122.73,125.30,128.40,128.61,129.76,130.13,131.36,131.66,134.31.
元素分析:計算値:C
14H
9Br:C,65.40;H,3.53.測定値:C,65.53;H,3.65.
【0082】
実施例2
3−ブロモベンジル(4)の調整
【0083】
【化11】
【0084】
3−ブロモジフェニルアセチレン3(6.38g、24.8mmol)のDMSO(60mL)溶液にヨウ素(3.15g、12.4mmol)を添加した。この反応混合物を脱泡し、155℃で20時間撹拌した。室温まで冷却後、亜硫酸ナトリウムの飽和水溶液でこの反応を停止させ、ジクロロメタンで希釈した。水層を三回ジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせて、五回水で洗った。硫酸ナトリウム上で乾燥し真空下での濃縮下後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:30〜50%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を黄色の固体として得た(4.47g、62%収率)。
【0085】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ7.42(t,J=7.9Hz,1H),7.51−7.59(m,2H),7.71(tt,J=1.3,7.4Hz,1H),7.82(qd,J=0.99,8.0Hz,1H),7.89(td,J=1.2,7.8Hz,1H),407.93−7.98(m,2H),8.13(t,J=1.8Hz,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ123:61;128:99,129:53,130.29,131.10,132.79,133.11,111.16,135.59,138.12,193.42,194.08.
元素分析:計算値:C
14H
9BrO
2:C,58.16;H,3.14.測定値:C,58.21;H,3.32.
【0086】
実施例3
3−(3−ブロモフェニル)−2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(20a)の調整
【0087】
【化12】
【0088】
3−ブロモベンジル4(2.00g、6.92mmol)と1,3−ビス(4−ドデシルフェニル)−プロパン−2−オン(8a)(3.79g、6.93mmol)のtert−ブタノール(200mL)溶液に、80℃でテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20%、2.05mL、2.77mmol)を添加した。80℃で50分間撹拌後、1N−HCl(40mL)を添加して反応を停止し、この反応混合物をジクロロメタンで三回抽出した。有機抽出液を合わせて、三回水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥して紫色の粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製(溶離液:20%ジクロロメタン/ヘキサン)により、標記化合物を紫色固体として得た(5.05g、91%収率)。
【0089】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.86−0.90(m,6H),1.23−1.37(m,36H),1.51−1.66(m,4H),2.52−2.62(m,4H),6.87−6.92(m,1H),6.93−6.98(m,2H),7.04−7.16(m,10H),7.18−7.32(m,3H),7.35−7.41(m, 1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ14.30(2C),23.12(2C),29.75(2C),29.79(2C),29.92(2C),30.02(2C),30.07(2C),30.09(2C),30.11(2C),31.74(2C),32.36(2C),36.13(2C),122.25,125.64,126.36,128.12,128.46(2C),128.48(2C),128.60(2C),128.90,129.60(2C),129.97,130.25,130.34(2C),130.35(2C),131.61,132.46,133.63,136.13,143.13,143.38,152.58,152.63,154.27,200.93.
元素分析:計算値:C
39H
62O:C,79.57;H,8.44.測定値:C,79.59;H,8.56.
【0090】
実施例4
2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−3−フェニル−4−(3−((トリメチルシリル)エチニル)−フェニル)−2,4−シクロペンタジエノン(21a)の調整
【0091】
【化13】
【0092】
3−(3−ブロモフェニル)−2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン20a(3.00g、3.75mmol)とヨウ化銅(I)(73.5mg、0.386mmol)のトリエチルアミン(200mL)脱泡懸濁液にトリメチルシリルアセチレン(1.60mL、11.3mmol)とテトラキス−(トリフェニルホスフィノ)−パラジウム(0)(438mg、0.379mmol)を添加した。80℃で19時間撹拌後、溶媒を真空下で除いた。得られた紫色固体をジクロロメタンに溶解し、飽和した塩化アンモニウム水溶液で一回洗浄し、次いで二回塩水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥し真空下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:15%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を紫色固体として得た(2.10g、69%収率)。
【0093】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.19(s,9H),0.88(t,J−6.7Hz,6H),1.23−1.36(m,36H),1.55−1.65(m,4H),2.52−2.61(m,4H),6.87−6.92(m,1H),6.92−6.97(m,2H),257.04−7.29(m,13H),7.30−7.35(m,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ0.10(3C),14.30(2C),23.12(2C),29.78(2C),29.82(2C),29.91(2C),30.01(2C),30.07(4C),30.10(2C),31.75(2C),32.35(2C),36.14(2C),95.25,104.61,123.49,125.52,126.01,128.27,128.41(2C),128.47(2C),128.53(2C),128.67,128.81,129.61(2C),129.82,130.34(4C),130.61,132.07,132.50,133.70,134.47,143.07,143.28,153.43,154.43,154.27,201.13.
