特表2017-536936(P2017-536936A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-536936薬物送達デバイス用のアセンブリおよび薬物送達デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-536936(P2017-536936A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用のアセンブリおよび薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20171117BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   A61M5/315 550P
   A61M5/24
   A61M5/315 550X
   A61M5/315 550C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-531159(P2017-531159)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2015079304
(87)【国際公開番号】WO2016092037
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】14306993.8
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ロジャー・グリフィン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066HH13
4C066HH17
4C066QQ22
4C066QQ32
4C066QQ48
4C066QQ72
4C066QQ73
4C066QQ78
4C066QQ92
(57)【要約】
ねじ山(33)を備えたねじ部材(23)を含む薬物送達デバイス(1)用のアセンブリが提供され、ねじ山(33)は、少なくとも2つの連続した部分を含み、これらの部分は異なるリードを有する。デバイス(1)はナット部材(22)をさらに含み、ナット部材(22)およびねじ部材(23)は、アセンブリの用量設定動作中、互いに対して回転軸(34)周りで回転されるように適用および配置され、それによって、ナット部材(22)は、ナット部材(22)のねじ山(33)との機械的協働によって、ねじ部材(23)に沿ってねじ部材(23)に対する開始位置から終了位置まで軸方向に変位される。アセンブリは、ねじ山(33)の第1の部分(23a)において、ナット部材(22)が回転軸(34)を横断する軸(43)に対する第1の位置を備え、ねじ山(33)の第2の部分(23b)において、ナット部材(22)が回転軸(34)を横断する軸(43)に対する第2の位置を備えるように構成され、ナット部材(22)は、ナット部材(22)が第1の部分(23a)から第2の部分(23b)へ進むとき、第1の位置から第2の位置への傾斜運動を行うように構成される。さらに、このアセンブリを含む薬物送達デバイス(1)が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)用のアセンブリであって:
ねじ山(33)を含むねじ部材(23)であって、ねじ山(33)は、少なくとも2つの連続した部分(23a、23b)を含み、該部分(23a、23b)は異なるリードを有する、ねじ部材と、
ナット部材(22)と
を含み、ここで、
該ナット部材(22)およびねじ部材(23)は、該アセンブリの用量設定動作中、互いに対して回転軸(34)周りで回転されるように適用および配置され、それによって、ナット部材(22)は、ナット部材(22)のねじ山(33)との機械的協働によって、ねじ部材(23)に沿ってねじ部材(23)に対する開始位置から終了位置まで軸方向に変位され、
該アセンブリは、ナット部材(22)がねじ山の第1の部分(23a)と係合した状態からねじ山(33)の第2の部分(23b)と係合した状態になるとき、ナット部材(22)が傾斜運動を行うように構成される、前記アセンブリ。
【請求項2】
遠位端(1a)および近位端(1b)を含み、ここで、ねじ山(33)の第1の部分(23a)は、第2の部分(23b)よりも遠位端(1a)の近くに配置され、第1の部分(23a)のリードは、第2の部分(23b)のリードより小さい、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
ハウジング(9)と、
該ハウジング(9)の中に配置され、少なくとも1つの第1のスプライン部材(40)を含む内側ハウジングスリーブ(10)と
をさらに含み、ここで、
ナット部材(22)は少なくとも1つの第2のスプライン部材(24)を含み、ナット部材(22)は、スプライン部材(24、40)の機械的協働によって内側ハウジングスリーブ(10)にスプライン連結される、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
ナット部材(22)が第1の部分(23a)から第2の部分(23b)へ進むとき、内側ハウジングスリーブ(10)とナット部材(22)の間のスプライン連結は、第1の位置から第2の位置への傾斜運動を可能にするために解放される、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
第2のスプライン部材(24)は、第1の部材(28)および第2の部材(29)を有する外形を備え、第1の部材(28)は第2の部材(29)に対して傾斜される、請求項3または4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
ナット部材(22)が第1の部分(23a)と係合されるとき、第2の部材(29)は第1のスプライン部材(40)から解放され、ナット部材(22)が第1の部分(23a)と係合されるとき、第2の部材(29)は回転軸(34)に対して傾く、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
ナット部材(22)がねじ山(33)の第1の部分(23a)と係合されるとき、第2の部材(29)は、ナット部材(22)がねじ山(33)の第2の部分(23b)と係合されているときよりも回転軸(34)に対して大きく傾く、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
