特表2019-516734(P2019-516734A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-516734(P2019-516734A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】疼痛の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20190530BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20190530BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190530BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20190530BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20190530BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20190530BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P29/02
   A61P43/00 111
   A61K47/54
   A61K47/28
   A61K31/5025
   A61P43/00 121
   A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2018-560846(P2018-560846)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月18日
(86)【国際出願番号】AU2017050469
(87)【国際公開番号】WO2017197463
(87)【国際公開日】20171123
(31)【優先権主張番号】2016901912
(32)【優先日】2016年5月20日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】バネット、ナイジェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC41
4C076DD70N
4C076EE59N
4C076FF34
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA11
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZC421
4C084ZC422
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA08
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、化合物およびそれらの使用に関する。特に、エンドソームプロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)シグナル伝達を阻害する化合物および疼痛の治療でのそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法であって、プロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)のエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、活性型受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が、ダイナミン、クラスリンまたはβ−アレスチンを阻害する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、エンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、式(I):
【化1】
(式中、
Aは、原形質膜への化合物の挿入を促進させる脂質アンカー;
Lは、長さ1nm〜50nmのリンカー部分;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤;
脂質アンカーは、4℃において非イオン性界面活性剤に不溶の脂質膜に分配する)の三成分化合物またはその医薬上許容し得る塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の三成分化合物が、式(Ia):
【化2】
(式中、
Aは、式(II)または(III):
【化3】

(式中、
は、置換されてもよいC1−12アルキル基;
およびRは、独立してHもしくはC1−3アルキル;
は、C、O、NHもしくはS;および
は、単結合または二重結合を表す)で表される原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカー;
Lは、長さ1nm〜50nmのリンカー基;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤)で表される;または
その医薬上許容される塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の三成分化合物が、式(Ib):
【化4】

(式中、
Aは、式(II)または(III):
【化5】

(式中、
は、置換されてもよいC1−12アルキル基;
およびRは、独立してHもしくはC1−3アルキル;
は、C、O、NHもしくはS;
は、単結合または二重結合を表す)で表される原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカー;
Lは、式(IV):
【化6】
(式中、
Zは、リンカーおよび脂質アンカー間の付着基であり、−C−C10アルキル−、
−C−C10アルケニル−、−C−C10アルキニル−、−C−C10アルキルC(O)−、−C−C10アルケニルC(O)−もしくは−C−C10アルキニルC(O)−;または
Zは、隣接するアミンと一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるC末端アミド化アミノ酸であってもよく(ここで、アミノ酸は、側鎖官能基を介して脂質アンカーに付着する);
Yは、リンカーとエンドソームGPCRのモジュレーター間の付着基であり、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)O−もしくは−C(O)S−;または
Yは、隣接するアミド基と一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるアミノ酸(ここで、アミノ酸は、側鎖官能基を介してエンドソームGPCRのモジュレーターに付着する);
mは、1もしくは2;
nは、1〜20;
pは、1〜8)で表される;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達阻害剤である)で表される;または
その医薬上許容される塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の三成分化合物が、構造:
【化7】

(式中、LおよびAは、本明細書に定義の通りである)、またはその医薬上許容し得る塩を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物および1つ以上のエンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物の組み合わせをそれを必要とする対象へ投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
プロテアーゼ誘発性疼痛治療のための薬剤の製造におけるプロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)のエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物の使用。
【請求項11】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、活性型受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、エンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物である、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
エンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物が、請求項5〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
プロテアーゼ誘発性疼痛の治療に使用するためのプロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)のエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物。
【請求項15】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、活性型受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物である、請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物が、エンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物である、請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
エンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する化合物が、請求項5〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物である、請求項16に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物およびそれらの使用に関する。特に、エンドソームプロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)シグナル伝達を阻害する化合物および疼痛の治療でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞表面受容体の最大ファミリーであり、ほとんどの病態生理学的過程に関与し、治療薬の約30%の標的である(Audet, M. & Bouvier, M. Nat Chem Biol 2008, 4, 397-403)。細胞表面GPCRは細胞外リガンドと相互作用し、ヘテロ三量体Gタンパク質に結合し、原形質膜で区切られたシグナル(二次メッセンジャー形成、増殖因子受容体トランス活性化、イオンチャネル調節)を引き起こす。リガンドの除去およびβ−アレスチン(βarr)との受容体の会合は原形質膜シグナルを終結させる。
【0003】
最近まで、GPCRの活性化、その後の下流のシグナル伝達およびシグナル終結は専ら原形質膜で起こると広く考えられていた。原形質膜シグナル伝達は、活性リガンド結合レセプターコンホメーションに対して選択的であるGPCRキナーゼ(GRK)による受容体のリン酸化を介した活性化から数分以内に終了する。GRKは、GPCRのC末端S/Tリッチドメインをリン酸化する(Sato, P. Y., et al., Physiological reviews 2015, 95, 377-404)。次にリン酸化された受容体はβarrに結合し、受容体とGタンパク質との結合を立体的に妨げ、アゴニスト媒介性のGタンパク質活性化を終結させる。βarrは、さらにダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスを介して、リガンド結合受容体の細胞表面から初期エンドソームへの移動を促進する。一旦エンドサイトーシスされると、リガンドおよびリン酸基はGPCRから除去され、受容体は細胞膜に速やかに再分布するか、または分解のためにリソソームに輸送される。
【0004】
