特表2020-528838(P2020-528838A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-528838光学装置を製造する方法及び対応するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-528838(P2020-528838A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】光学装置を製造する方法及び対応するシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20200904BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20200904BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20200904BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20200904BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200904BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200904BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200904BHJP
   G02C 7/00 20060101ALN20200904BHJP
【FI】
   B29C64/129
   G02B3/00 Z
   B29C64/264
   B29C64/393
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B33Y50/02
   G02C7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-571935(P2019-571935)
(86)(22)【出願日】2017年6月30日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】IB2017001012
(87)【国際公開番号】WO2019002905
(87)【国際公開日】20190103
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515066025
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・オート・アルザス・(ユアッシュア)
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ソッペラ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・テオデ
【テーマコード(参考)】
2H006
4F213
【Fターム(参考)】
2H006BA01
4F213AA21
4F213AA44
4F213AB04
4F213AH74
4F213WA25
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL44
4F213WL76
4F213WL85
(57)【要約】
硬化性組成物のある体積(4)から光学装置を製造する方法は、− 前記体積の外面に光照射(B)を照射することによって前記体積(4)の第1の部分(14)を重合し、それにより前記光照射に対する前記第1の部分(14)の透過率を増加させるステップと、− 前記体積の第2の部分を、前記外面及び重合された第1の部分(14)を通して前記第2の部分に前記光照射(B)を照射することによって重合するステップとを含み、前記光照射(B)は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する。対応するシステムも記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物のある体積から光学装置を製造する方法であって、
− 前記体積の外面に光照射を照射することによって前記体積の第1の部分を重合し、それにより前記光照射に対する前記第1の部分の透過率を増加させるステップと、
− 前記体積の第2の部分を、前記外面及び前記重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記光照射を照射することによって重合するステップと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、方法。
【請求項2】
前記出力は、前記外面の少なくとも1つの地点について経時的に変化している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光照射は、紫外線範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光照射は、可視範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性組成物は、前記光照射に感受性があり且つ光退色特性を有する光開始剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物は、アクリレートを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の部分を重合する前に前記