複数用量の薬物を含むカートリッジ(6)と、該カートリッジ(6)からの薬物の用量を設定し送達するように動作可能な投薬機構(4)とをさらに含み、該投薬機構(4)は、使用者がカートリッジ(6)内の薬物の残量を超える薬物の用量を設定することを防止するように適用および配置された最終用量停止機構(16、18)を含み、該最終用量停止機構(16、18)は、ねじ部材(33)によって提供される少なくとも1つの停止機能(16)と、ナット部材(22)によって提供される少なくとも1つの相互作用機能(18)とを含み、ここで、停止機能(16)および相互作用機能(18)は、ナット部材(22)がねじ部材(23)に対する終了位置にあるとき、ナット部材(22)を軸方向に変位させて開始位置から離すナット部材(22)とねじ部材(23)のさらなる相対回転を妨げるように、互いに機械的に協働するように構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
ナット部材(22)は、ねじ山(33)と機械的に協働するように適用および配置された少なくとも1つのインターフェース機能(26)を含み、該インターフェース機能(26)は、ねじ山の少なくとも部分的なターンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
インターフェース機能(26)のリードは、第2の部分(23b)のリードに等しい、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
インターフェース機能(26)は、遠位面(36)および近位面(37)を含み、それぞれの面(36、37)は、ねじ山(33)の巻きの遠位および近位の壁(38、39)と機械的に協働するように構成され、ナット部材(22)が第2の部分(23b)と機械的に協働しているとき、遠位および近位の面(36、37)は、第2の部分(23b)の巻きの遠位および近位の壁(38、39)との接触面積が、ナット部材(22)が第1の部分(23a)と機械的に協働しているときの遠位および近位の面(36、37)と第1の部分(23a)の巻きの遠位および近位の壁(38、39)との接触面積と比べて大きくなるように構成される、請求項9または10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
ねじ山(33)の部分(23a、23b)の少なくとも1つにおいて、インターフェース機能(26)は、別個の分離された接点(27)を介してねじ山(33)と機械的に協働する、請求項9〜11のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
ハウジング(9)および内側ハウジングスリーブ(10)をさらに含み、ここで、用量設定動作中、
i)ねじ部材(23)は、ナット部材(22)および内側ハウジングスリーブ(10)に対して回転され、内側ハウジングスリーブ(10)の回転は、ハウジング(9)との機械的協働によって妨げられ、ナット部材(22)の回転は、内側ハウジングスリーブ(10)との機械的協働によって妨げられる、または
ii)内側ハウジングスリーブ(10)およびナット部材(22)は、ねじ部材(23)に対して回転され、ねじ部材(23)の回転は、ハウジング(9)との機械的協働によって妨げられ、ナット部材(22)は、内側ハウジングスリーブ(10)との機械的協働によって回転される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
ハウジング(9)および内側ハウジングスリーブ(10)をさらに含み、ここで、用量送達動作中、
i)ナット部材(22)のねじ部材(23)に対する軸方向運動を妨げるように、ねじ部材(23)、内側ハウジングスリーブ(10)およびナット部材(22)のそれぞれのハウジング(9)に対する回転が妨げられる;または、
ii)ナット部材(22)のねじ部材(23)に対する軸方向運動を妨げるように、ねじ部材(23)および内側ハウジングスリーブ(10)は、互いの機械的協働によってハウジング(9)に対して一緒に回転する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のアセンブリを含む薬物送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイス用のアセンブリに関する。さらに本開示は、薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスでは、多くの場合、複数用量の薬物を含むカートリッジ内の栓を、軸によって変位させる。それによって、ある用量の薬物がカートリッジから排出される。
【0003】
薬物送達デバイスは、たとえば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/058666A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、改善された薬物送達デバイスの提供を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成することができる。有利な実施形態および改良形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
一態様は、薬物送達デバイス用のアセンブリに関する。アセンブリは、薬物送達デバイスに組み込まれる形状および/または外形寸法を備えることができる。さらにアセンブリは、デバイスに組み込むのに適したものにするために、滅菌した条件下で製造され組み立てられることがある。アセンブリはねじ部材を含む。ねじ部材は、スリーブ状に成形することができる。ねじ部材は、細長い形状を備えることができる。ねじ部材はねじ山を含む。ねじ山は、ねじ部材の外面に配置することができる。ねじ山は、ねじ部材に沿って配置することができる。ねじ山は、少なくとも2つの連続した部分を含むことができる。好ましくは、ねじ山はちょうど2つの連続した部分を含む。換言すれば、ねじ山は、第1の部分および第2の部分を含むことができる。連続した部分は、互いに結合するように適用および配置することができる。ねじ山は、連続した部分が互いに結合する遷移領域を含むことができる。2つの連続した部分は、異なるリード(lead)を有する。
【0008】
アセンブリは、ナット部材をさらに含む。ナット部材は、半分のナットまたはリング形の完全なナットとすることができる。ナット部材およびねじ部材は、アセンブリの用量設定動作中、互いに対して回転軸周りで回転されるように適用および配置される。相対回転の間、ナット部材は、ナット部材のねじ山との機械的協働によって、ねじ部材に沿ってねじ部材に対する開始位置から終了位置まで軸方向に変位される。相対回転の間に、ナット部材はねじ部材のねじ山と係合され、ねじ山に沿って終了位置に向かって進む。アセンブリの構成要素の構成および機械的協働は、安全なデバイスの提供を容易にするのを助けることができる。特にナット部材は、薬物送達デバイス内に残っている薬物の量より多い用量の設定を防止する最終用量ナットとして設計することができる。そうしたナット部材は、設定された用量が送達される前にデバイスが空である場合に、使用者が不十分な用量の薬物を受けるのを防止することができる。それによって、デバイスの安全性が改善される。