しかしながら、最近、多様な範囲のGPCRが従来のパラダイムに必ずしも従うとは限らないことが発見されている。いくつかの細胞表面GPCRが、受容体のリガンド結合および活性化の後に、ヘテロ三量体Gタンパク質シグナル伝達が長期間維持される初期エンドソームに内在化および再分布することが研究によって判明した。したがって、単にリサイクルまたは分解経路へのGPCR輸送のための導管として作用するのではなく、エンドソームはシグナル伝達の重要な部位であり得る(Murphy, J. E. et al. Proc Natl Acad Sci USA 2009, 106, 17615-17622)。GPCRおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼをエンドソームに動員することにより、βarrはエンドソームGPCRシグナル伝達を媒介することができる(Murphy, J. E. et al. Proc Natl Acad Sci USA 2009, 106, 17615-17622; DeFea, K. A. et al. Proc Natl Acad Sci USA 2000, 97, 11086-11091; DeFea, K. A. et al. J Cell Biol 2000, 148, 1267-1281)。
【0005】
βarrは、多様なシグナル伝達タンパク質を原形質膜およびエンドソーム膜の活性化受容体に補充し、シグナル伝達の必須メディエーターである。MAPKカスケード[ERK, c-Jun amino-terminal kinase(JNK), p38]は、最も完全に特徴付けられたβarr依存性シグナル伝達経路である。βarrがシグナル伝達に活性に関与するという最初の証拠は、βarrのドミナントネガティブ変異体がβAR誘導性ERK1/2活性化を阻害するという所見であった(Daaka Y, et al. J Biol Chem 1998, 273, 685-688)。続いて、βarrがβARをc−Srcに結合させ、ERK1/2活性化を媒介することが見出された(Lutterall L. M.ら、Science 1999,283,665-661)。βarrは、ニューロキニン−1受容体(NK1R)、プロテアーゼ活性型受容体2(PAR)、アンギオテンシンII型1A受容体(AT1AR)、およびバソプレシンV2受容体(VR)などの他のGPCRによるERK1/2シグナル伝達にも同様に関与する。これらの所見は、βarrが活性化されたGPCRをMAPKシグナル伝達複合体と結合させるスカフォールドであるという見解を導いた。βarrは、それによって、原形質膜でのGタンパク質依存性シグナル伝達とは異なる、GPCRシグナル伝達の第2の波を媒介する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、PARのエンドソームシグナル伝達を阻害することが、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療のための新規な方法を提供し得るという発見に基づいている。プロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)は、プロテアーゼ誘発炎症および疼痛の主要なメディエーターである。PARは、神経原性炎症および疼痛伝達を制御する一次感覚ニューロンによって発現される。損傷および炎症の間に生成される、上皮由来トリプシンIV、肥満細胞トリプターゼ、マクロファージカテプシンSおよび好中球エラスターゼなどの複数のプロテアーゼは、知覚神経上のPARを活性化することができる。これらのプロテアーゼは、一次知覚神経上でPARを切断し活性化し、一過性受容体電位イオンチャネルの感作および神経ペプチド(サブスタンスPおよびカルシトニン遺伝子関連ペプチド)の放出をもたらす。これらのペプチドは末梢炎症および疼痛の中枢伝達を引き起こす。トリプシンおよびトリプターゼは、β−アレスチンの動員およびPARエンドサイトーシスにつながる標準的メカニズムによってPARを活性化する。
【0007】
活性型受容体のエンドサイトーシスを防止することによって、またはエンドソームPARシグナル伝達を標的化および阻害することにより、PARのエンドソームシグナル伝達を阻害することが、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療のための新規な方法を提供することが今見出された。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法であって、プロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)のエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
一態様では、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、活性型受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物である。
【0010】
別の態様では、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、エンドソームPARシグナル伝達を標的とし、阻害する化合物である。
【0011】
さらなる態様において、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、
Aは、原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカーであり;
Lは、長さ1nm〜50nmのリンカー部分であり;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤である;
ここで、脂質アンカーは、4℃において非イオン性界面活性剤に不溶の脂質膜に分配する)のエンドソームPARシグナル伝達を阻害する三成分化合物またはその医薬上許容し得る塩である。
【0014】
別の態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法であって、それを必要とする対象に、受容体のエンドサイトーシスを阻害する1つ以上の化合物と、エンドソームPARシグナル伝達を標的とし、阻害する1つ以上の化合物との組み合わせを投与することを含む方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療のための薬剤の製造におけるPARのエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物の使用を提供する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療における使用のためのPARのエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物を提供する。
【0017】
本発明のこれらおよび他の態様は、付随する実施例および請求の範囲に関連して以下の詳細な説明を読むことにより当業者にはより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1:原形質膜マーカー、RIT−venusを用いたBRETアッセイ。(a)PARの3つの公知のアゴニストによる刺激時のΔBRET動態。(b)トリプシンCRC(AUCデータから作成)。(c)様々なエンドサイトーシス阻害剤およびコントロール化合物による30分間の前処理でのトリプシン誘発性輸送の変化。データは、少なくとも3つの独立した実験からの平均+SEMとして示され、それぞれは1条件につき3つの反復を含む。
図2図2:早期エンドソームマーカーRab5a−venusを用いたBRETアッセイ。(a)PARの3つの公知のアゴニストによる刺激時のΔBRET動態。(b)トリプシンCRC(AUCデータから作成)。(c)様々なエンドサイトーシス阻害剤およびコントロール化合物による30分間の前処理でのトリプシン誘発性輸送の変化。データは、少なくとも3つの独立した実験からの平均+SEMとして示され、それぞれは1条件につき3つの反復を含む。
図3図3:サイトゾルERKセンサーCytoEKARを用いたFRETアッセイ。(a)PARの2つの公知のアゴニストによる刺激時のΔFRET動態。(b)トリプシンCRC(AUCデータから作成)。(c)種々のエンドサイトーシス阻害剤およびコントロール化合物による30分間の前処理でのトリプシン誘発性シグナル伝達の変化。データは、少なくとも3つの独立した実験からの平均+SEMとして示され、それぞれは1条件につき3つの反復を含む。
図4図4.核ERKセンサーNucEKARを用いたFRETアッセイ。(a)PARの2つの公知のアゴニストによる刺激時のΔFRET動態。(b)トリプシンCRC(AUCデータから作成)。(c)種々のエンドサイトーシス阻害剤およびコントロール化合物による30分間の前処理でのトリプシン誘発性シグナル伝達の変化。データは、少なくとも3つの独立した実験からの平均+SEMとして示され、それぞれは1条件につき3つの反復を含む。
図5図5.BRET再感作アッセイ。(a)PARの3つの公知のアゴニストによる刺激時のΔBRET動態。(b)種々のシグナル伝達阻害剤による30分間の前処理でのプロテアーゼ誘発性の輸送パターンの変化。データは、少なくとも2つの独立した実験から平均+SEMとして示され、それぞれは1条件につき2つの反復を含む。
図6図6.PARのエンドサイトーシスの阻害剤による単離されたDRGニューロンのニューロン興奮およびその阻害。
図7図7.PARのエンドサイトーシス阻害剤による単離されたDRGニューロンのニューロン興奮およびその阻害。
図8図8.マウスにおけるトリプシン誘発性機械的痛覚過敏の阻害。
図9図9.マウスにおけるトリプシン誘発性機械的痛覚過敏の阻害。
【0019】
発明の詳細な説明
プロテアーゼ活性型受容体−2(PAR)のエンドサイトーシスの寄与を、侵害受容器のプロテアーゼ誘発性感作を媒介する細胞内コンパートメントにおけるシグナルの発生に対して評価した。生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を用いて、HEK細胞における原形質膜(KRas)およびエンドソーム(Rab5a)の常在タンパク質に対するPARの近接性を評価した。R36↓S37でPARを切断する標準的アゴニストトリプシンは、PARとRab5aの間のBRETを増加させ、エンドサイトーシスと一致してPARとKRasの間のBRETを減少させる。E56↓T57およびA66↓S67↓V68でPARをそれぞれ切断するバイアス型(biased)アゴニストカテプシン−Sおよびエラスターゼは、PARエンドサイトーシスを誘導しなかった。原形質膜、サイトゾルまたは核に標的化されたフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)バイオセンサーを使用して、HEK細胞およびラット後根神経節ニューロンの細胞内コンパートメントにおけるシグナルを生成するプロテアーゼの能力を調べた。
【0020】
トリプシン(内在化)は、原形質膜およびサイトゾルにおける活性化cAMPおよびプロテインキナーゼC(PKC)、ならびに核およびサイトゾルにおける細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)を活性化した。カテプシン−Sおよびエラスターゼ(非内在化)は、原形質膜ではcAMPおよびPKCのみ、サイトゾルではERKのみを活性化した。ダイナミン阻害剤Dyngo4a、クラスリン阻害剤Pitstop2およびドミナントネガティブβ−アレスチンは、PARのトリプシン誘発エンドサイトーシスを阻害し、サイトゾルcAMPおよびPKCおよび核ERKのトリプシン誘発活性化を防止した。これらの結果は、サイトゾルcAMPおよびPKCおよび核ERKの活性化におけるPARエンドサイトーシスの役割と一致する。PARエンドサイトーシス、区画化シグナリングおよび侵害受容器感作の間の関連性を調べるために、穿孔パッチクランプ記録をマウス後根神経節ニューロンから行った。トリプシン、カテプシン−Sまたはエラスターゼとのニューロンのプレインキュベーションは、プロテアーゼウォッシュアウト後30分間維持されたレオバースの減少および活動電位の発火の増加によって評価される興奮性の即時の増加を誘導した。Dyngo4aおよびPitstop2は、いずれのプロテアーゼによって誘導される初期過興奮にも影響を与えなかったが、トリプシンへの持続的な興奮性を妨げた。しかし、カテプシン−Sまたはエラスターゼは防げなかった。興奮性に対するプロテアーゼの効果は、PARアンタゴニストGB88によってブロックされた。したがって、標準的およびバイアス型(biased)プロテアーゼは、異なるメカニズムによって侵害受容器を感作する。標準的アゴニストの場合、PARエンドサイトーシスは、侵害受容ニューロンの持続的な興奮性の基礎をなす区画化シグナル細胞内コンパートメントを生成する。PARのエンドソームシグナル伝達を阻害することは、プロテアーゼ誘発性疼痛を治療する新規な方法を提供し得る。
【0021】
一態様では、本発明は、PARのエンドソームシグナル伝達を阻害する化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法を提供する。
【0022】
