(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-526364(P2015-526364A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(54)【発明の名称】窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル
(51)【国際特許分類】
C01B 31/02 20060101AFI20150814BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20150814BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20150814BHJP
【FI】
C01B31/02 101Z
H01M4/90 X
H01G11/32
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-560475(P2014-560475)
(86)(22)【出願日】2013年2月26日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2013051542
(87)【国際公開番号】WO2013132388
(87)【国際公開日】20130912
(31)【優先権主張番号】61/608,721
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/650,493
(32)【優先日】2012年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(71)【出願人】
【識別番号】506209857
【氏名又は名称】マクス−プランク−ゲゼルシャフト、ツール、フェルデルング、デァ、ヴィセンシャフテン、イー、ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァブ,マティアス ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シンリヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チョン−ショワイ
【テーマコード(参考)】
4G146
5E078
5H018
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA17
4G146AB10
4G146AC19B
4G146AC27A
4G146AD23
4G146AD35
4G146BA02
4G146BB03
4G146BB07
4G146CB10
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4G146CB20
4G146CB32
5E078AB02
5E078AB03
5E078AB06
5E078BA18
5E078BA27
5E078BA30
5E078BA71
5H018AA10
5H018EE06
5H018HH03
5H018HH05
(57)【要約】
本発明は、ドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル、前記エアロゲルの製造方法及び、例えば、電極又は触媒としての、前記エアロゲルの使用方法に関する。さらに、本発明は電極、全固体スーパーキャパシタ(ASSS)又は前記エアロゲルを原料とする触媒に関する。本発明はまた、出発物質としてグラフェンオキシドを使用するドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルの製造における中間体として得ることのできるドープされたグラフェンに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル。
【請求項2】
前記エアロゲルは、0.1質量%〜6質量%、好ましくは2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項3】
前記エアロゲルは、さらにFe及び/又はCo並びに任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアロゲル。
【請求項4】
前記Feを、Fe、 Fe2O3又はFe3O4として使用し、及び/又は前記Coを、Co、Co(OH)2、Co3O4又はCoOとして使用することを特徴とする請求項3に記載のエアロゲル。
【請求項5】
前記Fe、前記Co及び/又は任意に存在する前記金属を、小粒子として、好ましくは、ナノ粒子として使用されることを特徴とする請求項3又は4に記載のエアロゲル。
【請求項6】
前記エアロゲルは、さらにPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、並びに任意にFe及び/又はCoを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアロゲル。
【請求項7】
I)グラフェンオキシドを、窒素を含む少なくとも一種の成分(A)及びホウ素を含む少なくとも一種の成分(B)によって処理し、及び/又は
II)グラフェンオキシドを、窒素及びホウ素の両方を含む少なくとも一種の成分(C)によって処理することで、
窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルの製造方法。
【請求項8】
