特表2017-501282(P2017-501282A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-501282耐衝撃性及び耐光性に優れた熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501282(P2017-501282A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】耐衝撃性及び耐光性に優れた熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20161216BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08L83/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-543678(P2016-543678)
(86)(22)【出願日】2014年6月10日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2014005080
(87)【国際公開番号】WO2015102177
(87)【国際公開日】20150709
(31)【優先権主張番号】10-2013-0167879
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤンギル
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンムー
(72)【発明者】
【氏名】カン,テ コン
(72)【発明者】
【氏名】リム,チョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨ チン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サンヒョン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF001
4J002CP172
4J002DA017
4J002DA037
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DE237
4J002DG026
4J002DG046
4J002DJ007
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DL007
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD096
(57)【要約】
本発明は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)及びシリコーン含有グラフト共重合体(C)を含むことによって、耐衝撃特性及び成形加工性が低下しないと共に、優れた光効率、耐変色特性及び光安定性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、及びシリコーン含有グラフト共重合体(C)を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記組成物は、ポリエステル樹脂(A)30重量%〜80重量%、および白色顔料(B)20重量%〜70重量%からなる基礎樹脂100重量部に対して、シリコーン含有グラフト共重合体(C)を0.1重量部〜10重量部含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリコーン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムのコアにビニル系単量体をグラフト重合することによってシェルを形成したコア−シェル構造である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリコーン含有グラフト共重合体(C)のシリコーン含量は、前記シリコーン含有グラフト共重合体全体の重量に対して20重量%〜85重量%である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリコン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムがヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるシクロシロキサン系化合物から製造される、請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂は、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール15モル%〜100モル%及びエチレングリコール0モル%〜85モル%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の成分を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、クレイ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の充填剤をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から製造される、成形品。
【請求項11】
前記成形品は、色差計で450nm波長の初期反射率を測定し、85℃、湿度85%でLED光源下に500時間放置した後、反射率の差が10以下である、請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
前記成形品はLED用反射板である、請求項10に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳細には、耐衝撃性及び耐光性に優れたポリエステル系熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、発光ダイオード(LED;light emitting diode)及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などの新たな光源を使用した照明表示素子の需要が増大している。前記素子は、寿命が比較的長く、高効率を示すなどの特徴を有する。
【0003】
このような照明表示素子には、反射板(reflector)、反射カップ(reflector cup)、スクランブラ(scrambler)又はハウジング(housing)などの部品を用いる。これらの部品に使用される素材としては、高い温度に耐えることができ、反射率及び黄変化による白色度の低下を最小化できる物性が要求される。
【0004】
一方、エンジニアリングプラスチックとして、ポリエステル、その共重合体、又はそのブレンド(blend)などは、それぞれ有用な特性を示し、製品の内・外装材素材を含む多様な分野に適用可能である。
【0005】