一態様では、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、活性型受容体のエンドサイトーシスを阻害する化合物である。
【0023】
PARのエンドサイトーシスを阻害する化合物は、活性型PARの細胞内C末端のリン酸化とその後の受容体の初期エンドソームへのダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスとの間の経路の任意の部位または複数部位で作用し得ることが理解される。
【0024】
一実施形態において、PARのエンドサイトーシスの阻害は、それを必要とする対象にβ−アレスチン阻害剤を投与することによって達成され得る。本明細書で使用される用語「β−アレスチン阻害剤」は、β−アレスチンと活性化されたPARの細胞内C末端との間の相互作用を阻害する化合物を意味する。
【0025】
一実施形態では、βarrと活性型PARの細胞内C末端との間の相互作用の阻害は、活性型PARの細胞内C末端のリン酸化部位と競合するβ−アレスチン阻害剤を対象に投与し、GPCRキナーゼ−2(GRK2)リン酸化の代替部位を提供することにより達成され、それにより活性型PARの細胞内C末端へのβarrの結合およびその後の受容体のエンドサイトーシスが低減または改善され得ることが想定される。
【0026】
別の実施形態において、βarrと活性型PARの細胞内C末端との間の相互作用の阻害は、対象に、活性型PARの細胞内C末端のGPCRキナーゼ−2(GRK2)リン酸化を阻害するβ−アレスチン阻害剤を投与することによって達成され得ることが想定される。一実施形態では、活性型PARの細胞内C末端のGPCRキナーゼ−2(GRK2)リン酸化を阻害するβ−アレスチン阻害剤は、例えば、受容体リン酸化を招くGRK2の中心触媒ドメインに結合することによってGRK2と直接相互作用することが想定される。別の実施形態において、β−アレスチン阻害剤は、例えば、活性型PARの細胞内C末端上のリン酸化部位の認識を防止するために、GRK2にアロステリックに結合し得ると想定される。さらに別の実施形態では、β−アレスチン阻害剤は、PARの細胞内C末端内のリン酸化部位またはその近くに結合し、それによってGRK2による認識およびリン酸化を防止することが想定される。βarrと活性型PARの細胞内C末端間の相互作用を阻害する化合物は、β−アレスチンと直接相互作用し、PARの細胞内C末端上のリン酸化部位への結合を阻害することによって作用し得ることも想定される。
【0027】
別の実施形態において、PARのエンドサイトーシスの阻害は、それを必要とする対象に、活性型PARのクラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害するためのクラスリン阻害剤を投与することによって達成され得る。クラスリン阻害剤は、活性型PARのクラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害する任意の化合物、例えばクラスリンの末端ドメインとのリガンド会合を選択的に阻害する化合物であってもよいことが理解されるであろう。Pitstop 1(商標)およびPitstop 2(商標)などのいくつかのクラスリン阻害剤は、当該技術分野において公知である。
【0028】
別の実施形態において、PARのエンドサイトーシスの阻害は、それを必要とする対象に、活性型PARのダイナミンまたはクラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害するためのダイナミン阻害剤を投与することによって達成され得る。ダイナミン阻害剤は、活性型PARのダイナミンおよびその後のエンドサイトーシスを阻害する任意の化合物、例えば、L−ホスファチジルセリン・リポソーム刺激ヘリカル・ダイナミンを阻害する化合物であり得、ここで、ダイナミンは、Grb2で刺激されたダイナミンを阻害する化合物、またはダイナミンの単一の環への自己集合を阻害する化合物である。例えばDyngo 4aおよびDynole 2−24などのいくつかのダイナミン阻害剤が当該分野で公知である。
【0029】
別の実施形態において、PARのエンドサイトーシスの阻害は、それを必要とする対象に、クラスリンへの結合について内因性アレスチンと競合することによって機能し、それによって活性型PARのクラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害するドミナントネガティブβ−アレスチンを投与することによって達成され得る。
【0030】
別の態様では、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、エンドソームPARシグナル伝達を標的とし、阻害する化合物である。
【0031】
一実施形態では、エンドソームPARシグナル伝達を阻害する化合物は、式(I):
【0032】
【化2】

【0033】
(式中、
Aは、原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカー;
Lは、長さ1nm〜50nmのリンカー部分;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達阻害剤;
ここで、脂質アンカーは、4℃において非イオン性界面活性剤に不溶の脂質膜に分配する);の三成分化合物、またはその医薬上許容し得る塩である。
【0034】
本明細書で使用される用語「三成分化合物」は、リンカー基に共有結合したエンドソームGPCRモジュレーターを含む化合物を指し、リンカー基は、式(I)の化合物を細胞膜の脂質二重層に、最終的には、初期のエンドソームの膜に固定することができる脂質アンカーに共有結合している。
【0035】
本明細書で使用される用語「脂質アンカー」は、脂質膜に分配し、それによって式(I)の化合物を脂質膜に固定することができる部分を意味する。脂質膜への分配は、細胞外もしくは小胞内腔空間から直接的に、または二重層から側方的に起こりうる。脂質アンカーは、脂質膜へ分配する能力により特徴づけられ、その脂質膜は、4℃での非イオン性界面活性剤への不溶性により特徴づけられる。適切な脂質アンカーとしては、コレステロール、コレスタノール、スフィンゴ脂質、GPIアンカーまたは飽和脂肪酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。このような脂質アンカーの多くは、例えばWO2005/097199に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0036】
一実施形態では、脂質アンカーは、式(II)または(III):
【0037】
【化3】
【0038】
(式中、
は、置換されてもよいC1−12アルキル基;
およびRは、独立して、HまたはC1−3アルキル;
は、−CH−、−O−、−NH−、−S−、−NH(CHOPO−、−NH(CHSOCF−、−NH(CHSONH−、−NHCONH−、−NHC(O)O−、−NHCH(CONH)(CHC(O)O−、−NHCH(COOH)(CHC(O)O−、−NHCH(CONH)(CHCONH−、−NHCH(COOH)(CHCONH−、−NHCH(CONH)(CHNH((CO)CHO)−もしくは−NHCH(COOH)(CHNH((CO)CHO)−;
aは、2〜3の整数;
bは、1〜2の整数;
eは、0〜1の整数;および
は、単結合または二重結合を表す)
から選択される部分である。
【0039】
他の実施形態では、脂質アンカーは、式(VI),(VII),(VIII)もしくは(IX):
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、
は、上述した通りであり;
は、単結合または二重結合を表す;
は、単結合、二重結合もしくは三重結合を表す;
それぞれRは、独立して、−NH−、−O−、−S−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−NHCONH−、−NHC(O)O−もしくは−NHS(O)−;
それぞれRは、独立して、フッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよいC14−30アルキル基;
それぞれRは、独立して、NH、NHCH、OH、H、ハロゲンもしくはO、ただしRがNH、NHCH、OH、H、もしくはハロゲンの時には
は単結合およびRがOの時は
は二重結合;
それぞれRは、独立して、H、OHまたは
が三重結合を表すときにはなし;
は、フッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよいC10−30アルキル基;および
それぞれR10は、独立して、フッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよい、C24−40アルキレン基、C24−40アルケニレン基もしくはC24−40アルキニレン基)
から選択される部分である。
【0042】
さらなる実施形態において、脂質アンカーは、式(X)もしくは(XI):
【0043】
【化5】
【0044】
(式中、
は、単結合または二重結合を表す;
は、単結合、二重結合もしくは三重結合を表す;
それぞれR13は、独立して、−O−もしくは−CO(CH(CO)O−、(式中、aは、1〜3の整数およびbは、0〜1の整数);
14は、−O−もしくは−OC(O)−;
それぞれR15は、独立して、フッ素、好ましくは1〜4個のフッ素原子で置換されてもよいC16−30アルキル基から選択される;
16は、−POCH−、−SOCH−、−CH−、−COCH−もしくは直接結合;
17は、−NH−、−O−、−S−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−NHCONH−、−NHC(O)O−もしくは−NHS(O)−;
18は、NH、NHCH、OH、H、、ハロゲンもしくはO;
19は、フッ素、好ましくは1〜4個のフッ素原子で置換されてもよいC16−30アルキル基;および
各R20は、下記式:
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、
は、単結合または二重結合;
21は、POCH−、−SOCH−、−CH−、−COCH−もしくは直接結合;
22は、−NH−、−O−、−S−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−NHCONH−、−NHC(O)O−もしくは−NHS(O)−;
23は、−O−もしくは−OC(O)−;
それぞれR24は、独立して、フッ素、好ましくは1〜4個のフッ素原子で置換されてもよいC16−30アルキル基から選択される;
25は、−CO(CH(CO)O−もしくは−CO(CH(CO)NH−、(式中、aは、1〜3の整数およびbは、0〜1の整数);および
26はフッ素、好ましくは1〜4個のフッ素原子で置換されてもよいC4−20アルキル基である)の基で置換されてもよいC(O)C13−25アルキル基である))
から選択される部位である。
【0047】
さらなる態様において、脂質アンカーは、式(XII)、(XIII)、(XIV)または(XV):
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、
それぞれR27は、独立して、−NH−、−O−、−NH(CHOPO−、−NH(CHSONH−、−NHCONH−、−NHC(O)O−、−CO(CH(CO)NH−、−CO(CH(CO)O−、−CO(CHS−、−CO(CHOPO−、−CO(CHSONH−、−CO(CHNHCONH−、−CO(CHOCONH−、−CO(CHOSO−、もしくは−CO(CHNHC(O)O−、(式中、aは、0〜1の整数、bは、1〜3の整数およびcは、2〜3の整数)から選択される;
それぞれR28は、独立して、−CH−もしくは−O−;
それぞれR29は、独立して、Hもしくはフッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよいC16−30アルキル基から選択される;
それぞれR31は、独立して、Hもしくはフッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよいC1−15アルキル基、もしくはフッ素、好ましくは1ないし4個のフッ素原子で置換されてもよいC1−15アルコキシ基から選択される;および
nは、1〜2の整数)から選択される部位である。
【0050】
