(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本開示は、例えばポリオ脊髄炎ワクチン製造のためのエンテロウイルスCの製造方法に関する。いくつかの実施態様において、方法は、ウイルスの接種中又は接種前に細胞培養培地にポリソルベートを添加すること、及び/又は固定層バイオリアクターで細胞を培養することを含む。本明細書でさらに提供されるのは、本明細書で開示される製造方法によって製造されるエンテロウイルスC、並びにそれに関連する組成物、免疫原性組成物、及びワクチンである。
界面活性剤の非存在下で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率と比較して、工程(c)で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率が増加する、請求項1に記載の方法。
工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
細胞が哺乳動物細胞であり、任意選択的にVero細胞株が、WHO Vero 10−87、ATCC CCL−81、Vero 76(ATCC 受入番号CRL−1587)、及びVero C1008(ATCC受入番号CRL−1586)からなる群から選択される、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
工程(a)の間の第1の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は約50%を超えて維持され、工程(b)の間の第2の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は約50%を超えて維持される、請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
1つ以上のベータ―プロピオラクトン(BPL)、ホルマリン、又はバイナリーエチレンイミン(BEI)でエンテロウイルスCを不活性化することをさらに含む、請求項1〜18の何れか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な料金の支払いにより、官庁により提供されるであろう。
【
図1】
図1は、いくつかの実施態様による、固定層バイオリアクターを用いたウイルス製造のための上流処理工程の例示的スキームを示す。WVS:ワーキングウイルスシード。
【
図2】
図2A及び2Bは、ポリオウイルスD抗原生産によって反映されるように、細胞生産性に対する感染時細胞密度(CDI)の影響を示す。生産性は2つの方法でプロットされている:「体積(volumetric)」生産性(DU/mL;
図2A)及び「細胞当たり(per cell)」生産性(DU/10
6細胞;
図2B)。
【
図3】
図3は、体積ポリオウイルスD抗原生産(DU/mL)によって反映されるように、経時的な細胞生産性に対するウイルス感染多重度(MOI)の影響を示す。
【
図4】
図4は、ウイルス安定性に対するT―フラスコ(CS対照、四角)と比較したiCELLis NANO(登録商標)(菱形)中の細胞増殖の影響を示す。
【
図5-1】
図5A−5Cは、iCELLis NANO(登録商標)における細胞生産性に対するpH及び溶存酸素(DO)調節の影響(
図5A)、並びに調節あり(「対照」)及び調節なし(「調節なし」)の経時的なpH(
図5B)及びDOレベル(
図5C)を示す。
【
図6】
図6は、iCELLis NANO(登録商標)における細胞外(四角)及び細胞内(菱形)D抗原の経時的な体積生産を示す。
【
図7-1】
図7Aは、iCELLisNANO(登録商標)(「NANO 1」及び「NANO 2」)で増殖された2つのバッチと比較して、マイクロキャリア(例えば、CYTODEX(商標))上で増殖した細胞について、細胞あたりの生産性、グルコース不足、及び感染時の乳酸脱水素酵素(LDH)活性を比較する。
図7Bは、本明細書に記載のようにマイクロキャリア(例えばCYTODEX(商標))上で増殖した細胞、文献に記載されているようにマイクロキャリア(「Lit.cytodex(商標)」)上で増殖した細胞、及びiCELLisNANO(登録商標)で増殖された2つのバッチ(「iCELLis中のCytodex copy−paste」及び「Best run」)の細胞当たりの生産性を比較する。
図7C及び7Dは、本明細書に記載のようにマイクロキャリア上で増殖した細胞、又は文献(
図7C中の「Cytodex(商標)T」及び「Cytodex(商標)lit」)に記載されるようにマイクロキャリア上で増殖させた細胞の細胞当たりの生産性を、iCELLis NANO(登録商標)において増殖させた2つのバッチ(
図7Dの「H」と「P」)と比較する。
図7E及び7Fは、細胞生産性に対する感染期の細胞培養培地中の初期グルコース濃度の影響(D抗原/cm
2)を示す。
図7Gは、経時的な容積測定細胞生産性(D抗原/mL)に対する感染前のグルコース不足の影響を示す。
図7Hは、経時的な体積生産性(D抗原/mL)に対する感染時の追加のグルコースの添加の効果を示す。
【
図8-1】
図8A−8Cは、ポリソルベート(Tween−80)の添加によるウイルス収率の増加を示す。
【
図9-1】
図9A及び9Bは、いくつかの実施態様による、固定層バイオリアクターを使用したウイルス製造のための下流処理工程の例示的スキームを図示する。本明細書に記載の改良された下流プロセスと既存のプロセスとの間の比較を
図9Aに示す。下流の精製及び不活性化の詳細な流れ図を
図9Bに示す。
【
図10】
図10は、特定の下流処理パラメータを修正することの効果を評価するために使用される3セットの実験条件(実験D、実験8、及び実験C)の要約を提供する。
【
図11-1】
図11A〜11Eは、SDS―PAGE銀染色を用いて、
図10に示される実験条件によって産生されたポリオウイルスの精製を示す。示されているのは、実験8からのS2ウイルスの精製(
図11A)、実験DからのS2ウイルスの精製(
図11B)、実験Dによって精製されたS2ウイルス(
図11Cのレーン1)と既存のプロトコルを用いて精製されたS2ウイルス(
図11Cのレーン2)との比較、実験DからのS3ウイルスの精製(
図11D)、実験Dによって精製されたS3ウイルス(
図11Eのレーン1)と既存のプロトコルを使用して精製されたS3ウイルス(
図11Eのレーン2)との比較である。示されているように、各レーンは特定の精製工程の生成物を表す。FT:フロースルー。
【
図12】
図12A及び12Bは、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いたD抗原(DU)溶出に対する緩衝液組成及びpHのさまざまな組み合わせの効果を示す。5×(
図12A)及び3×(
図12B)希釈物を示す。ポリソルベート(「Tween」)を含む(+)及び含まない(−)条件は、示される通りである。
【
図13】
図13A及び13Bは、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたD抗原(DU)溶出に対する緩衝液組成及びpHのさまざまな組み合わせの効果を示す。5×(
図13A)及び3×(
図13B)希釈物を示す。ポリソルベート(「Tween」)を含む(+)及び含まない(−)条件は、示される通りである。
【
図14-1】
図14A〜14Dは、陽/陰イオン交換クロマトグラフィー及びクエン酸(菱形)、トリス(四角)又はリン酸(三角)緩衝液での溶出を用いたpHの関数としての結合効率を示す。
図14A:ポリソルベートなしの陰イオン交換。
図14B:ポリソルベートありの陰イオン交換。
図14C:ポリソルベートなしの陽イオン交換。
図14D:ポリソルベートありの陽イオン交換。全ての条件は5倍希釈係数を使用する。
図14E〜14Hは、AcroDisc(登録商標)スケールでのウイルスの陰イオン交換クロマトグラフィー溶出を示す。
図14E及び14Gは、それぞれ、ポリソルベートなし又はポリソルベートありでの、4倍希釈係数及びトリス pH8.0緩衝液を用いて得られた溶出プロファイルを示す。
図14Fは、
図14Eに示す実験の各画分のウイルス収率を示す。
図14Hは、SDS―PAGE銀染色を用いた
図14Gに示す実験の各画分の純度を示す。
図14I〜14Lは、AcroDisc(登録商標)スケールでのウイルスの陽イオン交換クロマトグラフィー溶出を示す。
図14I及び14Kは、それぞれ、ポリソルベートなし又はポリソルベートありでの、4倍希釈係数及びクエン酸pH5.5緩衝液を使用して得られた溶出プロファイルを示す。
図14Jは、
図14Iに示す実験の各画分のウイルス収率を示す。
図14Lは、SDS―PAGE銀染色を用いた
図14Kに示す実験の各画分の純度を示す。
【
図15-1】
図15A〜15Cは、回収率に対する陽イオン及び陰イオン交換条件の影響を試験するための実験設定を示す。
図15A:試験した陽イオン交換条件。
図15B:試験した陰イオン交換条件。
図15C:工程及び全体的な回収に対する各条件の影響。0.05%のTWEEN(登録商標)−80が全ての緩衝液中に存在した。
【
図16-1】
図16A及び16Bは、緩衝液濃度の増加及び陽イオン交換溶出pH及び陰イオン交換ローディングpHの低下の影響を試験するための実験設定を示す。
図16A:試験した条件。
図16B:回収に対する緩衝液濃度の増加及び陽イオン交換溶出pH及び陰イオン交換ローディングpHの低下の結果(DSP1.0の結果は上の2行に表示され、DSP1.1の結果は下の2行に表示される)。
【
図17】
図17Aは、回収に対する希釈強度の効果を示す(総ロードに対するパーセンテージとして、総D抗原によりアッセイされる)。回収率は、溶出液、並びにフロースルー及び洗浄液(「FT+洗浄」)に示されている。無希釈条件下でもフロースルー中にDUは回収されなかったことに注意されたい。
図17Bは、陽イオン交換膜をロードするために使用される希釈係数の関数としてのフロースルー中のS2ポリオウイルスの割合(例えば、D抗原によってアッセイされるように)を示す。
【
図18-1】
図18A及び18Bは、陰イオン交換溶出プロファイルに対する溶出緩衝液の変化に対する効果を示す。pH8.0のリン酸緩衝液を用いたpHベースの溶出を使用すること(
図18A)及びpH8.0のリン酸緩衝液中でNaClを用いた塩ベースの溶出を使用すること(
図18B)の結果として得られた溶出プロファイルを示す。
【
図19】
図19は、ウイルス産生をスケールアップするための例示的な下流処理フローの概略図を提供する。
【
図21】
図21Aは、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを用いたウイルス製造のための全プロセスフローチャートを提供する。
図21Bは、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを用いた上流プロセス工程の最適化パラメータを示す。
【
図22】
図22は、完全25Lスケールの生産プロセスの結果を示す。
【
図23-1】
図23Aは、完全25Lスケールの生産プロセスの下流処理工程を示す。
図23B〜23Dは、2つの異なる導電率での陽イオン交換クロマトグラフィーからのウイルスの溶出を示す。
図23E〜
図23Gは、完全25Lスケールの生産プロセスからの陰イオン交換クロマトグラフィーからの溶出プロファイルを示す。
図23Hは、S2ウイルスの精製のための下流プロセスパラメータを示す。
図23Iは、下流プロセスの各工程についての、体積;D抗原力価、総量、及び回収率;総タンパク質;タンパク質/D抗原比を示す。
【
図24-1】
図24A〜24Cは、iCELLis(登録商標)500/66m
2及びNANOシステムにおけるウイルス製造の上流プロセスパラメータの差及び全体的生産性(DU)に対するそれらの影響を示す。
【
図25-1】
図25Aは、ウイルスの回収及び精製のための上流処理工程を要約する。
図25Bは、ウイルスの回収及び精製のための下流処理工程を要約する。
【
図26-1】
図26Aは、陽イオン交換膜上への株S1のpHローディングを示す。
図26B及び26Cは、陽イオン交換膜からの株S1のNaCl溶出を示す。
【
図27-1】
図27Aは、陰イオン交換膜へのS1株のpHローディングを示す。
図27Bは、陰イオン交換膜からの株S1のNaCl溶出を示す。
【
図28-1】
図28Aは、陽イオン交換膜への株S3のpHローディングを示す。
図28B及び28Cは、陽イオン交換膜からの株S3のNaCl溶出を示す。
【
図29-1】
図29Aは、陰イオン交換膜への株S3のpHローディングを示す。
図29Bは、陰イオン交換膜からの株S3のNaCl溶出を示す。
【
図31】
図31A及び
図31Bは、いくつかの実施態様による、NaCl(
図31A)及びpH(
図31B)溶出をそれぞれ使用した完全プロセス実行からの各プロセス工程でのウイルス回収を示す。これらの実験には株S2を用いた。
【
図32】
図32は、株S2を使用したプロセス実行を用いた陰イオン交換膜のNaCl溶出から得られたクロマトグラフを示す。特定の画分及びそれらの対応する容量は示されている通りである。
【
図33-1】
図33A及び
図33Bは、さまざまなプロセス工程の後に株S2を使用したプロセス実行から得られたVP1、VP2、及びVP3を示す。
図33AはNaCl溶出の結果を示し、
図33BはpH溶出の結果を示す。
【0024】
詳細な説明
一般的技術
本明細書に記載又は参照される技術及び手順は一般によく理解されており、当業者によって従来の方法論、例えば、以下に記載されている広く利用されている方法論などを使用して一般的に使用される:Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003)); the series Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.):PCR 2:A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987)); Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology:A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture(R.I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); PCR:The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies:A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal Antibodies:A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using Antibodies:A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995); and Cancer:Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993).
【0025】
細胞培養
本開示のある態様は、エンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を製造するための方法に関する。エンテロウイルスCを製造することは、例えば、限定されないが、精製ウイルス、不活性化ウイルス、弱毒化ウイルス、組換えウイルス、又はサブユニットワクチン用の精製及び/又は組換えウイルスタンパク質を含むワクチン及び/又は免疫原性組成物に有用であり得る。
【0026】
いくつかの実施態様において、本開示の細胞は哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物細胞株)である。本開示の少なくとも1つのウイルスの増殖に適した細胞株は、好ましくは哺乳動物起源のものであり、限定されないが、Vero細胞(サル腎臓由来)、ウマ、ウシ(例:MDBK細胞)、ヒツジ、イヌ(例えば、イヌ腎臓由来のMDCK細胞、ATCC CCL34 MDCK(NBL2)又はMDCK 33016、国際公開第97/37001号に記載の寄託番号DSM ACC 2219)、ネコ及びげっ歯類(例えば、BHK21―Fなどのハムスター細胞、HKCC細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞))を含み、例えば、成体、新生児、胎児、及び胚を含む、多種多様な発生段階から得ることができる。特定の実施態様において、細胞は不死化されている(例えば、PERC.6細胞、WO01/38362及びWO02/40665に記載され、ECACC寄託番号96022940の下で寄託されたものとして)。好ましい実施態様では、哺乳動物細胞が利用され、1つ以上の以下の非限定的な細胞型から選択され得、かつ/又はそれに由来し得る:線維芽細胞(例えば、真皮、肺)、内皮細胞(例えば、大動脈、冠状、肺、血管、真皮微小血管、臍帯)、肝細胞、ケラチノサイト、免疫細胞(例:T細胞、B細胞、マクロファージ、NK、樹状細胞)、乳房細胞(上皮など)、平滑筋細胞(血管、大動脈、冠状動脈、動脈、子宮、気管支、子宮頸部、網膜の周皮細胞)、メラニン形成細胞、神経細胞(例えば星状細胞)、前立腺細胞(上皮、平滑筋など)、腎細胞(例、上皮細胞、メサンギウム細胞、近位尿細管)、骨格細胞(例、軟骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞、筋細胞(例、筋芽細胞、骨格筋、平滑筋、気管支)、肝細胞、網膜芽細胞及び間質細胞。WO97/37000及びWO97/37001は、懸濁液中及び無血清培地中で増殖することができ、かつウイルスの産生及び複製に有用である動物細胞及び細胞株の産生を記載している。
【0027】
いくつかの実施態様において、細胞は哺乳動物腎臓細胞である。適切な哺乳動物腎臓細胞の例には、限定されないが、MDCK、MDBK、BHK−21、Vero、HEK、及びHKCC細胞が含まれる。
【0028】
特定の実施態様において、細胞はVero細胞である。適切なVero細胞株の例には、限定されないが、WHO Vero 10−87、ATCC CCL−81、Vero 76(ATCC受入番号CRL−1587)、又はVero C1008(ATCC受入番号CRL−1586)が含まれる。
【0029】
いくつかの実施態様において、細胞は接着細胞である。本明細書中で使用される場合、接着細胞とは、培養中に基材に接着又は固着する任意の細胞をいう。
【0030】
上記の細胞型の培養条件は公知であり、さまざまな刊行物に記載されているか、あるいは培養培地、サプリメント、及び条件は、例えばCambrex Bioproducts(East Rutherford,N.J.)のカタログ及び追加の文献に記載されるように商業的に購入できる。
【0031】
既知の無血清培地には、Iscove培地、Ultra―CHO培地(BioWhittaker)又はEX―CELL(JRH Bioscience)が含まれる。通常の血清含有培地には、イーグル基礎培地(BME)又は最小必須培地(MEM)(Eagle,Science,130、432(1959))又はダルベッコの改良イーグル培地(DMEM又はEDM)が含まれ、これらは通常、最大10%のウシ胎児血清又は同様の添加物とともに使用される。場合によっては、最小必須培地(MEM)(Eagle,Science,130,432(1959))又はダルベッコの改変イーグル培地(DMEM又はEDM)をいかなる血清含有サプリメントもなしで使用することができる。PF―CHO(JHR Bioscience)のような無タンパク質培地、ProCHO 4CDM(BioWhittaker)又はSMIF 7(Gibco/BRL Life Technologies)のような既知組成培地、及びPrimactone、Pepticase又はHyPep TMのような分裂促進ペプチド(全てQuest Internationalから)又はラクトアルブミン加水分解物(Gibco及び他の製造業者)もまた先行技術において十分に知られている。植物加水分解物に基づく培地添加剤は、ウイルス、マイコプラズマ又は未知の感染性物質による汚染を排除できるという特別な利点を有する。
【0032】
本開示の方法の特定の態様は、細胞が培養される密度に関する。いくつかの実施態様において、第1の培地中で培養された細胞の密度又は絶対数は、細胞培養物が播種される、すなわちウイルス接種前の細胞の密度又は絶対数を指し得る。本明細書に記載されるように、かつ理論に束縛されることを望むものではないが、細胞をより低密度で培養することは、ウイルス接種時の細胞密度を減少させ、細胞の増殖期を延長し、かつ/又は、接種物の大きさ、労働時間、前培養工程におけるフットプリント、インキュベーターの数、及び/又は汚染の危険性を含むがこれらに限定されない要因を減らすのに有利であると考えられている。
【0033】
いくつかの実施態様において、約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が培養される。例えば、いくつかの実施態様において、最初の細胞培養を開始するための播種密度は、約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2である。いくつかの実施態様において、約4,000細胞/cm
2;約5,000細胞/cm
2;約6,000細胞/cm
2;約7,000細胞/cm
2;約8,000細胞/cm
2;約9,000細胞/cm
2;約10,000細胞/cm
2;約11,000細胞/cm
2;約12,000細胞/cm
2;約13,000細胞/cm
2;約14,000細胞/cm
2;約15,000細胞/cm
2;又は約16,000細胞/cm
2が、その間の任意の値を含み、培養される。いくつかの実施態様において、接種前の細胞密度は、以下の密度(細胞/cm
2)の何れかより小さい:16,000;15,500;15,000;14,500;14,000;13,500;13,000;12,500;12,000;11,500;11,000;10,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;又は4,500。いくつかの実施態様において、接種前の細胞密度は、以下の密度(細胞/cm
2)の何れかよりも大きい:4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;10,000;10,500;11,000;11,500;12,000;12,500;13,000;13,500;14,000;14,500;15,000;又は15,500。すなわち、接種前の細胞密度は、上限16,000;15,500;15,000;14,500;14,000;13,500;13,000;12,500;12,000;11,500;11,000;10,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;又は4,500と、独立して選択される下限4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;10,000;10,500;11,000;11,500;12,000;12,500;13,000;13,500;14,000;14,500;15,000;又は15,500を有する任意の範囲の密度であり得、ここで、下限は上限よりも小さい。特定の実施態様において、約5,000細胞/cm
2が培養される。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種するために、約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が初期播種密度として使用され、その後、約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2に達するまで培養される。
【0034】
いくつかの実施態様において、本開示の細胞は、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染する条件下で、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種される。エンテロウイルスCが細胞に感染する条件は当技術分野において公知であり、細胞の型、エンテロウイルスCの型、培地、温度、細胞密度、ウイルス密度(例えば、MOI)、細胞増殖速度、細胞継代数などに依存し得る。エンテロウイルスが細胞に感染する条件の例示的な説明は以下に提供される。例えば、いくつかの実施態様において、細胞培養物は、
図8Bに記載の条件のうちの1つ以上を任意の組み合わせで使用して培養及び/又は接種することができる。
【0035】
本開示の方法の特定の態様は、ウイルス接種時の細胞密度に関する。本明細書に記載されるように、かつ理論に束縛されることを望むものではないが、感染時の細胞密度はウイルス産生(例えば、ウイルス生産性)に影響を及ぼし得ると考えられる。ウイルス接種時の最適細胞密度は、特異的(細胞あたり)生産性、体積(回収物1mLあたり)生産性、及び/又は安定性の増加、並びに培地消費及び/又は回収物中の汚染物質の減少をもたらし得る。
【0036】
いくつかの実施態様において、約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2の間でエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種する。いくつかの実施態様において、約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2の間でエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種する。いくつかの実施態様において、約150,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2の間でエンテロウイルスCを接種する。いくつかの実施態様において、約120,000細胞/cm
2〜約200,000細胞/cm
2の間でエンテロウイルスCを接種する。いくつかの実施態様において、接種時の細胞密度は、以下の密度(細胞数/cm
2):300,000;275,000;250,000;225,000;200,000;175,000;150,000;125,000;100,000;75,000;50,000;45,000;40,000;35,000;30,000;25,000;20,000;17,500;15,000;12,500;10,000;7,500;又は5,000の何れかより小さい。いくつかの実施態様において、接種時の細胞密度は、以下の密度(細胞/cm
2):2,500;5,000;7,500;10,000;12,500;15,000;17,500;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;75,000;100,000;120,000;150,000;175,000;200,000;225,000;250,000;又は275,000の何れかよりも大きい。すなわち、接種時の細胞密度は、上限300,000;275,000;250,000;225,000;200,000;175,000;150,000;125,000;100,000;75,000;50,000;45,000;40,000;35,000;30,000;25,000;20,000;17,500;15,000;12,500;10,000;7,500;又は5,000と、独立して選択される下限2,500;5,000;7,500;10,000;12,500;15,000;17,500;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;75,000;100,000;120,000;150,000;175,000;200,000;225,000;250,000;又は275,000を有する任意の範囲の密度であり得、ここで、下限は上限よりも小さい。いくつかの実施態様において、約5,000細胞/cm
2が、エンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種される。
【0037】
本開示の方法の特定の態様は、本開示の細胞が(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3などのエンテロウイルスCウイルスの接種の前、最中、又は後で)培養される体積/表面積比に関連する。本明細書に記載されるように、かつ理論に束縛されることを望むものではないが、細胞が培養される体積/表面積比はウイルス産生(例えば、ウイルス生産性)に影響を及ぼし得ると考えられる。最適な体積/表面積比は、特異的(細胞当たりの)生産性、体積(回収物1mL当たり)生産性、及び/又は安定性の増加、並びに培地消費及び/又は回収物中の汚染物質の減少をもたらし得る。
【0038】
いくつかの実施態様において、本開示の細胞が培養される体積/表面積比は、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2である。いくつかの実施態様において、本開示の細胞が培養される体積/表面積比は、接種前に細胞が培養される条件を指す。いくつかの実施態様において、本開示の細胞が培養される体積/表面積比は、接種中に細胞が培養される条件を指す。いくつかの実施態様において、本開示の細胞が培養される体積/表面積比は、接種後に細胞が培養される条件を指す。いくつかの実施態様において、細胞は接着細胞であり、細胞は、例えば本明細書に記載されているように、及び/又は当技術分野で公知のように、マトリクスを備える固定層中で培養される。いくつかの実施態様において、体積/表面積比は、約0.3,0.275,0.25,0.225,0.2,0.175,0.15又は0.125の何れかの比(mL/cm
2)よりも小さい。いくつかの実施態様において、体積/表面積比は、約0.1、0.125、0.150、0.175、0.2、0.225、0.25、又は0.275の何れかの比(mL/cm
2)よりも大きい。すなわち、体積/表面積比は、上限0.3、0.275、0.25、0.225、0.2、0.175、0.15、又は0.125と、独立して選択される下限0.1、0.125、0.150、及び0.25を有する任意の範囲の比であり得;ここで、下限は上限よりも小さい。
【0039】
本開示の方法の特定の態様は、本開示の細胞培養物に接種するために使用されるエンテロウイルスのMOIに関する。本明細書では、MOIは当技術分野で認められている意味と一致して使用され、すなわち、ウイルス標的(例えば、本開示の細胞)に対するウイルス剤(例えば、エンテロウイルスCウイルス)の既知の比率又は予測される比率である。MOIは、少なくとも1つのウイルスに感染している培養物中の細胞の割合に影響を及ぼすことが当該技術分野において知られている。より高いMOIはウイルス生産性を増加させ得るが、ある範囲のMOIでは、感染率は飽和し得、閾値又は所望の感染率に到達した後にMOIを減少させることは対応するウイルスシードバンクの量及びコストを下げ得る。
【0040】
いくつかの実施態様において、細胞にエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を約0.01から約0.0009のMOIで接種する。いくつかの実施態様において、MOIは以下のMOI:約0.010、0.008、0.005、0.002、又は0.0010の何れかよりも小さい。いくつかの実施態様において、MOIは、以下のMOI:約0.0009、0.0010、0.002、0.005、0.008、又は0.010の何れかよりも大きい。すなわち、MOIは、上限0.010、0.008、0.005、0.002、又は0.0010と、独立して選択される下限0.0009、0.0010、0.002、0.005、0.008、又は0.010を有する任意の範囲のMOIであり得、ここで下限は上限よりも小さい。
【0041】
本開示の方法の特定の態様は、本開示の細胞が接種されるpH(例えば、細胞を含む細胞培養培地のpH)に関する。本明細書に記載されるように、pHは細胞ウイルス産生に影響を及ぼし得る。
【0042】
いくつかの実施態様において、細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHでエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種される。いくつかの実施態様において、接種時のpHは、約7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、又は6.9の何れかのpHより小さい。いくつかの実施態様において、接種時のpHは、約6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、又は7.3の何れかのpHより大きい。すなわち、接種時のpHは、上限7.4、7.3、7.2、7.1、7.0、又は6.9と、独立して選択される下限6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、又は7.3を有する任意の範囲のpHであり得、ここで下限は上限よりも小さい。例えば、いくつかの実施態様において、接種時のpHは、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、又は約7.4であり得る。
【0043】
感染すると、本開示の感染細胞は、第2の細胞培養培地中で(例えば、本開示の固定層中で)培養され得る。本明細書に記載されるように培養された細胞は、ウイルス接種の前に第1の培地で、及び/又はウイルス接種の後に第2の培地で培養され得る。例えば、いくつかの実施態様において、本開示の細胞は、第1の細胞培養培地中で培養され得る。次いで、第1の細胞培養培地を除去し、細胞を任意に(例えば、PBSなどの水性緩衝液で)すすぎ、第2の培地を細胞に添加してもよい。いくつかの実施態様において、第2の培地は、細胞の接種のためにエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含み得る。いくつかの実施態様において、第1の培地と第2の培地は同じ培地である(例えば、同じ組成を有し、いくつかの実施態様において必ずしも同じ物理的培地ではない)。他の実施態様では、第1の培地と第2の培地は異なる(例えば、異なる組成を有する)。
【0044】
いくつかの実施態様において、第1の細胞培養培地は血清(例えば、ウシ胎児血清)を含有する。培養細胞の増殖に適した任意の種類の血清を使用することができる。当技術分野における血清の例としては、限定されないが、ウシ胎児血清、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヤギ血清、ウサギ血清、ラット血清、マウス血清、及びヒト血清が挙げられる。いくつかの実施態様において、第1の細胞培養培地は10%未満の血清(例えば、ウシ胎児血清)を含み、細胞は無血清培地に適合されていない。特定の実施態様において、第1の細胞培養培地は5%の血清(例えば、ウシ胎児血清)を含有する。
【0045】
いくつかの実施態様において、第2の培地は無血清培地である。いくつかの実施態様において、第2の培地は無タンパク質培地である。培地(例えば、本開示の培地)は、本開示の文脈において無血清培地と呼ばれ、ヒト又は動物起源の血清由来の添加物は存在しない。無タンパク質とは、タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物、及び非血清タンパク質を排除して細胞の増殖が起こる培養物を意味すると理解されるが、場合によってはウイルス増殖に必要なトリプシン又は他のプロテアーゼなどのタンパク質を含み得る。そのような培養物中で増殖する細胞は、タンパク質それ自体を天然に含む。
【0046】
いくつかの実施態様において、界面活性剤及び/又はデキストランは、例えば、細胞にエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を接種する間に、又は回収の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される。本開示の細胞培養培地において、限定されないが、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20としても知られる)、40、60、及び80(TWEEN(登録商標)80としても知られる)などのポリソルベート;TRITON(商標)シリーズなどのポリエチレングリコール系界面活性剤(例えば、TRITON(商標)X―100、Dow Chemical)及びIGEPAL(商標)CA―630(Rhodia Operations)/NONIDET(商標)P―40(Shell Chemical)を含むさまざまな界面活性剤を適切に使用することができる。いくつかの実施態様において、細胞培養培地に添加される界面活性剤及び/又はデキストランの量は、(例えば、細胞培養培地の体積に対するv/vの割合として)0.005%〜0.05%の範囲、例えば、0.005%、0.010%、0.015%、0.020%、0.025%、0.030%、0.035%、0.040%、0.045%、又は0.050%(これらの間の任意の値を含む)である。特定の実施態様において、0.05%のポリソルベートが添加される。特定の実施態様において、0.005%のポリソルベートが添加される。