前記グラフェンオキシドの処理は、さらに水熱工程及び/又は乾燥工程、好ましくは凍結乾燥工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グラファイト、好ましくはグラファイトフレークを、酸化してグラファイトオキシドにし、順次に、剥離してグラフェンオキシドとすることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記成分(A)は、シアナミド(CH2N2)、ジシアンジアミド(C2H4N4)又はエチレンジアミン(C2H8N2)であり、前記成分(B)は、ホウ酸(H3BO3)であり、及び/又は前記成分(C)は、NH3BF3又はNH3BH3であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルからなる電極。
【請求項12】
さらに、電解質、好ましくは、PVA/H2SO4ゲル、PVA/H3PO4ゲル、PVA/KOHゲル、PVA/NaOHゲル、PVA/Na2SO4ゲル、又はイオン性液体高分子ゲルの電解質を含む請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記エアロゲルを、0.5〜1.5mmの厚さを有し、及び/又は5〜15mmの直径を有する薄片に切ることによって得られる請求項11又は12に記載の電極。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲル又は請求項11〜13のいずれか一項に記載の電極を含む全固体スーパーキャパシタ(ASSS)。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルを含む触媒。
【請求項16】
Fe及びCoの小粒子、好ましくはFe3O4及びCo3O4のナノ粒子を含むことを特徴とする請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
電池中、スーパーキャパシタ中、好ましくは全固体スーパーキャパシタ中の、電極として、好ましくは酸素消費電極として、又は触媒として、好ましくは酸素還元反応用電極触媒として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルを使用する方法。
【請求項18】
窒素及びホウ素でドープされたグラフェン。
【請求項19】
さらに、Fe及び/又はCo並びに任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする請求項18に記載のグラフェン。
【請求項20】
さらに、Pt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、任意にFe及び/又はCoを含むことを特徴とする請求項18に記載のグラフェン。
【請求項21】
0.1質量%〜6質量%、好ましくは、2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載のグラフェン。
【請求項22】
エアロゲル、電極、好ましくは酸素消費電極、電池、スーパーキャパシタ、好ましくは、全固体スーパーキャパシタ又は触媒、好ましくは酸素還元反応用電極触媒を製造するための請求項18〜20のいずれか一項に記載の窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル、前記エアロゲルの製造方法及び、例えば、電極又は触媒としての、前記エアロゲルの使用方法に関する。さらに、本発明は電極、全固体スーパーキャパシタ(ASSS)又は前記エアロゲルを原料とする触媒に関する。本発明はまた、出発物質としてグラフェンオキシドを使用するドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルの製造における中間体として得ることのできるドープされたグラフェンに関する。
【背景技術】
【0002】
ウルトラキャパシタ又は電気化学キャパシタともいわれるスーパーキャパシタは、従来の電池よりも、より高い、数秒で達する電力密度、サイクル効率、充放電速度及びより長いサイクル寿命の大きさのオーダーで運ぶ、重要なエネルギー蓄積装置のひとつである。 カーボンを原料とする電気化学二重層キャパシタは、超高出力密度と優れたサイクル寿命を提供することができるので、強い注目を引き付けている。高い表面積と電気伝導率のために、グラフェンと同様に、カーボンナノチューブのナノ構造炭素、多孔質炭素、カーバイド由来の炭素は、スーパーキャパシタ用の電極材料として広く探究されている。
【0003】
欧州特許出願PCT/IP2011/055282は、第一の反応工程において、少なくとも2種のNH
2基を有する少なくとも一種の複素環炭化水素が、少なくとも2種のアルデヒド基を有する少なくとも一種の芳香族化合物と反応する、任意の無機塩を含有する窒素含有多孔質炭素質材料の製造方法に関する。第二の反応工程においては、工程(a)の生成物は、無酸素の環境下で、700℃〜1200℃の範囲の温度で加熱される。前記の炭素質材料は、キャパシタの中で、又は触媒として使用され得る。キャパシタとして使用される場合は、各電極は炭素質材料の他に、少なくとも一種の結合剤及び任意に少なくとも一種の添加剤も含む。
【0004】
US−A 2010/0144904には、炭素原子がシート状のナノ構造に配列されている、炭素を原料としたエアロゲルが記載されている。エアロゲルは、グラフェンオキシド又はグラフェンエアロゲルのいずれかでよく、さらにポリマーで補強されてもよい。グラフェンエアロゲルは、凍結乾燥工程に続いて、水分散グラフェンオキシドをグラフェンに還元することによって、各グラフェンオキシドエアロゲルから生成することができる。グラフェンエアロゲルは、高い多孔性として記載され、電気化学二重層キャパシタ等の、エネルギー貯蔵及びエネルギー変換利用のための導電性の電極材料として使用され得る。しかし、US−A 2010/0144904には、それらのグラフェンを原料としたエアロゲルが、窒素又はホウ素等のヘテロ原子によってドープされ得ることの記載はない。