【0009】
アセンブリは、ナット部材がねじ山の第1の部分と係合した状態からねじ山の第2の部分と係合した状態になるとき、ナット部材が傾斜運動を行うように構成することができる。
【0010】
ねじ山の第1の部分では、ナット部材の軸は回転軸に対して第1の角度をなすことができ、ねじ山の第2の部分では、ナット部材の軸は回転軸に対して第2の角度をなすことができる。これによって、ナット部材が第1の部分から第2の部分へ進むとき、ナット部材に第1の角度から第2の角度への傾斜運動を行わせることができる。ナット部材の軸は、ナット部材の外面の両側の2つの点を結ぶ直線によって画成される軸とすることができる。
【0011】
第1の部分において、ナット部材は、回転軸を横断する軸に対して第1の位置に位置することができる。換言すれば、ナット部材は第1の部分と係合されているとき、回転軸を横断する軸と第1の角度を挟むことができる。第2の部分において、ナット部材は、回転軸を横断する軸に対する第2の位置を備えることができる。換言すれば、ナット部材は第2の部分と係合されているとき、回転軸を横断する軸と第2の角度を挟むことができる。第1の角度は、第2の角度と異なってもよい。ナット部材は、ナット部材が第1の部分から第2の部分へ進むとき、第1の位置から第2の位置への傾斜運動を行うように構成することができる。ナット部材が第1の部分から第2の部分へ進んだときには、傾斜運動が完全に行われている。傾斜運動によって、ナット部材は連続した部分の異なるリードに適応することができる。こうして、信頼性および適応性のある薬物送達デバイスを提供することが容易になる。
【0012】
一実施形態によれば、ナット部材は、少なくとも1つのインターフェース機能を含む。好ましくは、ナット部材は、ちょうど1つのインターフェース機能を含む。インターフェース機能は、ねじ山と、特にねじ山の異なる部分と機械的に協働するように適用および配置される。ねじ山の部分の少なくとも1つにおいて、インターフェース機能は、別個の分離された接点を介して、たとえば1つ、2つ、3つまたはそれ以上の接点を介して、ねじ山と機械的に協働する。特に少なくとも1つの部分において、インターフェース機能は、その部分と係合しているとき、その部分と全面接触しないようにすることができる。好ましくは、インターフェース機能は、第1の部分と係合されているとき、別個の分離された接点、好ましくは3つの接点を介して機械的に協働する。これにより、ナット部材が異なるリードを有するねじ山の各部分と係合することを可能にすることができる。ナット部材は、第1の部分と係合されているとき、回転軸から外れた回転を行うことができる。回転軸から外れた回転は、反時計回りの方向とすることができる。
【0013】
インターフェース機能は、ねじ山の少なくとも部分的なターンを含むことができる。特にインターフェース機能は、半ターンまたは全ターンを含むことができる。
【0014】
さらなる実施形態によれば、アセンブリは、カートリッジをさらに含む。カートリッジは、少なくとも1用量、好ましくは複数用量の薬物を含むことができる。本明細書で使用する用語「薬物」は、好ましくは少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0015】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0016】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0017】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0018】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0019】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0020】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0021】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0022】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0023】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0024】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0025】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0026】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0027】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0028】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0029】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0030】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0031】
アセンブリは、投薬機構をさらに含む。投薬機構は、カートリッジからの薬物の用量を設定し送達するように動作可能である。投薬機構は、最終用量停止機構を含む。最終用量停止機構は、使用者がカートリッジ内の薬物の残量を超える薬物の用量を設定することを防止するように適用および配置される。最終用量停止機構は、少なくとも1つの停止機能を含む。停止機能は、ねじ部材によって提供される。停止機能は、ねじ山の端部に提供することができる。停止機能は、たとえば突起またはラグを含むことができる。最終用量停止機構は、少なくとも1つの相互作用機能をさらに含む。相互作用機能は、ナット部材によって提供される。相互作用機能は、たとえば突起を含むことができる。停止機能および相互作用機能は、ナット部材がねじ部材に対する終了位置にあるとき、ナット部材を軸方向に変位させて開始位置から離すナット部材とねじ部材のさらなる相対回転を妨げるように、互いに機械的に協働するように構成される。換言すれば、ナット部材のねじ部材に対する終了位置は、停止機能と相互作用機能の機械的協働によって画成される。開始位置と終了位置の間のナット部材の変位距離は、カートリッジに含まれる薬物の量に対応することができる。