【0047】
本明細書中に記載されるように、ウイルス接種の間又はその前に、細胞培養培地への界面活性剤及び/又はデキストランの添加は、全ウイルス回収及び生産性の有意な増加を促進することが見出された。いくつかの実施態様において、回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率は、界面活性剤及び/又はデキストランの非存在下で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率と比較して、界面活性剤(例えば、回収中又は回収前)及び/又はデキストランの添加によって増加する。例えば、いくつかの実施態様において、回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率は、界面活性剤及び/又はデキストランの非存在下で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率と比較して、界面活性剤(例えば、回収中又は回収前)及び/又はデキストランを添加することによって少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、又は少なくとも約10倍増加する。特定の実施態様において、回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率は、界面活性剤及び/又はデキストランの非存在下で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率と比較して、界面活性剤(例えば、回収中又は回収前)及び/又はデキストランの添加によって、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。
【0048】
いくつかの実施態様において、細胞培養物は、マトリクスを有する固定層バイオリアクター内にある(例えば、接着細胞を使用する)。いくつかの実施態様において、細胞培養物は液体培養物である(例えば、懸濁液中での増殖に適した細胞を使用する)。いくつかの実施態様において、細胞はマイクロキャリア上で培養される。いくつかの実施態様において、細胞培養物はバイオリアクター内にある。懸濁液中での増殖及び接着細胞の使用に適したさまざまなバイオリアクターが当技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載されている。
【0049】
いくつかの実施態様において、ウイルスの接種中にポリソルベートが第2の細胞培養培地に添加される。他の実施態様において、ポリソルベートは、回収の約1時間から約4時間前に第2の細胞培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、ポリソルベートは、回収の約2、3又は4時間前に第2の細胞培養物に添加される。いくつかの実施態様において、ポリソルベートは、回収の約1、2、又は3時間前までに第2の細胞培養物に添加される。すなわち、ポリソルベートは、約2、3、又は4時間の上限、及び約1、2、又は3時間の独立して選択された下限を有する、回収前の任意の時点で第2の細胞培養物に添加することができ、ここで、下限は上限よりも小さい。例えば、いくつかの実施態様において、ポリソルベートは、回収の約1時間、約2時間、約3時間、又は約4時間前に第2の細胞培養物に添加される。
【0050】
本開示の方法の特定の態様は、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を細胞に接種する間又はその直前に細胞培地に存在するグルコースの量に関する。本明細書中に記載されるように、代謝ストレス(例えば、細胞培養培地中の利用可能な低いグルコースレベル及び/又は培養細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼ活性によって証明される)は、ウイルスの細胞産生を増強し得る。いくつかの実施態様において、グルコースは本開示の第2の細胞培養培地から枯渇している。例えば、細胞培養培地は、より低い(例えば、枯渇)レベルのグルコースを有する細胞培養培地と交換することができる。細胞培養培地中のグルコースが、外因性グルコースによる置換/補充なしに細胞利用によって枯渇しているように、細胞を第2の細胞培養培地中で増殖させることができる。いくつかの実施態様において、本開示の第2の細胞培養培地にさらなるグルコースは添加されない。いくつかの実施態様において、本開示の細胞培養培地中で培養された細胞は、接種の少なくとも24時間前、少なくとも48時間前、又は少なくとも72時間前にグルコース不足(例えば、細胞培養物中に存在する出発量と比較して減少した量のグルコース)を経験する。いくつかの実施態様において、250mg/L未満の細胞培養グルコースレベルは、翌日のグルコース不足を示す。いくつかの実施態様において、本開示の細胞培養培地で培養された細胞は、標準的な方法を通じて培養された細胞と比較して、感染時又は感染直前に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の増加及び/又は乳酸産生の増加を示す。
【0051】
ウイルス接種材料及びウイルス培養物は、好ましくは、単純ヘルペスウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス3、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、及び/又はパルボウイルスは含まれていない(すなわち、試験されて、汚染について否定的な結果が与えられているであろう)[WO2006/027698]。
【0052】
細胞培養の他のパラメータ及び細胞培養培地もまたウイルス産生に影響を及ぼし得る。いくつかの実施態様において、本開示の細胞は、本開示の第1の培地及び/又は第2の培地中で所望の体積/表面積比で培養されてもよい。理論に拘束されることを望まないが、細胞が培養される体積/表面積比は、細胞生産性、細胞サイズ、増殖速度、及び/又は培地中の栄養素及び他の成分へのアクセスなどのパラメータに影響を及ぼし得る。特定の実施態様において、細胞は、約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で(例えば、ウイルス接種の前、最中、及び/又は後に)培養される。
【0053】
いくつかの条件下では、本開示の細胞は培養中に乳酸を産生し得る。当技術分野では、培養中の細胞が解糖系代謝又は嫌気型代謝の結果として乳酸を生成し得ることが知られている。理論に拘束されることを望まないが、細胞培養培地中の過剰な乳酸は、例えば、培養培地のpHを低下させることによって、細胞増殖、代謝、及び/又はウイルス生産性にマイナスの影響を及ぼす可能性があると考えられる。さらに、培養細胞による過剰な乳酸産生は、ウイルス産生及び/又は増殖にとって所望され得ない細胞代謝状態を示し得る。いくつかの実施態様において、第1の細胞培養培地及び/又は第2の細胞培養培地中の乳酸濃度は、約25mMを超えない。細胞培養培地中の乳酸濃度を測定するための方法は当技術分野において公知であり、限定されないが、ラクトメーター、乳酸酵素アッセイ(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ及び比色又は蛍光検出試薬の使用による)、微量透析サンプリング装置などの使用を含む。
【0054】
いくつかの実施態様において、本開示の感染細胞は、感染細胞がエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を産生する第2の細胞培養培地中で(例えば、本開示の固定層中で)培養され得る。感染した細胞がエンテロウイルスCを産生する条件は当技術分野において公知であり、細胞の型、エンテロウイルスCの型、培養培地、温度、細胞密度、ウイルス密度(例えば、MOI)、細胞増殖速度、細胞継代数などに依存し得る。エンテロウイルスが細胞に感染する条件の例示的な説明は以下に提供される。
【0055】
本明細書に記載の方法の他の態様は、細胞培養培地中の酸素密度(DO)に関する。細胞培養培地中で適切な酸素レベルを維持することは、細胞呼吸のために酸素を供給することによって細胞増殖及び/又はウイルス生産性を促進し得る。さらに、細胞培養物中の細胞による酸素利用は、それらの健康状態、増殖状態、及び/又は代謝の状態を反映し得る。いくつかの実施態様において、第1の細胞培養培地及び/又は第2の細胞培養培地中の酸素密度は約50%を超えて維持される。細胞培養培地中でDOを維持及び/又は測定するための方法は当技術分野で公知であり、限定されないが、自動酸素注入、細胞培養培地の酸素への曝露(好ましくは汚染の危険性を最小にしながら)、酸素制御装置の使用、酸素センサーの使用などを含む。いくつかの実施態様において、本開示の第1の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は、約50%を超えて維持される。いくつかの実施態様において、本開示の第2の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は、約50%を超えて維持される。いくつかの実施態様において、本開示の第1の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は、約60%を超えて維持される。いくつかの実施態様において、本開示の第2の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は、約60%を超えて維持される。
【0056】
いくつかの実施態様において、本開示の第1の細胞培養培地は、約25mMを超えない乳酸濃度を含む。いくつかの実施態様において、本開示の第2の細胞培養培地は、約25mMを超えない乳酸濃度を含む。細胞培養培地中の乳酸濃度を測定するための方法は、例えば、本明細書中に記載されるように、当技術分野において公知である。
【0057】
例示的な培養パラメータ及び条件は本明細書に記載される。上記の細胞培養技術及びパラメータは、実施例11、及び/又は
図24A〜24Cに記載の条件の1つ以上を任意の組み合わせで使用し得ると考えられる。
【0058】
当技術分野において公知のさまざまな方法を用いて、本開示の方法によって製造された感染性ウイルスの力価を測定することができる。そのような方法は、限定されないが、エンドポイント希釈アッセイ(例えば、TCID 50値を決定するための)、タンパク質アッセイ、定量的透過型電子顕微鏡(TEM)、プラークアッセイ、焦点形成アッセイ(FFA)などを含む。いくつかの実施態様において、ウイルス力価はTCID 50/mLで測定される。いくつかの実施態様において、少なくとも5.0×10
7 TCID 50/mLのエンテロウイルスAウイルスが回収される。
【0059】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、宿主細胞(すなわち、ウイルスを接種した細胞及びウイルスを産生する細胞)を溶解することによって回収される。本明細書に記載されているように、産生されたウイルスのかなりの量が産生細胞中の細胞内に見いだされる場合があり、従って細胞溶解はウイルスの回収及び収量を著しく増加させることがある。さまざまな細胞溶解方法が当技術分野で公知であり、さまざまなプロデューサー細胞に適している。いくつかの実施態様において、細胞は凍結融解によって溶解される。いくつかの実施態様において、細胞は界面活性剤(TWEEN(登録商標)―80などのポリソルベート又はTRITON(商標)Xなどのポリエチレングリコール系界面活性剤を含むがこれらに限定されない)によって溶解される。いくつかの実施態様において、細胞は物理的剪断によって溶解される。
【0060】
細胞培養用デバイス
本開示の特定の態様は、細胞を培養するための方法に関する。いくつかの実施態様において、細胞は、固定層、揺動、又は撹拌/撹拌槽バイオリアクターなどの装置中で培養される。例示的な細胞培養装置は市販されており、当技術分野において公知である。例えば、US8597939、S8137959、S PG Pub 2008/0248552、O2014093444、及びGenzel, Y. et al. (2006) Vaccine 24:6074-87に記載されているバイオリアクター;Medorexのバイオリアクター;GE Healthcare Life SciencesのWAVE又はXcellerexバイオリアクター;又はニューヨーク州ポートワシントンのPall(登録商標)Life SciencesのiCELLis(登録商標)バイオリアクター、例えばNano、500/100、及び500/66バイオリアクターを参照のこと。
【0061】
いくつかの実施態様において、細胞は固定層バイオリアクターにおいて培養される。固定層バイオリアクターは、細胞の接着と増殖を促進するための固定層又は充填層を形成する固定充填マテリアルの形態のキャリアを含む。固定層の充填マテリアルの配置は、局所の液体、熱、及び物質の移行に影響を与え、通常は高密度であり、所与のスペース中の細胞培養を最大化する。1つの実施態様において、リアクターは、細胞の接着及び増殖を促進するための充填マテリアル(例えばファイバー、ビーズ、球又は同様のもの)から構成される充填層又は固定層を備える内部を形成する壁を含む。マテリアルはリアクターの内部内の区画に位置し、当該区画は、空洞で、垂直に伸長している管の上部を備えていてもよい。第二の区画は、少なくとも部分的に固定層を形成している区画のマテリアルへ液体を往復で運ぶためのリアクターの内部内に提供されている。典型的には、充填マテリアルは、細胞増殖のための表面積を最大化するように配置されていなければならず、1,000平方メーターが、有益な表面積量であると考えられる(例えば、充填マテリアルとして医療グレードのポリエステルマイクロファイバーを使用して得ることができる)。1つの実施態様において、均一に分配された培地の循環は、内蔵式の磁気駆動羽根車により達成され、それにより剪断応力が低くなり、細胞活性が高くなる。細胞培養培地は、固定層を底部から上部へと流れる。上部では、薄いフィルムのように培地が外壁を落ち、ここでO
2が取り込まれ、バイオリアクター内の高いKLaが維持される。この滝のような酸素化は、穏やかな攪拌とバイオマスの固定化と共に行われ、これによりバイオリアクターが高い細胞密度を得て、維持することができるようになる。いくつかの実施態様において、固定層は約2cmの層高を有する。他の実施態様において、固定層は約10cmの層高を有する。
【0062】
いくつかの実施態様において、固定層はマクロキャリア(例えばマトリクス)を含有する。いくつかの実施態様において、マクロキャリアはファイバーマトリクスである。いくつかの実施態様において、マクロキャリアはカーボンファイバーマトリクスである。マクロキャリアは、織りマイクロファイバー又は不繊マイクロファイバー、ポリエステルマイクロファイバー(例えば医療グレードのポリエステルマイクロファイバー)多孔質炭素及びキトサンのマトリクスから選択されてもよい。マイクロファイバーは任意でPET、又は他の任意のポリマーもしくはバイオポリマーから作製されてもよい。いくつかの実施態様において、マクロキャリアはビーズを含有する。ポリマーは、もしかかる処置が必要であれば、細胞培養に適合するよう処置されてもよい。
【0063】
適切なマクロキャリア、マトリクス、又は「担持マテリアル」は、例えばケイ酸塩、リン酸カルシウムなどのミネラルキャリア、例えば多孔質炭素などの有機化合物、例えばキトサンなど天然生成物、細胞増殖に適合したポリマー、又はバイオポリマーである。マトリクスは、正規構造又は非正規構造を伴うビーズの形態を有することができ、又はポリマーの織りマイクロファイバーもしくは不繊マイクロファイバー、又は細胞増殖に適合した任意の他のマテリアルを含有してもよい。また、充填物は、孔及び、又はチャンネルを有する1つの成形物として提供されることもできる。レシピエント内の充填物は、様々な形態及び大きさを有することができる。いくつかの実施態様において、マトリクスは、固形もしくは多孔性の球、薄片、多角形の微粒子マテリアルである。典型的には、充分な量のマトリクスを使用し、マトリクス粒子が使用時にレシピエント内を移動しないようにするが、これは、移動が細胞にダメージを与える可能性があり、並びに気体及び/又は培地の循環に影響を与える可能性があるためである。あるいは、マトリクスは、内部レシピエントに適合する要素、又はレシピエントの区画に適合する要素からなり、並びに適切な多孔性及び表面を有している。本明細書の例としては、Cinvention(Germany)により作製されるカーボンマトリクス(Carboscale)が挙げられる。いくつかの実施態様において、ファイバーマトリクスは、約150cm
2/cm
3〜約1000cm
2/cm
3の、細胞にアクセス可能な表面積を有する。あるいは、マトリクスは、内側のレシピエント又はレシピエントの区画に適合し、かつ適切な多孔性及び表面を有する要素からなる。その一例は、Cinvention(Germany)によって製造されたカーボンマトリクス(Carboscale)である。いくつかの実施態様では、繊維マトリクスは、約150cm
2/cm
3〜約1000cm
2/cm
3の、細胞に接触可能な表面積を有する。いくつかの実施態様では、繊維マトリクスは、約10cm
2/cm
3〜約150cm
2/cm
3の、細胞に接触可能な表面積を有する。例えば、繊維マトリクスは、細胞に接触可能な約10cm
2/cm
3;約20cm
2/cm
3;約40cm
2/cm
3;約60cm
2/cm
3;約80cm
2/cm
3;約100cm
2/cm
3;約120cm
2/cm
3;約150cm
2/cm
3;約200cm
2/cm
3;約250cm
2/cm
3;約500cm
2/cm
3;又は約1000cm
2/cm
3(その間の任意の値を含む)の表面積を有することができる。いくつかの実施態様では、繊維マトリクスは、細胞に接触可能な表面積が、以下(cm
2/cm
3単位):約1,000;900;800;700;600;500;400;300;200;175;150;125;100;90;80;70;60;50;40;30;又は20の何れか未満である。いくつかの実施態様では、繊維マトリクスは、細胞に接触可能な表面積が、以下(cm
2/cm
3単位):約10;20;30;40;50;60;70;80;90;100;125;150;175;200;300;400;500;600;700;800;又は900の何れかより大きい。すなわち、繊維マトリクスは、上限1,000;900;800;700;600;500;400;300;200;175;150;125;100;90;80;70;60;50;40;30;又は20と、独立して選択される下限10;20;30;40;50;60;70;80;90;100;125;150;175;200;300;400;500;600;700;800;又は900を有する任意の範囲(cm
2/cm
3単位)であり得る、細胞に接触可能な表面積を有し;ここで下限は上限よりも小さい。いくつかの実施態様では、繊維マトリクスは、細胞に接触可能な約120cm
2/cm
3の表面積を有する。
【0064】
いくつかの実施態様において、マクロキャリア(例えばファイバーマトリクス)は、約60〜99%の多孔性を有している。いくつかの実施態様において、マクロキャリア(例えばファイバーマトリクス)は、約80〜約90%の多孔性を有している。任意で、充填物は、50%〜98%の範囲の多孔性Pを有していてもよい。多孔性Pという用語は、マテリアルの所与の体積に存在する空気の体積であり、マテリアルの所与の体積の割合として表される。多孔性は、多孔質マテリアルの体積当たりの重量Wxを測定し、以下の式を使用することで測定することができる:
P=100−(1−Wx Wspec)
式中、Wspecは、マテリアルの比重である。多孔性マテリアルは、1つの固体単位の多孔性マテリアルであってもよく、又は複数の個々の単位であってもよく、例えばグレイン、チップ、ビーズ、ファイバー、又はファイバー凝集体などであってもよい。
【0065】
いくつかの実施態様において、固定層は、単回使用、又は使い捨ての固定層である。例えば、市販のバイオリアクターの例えばiCELLis(登録商標)NANO及び500/100バイオリアクターのBioreactors(Pall(登録商標)Life Sciences,Port Washington,NY)は、取り外し可能で、使い捨て又は単回使用の固定層を備えたバイオリアクターシステムを含んでもよく、その固定層により、小型のバイオリアクターの容積で、大きな増殖表面積がもたらされる。マイクロキャリアを使用する標準的な攪拌タンク型バイオリアクターと比較し、かかるシステムは、マイクロキャリアの手動操作、滅菌、及び水和、並びに前培養プロセスから最終プロセスへのビーズ間の移送を含む、いくつかの繊細で時間のかかる手順を回避する。本明細書に記載される場合、かかるバイオリアクターは、大規模(例えば500平方メートル)の培養面積相当での処理と、最大で1500〜2000Lの回収液量を可能にすることができ、これは、ウイルスの産業規模での生産(例えばワクチン製造での使用)に有益である。本明細書に例示される場合、かかるデバイスは、例えば、少ない細胞接種材料;短い前培養期間で感染に最適な細胞密度に達すること;並びに/又は培養増殖期の間のMOI、培地、及び血清の濃度の最適化といったさらなる利点が可能となり得る。かかるデバイスは、培養中の細胞の急速なかん流が可能となるように構成されてもよく、それによって例えば、90%以上の細胞が同じ培地環境におかれる。さらに、学説に拘束されることは望まないが、単回使用、又は使い捨ての固定層によって合理化された下流処理が可能となり、それに伴い生産性は最大化され、並びに、たとえ大規模な従来型培養容器の数個に相当するスケールアップがなされていても、処理面積の負荷は低減される。ゆえに、有益な生産性及び純度を、最小限の工程とコストで達成することができる。
【0066】
1つの実施態様において、細胞培養のレシピエントは内部空間を有しており、それは環状である場合もあるが、他の形態をとっている場合もある。その空間は充填物を含有している。レシピエントが細胞培養に使用される予定である場合、充填物は、細胞増殖に適合していなければならない。環状構造の場合、内部空間は、第一の外端と第二の外端を有する外側管状壁と、縦軸方向に延びる縦壁により区切られた環状の体積を有している。外側管状壁は、環状体積の外側境界を縦軸方向に区切る;第一のクロージャと第二のクロージャは、外側管状壁のそれぞれ第一の外端と第二の外端で環状体積を区切り、閉鎖する;内側伸長壁は、外側管状壁の第一の外端へと向かう第一の外端と、外側管状壁の第二の外端へと向かう第二の外端を有している。内側伸長壁は、外側管状壁内に位置づけられている。内側伸長壁は、縦軸方向に伸長しており、環状体積の内部境界を区切り、その内部境界は外部境界に取り囲まれている。内部伸長壁の第二の外端は、第二のクロージャと同一の空間に存在する。例としては、外側管状壁は、シリンダー状の外側管状エレメントにより提供される。内側伸長壁は、固形状の内側シリンダー状エレメント、例えばシリンダー状の棒により提供される場合もある。外側管状エレメントは、シリンダー状の管状エレメントであり、縦軸方向に平行な中心軸を有している。内側シリンダー状エレメントと外側管状エレメントは、同軸上に取り付けられていてもよい。
【0067】
いくつかの実施態様において、内部シリンダー状エレメントの第一の外端は、内側シリンダー状エレメントと外側管状エレメントに固定されているクロージャ、さらに外側管状エレメントを使用して、内側シリンダー状エレメントを、例えばバイオリアクターのモーターなどの動力機械装置に連結するためのカップリングエレメントを備えていてもよい。第二のクロージャは、培地及び/もしくはガスを、内部空間へ、並びに/又は内部空間から、提供するための、並びに/又は抽出するための、培地又はガス源へレシピエントを連結するのに適したコネクターと共に提供される。このコネクター、又はあるいは追加のコネクターが、第一のクロージャ又は第二のクロージャへと備え付けられていてもよい。
【0068】
いくつかの実施態様において、レシピエントの移動時、充填物、特に多孔性マテリアルは、レシピエントに対し固定された相対位置に置かれてもよく、又はレシピエント内をレシピエントに関連して移動してもよく、又は場合によっては、レシピエントの区画内を移動してもよい。レシピエントは、任意で0.1〜25回転/分の回転スピードで、その軸を中心として回るものである。
【0069】
いくつかの実施態様において、内部空間は、培養培地、例えば細胞培養培地で部分的に満たされている。例として、液面は少なくとも内側伸長壁に接触し、又は内側伸長壁は部分的に培地中に沈んでいる。液面下に位置する充填物部分は、培養培地、例えば細胞培養培地により湿っている。液面上に位置する充填物は、内部空間に存在するガス又は空気と接触している。レシピエントが軸を中心として一方向、例えば時計回りに回転する場合、培養培地、例えば細胞培養培地は、充填物に対して反対方向に、すなわち反時計回りの方向に回転する。培養培地、例えば細胞培養培地は、栓流に従って全充填物を通過する。レシピエントを例えば時計回りに回転すると、培養培地、例えば細胞培養培地は、栓流の前縁のガス又は空気を強引に動かし、反時計回りに移動させる。培地の後縁では、任意で限定的な沈下が生じ、それによってガス又は気体は後縁へと吸い込まれる。そのようにして、培地、及びガス又は気体は全充填物を通過する。
【0070】
いくつかの実施態様において、シリンダー状管状エレメントによって、別のレシピエントの内側伸長壁が提供される場合もある。例として、外側管状壁は、外側管状エレメントにより提供される。内側伸長壁は、伸長シリンダー状管状エレメントにより提供される。外側管状エレメントと伸長シリンダー状管状エレメントは、2つの取り外し可能なクロージャに固定されている。第一のクロージャは、レシピエントを縦軸方向に軸を中心として回転させるための駆動手段にレシピエントを連結させるためのカップリングエレメントと共に提供される。第一のクロージャはさらに、内部空間を導管、例えば可撓管に接続するためのコネクターを備えている。
【0071】
いくつかの実施態様において、外側管状エレメントは、例えば110mmの長さLと、例えば135mmの内側直径Doを有するガラス管であってもよい。内側伸長エレメントは、例えば88.9mmの外側直径Diを有するポリビニリデンフルオリド(PVDF)管であってもよい。内側伸長エレメントの外端、すなわち内側伸長壁の外端は、クロージャと同じ場所にある。このクロージャは、ステンレススチール又はPVDFの環状ディスクであってもよく、それらはシリコンを使用し、内側エレメント及び外側エレメントに付加されていてもよい。コネクターを備えて提供され得る第一のクロージャは、例えば約35mmの外側直径Diを有するカップリングエレメントを有する。内側空間は、充填物で少なくとも部分的に満たされている。
【0072】
いくつかの実施態様において、レシピエントはさらに、内側空間を2つの区画に分割する2個の流体透過可能な分割物を備えている。流体透過可能な分割物は、内側伸長壁から外側管状壁へ、及び第一のクロージャから第二のクロージャへと、管の軸の方向と平行な縦方向に伸長している。1つの区画は充填物と共に提供される。1つの区画は充填物と共に提供されない。流体透過可能な分割物は、例えば多孔性分割物を提供するための多孔性マテリアルを使用することにより、孔を備えて提供されてもよく、又は液体すなわち培養培地及びガスの通過を許可する場合には、開口部を備えて提供される。しかしながら分割物は、分割物の片側から反対側へと充填物が通過してしまうのを防ぐのに充分な小ささの孔又は開口部を備えて提供される。
【0073】
いくつかの実施態様において、外側管状壁は、縦軸方向に対して垂直な面に沿った水路横断面を有する外側管状エレメントにより提供され、当該横断面は、円の形状を有している。内側伸長壁は、縦軸方向に対して垂直な面に沿った水路横断面を有する内側伸長エレメントにより提供され、その横断面は、不完全な円又は弓型の形を有している。1つの実施態様において、当該弓型は、円部分と弦を有している。例えば当該弓型の高さは、200mmの(Dec)、400mm(Do)、240mm(Di)及び125mm(L)の寸法を有している。分割物はこの実施態様において当該弓型の弦と同一平面上にある。二つのクロージャのうちの第二のクロージャは、二つのコネクターを備えて提供される。第一のコネクターは、外側管状壁の近くに提供される。第二のコネクターは、内側伸長壁の近くに提供される。レシピエントが部分的にのみ培養培地で満たされている場合、その培地は液体表面を有し、レシピエントは、その液体が内側伸長壁に接触せず、しかし内側伸長壁から所与の距離に留まるような位置へ回転してもよい。レシピエントがこの位置に移動したとき、第一のコネクターを使用して、充填物で満たされていない区画に対し、培地を除去してもよく、又は培地を提供してもよい。コネクターを用いて、その培地液体表面の上にガスを提供してもよく、又は除去してもよい。時計回り、又は反時計回りのいずれかに、例えば360°以下又はそれ以上の角度でレシピエントを回転させることにより、培地は2つの分割物のうちの1つを通過し、より具体的には、培地中に徐々に沈む分割物を通過する。回転によって充填物が徐々に培地を通過するに従い、培地はゆっくりと充填物を流れて通る。レシピエントの回転によって、培地は栓流に従い全充填物を流れて通過する。環状体積のあらゆる場所で培地と充填物の間に均一な接触が生じる。充填物の一部が培地を通過すると、培地は徐々に充填物から吐き出され、それに従い、レシピエント中のガスが再び充填物と接触することができ、それによって充填物のあらゆる場所での均一な細胞の増殖が可能となる。
【0074】
レシピエントの別の実施態様において、内部空間の環状体積は、複数の環状セクションにより提供され、この特定の場合においては、4つの環状の4半分(クオーター)により提供される。各セクションは、外側管状壁セクションによって外側管状壁の一部を提供する。各セクションは、内側伸長壁セクションによって内側伸長壁の一部を提供する。各セクションは、2個の放射状に伸長するセクション壁を有する。これらのセクション壁は、液体及びガスが不透過性である。各セクション壁は、隣接するセクションとの相互連結が可能となる取付手段を備えて提供される。第一のセクションのクロージャと第二のセクションのクロージャは、それぞれ、外側管状壁の第一と第二の外端で、環状セクションの体積を区切り、閉鎖する。セクションのクロージャはともに、それぞれ、レシピエントの環状体積の第一及び第二のクロージャを形成する。
【0075】
いくつかの実施態様において、各セクションはさらに、2個の流体透過可能な分割物を備えて提供されてもよく、それらは3個の区画の各環状セクションの内部空間を分割する。流体透過可能な分割物、例えば多孔性分割物は、内側伸長壁から外側管状壁へ、及び第一のクロージャから第二のクロージャへと、管の軸の方向と平行な縦軸方向に伸長する。1つの区画は充填物を備えて提供される。2つの区画は充填物を備えて提供されない。各環状セクションに対し、第一のコネクターは、外側管状壁の近くに提供される。第二のコネクターは、内側伸長壁の近くに提供される。各セクションは、レシピエントが軸を中心として回転しているとき、レシピエントの独立したレシピエントセクションとして機能してもよい。各セクションの充填物は、培地を備えて提供され、セクションの半径上の位置に従ってこのセクション中に存在する。
【0076】
セクションを取り付けることによって、4セクションのこの実施態様においては、外側管状壁と内側伸長壁を有するレシピエントが得られ、その環状体積は、2個のクロージャを用いて、外側管状壁の2個の外端で閉鎖される。2個の放射状に伸長したセクション壁の取り付けと連結によって、セクションの連結が行われるため、2個の連続的なセクション壁の組み合わせが液体及びガスが不透過性の分割物を形成し、分割物は内側伸長壁から外側管状壁へ、及び第一のクロージャから第二のクロージャへと、管の軸の方向と平行な縦軸方向に伸長する。この実施態様には、各セクションが、異なる細胞培養用の異なる培地を備えて提供され得るという利点を有する。また、セクションのうちの1つにおいて充填反応が不完全に機能した場合、その1つのセクションのみが置き換えられる。レシピエント(又は本明細書に開示される任意の他のレシピエント)の回転は、回転機により提供される場合がある。1つの例において、この回転機は、外側管状壁と、少なくとも2個の支持車輪を接触させることを含んでもよく、その車輪の少なくとも1つが駆動している。
【0077】
別の実施態様において、レシピエントの各セクションは、2個の放射状に伸長するセクション壁を有する。これらのセクション壁は、液体及びガスが透過性である。各セクションは、いくつかの開口部を備えており、これら開口部の各々は、隣接する区画の第二のセクション壁の対応する開口部につながる。第一のセクション壁の開口部は、外向きに伸長する縁を備えて提供されてもよく、その縁は、第二のセクション壁の対応する開口部を通って伸長する。任意で、接触している壁の間に培地が漏れることを防ぐため、隣接するセクション壁の開口部周囲にシールが備えられる。別の実施態様においては、シールの代わりに可撓菅がレシピエント間に配置される。
【0078】
バイオリアクターがレシピエントを使用する実施態様において、少なくとも1個のレシピエントが容器内に回転可能に取り付けられ、例えば円形、又は長方形などの多角形(任意で正方形)といった任意の適切な放射状の横断面を有してもよい。容器は、部分的に培養培地で満たされ、それによって液面は、任意でバイオリアクターの軸よりも高く上昇しないが、少なくとも内側伸長壁には接触する。レシピエントは軸を中心として回転し、その軸はレシピエントの縦軸と一致している。レシピエントの縦軸は、外側管状壁の縦軸方向と平行な軸である。任意で、外側管状壁は、開口部を備えて提供され、又は例えば液体及びガス透過性マテリアルなどの多孔質から作製される。かかる液体透過性の外側管状壁が、外側管状壁の一部のみが培地中に沈むように部分的に培地で満たされた容器の中で回転する場合、充填物は培地を備えて提供され、培地は外側管状壁を通って環状体積へと流れ込む。レシピエントが容器の中で回転する場合、培地の一部は、充填物に沿ってのろのろと進む場合がある。
【0079】
いくつかの実施態様において、レシピエントのうちの少なくとも1つは、磁気エレメントを備えている。さらにバイオリアクターも磁気エレメントを備え、この磁気エレメントは、レシピエントの磁気エレメントと協働する。両磁気エレメントは、バイオリアクターの磁気エレメントの回転軸を中心とした回転が、レシピエントの磁気エレメントの回転を誘導するよう配置され、それによって全レシピエントが回転する。隣接するレシピエントは、それらが回転する近くの共通シャフト上に取り付けられてもよい。隣接するレシピエントは、固定された位置で互いに連結されてもよく、それによって、レシピエントの回転が、次のレシピエントの回転を誘導する。
【0080】
いくつかの実施態様において、レシピエントは液体及びガスが不透過性の外側管状壁を有しており、壁は、レシピエントと、ガス又は培地の貯蔵場所を、任意で可撓管によって接続するためのコネクターを有する。レシピエントは、バイオリアクターを提供するための駆動システムを用いて回転されてもよい。レシピエントは回転可能なシャフト上に取り付けられ、そのシャフトは、レシピエントの軸と一致する回転軸を中心として回転可能である。シャフトは、内側伸長エレメントの内部空間内の固有の回転位置に配置され、適合される。従って、シャフトの回転位置を制御することにより、軸周囲のレシピエントの位置が明確に定義される。駆動システムはさらに、例えばリニアモーターなどのモーター、又はシャフト回転の正確な制御に適した任意の他の手段を備えていてもよい。レシピエントがシャフトを超えて縦軸方向にずれることを防ぐための締め付けねじ、又は任意の適切な手段が、シャフト上で縦軸方向にレシピエントの位置を固定してもよい。任意で2個以上のレシピエントが共通シャフト上に取り付けられる場合があることを理解されたい。内側伸長エレメントの内部空間の形状、及びシャフト外周の形状は、シャフトとレシピエントが、限定された方法、さらには固有の方法で取り付けられることができるよう選択される。
【0081】
レシピエントの1つの実施態様において、内側伸長エレメントは、内側伸長エレメントの内側壁に縦軸のくぼみを有する。シャフトの頭部はこのくぼみに適合する。レシピエントは、シャフト上に明白な形で適合する。頭部は、くぼみの中で滑るように動くことが可能であってもよい。レシピエントの別の実施態様において、内側伸長エレメントは、内側伸長エレメントの内側壁に縦軸のくぼみを2個有する。シャフト上の2個の互いに垂直な頭部は、これらのくぼみに適合する。レシピエントは、2つの方法でシャフト上に適合する。第一の位置は、第二の位置に対し、軸を中心として180°回転している。頭部は、くぼみの中で滑るように動くことが可能であってもよい。レシピエントのさらなる実施態様において、内側伸長エレメントは、4個の縦軸のくぼみを有し、内側伸長エレメントの内側壁の各々のくぼみは、区画によりもたらされる。シャフトは、実質的に十字形様の横断面を有し、シャフト上に4つの相互に垂直な頭部を備えている。各頭部は、区画のうちの1つのくぼみに適合する。レシピエントは、シャフト上に4つの方法で適合する。頭部は、くぼみの中で滑るように動くことが可能であってもよい。