硬化性組成物を脱ガスするステップを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学装置は、光学レンズである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物は、底部を備えた容器内にあり、前記光学装置は、前記底部から開始して重合によって形成され、前記光照射は、前記底部を透過される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記底部は、前記体積に面する凸形状を有し、それにより、前記製造された光学装置は、凹形状を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変化する光強度は、前記外面の中心で最大値を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変化する光強度は、前記外面の周辺で最大値を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光照射は、空間光変調器を含むエミッタによって生成される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
光学装置を製造するためのシステムであって、
− 硬化性組成物のある体積を含有する容器と、
− 光照射のエミッタであって、前記容器を通して前記体積の外面を照射し、それにより前記体積の第1の部分を重合し、且つ前記電磁放射線に対する前記第1の部分の透過率を増加させるように構成され、それにより、前記体積の第2の部分は、前記外面及び前記重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記電磁放射線を照射することによって重合される、エミッタと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、システム。
【請求項16】
前記変化する光強度を生成するために前記エミッタを制御するための制御モジュールをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズなどの光学装置の製造に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、光学装置の製造方法及び対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
3D印刷技術を使用して光学レンズなどの光学装置を製造することが模索されている。3D印刷技術は、従来の方法に比べて大きい利点を提供するであろう。
【0004】
しかしながら、一部の3D印刷技術は、特に内部透明度及びこの種の製品に必要な界面の正確な形状により、光学装置の製造に適していない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに関連して、本発明は、硬化性組成物のある体積から光学装置を製造する方法であって、
− 前記体積の外面に光照射を照射することによって前記体積の第1の部分を重合し、それにより前記光照射に対する前記第1の部分の透過率を増加させるステップと、
− 前記体積の第2の部分を、前記外面及び重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記光照射を照射することによって重合するステップと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、方法を提供する。
【0006】
したがって、重合は、硬化性組成物の部分から部分へと連続的に行われ、これは、均質な重合した材料を得ることを可能にし、したがって良好な透明性を有する。
【0007】
加えて、特定の分布を有する光照射の使用のため、得られる光学装置の形状を光学要件に従って制御することができる。
【0008】
本発明は、以下の任意選択の(したがって非限定的な)態様も提供する:
− 前記出力は、前記外面の少なくとも1つの地点について経時的に変化している;
− 前記光照射は、紫外線範囲内である;
− 前記光照射は、可視範囲内である;
− 前記硬化性組成物は、光照射に感受性があり且つ光退色特性を有する光開始剤を含み、これは、前記硬化性組成物が、光照射により反応した後、光照射波長に対して透明になることを意味する;
− 前記光開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)又は2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(Irgacure TPO)である;
− 前記硬化性組成物は、アクリレートを含有する;
− 方法は、前記第1の部分を重合する前に硬化性組成物を脱ガスするステップを含む;
− 前記光学装置は、光学レンズである;
− 特に、光学装置は、眼科用レンズである;
− 前記硬化性組成物は、底部を備えた容器内にある;
− 光学装置は、底部から開始して重合によって形成される;
− 前記光照射は、前記底部を透過される;
− 前記底部は、前記体積に面する球面又は非球面の湾曲形状を有し、それにより、製造された光学装置の底部は、対応する湾曲形状を有する;
− 前記底部は、前記体積に面する凸形状を有し、それにより、製造された光学装置の底部は、凹形状を有する;
− 前記変化する光強度は、前記外面の中心で最大値を示し、これは、例えば、正の光学レンズを形成するために使用可能である;
