特表2018-526468(P2018-526468A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-526468量子ドット、これを含む組成物および量子ドットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-526468(P2018-526468A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】量子ドット、これを含む組成物および量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20180817BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20180817BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20180817BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20180817BHJP
   C09K 11/08 20060101ALN20180817BHJP
   C09K 11/70 20060101ALN20180817BHJP
   C09K 11/56 20060101ALN20180817BHJP
   C09K 11/54 20060101ALN20180817BHJP
【FI】
   C08G75/045
   B82Y20/00
   B82Y40/00
   G02B5/20
   C09K11/08 GZNM
   C09K11/70
   C09K11/56
   C09K11/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-560921(P2017-560921)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(85)【翻訳文提出日】2017年11月22日
(86)【国際出願番号】KR2015013266
(87)【国際公開番号】WO2016195188
(87)【国際公開日】20161208
(31)【優先権主張番号】10-2015-0078028
(32)【優先日】2015年6月2日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チンスッ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,オボン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チュン ウ
(72)【発明者】
【氏名】コン,ウィヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョンギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン チョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,オンユ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ヒチェ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スンソ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒュンチュ
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
4J030
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA11
2H148AA18
4H001CA02
4H001CC13
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA30
4H001XA34
4H001XA49
4J030BA03
4J030BA42
4J030BA44
4J030BA47
4J030BB07
4J030BC08
4J030BC37
4J030BG10
(57)【要約】
本発明は、末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーション(passivation)された量子ドットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーション(passivation)された、量子ドット。
【請求項2】
前記オリゴマーまたはポリマーは末端にチオール基を含む多座(multidentate)リガンドである、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記オリゴマーまたはポリマーは量子ドットの表面に3次元(three−dimensional)のネットワークを形成する、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記量子ドットはInP量子ドット;InPコアおよびZnS、ZnSeシェルを含む量子ドット;およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記第1モノマーは、下記の化学式1で表現される化合物である、請求項1に記載の量子ドット:
【化1】
前記化学式1において、
およびXはそれぞれ独立的に炭素、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基、置換または非置換されたC6ないしC30のヘテロアリーレン基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキレン基および置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキレン基から選択され、
ないしLはそれぞれ独立的に単一結合;置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基;置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニレン基;および少なくとも一つのメチレン(−CH−)がスルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、エーテル(−O−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基またはC2ないしC30のアルケニレン基から選択され、
ないしRはそれぞれ独立的に水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
nは0、1または2の整数であり、nが0である場合RないしRのうち少なくとも3つはチオール基であり、nが1または2である場合RないしRのうち少なくとも3つはチオール基である。