【0082】
バイオリアクターのレシピエントのさらなる実施態様において、内部空間の体積は、複数のセグメントにより提供され、この特定の場合においては4つの4半分(クオーター)により提供される。各セクションは、外側管状壁部分を用いて外側管状壁の一部を提供する。各セグメントは、内側伸長壁部分を用いて内側伸長壁の一部を提供する。各セグメントは、2個の放射状に伸長するセグメント壁を有する。例として、セグメントは、2個の放射状に伸長するセグメント壁を有する。さらに、培養培地が内側伸長壁の内部空間を満たしてもよい。開口部を通り、培養培地がそのセクションに流入又は流出してもよく、及び任意で隣接するセクションへと流れてもよい。レシピエントは、縦壁、及びキャップの形態の末端を形成する体部を含む。このキャップは取り外し可能であってもよく、及び接続された位置で、体部内に任意の液体を含有するための、液密シールを形成してもよい。各キャップは、培養培地を受け入れるための流入口と流出口を形成する開口部を含んでもよいが、この流入口と流出口は各々、同様に同じキャップに備えられてもよく、又は体部の縦壁に備えられてもよい。少なくとも1つ又はペアの液体透過性の構造、例えば穴の開いた仕切りなどが備えられ、任意の充填物を含有するための区画を形成する。各仕切りの穴は、区画内の液体の流れ及び滞留時間を制御するための形状及びサイズで備えられてもよく、及びそれら仕切りは同じであっても、異なっていてもよい。充填物は、レシピエントの区画を完全に占有するような方法で備えられることができ、それによって、体部の壁の内側表面、並びに液体透過性構造に周辺が接触する。
【0083】
いくつかの実施態様において、レシピエントは、回転デバイスと関連づけられていてもよい。そのデバイスは、体部の縦軸を中心としてレシピエントを受け取り、支持し、及び回転するための一対のローラーを含んでもよい。レシピエントは、多くの場合、このローラーと連動し、このローラーによって回転されるよう適合されたシリンダー状の体部を備えて提供され、区画内に存在する任意の充填物を通過させて任意の液体(例えば培養培地又は任意のリンス剤又は回収剤)が分配されるのを補助してもよい。また、区画に液体を送達するために、管状コネクターを流入口と流出口に関連付けて提供してもよい。これは、レシピエントが静止状態にある間、又は回転している間に行われてもよい。後者の場合、コネクターは、例えばスナップ式の咬合などを経由して作製される回転ジョイントを使用して、又はベアリングを使用して、相対的回転が可能となるような方法で接続されてもよい。例えばOリングなどのシールを使用して、何らかの漏出を防ぐことを補助し、及び細胞培養に望ましい滅菌状態を維持することを補助してもよい。レシピエントの1つの利点は、アレンジの単純さである。例えば、レシピエントは、センサー、プローブ、ミキサー又は同様のものを含まず、しかしかかる構造を含むことが望ましい場合には、これは可能であり、閉回路でレシピエントをレゼルボアに接続することにより達成することができる。レゼルボアは、任意の数のセンサー、又は循環液の特性の1つ以上を測定するための同種のものを含んでもよく、及び単回使用の容器(例えば可撓性バッグ)を含み、洗浄と滅菌の必要性を無くしてもよい。液体を、ループを通って循環させるために、例えば蠕動ポンプなどのポンプを備えてもよい。
【0084】
この実施態様において、レシピエントは、上述のいずれかに従い構築されてもよく(そして回転瓶を形成する)、及び流入口と流出口を含有する。流入口と流出口のそれぞれは、レシピエントの回転が可能な導管に接続されていてもよく、導管は過度に巻かれたり回転させられることなく、液体の移送に干渉することのない方法で接続され、及びそれによって、回転しながら、レシピエントからの継続的な液体の流出と流入が可能となる。具体的には、導管は、流出口と流入口のそれぞれに接続するための開口端を有するコイル管を備えていてもよく、及び反対側の端で、任意の液体レゼルボアと関連づけられていてもよい。また、導管とレシピエントを通り液体を移動させるための、適切なポンプ配置が備えられていてもよい。
【0085】
1つの実施態様において、レシピエントは、適切な回転機(例えば、ローラー)を使用して、例えば時計回りなどの第一の方向に、1回以上の全回転の間、回転していてもよい。導管を巻き付けることなく可能な回転数は変動し得るが、最小で2〜3回転が可能であろうと予想される。次いで、レシピエントはすぐに1回以上の全回転の間、反対方向に回転されてもよい。より具体的には、回転は、コイル管がそのホームポジションへと戻るための第一の方向での回転数に、コイル管が巻き付かず、又はさもなければ液体移送に干渉しない間は、第二の方向での対応する回転数を加えたものであってもよい。回転、及び反回転は、連続的に、又は断続的に行われてもよく、及び導管を介した液体の送達及び回収も同様である。また、レシピエントがセンサーを含む場合には、検出に使用される任意のエネルギー源へとレシピエントが接続され得ることを理解することができるであろう。そのような場合には、例えばケーブルなどの任意の伝送回線をぐるぐる巻き、又はらせん巻きにし、回転又は巻き付けられることのない上述の予期される方法での相対的回転に適合させてもよい。とはいえ、再度ではあるが、任意のセンサー又は同種のものを、何れかの再循環ループ内に配置したほうが望ましく、その理由は、これによって、レシピエントのコストが低下するからである。
【0086】
レシピエントが回転瓶の形態であるさらなる実施態様において、流入口と流出口は、共有壁に備えられてもよい。また、流入口は、固定層内の液体透過性内部シリンダー内に位置付けられた管と関連づけられていてもよく、それによって、導入された流体(ガス、液体、又はその両方)が、ただちに単純に流出口から出て行ってしまうことを防ぐ補助となる。ガスは、再循環ループ内において、例えばロータメーターなどのインジェクターを配置することにより液体へと導入されてもよい。配置は、流入口のすぐ上流であってもよい。液流と接続されたガス導入のこの方法は、泡の発生の低減、及び物質移動速度の改善に有益に役に立ち、その理由は、ガスが液体により分離されるポケット内に留まるためである。流出口と関連づけられた移送ラインはレゼルボアへと戻り、これは示されているフィルターを介して放出され、レシピエントとの直接接続用の排出口を回避する。
【0087】
いくつかの実施態様において、他のエレメントをレシピエントとバイオリアクターに付加してもよい。例として、内側伸長壁は、伸長管状の、任意でシリンダー状の壁であってもよい。内側管状壁の内部空間を使用して、例えば温度センサー、位置センサー(例えば、回転軸に対し、レシピエントの方向を定義するため)、光学センサー(例えば、細胞培養培地などの培養培地のカラーデータを作成するため)、pHセンサー、酸素センサー(例えば溶存酸素(DO)センサー)、CO
2センサー、アンモニアセンサー、又は細胞バイオマスセンサー(例えば、濁度密度計)などのセンサーの1つ以上を収容してもよい。かかるセンサーは、付加的に、もしくは任意で、クロージャ内又はクロージャ上に位置付けられてもよい。レシピエントはまた、かん流、新鮮な栄養培地の連続的な添加、及び使用した培地と等量の培地の廃棄に適合してもよく、それによって、in vivoの状況に可能な限り近い細胞培養状態を実現することができる。かん流細胞培養と、例えば酵素グルコースバイオセンサーを組み合わせることによって、細胞培養のグルコース消費を連続的にモニターすることが可能となる。また、レシピエント内の培地及び充填物を加熱し、その温度を維持するために、例えば加熱ブランケットなどの加熱エレメントを、外側壁、及び任意で内側壁に備えてもよい。
【0088】
別の実施態様において、バイオリアクターは、実質的に垂直でシリンダー状の培養容器を備える細胞培養容器を備えているが、他の形態、例えば任意の角柱型、好ましくは正の角柱型などを予期することもできる。培養容器は、互いに連通している少なくとも四個のゾーンを備えている。容器の中心から外側に向かって、容器は第一のゾーン、第三のゾーン、第二のゾーン、及び第四のゾーンを備えている。
【0089】
いくつかの実施態様において、培養容器は、底部に培地循環手段を備えている。培地循環手段は、この好ましい実施態様においては、例えば現実又はバーチャルな中心回転軸を中心とした回転をする磁気棒などの磁気デバイスから構成されており、その第一末端は上部咬合手段に収納され、その第二末端は、底部咬合手段に収納されている。磁気棒は、培養容器の外部にある回転磁気駆動モーターにより駆動されるが、本明細書には示されていない。循環手段は、少なくとも1つの培地流入口を備えている。培地流入口は、少なくとも1つの第一末端を備えており、その末端は培地の流入のための分水バッフルに終わる。磁気棒は、遠心力ポンプとして機能し、すなわち、培地はこの棒により生じた培地移動によって、比較的中心のゾーンへと吸い込まれ、そして培地は中心点に対して外側へと推進される。培地分水バッフルは、培地を、この棒の比較的中心ゾーンへと導き、それによって培地はその中に吸い込まれ、次いで外側に推進される。流入口は同じ平面にあり(星型構成)、流入口の数は、その位置が対称を示すような数であるのが有益である。より具体的には、もし3個の流入口を検討する場合、およそ120°の角度でそれらを互いに分離すると好都合であり、もし流入口の数が4個である場合、流入口は実質的に90°に等しい角度で互いに分離され、もし流入口の数が10個である場合、流入口はおよそ36°の分離角度で配置される。また、培地循環手段は、少なくとも1つの培地流出口を備えている。培地流出口は、培地が磁気棒の遠心効果によって推進される場所に置かれるのが有益である。流出口の数は、その位置が対称を示すような数が有益である。より具体的には、もし3個の流出口を検討する場合、およそ120°の角度でそれらを互いに分離すると好都合であり、もし流出口の数が4個である場合、流出口は実質的に90°に等しい角度で互いに分離され、もし流出口の数が10個である場合、流出口はおよそ36°の分離角度で配置される。好ましくは、流出口は、流入口のように同じ水平面には配置されない。培養容器の底部は、少なくとも1つの培地誘導手段を備え、その手段は前記少なくとも1つの流出口に隣接し、推進された培養培地を培養容器の上部へと誘導する。
【0090】
いくつかの実施態様において、培養容器の第一のゾーンが実質的に中心ゾーンであり、培地移送ゾーンである。第一のゾーンは、基底部分を備え、特定の実施態様においては、第一のゾーンは任意でシリンダー部分も備えている。基底部分の直径は、培養容器の直径よりも小さい。基底部分は、前記培地循環手段の前記少なくとも1つの培地流出口と培地が連通している。基底部分は、第一のゾーンの上部において、シリンダーへと小さくなっており、基底部分よりも直径が小さい。上部のシリンダー状部分は外壁を備えており、前記第一の培地移送ゾーンの基底部分と直接、培地が連通している。第三のゾーンは、培地移送ゾーンであり、第一の培地移送ゾーンに対して外側にある。第三のゾーンは、実質的に基底部分(スリーブの形状)を備え、特定の実施態様においては、第三のゾーンは任意でシリンダー状の上部も備えている。
【0091】
いくつかの実施態様において、第三の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分は、第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分と、原則として同心にあり、これら2つの部分は培地が連通している。培地の連通は、排水管を介して水をあふれさせること(図に示す)により、又はこの連通を行うための任意の他の可能な手段により、開口部又は管を介して行われる。第二のゾーンは細胞培養ゾーンであり、担体もしくはマイクロキャリアを伴う、又は伴わない。第二のゾーンはまた、スリーブの形状であり、その中心は、第一と第三の培地移送ゾーンである。第二のゾーンは、底部壁と上部壁を備えており、各壁は開口部が備えられ、それによって、原則的に細胞の無い培養済み培地の移送が行われる。第二の培養ゾーンは、培地の通過が可能な底部壁の開口部によって、第三の培地移送ゾーンの比較的底の部分と培地が連通している。第四のゾーンは、培地移送ゾーンであり、第二の培養ゾーンの外側であるが、培養容器の内部にある。第四のゾーンは、第二の培養ゾーンと培地が連通している。また、前記少なくとも1つの流入口を介して、培地循環手段と培地が連通している。培地の連通は、水をあふれさせることにより、又はこの連通を行うための任意の他の可能な手段により、開口部又は管を介して行われる。
【0092】
いくつかの実施態様において、培養デバイスは、実質的にシリンダー状の培養容器を備えているが、他の実施態様では、上述されるように例えば実質的に角柱型の容器、好ましくは正の角柱型の容器が予期され得る。また、このことが様々な培地及び培養移送ゾーンにも当てはまることが明白である。また、角柱型、好ましくは正の角柱型であってもよく、任意の形状の組み合わせの可能性もある。この場合において、スリーブという用語は、角柱の想定される横断面と類似した横断面を有するエンベロープとして想定されるはずである。培地循環手段が操作中であるとき、培地は、前記少なくとも1つの流出口を通って出る。培地循環手段が複数ある場合、様々な流出口を通り、誘導手段により流用され、最終的には第一の培地移送ゾーンの実質的に底の部分に行き着く。第一の培地移送ゾーンの構造、及びポンプの拍出量は、培地が第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分へと向かうことが必要とされる。実質的にシリンダー状の部分の壁の上部に達したとき、排水管を介して第三の培地移送ゾーンへと培地があふれ出る。
【0093】
この特定の実施態様において、第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分の壁が、効率性及び流速を理由として、第三の培地移送ゾーンの壁よりも低い高さであることが当分野の当業者には明白であるが、第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分の壁が、第三の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分の壁よりも高い場合もあり得ることが容易に理解されるであろう。それゆえ、培地は、ポンプにより与えられた流速、及び重力に従い、実質的にシリンダー状の部分を流れ落ちながら第三の培地移送ゾーンから下に向かい、第三の培地移送ゾーンの実質的に底の部分へと到達する。次に、培地の流れは、ポンプの与えられた流速による、連通容器の効力を介して、上向きの方向を有しており、及び第二の培養ゾーンの上部に到達する。培地は、第二の培養ゾーンの底部壁の、実質的に細胞が無い培地の継代用の開口部を介して、第三の培地移送ゾーンから第二の培養ゾーンに到達する。すでに述べたように、培地移動開口部は、培養のタイプに従った大きさである。培養が、キャリアを使用しない培養である場合、開口部を備えた壁は、多孔質の膜であり、膜の孔のサイズは、細胞の直径よりも小さい。培養がマイクロキャリア又はキャリア上で行われる場合、開口部のサイズは、マイクロキャリア又はキャリアのサイズよりも小さい。培地の流れの縁が第二の培養ゾーンの壁の上部に到達したとき、培地は第四の培地移送ゾーンへとあふれ出る。当然ながら、もし開口部が存在する場合、又は管である場合、培地の流れの縁が開口部又は管に到達したとき、培地は第四のゾーンへと流れることが理解されるはずである。
【0094】
1つの実施態様において、第四の培地移送ゾーンは傾斜壁を備えており、培地が第二のゾーンから第四のゾーンへと通過するとき、傾斜壁の上を培地が流れる。好ましくは傾斜壁は、前記傾斜壁のフィルムの形成を改善するための親水性膜を備えている。フィルムは、好ましくは、可能な限り発泡を防ぐための薄層でなければならない。フィルムを安定化させるため、培養培地に添加物を加え、水、特に培養培地のレオロジー特性を改変することも可能であり、例えば添加剤は、界面活性剤、Pluronic F68、グリセリン、第四級アンモニウム、及び培養培地のレオロジー特性を改変するための任意の他の添加剤からなる群に含まれる。親水性膜は、例えば、ポリオキシエチレンからなる膜である。傾斜壁上でのフィルムの形成は重要な工程であり、その理由は、「薄いフィルム」上での酸素化が可能となるためである。実際に、この第四の培地移送ゾーンの培地量に対してガス性体積は大きく、交換を改善する。さらに、傾斜壁上でのフィルム形成は、ガス−液体の接触表面積を増加させる。
【0095】
いくつかの実施態様において、培養容器は好ましくはカバーを備えており、カバーを介して少なくとも1つのガス流入開口部と、少なくとも1つのガス流出開口部が通っている。ガス流入開口部は好ましくは、第四の培地移送ゾーンと直接連通するよう配置されている。一部の変化形では、ガス流入開口部は、培養容器の垂直壁、又は培養容器の底部に存在することが好ましい場合があり、すなわち、ガスは、カバーと反対側の培養容器の壁を通った開口部を介して通過し、及びこの開口部は、液面上で終わるよう、管を備えて提供されることが好ましい場合がある。
【0096】
この実施態様において、カバーは、固定手段によって、第二の培養ゾーンの上部壁に固定されている。変化形において、カバーは、第二の培養ゾーンの上部壁の不可欠な部分を形成していてもよく、この部分は、培養容器のカバーが持ち上げられたときに開く。この方法では、例えば細胞密度、細胞の構造、及び培養の健常状態を反映している細胞の他の物質的な特性などを評価するための細胞サンプルの採取が、キャリアの有無にかかわらず容易となる。実際に、この2つを共に接続することによって、培養容器のカバーを単純に持ち上げるだけで、培養区画を開くことが可能となる。懸濁液での培養の場合において、第二の培養ゾーンの開口部を備えた上部壁に多孔質の膜を接続したほうが有益であり、この組立によって、サンプル採取のためのカバー/膜の組立の硬直性を改善することができる。
【0097】
いくつかの実施態様において、磁気棒は、らせんの形状を有している。実質的な中心回転軸を有する磁気デバイスの設計は、原則として培養量に依存している。実際に、少量の培養に対しては、デバイスは、例えば培地循環用の磁気チップなどのシンプルな棒を使用できるように設定される。多量の場合には、デバイスは、例えば高速の培地循環速度が可能な、水槽で使用されるローター等の、外部モーターにより駆動される磁気ローターが想定される。
【0098】
細胞培養デバイスのいくつかの実施態様は、気泡生成デバイス、より普遍的には、生成される泡のサイズによって、「スパージャー」又は「マイクロスパージャー」と呼称されるデバイスを使用することが想定される場合がある。気泡が使用される場合、気泡生成デバイスの穴の開いた末端、例えば管などは、第四の培地移送ゾーンの底部で培地中に浸され、又は第一の培地移送ゾーンに浸されることが有益である。このタイプの酸素化が選択される場合、薄フィルム上での酸素化を継続することが常に出来、それによって、ガスの流れを低下させ、泡の形成を少なくすることができ、その結果、発泡の形成が低下する。この場合において、培養容器のカバーに、又は後者の垂直壁上に2つのガス流入口を設けるという対策が想定される。さらに、気泡生成デバイスが、単にSOS手順としてのみ存在すること、及び必要な場合にのみ使用されることを想定することが可能である。
【0099】
いくつかの実施態様において、培養デバイスはまた、例えば溶存酸素分圧pO2、酸性pH、温度、混濁度、光学密度、グルコース、CO2、乳酸塩、アンモニウム、及び細胞培養をモニターするために通常に使用される他の任意のパラメータなどの、一連の培養パラメータセンサーを備えている。これらのセンサーは好ましくは、培養容器の内側と外側の間の接続を必要としない光学センサーである。これらセンサーの好ましい配置は、それらを培養容器の壁近くに位置づけること、それらを培地と接触させること、及び好ましくは、例えば培地が細胞を通過する前又は通過した直後に培地が通過するゾーンなどの戦略的配置におくことが有益であるという点で重要な配置である。
【0100】
いくつかの実施態様において、細胞培養デバイスは、上述の単純性及び経済性などの全ての理由から、使い捨てのバイオリアクターを備えている。結果として、これが、培養容器の内側と外側の間の接続を減少させる理由である。さらに、バイオリアクターは、特に信頼できるバイオリアクターを備えており、使い捨てであることによってコンタミネーションのリスクが特に低くなっている。
【0101】
また、ある実施態様でデバイスは、大量培養用の一連のモジュールを備えたモジュール設計を想定している。例えば、このタイプのモジュール設計では、非常に限定された数の標準的なモジュールの使用を介して、例えば約500ml〜100リットルの培養量が想定される。いくつかの実施態様において、デバイスは、培地循環手段とカバーを備えた標準的な培養容器に配置された、第一の培地移送ゾーンの周囲に、「滑らせる」ことができる一連のモジュールを提供する。特定の変化形において、デバイスは、様々な標準的なモジュールを備えた取付システムを備えている。これら標準的なモジュールは、例えば組立の底部に配置される循環手段モジュール、1つ以上の培養モジュール、及びカバーモジュールである。これらモジュールを固定する他の手段も想定され得るが、モジュールは、例えば液体及びガスという観点で完全に不浸透性なレイピッドコネクター(rapid connector)の手段によって、互いに固定される。
【0102】
結果として、培養のタイプ及び必要とされる量に従い、ユーザは、ストックから、培地循環手段を備えた基礎モジュールを選ぶことができ、また、必要とされる培養量に従い、ユーザが必要とする培養モジュールの数をそれらから選択し、次いでカバーに対応するヘッドモジュールを選択しなければならない。次に、これらすべてのモジュールは滅菌方式でパッケージされ、ユーザに必要なのは、ただそれらを開き、上下に「クリップする」だけである。積み重ねることにより、「使い捨てのバイオリアクター」を形成することができ、又は適切な容器内に配置することができる。
【0103】
いくつかの実施態様において、循環手段を備えた基礎モジュールは培養容器の底部に固定することができ、また培養容器へと滑り込ませて配置することができ、他の培養用には他のものを使用することにより、交差汚染を防ぐことができる。これら培地循環手段は、中心回転軸を中心とした回転をする磁気デバイスを備えており、その第一末端は上部咬合手段に収納され、その第二末端は、底部咬合手段に収納されている。循環手段は、少なくとも1つの培地流入口を備えている。また、培地循環手段は、少なくとも1つの培地流出口を備えている。培養容器の基礎モジュールは、少なくとも1つの培地誘導手段を備え、その手段は前記少なくとも1つの流出口に隣接し、推進された培養培地を培養容器の上部へと誘導する。
【0104】
いくつかの実施態様において、培養容器は、上下に積み重ねられた一連の培養モジュールを備えている。また、それらは単純に互いに隣接していること、すなわち並んで配置されていることも想定され得る。いくつかの実施態様において、モジュールはレイピッドコネクター又はクリップによって互いに固定される。さらに、各モジュールが、各培養モジュールの第四のゾーンと連通したガス流入口又はガス混合物流入口を備えることが有益である場合がある。また容器は、その部分に関して、過剰なガス又はガス混合物のための流出口を備えていてもよい。例えば、ガス流入開口部は、培養容器の底部に存在してもよく、すなわち、ガスは、カバーと反対側の培養容器の壁を通った開口部を介して通過し、及びこの開口部は、モジュールの液面上で終わるよう、管を備えて提供される。結果として、ガス性混合物は、このモジュールの第四の培地移送ゾーンに到達する。モジュールの上に配置されたモジュールもまた、培養モジュールの第四のゾーンに存在するガス性混合物を、モジュールの第四のゾーンと連通させることができる管を備え得る。従って、この管は、モジュールの底部壁を有益に貫通している。
【0105】
特定の実施態様において、長期間培養中、培養培地の一部を、新鮮な培地を交換することが有益である場合があり、又は栄養素の添加を行うことが有益である場合がある。結果として、基礎モジュールは栄養素流入口を備える場合がある。また有益なことに、培養容器は、培地循環手段で、あふれることを防ぐための培地流出口を備える場合がある。類似した方法で、培養容器は、カバーを備えたヘッドモジュールを備えており、カバーは、上記のように位置づけられたモジュール中でのサンプル採取を単純化するため、培地継代開口部を備えて提供される上部壁に固定手段により有益に接続されている。さらに有益なことに、培養パラメータセンサーを各培養モジュールに備えてもよい。また、センサーを、たった1つの培養モジュール、又は数個の培養モジュールに、全てのゾーンで、又は基礎モジュールにおいて備えることが可能である。
【0106】
いくつかの実施態様又は基礎モジュールにおいて、培地は、前記少なくとも1つの流出口を介して培地循環手段から推進され、流出口が数個ある場合には様々な流出口を通って推進され、誘導手段により流される。第一の培地移送ゾーンの実質的に基礎部分で、終了する。この実施態様の実質的な基礎部分は、全ての培養モジュールに共通のゾーンであり、解説される実施態様において、基礎モジュール内に位置付けられている。これは、培養モジュールが積み重ねられているか、又は並置されているかにかかわらず有効である。第一の培地移送ゾーンの構造、及びポンプの拍出量は、培地が、第一のモジュールの第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分へと向かい、第二のモジュールの第一の培地移送ゾーンの実質的にシリンダー状の部分へと向かうことを必要とする。この実施態様では、実質的にシリンダー状の部分を備えた大きな第一の培地移送ゾーンを生成するモジュールの組立である。培地が、第二の培養モジュールの実質的にシリンダー状の部分の壁上部に到達したとき、第二の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンへと培地があふれ出る。
【0107】
いくつかの実施態様において、培地はそれゆえに、ポンプにより与えられた流速、及び重力に従い、第二の培養モジュールの実質的にシリンダー状の部分を流れ落ちながら、第二のモジュールの第三の培地移送ゾーンの底に向かい、第二の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンの実質的に基礎部分へと到達する。次に、培地の流れは、連通容器の効力を介して、及びポンプにより与えられた流速を介して、上向きの方向を有し、そして第二の培養モジュールの第二の培養ゾーンの上部に到達する。培地は、第二の培養モジュールの底部壁の、実質的に細胞が無い培地の継代用の開口部を介して、第二の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンから、第二の培養モジュールの第二の培養ゾーンに到達する。培地の流れの縁が第二の培養モジュールの第二の培養ゾーンの外壁の上部に到達したとき、培地は第二の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンへとあふれ出る。当然ながら、もし培養ゾーンの外壁に開口部又は管が存在する場合、培地の流れの縁が開口部又は管に到達したとき、培地は第二の培養モジュールの第四のゾーンへと流れることを理解することが必要である。デバイスの特定の好ましい実施態様において、第二の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンは傾斜壁を備えており、培地が第二の培養モジュールの第二のゾーンから第二の培養モジュールの第四のゾーンへと通過するとき、傾斜壁の上を培地が流れる。好ましくは傾斜壁は、前記傾斜壁上のフィルムの形成を改善するための親水性膜を備えている。フィルムは、好ましくは、可能な限り発泡を防ぐための薄層でなければならない。フィルムを安定化させるために、前述のように培養培地に添加剤を加え、水のレオロジー特性を改変することも可能である。次に、第二の培養モジュールの第四の培地移送ゾーン中に存在する培養培地は、第二の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンの管を通って、又は壁の上部を超えての何れかで、第一の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンへとあふれ出る。
【0108】
いくつかの実施態様において、培地は、ポンプにより与えられた流速、及び重力に従い、第一の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンから下に向かい、第一の培養モジュールの実質的にシリンダー状の部分を流れ落ちながら、第一の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンの実質的な基礎部分に到達する。次に、培地の流れは、連通容器の効力を介して、及びポンプにより与えられた流速を介して、上向きの方向を有し、そして第一の培養モジュールの第二の培養ゾーンの上部に到達する。培地は、第一の培養モジュールの底部壁の、実質的に細胞が無い培地の継代用の開口部を介して、第一の培養モジュールの第三の培地移送ゾーンから、第一の培養モジュールの第二のゾーンに到達する。培地の流れの縁が、第一の培養モジュールの第二の培養ゾーンの壁の頂点に到達したとき、培地は第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンへとあふれ出る。当然ながら、もしこの壁に開口部又は管が存在する場合には、培地の流れの縁が開口部又は管に到達したとき、培地は第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンへと流れることが理解されるはずである。第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンは、傾斜壁を備えることもでき、培地が第一の培養モジュールの第二の培養ゾーンから第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンへと通過するとき、傾斜壁の上を培地が流れる。この傾斜壁は、上述のように親水性膜を備えて提供される場合もある。次に、培地は、流入口(パイプ)を通って基礎モジュール及び培地循環手段に戻り、すなわち、第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンに存在する培養培地は、第一の培養モジュールの第四の培地移送ゾーンの管を介して、又は壁の上部を超えての何れかで、パイプにおいてあふれ出る。パイプは、培地循環手段を構成する前記遠心力ポンプにより形成されるサイフォンの実質的に中心ゾーンに終わる。
【0109】
この実施態様の変化形において、積み重ねられたモジュールが培養容器を構成する。この変化形において、例えば、基礎モジュール、四個のゾーンを備えるモジュール、及びヘッドモジュールmxの三種のモジュールが存在してもよい。基礎モジュール又は基礎的モジュールは、培地循環手段及び組立手段を備えている。基礎モジュールは、上記に説明されるように、4ゾーンモジュールの第一の組立手段を連動させるように、及び容器の底部を構成するように設計される。ヘッドモジュールは、4ゾーンモジュールの第二の組立手段を連動させるように設計される。基礎モジュールにより連動された4ゾーンモジュールは、ヘッドモジュールにより連動されたものと同じであってもよく、又は基礎モジュールにより連動された4ゾーンモジュールは、第一の一連の4ゾーンモジュールであってもよく、及びヘッドモジュールにより連動されたものは、その結果として、前記一連の4ゾーンモジュールにおける第二の4ゾーンモジュールである。
【0110】
いくつかの実施態様において、全てのモジュールは固定手段を備えており、それによって、他の培養モジュールと、基礎モジュール又はヘッドモジュールの両方と組み立てることができる単一の培養モジュールを得ることができる。これら固定手段は例えば、円形のシール、細胞培養分野において公知のレイピッドコネクター、スクリューピンチ、及びセラーション(serration)、又はこれらモジュールの組立用の任意の他のデバイスを備えて提供される二個の同心円である。
【0111】
この実施態様において、基礎モジュールの基礎部分は、実質的に管形状の開口部と結合され、この場合において開口部はガス又はガス混合物の導入を可能とする開口部である。ガス流入口開口部は、管に接続され、管は培養培地の面の上で終わり、それによって、ガス又はガス混合物は、培養デバイスの少なくとも第四の培地移送ゾーンに到達することができる。第四の培地移送ゾーンのすべての外気は、類似した管により接続され、ガス混合物が上部に到達できるようになっている。高さに対し積み重ね可能なモジュールを備えたデバイスは、非常に高くなることができ、リアクターの底部を通ってガス供給を提供することができる点で特に有益である。変化形において、基礎部分は、磁気デバイスが置かれているゾーンへガス性物質を運ぶためのガス又はガス混合物のフィードチューブを備えている。この方法において、流入ガスは、磁気デバイスの回転により攪拌され、酸素の溶解は培地の移動により改善される。過剰なガスもまた攪拌され、小さな泡の形態となって再度上昇する。加えて、外部からこれら開口部へアクセスするためのへこみもまた提供され、それによって、これら開口部が、ガス、ガス混合物、新鮮な培地などの供給口に接続されることができる。モジュールの上部部分の集団は、固定手段によりグリップされ、及び基礎モジュールの底部上の円形シールにより密閉されるよう設計されたエレメントである。
【0112】
いくつかの実施態様において、デバイスは、カバーを通る管、又はデバイスの壁のうちの1つを通る管の何れかにおいて、栄養素供給口も備えている。同様に、デバイス、又はモジュールもしくは各4ゾーンモジュールの第一のゾーン又は第四のゾーンに加熱手段が存在してもよい。場合によって、デバイスは、例えば数個の遠心力ポンプなどの数個の培地循環手段を備えることができる。第二のゾーンの底部の開口部を通って培養培地が入ると、及びその後に、この第二のゾーンを通って培地がさらに移動する間も、デバイスは培養培地の均一な流れを可能とする。第一のゾーンが第二のゾーンに直接接触し、それによって第二のゾーン全体に非均一な流れが生じているデバイスとは対照的である。そのような非均一な流れによって、酸素と栄養素が充分に供給されない、細胞培養ゾーン内の供給不足な領域又はデッドゾーンが生じてしまい、そこでは細胞増殖及び/又は代謝は決して最適とはならない。
【0113】
デバイス及び方法の特定の実施態様は、第三のゾーンが、前記第二のゾーンに対し内部のゾーンであり、前記第一のゾーンに対し外部のゾーンである、デバイス及びその使用に関するものである。第一のゾーンの基礎部分から、第一のゾーンの上部シリンダー状部分を経由して上へ、さらに第三の移送ゾーンのシリンダー状上部部分を経由して第三のゾーンの基礎部分へ下へと向かう培地の流れは、第二のゾーンの底部に入った時点で所望される均一な流れを生じさせる。シリンダー状部分の存在により、第二のゾーンへ入る前のその特性を分析するための培地へのアクセスがさらに容易となる。シリンダー状エレメントの存在はまた、デバイス中に高い圧力が生じることも防ぐ。さらにシリンダー状部分の存在により、異なるモジュールを備えたデバイスの製造が可能となる。
【0114】
他の実施態様は、シリンダー状部分を通る液体の流れが迂回されるよう改変されたデバイスに関する。これらデバイスの別の実施態様において、第三のゾーンは、完全に第二のゾーンの下に位置づけられ、及び完全に第一のゾーンの上に位置づけられる。デバイスの1つの実施態様において、第一のゾーンと第二のゾーンのシリンダー状部分に相当するデバイスの部分は、例えばプラスチック、ガラス、又は金属などの固体エレメントにより置き換えられる。
【0115】
別の実施態様において、第一のゾーンと第二のゾーンは、それぞれ基礎部分に相当する平坦な形状の体積からなり、シリンダー状部分を欠いている。この適合により、培養培地は、排水管を経由し、第一のゾーンから第三のゾーンへと均等にあふれることができる。攪拌デバイスにより生じた培地の流れは、第一のゾーンと第三のゾーンの間の分離壁により均一な状態となり、第二のゾーンへの流入時に均一な流れを生じさせる。
【0116】
特定の実施態様において、第一のゾーンと第三のゾーンの間の分離壁は、水平部分並びに垂直部分からなり、排水管を伴うこの垂直部分は、第三のゾーンの高さの約5%以下、10%以下、20%以下、又はさらには50%以下の高さを有している。他の特定の実施態様において、第一のゾーンと第三のゾーンの間の分離壁の垂直部分は存在しない。
【0117】