【0032】
最終用量停止機構によって、使用者が設定できる薬物の用量が、カートリッジ内に残っている薬物の量以下に制限される。これは、用量送達を開始する前に、使用者がどのくらいの量が送達されるかを知ることができるという利点を有する。直径が小さいカートリッジのネック部に栓が入ると用量が不十分になることがあるが、そうしたことがなく制御された形で用量送達を停止することも保証される。こうして、薬物の不十分な用量の設定または投薬が防止される。したがって、デバイスの安全性が高められる。
【0033】
さらなる実施形態によれば、アセンブリおよび/またはデバイスは、遠位端および近位端を含む。遠位端は、デバイスの投薬端に配置することができる。ナット部材の開始位置は、終了位置よりも遠位端の近くに配置することができる。あるいは、ナット部材の開始位置は、終了位置よりも近位端の近くに配置することができる。ねじ山は、これまでに言及した第1の部分および第2の部分を含む。第1の部分は、第2の部分よりも遠位端の近くに配置することができる。第1の部分のリードは、第2の部分のリードより小さくすることができる。第1の部分は低速のねじ山とすることができ、第2の部分は高速のねじ山とすることができる。低速のねじ山と高速のねじ山のリード間の比率は、たとえば1:1.5とすることができる。たとえば1:2または1:2.5など、低速のねじ山と高速のねじ山のリード間の他の比率も可能である。特に比率は、1:1.2〜1:2.5の範囲内、好ましくは1:1.4〜1:2の範囲内とすることができる。
【0034】
インターフェース機能は、単一の突起を含むことができる。特にインターフェース機能は、ねじ山の部分的なターンを含むことができる。インターフェース機能の特定の形状によって、ナット部材が、ねじ部材の可変のねじ山、すなわちねじ山の第1および第2の部分と、干渉せずに噛み合うことを可能にすることができる。代替的設計において、インターフェース機能は、ねじ山の全ターンを含むことができる。この設計も、インターフェース機能が可変のねじ山と噛み合うことを可能にする。この場合、インターフェース機能とねじ山の間に、十分なクリアランスを設けるべきである。
【0035】
インターフェース機能のリードは、ねじ部材の高速のねじ山の形状に似せる、または等しくすることができる。換言すれば、インターフェース機能のリードは、第2の部分のリードに似せる、または等しくすることができる。好ましくは、インターフェース機能のリードは、第2の部分のリードに等しい。こうして、インターフェース機能と第2の部分の間の面係合部を、インターフェース機能と第1の部分の間の面係合部と比べて大きくすることができる。したがって、ナット部材が第2の部分と機械的に協働すると、より高い軸方向負荷の抑制を可能にすることができる。しかしながら、負荷は主にねじれて生じる可能性があり、そのため、ねじ山を通じた負荷の伝達を回避するようにする。
【0036】
さらなる実施形態によれば、インターフェース機能は、遠位面および近位面を含む。近位面は、遠位面よりもねじ部材の停止機能の近くに配置することができる。遠位面は、近位面よりもカートリッジの近くに位置することができる。それぞれの面は、ねじ山の巻きの遠位および近位の壁と機械的に協働するように構成される。ナット部材が第1の部分と機械的に協働しているとき、遠位面は、第1の部分の巻きの遠位壁と、たとえば3点で接触するなど、少なくとも2点で接触するように構成することができる。ナット部材が第1の部分と機械的に協働しているとき、近位面は、第1の部分のそれぞれの巻きの近位壁と、たとえば3点で接触するなど、少なくとも2点で接触するように構成することができる。
【0037】
ナット部材が第2の部分と機械的に協働しているとき、遠位および近位の面は、第2の部分の巻きの遠位および近位の壁との接触面積が、ナット部材が第1の部分と機械的に協働しているときの遠位および近位の面と第1の部分の巻きの遠位および近位の壁との接触面積と比べて大きくなるように構成することができる。
【0038】
換言すれば、ナット部材が第2の部分と機械的に協働しているとき、遠位および/または近位の面は、第2の部分の巻きの遠位および/または近位の壁との接触面積が、第1の部分と機械的に協働しているときより大きくなるように構成される。好ましくは、ナット部材が第2の部分と機械的に協働しているとき、遠位面は、第2の部分の巻きの遠位壁と全面接触することができる。ナット部材が第2の部分と機械的に協働しているとき、近位面は、第2の部分の対応する巻きの近位壁と全面接触することができる。それに応じて、第1の部分では、最小限に抑えられた接触面積によって、ナット部材およびねじ部材の互いに対する回転を容易にすることができる。第2の部分では、増大した接触面積によって接触応力が最小限に抑えられる。
【0039】
さらなる実施形態によれば、アセンブリはハウジングを含む。ハウジングは、デバイスの外部のハウジングとすることができる。ハウジングは、デバイスの外面を形成することができる。ハウジングは、デバイスの他の構成要素を環境の影響から保護するように適用および配置することができる。アセンブリは、内側ハウジングスリーブをさらに含むことができる。内側ハウジングスリーブは、ハウジングの中に配置することができる。ハウジングおよび内側ハウジングスリーブは、別個の構成要素とすることができる。内側ハウジングスリーブは、ハウジングに挿入することができる。内側ハウジングスリーブは、ハウジングに連結すること、好ましくは非解放可能に連結することができる。内側ハウジングスリーブは、ハウジングに対して回転しないようにすることができる。この場合、内側ハウジングスリーブは、たとえばハウジングに接着することができる。あるいは、内側ハウジングスリーブは、ハウジングに対して回転可能にすることができる。この場合、内側ハウジングスリーブをハウジングに回転可能に連結するために、たとえば内側ハウジングスリーブが突起を含み、ハウジングが溝を含むようにすることができる。内側ハウジングスリーブは、ハウジングに対して軸方向運動しないようにすることができる。
【0040】
内側ハウジングスリーブは、少なくとも1つの第1のスプライン部材、たとえば突起または溝を含むことができる。内側ハウジングスリーブは、複数の第1のスプライン部材、たとえば2つ、3つまたはそれ以上の第1のスプライン部材を含むことができる。第1のスプライン部材は、内側ハウジングスリーブの内面に配置することができる。第1のスプライン部材は、内側ハウジングスリーブの内面に沿って延びることができる。
