特表2019-531214(P2019-531214A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-531214ポリビニルアルコールと低極性ポリマーとの混合物の3D印刷法における支持構造体としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531214(P2019-531214A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールと低極性ポリマーとの混合物の3D印刷法における支持構造体としての使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20191004BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20191004BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20191004BHJP
【FI】
   B29C64/40
   B29C64/118
   B29C64/314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-541878(P2019-541878)
(86)(22)【出願日】2017年10月16日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2017076382
(87)【国際公開番号】WO2018073191
(87)【国際公開日】20180426
(31)【優先権主張番号】102016220435.1
(32)【優先日】2016年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】熊木 洋介
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ・バイエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・ブリアース・ケアブレ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA03
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA21
4F213AA23
4F213AA24
4F213AA28
4F213AA29
4F213AA31
4F213AA32
4F213AR06
4F213AR15
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL29
4F213WL62
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、三次元物体を、−支持構造体を形成するために、溶融ポリビニルアルコール(PVOH)を堆積および固化すること、−三次元プリフォームを形成するために、該支持構造体上に溶融熱可塑性ポリマーを堆積及び固化させること、によって製造する方法に関し、該支持構造体は、少なくとも50重量%のポリビニルアルコール(PVOH)と、最大50重量%の、ポリビニルブチラール、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニルターポリマー、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、ポリカプロラクトン、酢酸ビニル−ビニルカプロラクタムコポリマーおよび30〜65%の加水分解度DHを有するポリビニルアルコール(PVOH)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとの混合物からなることを特徴とする。支持構造体は、三次元物体から溶解することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
−支持構造体を形成するために、溶融ポリビニルアルコール(PVOH)を堆積および固化すること、
−三次元プリフォームを形成するために、該支持構造体上に溶融熱可塑性ポリマーを堆積及び固化させること、
により三次元物体を製造する方法であって、
該支持構造体は、少なくとも50重量%のポリビニルアルコール(PVOH)と、最大50重量%の、ポリビニルブチラール、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニルターポリマー、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、ポリカプロラクトン、酢酸ビニル−ビニルカプロラクタムコポリマーおよび30〜65%の加水分解度DHを有するポリビニルアルコール(PVOH)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとの混合物からなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
ポリビニルアルコール(PVOH)は少なくとも10モル%の酢酸ビニル含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコール(PVOH)は少なくとも200〜3000の重合度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコール(PVOH)は、60〜99%の加水分解度DHを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
支持構造体を水に溶解させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
溶融ポリビニルアルコール(PVOH)を少なくとも170℃の温度で堆積させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性ポリマーを、少なくとも140℃の温度で支持構造上に堆積させる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー(PETG)、ポリヒドロキシアルカノエート (PHA)、木材充填複合材料、金属充填複合材料、炭素繊維充填複合材料、ポリビニルブチラール(PVB)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィン、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアクリレート、 ポリメタクリレート、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ポリビニルアルコール(PVOH)は繰り返し単位としてビニルアルコール、酢酸ビニルおよび20モル%までのさらなるオレフィンモノマーを含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
支持構造体を三次元物体から溶解することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