− 前記変化する光強度は、前記外面の周辺で最大値を示し、これは、例えば、負の光学レンズを形成するために使用可能である;
− 前記変化する光強度は、第1の軸に沿って前記外面の周辺で最大値を示し、且つ前記第1の軸に垂直な軸に沿ってより低い値を示し、これは、例えば、トーリック光学レンズを形成するために使用可能である;
− 前記変化する光強度は、前記外面内の偏心位置で最大値を示し、これは、例えば、付加部分を有する光学レンズを形成するために使用可能である;
− 前記変化する光強度は、上記のパターンの組み合わせを示す;
− 前記光照射は、空間光変調器を含むエミッタによって生成される。
【0009】
本発明は、光学装置を製造するためのシステムであって、
− 硬化性組成物のある体積を含有する容器と、
− 光照射のエミッタであって、容器を通して前記体積の外面を照射し、それにより前記体積の第1の部分を重合し、且つ前記電磁放射線に対する前記第1の部分の透過率を増加させるように構成され、それにより、前記体積の第2の部分は、前記外面及び重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記電磁放射線を照射することによって重合される、エミッタと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、システムも提供する。
【0010】
このシステムは、前記変化する光強度を生成するために前記エミッタを制御するための制御モジュールも含み得る。
【0011】
提案された方法に関連して上記で提示された任意選択の特徴は、このシステムにも適用され得る。
【0012】
本発明は、光学レンズ及び装置又は眼科用要素及び装置など、あらゆる種類の光学装置及び要素に使用することができる。眼科用要素の非限定的な例は、セグメント化又は非セグメント化され得る単焦点又は多焦点レンズを含む矯正及び非矯正レンズ並びに視力を矯正、保護又は強化するために使用される他の要素を含み、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ及び眼鏡、ゴーグル並びにヘルメット内で見出されるものなどの保護レンズ又はバイザーを限定することなく含む。
【0013】
本発明の説明に役立つ実施形態は、添付の図面を参照して以下で詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光学装置を製造するシステムの第1の例を初期ステップにおいて示す。
図2図1のシステムを中間ステップにおいて示す。
図3図1のシステムを最終ステップにおいて示す。
図4】光学装置を製造するシステムの第2の例を初期ステップにおいて示す。
図5図4のシステムを最終ステップにおいて示す。
図6】光学装置を製造するシステムの第3の例を初期ステップにおいて示す。
図7図6のシステムを中間ステップにおいて示す。
図8図6のシステムを最終ステップにおいて示す。
図9】上記のシステムにあるような硬化性組成物を含有する容器に連続して適用される互いに異なる光分布を示す。
図10】上記のシステムにあるような硬化性組成物を含有する容器に連続して適用される互いに異なる光分布を示す。
図11】上記のシステムにあるような硬化性組成物を含有する容器に連続して適用される互いに異なる光分布を示す。
図12】これらの光分布を適用することにより得られた一片の重合した材料を示す。
図13】個別の異なる動作条件について、図1〜3を参照して上に記載したプロセスを使用して得られたレンズを示す。
図14】個別の異なる動作条件について、図1〜3を参照して上に記載したプロセスを使用して得られたレンズを示す。
図15】個別の異なる動作条件について、図1〜3を参照して上に記載したプロセスを使用して得られたレンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜3は、光学装置を製造するための例示的なシステムを使用して光学装置を製造する方法の3つの異なるステップをそれぞれ示す。
【0016】
このシステムは、硬化性組成物4のある体積を含有する容器2を含む。
【0017】
容器2は、硬化性組成物4の体積を保持することを可能にする底部6及び側壁8を含む。
【0018】
システムは、容器2に向かって、正確には底部6に向かって光ビームBを発する発光体10をさらに含む。
【0019】
使用される光のタイプは、例えば、紫外光又は可視光であり得る。
【0020】
発光体10は、例えば、コリメート光線を生成する光発生器(図示せず)と、光ビームBが(空間光変調器12のために制御可能な方法で)ビームB自体にわたって変化する光強度を有するようにコリメート光線に適用される空間光変調器12とを含む。空間光変調器12は、例えば、制御モジュールによる制御下で光ビーム内の光の分布を制御するように適合されている。したがって、空間分布(及び場合によりその時間的進化)は、ユーザが前記制御モジュールをプログラミングすることによって構成することができる。
【0021】
本例では、図1〜3に概略的に示されるように、光強度は、ビームBの周辺部よりもビームBの中心部でより高い。
【0022】
容器2の少なくとも底部6(及び場合により容器2全体)は、発光体10によって発せられる光に対して透明(又は少なくとも発光体10によって発せられる光に対して半透明)である。この目的で、容器は、例えば、石英で作られ得る。
【0023】
したがって、図1に示されるように、発光体10によって発せられる光は、ここでは容器2を通して(正確には容器2の底部6を通して)硬化性組成物4の体積の外面(ここでは底部6に面する外面)を照射する。光ビームBは、均一ではないため(ここでは空間光変調器12の使用のため)、この光照射は、第1の光強度と、第2の光強度と異なる前記第2の光強度との間で外面にわたって変化する光強度を有する。