元素分析:計算値:C
58H
76OSi:C,85.23;H,9.37.測定値:C,84.84;H,9.33.
【0094】
実施例5
2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−3−(3−エチニルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(Ia)の調整
【0095】
【化14】
【0096】
2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−3−フェニル−4−カリウムフルオライド(361mg、6.21mmol)のTHF(100mL)懸濁液にメタノール(100mL)を添加し、反応混合物を40℃で5時間撹拌した。40℃の真空下で溶媒を除去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:15%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を紫色固体として得た(786mg、84%収率)。
【0097】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.88(t,J=6.7Hz,6H),1.23−1.36(m,36H),1.51−1.65(m,4H),2.51−2.61(m,4H),3.04(s,1H),6.91−6.97(m,3H),7.04−7.30(m,13H),7.35−7.39(m,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ14.33(2C),23.14(2C),29.80(4C),29.93(2C),30.03(2C),30.09(4C),30.12(2C),31.75(2C),32.37(2C),36.14(2C),77.93,83.22,122.35,125.61,126.17,128.25,128.44(2C),128.48(2C),128.52,128.54,128.56(2C),128.84,129.63(2C),130.19,130.36(4C),132.28,133.00,133.69,134.44,143.08,143.27,153.21,154.34,201.06.
HRMS(ESI、ポジティブ)m/z計算値:C
55H
69Oの[M+H]
+:745.5348、測定値:745.5334.
【0098】
実施例6
ポリマー前駆体(IIa)の調整
【0099】
【化15】
【0100】
方法1:ジフェニルエーテル溶液中でのディールス・アルダー重合
2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−3−(3−エチニルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノンIaのジフェニルエーテル脱泡溶液を、加熱マントルを使用して還流させた。室温まで冷却後、ジフェニルエーテルを蒸発させて除き、得られた粗製材料を、循環ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)系(溶離液:クロロホルム)を用いて分別した。
【0101】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.81−0.92(m,6H),1.00−1.68(m,40H),2.15−2.75(m,4H),6.15−7.38(m,18H).
【0102】
方法2:無溶剤でのディールス・アルダー重合
25−mLのシュレンク管に入った紫色粉末状の2,5−ビス(4−ドデシルフェニル)−3−(3−エチニルフェニル−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノンIaを、加熱マントルを使用して260℃に加熱した。この粉末は一旦溶融した後、紫色から淡黄色に変化した。室温まで冷却後、得られたポリマーをTHF中で30分間超音波処理し、不溶性ポリマーをろ過により除いた。このろ液を真空下で濃縮し、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分別した。
【0103】
【表1】
【0104】
ポリマー前駆体IIa粗生成物(表1、項目1)のリフレクトロンモードでのMALDI分析では、4量体と5量体、6量体、7量体、8量体のピークが、それぞれ2869、3587、4304、5021、5739に検出され、反応(
図2)中に、この化合物の末端にあるエチニル基とテトラフェニルシクロペンタジエノン基とが反応したことを示した。
【0105】
実施例7
グラフェンナノリボン(IIIa)の調整
【0106】
【化16】
【0107】
ポリマー前駆体IIaの非安定化ジクロロメタン溶液を、10分間かけてアルゴンバブリングにより脱泡させた。この脱泡溶液を塩化鉄(III)のニトロメタン懸濁液に添加した。アルゴンバブリングを続けながら室温で3日間撹拌した後、メタノールを添加して反応を停止させて黒色沈殿物を得た。メンブランフィルターでの吸引濾過とメタノール洗浄により、標記化合物を黒色粉末として得た。
【0108】
通常の有機溶媒中ではグラフェンナノリボンIIIaの溶解度が非常に小さいが、超音波照射を行うことでIIIaをTHFに分散できた。超音波停止後すぐに再凝集が始まったため分散度の分析はできなかったが、滴下製膜によりガラス基板上にIIIaのフィルムを作り、UV−VIS吸光スペクトル(
図6b)の測定をすることは可能であった。ポリマー前駆体IIa(
図6a)の脱水素環化によりグラフェンナノリボンIIIa(
図6b)が生成すると、その吸収帯が大きく赤シフトすることが明らかとなった。グラフェンナノリボンIIIaのスペクトルは、570nmに吸収ピークを示した。
【0109】
超音波照射によりグラフェンナノリボンIIIaをNMP中で剥離させ、その剥離溶液からIIIaのUV−VIS吸光スペクトルを得た(