【0005】
X. Zhang等“Journal of Materials Chemistry”(2011年4月1日出版、4ぺージ)には、L−アスコルビン酸によるグラフェンオキシドの還元から合成されるヒドロゲル前駆体の超臨界乾燥又は凍結乾燥のいずれかによって製造され得る、機械的に強く、導電性のあるグラフェンエアロゲルが記載されている。ゲル前駆体が形成される間に、ガス状の生成物が生成されないので、水素、NaBH
4又はLiAlH
4等の従来の還元剤の代わって、還元剤としてL−アスコルビン酸を選択することが有利であることが、その中で記載されている。
【0006】
W. Chen等“Advanced Materials”(2011年、23号、5679〜5683ページ)には、ナノ粒子の自己組織化及び包埋による3次元(3D)のグラフェン−ナノ粒子エアロゲルの製造が記載されている。使用されるナノ粒子はFeを含み、特に、ナノ粒子はFe
3O
4を含む。Fe含有ナノ粒子が包埋されたグラフェンを原料とするエアロゲルは、電気化学プロセスにおける電極材料として使用され得る。しかし、前記文献には、グラフェンを原料とするエアロゲルは、窒素又はホウ素等のヘテロ原子でドープされてもよいとする記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/IP2011/055282
【特許文献2】US−A 2010/0144904
【特許文献3】WO2010/026046
【特許文献4】WO 2011/095943
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】X.Zhang等“Journal of Materials Chemistry”(2011年4月1日出版、4ぺージ)
【非特許文献2】W.Chen等“Advanced Materials”(2011年、23号、5679〜5683ページ)
【非特許文献3】S.M.Zakeeruddin及びM.Gratzelの“Adv.Fund.Mater”(2009年、19版、2187−2202ページ、特に6章以下)
【非特許文献4】William S.Hummers Jr、Richard E.Offemanの「グラファイトオキシドの製造」“J.Am.Chem.Soc”(1958年、80(6)、1339ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえに、本発明の目的は、例えばキャパシタ又は触媒の分野において首尾よく使用され得る新しい材料を提供することである。本目的は、窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルによって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に記載のエアロゲルの主な有利な点は、添加剤及び/又は結合剤がない電極として直接機能することができることである。本発明に記載のエアロゲルは、ドーパントを含まない(ドープされていないグラフェンエアロゲル)グラフェンを原料とするエアロゲル等の発明の材料と比較して、優れた性能を示す。それゆえに、本発明に記載のエアロゲルは、窒素によってのみドープされ、又はホウ素によってのみドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルよりも優れた性能を有する。
【0011】
さらに本発明の有利な点は、前述のようにして製造されたエアロゲル又は電極は、PVA/H
2SO
4−ゲル等の電解質に容易に包埋され得る。この包埋によって、各電解質/ゲルは、固体の電解質及びセパレータとして機能するエアロゲル電極が製造され得る。
【0012】
結果として、本発明に記載のエアロゲルは、相互に結合したネットワーク構造を有する三次元(3D)のオープンマクロ多孔性、高い比表面積、優れた電気伝導性、機械的柔軟性及び/又は軽量性を示す。これらの機能は、バルク電極中の急速なイオン拡散のための十分な界面濡れ性と、3Dグラフェンネットワークにおける速い電子輸送を可能とする。
【0013】
その結果、結果として生じる本発明に記載のエアロゲルを原料とする全固体スーパーキャパシタ(ASSSs)は、ドープされていないグラフェンエアロゲル(GAs)、Nのみ又はBのみによってドープされたGAs、及び層構造のグラフェンペーパー(GP)と比較して、高い比容量、よい比率容量、向上したエネルギー密度又は出力密度を示す。
【0014】
本発明に記載のエアロゲルは、簡単な方法で、例えば、凍結乾燥の後に、数百ナノメートルと数マイクロメートルの間の範囲のフレークサイズを含むグラフェンオキシドの水溶液の水熱装置によって、製造され得ることがまた有利な点である。エアロゲルの体積及び形状は、例えばエアロゲルのモノリスのように、グラフェンオキシドの濃度、水熱処理の時間又は温度によって、さらに使用される瓶の形状によって良好にコントロールされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】GA、NGA、BGA、BNGA及びGP電極の電気化学的な性能の比較を示す。
【
図2】GA、NGA、BGA、BNGA及びGPを原料とするASSSsの電気化学的な性能の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明の第一の目的は、窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルである。
【0018】