特定の実施態様において、固体エレメントは、例えば第三のゾーン中の培地の状態(pH、酸素、温度)を測定するためのプローブを組み込むために適合されたチャンネルを伴い提供される。他の特定の実施態様において、固体エレメントは、過剰な圧力が第一のゾーンと第三のゾーンに生じたときに開くことができる安全圧力弁を備えたチャンネルを伴い提供される。デバイスの別の実施態様において、第一のゾーンと第三のゾーン、第二のゾーンのそれぞれのシリンダー状部分は存在しない。以前にエレメントによって占有されていた体積は、今や、細胞増殖に適した拡張された体積から生じたデバイスのより効率的な使用を生じさせる第二のゾーンの部分となる。
【0118】
第三のゾーンへの均一な流量分布を伴わない、第一のゾーンから第二のゾーンへの培地の直接的な流入を防ぐため、第二のゾーンの底部壁の開口部は、第一のゾーンと第三のゾーンの間の壁の開口部の上に位置する領域では閉じられる。開口部の上に閉鎖領域を備えたことによるデバイス適合によって、第一の培養培地移送ゾーンから第三の培養培地移送ゾーンへの培養培地のオーバーフローが生じ、その後、培地は均一に流れながら第二のゾーンへと入る。
【0119】
特定の実施態様において、複数の開口部と、対応する閉鎖領域がそれぞれ、第一のゾーンと第三のゾーンの間の分離壁に、及び第三のゾーンと第二のゾーンの間の壁に備えられる。典型的には、そのような複数の開口部と対応する閉鎖領域は対称性に分布する。
【0120】
デバイスの別の実施態様において、培地の均一な流れは、第三のゾーン内に流れ再分布エレメントを備えることにより達成される。そのようなエレメントは、第一のゾーンから来た培地を適切に再分布させ、第三のゾーンに均一な液体の流れを形成させ、その後に第二のゾーンへと入るために適した任意の形状を有することができる。特定の実施態様において、エレメントは、円形、ひし形、又は卵型の横断面を有する、一連の放射状に伸長する棒の形状を有しており、放射状に適合された対応する開口部の上に位置付けられる。
【0121】
下流のウイルス精製
いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を製造するための本開示の方法は、細胞が第1の細胞培養培地中で培養されるマトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養すること;エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種すること;及び細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収することを含む。いくつかの実施態様において、ポリソルベートは、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される。いくつかの実施態様において、約150,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される。いくつかの実施態様において、細胞は、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される。いくつかの実施態様において、工程(b)はさらに、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することを含み、工程(c)は細胞を溶解して、細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収することを含む。いくつかの実施態様において、細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される。いくつかの実施態様において、細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成すること(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成すること(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成すること(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成すること(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを産生することをさらに含む。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCウイルスを製造するための本開示の方法は、第1の細胞培養培地中で細胞を培養すること;エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種すること;及び細胞に産生されるエンテロウイルスCウイルスを回収することを含み、ここで、ポリソルベートは、細胞にエンテロウイルスCウイルスを接種する間、又は工程(c)の前の約1時間から約4時間の間に第2の細胞培養培地に添加される。
【0122】
いくつかの実施態様において、本開示の回収されたエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、ウイルスを含む第1の溶出液を生成するためにデプスフィルターを通過させる。当技術分野で知られているように、エンテロウイルスC(例えば、培養細胞によって産生される、及び/又は細胞溶解によって培養細胞から回収される)から生産細胞、細胞片、及び他の薬剤を分離するために深層ろ過を使用して、回収したウイルスの清澄化を与えることができる。デプスフィルターは、Bio 20 SEITZ(登録商標)デプスフィルターシートを使用する、SUPRACAP(商標)シリーズのデプスフィルターカプセル(Pall Corporation)などを用いて、カートリッジ又はカプセル形式で適用することができる。他の適切な深層ろ過技術及び装置は当技術分野において公知である。いくつかの実施態様において、デプスフィルターは、約0.2μm〜約3μmの間の孔径を有する。いくつかの実施態様において、デプスフィルターの孔径は、以下の孔径(μm単位):約3、2.8、2.6、2.4、2.2、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、1.0、0.8、0.6、及び0.4の何れか未満である。いくつかの実施態様において、デプスフィルターの孔径は、以下の孔径(μm単位):約0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、又は2.8の何れかよりも大きい。すなわち、デプスフィルターの孔径は、上限3、2.8、2.6、2.4、2.2、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、1.0、0.8、0.6、及び0.4と、独立して選択される下限0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、又は2.8を有する任意の範囲の孔径(μm単位)であり得;ここで、下限は上限よりも小さい。
【0123】
本明細書中に記載されるように、陽イオン交換及び陰イオン交換クロマトグラフィーは、本開示の細胞から回収されたエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を精製するために本開示の方法において使用され得る。有利には、本明細書に実証されるように、これらのクロマトグラフィー技術の組み合わせは、回収されたウイルスの高収率及び高純度を可能にする。例えば、清澄化ウイルス回収物を酸性化し、陽イオン交換膜にロードし、塩又はpHにより溶出し、ろ過し、塩基性にし、陰イオン交換膜にロードし、塩又はpHにより溶出し、ろ過し、不活性化し得る。これは例示的なスキームにすぎず、当業者は置換、削除、挿入、又は並べ替えの工程を有するその変形を容易に企図することができる。
【0124】
陰イオン交換クロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーは両方とも、移動相中の目的の荷電高分子(例えば、ウイルス)の反対の電荷を有する基質への引力に依存する。陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて、負に荷電した基質又は膜は、正に荷電した高分子を引き付ける。陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、正に荷電した基質又は膜は、負に荷電した高分子を引き付ける。一旦高分子が基質上に結合又はロードされると、それらはそれらの特性に応じた方法で基質から直線的又は段階的に溶出され、それによって異なる荷電分子の分離が可能になる。この原理は他の高分子からウイルスを精製するために使用され得る。溶出は、移動相緩衝液のpH又は塩含有量を変えることによって行われ得る。本明細書で実証されるように、pH及び塩含有量などの特定のローディング及び溶出パラメータは、エンテロウイルスCウイルス精製の収率及び純度に劇的な影響を与える。さまざまな適切な緩衝液が当技術分野で公知であり、本明細書中に記載される。イオン交換クロマトグラフィーを用いるウイルス精製方法もまた一般的に知られている。例えば、https://www.pall.com/pdfs/Biopharmaceuticals/MustangQXT_AcroPrep_USD2916.pdfでオンラインで入手可能なインフルエンザウイルスの精製を参照のこと。
【0125】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、本開示のエンテロウイルスCウイルスを精製するために使用され得る。本明細書に示されるように、陽イオン交換クロマトグラフィーのローディング(例えば、陽イオン交換膜への結合)及び溶出に使用される緩衝液及び条件は、ウイルスの純度及び収率に大きく影響する。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を陽イオン交換膜に結合させて、ウイルスを含む結合画分を生成する。いくつかの実施態様において、溶出液は深層ろ過を受けている。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陽イオン交換クロマトグラフィーの前に(例えば、2倍、3倍、4倍、又は5倍希釈係数を用いて)希釈される。他の実施態様では、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陽イオン交換クロマトグラフィーの前には希釈されない。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陽イオン交換膜に結合する前にpH約5.7に調整される(例えば、S1又はS2などのポリオウイルスを使用する)。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陽イオン交換膜に結合する前にpH約5.0に調整される(例えば、S3などのポリオウイルスを使用する)。孔径0.65μmの陽イオン交換膜を使用するMustang(登録商標)Sシステム(Pall Corporation)のような当技術分野において公知のさまざまな装置が陽イオン交換クロマトグラフィー(任意選択的にろ過を含む)に適している。陽イオン交換膜には、限定されないが、架橋ポリマーコーティング中にペンダントスルホン酸官能基を含むさまざまな官能基が使用される。本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液を陽イオン交換膜に結合させるためにさまざまな緩衝液を使用することができる。例示的な緩衝液としては、限定されないが、クエン酸緩衝液及びリン酸緩衝液が挙げられる(追加の緩衝液については後述する)。いくつかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて(例えば、ローディング及び/又は溶出において)使用される緩衝液は、ポリソルベート(例えば、0.05%、0.1%、0.25%、又は0.5%のTWEEN(登録商標)―80)を含有する。
【0126】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含有する溶出液は、約4.5〜約6.0の範囲のpHで陽イオン交換膜に結合する。いくつかの実施態様において、溶出液は、以下のpH:約6.0、5.5、又は5.0のうちの何れかよりも低いpHで陽イオン交換膜に結合する。いくつかの実施態様において、溶出液は、以下のpH:約4.5、5.0、又は5.5の何れかのpHよりも高いpHで陽イオン交換膜に結合する。すなわち、溶出液は、上限6.0、5.5、又は5.0と、独立して選択される下限4.5、5.0、又は5.5を有するpHの範囲内のpHで陽イオン交換膜に結合することができ;ここで下限は上限よりも小さい。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、約8mS/cm〜約10mS/cmの間で陽イオン交換膜に結合する。例えば、溶出液は、約8、約9、又は約10mS/cmで結合することができる。
【0127】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含有する結合画分は、ウイルスを含有する溶出液を生成するために陽イオン交換膜から溶出される。いくつかの実施態様において、本開示の陽イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、膜への結合前、クロマトグラフィー中、及び/又は膜からの溶出後のろ過工程を含む。溶出は勾配的でも段階的でもよい。本明細書中に記載されるように、溶出は、移動相のpHの変化を用いて、又は移動相のイオン強度の変化を用いて(例えば、塩の添加を通して)行われ得る。溶出のために、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムを含むがこれらに限定されないさまざまな塩が使用される。特定の実施態様において、塩はNaClである。例えば、いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する結合画分は、約0.20M〜約0.30Mの塩化ナトリウムを添加することによって、例えば、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、又は約300mMの塩化ナトリウムを添加することによって陽イオン交換膜から溶出される。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する結合画分は、約20mS/cm〜約25mS/cmの間で、例えば、約20、約21、約22、約23、約24、又は約25mS/cmで陽イオン交換膜から溶出される。pH溶出には、マレイン酸、メチルマロン酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、コハク酸、酢酸、MES、リン酸、HEPES、及びBICINEを含むがこれらに限定されないさまざまな緩衝液が使用される。特定の実施態様において、緩衝液はリン酸塩又はクエン酸塩である。これらの緩衝液のそれぞれを用いた溶出に適したpH範囲は当技術分野において公知であり;一般に、緩衝液のpHは、分子(例えば、エンテロウイルスCウイルス)のpIと固定相上の荷電基のpKaとの間にある。例えば、いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する結合画分は、pHを約8.0に調整することによって陽イオン交換膜から溶出される。
【0128】
例示的な陽イオン交換結合及び溶出パラメータ及び条件は本明細書に記載されている。上記の陽イオン交換クロマトグラフィーは、実施例8〜10及び12及び/又は
図9A〜
図11E、
図12A〜
図20B、
図21A〜
図23G、及び
図25〜
図33Bに記載の条件の1つ以上を任意の組み合わせで使用し得ると考えられる。
【0129】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を精製するために使用され得る。本明細書に示されるように、陰イオン交換クロマトグラフィーのローディング(例えば、陰イオン交換膜への結合)及び溶出に使用される緩衝液及び条件は、ウイルスの純度及び収率に大きく影響する。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、ウイルスを含有する結合画分を生成するために陰イオン交換膜に結合される。いくつかの実施態様において、溶出液は深層ろ過及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィーに供されている。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陰イオン交換クロマトグラフィーの前に(例えば、2倍、3倍、4倍、又は5倍希釈係数を用いて)希釈される。他の実施態様では、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陰イオン交換クロマトグラフィーの前には希釈されない。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陰イオン交換膜に結合する前に、約8.0〜約8.5のpHに調整される(例えば、S1、S2、又はS3などのポリオウイルスを使用する)。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陰イオン交換膜に結合する前にpH約8.0に調整される(例えば、S2などのポリオウイルスを使用する)。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、陰イオン交換膜に結合する前に(例えば、S1又はS3などのポリオウイルスを使用して)約8.5のpHに調整される。孔径0.8μmの陰イオン交換膜を使用するMustang(登録商標)Qシステム(Pall Corporation)のような、当技術分野で公知のさまざまな装置が陰イオン交換クロマトグラフィー(任意選択的にろ過を含む)に適している。架橋ポリマーコーティング中のペンダント四級アミン官能基を含むがこれらに限定されないさまざまな官能基が陰イオン交換膜に使用される。本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液を陰イオン交換膜に結合させるためにさまざまな緩衝液を使用することができる。例示的な緩衝液は、限定されないが、リン酸緩衝液が挙げられる(追加の緩衝液については後述する)。いくつかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて(例えば、ローディング及び/又は溶出において)使用される緩衝液は、ポリソルベート(例えば、0.05%、0.1%、0.25%、又は0.5%のTWEEN(登録商標)―80)を含有する。
【0130】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含有する溶出液は、約7.5〜約8.5の範囲のpHで陰イオン交換膜に結合する。例えば、pHは、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、又は約8.5に調整することができる。特定の実施態様において(例えば、ポリオウイルスS1又はS3を使用して)、溶出液は、約8.5のpHで陰イオン交換膜に結合する。他の実施態様では(例えば、ポリオウイルスS2を使用して)、溶出液は約8.0のpHで陰イオン交換膜に結合する。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する溶出液は、約3mS/cmで(at between)陰イオン交換膜に結合する。
【0131】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含有する結合画分は、ウイルスを含有する溶出液を生成するために陰イオン交換膜から溶出される。いくつかの実施態様において、本開示の陰イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、膜に結合する前、クロマトグラフィー中、及び/又は膜から溶出した後のろ過工程を含む。溶出は勾配的でも段階的でもよい。本明細書中に記載されるように、溶出は、移動相のpHの変化を用いて、又は移動相のイオン強度の変化を用いて(例えば、塩の添加を通して)行われ得る。塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムを含むがこれらに限定されないさまざまな塩が溶出に使用される。特定の実施態様において、塩はNaClである。例えば、いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する結合画分は、約0.05M〜約0.10Mの塩化ナトリウムを添加することによって陰イオン交換膜から溶出される。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスCウイルスを含有する結合画分は、約5mS/cm〜約10mS/cmの間で、例えば、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10mS/cmで陽イオン交換膜から溶出される。pH溶出のために、限定されないが、リン酸塩、N―メチルピペラジン、ピペラジン、L―ヒスチジン、ビス−トリス、ビス−トリスプロパン、トリエタノールアミン、トリス、N―メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパン1,3―ジアミノ、エタノールアミン、及びピペリジンを含むさまざまな緩衝液が用いられる。特定の実施態様において、緩衝液はリン酸又はトリスである。これらの緩衝液のそれぞれを用いた溶出に適したpH範囲は当技術分野において公知であり;一般に、緩衝液のpHは、分子(例えば、エンテロウイルスCウイルス)のpIと固定相上の荷電基のpKaとの間にある。
【0132】
例示的な陰イオン交換結合及び溶出パラメータ及び条件は本明細書に記載されている。上記の陰イオン交換クロマトグラフィーは、実施例8〜10及び12及び/又は
図9A〜
図11E、
図12A〜
図20B、
図21A〜
図23G、及び
図25〜
図33Bに記載の条件の1つ以上を任意の組み合わせで使用し得ると考えられる。
【0133】
ウイルス
本開示の特定の態様は、エンテロウイルスCウイルスの産生に関する。
ヒトのポリオは、ヒトエンテロウイルスC(HEV−C)グループの3つの血清型のポリオウイルス(PV1、PV2、及びPV3)によって引き起こされる。ヒトエンテロウイルスCは、エンベロープのない、プラスセンスRNAウイルスのピコルナウイルス科に属し、これにはポリオウイルス及び多数のコクサッキーAウイルス血清型も含まれる(例えば、CAV血清型1、11、13、15、17、18、19、20、21、22、及び24)(Brown, B. et al. (2003) J. Virol. 77:8973-84)。従って、適切なエンテロウイルスCの例としては、限定されないが、PV1、PV2、PV3、又はそれらの任意の組み合わせ、変異体、若しくは組換え体が挙げられる。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCは、その組換え体及びそのワクチン由来の変異体を含む、3つのSabin株(例えば、S1、S2、及びS3)のうちの1つ以上を指すことがある。(例えば、Kew O M, Nottay B K. ヒトにおける経口ポリオワクチン株の進化は、突然変異及び分子内組換えの両方によって起こる(Evolution of the oral poliovaccine strains in humans occur by both mutation and intramolecular recombination). In:Chanock R, Lerner R, editors. Modern approaches to vaccines. N.Y:Cold Spring Harbor Press; 1984. pp. 357-367を参照のこと)。3つ全てのポリオウイルス血清型を産生する例を本明細書に提供する。特定の実施態様において、エンテロウイルスCウイルスは、LSc、2ab(S1)P712、Ch、2ab(S2);Leon、12
a1b(S3);及び任意の組み合わせから選択されるポリオウイルス株である。これらのポリオウイルス株は当技術分野において公知である。例えば、Toyoda, H. et al. (1984) J. Mol. Biol. 174:561-85を参照のこと。
【0134】
従って、いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、本明細書に開示される任意のワクチン及び/又は免疫原性組成物において使用され得る。例えば、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、必要とする対象においてポリオを治療又は予防すること、及び/又は必要とする対象においてポリオに対して防御免疫応答などの免疫応答を誘導することに有用な1つ以上の抗原又はウイルス株(例えば、不活性化株又は弱毒化生株)を提供するために使用され得る。
【0135】
本開示の抗原は、本開示のエンテロウイルスC(本明細書に記載の方法によって産生及び/又は精製されたエンテロウイルスC、例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3など)に由来し得る。本開示の抗原は、免疫応答を誘発することができる任意の物質であり得る。適切な抗原の例には、限定されないが、全ウイルス、弱毒化ウイルス、不活化ウイルス、タンパク質、ポリペプチド(活性タンパク質及びタンパク質内の個々のポリペプチドエピトープを含む)、グリコポリペプチド、リポポリペプチド、ペプチド、ポリサッカライド、ポリサッカライドコンジュゲート、ペプチド及びポリサッカライドの非ペプチド模倣物、その他の分子、小分子、脂質、糖脂質、炭水化物が含まれる。
【0136】
本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、少なくとも1つの非ヒト細胞適応突然変異を含み得る。適応突然変異は、ウイルスを特定の細胞株における増殖に適応させることによって生じさせることができる。例えば、細胞をウイルスでトランスフェクトし、ウイルスが複製し、その核酸が突然変異するように継代することができる。核酸突然変異は、点突然変異、挿入突然変異、又は欠失突然変異であり得る。核酸変異は、非ヒト細胞におけるウイルスの増殖を促進するウイルスタンパク質内のアミノ酸変化をもたらし得る。適応突然変異は、プラークサイズ、増殖動態、温度感受性、薬剤耐性、病原性、及び細胞培養におけるウイルス収量の変化を含む、ウイルスの表現型の変化を促進し得る。これらの適応突然変異は、細胞株中で培養されたウイルスの速度と収率を増加させることによってワクチン製造において有用であり得る。さらに、適応突然変異は、免疫原性エピトープの構造を変えることによってウイルス抗原の免疫原性を増強し得る。
【0137】
従って、特定の実施態様において、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、少なくとも1つの非ヒト細胞適応突然変異を含み得る。特定の実施態様において、適応変異は、非ヒト細胞に対するウイルス抗原の変異である。いくつかの実施態様において、非ヒト細胞は哺乳動物細胞であり得る。非ヒト哺乳動物細胞の例には、限定されないが、Vero細胞(サル腎臓由来)、MDBK細胞、MDCK細胞、ATCC CCL34 MDCK(NBL2)細胞、MDCK33016(WO97/37001に記載されている受入番号DSM ACC 2219)細胞、BHK21−F細胞、HKCC細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)が挙げられる。いくつかの実施態様において、非ヒト細胞はサル細胞であり得る。いくつかの実施態様において、サル細胞はVero細胞株由来である。適切なVero細胞株の例には、限定されないが、WHO Vero 10−87、ATCC CCL−81、Vero 76(ATCC受入番号CRL−1587)、又はVero C1008(ATCC受入番号CRL−1586)が含まれる。
【0138】
ポリオウイルスなどのエンテロウイルスCは、線状の、プラスセンスの、一本鎖RNAゲノムを有する(例えば、Brown, B. et al. (2003) J. Virol. 77:8973-84を参照のこと)。これらのウイルスゲノムの各々は、構造的及び非構造的ポリペプチドの両方をコードする。これらのウイルスの各々によってコードされる構造ポリペプチドとしては、限定されないが、一緒にウイルスキャプシドを構成し得るVP1、VP2、VP3、及びVP4が挙げられる。これらのウイルスの各々によってコードされる非構造ポリペプチドとしては、限定されないが、例えば、ウイルス複製及び病原性に関与する2A、2B、2C、3A、3B、3C、及び3Dが挙げられる。
【0139】
従って、特定の実施態様において、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、又はそれ以上の非ヒト細胞適応突然変異を、限定されないが、VP1、VP2、VP3、2A、2B、2C、3A、3B、3C、及び3Dを含む1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、又は10以上のウイルス抗原内に含み得る。いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスAは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、又はそれ以上の非ヒト細胞適応突然変異をウイルスの5’又は3’の非翻訳領域(UTR)の内部に含み得る、不活化ウイルス全体を含む。
【0140】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20以上の弱毒化突然変異を、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、又は10以上の非コード領域内、及び/又は、限定されないが、5’及び3’非コード領域、VP1、VP2、VP3、2A、2B、2C、3A、3B、3C、及び3Dを含むウイルス抗原の内部に含み得る。例えば、Sabinポリオウイルス株由来の弱毒化突然変異が当技術分野で公知であり、限定されないが、5’及び3’非コード領域に見いだされる突然変異(例えば、IRES突然変異)、キャプシドタンパク質などに見いだされる突然変異を含む(例えば、Kawamura, N. et al. (1989) J. Virol. 63:1302-9及びMinor, P.D. (1992) J. Gen. Virol. 73:3065-77を参照のこと)。
【0141】
いくつかの実施態様において、エンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、本開示の任意のワクチン及び免疫原性組成物において使用され得る。例えば、本開示のエンテロウイルスCは、必要とする対象においてポリオを治療又は予防すること、及び/又は必要とする対象においてポリオに対する防御免疫応答などの免疫応答を誘導することに有用であり得る。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCは、Salk型不活化ワクチンにおいて有用な不活化ポリオウイルス又はポリオウイルス血清型の組み合わせであり得る。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCは、Sabin経口ポリオワクチンに有用な弱毒化ポリオウイルス又はポリオウイルス血清型の組合せ(それらの組換え体及び誘導体を含む)であり得る(例えば、Kohara, M. et al. (1988) J. Virol. 62:2828-35及びShimizu, H. (2016) Vaccine 34:1975-85を参照)。
抗原の製造
【0142】
ポリオを治療もしくは予防するための、及び/又はポリオに対する例えば防御的免疫反応などの免疫反応を誘導するための、限定されないが、精製ウイルス、不活化ウイルス、弱毒化ウイルス、組み換えウイルス、並びに/又はサブユニットワクチンのための精製ウイルスタンパク質及び/もしくは組み換えウイルスタンパク質をはじめとする、ワクチン及び/又は免疫原性組成物における使用のための本開示の抗原は、当分野に公知の任意の適切な方法により製造されてもよく、及び/又は精製されてもよく、もしくはさもなければ単離されてもよい。本開示の抗原の例としては、ポリオを引き起こす少なくとも1つのウイルスから産生された、誘導された、精製された、及び/又はさもなければ単離された、全粒子ウイルス、弱毒化ウイルス、不活化ウイルス、タンパク質、ポリペプチド(活性タンパク質及びタンパク質内の個々のポリペプチドエピトープを含む)、グリコポリペプチド、リポポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖結合体、多糖のペプチド模倣体及び非ペプチド模倣体、並びに他の分子、小分子、脂質、糖脂質及び炭水化物が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、適切な抗原としては、本開示のエンテロウイルスCなどのウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4などの構造ポリペプチド、並びに2A、2B、2C、3A、3B、3C、及び3Dなどの非構造ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本開示の抗原は、化学的又は酵素的に合成されてもよく、組み換え技術により製造されてもよく、天然源から単離されてもよく、又は前述の組み合わせであってもよい。特定の実施態様において、本開示の抗原は、例えばS1、S2、S3(PV1、PV2、PV3とも呼ばれる)などのポリオを引き起こす本開示のウイルスの少なくとも1つから産生、精製、単離、及び/又は誘導される。本開示の抗原は、精製されていてもよく、部分的に精製されていてもよく、又は粗抽出物であってもよい。いくつかの実施態様では、本開示の抗原は、上記の「ワクチン及び免疫原性組成物の製造」の項に記載されるように製造された例えば不活化ウイルスなどのウイルスである。
【0144】
特定の実施態様において、本開示の1つ以上の抗原は、非ヒト細胞を培養することにより製造されてもよい。本開示の1つ以上の抗原の製造に適した細胞株は、好ましくは哺乳類起源であり、限定されないが、VERO細胞(サル腎臓由来)、ウマ、ウシ(例えば、MDBK細胞)、ヒツジ、イヌ(例えば、イヌ腎臓由来のMDCK細胞、ATCC CCL34 MDCK(NBL2)又はMDCK 33016、寄託番号はDSM ACC 2219であり、WO97/37001に記述されている)、ネコ及び齧歯類(例えば、BHK21−F、HKCC細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などのハムスター細胞)が挙げられ、例えば、成体、新生仔、胎子、及び胚をはじめとする広範な発育段階から得てもよい。特定の実施態様において、細胞は不死化されている(例えば、WO01/38362及びWO02/40665に記述され、ECACC寄託番号96022940で寄託されているPERC.6細胞など)。好ましい実施態様では哺乳類細胞が使用され、以下の非限定的な細胞型のうちの1つ以上から選択されてもよく、及び/又は誘導されてもよい:線維芽細胞(例えば、皮膚、肺)、内皮細胞(大動脈、冠状動脈、肺、血管、皮膚微小血管、臍帯)、肝臓細胞、角化細胞、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、NK、樹状)、乳腺細胞(例えば、上皮)、平滑筋細胞(例えば、血管、大動脈、冠状動脈、動脈、子宮、気管支、子宮頚、網膜周皮細胞)、メラニン細胞、神経系細胞(例えば、星状膠細胞)、前立腺細胞(例えば、上皮、平滑筋)、腎細胞(例えば、上皮、メサンギウム、近位尿細管)、骨細胞(例えば、軟骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞)、筋細胞(例えば、筋芽細胞、骨格、平滑、気管支)、肝臓細胞、網膜芽細胞、及び間質細胞。WO97/37000及びWO97/37001は、懸濁液及び無血清培地中での増殖が可能で、ウイルス抗原の製造に有用な動物細胞及び細胞株の製造を記載している。特定の実施態様において、非ヒト細胞は無血清培地中で培養される。
【0145】
ポリペプチド抗原は、当分野に公知の標準的なタンパク質精製法を用いて天然源から単離されてもよく、当該方法としては、液体クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィーなど)、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動(一次元ゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動を含む)、アフィニティークロマトグラフィー、又は他の精製技術が挙げられるがこれらに限定されない。多くの実施態様において、抗原は、例えば、約50%〜約75%の純度、約75%〜約85%の純度、約85%〜約90%の純度、約90%〜約95%の純度、約95%〜約98%の純度、約98%〜約99%の純度、又は99%超の純度の精製抗原である。