【0041】
ナット部材は、少なくとも1つの第2のスプライン部材、たとえば突起を含むことができる。ナット部材は、複数の第2のスプライン部材、たとえば2つ、3つまたはそれ以上の第2のスプライン部材を含むことができる。ナット部材は、スプライン部材の機械的協働によって内側ハウジングスリーブにスプライン連結することができる。したがって、ナット部材とハウジングの間の直接的な機械的連結または接触を妨げることができる。こうして、ナット部材またはねじ部材は、用量設定動作中、内側ハウジングスリーブの特定の実施形態に応じて回転されるように設計することができる。
【0042】
ナット部材が第1の部分から第2の部分へ進むとき、ナット部材と内側ハウジングスリーブの間のスプライン連結は、第1の位置から第2の位置への傾斜運動を可能にするために解放することができる。ナット部材が第1の部分と係合されるとき、ナット部材と内側ハウジングスリーブの間のスプライン連結は、たとえば反時計回りの方向などの回転軸から外れた回転運動を可能にするために解放することができる。
【0043】
ナット部材が第1の位置から第2の位置へ進むときの傾斜運動を可能にするために、ナット部材のインターフェース機能および各部分の巻きは、少なくとも1つの部分、好ましくは第1の部分において、インターフェース機能と巻きの壁との間にあそび(play)があるように適用することができる。ナット部材は、第1の部分と係合されるとき、スプライン部材、巻きおよびインターフェース機能の特定の成形によって、第1のスプライン部材に対して回転軸から外れて回転可能にすることができる。
【0044】
一実施形態によれば、スプライン部材の少なくとも1つは、回転軸から離すように、少なくとも部分的に角度を付ける、または湾曲させることができる。換言すれば、スプライン部材の少なくとも1つは、回転軸に平行な軸に対して少なくとも部分的に傾いて延びることができる。好ましくは、第2のスプライン部材は、少なくとも部分的に角度を付ける、または湾曲させることができる。第2のスプライン部材は、少なくとも部分的に角度の付いたまたは丸みのある外形、特に角度の付いたまたは丸みのある外面を備えることができる。したがって、ナット部材がねじ部材と係合されるとき、第2のスプライン部材は、一部のみが回転軸に平行に配置される。換言すれば、第2のスプライン部材の外面の一部のみが、第1のスプライン部材の対応する面と直接機械的に接触することができる。したがって、ナット部材が第1の部分から第2の部分へ進むとき、第1の位置から第2の位置への傾斜運動が可能になる。
【0045】
特に第2のスプライン部材は、第1の部材および第2の部材を有する外形を備えることができ、第1の部材は第2の部材に対して傾斜される。第2のスプライン部材は、複数のスプラインを含むことができ、スプラインの1つでは、それぞれの第1の部材を遠位部材とし、それぞれの第2の部材を近位部材とすることができ、スプラインの別の1つでは、それぞれの第1の部材を近位部材とし、それぞれの第2の部材を遠位部材とすることができる。さらに、別のスプラインでは、それぞれの第1の部材を、スプラインの近位端および遠位端に配置された2つのそれぞれの第2の部材の間に配置された中央部材とすることができる。
【0046】
ナット部材が第1の位置にあるとき、第2のスプライン部材の第2の部材は、回転軸に対して傾いて延びることができる。換言すれば、ナット部材が第1の部分と係合されるとき、第2の部材を第1のスプライン部材から解放することができる。ナット部材が第1の部分と係合されるとき、第2のスプライン部材の第2の部材は、回転軸に対して傾くことができる。ナット部材が第1の部分と係合されるとき、第2の部材は、第1の部材よりも回転軸に対して大きく傾くことができる。
【0047】
ナット部材が第2の位置にあるとき、第2のスプライン部材の第2の部材は、回転軸に対して第1の部材よりも小さく傾いて延びることができる。ナット部材が第2の位置にあるとき、第2の部材は、回転軸に対して平行に延びることができる。ナット部材が第2の部分と機械的に協働すると、第2の部材を第1のスプライン部材と完全に係合させることができる。ナット部材が第2の部分と係合されるとき、第2の部材は、回転軸に対して第1の部材よりも小さく傾くことができる。
【0048】
さらなる実施形態によれば、用量設定動作中、ねじ部材は、ナット部材および内側ハウジングスリーブに対して回転される。内側ハウジングスリーブの回転は、ハウジングとの機械的協働によって妨げることができ、ナット部材の回転は、たとえばスプライン連結による内側ハウジングスリーブとの機械的協働によって妨げることができる。こうして、ねじ部材とナット部材の相対回転運動によって、ナット部材がねじ部材上のねじ山をたどり、したがって、軸方向に終了位置に向かって変位する。
【0049】
さらなる実施形態によれば、用量設定動作中、内側ハウジングスリーブおよびナット部材は、ねじ部材に対して回転される。ねじ部材の回転は、ハウジングとの機械的協働によって妨げることができる。ナット部材は、内側ハウジングスリーブとの機械的協働によって回転させることができる。こうして、ナット部材を終了位置に向かって軸方向に変位させる、ねじ部材とナット部材の相対回転運動が可能になる。
【0050】
さらなる実施形態によれば、用量送達動作中、ナット部材のねじ部材に対する軸方向運動を妨げるように、ねじ部材、内側ハウジングスリーブおよびナット部材の互いに対する回転が妨げられる。特に用量送達動作中、ナット部材とねじ部材の間の相対回転を妨げることができる。
【0051】
さらなる実施形態によれば、用量送達動作中、ナット部材のねじ部材に対する軸方向運動を妨げるように、ねじ部材および内側ハウジングスリーブは、互いの機械的協働によってハウジングに対して一緒に回転する。
【0052】
さらなる態様は、薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは、これまでに記載したアセンブリを含む。アセンブリは、デバイスに組み込むことができる。こうして、きわめて安定かつ安全なデバイスが提供される。
【0053】
もちろん、様々な態様および実施形態に関する前述の特徴を、互いに、また以下に記載する特徴と組み合わせることが可能である。
【0054】
さらなる特徴および改良は、添付図面に関連する例示的な実施形態に関する以下の説明から明らかになる。
【0055】
図面では、類似の要素、同種の要素および同様に動作する要素に、同じ参照番号が与えられる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】薬物送達デバイスの概略的な側面図である。
図2図1の薬物送達デバイスの部材の概略的な側面図である。
図3図1の薬物送達デバイスの部材の概略的な分解図である。