照明表示素子の素材として前記ポリエステル樹脂が使用されてもよい。このとき、使用される高耐熱性ポリエステル樹脂は、高い温度で変形がなく、耐変色特性に優れるが、耐衝撃性が低下するという問題を有する。これを解決するために、前記樹脂に耐衝撃性を向上できる添加剤を導入するようになるが、これは、ポリエステル樹脂の耐変色特性などの長期安定性及び成形加工特性を低下させるという問題を有する。
【0006】
米国登録特許第7,009,029号(特許文献1)には、樹脂の光安定性及び耐変色特性を高めるために光安定剤などの添加剤を混合し、優れた耐熱性及び反射率を有するポリアミド系樹脂組成物が開示されているが、これは、添加剤による機械的物性が低下するという問題を有する。
【0007】
したがって、照明表示素子の素材に適用可能な耐衝撃特性及び成形加工性が低下しないと共に、優れた光効率、耐変色特性及び光安定性を有する熱可塑性樹脂組成物に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,009,029号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題を解決するためになされたものであって、耐衝撃性、耐変色性、耐光性、及び反射率に優れたポリエステル系熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物から製造される優れた耐衝撃性及び長期光安定性を有する成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を達成するために、本発明は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)及びシリコーン含有グラフト共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)30重量%〜88重量%及び白色顔料(B)20重量%〜70重量%からなる基礎樹脂100重量部に対してシリコーン含有グラフト共重合体(C)0.1重量部〜10重量部を含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物において、シリコーン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムのコアに、ビニル系単量体をグラフト重合することによってシェルを形成したコア−シェル構造であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物において、シリコーン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーンを20重量%〜95重量%含むことができ、シリコーン系ゴムにビニル系単量体をグラフト重合したものであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物において、シリコーン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムがヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるシクロシロキサン系化合物から製造されてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(A)は、ポリシクロヘキサンデメチレンテレフタレート(PCT)であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例に係る熱可塑性樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(A)は、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール15モル%〜100モル%及びエチレングリコール0モル%〜85モル%を含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物において、白色顔料(B)は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の成分を含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、クレイ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の充填剤をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供する。また、前記成形品はLED用反射板であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性及び成形加工性が低下しないと共に、優れた反射率、耐変色性及び耐光性を具現できるという長所を有する。
【0022】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から優れた耐衝撃性、発光効率及び光安定性を有する成形品を提供できるという長所を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明する。次に紹介する各実施例は、当業者に本発明の思想を充分に伝達するために例として提供されるものである。また、使用される技術用語及び科学用語において、他の定義がない限り、この発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不要に不明瞭にし得る公知機能及び構成に対する説明は省略する。
【0024】
本明細書において、特別な言及がない限り、「置換」とは、化合物の中で水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基又はそれらの塩、スルホン酸基又はその塩、リン酸基又はその塩、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C30アリール基、C6〜C30アリールオキシ基、C3〜C30シクロアルキル基、C3〜C30シクロアルケニル基、C3〜C30シクロアルキニル基、又はそれらの組み合わせの置換基に置換されたことを意味する。
【0025】
本発明の発明者等は、樹脂本来の物性を維持しながら初期反射率、長期反射率の維持特性及び耐変色特性に優れるだけでなく、耐衝撃性を向上できる熱可塑性樹脂組成物を開発するために研究した結果、ポリエステル樹脂、白色顔料及びシリコーン含有グラフト共重合体を含むことによって、耐衝撃性を向上させると同時に、長期的に発光効率及び光安定性を具現できることを発見し、本発明を完成した。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)及びシリコーン含有グラフト共重合体(C)を含む。
【0027】
以下、各構成成分に対してより詳細に説明する。
【0028】
ポリエステル樹脂(A)
本発明において、ポリエステル樹脂(A)は、LED部品素材などの製造工程において、高い温度での耐熱性及び機械的物性を向上させるために使用することができる。当該ポリエステル樹脂は、高分子骨格に環状の構造を含み、高い融点を有することができる。当該ポリエステル樹脂の融点は、200℃以上であり、220℃〜380℃であることが好ましく、260℃〜320℃であることがより好ましい。当該ポリエステル樹脂の融点が380℃を超えると、加工性が低下し得る。