【請求項6】
前記第1モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(dipentaerythritol hexakis(3−mercaptopropionate)、DHM)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptoacetate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptoacetate))、トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(tris[2−(3−mercaptopropionyloxy)ethyl]isocyanurate)、トリチオシアヌル酸(trithiocyanuric acid)およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項7】
前記第2モノマーは、下記の化学式2で表現される化合物である、量子ドット:
【化2】
前記化学式2において、
Lはスペーサ基であり、
12は水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
11は単一結合、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基、互いに隣接しない少なくとも一つのメチレン基(−CH−)がエーテル(−O−)、スルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基およびこれらの組み合わせから選択され、
は炭素−炭素不飽和結合を有する作用基、チオール基およびこれらの組み合わせから選択され、
pは0以上の整数であり、qは2以上の整数であり、p+qはLの結合価数を超過しない。
【請求項8】
前記スペーサ基は4つ以上の炭素数を有する置換または非置換されたアルキレン基;2つ以上がモノサイクリック環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたシクロアルキレン基またはヘテロシクロアルキレン基;2つ以上の芳香族環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたアリーレン基またはヘテロアリーレン基;およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項9】
前記第2モノマーとしては、シクロアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−(エチレンジオキシジエタン)ジチオール(2,2’−(ethylenedioxydiethane)dithiol)、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(9,9−bis[4−(2−acryloyloxy ethoxy)pheny]fluorene)、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシプロポキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−(acryloxy polypropoxy]phenyl]propane)、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acryloxyethyl)isocyanurate)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylol propane tri(meth)acrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(ditrimethylol propane tetra(meth)acrylate)、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−((meth)acryloxy ethoxy]phenyl]propane)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(neopentyl glycol di(meth)acrylate)およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項10】
前記オリゴマーまたはポリマーは、パッシベーションされた量子ドット100重量部に対して約80ないし約100重量部の量で存在する、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の量子ドット;
マトリックスポリマーのモノマー;および
溶媒を含む、組成物。
【請求項12】
前記マトリックスポリマーのモノマーはアクリル樹脂、メタクリル樹脂、シリコン樹脂、チオール−エン樹脂およびこれらの組み合わせから選択されるポリマーを提供するモノマーである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記溶媒はトルエン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トリオクチルアミン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記パッシベーションされた量子ドットは組成物全体中、約0.1ないし約20重量%含まれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成された多座(multidentate)オリゴマーを含む溶液を製造し、
前記溶液に量子ドットを混合して前記多座オリゴマーのチオール基を量子ドットの表面に付着させる段階を含む、
パッシベーションされた量子ドットの製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の量子ドットを含む、フィルム。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の量子ドットを含む、素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
量子ドット、これを含む組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(quantum dot)は数ナノサイズの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子から構成されている。
【0003】
量子ドットは大きさが非常に小さいので単位体積当たりの表面積が広くて、量子拘束(quantum confinement)効果などが現れる。したがって、半導体物質の自ら固有の特性とは異なる独特な物理化学的特性を示す。
【0004】