図4図1の薬物送達デバイスの一部の概略的な側面図である。
図5図1の薬物送達デバイスの一部の概略的な側面図である。
図6図6aおよび図6bは、図1の薬物送達デバイスの一部の概略的な側面図である。
図7図7a〜図7dは、図1の薬物送達デバイスの一部の概略的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1および図2には、薬物送達デバイス1が示されている。薬物送達デバイス1は、投薬機構4を含む。投薬機構4は、ハウジング9を含む。薬物送達デバイス1およびハウジング9は、遠位端1aおよび近位端1bを有する。用語「遠位端」は、薬物送達デバイス1の投薬端の最も近くに位置する、もしくは最も近くに配置予定である、薬物送達デバイス1またはその構成要素の端部を意味する。用語「近位端」は、デバイス1の投薬端から遠くに位置する、もしくは最も遠くに配置予定である、デバイス1またはその構成要素の端部を意味する。遠位端1aおよび近位端1bは、軸の方向に互いに間隔を置いて配置される。軸は、デバイス1の長手方向軸または回転軸34とすることができる。
【0058】
薬物送達デバイス1は、カートリッジ保持部材2を含む。カートリッジ保持部材2は、カートリッジホルダ5を含む。カートリッジ保持部材2は、カートリッジ6を含む。カートリッジ6は、薬物、好ましくは複数用量の薬物を含む。カートリッジ6は、カートリッジホルダ5の中に保持される。カートリッジホルダ5は、カートリッジ6の位置を機械的に安定させる。カートリッジホルダ5は、たとえばねじ係合、溶接またはスナップ嵌めによって、ハウジング9に連結可能である。カートリッジホルダ5およびハウジング9は、互いに解放可能にまたは解放不能に連結することができる。
【0059】
ニードルアセンブリ(明示せず)は、たとえばねじ山8によってカートリッジホルダ5の遠位端に配置することができる。たとえばデバイス1が使用されていないとき、デバイス1、特にカートリッジホルダ5またはカートリッジ6を環境の影響から保護するために、キャップ3を薬物送達デバイス1に解放可能に固定することができる。カートリッジ6の中に、栓7が摺動可能に保持される。栓7は、カートリッジ6を近位で封止する。カートリッジ6に対する栓7の遠位方向における動きによって、薬物がカートリッジ6から投薬される。
【0060】
薬物送達デバイス1は、ペン型デバイス、特にペン型注射器とすることができる。デバイス1は再利用可能なデバイスとすることができ、これは、特にリセット動作中に、カートリッジ6を交換カートリッジに交換し、その交換カートリッジから複数用量を投薬することが可能であることを意味する。あるいは、デバイス1は使い捨てデバイス1とすることができ、使い捨てデバイスとは、カートリッジ6がカートリッジホルダ5に非解放可能に連結されることを意味する。
【0061】
投薬機構4は、用量ダイヤルグリップ12を含む。薬物の用量を設定するために、使用者は用量ダイヤルグリップ12を回転させるが、それについては後で詳しく説明する。
【0062】
図3図7dは、薬物送達デバイス1の部材を概略的に示している。投薬機構4は、ねじ部材23、ナット部材22および内側ハウジングスリーブ10を含む(図3参照)。
【0063】
内側ハウジングスリーブ10は、ハウジング9のインサートを含む。内側ハウジングスリーブ10は、ハウジング9との機械的協働によって、ハウジング9に対する軸方向運動に対して固定される。内側ハウジングスリーブ10は、たとえばスプライン連結によるハウジング9との機械的協働によって、ハウジング9に対する回転運動に対して固定される。あるいは、内側ハウジングスリーブ10は、少なくとも用量を設定するために、ハウジング9に対して回転可能にすることができる。特に、用量設定動作中にねじ部材23がハウジング9に対して回転可能であるとき、内側ハウジングスリーブ10は、用量設定動作中、ハウジング9に対して回転できないように適用することが可能であり、逆もまた同様である。
【0064】
ナット部材22は、半分のスリーブのように成形される。ナット部材22は、部分的なナットまたは半分のナットを含むことができる(図3および図5参照)。ナット部材22は、内側ハウジングスリーブ10の軸方向寸法より小さい軸方向寸法を備える。ナット部材22は、内側ハウジングスリーブ10の中に配置される。ナット部材22は、少なくとも部分的にねじ部材23周りに配置される。ナット部材22は半分のナットであるため、ねじ部材23に半径方向から組み付けられる。あるいは、ナット部材22は、軸方向の近位方向に組み付けることができる。
【0065】
ナット部材22は、内側ハウジングスリーブ10との機械的協働によって、内側ハウジングスリーブ10に対する回転軸34周りの回転に対して固定される。好ましくは、ナット部材22は、内側ハウジングスリーブ10にスプライン連結される。このために、内側ハウジングスリーブ10は、複数の第1のスプライン部材40、たとえば溝を含む(図3参照)。それぞれの溝40は、内側ハウジングスリーブ10の内面に沿って延びる。ナット部材22は、複数の第2のスプライン部材24、たとえばラグまたは突起を含む(図5参照)。それぞれの突起24は、ナット部材22の外面に配置される。突起24は、ナット部材22から半径方向外側の方向に突出する。突起24は、ナット部材22に沿って延びる。突起24は、第1の部材28および第2の部材29を含む(図6aおよび6b参照)。あるいは、内側ハウジングスリーブ10が突起を含み、ナット部材22が溝を含むこともできる(明示せず)。ナット部材22と内側ハウジングスリーブ10の間のスプライン連結は、解放することが可能である。こうして、ナット部材22は、ある特定の状況下で、第1のスプライン部材40に対して、したがって内側ハウジングスリーブ10に対して回転軸34から外れた回転が可能であるが、それについては後で詳しく説明する。
【0066】
ナット部材22およびねじ部材23は、用量設定動作中、互いに対して回転軸34周りで回転可能である。ナット部材22は、第1および第2のスプライン部材24、40の機械的協働によって、内側ハウジングスリーブ10に対して軸方向に可動である。
【0067】
ねじ部材23は、内側ハウジングスリーブ10の中に配置される。ねじ部材23は、少なくとも部分的にナット部材22の中に配置される。ねじ部材23は、スリーブ状に形成することができる。ねじ部材23は、その遠位端に、栓7をハウジング9に対して遠位方向に駆動するための軸(明示せず)を含むことができる。あるいは、別個の部材が栓を押すこともできる。特にアセンブリは、ピストンロッド(図示せず)を含むことができ、ピストンロッドは、ねじ部材23にスプライン連結され、ハウジング9に対するねじ山が付けられる。アセンブリは、ねじ部材23が回転するとピストンロッドが前進し、それによって栓を遠位方向に駆動するように構成することができる。