【0029】
当該ポリエステル樹脂は、主鎖に芳香族環及び脂環族環構造を含む構造であってもよく、具体的に、芳香族ジカルボン酸成分及び脂環族ジオールが含まれたジオール成分の縮重合によって製造されてもよい。
【0030】
当該ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体からなってもよい。例として、当該ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、テレフタル酸を使用することが好ましい。
【0031】
当該ジオール成分としては、主鎖が環状の繰り返し単位を含むために脂環族ジオールを使用してもよく、一例として、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−cyclohexanedimethanol;CHDM)を使用することが好ましい。
【0032】
当該ジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの脂環族ジオールの他に脂肪族ジオールをさらに含んでもよい。当該脂肪族ジオールとしては、エチレングリコールなどを挙げることができる。エチレングリコールを含む場合、ジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール15重量%〜100重量%及びエチレングリコール0重量%〜85重量%を含んでももよく、1,4−シクロヘキサンジメタノール30重量%〜80重量%及びエチレングリコール20重量%〜70重量%を含むことが好ましい。エチレングリコールを含むジオール成分は、ポリエステル樹脂の耐熱性を低下させないと共に、耐衝撃性などの機械的物性を向上させることができる。
【0033】
ジオール成分として、一つ以上のC6〜C21である芳香族ジオール又はC3〜C8である脂肪族ジオールをさらに含むことによって、ポリエステル樹脂を変性することができる。前記C6〜C21である芳香族ジオール又はC3〜C8である脂肪族ジオールの例としては、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、3−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、1,4−シクロブタンジメタノール、2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンなどを挙げることができる。
【0034】
本発明において、ポリエステル樹脂は、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが縮重合され、下記の化学式1のような繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0035】
【化1】
【0036】
(前記化学式1において、mは、10〜500の整数である。)
当該ポリエステル樹脂は、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)系樹脂であることが好ましい。
【0037】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の固有粘度[η]は、o−クロロフェノール溶液にて35℃で測定するときに0.4dl/g〜1.5dl/gであってもよく、0.5dl/g〜1.2dl/gであることが好ましい。固有粘度[η]が0.4dl/g未満であると機械的特性が低下し、固有粘度が1.5dl/g超であると成形加工性が低下し得る。
【0038】
当該ポリエステル樹脂は、公知の従来の重縮合反応によって製造されてもよく、重縮合反応は、グリコール又は低級アルキルエステルを使用したエステル交換反応による酸の直接縮合方法を含んでもよい。
【0039】
本発明において、ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂及び白色顔料からなる基礎樹脂全体の重量に対して30重量%〜80重量%で含んでもよい。当該ポリエステルの含量が30重量%未満であると熱可塑性樹脂組成物の耐熱性及び耐衝撃性が低下し、80重量%超であると熱可塑性樹脂組成物の成形加工性及び光安定性が低下し得る。
【0040】
白色顔料(B)
本発明において、白色顔料は、白色度及び反射率を高めるために使用することができる。
【0041】
当該白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム及びこれらの混合物から選ばれるいずれか一つ以上の成分を含んでもよい。
【0042】
また、前記白色顔料は、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤などで処理して使用してもよく、例えば、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物を用いて表面処理したものを使用してもよい。
【0043】
本発明において、白色顔料としては、二酸化チタンを使用することが好ましい。二酸化チタンは、反射率及び隠蔽性などの光学特性を向上させるために使用することができる。当該二酸化チタンとしては通常の二酸化チタンを使用してもよく、これに制限されることはない。当該二酸化チタンとしては、無機表面処理剤又は有機表面処理剤で表面処理したものを使用してもよい。無機表面処理剤としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)、二酸化ケイ素(シリカ、SiO)、二酸化ジルコン(ジルコニア、ZrO)、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、ナトリウムケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、雲母などを挙げることができる。有機表面処理剤としては、ポリジメチルシロキサン、トリメチルプロパン(TMP)、ペンタエリトリトールなどを挙げることができる。当該無機又は有機表面処理剤は、二酸化チタン100重量部に対して約10重量部以下で表面処理することができる。当該二酸化チタンとしては、アルミナ(Al)でコートしたものを使用してもよい。アルミナで表面処理した二酸化チタンは、二酸化ケイ素、二酸化ジルコン、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、ナトリウムケイ酸アルミニウム、雲母などの無機表面処理剤や、ポリジメチルシロキサン、トリメチルプロパン(TMP)、ペンタエリトリトールなどの有機表面処理剤でさらに改質して使用してもよい。
【0044】
本発明において、白色顔料は、ポリエステル樹脂及び白色顔料を含む基礎樹脂全体の重量に対して20重量%〜70重量%で含んでもよい。当該白色顔料の含量が20重量%未満であると熱可塑性樹脂組成物の反射率及び耐変色特性が低下し、70重量%超であると熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性などの機械的物性が低下し得る。