特に、量子ドットの大きさを調節する方法などを通して量子ドットの光電子としての特性を調節でき、ディスプレイ素子または生体発光標識素子などへの応用開発が行われている。
【0005】
一般に、量子ドットをディスプレイ素子などに適用時に量子ドットを分散させることができるマトリックス樹脂にシリコン(silicone)樹脂を使っている。しかし、このようなシリコン樹脂は量子ドットの表面に存在する有機リガンドと相溶性(compatibility)が良くなくて量子ドットの凝集(aggregation)が発生し、この時、量子ドットの表面に存在する有機リガンドの損失が発生し、これによって素子の効率が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一具現例は、量子ドットの表面を効率的にパッシベーション(passivation)して酸素と水分に対する安定性に優れて、熱安定性と光安定性に優れ、フィルム製造時に使用される溶媒やマトリックス樹脂に対する分散性に優れた量子ドットを提供する。
【0007】
他の具現例は、前記量子ドットを含む組成物を提供する。
【0008】
また他の具現例は、前記量子ドットの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一具現例によれば、末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーション(passivation)された量子ドットを提供する。
【0010】
前記オリゴマーまたはポリマーは末端にチオール基を含む多座(multidentate)リガンドでありうる。
【0011】
前記オリゴマーまたはポリマーは量子ドットの表面に3次元(three−dimensional)ネットワークを形成して量子ドットをパッシベーションすることができる。
【0012】
前記量子ドットはInP量子ドット;InPコアおよびZnS、ZnSeまたはこれらの組み合わせを含むシェルを含む量子ドット;およびこれらの組み合わせから選択される。
【0013】
前記第1モノマーは下記の化学式1で表現される。
【0014】
【化1】
【0015】
前記化学式1において、
およびXはそれぞれ独立的に炭素、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基、置換または非置換されたC6ないしC30のヘテロアリーレン基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキレン基および置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキレン基から選択され、
ないしLはそれぞれ独立的に単一結合;置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基;置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニレン基;および少なくとも一つのメチレン(−CH−)がスルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、エーテル(−O−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基およびC2ないしC30のアルケニレン基から選択され、
ないしRはそれぞれ独立的に水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
nは0、1または2の整数であり、nが0である場合RないしRのうち少なくとも3つはチオール基であり、nが1または2の場合RないしRのうち少なくとも3つはチオール基である。
【0016】
前記第1モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(dipentaerythritol hexakis(3−mercaptopropionate)、DHM)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptoacetate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptoacetate))、トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(tris[2−(3−mercaptopropionyloxy)ethyl]isocyanurate)、トリチオシアヌル酸(trithiocyanuric acid)およびこれらの組み合わせから選択される。
【0017】
前記第2モノマーは、下記の化学式2で表現される。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化学式2において、
Lはスペーサ基であり、
12は水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
11は単一結合、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基、互いに隣接しない少なくとも一つのメチレン基(−CH−)がエーテル(−O−)、スルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基およびこれらの組み合わせから選択され、
は炭素−炭素不飽和結合を有する作用基、チオール基およびこれらの組み合わせから選択され、pは0以上の整数であり、qは2以上の整数であり、p+qはLの結合価数を超過しない。
【0020】
前記スペーサ基は4つ以上の炭素数を有する置換または非置換されたアルキレン基;2つ以上のモノサイクリック環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたシクロアルキレン基またはヘテロシクロアルキレン基;2つ以上の芳香族環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたアリーレン基またはヘテロアリーレン基;およびこれらの組み合わせから選択される。
【0021】