【0024】
硬化性組成物4は、例えば、樹脂(例えば、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート又はPETIAなどのアクリレートなどのモノマーで作られたもの)及びビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)などの光開始剤を含む。
【0025】
可能な変形例によれば、硬化性組成物は、以下を含み得る:
− 2.2ビス(4−(アクリルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン(EO4mol)又はA−BPE−4(主な光学的及び機械的特性を提供するためのもの)(例えば、25wt%〜95wt%);
− アクリル酸イソボルニル又はA−IB(光学的及び機械的特性を調整するためのもの)(例えば、5wt%〜75wt%);
− 3−メチル−2−ブテン−1−オール(黄変を防ぐためのもの)(例えば、1wt%〜3wt%、ここでは2wt%);
− 2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート又はIrgacure TPO(光退色可能な光開始剤として)(例えば、1wt%〜5wt%、好ましくは2wt%〜3wt%)。
【0026】
硬化性組成物4の少なくとも一部(ここでは光開始剤)は、光退色特性を有し、すなわち光により反応した後、それが受ける光に対して透明になる。
【0027】
光のビームは、均一ではないため、硬化性組成物4の重合は、光強度が高い領域、ここではビームBの中心(したがって底部6の中心)で最初に発達し、図2に示すように第1の重合部分14の形成をもたらす。
【0028】
硬化性組成物4の光退色特性により、第1の重合部分14は、発光体10から受け取った光に対して透明になり、発光体10から受け取った光に対する第1の部分14の透過率は、増加する一方、第1の部分14は、重合する。
【0029】
したがって、第1の重合部分14の領域内で容器2の底部6を介して入る光は、(図2に概略的に示すように)第1の重合部分14を透過し、硬化性組成物4の体積の第2の部分16に達し、これにより(図3に示されるように)この第2の部分16の重合がもたらされる。
【0030】
すでに述べたように、光ビームBを横切る光強度の変化により、光強度が高い領域で重合がより急速に発達し、したがって、重合した材料の厚さは、容器2の底部6にわたって可変である。
【0031】
この場合、光の強度は、光ビームの中心で高く、その周辺に向かって減少するため、図2及び3に見られるように、重合した材料は、凸形状を有する。
【0032】
図3に示す最終状態では、得られた重合材料(第1の部分14及び第2の部分16を含む)は、光学レンズ18を形成する。この光学レンズ18は、容器2から取り出され、特に良好な表面状態を得るために、場合により最終硬化(後重合)などの後処理にかけられ得る。
【0033】
この点で、専用の付着防止(透明)層20を容器2の底部6と硬化性組成物4との間に介在させて、容器2からの光学レンズ18の取り出しを容易にし得る。
【0034】
まさに図1〜3を参照して記載した例では、容器2の底部6は、得られる光学レンズ18が平凸光学レンズであるように、硬化性組成物4に面する平面を有する。
【0035】
しかしながら、光学レンズの面の1つを画定する容器2の底部6は、以下で例示されるように、非平面形状を有することができる。
【0036】
図4及び図5は、光学装置を製造するシステムの別の実施形態を示す。
【0037】
前の実施形態と同様に、容器22は、硬化性組成物24のある体積を保持する。上記の硬化性組成物の例が本実施形態にも適用される。硬化性組成物(又は硬化性組成物の少なくとも不透明な化合物)は、上で説明したように光退色特性を有する。
【0038】
容器22は、底部26及び側壁28を有する。本実施形態では、硬化性組成物24の体積に面する底部26の表面27(ここでは硬化性組成物24の体積と接触している)、すなわち底部26の上面は、図4及び5に見られるように凸形状を有する。
【0039】
不均一な光ビームBが底部26の外面に適用される。この光ビームBは、ここでは、図1〜3の実施形態で使用される光ビームと同じタイプであり、したがって同様に生成することができる。したがって、光強度は、光ビームBの周辺部よりも中心部でより高い。
【0040】
容器22の底部26(少なくとも)は、光ビームBが硬化性組成物24のある体積の外面(すなわち、ここでは容器22の底部26の上面27と接触する表面)を照射するように、光ビームBに使用される光に対して透明である。
【0041】
図4に示す初期状態では、硬化性組成物24の体積のいずれの部分も依然として重合しておらず、したがって底部26を通る光ビームBによる照射は、(図5に概略的に示されている)この体積の第1の部分24に対応する底部26の近くの硬化性組成物24の体積の重合した領域をもたらす。
【0042】
光ビームは、不均一であるため(ここでは、光強度は、中心でより高い)、重合は、一部の領域(ここでは中心)で他の領域(ここでは周辺)よりも活発であり、その結果、第1の(重合した)部分34は、容器22の底部26にわたって変化する厚さ(ここでは、その中心に向かって増加する厚さ)を有する。
【0043】