本明細書で使用される用語「リンカー」は、エンドソームGPCRのモジュレーターを脂質アンカーに連結する化合物の部分に関する。リンカーは、リガンド結合部位でエンドソームGPCRのモジュレーターと競合しないように選択されるべきであることが理解される。また、リンカーが脂質膜に分配されるべきではない。リンカー基は、脂質アンカーがエンドソーム膜に固定されている場合、エンドソームGPCRのモジュレーターがレセプターと相互作用することを可能にするために、1nm〜50nmの長さでなければならない。一実施形態では、リンカー基は、1つ以上のポリエチレングリコール単位を含む。別の実施形態において、リンカーまたはリンカーのサブユニットは、いずれかの基の機能に干渉することなく、エンドソームGPCRのモジュレーターと脂質アンカー間の適切な距離を提供するアミノ酸残基、誘導体化または官能化アミノ酸残基、ポリエーテル、尿素、カルバメート、スルホンアミドまたは他のサブユニットであり得ることが想定される。
【0051】
ひとつの態様において、リンカーは、式(IV):
【0052】
【化8】
【0053】
(式中、
Zは、リンカーおよび脂質アンカー間の付着基であり、−C−C10アルキル−、−C−C10アルケニル−、−C−C10アルキニル−、−C−C10アルキルC(O)−、−C−C10アルケニルC(O)−もしくは−C−C10アルキニルC(O)−;または
Zは、隣接するアミンと一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるC末端アミド化アミノ酸であってもよい;ここで、アミノ酸は、側鎖官能基を介して脂質アンカーに付着する;
Yは、リンカーとエンドソームGPCRのモジュレーター間の付着基であり、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)O−もしくは−C(O)S−;または
Yは、隣接するアミド基と一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるアミノ酸である;ここで、アミノ酸は、側鎖官能基を介してエンドソームGPCRのモジュレーターに付着する;
mは、1もしくは2;
nは、1〜20;および
pは、1〜8)の部分で表される。
【0054】
別の実施形態において、リンカーは、式(XX):
【0055】
【化9】
【0056】
(式中、
それぞれR11は、独立して、天然起源、誘導体化もしくは官能基化されたアミノ酸残基の任意の側鎖である;
mは、3〜80の整数;および
nは、0〜1の整数)の部分で表される。
【0057】
他の実施形態においては、リンカーは、式(XXI):
【0058】
【化10】
(XXI)
【0059】
(式中、
mは、0〜40の整数;
nは、0〜1の整数;
それぞれoは、独立して、1〜5の整数;
それぞれR11は、独立して、天然起源、誘導体化もしくは官能基化されたアミノ酸残基の任意の側鎖である;および
SO末端は、脂質アンカーに結合し、またN末端は、エンドソームGPCRのモジュレーターに結合する)の部分で表される。
【0060】
さらなる実施形態において、リンカーは、式(XXII):
【0061】
【化11】
【0062】
(式中、
mは、0〜40の整数;
nは、0〜1の整数;
それぞれoは、独立して1〜5の整数;
各R12は、独立してNHもしくはO;
それぞれR11は、独立して、天然起源、誘導体化もしくは官能基化されたアミノ酸残基の任意の側鎖である;および
C(O)末端は、脂質アンカーに結合し、R12末端は、エンドソームGPCRのモジュレーターに結合する)の部分で表される。
【0063】
いくつかの適切なリンカー部分が、国際公開第2005/097199号パンフレットに記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0064】
本明細書中で使用される用語「エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤」は、エンドソームにエンドサイトーシスされたPARのアンタゴニストまたは阻害剤を指す。エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤は、限定されないが、有機分子、ポリペプチド配列、ホルモン、これらのいずれかのタンパク質断片または誘導体などの任意の形態であり得る。
【0065】
本明細書で使用される用語「エンドソームPARシグナル伝達」は、エンドソーム、好ましくは初期エンドソームにエンドサイトーシスされた活性型PARによって伝達されたシグナルを指す。
【0066】
一実施形態では、エンドソームPARシグナル伝達は、原形質膜で最初に伝達され、受容体が初期エンドソームにエンドサイトーシスされたときに維持されるシグナル伝達であろう。
【0067】
別の実施形態において、エンドソームPARシグナル伝達は、受容体エンドサイトーシスを必要とするシグナル伝達であり、および/またはエンドソーム膜上でのみ起こるシグナル伝達、例えば、β−アレスチン媒介シグナル伝達である。βarrは細胞表面でアゴニストが占めるGタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)リン酸化GPCRと相互作用し、ダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスを経てリガンド結合レセプターの細胞表面から初期エンドソームへの伝達を促進すると考えられている。最近、この経路は、原形質膜でのGタンパク質依存性シグナル伝達とは異なるエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の系列を媒介できることが発見された。このメカニズムの重要性は、GRKによるGPCRリン酸化の程度に依存して変化する、GPCRがβarrと相互作用する親和性に依存すると考えられている。“クラスA”のGPCR(例えば、βAR、α1bAR)は、リン酸化部位をほとんど持たず、ほとんどが原形質膜で、βarr1およびβarr2と一時的に相互作用し、βarr2に対してはより高い親和性で相互作用する。“クラスB”GPCR(例えば、AT1AR、NKR、PAR)は、複数の部位でリン酸化され、原形質膜およびエンドソーム膜で、長期間高親和性でβarr1および2の両方と相互作用する。“クラスC”GPCR(例えば、ブラジキニンB受容体)は、βarrをエンドソームに内在化させ、続いてアゴニスト除去時にβarrを迅速に解離させる。
【0068】
βarr誘発MAPKシグナル伝達の程度は、βarrに対する受容体の親和性に依存し、親和性は受容体構造や、7つの哺乳動物GRKのうちのどれが受容体をリン酸化するかに依存すると考えられている。したがって、AT1ARおよびVRの活性化は、α1bARおよびβARの活性化よりも、βarr結合ERK1/2のより大きなリン酸化を引き起こし、クラスB受容体がこの経路を通してより強固にシグナルすることを示唆する。上記のように、PARはクラスBのGPCRである。
【0069】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、一般式(I)を参照して、以下の実施形態のうちの1つ以上が適用される:
【0070】
a)Aは、コレステロール、コレスタノール、スフィンゴ脂質、GPIアンカーまたは飽和脂肪酸誘導体から選択される脂質アンカーである。
【0071】
b)Aは、式(II)、(III)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)および(IX)の部分から選択される脂質アンカーである。
【0072】
c)Aは、式(II)または(III)の部分から選択される脂質アンカーである。
【0073】
d)Lは、1つ以上のサブユニットを含むリンカー部分であり、サブユニットは、ポリエチレングリコール単位、アミノ酸残基、誘導体化または官能化アミノ酸残基、ポリエーテル、尿素、カルバメートおよび/またはスルホンアミドを含む。
【0074】
e)Lは、式(IV)、(XX)、(XXI)もしくは(XXII)で表されるリンカー部分である。
【0075】
f)Lは、式(IV)で表されるリンカー部分である。
【0076】
好ましい実施形態においては、Aは、式(II)または(III)で表される脂質アンカーである。
【0077】
従って、一実施形態において、本発明は、式(Ia):
【0078】
【化12】
【0079】
(式中、
Aは、式(II)または(III):
【0080】
【化13】
【0081】
(式中、
は、置換されてもよいC1−12アルキル基;
およびRは、独立してHもしくはC1−3アルキル;
は、C、O、NHもしくはS;および
は、単結合または二重結合を表す)で表される原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカー;
Lは、長さ1nm〜50nmのリンカー基;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤)で表される式(I)の三成分化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0082】
別の好ましい実施形態においては、Aは、式(II)または(III)で表される脂質アンカーであり、Lは、式(IV)で表されるリンカーである。
【0083】
従って、別の実施形態では、本発明は、式(Ib):
【0084】
【化14】
【0085】
(式中、
Aは、式(II)または(III):
【0086】
【化15】
【0087】
(式中、
は、置換されてもよいC1−12アルキル基;
およびRは、独立してHもしくはC1−3アルキル;
は、C、O、NHもしくはS;
は、単結合もしくは二重結合を表す)で表される原形質膜への化合物の挿入を促進する脂質アンカー;
Lは、式(IV):
【0088】
【化16】
【0089】
(式中、
Zは、リンカーおよび脂質アンカー間の付着基であり、−C−C10アルキル−、−C−C10アルケニル−、−C−C10アルキニル−、−C−C10アルキルC(O)−、−C−C10アルケニルC(O)−もしくは−C−C10アルキニルC(O)−;または
Zは、隣接するアミンと一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるC末端アミド化アミノ酸であってもよい;ここで、アミノ酸は、側鎖官能基を介して脂質アンカーに付着する;
Yは、リンカーとエンドソームGPCRのモジュレーター間の付着基であり、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)O−もしくは−C(O)S−;または
Yは、隣接するアミド基と一緒になって、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、リジン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンから選択されるアミノ酸;ここでアミノ酸は、側鎖官能基を介してエンドソームGPCRのモジュレーターに付着する;
mは、1もしくは2;
nは、1〜20;
pは、1〜8)で表される;および
Xは、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤);で表される式(I)の三成分化合物、またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0090】
一実施形態において、式(I)の化合物は構造:
【0091】
【化17】
【0092】
(式中、LおよびAは本明細書に定義の通り)、またはその医薬上許容し得る塩を有する。
【0093】
他の態様では、本発明は、化合物:
【0094】
【化18】
【0095】
またはその医薬上許容し得る塩を提供する。
【0096】
一態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法であって、有効量の本明細書に定義される式(I)の化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0097】
別の態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療のための薬剤の製造における、本明細書で定義される式(I)の化合物の使用を提供する。
【0098】
さらなる態様において、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療における使用のために本明細書に定義される式(I)の化合物を提供する。
【0099】
さらに別の態様では、本発明は、プロテアーゼ誘発性疼痛の治療方法であって、それを必要とする対象に、受容体のエンドサイトーシスを阻害する1つ以上の化合物およびエンドソームPARシグナル伝達を標的および阻害する1つ以上の化合物を含む組み合わせを投与することを含む、治療方法を提供する。
【0100】