【0146】
固相ペプチド合成法を用いてもよく、かかる技術は当分野の当業者に公知である。Jones, The Chemical Synthesis of Peptides (Clarendon Press, Oxford) (1994)を参照のこと。一般的に、かかる方法において、ペプチドは、固相結合伸長ペプチド鎖に活性化単量体単位を連続添加することにより製造される。
【0147】
ポリペプチドの製造に、確立された組み換えDNA法を用いてもよく、この場合、例えばポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を備える発現構築物を適切な宿主細胞(例えば、in vitro細胞培養で単細胞体として増殖される真核宿主細胞であり、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞など)又は原核細胞(例えば、in vitro細胞培養で増殖する)に導入し、遺伝子改変された宿主細胞を生成し、適切な培養条件下で当該遺伝子改変された宿主細胞からタンパク質を産生させる。
【0148】
死滅ウイルス及び弱毒化ウイルスの免疫原性組成物に加え、サブユニット免疫原性組成物、又はポリオウイルスの抗原性構成要素を動物に提示する他のタイプの免疫原性組成物を使用してもよい。抗原性構成要素は、ヒトに注入された際にヒトの免疫反応を刺激し、ヒトがポリオに対する防御的免疫を発現するタンパク質、糖タンパク質、脂質結合したタンパク質もしくは糖タンパク質、改変脂質部分、又は他のウイルス構成要素であってもよい。サブユニット免疫原性組成物に関しては、ウイルスは上述の哺乳類細胞上で培養されてもよい。細胞培養物をホモジナイズし、この細胞培養物ホモジネートを適切なカラム上で免疫原性組成物を単離してもよく、又は適切な孔サイズのフィルターを通して免疫原性組成物を単離してもよく、又はこの細胞培養物ホモジネートを遠心することにより免疫原性組成物を単離してもよい。
【0149】
抗原性構成要素がタンパク質である場合、そのタンパク質をコードする核酸を単離し、当該単離された核酸を含有する免疫原性組成物を作製してもよい。抗原性構成要素をコードする核酸は、真核細胞プロモーターのシグナル配列の下流で、プラスミド上に配置されていてもよい。そのプラスミドは、1つ以上の選択可能なマーカーを含有してもよく、例えばサルモネラ属、シゲラ属、又は他の適切な細菌などの弱毒化原核生物へとトランスフェクトされてもよい。次いで、ヒトが抗原性構成要素に対する防御的免疫反応を起こすことができるよう、この細菌をヒトに投与してもよい。あるいは、抗原性構成要素をコードする核酸は、原核細胞プロモーターの下流に配置されてもよく、1つ以上の選択可能マーカーを有してもよく、及びサルモネラ属、シゲラ属又は他の適切な細菌などの弱毒化された原核生物へとトランスフェクトされてもよい。次いで、対象抗原に対する免疫反応が所望される真核生物対象へと細菌が投与されてもよい。例えば、Honeらへの米国特許第6,500,419号を参照のこと。
【0150】
サブユニット免疫原性組成物に関し、ポリオウイルスのタンパク性抗原性構成要素をコードする核酸を、例えば、国際特許出願公開WO00/32047(Galen)及び国際特許出願公開WO02/083890(Galen)に記載されるプラスミドなどのプラスミドへとクローニングしてもよい。次いで、プラスミドを細菌へとトランスフェクトし、その細菌が所望される抗原性タンパク質を産生してもよい。両特許出願に記載されている様々な方法により、所望される抗原性タンパク質を単離及び精製してもよい。
ウイルス不活化
【0151】
いくつかの実施態様において、本開示方法により生成及び/又は精製されたエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は不活化されている。哺乳類細胞への感染能力を破壊するためのウイルスの不活化方法又は死滅方法は当分野に公知である。かかる方法としては、化学的手段及び物理的手段の両方が挙げられる。ウイルス不活化の適切な手段としては、洗剤、ホルマリン(本明細書において、「ホルムアルデヒド」とも呼称される)、ベータ−プロピオラクトン(BPL)、バイナリーエチルアミン(BEI)、アセチルエチレンイミン、加熱、電磁線照射、X線照射、γ線照射、紫外線照射(UV照射)、UV−A照射、UV−B照射、UV−C照射、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、及びそれらすべての任意の組み合わせから選択される1つ以上の手段の有効量を用いた処置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
化学的不活化のための剤、及び化学的不活化のための方法は、当分野に公知であり、本明細書に記載されている。いくつかの実施態様において、エンテロウイルスCは、BPL、ホルマリン、又はBEIのうちの1つ以上を用いて化学的に不活化されている。エンテロウイルスCがBPLを用いて化学的に不活化されている特定の実施態様において、ウイルスは1つ以上の改変を含有していてもよい。いくつかの実施態様では、1つ以上の改変は、改変核酸を含んでもよい。いくつかの実施態様では、改変核酸は、アルキル化核酸である。他の実施態様では、1つ以上の改変は、改変ポリペプチドを含んでもよい。いくつかの実施態様では、改変ポリペプチドは、改変されたシステイン、メチオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、リシン、セリン、及びスレオニンのうちの1つ以上を含む改変アミノ酸を含有する。エンテロウイルスCがホルマリンを用いて化学的に不活化されている特定の実施態様において、ウイルスは1つ以上の改変を含有していてもよい。いくつかの実施態様では、1つ以上の改変は、改変ポリペプチドを含んでもよい。いくつかの実施態様では、1つ以上の改変は、架橋ポリペプチドを含んでもよい。エンテロウイルスCがホルマリンを用いて化学的に不活化されているいくつかの実施態様において、ワクチン又は免疫原性組成物はホルマリンをさらに含む。本開示の特定の実施態様において、エンテロウイルスCは、BEIを用いて不活化されていた。エンテロウイルスCがBEIを用いて不活化されていた特定の実施態様において、ウイルスは1つ以上の改変を含有している。いくつかの実施態様では、1つ以上の改変は、改変核酸を含む。いくつかの実施態様では、改変核酸は、アルキル化核酸である。
【0153】
エンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)がBEI又はBPLを用いて化学的に不活化されているいくつかの実施態様では、反応しなかった残留BEI又は残留BPLはいずれもチオ硫酸ナトリウムを用いて中和されていてもよい(すなわち加水分解されていてもよい)。一般的に、チオ硫酸ナトリウムは過剰に添加される。いくつかの実施態様では、チオ硫酸ナトリウムは、約25mM〜約100mM、約25mM〜約75mM、又は約25mM〜約50mMの範囲の濃度で添加されてもよい。特定の実施態様において、チオ硫酸ナトリウムは、BEIが20に対し、濃チオ硫酸ナトリウムが1の比率で、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、又は約40mMの濃度で添加されてもよい。いくつかの実施態様では、溶液は、たとえばインライン静的ミキサーなどのミキサーを用いて混合され、次いでろ過(例えば、浄化)されてもよい。一般的に、2つの溶液はポンプでミキサーに通すことにより完全に混合し、チオ硫酸ナトリウムによりBEIが中和される。
【0154】
本開示の特定の実施態様は、エンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を不活化する方法に関する。いくつかの実施態様において、当該方法は、有効量のBEIを用いてウイルス調製物を処置することを含む。特定の実施態様において、BEIの有効量を用いた処置は、約0.25%v/v〜約3.0%v/vの範囲の量でBEIを用いて処置することを含むが、これに限定されない。特定の実施態様において、単離され、処置されるウイルスは、PV1、PV2、及びPV3のうちの1つ以上から選択される。この方法の特定の実施態様において、ウイルス調製物は、約25℃〜約42℃の範囲の温度でBEIを用いて処置される。この方法の特定の実施態様において、ウイルス調製物は、約1時間〜約10時間の範囲の期間、BEIを用いて処置される。特定の実施態様において、当該方法はさらに、チオ硫酸ナトリウムの有効量を用いて、反応しなかったBEIを不活化する(すなわち、加水分解する)ことを含む。いくつかの実施態様では、チオ硫酸ナトリウムの有効量は、約25mM〜約100mM、約25mM〜約75mM、又は約25mM〜約50mMの範囲である。
【0155】
いくつかの実施態様において、有効量のベータ−プロピオラクトン(BPL)を用いてウイルス調製物を処置すること、及び任意で、有効量のベータ−プロピオラクトン(BPL)を用いてウイルスを調製するときと同時、又はその後に、有効量のホルマリンを用いてウイルス調製物を処置すること、を含む。あるいは、いくつかの実施態様では、当該方法は、有効量のベータ−プロピオラクトン(BPL)を用いてウイルス調製物を第一の期間、処置すること、及び有効量のBPLを用いてウイルス調製物を第二の期間、処置して、ウイルス調製物を完全に不活化すること、を含む。いくつかの実施態様において、第一の期間及び/又は第二の期間は、約12時間〜約36時間の範囲である。ある実施態様においては、第一の期間及び/又は第二の期間は、約24時間である。ある実施態様においては、有効量のBPLを用いた処置は、約0.05%v/v〜約3.0%v/v、0.1%v/v〜約2%v/v、又は約0.1%v/v〜約1%v/vの範囲の量で、BPLを用いて処置することを含むが、これに限定されない。特定の実施態様において、有効量のBPLを用いて処置は、0.05%v/v、0.06%v/v、0.07%v/v、0.08%v/v、0.09%v/v、0.1%v/v、0.2%v/v、0.3%v/v、0.4%v/v、0.5%v/v、0.6%v/v、0.7%v/v、0.8%v/v、0.9%v/v、又は1%v/vのBPLを用いて処置することを含むが、これに限定されない。この方法の特定の実施態様において、ウイルス調製物は、約2℃〜約8℃の範囲の温度でBEIを用いて処置される。特定の実施態様において、この方法は、BPLを加水分解するのに十分な期間、37℃の温度でウイルス調製物を加熱することを含む。特定の実施態様において、当該期間は、約1時間〜約6時間の範囲である。あるいは、いくつかの実施態様では、当該方法はさらに、チオ硫酸ナトリウムの有効量を用いて反応していないBPLを不活化(すなわち加水分解)することを含む。いくつかの実施態様では、チオ硫酸ナトリウムの有効量は、約25mM〜約100mM、約25mM〜約75mM、又は約25mM〜約50mMの範囲である。
【0156】
いくつかの実施態様において、当該方法は、有効量のホルマリンを用いてウイルス調製物を処置すること、及びホルマリンからウイルス調製物を精製すること、を含む。特定の実施態様において、ホルマリンの有効量を用いた処置は、約0.05%v/v〜約3.0%v/v、0.1%v/v〜約2%v/v、又は約0.1%v/v〜約1%v/vの範囲の量でホルマリンを用いて処置することを含むが、これに限定されない。特定の実施態様において、ウイルス調製物は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の量でホルマリンから高度に精製される。ホルマリンを使用してポリオウイルスを不活性化する方法は当技術分野において周知である;例えば、Wilton, T. et al. (2014) J. Virol. 88:11955-64を参照。
【0157】
ワクチン及び/又は免疫原性組成物の製剤化
本開示のさらなる態様は、本開示方法により生成されたウイルス(例えば本開示のエンテロウイルスC、例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)を含有する組成物、免疫原性組成物、及び/又はワクチンに関する。かかる組成物、ワクチン及び/又は免疫原性組成物は、その必要のある対象におけるポリオの治療又は予防に有用であり得、及び/又はその必要のある対象におけるポリオに対する例えば防御的免疫反応などの免疫反応の誘導に有用であり得る。
【0158】
典型的には、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物は、溶液又は懸濁液の何れかの注射物質として調製される。注射の前に液体となる溶液又は懸濁液に適した固形形態が調製されてもよい。かかる調製物はまた、乳化されてもよく、又は乾燥粉末として製造されてもよい。活性な免疫原性成分はしばしば、薬学的に受容可能であり、当該活性成分と適合性のある賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、スクロース、グリセロール、エタノール又はその同等物、及びそれらの組み合わせである。さらに、もし所望の場合には、ワクチン又は免疫原性組成物は、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、又は当該ワクチンもしくは免疫原性組成物の効果を増強させるアジュバントなどの補助的物質を含有してもよい。
【0159】
ワクチン又は免疫原性組成物は、非経口的に注射によって、例えば皮下、経皮、皮内、真皮下、又は筋肉内に簡便に投与されてもよい。他の投与様式に適したさらなる剤型としては、座薬が挙げられ、及び一部の場合においては、口腔、経口、鼻内、頬側、舌下、腹腔、膣内及び頭蓋内の剤型が挙げられる。経口及び注射ポリオワクチンは当技術分野において周知であり、50年以上にわたって使用されてきた。座薬に関しては、従来型の結合剤及び担体として、例えばポリアルカレングリコール又はトリグリセリドなどが挙げられ、かかる座薬は、0.5%〜10%、又はさらには1〜2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成される。特定の実施態様において、例えば脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物などの低融点ワックスが最初に溶け、本明細書に記載される手足口病ワクチン又は免疫原性組成物抗原が例えば攪拌などにより均一に分散される。溶解した均一な混合物は、次いで、利便なサイズの型に注がれ、冷却され、凝固する。
【0160】
鼻内送達に適した剤型としては、液体(例えば、エアロゾル又は点鼻薬としての投与のための水溶液)及び乾燥粉末(例えば鼻腔内での急速な沈着のための)が挙げられる。製剤は、通常に用いられる賦形剤、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、キシリトール、及びキトサンなどを含有する。例えばキトサンなどの粘膜付着剤は、鼻内投与された製剤の粘膜絨毛クリアランスを遅延させる液体又は粉末製剤の何れかで使用されてもよい。例えばマンニトール及びスクロースなどの糖類は、液体製剤中の安定剤として使用することができ、乾燥粉末製剤中では安定剤、膨化剤、粉体流剤、及びサイズ剤として使用することができる。さらに、例えばモノホスホリルリピドA(MLA)又はその誘導体、又はCpGオリゴヌクレオチドなどのアジュバントは、免疫賦活剤として液体製剤及び乾燥粉末製剤の両方において使用することができる。
【0161】
経口送達に適した剤型としては、液体、固体、半固体、ゲル、錠剤、カプセル、トローチなどが挙げられる。経口送達に適した剤型としては、錠剤、トローチ、カプセル、ゲル、液体、食品、飲料、栄養補助食品などが挙げられる。製剤は、このように通常に使用される賦形剤、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含有する。他の手足口病ワクチン及び免疫原性組成物は、溶液、懸濁液、丸薬、徐放製剤又は粉末の形態をとってもよく、及び10〜95%の活性成分、又は25〜70%の活性成分を含有してもよい。経口製剤に関し、コレラ毒素は興味深い製剤パートナーである(また、可能性のある結合パートナーである)。
【0162】
膣投与用に製剤化された場合、ポリオワクチン及び免疫原性組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、又はスプレーの形態であってもよい。前述の剤型のいずれも、ポリオワクチン及び免疫原性組成物抗原に加え、例えば適切であると当分野において知られている例えば担体などの剤を含有してもよい。
【0163】
いくつかの実施態様では、本開示のポリオワクチン及び免疫原性組成物は、全身送達用又は局所送達用に製剤化されていてもよい。かかる製剤は、当分野に公知である。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、液体、及び栄養補助物質、電解質補助物質(例えば、リンゲルのデキストロースに基づいたもの)などが挙げられる。全身及び局所の投与経路としては、例えば皮内、局所塗布、静脈内、筋肉内などが挙げられる。
【0164】
本開示のワクチン及び免疫原性組成物は、投与製剤に適合した様式で、治療有効であり、及び免疫原性のある量で、投与されてもよい。投与される量は、例えば、免疫反応を開始させる個々の免疫システムの能力、及び所望される防御の程度などをはじめとする、治療される対象に依存している。適切な用量範囲は、ワクチン1回当たり数百マイクログラムの活性成分の桁の用量であり、例示的な範囲は約0.1μg〜10μg(より高い量の1〜10mgの範囲も予期されるが)であり、例えば、約0.1μg〜5μgの範囲、又は0.6μg〜3μgの範囲、又は約1μg〜3μgの範囲、又は0.1μg〜1μgの範囲である。特定の実施態様において、用量は、1回投与量当たり約0.1μg、約0.2μg、約0.3μg、約0.4μg、約0.5μg、約0.6μg、約0.7μg、約0.8μg、約0.9μg、約1μg、約1.1μg、約1.2μg、約1.3μg、約1.4μg、約1.5μg、約1.6μg、約1.7μg、約1.8μg、約1.9μg、約2μg、約2.1μg、約2.2μg、約2.3μg、約2.4μg、約2.5μg、約2.6μg、約2.7μg、約2.8μg、約2.9μg、又は約3μgであってもよい。特定の実施態様において、本開示のワクチン及び免疫原性組成物は、1回投与量当たり、1μgの量で投与されてもよい。
【0165】
いくつかの実施態様において、投与量は、ポリオウイルスワクチンのためのD抗原単位などの複数の単位に基づく。いくつかの実施態様において、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物は、ポリオウイルス株S1、S2、及びS3の投与量を含む。例えば、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の適切な投与量は、1.5:50:50、0.75:25:25、又は3:100:100の比のS1:S2:S3(例えば、各株のDUに基づく比率)を含み得るが、これらに限定されない。
【0166】
初回投与及びブースター注射のための適切なレジメンもまた可変であるが、初回投与とそれに続く接種又は他の投与が典型的である。投与は、成人、乳児、及び腎機能障害のような複雑な徴候を伴う者で変わる可能性がある。経口ポリオワクチン(OPV)及び不活化ポリオワクチン(IPV)を投与するのに適した投与レジメンは当技術分野において公知である。例えば、成人及び小児において、Orimuneポリオワクチンは、0.5mLの単回経口用量で投与され得、いくつかの実施態様では、その後8週間後に2回目の用量、及び2回目の用量から8〜12ヶ月後に3回目の用量が投与され得る。乳児では、最初の0.5mL経口用量が6−12週齢で投与され得、続いて最初の用量の8週間後に2回目の0.5mL経口用量、6〜18ヶ月齢の間に3回目の0.5mL経口用量が投与され得る。世界保健機関(WHO)によると、OPVワクチン接種レジメンには、3回のOPV用量と1回のIPV用量が含まれ、投与は6週齢から開始され、OPV投与の間隔は最短で4週間である。単回IPV用量が使用される場合、好ましくは14週間から与えられ、OPV用量と共投与され得る。IPV投与単独の場合、2ヶ月齢から始めて最初の一連の3回のIPV用量を投与することができ、ブースター用量を少なくとも6ヶ月の間隔の後に投与することができる。
【0167】
いくつかの実施態様において、本開示のエンテロウイルスC(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)は、混合ワクチンにおける使用のために製造され得る。例えば、Pediarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、不活化ポリオ、DTaP、及びB型肝炎の混合ワクチンであり;Kinrix(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、不活化ポリオとDTaPの混合ワクチンであり;Pentacel(登録商標)(Sanofi Pasteur)は、不活化ポリオ、DTaP、及びインフルエンザの混合ワクチンであり;Quadracel(登録商標)(Sanofi Pasteur)は、不活化ポリオとDTaPの混合ワクチンである。
【0168】
適用方法は広く変化し得る。ワクチン又は免疫原性組成物の任意の簡便な投与方法が適用可能である。これらには、生理学的に受容可能な固形の基剤、又は生理学的に受容可能な分散剤での経口適用、注射などによる非経口適用が挙げられる。ワクチン又は免疫原性組成物の用量は、投与経路に依存し、ワクチン接種される人物の年齢、及び抗原の剤型に従い変化する。
【0169】
粘膜付着を改善させる送達剤を用いて、特に鼻内、経口、肺をベースとした送達剤型に対する送達、及び免疫原性を改善してもよい。そのような化合物の1つであるキトサンは、キチンのN脱アセチル型であり、多くの医薬製剤に使用されている。キトサンは、粘膜絨毛クリアランスを遅延させるその能力から、鼻内ワクチン送達の魅力的な粘膜付着剤であり、粘膜の抗原取込と処理のための時間をより長期化させる。さらに、キトサンは、抗原のNALTへの経上皮輸送を増強させ得るタイトジャンクションを一過性に開かせることができる。最近のヒト臨床試験において、キトサンのみを用いて、追加のアジュバントは何も用いていない鼻内投与された三価の不活化インフルエンザワクチンにより、抗体陽転が生じ、HI価は、鼻内接種後に得られたHI価よりもわずかに低かった。
【0170】
本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物は、薬学的に受容可能である。それらは抗原とアジュバントに追加して構成要素を含有してもよく、例えばそれらは一般的に1つ以上の医薬担体(複数含む)及び/又は賦形剤(複数含む)を含有する。かかる構成要素に関する詳細な検討は、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy. 20th edition, ISBN: 0683306472で入手可能である。
【0171】
張性を制御するために、たとえばナトリウム塩などの生理学的な塩を含有することが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、塩化ナトリウムは1〜20mg/mlで存在してもよい。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム無水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0172】
ワクチン及び/又は免疫原性組成物は、1つ以上の緩衝液を含有してもよい。典型的な緩衝液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液(特に、水酸化アルミニウムアジュバントと共に)、又はクエン酸緩衝液が挙げられる。緩衝液は、典型的には、5〜20mMの範囲で含有される。
【0173】
ワクチン又は免疫原性組成物のpHは、多くの場合、5.0〜8.1、より典型的には6.0〜8.0、例えば、6.5〜7.5、又は7.0〜7.8である。本開示の製造方法は、従って、包装の前にバルクワクチンのpHを調整する工程を含む。
【0174】
ワクチン又は免疫原性組成物は、好ましくは滅菌されている。好ましくは非発熱性であり、例えば、1回投与量当たり1EU(エンドトキシン単位、標準的測定)未満、及び好ましくは1回投与量当たり0.1EU未満を含有する。好ましくはグルテンフリーである。
【0175】
特定の実施態様において、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物は、有効な濃度で洗剤を含有してもよい。いくつかの実施態様では、洗剤の有効量は、約0.00005% v/v〜約5% v/v、又は約0.0001% v/v〜約1% v/vを含み得るが、これに限定されない。特定の実施態様において、洗剤の有効量は、約0.001% v/v、約0.002% v/v、約0.003% v/v、約0.004% v/v、約0.005% v/v、約0.006% v/v、約0.007% v/v、約0.008% v/v、約0.009% v/v、又は約0.01% v/vである。学説には拘らないが、洗剤は、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の溶解を補助し、ワクチン及び/又は免疫原性組成物の凝集予防を補助する。
【0176】
特にスプリットワクチン又は表面抗原ワクチンに対して適切な洗剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(Tweenとして知られている)、オクトキシノール(例えば、オクトキシノール−9(TRITON(商標)X100)又はtオクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、及びデオキシコール酸ナトリウムなどが挙げられる。潜在は、微量のみで存在してもよい。微量の他の残りの構成要素は、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。いくつかの実施態様では、洗剤はポリソルベートを含有する。いくつかの実施態様では、洗剤の有効濃度は、約0.00005% v/v〜約5% v/vの範囲を含む。
【0177】
ワクチン及び/又は免疫原性組成物は、好ましくは2℃〜8℃で保存される。それらは凍結させてはならない。それらは理想的には直射日光を避けなければならない。抗原及び乳液は、典型的には混合されているが、はじめはその場で混合するための別々の構成要素のキットの形態であってもよい。ワクチン及び/又は免疫原性組成物は、対象に投与されるとき、多くの場合は水性形態である。
アジュバント
【0178】
本開示の組成物、免疫原性組成物、及び/又はワクチンは、1つ以上のアジュバントと組み合わせて使用されてもよい。本開示のかかるアジュバント化ワクチン及び/又は免疫原性組成物は、その必要のある対象におけるポリオの治療又は予防に有用であってもよく、又はその必要のある対象においてポリオに対する防御的免疫反応などの免疫反応の誘導に有用であってもよい。アルミニウムアジュバント、リン酸カルシウム、油性エマルジョン、キトサン、ビタミンD、オリゴヌクレオチド、ステアリル又はオクタデシルチロシン、及びリポソームを含む数種類のアジュバントが使用されており、それらの有効性はIPV及びOPVにおいて特徴付けられている(例えば、Hawken J. and Troy S. B. (2012) Vaccine30:6971-9を参照のこと)。
【0179】
ワクチンに対しアジュバント効果を得るためのさまざまな方法が公知であり、本明細書に開示されるポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物と併せて使用されてもよい。一般的な原理と方法は、"The Theory and Practical Application of Adjuvants", 1995, Duncan E. S. Stewart-Tull (ed.), John Wiley & Sons Ltd, ISBN 0-471-95170-6, and also in "Vaccines: New Generation Immunological Adjuvants", 1995, Gregoriadis G et al. (eds.), Plenum Press, New York, ISBN 0-306-45283-9に詳述されている。
【0180】
いくつかの実施態様では、ポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物は、抗原とアジュバントを含有する。抗原は、少なくとも1つのアジュバントと、約10:1〜約10
10:1の抗原:アジュバントの重量を基にした比率で混合されていてもよく、例えば、約10:1〜約100:1、約100:1〜約10
3:1、約10
3:1〜約10
4:1、約10
4:1〜約10
5:1、約10
5:1〜約10
6:1、約10
6:1〜約10
7:1、約10
7:1〜約10
8:1、約10
8:1〜約10
9:1、又は約10
9:1〜約10
10:1の抗原:アジュバントの比率で混合されていてもよい。当業者であれば、アジュバントに関する情報と、最適な比率を決定するための日常的な実験を介して適切な比率を容易に決定することができる。
【0181】
例示的なアジュバントとしては、限定されないが、アルミニウム塩、トールライク受容体(TLR)作動薬、モノホスホリルリピドA(MLA)、MLA誘導体、合成リピドA、リピドAの模倣体又はアナログ、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、エマルション、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマ粒子、微粒子、リポソーム、完全フロイントアジュバント(CFA)、及び不完全フロイントアジュバント(IFA)が挙げられる。いくつかの実施態様では、アジュバントはMLA又はその誘導体である。
【0182】
いくつかの実施態様では、アジュバントはアルミニウム塩である。いくつかの実施態様では、アジュバントは、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、及びAlhydrogel85のうち少なくとも1つを含有する。いくつかの実施態様では、本開示のアルミニウム塩アジュバントは、本開示のエンテロウイルスCウイルス(例えば、ポリオウイルスS1、S2、又はS3)ワクチン及び/又は免疫原性組成物の抗原の吸着を増強することが判明している。従って、いくつかの実施態様では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の抗原がアルミニウム塩アジュバントに吸着している。
【0183】
モノホスホリルリピドA(MLA)はサルモネラ由来のリピドAの非毒性誘導体であり、ワクチンアジュバントとして開発された強力なTLR−4作動薬である(Evans et al. 2003)。前臨床マウス実験において、鼻内MLAは、分泌反応並びに全身反応、液性反応を増強することが示されている(Baldridge et al. 2000;Yang et al. 2002)。また、120,000人を超える患者の臨床試験においても、ワクチンアジュバントとしての安全性及び有効性が証明されている(Baldrick et al., 2002;2004)。MLAは、TLR−4受容体を介して自然免疫の誘導を刺激し、それにより、グラム陰性菌及びグラム陽性菌の両方、ウイルス並びに寄生虫をはじめとする広範な感染性病原体に対する非特異的免疫反応を惹起することができる(Baldrick et al. 2004;Persing et al. 2002)。鼻内製剤中のMLAの含有は、自然免疫の急速な誘導をもたらし、ウイルスチャレンジから非特異的免疫反応を惹起させ、一方で、ワクチンの抗原性構成要素により生じする特異的反応を増強させるはずである。
【0184】
従って、1つの実施態様において、本開示は、獲得免疫及び自然免疫の増強剤としてのモノホスホリルリピドA(MLA)、3De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)、又はそれらの誘導体を含有する組成物を提供する。化学的に、3D−MLAは、3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4、5又は6個のアシル化鎖の混合物である。3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許0 689 454 B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。他の実施態様では、本開示は、例えばBioMira’s PET Lipid Aなどの合成リピドA、リピドA模倣体もしくはアナログ、又はTLR−4作動薬のように機能するよう設計された合成誘導体を含有する組成物を提供する。
【0185】
さらなる例示的なアジュバントとしては、ポリペプチド構成要素との共発現により、又はキメラポリペプチドを産生するポリペプチド構成要素との融合により、本明細書に開示される抗原に容易に付加され得るポリペプチドアジュバントが挙げられるが、これに限定されない。細菌フラジェリンは、鞭毛の主要なタンパク構成物質であり、トールライク受容体TLR5により自然免疫系に認識されることを理由に、アジュバントタンパク質として注目が高まっているアジュバントである(65)。TLR5を介したフラジェリンのシグナル伝達は、DCの成熟と移動を誘導し、並びにマクロファージ、好中球及び腸上皮細胞を活性化し、その結果、炎症促進性メディエーターが産生されることによって、自然免疫と獲得免疫の両方に効果を有している(66−72)。
【0186】
TLR5は、このタンパク質に固有であり、鞭毛の機能に必要なフラジェリン単量体内の保存構造を認識しており、その変異体は免疫的圧力に対する反応ができない(73)。受容体は、100fMの濃度に感受性であるが、そのままのフィラメントは認識しない。結合及び刺激には鞭毛の単量体への分解が必要である。
【0187】
非経口又は鼻内の何れかで投与された異種抗原に対する防御的反応の誘導に関し、アジュバントとしてフラジェリンは強力な活性を有しており、DNAワクチンに対するアジュバント効果も報告されている。フラジェリンが用いられた場合、例えばインフルエンザなどの呼吸器系のウイルスに適したTh2偏向が観察されているが、マウス又はサルにおいてIgE誘導の証拠は観察されていない。さらに、サルにおいて、鼻内又は全身への投与後の局所炎症反応又は全身炎症反応は報告されていない。MyD88依存性の様式のTLR5を介したフラジェリンのシグナル、及びTLRを介した他のすべてのMyD88依存性のシグナルは、Th1偏向を生じさせることが示されていることから、フラジェリン使用後に惹起されるTh2を特徴とする反応はいささか驚きである。重要なことは、従前から存在したフラジェリンに対する抗体は、アジュバント効果に関しては適切な効果を有しておらず、このことから、本発明は多様な使用ができるアジュバントとして魅力的である。
【0188】
サイトカイン、コロニー刺激因子(例えば、GM−CSF、CSFなど)、腫瘍壊死因子、インターロイキン2、7、12、インターフェロン及び他の成長因子のようなものをアジュバントとして用いてもよく、それらはポリペプチド構成要素と混合することにより、又は融合させることにより容易にポリオワクチン又は免疫原性組成物中に含ませることができる。
【0189】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるポリオワクチン及び免疫原性組成物は、例えば5’−TCG−3’配列を含有する核酸TLR9リガンド、イミダゾキノリンTLR7リガンド、置換グアニンTLR7/8リガンド、例えばロキソリビン、7−デアザデオキシグアノシン、7−チア−8−オキソデオキシグアノシン、イミキモド(R−837)、及びレシキモド(R−848)などの他のTLR7リガンド、などのトールライク受容体を介して作用する他のアジュバントを含有してもよい。
【0190】
あるアジュバントは、例えば樹状細胞などのAPCによるワクチン分子の取り込みを促進し、これらを活性化する。非限定的な例は、免疫標的化アジュバント、例えば毒素、サイトカイン及びマイコバクテリア誘導体などの免疫調節アジュバント、油性製剤、ポリマー、ミセル形成アジュバント、サポニン、免疫刺激複合体マトリクス(ISCOMマトリクス:immunostimulating complex matrix)、粒子、DDA、アルミニウムアジュバント、DNAアジュバント、MLA、及びカプセル化アジュバントからなる群から選択される。
【0191】