本発明においては、「ドープされる」の語は、ホウ素及び窒素原子に関連し、ホウ素及び窒素原子は、好ましくは、ホウ素又は窒素とグラフェン格子の炭素原子との間で(化学)結合を形成することによってグラフェン格子に組み込まれる。しかし、個々のホウ素原子が、グラフェン格子の中で、直接に個々の窒素原子に結合されることも可能である。上記エアロゲルの本発明の製造方法において、それぞれの遊離体を介して供給される(以下参照)全ての又はほとんど全ての窒素及び/又はホウ素原子は、グラフェン格子に取り込まれることによってグラフェン上にドープされる。しかし、それぞれの遊離体を介して供給される、より少量の窒素及び/又はホウ素原子は、単に化学的に又は物理的にグラフェンの表面上に吸着されることも可能である。もしそうであれば、それぞれの窒素及び/又はホウ素原子は、通常、本発明においては、使用されるそれぞれの遊離体の形態で、又は中間体として存在する。通常、上記の化学的に又は物理的に吸着される窒素及び/又はホウ素の量は、グラフェン上にドープされる窒素及び/又はホウ素の量の10%未満である。
【0019】
本発明に記載のエアロゲルは、当業者に知られている好適な量で、グラフェン上にドープされた窒素及びホウ素を含む。通常、エアロゲルは、0.1質量%〜6質量%、好ましくは、2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含む。より好ましくは、本発明に記載のエアロゲルは、3.0質量%の窒素及び/又は6質量%のホウ素を含む。前に述べた質量%で表現された範囲及び数字は、エアロゲル、好ましくは固体状態のエアロゲルの全質量と関係する。いずれの任意に存在する固体、電解質及び/又はFe又はCo等の金属は、前に述べた質量の範囲又は数字の中では考慮されていない。
【0020】
本発明に記載のエアロゲルは、好ましくは、モノリスである3次元(3D)のエアロゲルである。これは、本発明に記載のエアロゲルは、好ましくは窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とし、グラフェンナノシートの極薄の壁は3Dフレームワークを構築するために相互に連結されていることを意味している。さらに、本発明に記載のエアロゲルは、マクロ多孔性構造を有し、より好ましくは、高度なマクロ多孔性構造を有する。マクロ細孔の大きさは、200nm〜数十ミクロメーターの範囲である。
【0021】
本発明に記載のエアロゲルは、好ましくは、200m
2/g〜1000m
2/gの範囲の表面積、0.1×10
−3S/cm〜1S/cmの導電率、20mg/cm
3〜50mg/cm
3の質量密度を有し、軽量であり、0.02〜0.08の圧縮強度及び/又は0.1MPa〜0.5MPaの圧縮率から選択される少なくとも一つのパラメータを有する。より好ましくは、本発明に記載のエアロゲルは、前に挙げたパラメータのそれぞれを満たす。
【0022】
本発明の実施形態の一つにおいては、エアロゲルはさらにFe及び/又はCoを含み、任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含む。金属、特にPtは、合金の形態で、例えば当業者に公知のPt合金として存在してもよい。好ましい合金は、(元素の周期表の)白金族からの少なくとも一種の金属を含む。好ましくは、合金は、PtNi、PtFe、PtV、PtCr、PtTi、PtCu、PtPd、PtRu、PdNi、PdFe、PdCr、PdTi、PdCu及びPdRuからなる群から選択される。Fe、Co、Ni又はPt等の前に挙げた金属の遊離体又は酸化数に関するさらなる詳細を、本発明に記載のエアロゲルの製造方法に関連して以下に記載する。さらに好ましくは、エアロゲルはさらにFe及びCoを含む。エアロゲル中の金属の量は、0.01質量%〜30質量%の範囲である。この実施形態におけるエアロゲルは、好ましくは、触媒として、又は触媒を製造するための中間体として使用される。
【0023】
好ましくは、Feは、Fe
2O
3又はFe
3O
4として使用され、及び/又はCoは、Co、Co(OH)
2、Co
3O
4又はCoOとして使用される。より好ましくは、Fe、Co及び/又はいずれの任意に存在する金属も、小粒子として、好ましくはナノ粒子として使用される。
【0024】
本発明の他の実施形態においては、エアロゲルは、さらにPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、任意にFe及び/又はCoを含む。前記実施形態においては、Pt等の金属は合金の形態で存在してもよく、又は、任意の成分Feは、Fe
2O
3又はFe
3O
4として使用されてもよい。これは、金属は、前記実施形態において、Fe及び/又はCoが必須の成分である前の実施形態で記載されたのと同様に、存在してもよいことを意味している。
【0025】
本発明の他の目的は、前に記載されたエアロゲル製造方法である。エアロゲルを製造する方法自体は、当業者に公知である。本発明に記載のエアロゲルは、好ましくは、以下の方法によって製造される。その方法は、
I)グラフェンオキシドを、窒素を含む少なくとも一種の成分(A)及びホウ素を含む少なくとも一種の成分(B)で処理をし、及び/又は
II)グラフェンオキシドを、窒素及びホウ素の両方を含む少なくとも一種の成分(C)で処理をすることで、
窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを生成するという方法である。
【0026】