本発明の文脈において、用語「疼痛」としては、慢性炎症性疼痛(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および若年性関節炎に関連する疼痛);筋骨格痛、下背部および首部の痛み、捻挫および緊張、神経因性疼痛、交感神経的に維持される疼痛、筋炎、癌および線維筋痛に伴う疼痛、片頭痛に伴う痛み、群発性頭痛および慢性の毎日の頭痛に伴う疼痛、インフルエンザまたは風邪などの他のウイルス感染症に伴う疼痛、リウマチ熱、非潰瘍性ディスペプシア、非心臓性胸痛および過敏性腸症候群などの機能性腸障害に関連する疼痛、心筋虚血に伴う痛み、術後痛、頭痛、歯痛、月経困難症、神経痛、線維筋痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS I型およびII型)、神経因性疼痛症候群(糖尿病性ニューロパシー、化学療法誘発性神経障害性疼痛、坐骨神経痛、非特異的腰痛、多発性硬化症疼痛、HIV関連神経障害、ヘルペス後症候群神経痛、三叉神経痛など)および身体外傷、切断、癌、毒素または慢性炎症性の状態に起因する疼痛が挙げられる。好ましい実施形態において、疼痛は体性疼痛または内臓痛である。
【0101】
本発明の化合物を合成するための一般的な戦略を以下に概説する。
【0102】
コレステリルグリコール酸、3−コレステリルアミンおよびコレステリルグリシンの合成は文献に記載されている(Hussey, S. L. et al., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 12712-12713; Hussey, S. L. et al., Org. Lett. 2002, 4, 415-418; Martin, S. E. et al., Bioconjugate Chem. 2003, 14, 67-74)。ステロイド構造の3位にアミド、スルホンアミド、尿素またはカルバメート官能基を有する式(III)の脂質アンカーは、3−コレステリルアミンから調製することができ、例えば、3−コレステリルアミンを、DMAPの存在下でコハク酸無水物と反応させて対応するスクシニル置換化合物を得ることができる。対応するスルホンアミドは、3−コレステリルアミンとクロロスルホニル酢酸との反応によって得ることができ、これは文献に記載されているように調製することができる(Hinman, R. L. and Locatell, L. J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 5655-5658)。対応する尿素またはカルバメートは、文献の手順に従って、対応するイソシアネートを経て、調製することができ(Knolker, H.-J. T. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 1995, 34, 2497; Knolker, H.-J. et al., Synlett 1996, 502;. Knolker, H.-J. and. Braxmeier, T. Tetrahedron Lett. 1996, 37, 5861)、ステロイド構造の3位にホスフェートまたはカルボキシメチル化ホスフェートを有する化合物(III)の中間体は、文献に記載されているように調製することができる(Golebriewski, Keyes, Cushman, Bioorg. Med. Chem. 1996, 4, 1637-1648; Cusinato, Habeler, et al., J. Lipid Res. 1998, 39, 1844-1851; Himber, Missano, et al., J. Lipid Res. 1995, 36, 1567- 1585)。ステロイド構造の3位にチオールを有する式(III)の脂質アンカーは、文献に記載されているように調製することができる(J. G. Parkes, J. G. et al., Biochim. Biophys. Acta 1982, 691, 24-29)。対応するカルボキシメチル化チオールは、対応するアミンおよびアルコールについて記載したような簡単なアルキル化によって得ることができる。ステロイド構造の3位にジフルオロメチレンスルホン誘導体を有する式(III)の脂質アンカーは、文献に記載されているように調製することができる(Lapiene, J. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 151-155)。式(III)の脂質アンカーの17位の種々の側鎖の導入は、デヒドロイソアンドロステロンまたはプレグネノロンから出発する文献プロトコルの使用によって達成することができる(Bergmann, E. D. et al., J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 1239-1243およびそこでの文献)。コレスタンから誘導される式(III)の脂質アンカーは、文献のプロトコール、例えば、種々の遷移金属触媒の存在下での水素添加を用いて5,6−二重結合の還元によってコレステロール由来の対応プレカーサーから得られる。
【0103】
3位に酸素誘導置換基を有する式(II)の脂質アンカーは、エストロンから出発する式(III)の脂質アンカーについて記載したのと同様の方法で調製する。3位に窒素由来置換基を有する式(II)の脂質アンカーは、3−アミノエストロンから出発する式(III)の脂質アンカーについて記載したのと同様の方法で調製することができ、文献(Zhang, X. and Sui, Z. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 3071-3073; Woo, L. W. L. et al., Steroid Biochem. Molec. Biol. 1996, 57, 79-88)に記載されているように調製することができる。3位に硫黄由来の置換基を有する式(II)の脂質アンカーは、3−チオエステロンから出発する式(III)の脂質アンカーについて記載したのと同様の方法で調製することができ、文献(Woo, L. W. L. et al., J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 1996, 57, 79-88)に記載されているように調製することができる。エストロン構造の17位に種々の側鎖を導入することは、文献(Peters, R. H. et al., J. Org. Chem. 1966, 31, 24-26)に記載されているように、得られた二重結合の水素化に続くWittigアプローチによって達成することができる。側鎖内のさらなる操作(例えば、二重結合構造、シクロアルキル装飾)は、標準的なプロトコル(鈴木カップリングなど)によって達成することができる。
【0104】
異なる炭化水素基を有するセラミド、デヒドロセラミドおよびジヒドロセラミドのクラスに属する式(VI)の脂質アンカーは、文献に概説されているように得ることができる(A. H. Merrill, Jr., Y. A. Hannun(Eds.)、Methods in Enzymology, Vol. 311, Academic Press, 1999;. Koskinen, P. M and Koskinen, A. M. P. Synthesis 1998, 1075)。特に、スフィンゴシン塩基は、スフィンゴシン骨格の1位に酸素由来の置換基を有する式(VI)の全ての脂質アンカーの重要な中間体として使用することができる。対応するアミノ誘導体は、公知のプロトコルに従ってアルコールから調製することができるスルホネートを置換することによって得ることができる。1−アミノ誘導体または1−ヒドロキシ誘導体のアルキル化およびアシル化は、それぞれブロモ酢酸および無水コハク酸との反応によって達成することができる。チオアセチル化誘導体は、スルホネートをメルカプト酢酸で置換することによって調製することができる。ホスフェートおよびスルフェート誘導体は、文献に記載されているように得ることができる(A. H. Merrill, Jr., YA A. Hannun(Eds.)、Methods in Enzymology, Vol. 311, Academic Press, 1999; Koskinen, P. M. and Koskinen, A. M. P. Synthesis 1998, 1075)。アシル化、スルホニル化、尿素およびカルバメート形成は、標準的な手順によって達成することができる。式(VI)(式中、Rがアミノまたはアミノ由来の官能基である)の脂質アンカーは、標準プロトコールを用いて、Koskinen(Koskinen, P. M. and Koskinen, A. M. P. Synthesis 1998, 1075)により発表され使用可能なスフィンゴシン塩基から出発して調製することができる。対応する2−酸素置換スフィンゴ脂質は、Yamanoi(Yamanoi, T. et al., Chem. Lett. 1989, 335)によって発表された戦略によって得ることができる。両方のRがヒドロキシ基を表す式(VI)の脂質アンカーは、公知のプロトコルを用いて対応するアルケンをビスヒドロキシル化することによって得ることができる。対応するモノヒドロキシ誘導体は、文献に記載されるように調製することができる(Howell, A. R. and Ndakala, A. J. Curr. Org. Chem. 2002, 6, 365-391)。式(VI)の脂質アンカーにおける置換基RおよびRの修飾は、種々の総説に概説されたプロトコルおよび戦略によって達成され得る(Harwood, H. J. Chem. Rev. 1962, 62, 99-154; Gensler, W. J. Chem. Rev. 1957, 57, 191-280)。
【0105】
式(VII)の脂質アンカーは、文献(Muller, S. et al., J. Prakt. Chem. 2000, 342, 779)に記載されたプロトコル、および式(VII)の脂質アンカーの調製のために記載されたプロトコルとの組み合わせによって得られる。
【0106】
およびRが酸素由来置換基である式(VIII)の脂質アンカーは、Fraser−Reid(Schlueter, U. Lu, J. and Fraser-Reid, B. Org. Lett. 2003, 5, 255-257)に概説されているように、市販の(R)−(−)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールから出発して、調製することができる。式(VIII)の化合物における置換基Rの変化は、種々の総説に概説されたプロトコルおよび戦略によって達成され得る(Harwood, H. J. Chem. Rev. 1962, 62, 99-154; Gensler, W. J. Chem. Rev. 1957, 57, 191-280)。RおよびRが窒素由来の置換基である式(VIII)の脂質アンカーは、対応するスルホネートの求核置換系および上記で概説したさらなる修飾によって対応する酸素置換系から出発、または文献(Henrick, K. et al., J Chem. Soc. Dalton Trans. 1982, 225-227)に記載されているように得ることができる、1,2,3−トリアミノプロパンから出発のいずれかで得られる。
【0107】
式(IX)の脂質アンカーは、式(VII)の脂質アンカーと同様に、あるいは式(VIII)の脂質アンカーのω−エテニル化中間体の閉環メタセシスにより得ることができる。
【0108】
式(X)および(XI)の脂質アンカーは、文献(Xue, J. and Guo, Z. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 2015-2018; Xue, J. and Guo, Z. J. Am. Chem. Soc. 2003, 16334-16339; Xue, J. et al., J. Org. Chem. 2003, 68, 4020-4029; Shao, N., Xue, J. and Guo, Z. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 1569-1573)に記載の合成戦略により、および式(VI)および(VIII)の脂質アンカーの調製のための上記の方法とのそれらの組み合わせによって調製することができる。
【0109】
式(XII)、(XIII)および(XIV)の脂質アンカーは、文献に記載の合成戦略に従って全合成によって得ることができる(Knolker, H.-J. Chem. Soc. Rev. 1999, 28, 151-157; Knolker, H.-J. and Reddy, K. R. Chem. Rev. 2002, 102, 4303-4427; Knolker, H.-J. and Knoll, J. Chem. Commun. 2003, 1170-1171; Knolker, H.-J. Curr. Org. Synthesis 2004, 1)。