アジュバントのさらなる例としては、例えば水酸化物又はリン酸塩などのアルミニウム塩(ミョウバン)などの剤が挙げられ、それらは通常、緩衝生理食塩水中0.05〜0.1%溶液として使用され(例えば、Nicklas (1992) Res. Immunol. 143:489-493を参照のこと)、0.25%溶液として使用される糖類の合成ポリマー(例えば、カーボポール(登録商標))と混合され、70℃〜101℃の範囲の温度でそれぞれ30秒〜2分の間の加熱処置によりワクチン中のタンパク質を凝集させ、また、架橋剤による凝集も可能である。ペプシン処置抗体(Fab断片)を用いた再活性化によるアルブミンへの凝集、例えばクリプトスポリジウム・パルバムなどの細菌細胞、又はエンドトキシン、又はグラム陰性細菌のリポ多糖成分との混合、たとえばマンニド一モノオレイン酸塩(Aracel A)などの生理学的に受容可能な油性ビヒクル中のエマルション、又はブロック代替品(block substitute)として用いられるパーフルオロカーボン(Fluosol−DA)の20%溶液とのエマルションを用いてもよい。例えば、スクアレン及びIFAなどの油との混合を用いてもよい。
【0192】
DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)は興味深いアジュバント候補であるが、フロイントの完全及び不完全アジュバント、並びに例えばQuilA及びQS21などのキラヤ属サポニンも興味深い。さらなる可能性としては、例えばモノホスホリルリピドA(MLA)、ムラミルジペプチド(MDP)、及びスレオニルムラミルジペプチド(tMDP)などのリポ多糖体のポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPP)誘導体が挙げられる。Th1型反応を優先的に生じさせるために、例えば3−de−O−アシル化モノホスホリルリピドAなどのモノホスホリルリピドAとアルミニウム塩との組み合わせをはじめとするリポ多糖をベースとしたアジュバントを使用してもよい。
【0193】
リポソーム製剤もまた、アジュバント効果をもたらすことが知られており、そのため、リポソームアジュバントを手足口病ワクチン及び/又は免疫原性組成物と併せて用いてもよい。
【0194】
免疫刺激複合体マトリクス型(ISCOM(登録商標)マトリクス)アジュバントを、手足口病抗原及び免疫原性組成物と共に用いてもよく、特に、このタイプのアジュバントはAPCによるMHCクラスII発現を上方制御させることができることが示されている。ISCOMマトリクスは、シャボンノキ(Quillaja saponaria)由来の(任意選択で分画化された)サポニン(トリペルテノイド)、コレステロール、及びリン脂質からなる。例えばポリオワクチン又は免疫原性組成物抗原などの免疫原性タンパク質と混合し、得られた微粒子製剤は、サポニンが60〜70% w/wを構成し、コレステロール及びリン脂質が10〜15% w/wを構成し、及びタンパク質が10〜15% w/wを構成し得るISCOM粒子として知られる製剤である。組成及び免疫刺激複合体の使用に関する詳細は、例えばアジュバントを扱っている上述のテキスト中に見いだされ、また、Morein B et al., 1995, Clin. Immunother. 3: 461-475、並びにBarr I G and Mitchell G F, 1996, Immunol. and Cell Biol. 74: 8-25は、完全免疫刺激複合体の調製に関する有用な解説を提供している。
【0195】
iscomの形態であるか否かを問わず、サポニンは本明細書に開示される手足口病ワクチン抗原及び免疫原性組成物とのアジュバントの組み合わせに用いられてもよく、米国特許第5,057,540号及び”Saponins as vaccine adjuvants”, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55、及びEP 0 362 27 B1に記載されるQuilAと称されるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から誘導されるサポニン及びその画分を含み得る。例示的なQuilA画分は、QS21、QS7、及びQS17である。
【0196】
β−エスシン(escin)は、手足口病ワクチン及び/又は免疫原性組成物のアジュバント組成物における使用のための他の溶血性サポニンである。エスシンは、セイヨウトチノキ(horse chestnut tree)、Lat:Aesculus hippocastanumの種子中に生じるサポニンの混合物として、メルクインデックス(第12版:エントリー3737)に記述されている。その単離は、クロマトグラフィー及び精製(Fiedler, Arzneimittel-Forsch. 4, 213 (1953))、及びイオン交換樹脂(Erbring et al., 米国特許第3,238,190号)により行うと記載されている。エスシンの画分は精製され、生物的に活性があることが示されている(Yoshikawa M, et al. (Chem Pharm Bull (Tokyo) 1996 August;44(8):1454-1464))。β−エスシンは、エスシン(aescin)とも知られている。
【0197】
手足口病ワクチン及び/又は免疫原性組成物における使用のための他の溶血性サポニンはジギトニンである。ジギトニンはメルクインデックス(第12版:エントリー3204)にサポニンとして記載されており、宿根草(Digitalis purpurea)の種子から誘導され、Gisvold et al., J.Am.Pharm.Assoc., 1934, 23, 664、及びRuhenstroth-Bauer, Physiol.Chem., 1955, 301, 621に記載される手順に従い精製される。その使用は、コレステロール定量のための臨床試薬であるとして記載されている。
【0198】
アジュバント効果が得られる他の興味深い可能性は、Gosselin et al., 1992に記載される技術を用いることである。簡潔に述べると、例えば本開示のポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物中の抗原などの関連抗原の提示は、単球/マクロファージのFC受容体に対する抗体にこの抗原を結合させることにより増強させることができる。特に、抗原と抗FCRIの間の結合は、ワクチンを目的とした免疫原性を増強させることが示されている。抗体は、生成された後に、又はポリオワクチン及び免疫原性組成物の抗原のポリペプチド成分の何れか1つへの融合物として発現させることを含む生成物の一部として、手足口病ワクチン又は免疫原性組成物に結合されてもよい。
【0199】
他の可能性は、標的化物質及び免疫調節物質(すなわちサイトカイン)の使用を含む。さらに、例えばポリI:Cなどのサイトカインの合成誘導物質を用いてもよい。
【0200】
適切なマイコバクテリア派生物は、ムラミルジペプチド、完全フロイントアジュバント、RIBI(Ribi ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,Mont.)、並びに例えばTDM及びTDEなどのトレハロースのジエステルからなる群から選択されてもよい。
【0201】
適切な免疫標的化アジュバントの例としては、CD40リガンド及びCD40抗体、又は特にそれらの結合断片(上述を参照)、マンノース、Fab断片、並びにCTLA−4が挙げられる。
【0202】
適切なポリマーアジュバントの例としては、例えばデキストラン、PEG、デンプン、マンナン、及びマンノースなどの炭水化物、プラスチックポリマー、及び例えばラテックスビーズなどのラテックスが挙げられる。
【0203】
免疫反応を調節する他のさらなる興味深い方法は、免疫原を(任意選択でアジュバント並びに薬学的に受容可能な担体及びビヒクルとともに)、「バーチャルリンパ節(VLN:virtual lymph node)」(ImmunoTherapy,Inc.,360LexingtonAvenue,NewYork,N.Y.10017-6501により開発され、所有される医療デバイス)に含ませることである。VLN(薄い管状のデバイス)はリンパ節の構造及び機能を模倣している。皮膚の下にVLNを挿入することで無菌の炎症部位が創出され、サイトカイン及びケモカインが急増する。T細胞及びB細胞並びにAPCがこの危険なシグナルに急速に反応し、炎症部位に誘導され、VLNの多孔質マトリクスの内部に蓄積される。VLNを使用した場合、抗原に対する免疫反応を開始させるために必要とされる抗原の必要投与量は少ないことが示されており、及びVLNを用いたワクチン化により与えられる免疫防御は、アジュバントとしてRibiを使用した従来的なワクチン化を凌いだことが示されている。この技術は、Gelber C et al., 1998, "Elicitation of Robust Cellular and Humoral Immune Responses to Small Amounts of Immunogens Using a Novel Medical Device Designated the Virtual Lymph Node", in: "From the Laboratory to the Clinic, Book of Abstracts, Oct. 12-15, 1998, Seascape Resort, Aptos, Calif."に簡潔に記載されている。
【0204】
ポリオワクチン及び免疫原性組成物の抗原と併せて、オリゴヌクレオチドをアジュバントとして用いてもよく、及びオリゴヌクレオチドは、少なくとも3つ以上、又はさらには少なくとも6つ以上のヌクレオチドにより区別される2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含有してもよい。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)は、Th1反応を優先的に誘導する。かかるオリゴヌクレオチドは公知であり、例えば、WO96/02555、WO99/33488、並びに米国特許第6,008,200号及び第5,856,462号に記載されている。
【0205】
かかるオリゴヌクレオチドアジュバントは、デオキシオリゴヌクレオチドであってもよい。特定の実施態様において、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド主鎖は、ホスホロジチオアート、又はホスホロチオアートの結合であるが、ホスホジエステル、及び例えば混合主鎖結合を有するオリゴヌクレオチドを含むPNAなどの他のヌクレオチド主鎖を用いてもよい。ホスホロチオアートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオアートの作製方法は、米国特許第5,666,153号、米国特許第5,278,302号、及びW095/26204に記載されている。
【0206】
例示的なオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有するものである。この配列は、ホスホロチオアート改変ヌクレオチド主鎖を含有してもよい。
(配列番号1)オリゴ1:TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)、
(配列番号2)オリゴ2:TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)、
(配列番号3)オリゴ3:ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG、
(配列番号4)オリゴ4:TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)、及び
(配列番号5)オリゴ5:TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
【0207】
別のCpGオリゴヌクレオチドとしては、配列に些末な欠失又は付加を伴う上述の配列が挙げられる。アジュバントとしてのCpGオリゴヌクレオチドは、当分野に公知の任意の方法により合成されてもよい(例えば、EP468520)。例えば、かかるオリゴヌクレオチドは、自動合成装置を利用して合成されてもよい。かかるオリゴヌクレオチドアジュバントは、10〜50塩基の長さであってもよい。他のアジュバント系は、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体の組み合わせを含み、特にCpGとQS21の組み合わせがWO00/09159に公開されている。
【0208】
多くの単層又は多層のエマルション系が記載されている。当業者であれば、このエマルションが抗原構造を破壊しないように、かかるエマルション系をポリオワクチン及び免疫原性組成物の抗原との使用に容易に適合させることができる。水中油型エマルションアジュバントはそもそもアジュバント組成物として有用であることが提唱されており(EPO 399 843B)、水中油型エマルションと他の活性剤との組み合わせもワクチンのアジュバントとして記載されている(WO95/17210、WO98/56414、WO99/12565、WO99/11241)。例えば油中水型エマルション(米国特許第5,422,109号、EP 0 480 982 B2)及び水中油中水型エマルション(米国特許第5,424,067号、EP 0 480 981 B)などの他の油性エマルションアジュバントが記載されている。
【0209】
本明細書に記載される手足口病ワクチン及び/又は免疫原性組成との使用のための油性エマルションアジュバントは、天然であっても又は合成であってもよく、及び鉱物又は有機であってもよい。鉱物油及び有機油の例は、当分野の当業者には容易に明白であろう。
【0210】
任意の水中油型組成物をヒト投与に適合させるために、エマルション系の油相に代謝可能な油を含有させてもよい。代謝可能な油という用語の意味は、当分野に公知である。代謝可能とは、「代謝により転換されることができる」と定義することができる(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company, 25th edition (1974))。油は任意の植物油、魚油、動物油、又は合成油であってもよく、それらはレシピエントに対して非毒性であり、代謝により転換されることができるものである。堅果(例えば、ピーナッツ油)、種子、及び穀物が植物油の一般的な源である。合成油を用いてもよく、合成油は例えばNEOBEE(登録商標)などの市販の油を含有してもよい。スクアレン(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン)は、サメ肝臓油中に大量に存在するが、オリーブオイル、コムギ胚種油、ぬか油、及び酵母中には少量で存在する不飽和油であり、手足口病ワクチン及び免疫原性組成物の抗原と共に用いられてもよい。スクアレンはコレステロールの生合成中の中間体であるという事実により代謝可能な油である(メルクインデックス、第10版、エントリー番号8619)。
【0211】
例示的な油性エマルションは、水中油型エマルションであり、特に水中スクアレンエマルションである。
【0212】
さらに、ポリオワクチン及び免疫原性組成物の抗原との使用のための油性エマルションアジュバントは、例えば油性α−トコフェロール(ビタミンE、EP 0 382 271 B1)などの抗酸化剤を含有してもよい。
【0213】
WO95/17210及びWO99/11241は、スクアレン、α−トコフェロール、及びTWEEN(登録商標)80を基にし、任意選択で免疫刺激物質QS21及び/又は3D−MLAを用いて製剤化したエマルションアジュバントを公開している。WO99/12565は、油相にステロールを添付した、これらスクアレンエマルションに対する改善を記載している。さらに例えばトリカプリリン(C27H50O6)などのトリグリセリドを油相に添加し、エマルションを安定化させてもよい(WO98/56414)。
【0214】
この安定な水中油型エマルション内に存在する油滴のサイズは、1ミクロン未満であってもよく、光子相関法(photon correlation spectroscopy)による測定で、実質的に30〜600nmの範囲であってもよく、実質的に約30〜500nmの直径であってもよく、又は実質的に150〜500nmの直径であってもよく、及び特に約150nmの直径であってもよい。この点で、数により80%の油滴は、これら範囲内にあってもよく、数により90%超又は95%超の油滴は、既定のサイズ範囲内である。油性エマルション中に存在する成分の量は、例えばスクアレンなど、慣例的に2〜10%の油の範囲内であり、存在する場合にはアルファトコフェロールは2〜10%の範囲であり、及び例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの界面活性剤は、0.3〜3%の範囲である。油:アルファトコフェロールの比率は、等しいか、1未満であり、これにより安定なエマルションが提供される。SPAN85(商標)もまた、約1%のレベルで存在してもよい。一部の例では、本明細書に開示されるポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物は安定剤をさらに含有することが有益である場合がある。
【0215】
水中油型エマルションの作製方法は当分野の当業者に公知である。一般的に、当該方法は、油相と、例えばPBS/TWEEN80(登録商標)溶液などの界面活性剤を混合する工程、次いで、ホモジナイザーを用いてホモジナイズする工程を含み、少量の液体をホモジナイズするには、この混合物を注射針に2回通すことを含む方法が適していることは当業者には明らかである。同様に、当業者であれば、マイクロフルダイザーにおける乳化プロセス(M110S微小流体装置、最大50パス、6バールの最大入力圧力で2分間(出力圧力は約850バール))を適合させ、より小量、又はより多量のエマルションを製造することができる。この適合は、必要とされる直径の油滴を有する調製物を得るまで、得られたエマルションを測定することを含む、日常的な実験により行うことができる。
【0216】
あるいは、ポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物は、キトサン(上述)から構成されるワクチンビヒクルと混合されてもよく、又は他のポリカチオン性ポリマー、ポリラクチド、及びポリラクチド−コグリコリド粒子、ポリ−N−アセチルグルコサミンを基にしたポリマーマトリクス、多糖又は化学的に改変された多糖から構成される粒子、リポソーム及び脂質を基にした粒子、グリセロールモノエステルから構成される粒子などと混合されてもよい。例えばリポソーム又はISCOMなどの粒子構造を形成させるために、コレステロールの存在下でサポニンもまた製剤化されてもよい。さらに、サポニンは、非粒子溶液もしくは懸濁液中、又は寡層薄膜(paucilamelar)リポソームもしくはISCOMなどの粒状構造中の何れかにおいて、例えばポリオキシエチレンエーテル又はエステルと共に製剤化されてもよい。
【0217】
本明細書に記載されるポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物における使用のためのさらなる実例となるアジュバントとしては、SAF(Chiron、カフォルニア州、米国)、MF−59(Chiron、例えば、Granoff et al. (1997) Infect Immun. 65 (5):1710-1715を参照のこと。)、SBASシリーズのアジュバント(例えばSB−AS2(MLA及びQS21を含有する水中油型エマルション)、SBAS−4(ミョウバン及びMLAを含有するアジュバント系)、SmithKline Beecham、Rixensart、ベルギーから入手可能)、Detox(Enhanzyn(登録商標))(GlaxoSmithKline)、RC−512、RC−522、RC−527、RC−529、RC−544、及びRC−560(GlaxoSmithKline)、及び例えば係属中の米国特許出願08/853,826及び09/074,720に記載されているものなどの他のアミノアルキルグルコサミド4−リン酸塩(AGP)が挙げられる。
【0218】
他のアジュバントの例としては、Hunter’s TiterMax(登録商標)アジュバント(CytRx Corp.、Norcross、ジョージア州)、Gerbuアジュバント(Gerbu Biotechnik GmbH、Gaiberg、ドイツ)、ニトロセルロース(Nilsson and Larsson (1992) Res. Immunol. 143:553-557)、ミョウバン(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)エマルションを基にした、鉱物油、非鉱物油を含む製剤、油中水型エマルション又は水中油型エマルション、例えば、Seppic ISAシリーズのMontamideアジュバント(例えば、ISA−51、ISA−57、ISA−720、ISA−151など。Seppic、パリ、フランス)、及びPROVAX(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals)、OM−174(リピドAに関連したグルコサミン二糖)、リーシュマニア伸長因子、例えばCRL1005などのミセルを形成する非イオン性ブロックコポリマー、及びSyntexアジュバント製剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、O'Hagan et al. (2001) Biomol Eng. 18(3):69-85;及び "Vaccine Adjuvants: Preparation Methods and Research Protocols" D. O'Hagan, ed. (2000) Humana Pressを参照のこと。
【0219】
他の例示的なアジュバントとしては、以下の一般式のアジュバント分子が挙げられる:
HO(CH
2CH
2O)
n−A−R, (I)
式中、nは1〜50であり、Aは結合又は−−C(O)−−、であり、Rは、C
1−50アルキル又はフェニルC
1−50アルキルである。
【0220】
1つの実施態様は、一般式(I)のポリオキシエチレンエーテルを含有するワクチン製剤からなり、式中、nは1〜50であり、4〜24、又は9であり、R構成要素は、C
1−50、C
4−C
20アルキル、又はC
12アルキルであり、Aは結合である。ポリオキシエチレンエーテルの濃度は、0.1〜20%の範囲、0.1〜10%の範囲、又は0.1〜1%の範囲でなければならない。例示的なポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、及びポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテルは、メルクインデックス(第12版、エントリー7717)に記載されている。ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテルは、Merckインデックス(第12版:エントリー7717)に記載されている。これらアジュバント分子は、WO99/52549に記載されている。
【0221】
上述の一般式(I)に従うポリオキシエチレンエーテルは、もし望ましい場合には、他のアジュバントと混合されてもよい。例えば、アジュバントの組み合わせは、上述のCpGを含んでもよい。
【0222】
本明細書に記載されるポリオワクチン及び/又は免疫原性組成物との使用に適切な薬学的に受容可能な賦形剤のさらなる例としては、水、リン酸緩衝生理食塩水、等張緩衝溶液が挙げられる。
【0223】
いくつかの実施態様において、本開示のワクチン製剤は、0.5mg/用量のミョウバンを含む、S1、S2、及びS3(PV1、PV2、及びPV3)に対するSabin不活性化ポリオワクチン(sIPV)を含む。他の実施態様では、本開示のワクチン製剤は、0.067mg/mLのミョウバンを含む、I型、II型、及びIII型のsIPVに対するSabin不活性化ポリオワクチン(sIPV)を含む。他の実施態様では、本開示のワクチン製剤は、0.133mg/mLのミョウバンを含む、I型、II型及びIII型のsIPVに対するSabin不活化ポリオワクチン(sIPV)と、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、及び百日咳ワクチンを含む。
【0224】
本開示のさらなる態様は、その必要のある対象におけるポリオを治療又は予防するための、及び/又はその必要のある対象においてポリオに対する免疫反応を誘導するための、ポリオを引き起こす少なくとも1つのウイルスからの1つ以上の抗原を含有する本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の使用方法に関する。いくつかの実施態様では、本開示は、ポリオを引き起こす少なくとも1つのウイルスからの1つ以上の抗原を含有する本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の治療有効量を対象に投与することによる、その必要のある対象におけるポリオを治療又は予防する方法に関する。いくつかの実施態様では、本開示は、ポリオを引き起こす少なくとも1つのウイルスからの1つ以上の抗原を含有する本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の治療有効量を対象に投与することによる、その必要のある対象においてポリオに対する免疫反応を誘導する方法に関する。本開示の任意の方法は、不活化ポリオウイルス又は生きている弱毒ポリオウイルスを使用し得る
【0225】
いくつかの実施態様では、防御的免疫反応は、PV1、PV2、及びPV3のうちの1つ以上に対する免疫反応を含む。
【0226】
いくつかの実施態様では、投与工程は、1回以上の投与を含む。投与は、単回投与スケジュールによるものであってもよく、又は複数回の投与スケジュール(プライム−ブースト)によるものであってもよい。複数回の投与スケジュールにおいて、様々な投与量が同じ経路又は異なる経路により与えられてもよく、例えば、プライムが非経口でブーストが粘膜、プライムが粘膜でブーストが非経口などがある。典型的には、それらは同じ経路で投与される。複数回の投与は、典型的には、少なくとも1週(例えば、約2週、約3週、約4週、約6週、約8週、約12週、約16週など)離れて投与される。25〜30日間(例えば、28日間)に分けて2回投与することが特に有用である。上記のように、ポリオワクチン接種のための例示的な投与レジメンは当技術分野で公知である。
【0227】
本開示方法は、本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の治療有効量又は免疫刺激量を投与することを含む。治療有効量又は免疫刺激量は、投与される非感染対象、感染対象、又は非曝露対象において、防御的免疫反応を誘導する本開示のワクチン及び/又は免疫原性組成物の量であってもよい。かかる反応は、多くの場合、対象において、ワクチンに対する分泌性、細胞性、及び/又は抗体介在性の免疫反応の発現をもたらす。通常、かかる反応は、以下の効果のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。例えばイムノグロブリンA、D、E、G又はMなどの任意の免疫学的分類の抗体の産生;Bリンパ球及びTリンパ球の増殖;免疫細胞への活性化、増殖及び分化シグナルの提供;ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞の増殖。
【0228】
好ましくは、治療有効量又は免疫刺激量は、疾患の症状の治療又は予防をもたらすのに十分な量である。正確な必要量は、他の因子の中でも治療される対象、治療される対象の年齢及び一般状態、対象の免疫システムが抗体を合成する能力、望ましい防御の程度、治療される状態の重篤度、選択された特定の手足口病抗原ポリペプチド、及びその投与様式によって変化する。適切な治療有効量又は免疫刺激量は、当分野の当業者により容易に決定することができる。治療有効量又は免疫刺激量は、日常的な試験を介して決定することができる、比較的広い範囲におさまる。
【0229】
列挙された実施態様
以下の列挙された実施態様は本開示のいくつかの態様の代表例である。
1.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)細胞を第1の細胞培養培地中で培養する工程;
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程;及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程
を含み、
ここで、細胞にエンテロウイルスCウイルスを接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、界面活性剤を第2の細胞培養培地に添加する、方法。
2.界面活性剤の非存在下で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率と比較して、工程(c)で回収されたエンテロウイルスCウイルスの収率が増加する、実施態様1に記載の方法。
3.界面活性剤がポリソルベートである、実施態様1又は実施態様2に記載の方法。
4.界面活性剤がポリエチレングリコール系界面活性剤である、実施態様1又は実施態様2に記載の方法。
5.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様1〜4の何れか1項に記載の方法。
6.細胞が工程(a)において液体培養物中で培養される、実施態様1〜5の何れか1項に記載の方法。
7.細胞が接着細胞であり、細胞が工程(a)においてマイクロキャリア上で培養される、実施態様1〜5の何れか1項に記載の方法。
8.細胞が接着細胞であり、細胞が工程(a)においてマトリクスを含む固定層中で培養される、実施態様1〜5の何れか1項に記載の方法。
9.細胞が工程(a)においてバイオリアクター中で培養される、実施態様1〜5の何れか1項に記載の方法。
10.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様8に記載の方法。
11.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様8又は実施態様10に記載の方法。
12.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様8又は実施態様10に記載の方法。
13.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様12に記載の方法。
14.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様8又は実施態様10〜13の何れか1項に記載の方法。
15.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様8及び実施態様10〜14の何れか1項に記載の方法。
16.細胞が、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様8及び実施態様10〜15の何れか1項に記載の方法。
17.さらなるグルコースが第2の細胞培養培地に添加されない、実施態様8及び実施態様10〜16の何れか1項に記載の方法。
18.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様8及び実施態様10〜17の何れか1項に記載の方法。
19.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程(ここで細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される);及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程
を含む、方法。
20.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様19に記載の方法。
21.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様19又は実施態様20に記載の方法。
23.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様19〜21の何れか1項に記載の方法。
23.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様19〜21の何れか1項に記載の方法。
24.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様23に記載の方法。
25.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様19〜24の何れか1項に記載の方法。
26.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様19〜25の何れか1項に記載の方法。
27.細胞が、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様19〜26の何れか1項に記載の方法。
28.さらなるグルコースが第2の細胞培養培地に添加されない、実施態様19〜27の何れか1項に記載の方法。
29.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様19〜28の何れか1項に記載の方法。
30.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程(ここで、約100,000細胞/cm
2〜約320,000細胞/cm
2が接種される);及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程を含む
方法。
31.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様30に記載の方法。
32.約120,000細胞/cm
2〜約250,000細胞/cm
2が接種される、実施態様30に記載の方法。
33.約200,000細胞/cm
2が接種される、実施態様30に記載の方法。
34.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様30に記載の方法。
35.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様30〜34の何れか1項に記載の方法。
36.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様30〜35の何れか1項に記載の方法。
37.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様30〜36の何れか1項に記載の方法。
38.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様30〜37の何れか1項に記載の方法。
39.細胞が、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様30〜38の何れか1項に記載の方法。
40.さらなるグルコースが第2の細胞培養培地に添加されない、実施態様30〜39の何れか1項に記載の方法。
41.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様30〜40の何れか1項に記載の方法。
42.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程;及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程
を含み、
ここで細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、方法。
43.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様42に記載の方法。
44.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様42又は実施態様43に記載の方法。
45.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様42〜44の何れか1項に記載の方法。
46.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様42〜45の何れか1項に記載の方法。
47.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様42〜45の何れか1項に記載の方法。
48.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様47に記載の方法。