本発明に記載の方法で出発物質として使用されるグラフェンオキシドそれ自体は、当業者に公知である。好ましくはグラフェンオキシドは分散液として使用され、より好ましくは水性の分散液として使用される。グラフェンオキシドは好ましくは、グラファイトから生成される。好ましくは、グラフェンオキシドは、グラファイト好ましくはグラファイトフレークが酸化されてグラファイトオキシドになり、グラファイトオキシドが順々に剥離されてグラフェンオキシドになるという方法によって生成される。数百ナノメートルから数マイクロメートルの範囲のフレークである、グラフェンオキシドフレーク、好ましくはグラフェンオキシドフレークの水性の分散液を使用することが好ましい。
【0027】
上記方法において、成分(A)及び/又は(C)は、ドーピング剤(ドーパント又は共ドーパント)として使用され、グラフェンのドーピングの窒素部分を得る。同様に、成分(B)及び/又は(C)は、グラフェンのドーピングのホウ素部分を得るために使用される。
【0028】
成分(A)〜(C)は、当業者に公知である。好ましくは成分(A)は、シアンジアミド(CH
2N
2)、ジシアンジアミド (C
2H
4N
4) 又はエチレンジアミン(C
2H
8N
2)であり、成分(B)は、ホウ酸(H
3BO
3)及び/又は成分(C)は、NH
3BF
3又はNH
3BH
3である。より好ましくは、本発明に記載のエアロゲルの製造方法は、成分(C)、好ましくはNH
3BF
3の一つの化合物を使用することのみによって行われる。
【0029】
本発明に記載のエアロゲルを製造する方法においては、窒素及びホウ素でドープされたグラフェンは中間体として生成される。窒素及びホウ素でドープされたグラフェンそれ自体(中間体)については、より詳細に以下に記載する。窒素及びホウ素でドープされたグラフェンそれ自体は、本発明に記載のエアロゲルの製造方法においては、分離され得る。しかし、前記のドープされたグラフェンは、前記のエアロゲルの製造方法において、現場で(in situ)得られ、出発物質(遊離体)としてグラフェンオキシドを使用してエアロゲルを製造するときに、前記のドープされたグラフェンを強制的に分離する必要はない。
【0030】
本発明に記載のエアロゲルの製造方法は、さらなる工程を含んでもよい。好ましくは、グラフェンオキシドの処理は、さらに水熱工程及び/又は乾燥工程、好ましくは凍結乾燥工程を含む。水熱工程が行われた場合、水熱工程は、並行して、又は好ましくは出発物質グラフェンが成分(A)〜(C)によって処理された後に、行われ得る。水熱工程は、好ましくは、100℃〜200℃の範囲の温度で、及び/又は2時間〜24時間の範囲の時間で、グラフェンオキシドの水性の分散液によって行われる。水熱工程が行われるときには、通常、本発明に記載のエアロゲルを得る前に、中間体として、ハイドロゲルが得られる。
【0031】
また、好ましくは、本発明に記載のエアロゲルの製造方法による乾燥工程を行うことである。グラフェンオキシドが分散液として、好ましくは水性の分散液として使用される場合には、好ましくは乾燥工程が行われる。乾燥工程自体は、当業者に公知である。好ましくは、乾燥工程は、凍結乾燥工程として行われる。より好ましくは、水熱工程は、凍結乾燥工程の後に行われる。これは、いずれの任意に形成される中間体(ハイドロゲル等)の分離を伴い又は伴うことなく行われ得る。
【0032】
本発明に記載の方法において使用されるそれぞれの遊離体、化合物、溶液等は、当業者に公知の量/範囲で使用され得る。例えば、成分(C)の必要な量は、当業者によって容易に測定され得るので、エアロゲルそれ自体と関連して前に記載したように、窒素及びホウ素のそれぞれの質量%の範囲が算出される。
【0033】
本発明の他の実施形態においては、さらにFe及び/又はCo並びに、任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含むエアロゲルが製造される。それぞれの金属は、グラフェンオキシドが成分(A)〜(C)で処理されるのと同時、又は前後に、加えられてもよい。本発明の他の実施形態においては、Pt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、並びに任意にFe及び/又はCoを含むエアロゲルが製造される。
【0034】
Fe又はCo等の金属を含むエアロゲルの製造方法は、当業者に公知である。金属は、純粋な形態(合金又はそれ自体が+/−0の酸化数を有する金属)で使用されることができ、又はそれらは、エアロゲルそれ自体と関連して前に記載したように、塩又はオキシドとして、例えばFe
2O
3として、使用され得る。それぞれの金属が合金として使用される場合には、本発明において使用されることができる、合金それ自体及び合金の製造方法が記載されたWO2010/026046又はWO2011/095943を参照する。
【0035】
本発明に記載のエアロゲルが、さらにFe、Co及び/又は任意にさらに金属を含んで製造される場合には、加熱処理、好ましくは水熱処理は、窒素又はアルゴンガス雰囲気下及び/又は500℃〜1000℃の範囲の温度で、行われる。任意の成分としてのみFe及び/又はCoを含むさらなる実施形態のためには、同様のことが当て嵌まる。
【0036】
本発明の他の課題は、(すでに前に示したように)本発明に記載のエアロゲルの製造方法において、中間体として分離され得る、窒素及びホウ素それ自体によってドープされたグラフェンである。ドープされたグラフェンオキシドの分離方法は、当業者に公知であり、それゆえに、本発明に記載の窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンに使用され得る。
【0037】
窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンそれ自体は、エアロゲルに関連してドープされたグラフェンのために前に記載したように、同一のパラメータ及び/又は任意の成分を有する。例えば、窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンそれ自体は、(一つの実施形態においては)さらにFe及び/又はCo並びに任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含んでもよい。他の実施形態においては、窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンそれ自体は、さらにPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se又はCuから選択される少なくとも一種の金属を含んでもよく、任意にFe及び/又はCoを含んでもよい。窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンそれ自体は、通常、0.1質量%〜6質量%、好ましくは2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含む。
【0038】
本発明の他の課題は、前に記載した窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲルから作られる電極である。したがって、そのような電極の製造方法もまた本発明の課題である。グラフェンを原料とするエアロゲルから電極を製造する方法は当業者に公知である。
【0039】
本発明に記載の電極は、好ましくは、さらに電解質を含み、その電解質は、好ましくは、PVA/H
2SO
4ゲル(ポリビニルアルコール及びH
2SO
4からなるゲル)、PVA/H
3PO
4ゲル、PVA/KOHゲル、PVA/NaOHゲル、PVA/Na
2SO
4ゲル、又はイオン性液体高分子ゲルである。前に挙げたゲルは、当業者に公知である。イオン性液体高分子ゲルそれ自体及び、イオン性液体高分子ゲルの製造方法は、例えば、S.M.Zakeeruddin及びM.Gratzelの“Adv.Fund.Mater”(2009年、19版、2187−2202ページ、特に6章以下)に記載されている。
【0040】
本発明においてイオン性液体高分子ゲルが使用される場合には、好ましくは、アルキルは好ましくは、C3〜C9−アルキルであり、及び/又はハロゲン化物は好ましくはヨウ化物である、式1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムハライドの少なくとも一種のイオン性液体を使用することである。イオン性液体高分子ゲルにおいて、高分子又はゲル化剤として、好ましくは、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)等の低分子量の高分子(ゲル化剤)を使用することである。
【0041】
より好ましくは、電解質はPVA/H
2SO
4ゲルである。また、好ましくは、本発明に記載の電極は、エアロゲルを0.5mm〜1.5mmの厚さを有し、及び/又は5mm〜15mmの直径を有するスライスに切ることによって得られる。
【0042】
本発明の他の課題は、前に記載されたエアロゲルを含む全固体スーパーキャパシタ(ASSSs)又は前に記載された電極である。
【0043】
本発明の他の課題は、前に記載されたエアロゲルを含む触媒である。好ましくは、Fe及びCoの小粒子、好ましくはFe
3O
4及びCo
3O
4のナノ粒子を含む本発明に記載の触媒である。
【0044】
本発明において、本発明のエアロゲルは、直接触媒として使用されてもよく、それらは、触媒の部分を形成してもよく、又はそれらはエアロゲルを原料とする触媒を製造するための中間体として使用されてもよい。
【0045】
本発明の他の課題は、電池中の、スーパーキャパシタ中の、好ましくは全固体スーパーキャパシタ中の、電極として、好ましくは酸素消費電極として、又は触媒として、好ましくは酸素還元反応用の電極触媒として、前に記載されたエアロゲルを使用する方法である。酸素消費電極は、好ましくは塩素−アルカリ電気分解で使用される。
【0046】
本発明の他の課題は、エアロゲル、電極、好ましくは酸素消費電極、電池、スーパーキャパシタ、好ましくは全固体スーパーキャパシタ、又は触媒、好ましくは酸素還元反応用の電極触媒を製造するための、前に記載された窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを使用する方法である。酸素消費電極は、好ましくは、塩素−アルカリ電気分解で使用される。
【実施例】
【0047】
本発明はさらに、以下の実施例によって説明される。
【0048】
[実施例1]
(グラファイトオキシドの製造)
グラファイトオキシド(GO)は、改良ハマーズ法を使用して天然のグラファイトフレークから製造され、その詳細は出版物:William S.Hummers Jr、Richard E.Offemanの「グラファイトオキシドの製造」“J.Am.Chem.Soc”(1958年、80(6)、1339ページ)に記載されている。
【0049】
[実施例2]
(窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(BNGA)の製造)
窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(BNGA)を、複合水熱装置及び凍結乾燥方法によって製造する。100mgのNH
3BF
3を含む15mlのGO水性分散液(分散液1ml当り1.0のGOを含む)を、初めに5分間、超音波によって処理をし、その後、テフロン(登録商標)加工されたオートクレーブ内に封入した安定した懸濁液を、12時間180℃で水熱処理をする。その後、上記のように調製された試料を、数時間60℃で真空乾燥をした後、製造された試料を一晩中凍結乾燥をする。上記の様に生成したグラフェンエアロゲルの収率は、使用したGOの量に関連して10質量%〜20質量%である。