したがって、初期ステップと最終ステップとの中間の時点で第1の部分34が重合し、硬化性組成物の光退色特性により第1の部分34の透過率が増加した。
【0044】
したがって、容器22の底部26を照射し、底部26を透過した光ビームBは、重合した第1の部分34を通って伝播し、それにより硬化性組成物24の体積の第2の部分36に到達し、第2の部分36が結果として重合する。
【0045】
第1の部分34に関して、第2の部分36の重合は、光強度がより高い領域でより速く、したがって、第2の(重合した)部分26は、容器22の底部26にわたって変化する厚さを有する(ここでは、厚さは、その中心に向かって増加する)。
【0046】
図5(光学装置、ここでは光学レンズ38を製造する方法の最終ステップに対応する)に示すように、重合した材料は、底部26の凸状上面27上に広がり、その中心に向かって厚さが増加する。したがって、重合した材料は、例えば、光学レンズとして使用できる凹凸レンズ38を形成することができる。
【0047】
前の実施形態について述べたように、容器22から取り出された光学レンズ38を例えば上記の光ビームBと同じ種類の光にさらすことにより、容器22から取り出した後、光学レンズ38に最終処理(重合後ステップ)を適用することができる。この重合後ステップにより、特に光学レンズ38の良好な表面状態を得ることが可能になる。
【0048】
図6〜8は、光学装置を製造するシステムのさらに別の例を示す。
【0049】
図6に示される最初のステップにおいて、硬化性組成物44のある体積が容器42に入れられる。
【0050】
ここで、容器42は、図4及び5の容器22と同一であり、容器42は、底部46及び側壁48を有し、硬化性組成物44の体積に面する底部46の表面47(ここでは、硬化性組成物44の体積と接触する)、すなわち底部46の上面は、凸形状を有する。
【0051】
硬化性組成物(又は硬化性組成物の少なくとも不透明成分)は、上で説明したように光退色特性を有する。
【0052】
不均一な光ビームB’が底部26の外面に適用される。この光ビームB’は、中心よりも周辺で高い光強度を有する。換言すると、光ビームB’の光強度は、光ビームB’の中心に向かって減少する。そのような光ビームB’は、図1〜3を参照して上述したように、空間光変調器を使用して得ることができる。
【0053】
容器42の底部46(少なくとも)は、光ビームB’が硬化性組成物44の体積の外面(すなわち、ここでは容器42の底部46の上面47と接触する表面)を照射するように、光ビームB’に使用される光に対して透明である。
【0054】
図6に示す初期状態では、硬化性組成物44の体積のいずれの部分も依然として重合していないため、底部46を通した光ビームB’による照射は、底部46の近くにおいて硬化性組成物44の体積の重合する領域をもたらす。しかしながら、光ビームは、不均一であるため(光強度は、光ビームB’の周辺でより高い)、重合は、特に、図7に概略的に示される第1の部分54において硬化性組成物44の体積の周辺で始まる。
【0055】
結果として、図7に示される中間ステップでこれらの第1の部分54が重合し、これらの第1の部分54の透過率が硬化性組成物の光退色特性により増加した。
【0056】
したがって、容器42の底部46を照射し、底部46を透過した光ビームB’は、図7に概略的に示すように、重合した第1の部分54を通って伝播し、それにより硬化性組成物44の体積の第2の部分56に到達し、結果として第2の部分56が重合する。
【0057】
光ビームB’は、均一ではないため、このプロセスは、光強度が高い領域でより効果的であり、これらの(ここでは周辺の)領域の厚さが大きくなる。
【0058】
その結果、図8に示す最終ステップでは、重合した材料は、底部46の凸状上面47上に広がり、その中心に向かって厚さが減少する。したがって、重合した材料は、例えば、光学レンズとして使用できる二重凹レンズ58を形成することができる。
【0059】
先の実施形態について述べたように、容器42から取り出した後、最終処理(重合後ステップ)を光学レンズ58に適用することができる。この重合後ステップにより、特に光学レンズ58の良好な表面状態を得ることが可能になる。
【0060】
ここで記載した例では、硬化性組成物の体積を照射する光ビームB、B’は、空間的に不均一であるが、経時的に一定の特性を有する。他の実施形態では、次に説明するように、光ビーム内の光分布は、経時的に変化することができる。
【実施例】
【0061】
実施例A
図12に示される可変厚さを有する重合した材料片は、容器(図1の容器2と同一)内に置かれた硬化性組成物(38cmの体積を有する)を、図9〜11にそれぞれ示された3つの異なる光分布を連続して有する光ビームにさらすことにより得られた。
【0062】
使用された硬化性組成物は、モノマーとしてのPETIA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート)と、光開始剤としての1%(重量において)のビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)とを含む。使用した光は、可視光である。
【0063】
図9〜11において、白い領域は、高強度(例えば、10W.m−2〜100W.m−2、ここでは約40W.m−2)の光ビームの部分を表し、黒い領域は、光強度が低い(又はない)光ビームの部分を表す。
【0064】
光ビームにさらされる前に硬化性組成物を脱ガスし(ここでは0.09MPaで1時間)、溶存Oを除去した。
【0065】
図9に示す光分布を5秒間適用する。
【0066】
次に、図10に示す光分布を5秒間適用する。