支持構造体を水又はアルコールに溶解させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールと、PVOHのように極性が低いポリマーとの混合物を3D印刷法における支持構造体として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
熱可塑性プラスチックの3D印刷方法は、プラスチックパーツの製造においてますます重要性を獲得しつつある。続いて熱可塑性ポリマーの溶融液滴を堆積させるプロセスのために、中空部分のような特定の構造は熱可塑性ポリマーから直接構築することができない。そのような場合は、まず支持構造体が印刷され、その上又は周囲に、最終構造体が熱可塑性ポリマーから構築される。支持構造体は、所望される構造体を与える熱可塑性ポリマーに影響を及ぼさない熱処理又は溶媒によって除去することができる熱可塑性ポリマーから調製される。
【0003】
支持構造体として使用することができる熱可塑性ポリマーは、例えば、ワックス、ポリエチレングリコール、耐衝撃性ポリスチレン(HIP)ポリ乳酸、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、国際公開第2015/108768号パンフレットに開示されているようなものである。
【0004】
さらに、3D印刷方法における支持材料として、ポリビニルアルコール(PVOH)を用いることも知られており、それは、PVOHが、水又はアルカリ性水溶液に溶解させることによって最終印刷構造体から容易に除去することができる融点範囲の広い熱可塑性材料であるからである。これに関して、3D印刷法における支持体材料としてのスチレン−エチレン−ブタジエンブロックコポリマーSEBSと任意に混合された非晶質PVOHの使用がUS8404171に記載されている。SEBSは、支持構造体の溶解プロセスを付与する無極性ポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/108768号パンフレット
【特許文献2】米国特許第8404171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
支持構造体上に熱可塑性材料の所望の構造体を正確に構築するために、熱可塑性材料と支持構造体との間の接着はできるだけ良好であるべきである。
【0007】
PVOHと、PVOHよりも低い極性を有する特定のポリマーとの混合物は、溶媒和プロセスによる支持構造体のその後の除去に影響を与えることなく、印刷された熱可塑性材料への改善された接着をもたらす。
【0008】
PVOHに添加される極性ポリマーは、支持構造体への混合物の接着性を改善するのに十分に極性であるべきであるが、望ましくない水分吸収を回避しそして支持構造体の水溶性を減少させるには極性でありすぎるべきでない。
【0009】
さらに、このようなポリマーをPVOHに添加すると、得られる化合物のメルトフローレートを高め、加工性を向上させることができ、これはより速い速度で印刷するのに有利である。3d印刷プロセスでは、ポリマーフィラメントは、一般に約0.4mmの小さな直径を有する加熱ノズルを通して押し出される。より速い印刷のためには、フィラメントはより高い速度で加熱ノズルを通して押し出されなければならず、それはポリマーのメルトフローレートが低いと大きな力を必要とする。典型的には、良好な加工性および高いメルトフローレートのPVOHを達成するためには、高濃度の可塑剤が必要とされる。しかし、これは、感湿性の増加およびPVOH化合物の軟化をもたらす。これは、PVOH系3d印刷用フィラメントにとって大きな問題であり、そのためそれらの使用が複雑となる。フィラメントが柔らか過ぎると、駆動ギアからプリントヘッドへのフィラメントの供給は、フィラメントガイドチューブ内でのフィラメントのしわのために、いくつかのプリンタモデルでは困難であり得る。
【0010】
ほとんどのプリンターでフィラメントは空気にさらされるので、高い吸湿性はフィラメントの貯蔵寿命を制限する。フィラメント内の水分レベルが高くなりすぎると、プリントヘッド内の水の蒸発によって気泡および泡が形成され、これがノズルからの制御されない溶融物の放出および劣った印刷品質をもたらす。
【0011】
それ故、本発明の目的は、良好な印刷特性をもたらす、低い吸湿性、高い融解性およびガラス転移温度を有するPVOHおよび可塑剤を含む化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、以下の方法
−支持構造体を形成するために、溶融ポリビニルアルコール(PVOH)を堆積および固化すること、
−三次元プリフォームを形成するために、該支持構造体上に溶融熱可塑性ポリマーを堆積及び固化させること、
によって三次元物体を製造する方法であって、
該支持構造体は、少なくとも50重量%のポリビニルアルコール(PVOH)と、最大50重量%の、ポリビニルブチラール、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニルターポリマー、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、ポリカプロラクトン、酢酸ビニル−ビニルカプロラクタムコポリマーおよび30〜65%の加水分解度DHを有するポリビニルアルコール(PVOH)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとの混合物からなることを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
印刷工程の後、支持構造体、すなわちポリビニルアルコール(PVOH)を含む混合物を、好ましくは水またはアルコールに溶解してもよく、三次元物体のみが残る。支持構造体を溶解するために使用される水は、純水またはアルカリ塩の水溶液であってよい。プロセス溶媒のリサイクル、すなわち既に溶解したPVOHを含有する溶媒の使用も可能である。
【0014】
そのような印刷方法は、「デュアルマテリアル印刷」と称され、一般的に当業者に既知である。
【0015】
好ましくは、本発明の方法で用いられるポリビニルアルコール(PVOH)組成物は、以下の特性のうちの1又は複数を有する:
−水溶性を可能にするための、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%または少なくとも20モル%であって、上限50モル%の酢酸ビニル含有量、
−200〜3000または250〜2000または300〜1500の重合度
−60〜99%または70〜95%または72〜90%の加水分解度DH
−2〜20mPa・sまたは3〜10mPa・sの4%水溶液の粘度。
【0016】
所望に応じて、ポリビニルアルコール(PVOH)組成物は、(組成物の総重量に対して)20重量%までの1又は複数の可塑剤を含んでよい。水、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、トリエタノールアミンのような、PVOHを可塑化することが知られている任意の化合物を使用してよい。
【0017】
ポリビニルアルコール(PVOH)組成物は、酢酸ビニル含有量及び/又は重合度及び/又は加水分解度及び/又は粘度が異なる1又は複数のPVOHグレードを含んでよい。
【0018】