【0110】
式(XV)の脂質アンカーは、4−メトキシ−3−メチルベンズアルデヒドから出発して6−メトキシ−5−メチルインドールを得るネニゼスク(Nenitzescu)型インドール合成によって調製することができる。エーテル開裂、トリフラート形成およびソノガシラカップリングは、対応する6−アルキニル置換5−メチルインドールをもたらす。Nilsmeierのホルミル化およびそれに続くニトロメタンの添加は、6−アルキル置換5−メチルトリプタミンの形成をもたらす全体的な水素化に供される3−ニトロビニル置換インドール誘導体を生じる。スクシニル無水物を用いたアミノ基のアシル化により、調製が完了する。
【0111】
本発明のペプチドの合成には、固体支持体(典型的には樹脂)へのNまたはC末端のカップリング、続いてリニアペプチドの段階的合成などの公知の固溶体相技術を用いることができる。側鎖を含むアミノ酸残基の保護のための基の化学的保護は、当該分野で周知であり、例えばTheodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis(Third Edition, John Wiley & Sons, Inc, 1999)に見出される。その全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
本明細書に記載の化合物の調製方法は、当業者には明らかであり、
a)ホスホリルヘッド基もしくは脂質アンカーの同等のヘッド基とエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤のモジュレーターの結合および/または相互作用部位との距離(a)を決定する工程;
b)(a)で定義した距離にスパニング(spanning)しうるリンカーを選択する工程;および
c)(b)で選択したリンカーによる脂質アンカーとエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤とを結合させる工程
を含むであろう。
【0113】
そのような方法の対応する実施例を本明細書に示す。当業者は、所定のまたは潜在的なエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤の関連する結合部位または相互作用部位を推定し、したがって、(a)ホスホリルヘッド基もしくは脂質アンカーの同等のヘッド基とエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤の結合および/または相互作用部位との距離(a)を決定する立場にある。このような方法は、分子モデリング、インビトロおよび/または分子相互作用またはバインディングアッセイ(例えば、酵母2または3ハイブリッド系、ペプチドスポッティング、オーバーレイアッセイ、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、リボソームディスプレイ)、原子力顕微鏡法、ならびに分光法およびX線結晶学を含むが、限定されない。さらに、部位特異的突然変異誘発のような方法を用いて、エンドソームPARシグナル伝達の所定の阻害剤またはエンドソームPARシグナル伝達の候補阻害剤およびその対応する標的の推定相互作用部位を確認することができる。
【0114】
当業者は、リンカーの選択が、当該分野で公知のリンカーの選択、ならびに新規のリンカーの生成および使用(例えば、分子モデリングおよび対応する合成または当技術分野で公知のさらなる方法による)を含むことを理解するであろう。
工程b)に関して本明細書中で使用される用語「スパニング」は、脂質アンカーがエンドソームの脂質層の一部を形成する場合、受容体上の正しい座にエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤を配置するように選択されるリンカーの長さをいう。
【0115】
当業者は、所与の三成分化合物ならびに本明細書に記載の個々の部分の親油性を推論し、確認および/または評価する立場にある。エンドソームGPCR標的を決定するための対応する試験アッセイを本明細書の実施例に提供する。
【0116】
当業者は、リンカー部分の目的が、脂質アンカーがエンドソーム膜に固定されているとき、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤がPARと相互作用することを可能にするために、脂質アンカーをエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤に連結することであることを理解するであろう。脂質アンカーおよびリンカーは、2つが共有結合することを可能にする官能基を含有する。脂質アンカーの官能基の性質は決して限定されず、例えば、リンカーとアミド結合を形成するアミン基、またはリンカーとエーテル結合またはエステル結合を形成するヒドロキシル基またはカルボン酸基を挙げることができる。
【0117】
同様に、当業者は、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤と連結するリンカーの末端での官能基の選択が、主として選択されたエンドソームPARシグナル伝達の阻害剤上の任意の利用可能な官能基によって決定されることを理解するであろう。例えば、エンドソームPARシグナル伝達の阻害剤が遊離のアミンまたはカルボン酸基を含む場合、リンカーの官能基は、アミド結合を形成するための相補的なカルボン酸またはアミンを含むことが想定される。
【0118】
本発明の化合物は、1つ以上の立体異性体(例えば、ジアステレオマー)で存在し得ることが理解される。本発明は、その範囲内に、単離された(例えば、エナンチオマー単離で)、または組み合わせ(ラセミ混合物およびジアステレオマー混合物を含む)のこれらの立体異性体のすべてを含む。本発明は、独立してL体およびD体から選択されるアミノ酸の使用(例えば、ペプチドが2つのセリン残基を含み、各セリン残基は同じまたは反対の絶対立体化学を有してもよい)などの、L体およびD体の両方のアミノ酸の使用を意図している。別段の記載がない限り、アミノ酸はL配置であると解釈される。
【0119】
したがって、本発明は、またアミノ酸残基の不斉中心に関して、実質的に純粋な立体異性体形態の化合物、例えば約95%〜97%de、または99%deより大きい、などの約90%deより大きい化合物、ならびにそれらの混合物(ラセミ混合物など)に関する。そのようなジアステレオマーは、例えばキラル中間体を使用する不斉合成によって調製してもよく、または混合物を常法、例えばクロマトグラフィーまたは分割剤の使用によって分割してもよい。
【0120】
本発明の化合物が精製を必要とする場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および逆相HPLCなどのクロマトグラフィー技術を使用することができる。ペプチドは、質量分析および/または他の適切な方法によって特徴付けられてもよい。
【0121】
化合物がプロトン化または脱プロトン化され得る(例えば、生理学的pHで)1つ以上の官能基を含む場合、化合物は、医薬上許容される塩として調製および/または単離され得る。化合物は、所与のpHにおいて両性イオンであり得ることが理解されるであろう。本明細書中で使用される表現「医薬上許容される塩」とは、所与の化合物の塩を指し、その塩は医薬としての投与に適している。このような塩は、例えば、それぞれ酸または塩基とアミンまたはカルボン酸基との反応によって形成することができる。
【0122】
医薬上許容される酸付加塩は、無機および有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0123】
医薬上許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製することができる。無機塩基に由来する対応する対イオンには、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩が挙げられる。有機塩基には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジンおよびN−エチルピペリジンなどの、一級、二級および三級アミン、天然の置換アミンなどの置換アミンならびに環状アミンが挙げられる。
【0124】
酸/塩基付加塩は、対応する遊離酸/塩基形態よりも水性溶媒中により可溶性である傾向がある。
【0125】
本発明はまた、治療上有効な量の上記で定義した化合物またはその医薬上許容される塩を、少なくとも1つの医薬上許容される担体または希釈剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0126】
用語「組成物」は、担体としてのカプセル化材料と一緒に有効成分の製剤を含めて、有効成分(他の担体を伴うかまたは伴わない)が担体によって取り囲まれたカプセルが得られることが意図される。
【0127】
前述の化合物またはその医薬上許容される塩は、対象に投与される唯一の有効成分であり得るが、当該化合物を伴う他の有効成分の投与は、本発明の範囲内である。1つ以上の実施形態では、本発明の化合物の2つ以上の組み合わせが対象に投与されることが想定される。化合物(複数可)は、1種以上の追加の治療薬を併用して投与することもできると考えられる。この組み合わせは、上記の化合物の他の有効成分との別々の、連続的なまたは同時の投与を可能にすることができる。この組み合わせは、医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0128】
本明細書で使用される用語「組み合わせ」は、上記で定義された組み合わせパートナーが依存的にもしくは独立して、または異なる量の組み合わせパートナーとの異なる固定組み合わせの使用によって、すなわち同時にまたは異なる時点に投与できる組成物または部品のキットを指す。次いで、組み合わせパートナーは、例えば、同時にまたは時間的にずらして(すなわち、異なる時点で、そしてキットの任意の部分について等しいまたは異なる時間間隔で)投与され得る。組み合わせにおいて投与される組み合わせパートナーの総量の比率は、変動し得る、例えば、治療されるべき患者亜集団のニーズまたは単一の患者のニーズに対処するためであり、異なるニーズは、患者の年齢、性別、体重などによるものでありえる。
【0129】
当業者によって容易に理解されるように、投与ルートおよび医薬上許容される担体の種類は、治療される状態および哺乳動物の種類に依存する。特定の担体または送達系の選択、および投与ルートは、当業者によって容易に決定され得ると考えられる。活性化合物を含有するいずれかの製剤の調製において、化合物の活性が工程中に破壊されず、化合物が破壊されることなくその作用部位に到達することができるように注意を払うべきである。場合によっては、例えばマイクロカプセル化などの当技術分野で公知の手段によって化合物を保護することが必要な場合がある。同様に、選択される投与ルートは、化合物がその作用部位に到達するようなものでなければならない。
【0130】
当業者は、従来のアプローチを用いて本発明の化合物のための適切な製剤を容易に決定することができる。好ましいpH範囲および適切な賦形剤、例えば酸化防止剤の同定は、当技術分野ではルーティンである。緩衝液系は、所望の範囲のpH値を提供するために日常的に使用され、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩およびコハク酸塩などのカルボン酸緩衝液が挙げられる。BHTまたはビタミンEなどのフェノール化合物、メチオニンまたは亜硫酸塩などの還元剤、およびEDTAなどの金属キレート剤を含む、様々な抗酸化剤がこのような製剤に利用可能である。
【0131】
前述の化合物またはその医薬上許容される塩は、静脈内、くも膜下腔内、および大脳内または硬膜外送達に適したものなどの非経口剤形で調製することができる。注射用途に適した医薬形態としては、滅菌注射溶液または分散液、および滅菌注射溶液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。それらは、製造および貯蔵の条件下で安定であり、還元または酸化および細菌または真菌などの微生物の汚染作用から守られなければならない。
【0132】
注射可能な溶液または分散液のための溶媒または分散媒は、活性化合物のための従来の溶媒または担体系のいずれかを含んでもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および植物油を含んでもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含有させることによって、必要に応じて行うことができる。多くの場合、浸透圧を調節する薬剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。好ましくは、注射用製剤は血液と等張性である。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組成物中での使用によってもたらされ得る。注射用に適した医薬形態は、静脈内、筋肉内、大脳内、髄腔内、硬膜外注射または注入を含む任意の適切な経路によって送達することができる。