【0068】
ねじ部材23は、ハウジング9に対して回転可能にすることができる。あるいは、たとえばハウジング9とのスプライン連結によって、ねじ部材23のハウジング9に対する回転を妨げることができる。
【0069】
投薬機構4は、使用者がカートリッジ6内の薬物の残量を超える薬物の用量を設定することを防止する、最終用量停止機構をさらに含む。最終用量停止機構は、停止機能16を含む(図4参照)。停止機能16は、ねじ部材23によって提供される。停止機能16は、ねじ部材23の近位端部に配置される。停止機能16は、縁部または突起とすることができる。停止機能16は、ねじ部材23から半径方向に突出することができる。最終用量停止機構は、相互作用機能18をさらに含む。相互作用機能18は、ナット部材22によって提供される(図7c参照)。相互作用機能18は、ナット部材22から半径方向に突出する縁部または突起を含むことができる。
【0070】
停止機能16および相互作用機能18は、ナット部材22がねじ部材23に対する終了位置または近位位置にあるとき、ナット部材22を軸方向に変位させて開始位置から離すナット部材22とねじ部材23のさらなる相対回転を妨げるように、互いに機械的に協働するように構成される。したがって、停止機能16と相互作用機能18の機械的協働によって、ねじ部材23に対するナット部材22の最終の終了位置が決まる。ねじ部材23上でのナット部材22の軸方向行程の長さは、デバイス1から投薬可能な薬物の用量の最大数に対応する。
【0071】
ナット部材22が終了位置に達すると、停止機能16と相互作用機能18の機械的協働によって回転当接部が生み出され、ねじ部材23を内側ハウジングスリーブ10に連結する。それに応じて、終了位置では、ナット部材22の近位方向における軸方向運動をもたらす、ねじ部材23と内側ハウジングスリーブ10の間の相対回転はもはや不可能になる。しかしながら、たとえば用量補正動作のために、ナット部材22が遠位方向に移動して開始位置に向かって戻れるようにすることができる。
【0072】
ねじ部材23は、螺旋状のねじ山33を含む(図3および4参照)。ねじ山33は、ねじ部材23の外面に配置される。代替的設計では、ねじ山33は、ねじ部材23の内面に配置することができる。この場合、ねじ部材23は、内側ハウジングスリーブがねじ部材23の内側に配置されるように配置することができる。
【0073】
ねじ山33は、2つの連続した部分、すなわち第1の部分23aおよび第2の部分23bを含む。あるいは、ねじ山33は、3つまたはそれ以上の連続した部分を含むことができる(明示せず)。連続した部分の各々の間に遷移領域を配置することができ、遷移領域はそれぞれの部分よりも著しく小さい。
【0074】
第1の部分23aは、ねじ部材23の遠位部分に配置される。第2の部分23bは、第1の部分23aより近位に配置される。第1の部分23aは、第2の部分23bより大きい軸方向寸法を有する。ねじ山33は可変リードを有する。第1の部分23aのリードは、第2の部分23bのリードより小さい。第1の部分23aは低速のねじ山であり、第2の部分23bは高速のねじ山である。低速のねじ山と高速のねじ山のリード間の比率は、たとえば1:1.5である。第1の部分23aは一条ねじであり、第2の部分23bは二条ねじである。
【0075】
ナット部材22は、1つのインターフェース機能26を介して、ねじ部材23と、特にねじ山33と機械的に協働する(図5参照)。インターフェース機能26は、ナット部材22の内面に配置される。インターフェース機能26は、ナット部材22の外面に沿って周方向に延びる。インターフェース機能26は、ねじ山の部分的なターンを含む。この部分的なターンのリードは、ねじ部材23の高速のねじ山の形状に等しく、すなわち、第2の部分23bのリードに等しい。インターフェース機能26の特定の形状、およびねじ部材23のねじ山の形状における増大させたクリアランスによって、ナット部材22が異なる部分23a、23bと干渉せずに噛み合うことが可能になる。
【0076】
これまでに言及したように、ナット部材22がねじ部材23に対する終了位置に向かって移動するとき、内側ハウジングスリーブ10とナット部材22の間のスプライン係合、およびインターフェース機能26の部分23a、23bとの機械的協働によって、ナット部材22の揺動運動、すなわち回転軸34から外れた回転運動が可能になる。このために、突起24は、丸みのあるまたは角度の付いた外形、特にナット部材22がねじ部材23と係合されているとき、回転軸34に対して一部のみが平行になる外形を備える。
【0077】
ナット部材22が第1の部分23aと係合されるとき、突起24の第2の部材29は、内側ハウジングスリーブ10から解放される(図6a参照)。ナット部材22が第1の部分23aと係合されるとき、第2の部材29は、回転軸34に平行な軸42に対して傾く。それに応じて、ナット部材22は、第1の部分23aと係合されるとき、内側ハウジングスリーブ10に対して反時計回りに回転軸34に垂直な軸周りで回転される。したがって、ナット部材22が第1の部分23aと係合されるとき、ナット部材22は、回転軸34に垂直な軸43に対して第1の位置44に位置するようになる(図7a参照)。換言すれば、ナット部材22は、回転軸34に垂直な軸43と第1の角度を挟む。特にナット部材22は、反時計回りに回転されて回転軸34に垂直な軸43から離れる(図7a参照)。図6aに矢印30によって示されるように、ナット部材22が第1の部分23aと係合されるとき、見掛けのリードは小さくなる。
【0078】
ナット部材22が第2の部分23bと係合されるようになると、突起24の近位部分29は軸42に対して平行になる(図6b参照)。それに応じて、ナット部材22は、ナット部材22が第2の部分23bに進むと、内側ハウジングスリーブ10に対して時計回りに回転軸34から外れた回転が可能になる。したがって、ナット部材22が第2の部分23bと係合されるとき、ナット部材22は、回転軸34に垂直な軸43に対して第2の位置45に位置するようになる(図7c参照)。換言すれば、ナット部材22は、回転軸34に垂直な軸43と第2の角度を挟む。特に第1の部分23aから第2の部分23bへの遷移の間、ナット部材22は、時計回りに回転されて回転軸34に垂直な軸43から離れる。ナット部材22が、高速のねじ山のリードに適応するように第1の部分23aから第2の部分23bへ進むとき、ナット部材22は、第1の位置から第2の位置への傾斜または揺動運動を行う(図7bの矢印46参照)。図6bに矢印31によって示されるように、ナット部材22が高速のねじ山と係合されるとき、ナット部材22の半ターンが完全な高速のねじ山のリードを含むようになる。