さらに、ポリビニルアルコール(PVOH)は、繰り返し単位として、ビニルアルコール、酢酸ビニル、及び20モル%までのオレフィン系モノマーを有していてよい。適切な繰り返し単位としては、限定されないが、例えば、エチレン、1−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、イソブチレン)、1−ブテン−3,4−ジアセテート、1−ブテン−3,4−ジオール、ビニルエーテル(例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル)、N−ビニルアミド(例えばN‐ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム)、イソプロペニルアセテート、イソプロパノール、アリルアセテート、アリルアルコールが挙げられる。正確な組成は印刷工程の必要に応じて調整することができる。
【0019】
添加剤として使用されるポリビニルアルコール(PVOH)は、好ましくは40〜55%の加水分解度DHを有してよい。
【実施例】
【0020】
加水分解度の測定:
加水分解度は、ビニルアルコール単位に鹸化された酢酸ビニル単位のパーセントを示しており、以下の式によって算出する。EVは、エステル価を意味し、物質1gの鹸化によってエステルから放出される酸の中和に必要とされるKOHのmg値であり、EN ISO3681に従って測定する。
加水分解度=100×(100−0.1535×EV)/(100−0.0749×EV)
【0021】
酢酸ビニル含有量の測定
酢酸ビニル含有量は、加水分解度(DH)から、以下の式によって算出する。
酢酸ビニル含有量=100−DH
【0022】
重合度の測定
重合度は、JIS K6727に従って測定する。具体的には、PVOHの再ケン化処理および精製後に30℃の水中で測定された極限粘度[η](単位:L/g)から、下記式により算出することができる。
重合度=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
【0023】
粘度:
測定のために、蒸留水で4重量%溶液を調製した。測定は、DIN 53 015に従い、落球式粘度計で行った。
【0024】
吸湿量の測定
各サンプルの吸湿量は、23℃、相対湿度50%の恒温室に各化合物の規定量のペレットを入れることによって決定した。重量増加を経時的に測定した。比較のために、14日後の吸湿量を使用する。
【0025】
メルトフローレートの測定
PVOH化合物のメルトフローレートは、21.6kgの荷重をピストンにかける前に、6gの材料を190℃で5分間加熱することによって、Gottfert MP−D機で測定した。1分の追加の予備運転時間の後に測定を開始した。
【0026】
3D印刷用のPVOH組成物の調製
PVOH組成物は、国際公開第03/020823(A1)号パンフレットに記載のように、二軸押出機で配合することによって調製した。任意に、溶融フィラメント製造(FFF)技術による3D印刷試験のためにそれぞれ1.75mmまたは2.85mmの直径を有するフィラメントを、当業者に一般的に知られている方法によって、Dr.Collin 30mm単軸スクリュー押出機で押出した。あるいは、DSM XploreマイクロコンパウンダーMC 15を用いて配合およびフィラメント押出しを行った。
【0027】
デュアルマテリアル3D印刷の接着試験
主な印刷材料としてのポリ乳酸(PLA)上のPVOH組成物の接着強度を決定するために、円形3層サンドイッチ構造を、PVOH化合物から押し出されたフィラメントを用いてFelix Pro 1プリンター上で3d印刷した。PLAの印刷温度は190℃であり、PVOH化合物の印刷温度は205℃であった。両方の材料の印刷速度を25mm/sに設定し、印刷層の厚さを150μmに設定した。試料は下から3×150μmのPLAと、それに続く2×150μmのPVOH化合物と、それに続く4×150μmのPLAからなる。各接着界面の面積は2.35cmである。接着強度は、引張試験機で3d印刷試験片を離層させるのに必要な力を測定することによって決定した。平均値は少なくとも5回の測定から計算した。結果は、最も弱い界面の接着強度を反映する。
【0028】
比較例1
4%溶液粘度5.0mPa・sおよび74%の加水分解度を有するPVOHを調製した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は15.7g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.1%である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20N未満の力が必要である。低いメルトフローレートにより高速での印刷が困難となり、そして低い接着強度は、支持構造体からの印刷物の剥離のために3d印刷中にしばしば問題となる。
【0029】
比較例2
比較例1に記載されたPVOHに、5重量%のトリメチロールプロパンを添加して可塑剤含有量を増加させた。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は46.7g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は3.8%である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能となる。しかしながら、水分吸収が著しく増加すると、空気に曝されたときのフィラメントの貯蔵寿命が短くなる。
【0030】
比較例3
4%溶液粘度5.5mPa・sおよび88%の加水分解度を有するPVOHを調製した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は2.3g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.1%である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20N未満の力が必要である。低いメルトフローレートにより高速での印刷が困難となり、そして低い接着強度は、支持構造体からの印刷物の剥離のために3d印刷中にしばしば問題となる。
【0031】
比較例4
比較例3に記載されたPVOHに、3重量%のトリメチロールプロパンを添加して可塑剤含有量を増加させた。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は9.7g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.7%である。増加したメルトフローレートにより、比較例3よりもいくらか高い速度での印刷が可能となる。しかしながら、吸湿性が増加すると、空気にさらされたときのフィラメントの貯蔵寿命が短くなる。
【0032】
比較例5
4%溶液粘度4.8mPa・sおよび88%の加水分解度を有するPVOHを調製した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は13.1g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.0%である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20N未満の力が必要である。低いメルトフローレートにより高速での印刷が困難となり、そして低い接着強度は、支持構造体からの印刷物の剥離のために3d印刷中にしばしば問題となる。