前記第2モノマーは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(tricyclodecane dimethanol di(meth)acrylate)などのシクロアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(hexanediol di(meth)acrylate)、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート(1,8−octanediol di(meth)acrylate)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(1,9−nonanediol di(meth)acrylate)、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート(1,10−decanediol di(meth)acrylate)などのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;2,2’−(エチレンジオキシジエタン)ジチオール(2,2’−(ethylenedioxydiethane)dithiol);9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(9,9−bis[4−(2−acryloyloxy ethoxy)pheny]fluorene);2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−(acryloxy polypropoxy]phenyl]propane);ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(dipropylene glycol di(meth)acrylate)などのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acryloxyethyl)isocyanurate);トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylol propane tri(meth)acrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(ditrimethylol propane tetra(meth)acrylate);2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−((meth)acryloxy ethoxy]phenyl]propane);ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(neopentyl glycol di(meth)acrylate)およびこれらの組み合わせから選択されることができる。前記オリゴマーまたはポリマーはパッシベーションされた量子ドット100重量部に対して約80ないし約100重量部の量で存在していてもよい。
【0022】
他の具現例によれば、末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーションされた量子ドット;マトリックスポリマーのモノマーおよび溶媒を含む組成物を提供する。
【0023】
前記第1モノマー、第2モノマーおよび量子ドットは、前記と同様である。
【0024】
前記マトリックスポリマーのモノマーとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、シリコン樹脂、チオール−エン樹脂およびこれらの組み合わせから選択されるポリマーを提供するモノマーでありうる。
【0025】
前記溶媒はトルエン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トリオクチルアミン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0026】
前記パッシベーションされた量子ドットは組成物全体中、約0.1ないし約20重量%含まれる。
【0027】
また他の実施形態によれば、3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成された多座(multidentate)オリゴマーを含む溶液を製造し、前記溶液に量子ドットを混合して前記多座オリゴマーのチオール基を量子ドットの表面に付着させる段階を含む、
パッシベーションされた量子ドットの製造方法を提供する。
【0028】
また他の具現例は、前記パッシベーションされた量子ドットを含むフィルムを提供する。
【0029】
また他の具現例は、前記フィルムを含む素子を提供する。
【発明の効果】
【0030】
前記オリゴマーまたはポリマーでパッシベーションされた量子ドットは、酸素や水分に安定で、熱安定性と光安定性に優れて、フィルム製造時に使用される溶媒やマトリックス樹脂によく分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一具現例によるパッシベーションされた量子ドットを概略的に示した図である。
図2】実施例1によるオリゴマー溶液を溶媒を除去した後、得られたマトリックスのH NMRの測定結果を示した図である。
図3】実施例1の量子ドット溶液を塗布して溶媒を除去した後、得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真である。
図4】実施例2の量子ドット溶液を塗布して溶媒を除去した後、得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真である。
図5】パッシベーションされない赤色の量子ドット溶液から得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真である。
図6】実施例1および実施例2によるパッシベーションされた量子ドットとパッシベーションされない量子ドット(比較例1)を利用して製造されたサンプルの120度の温度で空気条件で時間に応じたPL強度を測定した結果を示した図である。
図7】実施例1のパッシベーションされた量子ドットのUV露出環境における時間に応じたPL強度を測定した結果を示した図である。
図8】実施例1のパッシベーションされない量子ドット(比較例1)のUV露出環境における時間に応じたPL強度を測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な相異な形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0033】
図面において、様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。
【0034】
層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとするとき、これは、他の部分の「直上に」ある場合だけではなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上に」あるとするときには、中間に他の部分がないことを意味する。
【0035】