【0133】
滅菌注射溶液は、本発明の化合物を、必要に応じて上に列挙したものなど種々の他の成分を含む適切な溶媒中に必要量加え、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された有効成分を、基本的な分散媒体および上記のものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分プラス任意の追加の所望の成分の予め滅菌濾過された溶液の真空乾燥または凍結乾燥である。
【0134】
他の医薬形態としては、本発明の経口および経腸製剤が挙げられ、活性化合物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に製剤化することができ、またはハードまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入することができ、錠剤にすることができ、またはそれはダイエットの食品に直接組み込むことができる。経口治療用投与の場合、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠または舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態で使用され得る。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるような量である。
【0135】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下に列挙する成分を含んでもよい:ガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香味などの香味剤を添加してもよい。投薬単位形態がカプセルである場合、それは、上記タイプの材料に加えて、液体キャリアを含有してもよい。様々な他の材料が、コーティングとして、または他の方法で投与単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、砂糖、またはその両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、チェリーまたはオレンジフレーバーなどの色素および香味料を含有してもよい。もちろん、投与単位形態を調製するのに使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、使用される量において実質的に非毒性でなければならない。さらに、本発明の化合物は、活性ペプチドを腸の特定領域に特異的に送達させるものを含む徐放性製剤および処方に組み込んでもよい。
【0136】
液体製剤は、胃または食道管を介して経腸的に投与することもできる。経腸製剤は、乳化基剤または水溶性基剤などの適切な基剤と混合することによって坐剤の形態で調製することができる。本発明の化合物を局所、鼻腔内、膣内、眼内などに投与することも可能であるが、必要ではない。
【0137】
医薬上許容されるビヒクルおよび/または希釈剤には、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が有効成分と適合しない場合を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。
【0138】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために単位投与形態で組成物を処方することが特に有利である。本明細書で使用される投薬単位形態とは、治療される哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を意味する;各単位は、所要の医薬上許容されるビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を含有する。本発明の新規な投与単位形態の詳細は、(a)活性物質の独特な特性および達成すべき特定の治療効果、および(b)本明細書に詳細に開示されているように身体の健康が損なわれている疾患状態を有する生きている対象における疾患の治療のために配合されている活性物質の技術に固有の制限、によって決定され、それらに直接依存する。
【0139】
上記のように、主な有効成分は、投薬単位形態の適切な医薬上許容されるビヒクルを用いて、治療有効量で簡便かつ効果的に投与するために配合され得る。単位投薬形態は、例えば、主要活性化合物を0.25μg〜約2000mgの範囲の量で含有することができる。比率で表して、活性化合物は、約0.25μg〜約2000mg/mLの担体中に存在し得る。補助有効成分を含有する組成物の場合、投与量は、前記成分の通常の投与量および投与様式を参照して決定される。
【0140】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」は、所望の投与レジメンに従って投与された場合に、所望の治療活性を提供する化合物の量を指す。投薬は、1回、または数分または数時間の間隔で、またはこれらの期間のいずれかに連続して行ってもよい。適切な投薬量は、投薬当たり約0.1ng/kg体重〜1g/kg体重の範囲内であり得る。典型的な投薬量は、投薬当たり1mg/kg体重〜1g/kg体重の範囲のような、投薬当たり1μg/kg体重〜1g/kg体重の範囲である。1つの実施形態において、投薬量は、投薬当たり1mg/kg体重〜500mg/kg体重の範囲であり得る。別の実施形態において、投薬量は、投薬当たり1mg/kg体重〜250mg/kg体重の範囲であり得る。さらに別の実施形態において、投薬量は、投薬当たり1mg/kg体重〜100mg/kg体重の範囲、例えば、投薬当たり50mg/kg体重までの範囲であり得る。
【0141】
本明細書で使用される用語「治療(treatment)」および「治療する(treating)」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の治療を含み、エンドソームPARシグナル伝達によって媒介される疼痛を治療することを含む。本明細書で使用する用語「予防(prevention)」および「予防する(preventing)」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の予防(prevention)または予防(prophylaxis)を含み、エンドソームPARシグナル伝達によって媒介される疼痛の予防を含む。
【0142】
本願明細書および後の特許請求の範囲を通じて、文脈が他に要求しない限り、単語「含む(comprise)」および「含む(comprises)」または「含む(comprising)」のような変形は、規定された要素もしくは要素もしくはステップのグループを含有するが、任意の他の要素もしくは要素のグループを除外しないことを示唆すると理解する。
【0143】
本明細書において、先行出版物(またはそれから派生した情報)または公知の事項への言及は、先行出版物(またはそれから派生した情報)または公知の事項が、本明細書が関係する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成する承認または許可またはいずれかの形態の示唆とはみなされず、またみなされるべきでない。
【0144】
本発明を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0145】
実施例1:受容体輸送のBRET研究
受容体輸送のBRET研究を行って、異なるアゴニストで刺激した際のPAR内在化(RIT−venus)および初期エンドソームへの輸送(Rab5a−venus)を定量化した。
【0146】
方法
10cmディッシュ内で〜50%の集密度を達成した後、PEIをトランスフェクション剤として使用して、HEK293細胞を1μgのPAR−RLuc8および4μgのRIT−venusまたはRab5a−venusで一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をポリ−D−リジンコート96ウェルイソプレートに播種した。翌日、細胞培養培地を1×HBSS(+0.28g HEPES/100ml、pH7.40);30μMのDyngo4a(Dyn4a);30μMの不活性Dyn4aコントロール;30μMPitStop2(PS2)または30μM非活性PS2コントロール;のいずれかと交換した。使用時には、エンドサイトーシス阻害剤を1×HBSS+1%ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。培養培地の交換後、コレンテラジンH[5μM]を添加する前に、細胞を37℃で30分間平衡化させた。さらに5分間インキュベートした後、LUMIstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG LabTech、Offenburg、ドイツ)を使用してBRETを評価し、発光を535nmおよび475nmで読み取った。ビヒクル(1×HBSS+/−1%DMSO)またはプロテアーゼを添加する前に4分のベースラインを得、次いで測定をさらに30分間続けた。BRET比は、LUMIstar MARS分析ソフトウェアを使用して計算し、次にMicrosoft Excel 2013でベースラインおよびビヒクル処理に補正した。
【0147】
結果
最初の輸送実験は、トリプシンがPARの内在化をもたらす唯一のアゴニストであることを示した。10nM濃度のトリプシンで受容体を刺激すると、原形質膜マーカーによるBRETの時間依存的な減少が生じた(図1a)。これは、受容体と初期エンドソームマーカーとの間のBRETの増加と一致した(図2a)。このような応答は受容体の内在化と一致しており、エラスターゼまたはカテプシンSで受容体を刺激しても観察されなかった。したがって、エラスターゼおよびカテプシンS活性型PARは原形質膜からのシグナル伝達しかできないと考えられる。
【0148】
受容体の内在化を誘導するトリプシンの能力は、細胞に一連の濃度を投与することによってさらに探求された。トリプシン誘発性のPARの内在化は濃度依存的であることが見出された(図1bおよび2b)。両方のマーカーを用いたアッセイでも、同様のEC50濃度が得られた(〜2.8nM)。
【0149】
PS2によるクラスリンの薬理学的阻害は、内在化の阻害と一致して、トリプシン刺激時のルシフェラーゼタグ付き受容体と両方のマーカーとの間のBRETの大きさを減少させた。Dyn4aによるダイナミンの阻害の際に、トリプシン誘発内在化のそれほど顕著ではない阻害が見られた(図1cおよび2c)。
【0150】
実施例2:区画化されたERKシグナル伝達を評価するための全集団FRET
フェルスター(Forster)共鳴エネルギー移動(FRET)を使用して、異なるアゴニストで刺激したときの異なる細胞内コンパートメント内のPAR媒介ERKを特徴付けた。区画化されたシグナルの発生における内在化の役割を評価するために受容体の内在化を廃止することが示されている薬理学的および遺伝学的アプローチを採用した後にアッセイを繰り返した。
【0151】
方法
10cmディッシュ内で〜50%の密集度を達成した後、PEIをトランスフェクション剤として使用して、HEK293細胞を、N末端HAエピトープタグ(PAR−HA)を有する2.5μgのPARおよび2.5μgの所望のFRETバイオセンサーでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をポリ−D−リジンコート黒色96ウェルイソプレートに播種した。一晩の血清制限後、細胞プレーティングの48時間後にFRETを評価した。FRET実験を開始する前に、細胞培養培地を1×HBSS(+0.28g HEPES/100ml、pH7.40);30μM Dyngo4a;30μM不活性Dyngoコントロール;30μM PitStop2または30μM不活性PitStop2コントロール;のいずれかと交換した。使用時には、エンドサイトーシス阻害剤を1×HBSS+1%ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。培養培地の交換後、細胞を37℃で30分間平衡化させた。次いで、FRERをPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG LabTech、Offenburg、ドイツ)を用いて決定し、細胞を430nmで順次励起し、発光を550nmおよび490nmで読み取った。ビヒクル(1×HBSS+/−1%DMSO)、プロテアーゼまたは1μM PDBu(陽性コントロールとして供給)を添加する前に4分のベースラインを得た。次いで、測定をさらに30分間毎分続けた。次にFRET比を計算し、Microsoft Excel 2013でベースラインとビヒクル処理に補正した。