【0045】
シリコーン含有グラフト共重合体(C)
本発明において、シリコーン含有グラフト共重合体は、組成物内の他の成分との組み合わせで長期間反射率及び耐変色特性を低下させないと共に、耐衝撃性を向上させるために使用することができる。
【0046】
シリコーン含有グラフト共重合体は、コア−シェル構造を有してもよい。当該シリコーン含有グラフト共重合体は、ゴムのコア構造にビニル系単量体がグラフトされることによってシェルを形成したものであってもよく、具体的に、シリコーン系ゴムのコアにビニル系単量体をグラフト重合した構造であってもよい。
【0047】
シリコーン含有グラフト共重合体は、通常の方法で製造されてもよく、一例として、シリコーン系ゴムを重合した後、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン又はアルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C1〜C8メタクリル酸アルキルエステル類、C1〜C8アクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、C1〜C4アルキル及びフェニルN−置換マレイミドで構成された群から選ばれるいずれか一つ以上の化合物をゴムにグラフトさせることによって製造されてもよい。
【0048】
前記のC1〜C8メタクリル酸アルキルエステル類又はC1〜C8アクリル酸アルキルエステル類は、それぞれメタクリル酸又はアクリル酸のエステル類であって、1個〜8個の炭素原子を有するモノヒドリルアルコールから製造されたエステル類であってもよい。具体例としては、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル又はメタクリル酸プロピルエステルを挙げることができ、これらのうち、メタクリル酸メチルエステルが好ましい。
【0049】
当該シリコーン含有グラフト共重合体において、シリコーン系ゴムは、シクロシロキサン系化合物から製造されてもよく、例として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるシクロシロキサン系化合物から製造されてもよい。
【0050】
当該シリコーン系ゴムは、シリコーンを20重量%〜95重量%含んでもよい。前記範囲内で、他の成分との組み合わせることで長期光安定性と共に、耐衝撃性を高めることができる相乗効果を具現することができる。具体的に、前記シリコーンの含量が20重量%未満であると長期光安定性が低下し、95重量%超であると、製品が要求する衝撃強度を獲得することが困難になり得る。
【0051】
また、シリコーン系ゴムのコア部分のシリコーン含量は、シリコーン含有グラフト共重合体全体の重量に対して5重量%〜85重量%であって、20重量%〜85重量%であることが好ましく、50重量%〜85重量%であることがより好ましい。前記範囲で、他の成分との組み合わせで長期光安定性と共に、耐衝撃性を高めることができる相乗効果を具現することができる。
【0052】
本発明において、シリコーン含有グラフト共重合体は、ポリエステル樹脂及び白色顔料を含む基礎樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部含まれてもよい。前記シリコーン含有グラフト共重合体の含量が0.1重量部未満であると耐衝撃特性の効果が薄くなり、10重量部を超えると耐熱性、発光効率及び光安定性が低下し得る。
【0053】
本発明は、樹脂組成物の機械的物性及び成形加工性などを増加させるために、粒子形態が多様な充填剤をさらに含んでもよい。当該充填剤としては、通常的に使用される有機充填剤又は無機充填剤を使用してもよく、具体的な例として、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、クレイ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石(wallostonite)及びこれらの混合物から選ばれるいずれか一つ以上の充填剤を使用してもよい。このうち、ガラス繊維、滑石、クレイを使用することが好ましく、ガラス繊維を使用することがより好ましい。
【0054】
ガラス繊維の断面は、円形の他にも、特殊な使用用途によって変化してもよい。本発明では、ガラス繊維は、形状の制限がなく使用可能である。
【0055】
当該充填剤は、基礎樹脂全体の重量に対して5重量%〜50重量%で含まれてもよい。当該範囲内で、他の成分との組み合わせることで機械的剛性及び成形加工性を増加させることができる。
【0056】
また、本発明は、目的とする効果を損なわない範囲内で、用途によって下記の添加剤、すなわち、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、核剤などの添加剤を含んでもよく、但しこれに限定されず、通常の添加剤を使用してもよい。当該酸化防止剤の例としては、フェノール類、アミン類、硫黄類、リン類などがあり、当該熱安定剤の例としては、ラクトン化合物、ヒドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨード化合物などがあり、当該難燃剤の例としては、臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系などがある。
【0057】
本発明は、前記のような熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供することができる。
【0058】
このとき、成形品は、色差計で450nm波長の初期反射率を測定し、85℃、湿度85%でLED光源下に500時間放置した後、反射率の差が10以下であるものを含む。
【0059】
また、当該成形品はLED用反射板であってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明をより具体的に説明するために下記の例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例に限定されることはない。
【0061】
下記の実施例及び比較例で使用された各成分の仕様は、次の通りである。
【0062】
ポリエステル樹脂(A)(PCT)
SK Chemical社のPCT 0302を使用した。
【0063】
白色顔料(B)
Tronox社のCR―470を使用した。
【0064】
シリコーン含有グラフト共重合体(C)
シリコーン含量が65重量%である日本KANEKA社のKANE ACETM MR―01を使用した。
【0065】
ガラス繊維(D)
オーウェンスコーニング社の910を使用した。
【0066】
(実施例1)
上述した各構成成分を用いて、下記の表1に示した組成のように、ポリエステル樹脂(A)52.5重量%及び白色顔料(B)47.5重量%からなる基礎樹脂100重量部に対してシリコーン含有グラフト共重合体(C)1重量部をドライブレンド(dry blending)することによって熱可塑性樹脂組成物を製造した後、Φ=45mmである二軸押出機を使用して、ノズル温度250℃〜350℃で加工することによってペレットを製造した。前記製造されたペレットは、100℃で4時間以上乾燥し、水平射出機(射出温度280℃〜320℃)を用いて、90mm×50mm×2.5mmサイズの試片を製造した後で物性を評価し、その結果を表1に示した。