図7)。550nmに吸収ピークが認められた。
【0110】
グラフェンナノリボンIIIaでのOFET装置の製造は、超音波照射直後のIIIaのTHF分散液をドロップ製膜して行った。この結果、グラフェンナノリボンIIIaの電界効果移動度が、HMDS変性されたOFET装置中で、μ
max=0.001cm
2/vsで、μ
avg=0.00087cm
2/vsであることがわかった(
図8と
図9)。
【0111】
実施例8
1,3−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)プロパン−2−オン(8b)の調整
【0112】
【化17】
【0113】
凝縮器を有する100mLの二口フラスコ中に納められた亜鉛(3.21g、49.1mmol)とヨウ素(0.689mg、2.71mmol)に、乾燥N,N−ジメチルアセトアミド(10mL)を加え、ヨウ素の紫色が消えるまで室温で撹拌した。次いでこの混合物に、2−デシルテトラデシルブロマイド(15.3g、36.7mmol)を添加し、80℃で24時間撹拌して、ドデシル亜鉛ブロマイドを得た。100−mLのシュレンクフラスコに入った1,3−ビス(4−ブロモフェニル)−プロパン−2−オン7b(2.00g、5.43mmol)とジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)(0.384g、0.544mmol)に、カニューレを経由して上記ドデシル亜鉛ブロマイド溶液を添加した。この反応混合物を室温で18時間撹拌し、塩酸(2M、40mL)で反応を停止させた。水層を三回ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を合わせて、三回水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:20%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を淡黄色の油として得た(4.13g、86%収率)。
【0114】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.88(t,J=6.7Hz,12H),1.16−1.37(m,80H),1.55−1.67(m,2H),2.50(d,J=7.0Hz,4H),3.68(s,4H),7.01(d,J=8.1Hz,4H),7.09(d,J=8.1Hz,4H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ14.36(4C),23.18(4C),26.99(4C),29.85(4C),30.16(16C),30.50(4C),32.42(4C),33.60(4C),40.12(2C),40.57(2C),49.13(2C),129.70(4C),129.86(4C),131.88(2C),141.11(2C),206.30.
元素分析:計算値:C
63H
110O:C,85.64;H,12.55.測定値:C,85.71;H,12.45.
【0115】
実施例9
3−(3−ブロモフェニル)−2,5−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(20b)の調整
【0116】
【化18】
【0117】
3−ブロモベンジル4(0.808g、2.79mmol)と1,3−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)プロパン−2−オン8b(2.55g、2.89mmol)のtert−ブタノール(70mL)溶液に、80℃でテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20%、0.82mL、1.12mmol)を添加した。80℃で40分間撹拌後、塩酸(2M、20mL)を添加して反応を停止させ、反応混合物を真空下で濃縮し、二回ジクロロメタンで抽出した。有機浸出液を合わせて、二回水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて、蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:10%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を紫色の油として得た(2.71g、85%収率)。
【0118】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.88(t,J=6.7Hz,12H),1.15−1.35(m,80H),1.55−1.67(m,2H),2.50(t,J=6.4Hz,4H),6.87(td,J=1.1,7.9Hz,1H),6.92−6.98(m,2H),7.01−7.16(m,10H),7.18−7.32(m,3H),7.35−7.41(m,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ14.33(4C),23.15(4C),26.96(4C),29.82(4C),30.12(16C),30.44(4C),32.39(4C),33.61(2C),33.64(2C),40.01(2C),40.78(2C),122.26,125.69,126.42,128.09,128.42,128.47(2C),128.49,128.91,129.30(2C),129.41(2C),129.65(2C),129.93,130.20(4C),131.62,132.56,133.66,136.13,142.12,142.39,152.55,154.22,200.95.
HRMS(ESI、ポジティブ)m/z計算値:C
77H
116OBrの[M+H]
+:1135.8210、測定値:1135.8199.