【0050】
[比較例3]
(いかなるドーパントを含まないグラフェンを原料としたエアロゲル(GA)の製造)
グラフェンエアロゲル(GA)を、複合水熱装置及び凍結乾燥方法によって製造する。10mlのGO水性分散液(分散液1ml当り0.5mg〜2.0mgのGOを含む)を初めに5分間、超音波によって処理をし、その後、テフロン(登録商標)加工されたオートクレーブ内に封入した安定した懸濁液を24時間150℃で水熱処理をする。その後、上記のように調製された試料を数時間60℃で真空乾燥をした後、一晩中凍結乾燥をする。上記のように生成したエアロゲルの収率は、使用したGOの量と関連して60質量%〜70質量%である。
【0051】
[比較例4]
(窒素のみによってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(NGA))
窒素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(NGA)を、複合水熱装置及び凍結乾燥方法によって生成する。50mgのジシアンジアミド(C
2H
4N
4)を含む10mlのGO水性分散液(分散液1ml当りGO1ml含む)を、初めに5分間超音波によって処理をし、その後、テフロン(登録商標)加工されたオートクレーブ内に封入した安定した懸濁液を20時間180℃で水熱処理をする。その後、上記のように調製した試料を数時間70℃で真空乾燥をした後、一晩中凍結乾燥をする。上記のように生成したエアロゲルの収率は、使用したGOの量と関連して15質量%〜30質量%である。
【0052】
(ホウ素のみによってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(BGA))
ホウ素によってドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル(BGA)を、複合水熱装置及び凍結乾燥方法によって生成する。50mgのホウ酸(H
3BO
3)を含む10mlのGO水性分散液(分散液1ml当り1.0mgのGOを含む)を初めに、5分間超音波によって処理をし、その後、テフロン(登録商標)加工されたオートクレーブ内に封入した安定した懸濁液を20時間180℃で水熱処理をする。その後、上記のように調製した試料を数時間70℃で真空乾燥をした後、一晩中凍結乾燥をする。上記のように生成したエアロゲルの収率は、使用したGOの量と関連して15質量%〜30質量%である。
【0053】
[比較例6]
(層構造を有するグラフェンペーパー(GP))
GPは、0.05mg/m〜0.20mg/mの濃度のN−メチルピロリドン中の、安定した黒い熱的に還元した(450℃でのH
2フロー)グラフェン浮遊物を真空ろ過をし、その後、ろ過をし、水とエタノールで洗浄をすることによって容易に製造することができる。最後に、紙のようになったグラフェン膜を、空気乾燥をし、慎重にフィルターから剥離する。
【0054】
[実施例7]
(特徴)
実施例2〜6の全ては、走査電子顕微鏡(SEM、Gemini 1530 LEO)、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM、Philips Tecnai F20)、原子間力顕微鏡(AFM、Veeco Dimension 3100)、X線光電子顕微鏡(XPS、 VG ESCA 2000)によって特徴づけられる。窒素吸着及び脱着等温線をMicromeritcs Tristar 3000 analyzer(USA)によって、77Kで測定する。
【0055】
GA、NGA、BGA及びBNGAのモノリスを、少し切ることで、約1mmの厚さで、約7mm〜10mmの直径を有する小さなスライスにし、手で圧縮をして、30μm〜50μmの厚みを有する平らで薄い電極にする。電気化学測定をEG&G製のポテンショスタット/ガルバノスタット、モデル2273装置で行う。3電極システムにおいては、電池は、1MのH
2SO
4を水性電解質として使用し、作用電極として、白金メッシュネットワークに取り付けたエアロゲルモノリス又はGPと、対電極として、白金プレートと、参照電極として、飽和カロメル電極(SCE)を備えている。ASSSsの場合には、エアロゲルモノリス又はGPsの2枚のスライスを、それぞれ銀ペーストを行うことで、白金線に接着し、それを5分間PVA/H
2SO
4ゲル電解質の熱溶液の中に浸した後、取り出す。その後、電解質で満たされた電極を12時間、室温で固化させる。最後に、2個の、前に製造した電極を、5分間、約5MPaの圧力下でASSSの中に対称的に統合させる。
【0056】
図1はGA、NGA、BGA、BNGA及びGP電極の電気化学的な性能の比較を示す。電極の特定容量を、スキャン速度の関数として示す。N−ドーピングとB−ドーピングの強い相乗効果をBNGA電極で見ることができる。
【0057】
図2は、GA、NGA、BGA、BNGA及びGPを原料とするASSSsの電気化学的な性能の比較を示す。GA、NGA、BGA、BNGA及びGPを原料とするASSSsの特定容量は、1mVS
−1〜100mVS
−1のスキャン速度の関数としての2個の電極の質量に基づく。BNGAを原料とするASSSsのために得られる容量は、GA、NGA、BGA及びGPのそれらよりもはるかに高い。これは、BNGAを原料とするASSSsは、NGA及びBGAと比較して、5mVS
−1〜100mVS