以下、別途の定義がない限り、「置換」とは、C1ないしC30のアルキル基、C2ないしC30のアルキニル基、C6ないしC30のアリール基、C7ないしC30のアルキルアリール基、C1ないしC30のアルコキシ基、C1ないしC30のヘテロアルキル基、C3ないしC30のヘテロアルキルアリール基、C3ないしC30のシクロアルキル基、C3ないしC15のシクロアルケニル基、C6ないしC30のシクロアルキニル基、C2ないしC30のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(−F、−Cl、−Br、または−I)、ヒドロキシ基(−OH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、アミノ基(NRR’、ここで、RとR’は互いに独立的に水素またはC1ないしC6のアルキル基である)、アジド基(−N)、アミジノ基(−C(=NH)NH)、ヒドラジノ基(−NHNH)、ヒドラゾノ基(=N(NH)、アルデヒド基(−C(=O)H)、カルバモイル基、チオール基(−SH)、エステル基(−C(=O)OR、ここで、RはC1ないしC6のアルキル基またはC6ないしC12のアリール基である)、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基(−SOH)またはその塩(−SOM、ここで、Mは有機または無機陽イオンである)、燐酸基(−PO)またはその塩(−POMHまたは−PO、ここで、Mは有機または無機陽イオンである)、アクリロイルオキシ基(acryloyloxy group)、メタクリロイルオキシ基(methacryloyloxy group)およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0036】
また、以下で別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、環(ring)内においてN、O、S、Si、P、C(=0)、S(=0)およびS(=0)から選択されたヘテロ元素またはヘテロ元素−含有作用基を1つないし4つ含むことを意味する。環の全体メンバーは3ないし10でありうる。
【0037】
本明細書において、アルカンはC6ないしC30のアルカンを意味し、アルキレンはC6ないしC30のアルキレンを意味する。
【0038】
本明細書において、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、合金、ブレンド、相互置換体、反応生成物などを意味する。
【0039】
一具現例によれば、末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーションされた量子ドットを提供する。
【0040】
以下、図1を参照して一具現例による量子ドットについて詳しく説明する。
【0041】
図1は、一具現例によるパッシベーションされた量子ドットを概略的に示した図である。
【0042】
図1を参照すれば、一具現例によるパッシベーションされた量子ドット1は、量子ドット(bare QD)10の表面を囲むオリゴマーまたはポリマーを含む。前記オリゴマーまたはポリマーは、量子ドットのリガンドを置換して量子ドットの表面に付着するキレーティングドメイン(chelating domain)12とスペーサ基14を含む。前記オリゴマーまたはポリマーの末端に存在するチオール基が、量子ドットの表面に結合するアンカー基(anchor group)の役割をする。
【0043】
前記オリゴマーまたはポリマーは、末端にチオール基を含む多座(multidentate)リガンドでありうる。前記チオール基は、量子ドット10の表面と結合して量子ドット10をパッシベーションしながら多座リガンドも他の多座リガンドと互いに結合して3次元(three−dimensional)のネットワークを形成することによって、量子ドット10を安定化することができる。
【0044】
また、前記オリゴマーまたはポリマーは、2つ以上の量子ドットをパッシベーションするために使われることもある。スペーサ基によって量子ドット間に一定の距離が維持されるので、量子ドットの凝集現象は発生しないため、分散性を向上させることができる。
【0045】
前記量子ドット10は、赤色、緑色、黄色、青色などを発光する量子ドットでありうる。前記前記量子ドットとしては、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、IV族元素、IV族化合物またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
前記II−VI族化合物としては、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgSおよびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnSおよびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。前記III−V族化合物としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPおよびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。前記IV−VI族化合物としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される。前記IV族元素としては、Si、Geおよびこれらの混合物からなる群より選択される。前記IV族化合物としては、SiC、SiGeおよびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物からなる群より選択される。
【0047】
一具現例で、前記量子ドット10は、InP量子ドット;InPコアおよびZnS、ZnSeシェルを含む量子ドットおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0048】
前記オリゴマーまたはポリマーは末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて製造される。
【0049】
前記第1モノマーは、下記の化学式1で表現される。
【0050】
【化3】
【0051】
前記化学式1において、
およびXは、それぞれ独立的に炭素、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基(例えば、置換または非置換されたフェニレン基)、置換または非置換されたC6ないしC30のヘテロアリーレン基(例えば、イソシアヌレート基(isocyanurate group)、トリアジン基(triazine group)など)、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキレン基および置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキレン基から選択され、
ないしLは、それぞれ独立的に単一結合;置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基;置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニレン基;および互いに隣接しない少なくとも一つのメチレン基(−CH−)がスルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、エーテル(−O−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基またはC2ないしC30のアルケニレン基から選択され、