【0119】
実施例10
2,5−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)−3−フェニル−4−(3−((トリメチルシリル)−エチニル)フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(21b)の調整
【0120】
【化19】
【0121】
3−(3−ブロモフェニル)−2,5−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン20b(1.53g、1.34mmol)とヨウ化銅(I)(30.0mg、0.158mmol)のリエチルアミン(100mL)脱泡懸濁液に、トリメチルシリルアセチレン(0.580mL、4.07mmol)とテトラキス−(トリフェニルホスフィノ)−パラジウム(0)(158mg、0.137mmol)を添加した。80℃で16時間撹拌後、溶媒を真空下で除いた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製(溶離液:10%ジクロロメタン/ヘキサン)してり、標記化合物を紫色の油として得た(1.23g、79%収率)。
【0122】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.19(s,9H),0.88(t,J=6.8Hz,12H),1.16−1.36(m,80H),1.53−1.66(m,2H),2.45−2.53(m,4H),6.85−6.97(m,3H),7.00−7.29(m,13H),7.30−7.35(m,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ0.05(3C),14.35(4C),23.16(4C),26.93(2C),26.97(2C),29.83(4C),30.13(16C),30.44(4C),32.40(4C),33.60(20),33.66(2C),39.95,40.02,40.71,40.80,95.23,104.66,123.55,125.55,126.02,128.25,128.41(2C),128.49,128.52,128.83,129.30(2C),129.37(2C),129.68(2C),129.85,130.21(4C),132.10,132.55,133.75,134.55,142.07,142.24,153.42,154.43,201.17.
HRMS(ESI、ポジティブ)m/z計算値:C
83H
124ONaSiの[M+Na]
+:1175.9319、測定値:1175.9371.
【0123】
実施例11
2;5−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)−(3−エチニルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(Ib)の調整
【0124】
【化20】
【0125】
2,5−ビス(4−(2−デシルテトラデシル)フェニル)−3−フェニル−4−(3−((トリメチルシリル)エチニル)フェニル−2,4−シクロペンタジエノン21b(110mg、0.0953mmol)とフッ化カリウム(54.5mg、0.938mmol)のTHF(15mL)懸濁液にメタノール(15mL)を加え、反応混合物を40℃で21時間撹拌した。溶媒を40℃の真空下で除いた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶離液:6−10%ジクロロメタン/ヘキサン)して、標記化合物を紫色の油として得た(93.8mg、91%収率)。
【0126】
1H−NMR(300MHz、CD
2Cl
2):δ0.88(t,J=6.8Hz,12H),1.18−1.34(m,80H),1.54−1.67(m,2H),2.46−2.54(m,4H),3.03(s,1H),6.90−6.97(m,3H),7.01−7.30(m,13H),7.34−7.39(m,1H).
13C−NMR(75MHz、CD
2Cl
2):δ14.32(4C),23.13(4C),26.93(4C),29.80(4C),30.10(16C),30.41(4C),32.37(4C),33.58(2C),33.62(2C),39.98(2C),40.75(2C),77.87,83.20,122.34,125.63,126.19,128.19,128.40(2C),128.46,128.50,128.83,129.28(2C),129.36(2C),129.66(2C),130.19(5C),132.26,133.06,133.69,134.43,142.07,142.25,153.18,154.29,201.09.
MS(MALDl−TOF)m/z(%)計算値:C
79H
116O:1081(43)、1082(37)、1083(16)、1084(4)、測定値:1081(34)、1082(38)、1083(21)、1084(7).
【0127】
実施例12
ポリマー前駆体(IIb)の調整
【0128】
25mlシュレンク管に入った(2−デシルテトラデシル)フェニル)−3−(3−エチニルフェニル)−4−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(Ib)の脱泡2,5−ビス(4−
【化21】
の溶液を加熱マントルを用いて260℃に加熱した。この粉末は一旦溶融してから、紫色から淡黄色に変色した。室温まで冷却した後、得られたポリマーをTHF中で30分間超音波処理し、不溶性ポリマーをろ過で除いた。このろ液を真空下で濃縮し、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で分別した。
【0129】
実施例13
グラフェンナノリボン(1Mb)の調整
【0130】
【化22】
【0131】
10分間アルゴンバブリングしてポリマー前駆体IIbの非安定化ジクロロメタン溶液を脱泡させた。この脱泡溶液を塩化鉄(III)のニトロメタン懸濁液に添加した。連続的にアルゴンバブリングを行いながら室温で3日間撹拌後、メタノールを添加して反応を停止し、黒色沈殿物を得た。メンブランフィルターを用いる吸引濾過とメタノール洗浄で、標記化合物を黒色粉末として得た。
【国際調査報告】