【0079】
以下では、デバイス1の動作について詳しく説明する。
【0080】
デバイス1を組み立てた後、ナット部材22は、ねじ部材23に対して遠位または開始位置に位置する(明示せず)。開始位置において、ナット部材22は、前述のように第1の部分23aと機械的に協働する。したがって、図7aでは、インターフェース機能26は、ねじ山33の第1の部分23aの巻きと係合されている。インターフェース機能26は、遠位面36および近位面37を含む(図5参照)。面36、37は、ねじ山33の巻きの対応する遠位および近位の壁38、39と機械的に協働する。ねじ山33の第1の部分23aと係合しているとき、ナット部材22、特にインターフェース機能26は、第1の部分23aの巻きと3点で接触する。これは、それぞれの面36、37が、3つの別個の接点27を介して巻きの対応する壁38、39と機械的に協働することを意味する(図5参照)。別個の接点27を介した接触が生じるのは、インターフェース機能26上のねじ山が、第1の部分23aにおけるねじ山33と一致していないためである。一致していないねじ山との回転も可能にするために、クリアランスを大きくする。
【0081】
用量を設定するために、用量ダイヤルグリップ12が回転される。用量ダイヤルグリップ12の回転は、用量ダイヤルグリップ12との機械的協働によってねじ部材23の回転に変えられる(明示せず)。内側ハウジングスリーブ10の回転は、ハウジング9とのスプライン連結によって妨げられる。ねじ部材23が回転したとき、ナット部材22は、ナット部材22のねじ山33との機械的協働によって、ねじ部材23に沿って近位方向に、遠位位置から、すなわち、デバイス1の組み立てが完了した後、ナット部材22がねじ部材23に対して配置された位置から、これまでに言及したねじ部材23に対する近位端位置まで軸方向に変位される。
【0082】
あるいは、用量を設定するために、用量ダイヤルグリップ12が回転される。内側ハウジングスリーブ10は、用量ダイヤルグリップ12との機械的協働によってねじ部材23に対して回転される(明示せず)。この場合、ねじ部材23の回転は、ハウジング9との機械的協働によって妨げられる。ナット部材22は、スプライン連結によって内側ハウジングスリーブ10と一緒に回転する。内側ハウジングスリーブ10およびナット部材22が回転したとき、ナット部材22は、ナット部材22のねじ山33との機械的協働によって、ねじ部材23に沿って近位方向にねじ部材23に対する開始位置から終了位置まで軸方向に変位される。
【0083】
各実施形態では、用量設定動作中、ナット部材22およびねじ部材23は互いに対して回転する。
【0084】
一実施形態によれば、用量送達動作中、ナット部材22のねじ部材23に対する軸方向運動を妨げるように、ねじ部材23、内側ハウジングスリーブ10およびナット部材22の互いに対する回転、ならびにハウジング9に対する回転が妨げられる。むしろ、ねじ部材23および/または関連付けられた軸が遠位に動き、それによって栓7をハウジング9に対して遠位方向に押し進めることができる。ピストンロッドがねじ部材23にスプライン連結され、ハウジング9に対するねじ山を付けられた代替的設計では、ピストンロッドは、用量送達動作中、遠位に動かされ、それによって栓7をハウジング9に対して遠位方向に押し進める。
【0085】
あるいは、用量を送達するために、ねじ部材23および内側ハウジングスリーブ10は、互いの機械的協働によってハウジング9に対して一緒に回転する。ねじ部材23および内側ハウジングスリーブ10が一緒に同じ速度で回転するため、ナット部材22の軸方向運動は発生しない。むしろ、ねじ部材23が遠位に動き、それによって栓7をハウジング9に対して遠位方向に押し進めることができる。代替的設計では、ねじ部材23がピストンロッドを遠位に動かし、それによって栓7をハウジング9に対して遠位方向に押し進めることができる。
【0086】
次の用量設定動作中にナット部材22が終了位置に向かって動くと、ナット部材22は、ねじ山33の異なる部分23a、23bと機械的に協働する。特に次の用量設定動作中、ナット部材22は終了位置に向かって近位に動き(図7aの矢印32参照)、それによって第1の部分23aと第2の部分23bの間の遷移領域23cに入る。第1の部分23aから第2の部分23bへ進む間、ナット部材22は時計回りに回転し、図7bに示すように増大する第2の部分23bのリードに適応する。
【0087】
ナット部材22が第2の部分23bと係合すると、ナット部材22はその揺動運動を完了し、第2の位置に配置される(図7c参照)。第2の部分23bと係合しているとき、遠位および近位の面36、37と第2の部分23bの巻きの対応する壁38、39との間の接触面積は、ナット部材22が第1の部分23aと係合しているときより大きい。換言すれば、ナット部材22が第2の部分23bに遷移すると、点接触は完全な面接触になり、最終用量止め具が係合するときの接触応力を最小限に抑える。
【0088】
近位方向にさらに動いたとき、ナット部材22はねじ部材23に対する終了位置に達し、それを図7dに示す。終了位置では、ナット部材22の相互作用機能18は、前述のようにねじ部材の停止機能16と機械的に協働する。したがって、ナット部材22の近位方向におけるさらなる動きが妨げられる。カートリッジ6から完全な最終用量が投薬され、たとえば、カートリッジ6を交換カートリッジに交換することができる。
【0089】
他の実装形態も以下の特許請求の範囲内である。異なる実装形態の要素を組み合わせて、本明細書に具体的に記載されていない実装形態を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 薬物送達デバイス
1a 遠位端
1b 近位端
2 カートリッジ保持部材
3 キャップ
4 投薬機構
5 カートリッジホルダ
6 カートリッジ
7 栓
8 ねじ山
9 ハウジング
10 内側ハウジングスリーブ
12 用量ダイヤルグリップ
16 停止機能
18 相互作用機能
22 ナット部材
23 ねじ部材
23a 第1の部分
23b 第2の部分
23c 遷移領域
24 第2のスプライン部材/突起
26 インターフェース機能
27 接点
28 第1の部材
29 第2の部材
30 矢印
31 矢印
32 矢印
33 ねじ山
34 回転軸
36 遠位面
37 近位面
38 遠位壁
39 近位壁
40 第1のスプライン部材/溝
42 軸
43 軸
44 第1の位置
45 第2の位置
46 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6a-6b】
図7a
図7b
図7c
図7d
【国際調査報告】