ないしRは、それぞれ独立的に水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
nは0、1または2の整数であり、nが0である場合、RないしRのうち少なくとも3つはチオール基であり、nが1または2である場合、RないしRのうち少なくとも3つはチオール基である。
【0052】
前記第1モノマーは、その構造によりチオール基を3ないし10個含んでもよい。前記第1モノマーの具体的な例としては、下記の化学式1aのジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(dipentaerythritol hexakis(3−mercaptopropionate)、DHM)、下記の化学式1bのペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptopropionate))、下記の化学式1cのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、下記の化学式1dのペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptoacetate))、下記の化学式1eのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptoacetate))、下記の化学式1fのトリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(tris[2−(3−mercaptopropionyloxy)ethyl]isocyanurate)、下記の化学式1gのトリチオシアヌル酸(trithiocyanuric acid)およびこれらの組み合わせから選択される。
【0053】
【化4】
【0054】
前記第2モノマーは、下記の化学式2で表現される。
【0055】
【化5】
【0056】
前記化学式2において、
Lはスペーサ基であり、
12は水素、チオール基、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキル基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロアリール基、置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基、置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基および置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基から選択され、
11は単一結合、置換または非置換されたC1ないしC30のアルキレン基、互いに隣接しない少なくとも一つのメチレン基(−CH−)がエーテル(−O−)、スルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択される置換基で置換されたC1ないしC30のアルキレン基、置換または非置換されたC6ないしC30のアリーレン基およびこれらの組み合わせから選択され、
は炭素−炭素不飽和結合を有する作用基、チオール基およびこれらの組み合わせから選択され、pは2以上の整数であり、qは0以上の整数であり、p+qはLの結合価数を超過しない。
【0057】
前記スペーサ基は4つ以上、例えば6または8つ以上の炭素数を有する置換または非置換されたアルキレン基;2つ以上がモノサイクリック環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたシクロアルキレン基またはヘテロシクロアルキレン基;2つ以上の芳香族環が一つ以上のリンカーによって連結されたり融合された置換または非置換されたアリーレン基またはヘテロアリーレン基;およびこれらの組み合わせから選択される。
【0058】
前記炭素−炭素不飽和結合を有する作用基は置換または非置換されたC2ないしC30のアルケニル基、置換または非置換されたC2ないしC30のアルキニル基、アクリロイルオキシ基(acryloyloxy group)、メタクリロイルオキシ基(methacryloyloxy group)、環内に炭素−炭素不飽和結合を有する置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基および環内に炭素−炭素不飽和結合を有する置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基から選択される。
【0059】
前記アルケニル基またはアルキニル基のより具体的な例としては、ビニル基、アリル基、エチニル基(ethynyl group)などがあり、環内に炭素−炭素不飽和結合を有する置換または非置換されたC3ないしC30のシクロアルキル基または環内に炭素−炭素不飽和結合を有する置換または非置換されたC3ないしC30のヘテロシクロアルキル基の具体的な例としては、ノルボルネン(norbornene)基、マレイミド基、ナジミド(nadimide)基、テトラヒドロフタルイミド基およびこれらの組み合わせから選択される。
【0060】
前記スペーサ基としてアルキレン基の互いに隣接しないメチレン基はエーテル(−O−)、スルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択される置換基で置換(replace)されることができる。
【0061】
前記スペーサ基に含まれるリンカーは単一結合またはC1ないしC10の置換または非置換されたアルキレン基でありうる。ここで、前記アルキレン基の互いに隣接しないメチレン基はエーテル(−O−)、スルホニル(−S(=O)−)、カルボニル(−C(=O)−)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−S(=O)−)、エステル(−C(=O)O−)、アミド(−C(=O)NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)、イミン(−NR−)(ここで、Rは水素またはC1ないしC10のアルキル基である)およびこれらの組み合わせから選択される置換基で置換される。
【0062】