【0067】
(実施例2)
基礎樹脂100重量部に対してシリコーン含有グラフト共重合体(C)5重量部を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0068】
(比較例1)
シリコーン含有グラフト共重合体(C)を入れないことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【0069】
(物性測定)
1)アイゾット(Izod)衝撃強度
ASTM D256に基づいて1/8"厚のノッチなし(unnotched)試片に対して、23℃で衝撃強度を測定した。
【0070】
2)反射率
板形態の試片を用いて450nm波長での反射率を測定した。最初反射率(SCI、specular component included)を測定し、170℃及び相対湿度85%条件の恒温恒湿オーブンで450nm波長を有するLED光源を200時間及び500時間照射した後の反射率を測定し、反射率の維持特性を評価した。反射率測定機として、ミノルタ(株)(KONICA MINOLTA HOLDINGS、INC.)のCM3600 CIE Lab.色差計を使用した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示したように、本発明に係る実施例1及び2は、比較例1に比べて衝撃強度を向上すると同時に、初期反射率が高く、長時間反射率維持特性に優れることを確認することができた。
【0073】
以上のように、本発明は、限定された実施例によって説明されたが、これは、本発明に対して、より全般的な理解を促進するために提供されたものに過ぎず、本発明は上述した実施例に限定されることはなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形をすることが可能である。
【0074】
したがって、本発明の思想は、説明した実施例に限定して定めてはならなく、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求範囲と均等であるか等価的変形を有するすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するものと言えるだろう。
【手続補正書】
【提出日】2016年9月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、及びシリコーン含有グラフト共重合体(C)を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記組成物は、ポリエステル樹脂(A)30重量%〜80重量%、および白色顔料(B)20重量%〜70重量%からなる基礎樹脂100重量部に対して、シリコーン含有グラフト共重合体(C)を0.1重量部〜10重量部含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリコーン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムのコアにビニル系単量体をグラフト重合することによってシェルを形成したコア−シェル構造である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリコーン含有グラフト共重合体(C)のシリコーン含量は、前記シリコーン含有グラフト共重合体全体の重量に対して20重量%〜85重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリコン含有グラフト共重合体(C)は、シリコーン系ゴムがヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上の混合物であるシクロシロキサン系化合物から製造される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂(A)は、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(A)は、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール15モル%〜100モル%及びエチレングリコール0モル%〜85モル%を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記白色顔料(B)は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の成分を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボンブラック、クレイ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、珪灰石及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の充填剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から製造される、成形品。
【請求項11】
前記成形品は、色差計で450nm波長の初期反射率を測定し、85℃、湿度85%でLED光源下に500時間放置した後、反射率の差が10以下である、請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
前記成形品はLED用反射板である、請求項10または11に記載の成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
当該ジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノールの脂環族ジオールの他に脂肪族ジオールをさらに含んでもよい。当該脂肪族ジオールとしては、エチレングリコールなどを挙げることができる。エチレングリコールを含む場合、ジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール15モル%〜100モル%及びエチレングリコール0モル%〜85モル%を含んでももよく、1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%〜80モル%及びエチレングリコール20モル%〜70モル%を含むことが好ましい。エチレングリコールを含むジオール成分は、ポリエステル樹脂の耐熱性を低下させないと共に、耐衝撃性などの機械的物性を向上させることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
(実施例2)
基礎樹脂100重量部に対してシリコーン含有グラフト共重合体(C)重量部を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施した。
【国際調査報告】