49.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様42〜48の何れか1項に記載の方法。
50.細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様42〜49の何れか1項に記載の方法。
51.さらなるグルコースが第2の細胞培養培地に添加されない、実施態様42〜50の何れか1項に記載の方法。
52.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様42〜51の何れか1項に記載の方法。
53.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程(ここで、細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される);及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程を含む、方法。
54.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様53に記載の方法。
55.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様53又は実施態様54に記載の方法。
56.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様53〜55の何れか1項に記載の方法。
57.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様53〜56の何れか1項に記載の方法。
58.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様53〜56の何れか1項に記載の方法。
59.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様58に記載の方法。
60.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様53〜59の何れか1項に記載の方法。
61.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様53〜60の何れか1項に記載の方法。
62.さらなるグルコースが第2の細胞培養培地に添加されない、実施態様53〜61の何れか1項に記載の方法。
63.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様53〜62の何れか1項に記載の方法。
64.エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程(ここで、さらなるグルコースは第2の細胞培養培地に添加されず、かつ/又はグルコースが第2の培養培地から枯渇している);及び
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程
を含む方法。
65.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様64に記載の方法。
66.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様64又は実施態様65に記載の方法。
67.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様64〜66の何れか1項に記載の方法。
68.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様64〜67の何れか1項に記載の方法。
69.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様64〜67の何れか1項に記載の方法。
70.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様69に記載の方法。
71.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様64〜70の何れか1項に記載の方法。
72.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含む、実施態様64〜71の何れか1項に記載の方法。
73.細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様64〜72の何れか1項に記載の方法。
74.工程(c)の後に、
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
をさらに含む、実施態様64〜73の何れか1項に記載の方法。
75.精製エンテロウイルスCウイルスを製造するための方法であって、
(a)マトリクスを含む固定層中で接着細胞を培養する工程(ここで、細胞は第1の細胞培養培地中で培養される);
(b)エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で、細胞にエンテロウイルスCウイルスを第2の細胞培養培地中で接種する工程;
(c)細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収する工程;
(d)細胞によって産生された回収エンテロウイルスCウイルスをデプスフィルターに通して第1の溶出液を生成する工程(ここで、第1の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(e)第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させて第1の結合画分を生成する工程(ここで、第1の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(f)陽イオン交換膜から第1の結合画分を溶出して第2の溶出液を生成する工程(ここで、第2の溶出液はエンテロウイルスCウイルスを含む);
(g)第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させて第2の結合画分を生成する工程(ここで、第2の結合画分はエンテロウイルスCウイルスを含む);及び
(h)陰イオン交換膜から第2の結合画分を溶出して精製エンテロウイルスCウイルスを生成する工程
を含む、方法。
76.エンテロウイルスCウイルスが、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様75に記載の方法。
77.デプスフィルターが、約0.2μm〜約3μmの間の孔径を有する、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜76の何れか1項に記載の方法。
78.工程(e)の前に、第1の溶出液のpHが約5.7のpH値に調整される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜77の何れか1項に記載の方法。
79.エンテロウイルスCウイルスが、S1及びS2からなる群から選択されるポリオウイルス血清型である、実施態様78に記載の方法。
80.工程(e)の前に、第1の溶出液のpHが約5.0のpH値に調整され、ここでエンテロウイルスCウイルスはポリオウイルスS3である、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜76の何れか1項に記載の方法。
81.リン酸緩衝液を使用して、第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させる、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜80の何れか1項に記載の方法。
82.ポリソルベートを含む緩衝液を使用して、第1の溶出液を陽イオン交換膜に結合させる、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜81の何れか1項に記載の方法。
83.第1の溶出液が、約4.5〜約6.0の範囲のpHで陽イオン交換膜に結合している、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜82の何れか1項に記載の方法。
84.第1の溶出液が、約7mS/cm〜約10mS/cmの間で陽イオン交換膜に結合している、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜83の何れか1項に記載の方法。
85.第1の結合画分が、pHを約8.0に調整することによって溶出される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜84の何れか1項に記載の方法。
86.第1の結合画分が、約0.20M〜約0.30Mの塩化ナトリウムを添加することによって溶出される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜85の何れか1項に記載の方法。
87.第1の結合画分が約20mS/cm〜約25mS/cmの間で溶出される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜86の何れか1項に記載の方法。
88.工程(g)の前に、第2の溶出液のpHを約8.0〜約8.5のpH値に調整する、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜87の何れか1項に記載の方法。
89.エンテロウイルスCウイルスは、S1、S2、及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型であり、工程(g)の前に、第2の溶出液のpHを約8.0〜約8.5のpH値に調整する、実施態様18に記載の方法。
90.エンテロウイルスCウイルスはS1及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型であり、工程(g)の前に第2の溶出液のpHを約8.5のpH値に調整する、実施態様88に記載の方法。
91.エンテロウイルスCウイルスはS2及びS3からなる群から選択されるポリオウイルス血清型であり、工程(g)の前に第2の溶出液のpHを約8.0のpH値に調整する、実施態様88に記載の方法。
92.リン酸緩衝液又はトリス緩衝液を使用して、第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させる、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜91の何れか1項に記載の方法。
93.ポリソルベートを含む緩衝液を使用して、第2の溶出液を陰イオン交換膜に結合させる、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜92の何れか1項に記載の方法。
94.第2の溶出液が、約7.5〜約8.5の範囲のpHで陰イオン交換膜に結合している、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜93の何れか1項に記載の方法。
95.第2の溶出液が、約3mS/cmで陰イオン交換膜に結合している、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜94の何れか1項に記載の方法。
96.第2の結合画分が、約0.05M〜約0.10Mの塩化ナトリウムを添加することによって溶出される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜95の何れか1項に記載の方法。
97.第2の結合画分が、約5mS/cm〜約10mS/cmの間で溶出される、実施態様18、29、41、52、63、及び74〜96の何れか1項に記載の方法。
98.ポリソルベートが、エンテロウイルスCウイルスを細胞に接種する間、又は工程(c)の約1時間から約4時間前に、第2の細胞培養培地に添加される、実施態様75〜97の何れか1項に記載の方法。
99.細胞は、約0.01〜約0.0009のMOIでエンテロウイルスCウイルスを接種される、実施態様75〜98の何れか1項に記載の方法。
100.約120,000細胞/cm
2〜約300,000細胞/cm
2が接種される、実施態様75〜99の何れか1項に記載の方法。
101.約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が接種される、実施態様75〜99の何れか1項に記載の方法。
102.約5,000細胞/cm
2が接種される、実施態様101に記載の方法。
103.細胞が、工程(a)及び/又は(b)の間に、約0.1mL/cm
2〜約0.3mL/cm
2の体積/表面積比で培養される、実施態様75〜102の何れか1項に記載の方法。
104.工程(b)が、エンテロウイルスCウイルスが細胞に感染し、感染した細胞がエンテロウイルスCウイルスを産生する条件下で接種細胞を培養することをさらに含み、工程(c)が、細胞を溶解して細胞によって産生されたエンテロウイルスCウイルスを回収することを含む、実施態様75〜103の何れか1項に記載の方法。
105.細胞は、約6.8〜約7.4の範囲のpHで接種される、実施態様75〜104の何れか1項に記載の方法。
106.さらなるグルコースは第2の細胞培養培地に添加されず、かつ/又はグルコースが第2の培養培地から枯渇している、実施態様75〜105の何れか1項に記載の方法。
107.細胞が哺乳動物細胞である、実施態様1〜106の何れか1項に記載の方法。
108.細胞がVero細胞である、実施態様107に記載の方法。
109.Vero細胞株が、WHO Vero 10−87、ATCC CCL−81、Vero 76(ATCC 受入番号CRL−1587)、及びVero C1008(ATCC受入番号CRL−1586)からなる群から選択される、実施態様108に記載の方法。
110.工程(a)において、約4,000細胞/cm
2〜約16,000細胞/cm
2が培養される、実施態様1〜109の何れか1項に記載の方法。
111.工程(a)において、約5,000細胞/cm
2が培養される、実施態様109に記載の方法。
112.第1の細胞培養培地と第2の細胞培養培地は異なる、実施態様1〜111の何れか1項に記載の方法。
113.工程(a)と(b)の間に、第1の細胞培養培地を除去し、細胞を第2の培養培地ですすぐことをさらに含む、実施態様112に記載の方法。
114.工程(a)の間の第1の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は約50%を超えて維持される、実施態様1〜113の何れか1項に記載の方法。
115.工程(b)の間の第2の細胞培養培地中の酸素密度(DO)は約50%を超えて維持される、実施態様1〜114の何れか1項に記載の方法。
116.固定層が約2cmの層高を有する、実施態様8〜115の何れか1項に記載の方法。
117.固定層が約10cmの層高を有する、実施態様8〜116の何れか1項に記載の方法。
118.マトリクスが繊維マトリクスである、実施態様8〜117の何れか1項に記載の方法。
119.繊維マトリクスがカーボンマトリクスである、実施態様118に記載の方法。
120.繊維マトリクスが約60%から99%の間の多孔度を有する、実施態様118又は請求項119に記載の方法。
121.多孔度が約80%〜約90%の間である、実施態様120に記載の方法。
122.繊維マトリクスが、約150cm
2/cm
3〜約1000cm
2/cm
3の、細胞に接触可能な表面積を有する、実施態様118〜121の何れか1項に記載の方法。
123.繊維マトリクスが、約10cm
2/cm
3〜約150cm
2/cm
3の、細胞に接触可能な表面積を有する、実施態様118〜121の何れか1項に記載の方法。
124.繊維マトリクスが、細胞に接触可能な約120cm
2/cm
3の表面積を有する、実施態様123に記載の方法。
125.少なくとも5.0×10
7 TCID 50/mLのエンテロウイルスCウイルスが工程(d)において回収される、実施態様1〜124の何れか1項に記載の方法。
126.エンテロウイルスCウイルスが、LSc、2ab;P712、Ch、2ab;Leon、12
a1b;及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリオウイルス株である、実施態様1〜125の何れか1項に記載の方法。
127.1つ以上のベータ―プロピオラクトン(BPL)、ホルマリン、又はバイナリーエチレンイミン(BEI)でエンテロウイルスCを不活性化することをさらに含む、実施態様1〜126の何れか1項に記載の方法。
128.実施態様1〜127の何れか1項に記載の方法によって製造されるエンテロウイルスCウイルス。
129.ウイルスが1つ以上の抗原を含む、実施態様128に記載のエンテロウイルスCウイルス。
【0230】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本開示の任意の態様又は範囲を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0231】
実施例1:iCELLis NANO(登録商標)を用いたポリオウイルス産生に対する感染時細胞密度(CDI)の影響
固定層バイオリアクターシステム(例えば、Nal及び500/100バイオリアクターのような、Pall(登録商標)Life Sciences、Port Service製のiCELLis(登録商標)バイオリアクター)は、ワクチン製造(例えば、Sabin不活性化ポリオワクチン又はsIPV)に有用な産業規模での宿主細胞増殖及びウイルス産生の効率の改善を可能にし得る。これらのシステムを用いたウイルス産生のための上流プロセス工程を
図1に示す。これらのシステムは、収率の向上と製造コストの削減を可能にすると考えられている。例えば、固定層バイオリアクターシステムは、マイクロキャリア培養系システムの57日と比較して、わずか38日の上流処理を必要とし得る。しかしながら、ウイルス産生のために固定層バイオリアクターシステムを実装することは、工業的規模の生産が費用効果的であるか又は可能でさえあるとする前に、いくつかの製造パラメータについて最適条件を同定することを必要とする。これらのパラメータは、上流プロセス工程のさまざまな態様、例えば、前培養増殖及び培養条件、播種及び感染時の細胞密度、感染多重度(MOI)、培養/増殖期のpH、温度(例えば、前培養時、増殖期、及び/又はウイルス培養時)、培養期間(例えば、前培養時、増殖期、及び/又はウイルス培養時)を含む。
【0232】
iCELLis(登録商標)NANOシステムにおいて、感染時の細胞密度(CDI)を、生産性に与える潜在的な影響について調べた。
【0233】
方法
ウイルス及び細胞ストック
ATCC(登録商標)CCL−81(商標)に由来するS2ポリオウイルス及びVero細胞を使用した。
【0234】
D抗原の測定
標準的なELISAアッセイを用いてD抗原をアッセイした。
【0235】
グルコース/乳酸測定
乳酸はScout TMラクトメーターを用いて測定した。グルコースはACCUCHEK Aviva Plusシステムを使用して測定した。
【0236】
Vero蘇生
Vero細胞の蘇生を行った。1mlバイアルのVero細胞を37℃に予熱した水浴中で素早く解凍し、15mLの遠心分離管中で室温で10mLの増殖培地と混合した。アリコート(1.0ml)を細胞計数及び生存率のために採取した。残りを、50mLの遠心分離管中で37℃に予熱した20mLの増殖培地と混合した。10mLの細胞懸濁液を、3つのT−175フラスコのそれぞれにおいて37℃で77mLの予め温めた増殖培地と混合した。これらのフラスコをCO2(5%)インキュベーター内で37℃に置いた。翌日、使用済み培地を廃棄し、新鮮培地(87ml)と入れ替え、培養を続けた。
【0237】
細胞培養及び感染
特記しない限り、以下の培養条件を用いた。これらの条件は、少なくとも部分的には、以下に記載されているさまざまなパラメータに対する改良に基づいている。
【0238】
前培養のために、Vero細胞を、通気式T―175フラスコ(Sarstedt AG&Co.,Nurembrecht Germany)中、5%FBSを補充したDMEM中で0.5mL/cm
2の容量で培養した。細胞を15,000細胞/cm
2の播種密度で4日間継代した。
【0239】
すすぎのために、細胞を、DO又はpH調節なしで、34.0℃で800mLのM199培地中ですすいだ。細胞を530rpmで撹拌し、すすぎの時間は15分であった。
【0240】
iCELLis NANO(登録商標)における増殖期のために、細胞を、5%FBS及び1g/Lフルクトースを補充した1600mLのDMEM中、37℃で5,000細胞/cm
2の播種密度で増殖させた。総マイクロキャリア面積は5300cm
2であった(これは、0.3mL/cm
2のV/S及び0.2×10
6細胞/cm
2までの許容密度に対応する。より高い密度の場合、0.5mL/cm
2が使用された)。攪拌速度は430rpmであった。pHは7.15であり、DOは>50%であった。
【0241】
感染期については、細胞密度は0.125〜0.2×10
6細胞/cm
2であった。細胞を、34.0℃で3.5g/Lのグルコース及び0.05%のTWEEN(登録商標)―80を補充した1600mLのM199培地に0.002のMOIで感染させ、DOを>50%に調節し、pHを7.40に調節した。細胞を430rpmで撹拌し、6日間インキュベートした。
【0242】
下流の処理
下流の酸性化、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び陰イオン交換クロマトグラフィー工程に使用されるパラメータを以下に記載する。
【0243】
結果
生産性のために感染時の最適密度を同定するために、細胞培養物をそれぞれ0.1〜0.5×10
6細胞/cm
2の異なる細胞密度で感染させた5個のiCELLis(登録商標)NANO固定層バイオリアクター中で増殖させた。生産性はD抗原含有量として測定した。
【0244】
結果を、生産性を体積の関数として(すなわち、DU/mL;
図2A)又は細胞数の関数として(すなわち、DU/10
6細胞;
図2B)示すためにプロットした。これらのデータは、ほぼ最大の生産性がわずか0.12×10
6細胞/cm
2で達成され、最大に近い安定した生産性が0.12〜0.35×10
6細胞/cm
2の範囲のCDIで達成されたことを示している。
【0245】
有利なことに、これらの結果は、より低い細胞密度でほぼ最大の生産性が達成され得、それによって細胞培養培地の消費が少なくなることを示している。例えば、0.12〜0.2×10
6細胞/cm
2のCDIを標的とすることは、0.3mL/cm
2の体積/表面積比(V/S)で達成可能であるが、より高いCDIはより高いV/S、従ってより多くの培地消費を必要とする。別の言い方をすれば、より高いCDIを使用しても生産性に大きな改善は見られず、その一方でより高い培地消費が生じる。
【0246】
実施例2:iCELLis NANO(登録商標)を用いたポリオウイルス産生に対する感染多重度(MOI)の影響
【0247】
次に、MOIが生産性に与える影響について調べた。
【0248】
結果
細胞を培養し、実施例1に記載のようにウイルスに感染させた。体積生産性は、上記の
図2Aを参照して記載されるように測定した。
【0249】
細胞を2つのiCELLis(登録商標)NANO固定層バイオリアクター中で増殖させ、0.01(「高MOI」)又は0.002(「低MOI」)の何れかのMOIでウイルスに感染させた。両方とも、同様のCDIで感染させた(低MOIについては0.12×10
6細胞/cm
2、高MOIについては0.16×10
6細胞/cm
2)。
図3に示すように、体積生産性(DU/mL)によってアッセイした場合、両方のMOIが同様の生産性をもたらした。従って、最大の生産性及びウイルス放出動態を依然として達成しつつ、より小さいウイルスMOIを使用することができる。従って、0.002のMOIをその後の実験に使用した。
【0250】
実施例3:T―フラスコと比較した、iCELLis NANO(登録商標)を用いた細胞培養物の製造
標準的なiCELLis(登録商標)NANOシステム(すなわち、本明細書に記載の改良前)の使用と比較して、細胞を従来の組織培養フラスコ中で増殖させると、生産性は2〜3倍高い。iCELLis(登録商標)NANOシステムと組織培養フラスコの違いの1つは、NANOは循環培地を含む動的環境を使用するのに対し、フラスコは静的環境であることである。従って、ウイルスの安定性に対するiCELLis(登録商標)NANO条件の影響を試験した。別の違いはpHとDOの調節にあり、そのためiCELLis(登録商標)NANOの生産性に対するこれらの影響も試験された。
【0251】
結果
細胞を培養し、実施例1に記載のようにウイルスに感染させた。体積生産性を、上記の
図2Aを参照して記載したように測定した。
【0252】
単一のiCELLis(登録商標)NANOバイオリアクターからの最終回収物は、以下のように分けられた:200mLの培養物をCS―1フラスコ中34℃でCO
2インキュベーター中で5日間インキュベートし(「CS対照」)、1200mLの培養物を34℃で5日間、iCELLis(登録商標)NANO中で、50%DO、pH7.4、30mL/分の空気(「iCELLis NANO」)を再循環させた。
【0253】
図4に示すように、D抗原の産生は両方の条件下で安定していた。iCELLis(登録商標)NANOではD抗原の〜15%の損失が観察されたが、この損失は時間の経過とともに減少することはなかった。これらのデータは、iCELLis(登録商標)NANOの動的環境は、Tフラスコの使用と比較して生産性の低下の原因ではないことを示唆している。
【0254】
次に、iCELLis(登録商標)NANOシステムにおけるpH及びDO調節が増殖に及ぼす影響を評価した。
培養物は、pH及びDOの能動的調節あり又はなしでiCELLis(登録商標)NANOにおいて増殖させた。能動的調節なしに、空気/CO
2(5%v/v)の混合物を30mL/分の流量でバイオリアクターに注入した。「調節なし」及び調節された条件に対するCDIは、それぞれ0.18×10
6及び0.16×10
6細胞/cm
2であった。
【0255】
図5Aは、生産性が、能動的pH/DO調節がないよりも能動的pH/DO調節がある場合にはるかに高いことを示す。
図5B及び5Cは、経時的な対照及び「調節なし」条件のpH及びDOレベルを示す(感染は両方の条件で6日目前後に起こった)。これらの結果は、iCELLis(登録商標)NANOシステムにおける能動的pH/DO調節の重要性を強調している。
【0256】
実施例4:iCELLis NANO(登録商標)を用いたポリオウイルス産生に対する細胞溶解の影響
回収に対する細胞溶解の影響を調べた。
結果
細胞を増殖させ、ポリオウイルス感染後に毎日、細胞外又は細胞内D抗原の体積生産性についてアッセイした。試料を各培養物から採取し、細胞を溶解するために凍結融解しD抗原含有量を測定した。凍結融解工程を行わずに細胞外D抗原含有量を測定した。細胞内D抗原は、(凍結融解プロセス後の試料のD抗原レベル)−(凍結融解プロセスなしの試料のD抗原レベル)として計算した。
【0257】
図6は、経時的な細胞外及び細胞内D抗原の産生を示す。例えば、感染後4日目で、総D抗原の最大20%が依然として細胞内に見出された。これらの結果は、回収時の細胞溶解がウイルス回収を改善し得ること、例えば、細胞溶解により10〜20%のさらなるウイルスが回収され得ることを示している。
【0258】
実施例5:iCELLis NANO(登録商標)を用いたポリオウイルス産生に対する細胞代謝状態の影響
細胞生産性に対する代謝(例えば、グルコース消費及び/又は乳酸産生)の影響を調べた。
結果
細胞を培養し、上記のようにウイルスに感染させた。グルコース及び乳酸を上記のように測定した。マイクロキャリア(例えば、GE Healthcare Life SciencesからのCYTODEX(商標)マイクロキャリア)上で増殖した細胞について、細胞当たりの生産性(DU/10
6細胞)、グルコース不足、及び感染時のLDH活性を測定し、iCELLis NANO(登録商標)システムを使用して増殖させた細胞の2つのバッチと比較した(
図7A)。培養中にグルコースレベルが250mg/Lを下回った場合、グルコース不足/枯渇が翌日に観察されるであろう。
【0259】
結果は、最適化されていないiCELLisNANO(登録商標)システムベースのプロセスと比較して、マイクロキャリア上で増殖した細胞の細胞あたりの生産性が向上することを示した。生産性の違いが2つの系で培養された細胞間の代謝の違いによって決定され得るかどうかを決定するために、感染時のグルコース不足及びLDH活性を調べた。感染の48〜72時間前にグルコース不足を経験したマイクロキャリア上で増殖した細胞と比較して、iCELLis NANO(登録商標)システムにおいて増殖した細胞はグルコース不足を経験しなかった。iCELLisNANO(登録商標)システムにおいて増殖された細胞も、マイクロキャリアで増殖した細胞と比較して、感染時のLDH活性が10倍低下したことを示した。これらの結果は、2つの培養システム間の代謝の違いを示している。理論に拘束されることを望まないが、これらの結果は、代謝ストレス(例えば感染時)及び/又はより高い細胞密度が生産性の向上をもたらし得ることを示唆している。
【0260】
次に、本開示に従ってマイクロキャリア上で増殖した細胞において細胞当たりの平均生産性を測定し、科学文献中のプロトコルに従ってマイクロキャリア上で増殖した細胞と比較した。
図7Bに示されるように、cytodexベースの培養プロトコルは科学文献に見られる培養物を用いる培養よりも優れていた(「cytodex」バー及び「lit.cytodex」バーを参照)。iCELLisNANO(登録商標)システムで「cytodex」プロトコルと同じ温度及びpH条件を使用すると、生産性がわずかに低下した(「cytodex」を用いた「iCELLisにおけるcytodexコピーペースト」を参照)。最適化されていないiCELLisNANO(登録商標)条件を使用したベストラン(best run)は「ベストラン」として表示される。
【0261】
次に、培地中のグルコースレベルをこれらのプロトコル間で比較し(
図7C)、そしてまたiCELLis NANO(登録商標)システムにおける細胞生産性と比較した(
図7D)。マイクロキャリア培養と比較して、細胞ストレスはiCELLisNANO(登録商標)システムで大幅に減少した。理論に拘束されることを望まないが、これらの結果は、細胞ストレス及びより高い細胞密度は生産性の向上につながる可能性があり、細胞代謝を考慮すると、細胞代謝にとって重要なより多くのグルコースがcytodexよりもiCELLis において3日後の細胞培養培地に残るため、iCELLisは細胞培養のためにより好ましいことを示唆している。
【0262】
図7E及び7Fに示すように、感染中のグルコース添加が生産性に与える影響を調べた。2つの培養物を1〜10g/Lの範囲の初期グルコース濃度(細胞培養培地、M199中)でTフラスコ中で増殖させた。細胞を、0.5mL/cm
2のV/SでTフラスコ中で増殖期に増殖させた。感染期のグルコース濃度が示されている。一方の培養物は生産性に対してより高いグルコース濃度のプラス効果を示したが(
図7E)、他方の培養物は影響を示さなかった(
図7F)。グルコースの添加は生産性に悪影響を及ぼさないので、理論に拘束されることを望まないが、グルコース添加を(例えば、4.5g/Lのレベルで)維持することは感染期中のグルコース不足を回避するために有利であり得ると考えられる。
【0263】
図7Gは、細胞生産性に対する感染前のグルコース不足の影響を示す。
細胞は、感染前に24時間の完全なグルコース不足を伴わせてiCELLis NANO(登録商標)システムにおいて増殖期に増殖させた。感染期(0.3mL/cm
2の細胞を含む)では、さらなるグルコースを添加しなかった。iCELLis NANO(登録商標)システムにおいて予想される生産性は約20DU/mLであったので、グルコース不足が生産性に潜在的に悪影響を及ぼすことが観察された(
図7G)。対照細胞スタック培養システムにおいて増殖した細胞には悪影響は観察されなかった。
【0264】
図7Hは、細胞生産性における、感染時に追加のグルコースを添加することの効果を示す。細胞は、感染前にグルコース不足なしでiCELLis NANO(登録商標)システムにおいて増殖期に増殖させた。感染期(0.3mL/cm
2の細胞を含む)で、追加のグルコースを加えた(5%FBSを含む4.5g/L)。iCELLis NANO(登録商標)システムにおいて予想される生産性は約20DU/mLであったので、感染時の追加のグルコースの添加は生産性に潜在的に悪影響を及ぼすことが観察された(
図7H)。対照細胞スタック培養システムにおいて増殖した細胞には悪影響は観察されなかった。要約すると、FBSとともに追加のグルコースをウイルス培養培地へ添加するとポリオウイルス収率を改善しなかった。同様に、増殖期におけるグルコース欠乏はポリオウイルス収率を改善しなかった。
【0265】
実施例6:ウイルス回収に対するポリソルベートの効果
ウイルス回収収率に対するポリソルベート添加の効果を調べた。
結果
ウイルスは、能動的なpH/DO調節及び攪拌を用いて、上記のようにiCELLis NANO(登録商標)において増殖させた。回収の1時間前に、0.05%のTWEEN(登録商標)―80を培養物に添加した。回収後、iCELLis NANO(登録商標)を10mMトリス緩衝液(pH 7.4)ですすいだ。D抗原生産は、TWEEN(登録商標)―80を添加する前、TWEEN(登録商標)―80を添加した後、及びトリス緩衝液でNANOをすすいだ後の最初の回収時に測定した。
【0266】
図8Aは、回収の前のポリソルベート(この実施例ではTWEEN(登録商標)−80)の添加が、回収されたウイルスの量の2倍の増加をもたらしたことを示す。総回収量(DU生産量によって測定)のうち、45%がTWEEN(登録商標)−80の添加前に捕捉され、46%がTWEEN(登録商標)−80の添加後に捕捉され、9%がトリス緩衝液ですすいだ後に回収された。これらの結果は、ウイルス回収の前又はその間にポリソルベートを添加した結果として、生産性が著しく向上したことを示している。
【0267】
2つのプロセス(プロセス1とプロセス2)の間の比較が行われ、
図8Bに要約される。プロセス1と比較したプロセス2の違いは太字で示される。これらのデータは、感染時に高いMOI又はより低いV/S比を使用することは生産性にほとんど影響を及ぼさないことを示唆している。例えば、0.1mL/cm
2又は0.3mL/cm
2の感染時のV/S比を使用することは全体的な生産性に影響を与えない。
【0268】
プロセス1及びプロセス2の生産性を
図8Cに示す。「感染中のTween」条件では、0.05%のTWEEN(登録商標)−80が感染培地中に存在した。「リピート」条件では、同じ感染培地をTWEEN(登録商標)−80なしで使用して、最初の回収で回収されるウイルスの量ははるかに少ない結果となった。「リピート」回収物の「余分な回収Tween」部分は、最初の回収後にTWEEN(登録商標)−80を含有するすすぎ緩衝液でバイオリアクターを洗浄した後に回収されたD抗原力価を示す。これらのデータは、感染媒体に界面活性剤を含めることによって達成された収率の増加を示している。
【0269】
実施例7:異なるポリオウイルス株に対する上流プロセスの改善の比較
ウイルス産生は、上記の上流プロセスの改善を用いて、3つの異なる株−S1、S2、及びS3−について測定された。各血清型に使用された株は以下の通りであった。I型:LSc、2ab、II型:P712、Ch、2ab、III型:Leon、12
a1b。
【0270】
結果
上記の方法を用いてiCELLis NANO(登録商標)システムにおいて3つのウイルス血清型が産生された。結果を以下の表Aに示す。
【0271】
【表1】
【0272】
実験A(Exp−A)と実験B(Exp−B)との間の唯一のパラメータの相違は、感染時の細胞密度(上記に示されている)及び感染の1日目及び2日目のウイルス培地の循環であった。循環は,Exp−A S2については1日目、Exp−A S3並びにExp−A2 S1及びS2については2日目に開始した。
【0273】
これらの結果は、上記の上流プロセスの改善が3つの異なるポリオウイルス血清型の収率の改善に有効であることを示している。全体として、各血清型を2,400mL容量のFBS含有培地中に回収した。総D抗原生産は、S1について104,890DU、S2について61,001DU、及びS3について302,208DUであった。D抗原濃度(回収時のDU/mL)は、S1が43.7、S2が33.3、及びS3が125.9であった。
【0274】
実施例8:iCELLis NANO(登録商標)を用いたポリオウイルス産生のための下流処理工程の改善
既存の下流処理プロトコルは時間及び資源集約的である。例えば、