前記第1モノマーは、その構造により炭素−炭素不飽和結合を有する作用基、チオール基およびこれらの組み合わせから選択される作用基Yを3ないし10個含んでもよい。前記第2モノマーの具体的な例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(tricyclodecane dimethanol di(meth)acrylate、A−DCP)などのようなシクロアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(hexanediol di(meth)acrylate)、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート(1,8−octanediol di(meth)acrylate)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(1,9−nonanediol di(meth)acrylate)、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート(1,10−decanediol di(meth)acrylate)などのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;2,2’−(エチレンジオキシジエタン)ジチオール(2,2’−(ethylenedioxydiethane)dithiol);9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(9,9−bis[4−(2−acryloyloxy ethoxy)pheny]fluorene);2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシプロポキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−(acryloxy polypropoxy]phenyl]propane);ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(dipropylene glycol di(meth)acrylate)などのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acryloxyethyl)isocyanurate);トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(trimethylol propane tri(meth)acrylate)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(ditrimethylol propane tetra(meth)acrylate);2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ]フェニル]プロパン(2,2−bis[4−((meth)acryloxy ethoxy]phenyl]propane);ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(neopentyl glycol di(meth)acrylate)およびこれらの組み合わせから選択される。
【0063】
前記オリゴマーまたはポリマーはパッシベーションされた量子ドット100重量部に対して約80ないし約100重量部の量で存在していてもよい。前記範囲で量子ドットを安定的にパッシベーションすることができる。
【0064】
他の具現例によれば、末端に3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成されたオリゴマーまたはポリマーでパッシベーションされた量子ドット;マトリックスポリマーのモノマーおよび溶媒を含む組成物を提供する。
【0065】
前記1モノマー、第2モノマーおよび量子ドットは、前記と同様である。
【0066】
前記マトリックスポリマーのモノマーはアクリル樹脂、メタクリル樹脂、シリコン樹脂およびチオール−エン樹脂から選択されるポリマーを提供するモノマーでありうる。
【0067】
前記溶媒はトルエン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トリオクチルアミン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0068】
前記パッシベーションされた量子ドットは組成物全体中、約0.1ないし約20重量%含まれる。前記範囲で組成物が塗布に適した粘度を有することができる。
【0069】
また他の実施形態によれば、3つ以上のチオール基(−SH)を有する第1モノマーおよび末端に前記チオール基と反応できる2つ以上の作用基(functional group)と前記2つ以上の作用基の間に位置するスペーサ基(spacer group)を含む第2モノマーを反応させて形成された多座(multidentate)オリゴマーを含む溶液を製造し、
前記溶液に量子ドットを混合した後、前記多座オリゴマーのチオール基を量子ドットの表面に付着させる段階を含む、パッシベーションされた量子ドットの製造方法を提供する。
【0070】
前記第1モノマーと第2モノマーの反応は触媒を使って行ってもよい。量子ドットが存在しない状態で触媒を使うので、量子ドットの量子効率には影響を与えない。また、前記反応は量子ドット溶液に主に使用される溶媒を使うので、量子ドットの量子効率を減少させない。
【0071】
前記多座オリゴマーは末端に存在する作用基が互いに反応してポリマーを形成してもよい。
【0072】
また、オリゴマーまたはポリマーでパッシベーションされた量子ドットの精製なしに直ちに基材に塗布するための量子ドット組成物に用いることができるので、最終生成物の収率を向上させることができる。
【0073】
前記パッシベーションされた量子ドットは、表面が安定的にオリゴマーまたはポリマーに囲まれて(encapsulate)、空気中の水分や酸素に露出した時に劣化するのを防止することができる。これによって、高い水準の量子効率をあらわすことができ、耐酸化性と耐化学性も改善することができる。
【0074】
前記組成物は知られた方法で基材に塗布されてフィルムに製造されることができる。前記塗布はスクリーン印刷、インプリンティング(imprinting)、スピンコーティング、ディッピング、インクジェッティング、ロールコーティング、フローコーティング(flow coating)、ドロップキャスティング、スプレーコーティング、ロールプリンティングなどの方法で行うことができ、これに限定されるものではない。
【0075】
前記量子ドットは多様な分野の素子に適用され、例えば、発光ダイオード(LED)、太陽電池、バイオセンサー(biosensor)、イメージセンサー(image sensor)、バックライトユニット、照明などに有用に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載された実施例は発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはいけない。
【0077】
実施例1