【0033】
実施例1
比較例1に記載のPVOHに、10重量%の酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー(BASF Sokalan VA64 P)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は42.6g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0034】
実施例2
比較例1に記載のPVOHに、20重量%の酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー(BASF Sokalan VA64 P)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は66.7g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0035】
実施例3
比較例1に記載のPVOHに、30重量%の酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー(BASF Sokalan VA64 P)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は153.8g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0036】
実施例4
比較例1に記載のPVOHに、20重量%の加水分解度50%および10%溶液(メタノール/水1:1)粘度9.5mPa・sを有するPVOHグレードを添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は89.1g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.9%である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。比較例2よりもさらに低いメルトフローレートを達成することができ、そしてより低い吸湿性を有することができ、これはフィラメントのより長い貯蔵寿命にとって有益である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0037】
実施例5
比較例1に記載のPVOHに、5重量%のポリカプロラクトン(Sigma−Aldrich)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は49.0g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0038】
実施例6
比較例1に記載のPVOHに、10重量%のポリカプロラクトン(Sigma−Aldrich)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は65.3g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0039】
実施例7
比較例1に記載のPVOHに、5重量%のABS(Terluran GP−35、INEOS Styrolution)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は25.5g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0040】
実施例8
比較例1に記載のPVOHに、5重量%のPLA(NatureWorks Ingeo 6202D)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は26.7g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例1よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0041】
実施例9
比較例3に記載のPVOHに、5重量%のPLA(NatureWorks Ingeo 6202D)を添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は4.3g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。増加したメルトフローレートにより比較例3より幾分高い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主要な目的物から支持構造体を分離することなく信頼できる印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0042】
実施例10
比較例3に記載のPVOHに、加水分解度50%および10%溶液(メタノール/水1:1)粘度9.5mPa・sを有する10重量%のPVOHグレードを添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は14.0g/10分であり、14日後の23℃および50%相対湿度での吸湿率は2.2%である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例3よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。比較例4よりもさらに低いメルトフローレートを達成することができ、そして、より低い吸湿性を有することができ、これはフィラメントのより長い貯蔵寿命にとって有益である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0043】
実施例11
比較例5に記載のPVOHに、50重量%の加水分解度および9.5mPa・sの10%溶液(メタノール/水1:1)粘度を有する5重量%のPVOHグレードを添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は18.1g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例5よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【0044】
実施例12
比較例5に記載のPVOHに、50重量%の加水分解度および9.5mPa・sの10%溶液(メタノール/水1:1)粘度を有する10重量%のPVOHグレードを添加した。メルトフローレート(190℃、21.6kg)は26.3g/10分である。3d印刷接着試験では、3d印刷試料を層間剥離させるために20Nを超える力が必要である。メルトフローレートの増加により、比較例5よりも速い速度での印刷が可能であり、そして、より高い接着強度により、主構造体から支持構造体を分離することなく信頼性のある印刷が可能である。この化合物で印刷された支持構造体は25℃で水に可溶である。
【国際調査報告】