【0152】
結果
エラスターゼではなくトリプシンは、細胞質内および核内でERKシグナルを生成することができた(図3aおよび4a)。これらのコンパートメントにおけるトリプシン誘発ERKシグナルは濃度依存的であることが示された(図3bおよび4b)。サイトゾルERKリン酸化は、PS2によるクラスリンの阻害を介して受容体の内在化が遮断された場合には減少するが、ダイナミンが阻害された場合には減少しない(図3c)。クラスリンまたはダイナミンの標的化による内在化の遮断は、核内のERKリン酸化の程度に影響を及ぼさないようである(図4c)。
【0153】
実施例3:BRET再感作アッセイ
細胞表面に発現された受容体の様々なプロテアーゼでの刺激に際しての、トランスゴルジネットワーク(TGN38−venus)からのPARのエクスポートを定量するために、BRET再感作アッセイを使用した。受容体再感作の背後にあるシグナル伝達メカニズムを検証するために、シグナル伝達ノードの様々な阻害剤を用いてアッセイを繰り返した。
【0154】
方法
10cmディッシュ内で〜50%の密集度を達成した後、PEIをトランスフェクション剤として用いてHEK293細胞をPAR−RLuc8(1μg)およびTGN38−Venus(4μg)で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をポリ−D−リジンコート96ウェルイソプレートに播種した。翌日にBRET実験を行った。細胞を、1×HBSS(+0.28gHEPES/100ml、pH7.40)、10μMガレイン(Gβγ阻害剤)、100nM CRT0066101(PKD阻害剤)またはGO6983(PKC阻害剤)のいずれか中で、コレンテラジンH[5μM]の添加前に37℃で30分間平衡化させた。5分間インキュベートした後、LUMIstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG LabTech、Offenburg、ドイツ)を用いてBRETを評価し、発光を535nmおよび475nmで読み取った。ビヒクル(1×HBSS)またはプロテアーゼを添加する前に4分のベースラインを得、次いで測定をさらに30分間続けた。BRET比は、LUMIstar MARS分析ソフトウェアを使用して計算し、次にMicrosoft Excel 2013でベースラインおよびビヒクル処理に補正した。
【0155】
結果
ルシフェラーゼタグ付きPARは、3つ全てのアゴニストで細胞表面に発現した受容体を刺激すると、トランスゴルジネットワークから離れることが示された(図5a)。これらの知見は、トランスゴルジネットワーク内に保存されている既存の受容体プールからの受容体補充によって達成されるPAR再感作を支持する。観察されたBRETの減少もまた濃度依存的であることが見出された(データ示さず)。
【0156】
ガレインによるGβγの阻害は、3つすべてのプロテアーゼによる刺激の際にトランスゴルジネットワークからPAR輸送するのを減少させ、このGタンパク質が再感作過程に関与することを示唆している。CRT0066101およびGO6983でそれぞれPKDおよびPKCを阻害した後、正常な輸送に対する顕著ではない効果が見られた。
【0157】
実施例4:ニューロン興奮性のエンドサイトーシス阻害
侵害受容器の興奮性に対するプロテアーゼの効果を評価するために、DRGニューロンをトリプシン、カテプシンS、エラスターゼまたはビヒクル(コントロール)と共にプレインキュベートし、洗浄し、レオベースおよび2倍のレオベースの電流での活動電位放電を洗浄後0分または30分で測定した。
【0158】
方法
DRGニューロンの単離
C57BL/6マウスからのDRG(T9−T13)をコラゲナーゼ(1mg/ml、Worthington Biochemical、Lakewood、IN)およびディスパーゼ(4mg/ml、Roche Life Science、Indianapolis、IN)中で37℃10分間インキュベートすることによって消化し、火で磨いたパスツールピペットで粉砕することによって分散させた。細胞を、24ウェルプレート中のラミニン(0.017mg/ml)およびポリ−D−リジン(2mg/ml)で被覆したカバーガラス上にプレーティングした。ニューロンを、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む10%ウシ胎児血清を含有するF12培地(Cat N668, Lot RNBD5333, Sigma-Aldrich, St Louis, MO USA)中で培養し、電気生理学的研究のため回収(16時間)まで、95%空気および5%CO加湿雰囲気中37℃に維持した。
【0159】
電気生理学
ニューロンの興奮性は、室温で、電流クランプモードで小径ニューロン(<30pF容量)からのアムホテリシンB(240μg/ml)を用いた穿孔パッチクランプ記録によって評価した。−40mVよりも負の静止膜電位を有するニューロンのみを分析した。興奮性の変化は、レオベース(発火活動電位に対する最小電流)および2倍レオベースで放出された活動電位の数を測定することによって定量した。記録はAxopatch 200B増幅器を用いて行い、Digidata 1322Aによってデジタル化し、pClamp 10.1ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて保存および処理した。記録チャンバーを2ml/分で外部溶液で連続的に灌流した。外部溶液(mM)は、NaCl(140)、KCl(5)、HEPES(10)、D−グルコース(10)、MgCl(1)、CaCl(2);3MのNaOHでpHを7.4、であった。ピペット溶液(mM)は、K−グルコン酸塩(110)、KCl(30)、HEPES(10)、MgCl(1)、CaCl(2);1MのKOHでpH7.25、であった。
【0160】
プロテアーゼおよび阻害剤処理
DRGニューロンを、強力な興奮性亢進を引き起こすことが報告されている条件を用いてビヒクル(コントロール)またはプロテアーゼと共にプレインキュベートした:トリプシン(50nM、10分)、エラスターゼ(10U/ml、390nM、30分)、Cat−S 500nM、60分)。次にニューロンを洗浄し、プロテアーゼフリーのF12培地で維持した。洗浄後0または30分にニューロン興奮性を評価した。いくつかの実験において、プロテアーゼとのインキュベーションの前および間に、ニューロンをビヒクル(0.3%DMSO)、Dyngo4a(30μM)またはPitStop2(15μM)と共に30分間インキュベートした。
【0161】
統計分析
結果は平均値±標準誤差として表す。データを分析するために、二元配置分散分析および事後テューキー検定が使用された。
【0162】
結果
興奮性と一致して、すべてのプロテアーゼは0分と30分でレオベースの減少を引き起こした。興奮性に対するクラスリンおよびダイナミンの重要性を評価するために、プロテアーゼとのインキュベーションの30分前およびインキュベーション中に、DRGニューロンをクラスリン阻害剤PitStop2、ダイナミン阻害剤Dyngo4aまたはビヒクル(0.3%DMSO)と共にプレインキュベートした。図6および7に見られるように、PitStop2およびDymgo4aは、0分でレオベースに対するトリプシン、カテプシンSまたはエラスターゼの効果に影響を及ぼさなかった。PitStop2およびDyngo4aは、どちらも30分でレオベースのトリプシン誘発減少を防止したが、30分でレオベースのカテプシンSまたはエラスターゼ誘発減少に影響を及ぼさなかった。ビヒクル、PitStop2もDyngo4aも単独では0分または30分でレオベースに影響を及ぼさなかった。
【0163】
実施例5:プロテアーゼ誘発疼痛に対するエンドサイトーシス阻害剤の効果
方法
侵害受容アッセイ
実験の直前に、マウスを実験装置、室内および研究者に連続した2日において1〜2時間慣れさせた。機械的侵害受容反応を、較正済みフォンフレイフィラメントを用いた後足の足底表面の刺激に対する足引っ込め(paw withdrawal)によって評価した。実験前日に各動物のベースラインを確立するためにフォンフレイスコアを3回測定した。足浮腫は、処置の前後にデジタルノギスを使用して後足の厚みを測定することによって評価した。足底内注射のためにマウスを5%イソフルランで麻酔した。Dyngo4a(50μM)、PitStop2(50μM)またはビヒクル(0.9%NaCl中0.2%DMSO)(全て10μl)を左後足に注射した。30分後、トリプシン(10nM)、Cat−S(2.5μM)またはエラスターゼ(30U)(全て10μl)を同じ左後足に注射した。フォンフレイスコア(左右の足)および足の厚み(左の足)を、プロテアーゼ注射後4時間まで毎時測定した。研究者は試験薬を知らされなかった。
【0164】
結果
トリプシン、Cat−Sおよびエラスターゼの足底内注射は、少なくとも4時間持続した同側足の機械的痛覚過敏、および4時間後に最大となった同側足の浮腫を引き起こした(図8および9)。これらの反応はPARおよびTRPV4に依存することが以前に報告されている。DyngoとPitStopはトリプシン誘発の機械的痛覚過敏を抑制した。Dyngoは、Cat−Sまたはエラスターゼ誘発の機械的痛覚過敏には影響を及ぼさなかった。Dyngoはトリプシン−Cat−Sまたはエラスターゼ誘発性浮腫には影響を及ぼさなかった。エンドサイトーシス阻害剤は対側性足の引っ込め(withdrawal)反応に影響を及ぼさなかった。
【0165】
これらの結果は、PARエンドサイトーシスが、トリプシンによって誘発される侵害受容の中枢伝達に必要であることを示している。PARエンドサイトーシスはカテプシンSまたはエラスターゼ誘発機械的疼痛には必要ではない−これらのプロテアーゼはPARエンドサイトーシスを引き起こさない。PARエンドサイトーシスは、Caを介したSPおよびCGRP放出に依存するプロテアーゼ誘発浮腫には必要ではない。
【0166】
実施例6:エンドソームPARシグナル伝達の阻害
ヒトPAR受容体を安定的に発現するKNRK細胞または内因的にPARを発現するHT−29細胞における2−フロイル−LIGRL−NH(2F)刺激IP蓄積を測定するアッセイにおいて、種々の推定上のPARアンタゴニストの阻害効力を決定した。KNRK細胞におけるATP刺激IP蓄積を阻害するアンタゴニストの能力を測定するアッセイにおいて、非特異的活性を決定した。
【0167】
方法
KNRK−hPAR、KNRKまたはHT−29細胞を、透明なポリ−d−リジンコート96ウェル組織培養プレートに50x10細胞/ウェルの密度で播種した。37℃および5%COで24時間インキュベートした後、培地を除去し、80μlまたは90μlのIP刺激緩衝液(10mM HEPES、1mM CaCl、0.5mM MgCl、4.2mM KCl、146mM NaCl、5.5mMグルコース、50mM LiCl)のいずれかに交換した。刺激緩衝液を添加した後、80μlの緩衝液を含有するウェルに10μlの10×アンタゴニストを加えた。全てのプレートをさらに37℃、5%COで30分間インキュベートした。10μlの2FまたはATPをプレートに添加し、さらに40分間インキュベートした。インキュベーション後、刺激緩衝液を吸引により素早く除去し、25μlの溶解緩衝液(IP−One HTRF(登録商標)アッセイキット、Cisbio)と交換した。溶解物を37℃、5%COで10分間インキュベートした後、溶解物10μlを384ウェルOptiPlate(PerkinElmer)に移し、IP−One HTRF(登録商標)アッセイキット(Cisbio)を用いて検出した。
【0168】
3nMから30μM(10μL容量中に10倍濃度で添加)の範囲のPARアンタゴニストの濃度応答曲線は、30分間インキュベートした後、10μMのATPまたは100nMまたは300nMの2F(EC80、10μL容量中に10倍濃度で添加)を添加した。その後、さらに40分間インキュベートした。
【0169】
結果
以下に示すPARアンタゴニストは、2F刺激IP蓄積を5.39±0.13μMのIC50で阻害することが見出された。
【0170】
【化19】
【0171】
アンタゴニストは、KNRK細胞におけるATP誘導性IP1蓄積に影響を及ぼさず、これは、hPAR−KNRK細胞における2Fの拮抗作用がPAR媒介性であることを示唆している。アンタゴニストはどちらもKNRK細胞におけるベースラインIP蓄積に影響を及ぼさなかった。
【0172】
本発明を定義する請求項は以下の通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】