前記化学式1aのジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)1.6g(Mw=785.05、2.04mmol、Sigma−Aldrich)とトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(tricyclodecane dimethanol diacrylate、A−DCP)(Sigma−Aldrich)933mg(Mw=304、3.26mmol)をトルエン12mLに攪拌しながら溶かした。トリエチルアミン(EtN)0.1mLを添加した後、常温で4時間攪拌してオリゴマー溶液を製造した。
【0078】
J.Nanopart.Res.2013、1750に紹介された合成法によりInPコア/ZnSシェルの赤色の量子ドットを合成し、溶媒としてクロロホルム(大井化金(株)製)を精製なしに使った。赤色の量子ドット(ca.16uM、30mL)溶液を前記オリゴマー溶液に添加した後、3時間常温(24度)で攪拌して量子ドット溶液を得た。この量子ドット溶液は精製なしに直ちに量子ドット組成物として使用される。
【0079】
実施例2
前記化学式1aのジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)(Mw=783.05、986mg、0.92mmol)と2,2’−(エチレンジオキシジエタン)ジチオール(Mw=182.3、1.55g、6.44mmol)を250mL三角フラスコに添加する。ジメチルスルホキシド(DMSO)20mL、テトラヒドロフラン(THF)20mLおよび脱イオン水(DI water)55mLを三角フラスコに添加後、反応物の温度を35度に維持したまま、24時間強く攪拌した。得られた懸濁(suspension)混合液にエチルアセテート(EtOAc)150mLを利用して薄めた後、分別漏斗(separatory funnel)に移した後、層分離した。水層を除去した後、有機層を脱イオン水200mLを利用して洗った後、層分離した。この過程を5回繰り返した後、塩水(brine)100mLでもう一度有機層を洗った後、層分離した有機層をMgSOで乾燥した。真空フィルターしてMgSOを除去した後、有機層を減圧蒸留して濃縮した。分離した化学式1aと2,2’−(エチレンジオキシジエタン)ジチオールの反応物マトリックスをTHF10mLに溶かしてオリゴマー溶液を得た後、100mL丸底フラスコに移した。
【0080】
J.Nanopart.Res.2013、1750に紹介された合成法によりInPコア/ZnSシェルの赤色の量子ドットを合成し、溶媒としてクロロホルム(大井化金(株)製)を精製なしに使った。赤色の量子ドット(ca.16uM)溶液10mLを前記丸底フラスコに添加した後、4時間常温(24度)で強く攪拌して量子ドット溶液を得た。この量子ドット溶液は精製なしに直ちに量子ドット組成物として使用される。
【0081】
量子ドットのパッシベーション確認
実施例1によるオリゴマー溶液を溶媒を除去した後、得られたマトリックスのH NMRを図2に示す。
【0082】
図2は、実施例1によるオリゴマー溶液で溶媒を除去した後、得られたマトリックスのH NMRの測定結果を示した図である。図2から化学式1aのジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸塩)とA−DCP(Sigma−Aldrich)が反応したオリゴマーが得られることが分かる。
【0083】
前記実施例1と実施例2の量子ドット溶液を利用して、それぞれ塗布して溶媒を除去した後、得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真をそれぞれ図3および図4に示す。比較のため、パッシベーションされない赤色の量子ドット溶液から得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真を図5に示す。図3および図4は、それぞれ実施例1と実施例2の量子ドット溶液をそれぞれ塗布して溶媒を除去した後、得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真であり、図5は、パッシベーションされない赤色の量子ドット溶液から得られたフィルムの透過電子顕微鏡写真である。図3および図4のフィルムには量子ドットが互いに一定の間隔をおいて均一に分布するが、図5のフィルムには量子ドットが互いに凝集して存在することを確認できる。
【0084】
パッシベーションされた量子ドットの熱安定性
実施例1および実施例2で得られた量子ドット溶液それぞれ500μLとクロロホルム3mLを混合して薄めた。薄められた量子ドット溶液2gにA−DCP(Sigma−Aldrich)20gを混合した後、10分間攪拌して量子ドット組成物を製造した。溶媒を蒸発させた後、得られたサンプルの120度の温度で空気条件で時間に応じたPL強度を測定して図6に示す。サンプルは、図6に示された時間間隔で得た。図6は、実施例1および実施例2で得られたパッシベーションされた量子ドットおよびパッシベーションされない量子ドット(比較例1)の時間に応じたPL強度を示した図である。図6を参考にすれば、実施例1と実施例2による時間に応じた量子ドットのPL強度の偏差が少ないことに比べて、比較例1は、3時間後に急激にPL強度が減少し、29時間後にはほとんどPL強度が測定されないことが分かる。これから実施例1と実施例2の量子ドットがパッシベーションされない量子ドット(比較例)に比べて熱安定性が優れていることが分かる。
【0085】
パッシベーションされた量子ドットの光安定性
実施例1および実施例2で得られた量子ドット溶液それぞれ500μLとA−DCP(Sigma−Aldrich)20gを混合した後、10分間攪拌して量子ドット組成物を製造した。評価時間別にサンプルを採取し、UV装備(14.7W Lamp、Wavelength280ないし360nm peaked at 306nm)に投入した後、PLを測定した。パッシベーションされない量子ドット溶液(比較例1)も同様の方法でサンプルを得て、PLを測定した。実施例1と比較例のPL強度の測定結果を、それぞれ図7および図8に示した。図7および図8は、それぞれ実施例1のパッシベーションされた量子ドットとパッシベーションされない量子ドット(比較例1)のUV露出環境に時間に応じたPL強度を測定した結果を示した図である。図7および図8を見れば、実施例1の量子ドットのPL強度は時間に応じた変化が少ないが、比較例の量子ドットのPL強度は1日経過後、PL強度が顕著に減少した。これから実施例1の量子ドットの光安定性がパッシベーションされない量子ドット(比較例1)に比べて優れていることが分かる。
【0086】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するということができる。
【符号の説明】
【0087】
1 パッシベーションされた量子ドット
10 量子ドット
12 キレーティングドメイン
14 スペーサ基
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】