【0067】
次に、図11に示す光分布を10秒間適用する。
【0068】
得られた重合した材料片を図12に示す。
【0069】
3つの異なる厚さが明確に見える:
− e=1.5mm(図11のビームの右側部分の10秒間の照射により得られた);
− e=2.6mm(ビームの中央部分の15秒間の照射により得られた);
− e=3.35mm(ビームの左側部分の20秒間の照射により得られた)。
【0070】
実施例B
図13〜15は、個別の異なる動作条件について、図1〜3を参照して前述したプロセスを使用して得られた平凸レンズをそれぞれ示す。
【0071】
使用された硬化性組成物は、モノマーとしてのPETIA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート)と、光開始剤としての1%(重量において)のビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)とを含む。使用した光は、可視光である。
【0072】
光ビームの光分布は、光ビームの中心の周りで回転対称性を有する(この例では、中心で光強度が最大である)。
【0073】
得られたレンズの動作条件と特性(最大厚さemax及び最小厚さemin)とを以下の表に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
上の実験は、本発明の例示的な実施形態のみに対応し、したがって、記載した値は、限定として解釈されるべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2020年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物のある体積から光学装置を製造する方法であって、
− 前記体積の外面に光照射を照射することによって前記体積の第1の部分を重合し、それにより前記光照射に対する前記第1の部分の透過率を増加させるステップと、
− 前記体積の第2の部分を、前記外面及び前記重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記光照射を照射することによって重合するステップと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、前記第1の光強度と異なる第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、方法。
【請求項2】
前記出力は、前記外面の少なくとも1つの地点について経時的に変化している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光照射は、紫外線範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光照射は、可視範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性組成物は、前記光照射に感受性があり且つ光退色特性を有する光開始剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物は、アクリレートを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の部分を重合する前に前記硬化性組成物を脱ガスするステップを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学装置は、光学レンズである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物は、底部を備えた容器内にあり、前記光学装置は、前記底部から開始して重合によって形成され、前記光照射は、前記底部を透過される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記底部は、前記体積に面する凸形状を有し、それにより、前記製造された光学装置は、凹形状を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変化する光強度は、前記外面の中心で最大値を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変化する光強度は、前記外面の周辺で最大値を示す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光照射は、空間光変調器を含むエミッタによって生成される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
光学装置を製造するためのシステムであって、
− 硬化性組成物のある体積を含有する容器と、
− 光照射のエミッタであって、前記容器を通して前記体積の外面を照射し、それにより前記体積の第1の部分を重合し、且つ前記電磁放射線に対する前記第1の部分の透過率を増加させるように構成され、それにより、前記体積の第2の部分は、前記外面及び前記重合された第1の部分を通して前記第2の部分に前記電磁放射線を照射することによって重合される、エミッタと
を含み、前記光照射は、第1の光強度と、前記第1の光強度と異なる第2の光強度との間で前記外面にわたって変化する光強度を有する、システム。
【請求項16】
前記変化する光強度を生成するために前記エミッタを制御するための制御モジュールをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【国際調査報告】