図9Aは、本明細書に記載の改良されたプロトコルを米国特許第8,753,646号からの既存のプロトコルと比較する。(既存のプロトコルと同様に)複数のろ過及び超遠心分離工程を必要とするのではなく、本明細書に記載の改善された方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Pall Corporation,Pt.Washington,NYのMustang―Q膜を用いる)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Pall Corporation,Pt.Washington,NYのMustang―S膜を用いる)を使用する。この改善されたプロセスは、より合理化された費用効率の高い下流処理スキームを可能にする。
【0275】
ウイルス産生不活性化のための改良された下流プロセスを説明する流れ図を
図9Bに示す。以下の実施例は、この改善された精製方法の検証及び最適化、並びにこの方法とiCELLis NANO(登録商標)システムを用いたウイルス産生との組み合わせを詳述する。
【0276】
結果
ウイルス産生に対するさまざまな下流の処理パラメータの効果を試験するために3つの実験計画法を用いた(
図10)。これらの実験の結果を以下の表B及びCに示す。
【0277】
【表2】
【0278】
【表3】
【0279】
これらの実験からのさまざまな精製工程の生成物を
図11A〜11Eに示す。実験8(
図11A)からのS2ウイルスの精製は、Thomassen, Y.E. et al. (2013) PLoS ONE 8:e83374の
図3Bに示されたものと同様である。これは、陰イオン交換膜からの溶出液(
図11Aのレーン5)がポリオウイルスを含有していること、及びこのポリオウイルス懸濁液が連続的な陽イオン及び陰イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて十分に精製されたことを示す。これらの結果は、ポリオウイルスが陽イオン/陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、本明細書に記載されるような適切なパラメータ設定を用いて十分に精製されたことを示す。
図11Bは、D抗原の回収率を向上させるために精製プロセスにおいて特定のパラメータが変更されたが、余分なタンパク質(例えば60kD)が完全に除去されなかったことを示す。
図11Dに示すように、S3株は、S1株及びS2株とは陽イオン交換ローディングのために異なるpHを必要とする。
図11Eは、同じpHにおいて、少量のS3が陽イオン交換膜に結合したことを示す。レーン7の30kD付近のバンドは、S3ポリオウイルスの構成成分ではない。
【0280】
これらの結果は、実験8からのS2ウイルスの精製(
図11C)が既存のプロトコルの精製方法を用いて生成されたものと類似していたことを示している(
図11Cのレーン1及び2参照)。既存のプロトコル(例えば、米国特許第8,753,646号に記載されているように)は、
図9Bに要約されている(「既存」)。従って、
図9B及び10に概説される合理化された精製スキームは、既存のプロトコル、クロマトグラフィー、又はThomassen, Y.E. et al. (2013) PLoS ONE 8:e83374に記載のプロトコルなどの先行技術を使用して精製されたものと同様のバンドを有する高純度をもたらす。しかしながら、S3ウイルスの精製は、既存のプロトコルと同様に精製ウイルスを産生するために、陽イオン交換ローディングのための異なるpHを必要とする(
図11Eのレーン1及び2参照)。
S3ウイルスの精製を容易にするための下流処理に対する改良は、本明細書中にさらに記載される。ウイルス血清型S1、S2、及びS3についての精製プロセスの結果の要約を以下の表Dに提供する。
【0281】
【表4】
【0282】
これらの結果は、3つ全てのウイルス血清型について、陰イオン及び陽イオン交換工程、並びに全体的な精製プロセスについての高い回収率を示す。
精製薬物中の総タンパク質/D抗原比は0.1未満であった。従って、全ての血清型の最終精製産物は不活性化後にこの規格を満たすべきである。
【0283】
実施例9:陰イオン及び陽イオン交換クロマトグラフィーのための捕捉条件の同定
pH、緩衝液組成、ポリソルベートの存在/非存在、及びD抗原の収率を改善するための希釈係数などの捕捉条件を試験した。
結果
陰イオン交換クロマトグラフィーのさまざまなパラメータ(例えば、Mustang Qシステム、Pall Corporationを使用)を、96ウェルAcroPrep(商標)プレート(Pall Corporation)を使用して、条件をスクリーニングすることによってウイルス捕捉に対する効果について評価した。試料は、清澄化した回収物の〜12D抗原単位(理論値)であった。試料を5倍(
図12A)又は3倍(
図12B)に希釈し、指示された条件を用いて結合させ、指示された緩衝液中0.75MのNaClを含む0.75mLで溶出した。溶出画分をD−抗原(DU)について分析した。
【0284】
図12Aは、5倍希釈係数を用いた結果を示す。7.0〜8.5のpHでトリス緩衝液を用いて効率的な捕捉(〜80%以上の収率)が観察された。同程度のpHのトリス緩衝液と比較して、リン酸緩衝液を用いたほとんどの条件で捕捉は効率が悪かった。低いpHで、しかし低い効率で、いくらかの捕捉が見られた。ポリソルベート(0.05%TWEEN(登録商標)−80)の添加は、ほとんどの条件下で捕捉効率に多少の影響を及ぼしたが、その添加は純度に影響を及ぼす可能性がある。理論に拘束されることを望まないが、tweenを含む希釈なしの結果は矛盾であり、ほとんどの場合、希釈なしで捕捉されないことを示すと考えられる。
【0285】
図12Bは、3倍希釈係数を用いた結果を示す。5倍希釈と比較して、希釈量の減少は、特にpH8.0及び8.5でのトリスを除いて、全ての条件下で捕捉効率を低下させた。これらの結果は希釈の余地を示している。まとめると、これらの結果は、最も効率的な捕捉がpH8.0〜8.5のトリス緩衝液を用いて観察されたこと、及び希釈係数が3倍以上に低下し得ることを示している。理論に拘束されることを望まないが、tweenを含む希釈なしの結果は矛盾であり、ほとんどの場合、希釈なしで捕捉されないことを示すと考えられる。
【0286】
次に、陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Mustang Sシステム、Pall Corporationを使用)のさまざまなパラメータを、上記のように条件をスクリーニングすることによってウイルス捕捉に対する影響について評価した。
【0287】
図13Aは、5倍希釈係数を用いた結果を示す。観察された最高の捕捉効率は、pH5.5のクエン酸緩衝液及びポリソルベートを用いた場合、約90%の収率であった。pH4.5又は6.0のクエン酸緩衝液は、あまり効率的ではない捕捉を引き起こした。ポリソルベートの使用は捕捉効率のわずかな増加を引き起こした。
【0288】
図13Bは、3倍希釈係数を用いた結果を示す。5倍希釈と比較して、3倍への希釈係数の低下は、pH4.5又は5.5のクエン酸緩衝液を除く全ての条件の捕捉効率を減少させた。これらの結果は希釈の余地を示している。まとめると、これらの結果は、ポリソルベートを含むpH4.5〜5.5のクエン酸緩衝液を用いて最も効率的な捕捉が観察されたこと、及び希釈係数が3倍以上に低下し得ることを示している。
【0289】
陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを用いたクエン酸、トリス、又はリン酸緩衝液を用いたpHの関数としての結合効率(ポリソルベートあり及びなし)を
図14A〜14Dに示す。
【0290】
陰イオン交換条件は、次に、プロセスサイズをMustang Q AcroDisc(登録商標)スケールにスケールアップするために試験された。
図14Eは、ポリソルベートを含まないトリスpH8.0緩衝液を用いた4倍希釈係数で得られた溶出プロファイルを示す。各画分から得られたウイルスの総量(例えば、総D抗原)、並びにパーセント収率が
図14Fに示される。
図14E及び14Fに示されるように、フロースルー中に有意なD抗原は検出されず、収率は約100%であった。低い導電率(例えば10mS)が最良の溶出をもたらした。
【0291】
図14Gは、ポリソルベートを含むトリスpH8.0緩衝液を用いて4倍希釈係数で得られた溶出プロファイルを示す。SDS―PAGE銀染色によって決定される純度は、
図14Hに示される。
図14G及び14Hに示すように、フロースルー中に有意なD抗原は検出されず、純度は50%未満であった。低い導電率(例えば10mS)が最良の溶出をもたらした。
【0292】
陽イオン交換条件は、次に、プロセスサイズをMustang S AcroDisc(登録商標)スケールにスケールアップするために試験された。
図14Iは、ポリソルベートなしでクエン酸緩衝液(pH5.5)を用いて4倍希釈係数で得られた溶出プロファイルを示す。各画分から得られたウイルス(例えば、総D抗原)の総量、並びにパーセント収率は、
図14Jに示されている。
図14I及び14Jに示すように、10%未満のD抗原がフロースルー中に検出され、収率は約90%であった。2つのピークが高い溶出伝導率で観察された。
【0293】
図14Kは、ポリソルベートを含むクエン酸緩衝液(pH5.5)を用いて4倍希釈係数で得られた溶出プロファイルを示す。SDS―PAGE銀染色によって決定された純度を
図14Lに示す。
図14K及び14Lに示されるように、フロースルー中に5%未満のD抗原が検出され、収率は約95%であった。2つのピークが高い溶出伝導率で観察された。SDS―PAGEによって分離されたピークの銀染色分析によって推定されるように、純度は50%を超えていた。
【0294】
上記のような陰イオン及び陽イオン交換クロマトグラフィー工程のスケールアップの要約を表D2に提供する。
【0295】
【表5】
【0296】
さまざまな下流処理パラメータを試験するための実験計画を
図15A及び15Bに示す。陽イオン交換(
図15A)及び陰イオン交換(
図15B)条件の4つの組み合わせを試験した。これらの試験の結果を
図15Cに示す。これらの結果は、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、クエン酸又はリン酸緩衝液を、収率に対してほとんど又は全く影響を与えずに使用できることを示している。しかしながら、上流陽イオン交換工程にクエン酸を使用する場合と比較して、上流陽イオン交換工程にリン酸緩衝液を使用した場合、陰イオン交換収率はより高いように見えた(番号1と2と比較した場合のMustangQ番号3と4の工程と全体的な回収を参照)。
【0297】
次に、緩衝液濃度を増加させることの影響を、陽イオン交換溶出pH及び陰イオン交換ローディングpHを低下させることと組み合わせて調べた。これらの実験は、緩衝能を改善し、より中性のpHを標的とすることを目的とした。
【0298】
実験設定を
図16Aに示す。上記の条件を用いたDSP1.0の回収に関する性能を、陽イオン交換カラムローディングのためのより高い緩衝液濃度(20mM対10mMリン酸緩衝液)、より低い陽イオン交換溶出pH(pH7.5対8.0)、及びローディングのために同じより高い緩衝液濃度及び同じpHを用いた陰イオン交換工程を使用したDSP1.1の性能と比較した。
図16Bに示されるように、DSP1.1はより低い工程及び全体的回収をもたらした。陽イオン交換の場合、20mSでsIPVのわずかな溶出が観察されたが、これは溶出pHが低いことに起因し得る。陰イオン交換の場合、フロースルー中に50%のsIPVが観察されたが、これはより低いローディングpH及びより高い緩衝液伝導率に起因し得る。これらの結果は、より高い緩衝液pH及び/又は減少した緩衝液伝導率がより高い回収をもたらし得ることを示唆する。
【0299】
次に、陽イオン交換クロマトグラフィー工程の希釈係数を、回収に対するその影響について試験した。膜としてMustang S AcroDisc(登録商標)を使用した。インラインロードは、pHを5.5に調整した(例えば、清澄化及び酸性化後の)清澄化ウイルス回収物であった。希釈緩衝液は10mMクエン酸であった。
図17Aに示されるように、ほぼ完全な回収が達成され、希釈なしでさえもフロースルー中に回収はなかった(DUにより測定)。従って、pH5.7では2倍希釈係数は許容可能であったが、pH5.5では、0倍希釈係数でさえ許容可能であった。
図17Bは、1.3未満の希釈係数がフロースルー中の5%超のS2D抗原の損失をもたらしたことを示す。
【0300】
次に、陰イオン交換クロマトグラフィー用のpH及び塩ベースの溶出を比較した。
図18Aは、pH8.0リン酸緩衝液を用いた陰イオン交換基質のpHベースの溶出の溶出プロファイルを示す。
図18Bは、pH8.0のリン酸緩衝液中のNaClを用いた、陰イオン交換基質のNaClベースの溶出の溶出プロファイルを示す。これらの結果は、pH溶出と比較して、NaCl溶出を使用するとより良い純度が達成されたことを示す。両方の溶出は> 100%の収率をもたらした。pH溶出は陰イオン交換工程の前に希釈を必要としないであろうが、NaClは10倍希釈係数を必要とするであろう。しかしながら、NaCl溶出はpH溶出よりも高い純度をもたらした。従って、各タイプの溶出は利点を有し、所望されるタイプは下流の処理及びスケールアップのための純度要件に依存し得る。
【0301】
要約すると、ウイルス産生をスケールアップするための例示的な下流処理フローの図が
図19に提供される。製造工程全体を詳述する2つの例示的なフローチャートが
図20A及び20Bに提供される。
【0302】
実施例10:パイロットスケールプロセスにおけるウイルス産生のためのプロセスパラメータの改善
iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを使用して、ウイルス産生、回収、及び精製のためのパイロットスケールのプロセス実行を実施した。このスケールアップされたシステムは、iCELLis(登録商標)NANOと比較してバイオリアクターの容量を70倍増加させる(70L対1L)。
【0303】
結果
回収及び下流処理工程を伴う、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを用いたウイルス産生のための全工程フローチャートを
図21Aに示す。iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを用いた上流処理のための最適化パラメータを
図21Bに示す。
【0304】
図21A及び21Bに示されるプロセスは25Lスケールで行われた。このプロセスの結果を分析し、より小さなAcroDisc(登録商標)スケールと比較した(
図22)。
図22において強調されているように、D抗原収率に関して、2つのピークが段階的勾配手順を用いたMustang−S溶出工程において観察された。最初のピークのみを含む画分をMustang−Qに適用した。この状況では、最終的なD抗原の収率は35%であった。しかしながら、理論に拘束されることを望まないが、両方のピークを含むウイルス懸濁液をMustang−Qに適用した場合、最終収率は52%に増加し得ると考えられる。総タンパク質/DUに関して、最終精製ウイルスの合計値は規格を満たし、かつ総タンパク質濃度の値は3つの異なる手順の間で異なっていた。
【0305】
低収率の潜在的な原因を調査するために、次に下流の処理工程を調べた。下流の処理工程の概要は、
図23Aに流れ図として示されている。
図23B及び23Cに示されるように、陽イオン交換クロマトグラフィーの最中に2つの異なる導電率(20及び25mS/cm)での溶出が観察された。これらの結果は、20及び25mS/cm溶出からのVP1、VP2、及びVP3に対応するタンパク質バンドの検出によって確認された(
図23D)。VP4は検出されなかった。
【0306】
次に、陰イオン交換クロマトグラフィーからの溶出プロファイルを決定した(
図23E)。
図23Fに示されるように、2回目のロード、フロースルー及び1回目の洗浄、並びに2回目の洗浄工程におけるウイルス回収の欠如は、約45%の損失を示し得る。さまざまな陰イオン交換溶出液中のタンパク質の検出は、VP1、VP2、及びVP3よりも高い分子量を移動するさらなる未同定のバンドの存在を示した(
図23G)。
【0307】
これらの結果のために、下流の処理を最適化し、大規模で純度を高めるために追加の実験が行われる。理論に拘束されることを望まないが、上記のように観察された溶出プロファイル及び純度は、不特定のウイルス/タンパク質相互作用によって駆動され得ると考えられる。これらの相互作用を弱めることは、より期待される溶出プロファイルを潜在的に回復し、より強いウイルス/膜相互作用を提供し、単一ピークの溶出及びより良好な純度をもたらすと考えられる。
【0308】
純度の向上
一態様では、より高い(例えば5倍高い)ポリソルベート濃度(例えば、TWEEN(登録商標)―80)が、クロマトグラフィーのローディング、洗浄、及び溶出中に使用される。
【0309】
別の態様では、ローディング中に、より高い導電率(例えば、10〜15mS/cm)が使用される。
【0310】
別の態様では、
図23Gに示される汚染バンドが同定される(例えば、銀染色/MS分析を使用して)。バンドがBSAを反映している場合は、改良されたiCELLisすすぎ工程が採用される。
【0311】
単一の陽イオン交換溶出ピークを達成する
最初に、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムの回収物を、より小さいAcroDisc(登録商標)スケールを使用して精製し、2ピークの溶出が観察されるかどうかを決定する。
【0312】
別の態様では、クロマトグラフィーローディング、洗浄、及び溶出中に、より高い(例えば、5倍高い)ポリソルベート濃度(例えば、TWEEN(登録商標)―80濃度)が使用される。例えば、以下の濃度のポリソルベート(例えば、TWEEN(登録商標)―80)を試験する:0%(陰性対照として)、0.05%、0.1%、0.25%、及び0.5%。
【0313】
別の態様では、ローディング中に、より高い導電率(例えば、10〜15mS/cm)が使用される。
【0314】
陰イオン交換クロマトグラフィーからの回収の向上
最初に、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムの回収物を、より小さいAcroDisc(登録商標)スケールを使用して精製し、同様の回収が観察されるかどうかを決定する。
【0315】
別の態様では、(例えば、AcroDisc(登録商標)スケールと比較して)観察されたより低い収率が定量化の誤差によるものであるかどうかを決定するために、25Lスケールの定量化を再チェックする。
【0316】
サイジングクロマトグラフィー工程
陽イオン交換カラム(例えば、Mustang Sクロマトグラフィー膜)及び陰イオン交換カラム(例えば、Mustang Qクロマトグラフィー膜)の最大ローディング容量が決定される。例えば、125mL/mLMV、250mL/mLMV、500mL/mLMVの回収物が10mLのMustang膜スケールでロードされる。
【0317】
陰イオン交換クロマトグラフィーの改良
陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した捕捉を改善するために、複数のアプローチが使用される。希釈後の最終pHは7.4であり、8.0ではなかった。一態様では、緩衝能力は希釈中にpH8.0に達するように増加する。別の態様において、収率に対するpH7.4の影響が決定される。Mustang−Qロードの許容pH範囲は、例えば製造記録に基づいてもよい。
【0318】
別の態様において、15mM及び20mMリン酸緩衝液を希釈のために使用し、導電率、希釈係数、及び収率に及ぼすそれらの影響について試験する。
【0319】
別の態様では、より低いpHの潜在的な使用を評価するために、pH7.5の陰イオン交換膜上での捕捉を試験する。
【0320】
S2ウイルスを用いてフル生産の実行を行った。下流プロセスのパラメータを
図23Hに示す。下流プロセスの各工程について、体積;D抗原の力価、総量、及び回収率;総タンパク質;及びタンパク質/D抗原比を含む結果を
図23Iに示す。
【0321】
実施例11:パイロットスケールプロセスにおけるウイルス産生のための上流プロセスパラメータの比較
iCELLis(登録商標)500/66m
2システムを使用したウイルス生産、回収、及び精製のために追加のパイロットスケールのプロセス実行を実施し、iCELLis(登録商標)NANOシステムを使用した生産と比較した。生産性に対する潜在的な影響について、さまざまな上流プロセスパラメータを監視した。複数のポリオウイルス株の産生を調べた。
【0322】
結果
4つの独立した製造の実行が行われた:2つはiCELLis(登録商標)500/66m
2システムにおいて増殖した細胞を用い、もう2つはiCELLis(登録商標)NANOシステムにおいて増殖した細胞を用いた。
図24Aは、各条件における細胞培養物のさまざまなパラメータを示す(全ての条件は株S2を使用した)。重要なことに、最高のD抗原力価/mLが、iCELLis(登録商標)500/66m
2システム(「iCELLis 500/66 B」)において増殖した培養物のうちの1つについて観察され、これは、1回の実行から0.55M用量のワクチンに相当する推定39.4M DUを生成した。
図24B及び24Cに示すように、さらに3回の実行(2つはiCELLis(登録商標)500/66m
2システムにおいて増殖した細胞を用い、1つはiCELLis(登録商標)NANOシステムにおいて増殖した細胞を用いる)が実行された(全ての条件は株S3を用いた)。これらの結果は、iCELLis(登録商標)500/66m
2システムにおける増殖が、iCELLis(登録商標)NANOシステムにおける増殖と比較して、ほぼ同等の相対的生産性をもたらすことを示している(v/s 0.3でのD抗原力価が、500/66について118.9DU/mL対NANOについて104.0DU/mL)。
【0323】
実施例12:パイロットスケールプロセスにおけるウイルス産生のための下流プロセスパラメータの改善
次にウイルス産生のための下流の処理工程に対するさらなる改良を調べた。これらの実験に使用された上流処理工程は、
図25Aに図示される。
【0324】
結果
ウイルスの回収及び精製のための例示的な下流プロセスを
図25Bに示す。
1つのプロセスは、NaCl緩衝液を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーの洗浄及び溶出を使用するのに対して、代替プロセスは、リン酸緩衝液を使用するpHベースの洗浄及び溶出を使用する。プロセス間の違いは以下の表E及び表Fに要約されている。
【0325】
【表6】
【0326】
【表7】
【0327】
以下の表G及び表Hに示すように、これらのパラメータをS1及びS3ウイルスに適用した。
【0328】
【表8】
【0329】
【表9】
【0330】
陽イオン交換膜ローディングのためのpHを株S1を用いて調べた。
図26Aに示されるように、総ウイルス(DU)の99.2%がpH5.4と5.7の間で捕捉された。陽イオン交換膜からのNaCl溶出もまた株S1を用いて調べた。約100%のウイルスが250mMのNaClで溶出することが観察された(
図26B及び26C)。これらの結果は、S1株を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーについては、陽イオン交換ローディングがpH5.7で最も効果的であり、250mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液が溶出のために最も効果的であることを示している。
【0331】
陰イオン交換膜ローディングのためのpHを次に株S1を用いて調べた。試料を2倍に希釈し、2単位に等分した(pH4.0及び10.0)。ローディング伝導率は3.88mS/cmであり、0.05%のTWEEN(登録商標)―80が含まれていた。
図27Aに示されるように、総ウイルス(DU)の81.17%がpH8.24と8.60の間に捕捉された。陰イオン交換膜からのNaCl溶出もS1株を用いて調べた。2864.55DUのウイルスをローディングpH8.5から精製し、0.005%のTWEEN(登録商標)−80を含めた。300mMのNaClで約90.61%のウイルスが溶出することが観察された(
図27B)。フロースルー及び洗浄においてDUは観察されなかった。これらの結果は、S1株を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーでは、300mMのNaCl溶出を伴う10mMリン酸緩衝液が最も効果的であることを示している。
【0332】
陰イオン及び陽イオン交換工程もまた株S3を用いて調べた。
図28Aに示されるように、陽イオン交換膜へのpHローディングのために、100%の総ウイルス(DU)がpH5.00と5.51の間で捕捉された。陽イオン交換膜からのNaCl溶出もまた、株S3を用いて調べた。約91.7%のウイルスが200mMから300mMのNaClで溶出することが観察された(
図28B及び28C)。これらの結果は、S3株を用いた陽イオン交換膜のローディングはpH5.0で最も効果的であり、溶出は10mMリン酸緩衝液及び300mM NaClで最も効果的であることを示している。
【0333】
次に陰イオン交換膜ローディングのためのpHを株S3を用いて調べた。試料を2倍に希釈し、2単位に等分した(pH4.0及び10.0)。ローディング伝導率は3.88mS/cmであり、0.05%のTWEEN(登録商標)―80が含まれていた。
図29Aに示されるように、100%の全ウイルス(DU)がpH8.15と9.93の間に捕捉された。陰イオン交換膜からのNaCl溶出もまた、株S3を用いて調べた。4161.2DUウイルスをローディングpH 8.5から精製した。約12.62%のウイルスが200mMのNaClで溶出することが観察された(
図29B)。フロースルー及び洗浄においてDUは観察されなかった。これらの結果は、S3ウイルスの精製には、陰イオン交換膜からの溶出のために200mMのNaClが最も効果的であることを示している。理論に拘束されることを望まないが、S3とS1/S2との間の表面電荷差は、S3株についての陽イオン交換よりも陰イオン交換についてのより厳しいパラメータ設定をもたらすと考えられる。
【0334】
要約すると、NaCl及びpH溶出を使用する下流処理スキームがそれぞれ
図30A及び30Bに提供される。
【0335】
ポリオウイルスS2株を用いた製造の実行も行った。NaCl溶出を用いたプロセス実行の各プロセス工程におけるウイルス回収を
図31Aに要約する。この実行からの回収及び収量パラメータを下記の表I及びJに示す。総タンパク質/DU比及び観察されたBSA濃度に基づいて標的純度を達成した(表Nを参照)。回収から陰イオン交換クロマトグラフィーまでの総収率は81.6%であった。ローリー法を用いて総タンパク質を測定した。BSA及び宿主細胞タンパク質(HCP)は両方ともELISAを用いて測定した。リアルタイムPCRを用いて宿主細胞DNA(HCD)を測定した。
【0336】
【表10】
【0337】
【表11】
【0338】
pH溶出を用いたプロセス実行の各プロセス工程におけるウイルス回収を
図31Bに要約する。この実行からの回収及び収量のパラメータを以下の表K及びLに提供する。標的純度は、総タンパク質/DU比に基づいて達成された(表Nを参照)。BSA濃度は決定されなかった。回収から陰イオン交換クロマトグラフィーまでの総収率は69.5%であった。
【0339】
【表12】
【0340】
【表13】
【0341】
次に、NaCl溶出を用いたS2プロセス実行から得られたデータを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーの収率及び純度に対する溶出容量の影響を調べた。以下の表Mに示されるように、画分1(
図32の対応するクロマトグラフ参照)は標的範囲内の純度を有していた。しかしながら、より大きな画分2も含まれると、純度は低下し、標的範囲外となった。これらの結果は、溶出容量が下流のプロセス純度にとって重要であることを示している。10mLの膜容量(MV)が、60Lスケールの精製に基づいて十分であると考えられる。
【0342】
【表14】
【0343】
両方のプロセスの実行を用いて得られたS2ウイルスの純度をSDS−PAGE分析によってさらに分析した。
図33Aは、VP1、VP2、及びVP3が、陽イオン交換クロマトグラフィー後よりもNaCl溶出画分1中でより高い収率で検出されたことを示す。
図33Bは、VP1、VP2、及びVP3が、陽イオン交換クロマトグラフィー後よりも100mM NaClでのpH溶出においてより高い収率で検出されたことを示す。これらの結果は、陰イオン交換溶出が100mM NaClで最も効果的であること、及び余分のタンパク質バンドがSDS−PAGEによって検出されたが、S2回収物は本明細書に記載の陽イオン及び陰イオン交換工程を用いて効果的に精製されることを示す。
【0344】
下流工程段階の標的収率及び純度パラメータを以下の表Nに示す。
【0345】
【表15】
【0346】
本明細書に記載の結果に基づいて、表O中の下流プロセスパラメータが、各ポリオウイルス株についての大規模生産のための最適化設定であると考えられる。
【0347】
【表16】
【0348】
実施例13:改善された方法を適用することによって製造されたsIPVワクチンを用いたウサギにおける毒性学試験
ウサギにおいて、本明細書に記載の改善された方法から製造されたウイルス材料を用いて毒性試験を行った(上記の実施例12参照)。ミョウバン及び薬学的に許容される担体と共に処方されたS1、S2、及びS3からのウイルス材料を用いてワクチンを処方した。原薬を2―フェノキシエタノールを含有するリン酸緩衝食塩水と混合した。次いで、混合溶液を0.2マイクロメートルの膜でろ過し、ミョウバンアジュバント(アルヒドロゲル)を添加することによって処方した。S1、S2、及びS3の試料D抗原は、使用した最高強度で3、100、及び100DU/用量であった。
【0349】
結果
S1:S2:S3の3:100:100DU/用量の投与量でのSabinベースの不活化ポリオワクチン(sIPV)を、雄及び雌のKbl:JWウサギに1回筋肉内投与し(単回投与群:2匹の動物/性別/群)、又は毎週1回、5週間連続して投与した(複数回投与群:5匹の動物/性別/群;1、8、15、22、及び29日目に投与)。単回投与群及び複数回投与群の動物をそれぞれ単回投与又は5回目の投与の2日後に剖検し、潜在的な毒性を評価した。各動物は各投与につき0.5mLの被験物質を受けた。各群に生理食塩水とアルミニウムアジュバント(ビヒクル)の2つの同時対照群を設定し、ワクチン接種群と同じ方法で投与した。8週間の回復期間後の潜在的な毒性変化の可逆性を調べるために、さらなる5匹の動物/性別/群に与えられた。本研究で収集した血清試料の免疫原性の結果に基づいて、ウサギが毒性を評価するのために適切な種であることが確認された。
【0350】
投与期間中及び回復期間中に被験物質に関連した死亡は観察されなかった。ワクチン接種を受けた回復群の1匹の雄は、食欲不振の徴候を示し、38日目に安楽死させた。この動物では、5回目の投与後に、糞便量の減少、食物消費量の減少及び体重減少が見られた。液体補給は2回与えられた;しかしながら、動物の状態は改善しなかった。動物の健康悪化の原因を解明するために、動物を動物福祉の観点から安楽死させ、剖検を行った。剖検所見には、小さな胸腺、胃の中の毛玉、及び膀胱の内腔拡張が含まれていた。病理組織学的所見には、消化管粘膜(食道、空腸、及び回腸)の萎縮性変化皮膚の表皮、涙腺の腺房細胞、盲腸のリンパ組織、肝臓における門脈周囲肝細胞の空胞化が含まれた。これらの所見は、安楽死の前に動物が拒食症様状態を悪化させたことに起因していた。胃毛毛嚢虫症はウサギでは一般的であり、小さな毛玉(又はそれほど目立たない凝集体)でさえウサギで食欲不振を引き起こすことがあるので、この動物で観察された食欲不振様症状はおそらく胃で見つかった毛玉によるものであり、被験物質に関連する可能性は低い。
【0351】
回復群の予定された剖検の日(85日目)に、ワクチン接種された回復群の1匹の雌が、死亡前の臨床徴候にいかなる異常を伴うことなく死亡したことが判明した。84日目、及び投与期間中(2、8、及び30日目)に行われた血液学的検査及び血液化学検査は、この動物におけるいかなる顕著な変化も明らかにしなかった。注射部位の異物は顕微鏡で観察されたが、これらの観察はアルミニウムアジュバント又はワクチンを投与された他の回復動物においても見出された。剖検時又は病理組織学的検査時に観察された死因に起因する病変はなかった。このウサギの死因は特定されていないが、この動物における投与及び回復期間を通して顕著な変化は観察されなかったので、被験物質に関連するとは考えられなかった。
【0352】
回復期に、臨床徴候体重、摂餌量、摂水量、体温、眼科学、尿検査、又は血液学において、被験物質関連の異常は認められなかった。皮膚反応の観察では、5回目の投与後30〜34日目に、ワクチン接種群の1匹の雄において、右外側広筋(注射部位3)において注射時の赤い変色が見られた。単回投与群の剖検では、生理食塩水、アルミニウムアジュバント、ワクチン接種群の両方の性において、左外側広筋(注射部位1)における注射部位に(1回目の投与の2日後)、暗赤色の焦点が認められた。多回投与群では、アルミニウムアジュバント群及びワクチン接種群の両方の性において、(5回目の投与の2日後)注射部位3にて暗赤色の焦点が観察された。
【0353】
単回投与群の病理組織学的検査は、アルミニウムアジュバント群とワクチン接種群の両方について、(1回目の投与の2日後)注射部位1における単核球浸潤、筋肉の壊死/再生、及び/又はマクロファージ凝集を明らかにした。これらの変化の発生率/重症度は、これらの群の間で同等であった。異物は、アルミニウムアジュバント及びワクチンなどの残留投与物質に由来すると考えられていた。さらに、マクロファージの凝集は、投与物質に対する異物反応を示していた。複数回投与群の病理組織学的検査により、アルミニウムアジュバント群及びワクチン接種群における注射部位3での筋肉の壊死/再生、出血、異物、単核球浸潤、偽好酸球浸潤、浮腫及び/又はマクロファージ凝集などの免疫/炎症反応が明らかになった。これらの変化のうち、ワクチン接種群における免疫/炎症反応の発生率/重症度は、アルミニウムアジュバント群で観察されたものよりも高かった。注射部位1(1回目の投与から4週間後)では、マクロファージの凝集及び異物がアルミニウムアジュバント及びワクチン接種群で見られ、同程度の発生率/重症度であった。単核球浸潤及び偽好酸球浸潤はワクチン接種群においてのみ認められた。ワクチン接種群における単核球及び偽好酸球浸潤並びに異物の発生率/重症度は、注射部位3と比較して減少した。これは、ワクチン注射後の局所的免疫/炎症性変化の可逆性を示した。アルミニウムアジュバント群とワクチン接種群において、(2回目から4回目の投薬の複数回投与の1週間後)左仙髄筋への注射(注射部位2)で、単核球浸潤、偽好酸球浸潤、筋肉の壊死/再生、異物、及び/又はマクロファージ凝集が認められた。これらの変化のうち、偽好酸球浸潤はワクチン接種群でのみ認められた。しかし、単回注射後の所見と比較した場合、免疫/炎症反応又は筋肉壊死の明らかな悪化はワクチン接種群では認められなかった。これらの結果は、同じ領域に複数回投与した後の耐容性を示した。
【0354】
複数回投与群において認められた注射部位の変化に加えて、脾臓及び内部腸骨リンパ節の胚中心の数及び大きさが増加した。副皮質のリンパ球の数の増加、並びに内腸骨リンパ節の偽好酸球浸潤の増加もあった。これらの変化はすべて、繰り返されたワクチン接種に対する正常な免疫反応であると考えられており;これらの変化はワクチン接種された複数回投与群で認められた。
【0355】
回復期間中、注射部位における異物及びマクロファージの凝集は、複数回投与後(1回目の投薬から4週間後)に注射部位1と同程度の発生率/重症度で継続的に認められた。しかしながら、他の所見はワクチン接種された群では消えた。さらに、投与期間の終わりに観察されたリンパ節及び脾臓における所見は、回復期間の後に消えた。従って、ワクチン接種によって誘発された免疫/炎症反応の可逆性が確認された。
【0356】
結論として、8週間の回復期間を伴う4週間のウサギへのsIPVの筋肉内投与(1週間の間隔で合計5用量を投与)は忍容性が良好であった。ウサギへの単回投与又は複数回投与後に全身毒性は観察されなかった。注射部位における局所免疫/炎症反応(及び局所リンパ節及び脾臓における関連所見)がワクチン接種群において認められた。しかしながら、これらの反応はワクチン接種と一致しており、投与期間の終わりに観察された所見は投与物質に対するわずかな異物反応を除いて回復期間中に消散した。無作用量(NOEL)は注射部位での被験物質関連の変化に基づいて確立されなかった:回復期間後の免疫/炎症反応の可逆性に基づいて、この試験の条件下でワクチンの無作用量(NOAEL)は0.5mL/動物であると決定された。まとめると、これらの実験は、本明細書に記載の改善された方法を使用して、ウイルス材料の首尾よい製造、及びこのウイルス材料を含有する有効なワクチンのその後の処方を明らかにした。