−1の異なるスキャン速度での特定容量の大幅な向上を示すことを意味し、これは、BNGAを原料とするデバイスのより高い速度能力を示唆する。この、BNGAを原料とするASSSsの向上は、GAs上の、N−及びB−共ドーピングの相乗効果によるものであり、それはさらに、電気化学的可逆性及び疑似容量の発生について向上させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2014年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを原料とするエアロゲル。
【請求項2】
前記エアロゲルは、0.1質量%〜6質量%、好ましくは2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項3】
前記エアロゲルは、さらにFe及び/又はCo並びに任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアロゲル。
【請求項4】
前記Feを、Fe、Fe2O3又はFe3O4として使用し、及び/又は前記Coを、Co、Co(OH)2、Co3O4又はCoOとして使用することを特徴とする請求項3に記載のエアロゲル。
【請求項5】
前記Fe、前記Co及び/又は任意に存在する前記金属を、小粒子として、好ましくは、ナノ粒子として使用されることを特徴とする請求項3又は4に記載のエアロゲル。
【請求項6】
前記エアロゲルは、さらにPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、並びに任意にFe及び/又はCoを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアロゲル。
【請求項7】
I)グラフェンオキシドを、窒素を含む少なくとも一種の成分(A)及びホウ素を含む少なくとも一種の成分(B)によって処理し、及び/又は
II)グラフェンオキシドを、窒素及びホウ素の両方を含む少なくとも一種の成分(C)によって処理することで、
窒素及びホウ素でドープされたグラフェンを得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルの製造方法。
【請求項8】
前記グラフェンオキシドの処理は、さらに水熱工程及び/又は乾燥工程、好ましくは凍結乾燥工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グラファイト、好ましくはグラファイトフレークを、酸化してグラファイトオキシドにし、順次に、剥離してグラフェンオキシドとすることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記成分(A)は、シアナミド(CH2N2)、ジシアンジアミド(C2H4N4)又はエチレンジアミン(C2H8N2)であり、前記成分(B)は、ホウ酸(H3BO3)であり、及び/又は前記成分(C)は、NH3BF3又はNH3BH3であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルからなる電極。
【請求項12】
さらに、電解質、好ましくは、PVA/H2SO4ゲル、PVA/H3PO4ゲル、PVA/KOHゲル、PVA/NaOHゲル、PVA/Na2SO4ゲル、又はイオン性液体高分子ゲルの電解質を含む請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記エアロゲルを、0.5〜1.5mmの厚さを有し、及び/又は5〜15mmの直径を有する薄片に切ることによって得られる請求項11又は12に記載の電極。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲル又は請求項11〜13のいずれか一項に記載の電極を含む全固体スーパーキャパシタ(ASSS)。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルを含む触媒。
【請求項16】
Fe及びCoの小粒子、好ましくはFe3O4及びCo3O4のナノ粒子を含むことを特徴とする請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
電池中、スーパーキャパシタ中、好ましくは全固体スーパーキャパシタ中の、電極として、好ましくは酸素消費電極として、又は触媒として、好ましくは酸素還元反応用電極触媒として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゲルを使用する方法。
【請求項18】
さらに、Fe及び/又はCo並びに任意にPt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含む、窒素及びホウ素でドープされたグラフェン。
【請求項19】
さらに、Pt、Mn、Ni、V、Cr、Ti、Pd、Ru、Se及びCuから選択される少なくとも一種の金属を含み、任意にFe及び/又はCoを含むことを特徴とする請求項18に記載のグラフェン。
【請求項20】
0.1質量%〜6質量%、好ましくは、2.5質量%〜3.5質量%の窒素及び/又は0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.9質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項18から19のいずれか一項に記載のグラフェン。
【請求項21】
エアロゲル、電極、好ましくは酸素消費電極、電池、スーパーキャパシタ、好ましくは、全固体スーパーキャパシタ又は触媒、好ましくは酸素還元反応用電極触媒を製造するための請求項18又は19に記載の窒素及びホウ素によってドープされたグラフェンを使用する方法。
【国際調査報告】