特表2020-529102(P2020-529102A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-529102三次元構造電極及びそれを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-529102(P2020-529102A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】三次元構造電極及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20200904BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20200904BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200904BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20200904BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20200904BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20200904BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20200904BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20200904BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20200904BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20200904BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20200904BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20200904BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/62 C
   H01M4/38 Z
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01G11/26
   H01G11/40
   H01G11/38
   H01G11/68
   H01G11/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-503724(P2020-503724)
(86)(22)【出願日】2018年11月8日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】KR2018013580
(87)【国際公開番号】WO2019093800
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】10-2017-0148354
(32)【優先日】2017年11月8日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イン−ソン・オム
(72)【発明者】
【氏名】サン−ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン−ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ−ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ−ミョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ−ヒョン・イ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA12
5E078BA27
5E078BA30
5E078BA45
5E078BA52
5E078BA53
5E078BA56
5E078BA69
5E078BA71
5E078BA73
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA11
5H050BA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA02
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA09
5H050FA13
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA12
(57)【要約】
複数の高分子繊維を含む多孔性不織布と、前記複数の高分子繊維の間に位置し、活物質粒子及び第1伝導性物質を備える活物質複合体と、前記活物質複合体の外面に位置する第2伝導性物質とを含み、前記複数の高分子繊維によって相互連結された気孔構造が形成され、前記相互連結された気孔構造内に前記活物質複合体及び前記第2伝導性物質が均一に充填されて三次元充填構造を形成した三次元構造電極、及び前記三次元構造電極を含む電気化学素子を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の高分子繊維を含む多孔性不織布と、
前記複数の高分子繊維の間に位置し、活物質粒子及び第1伝導性物質を備える活物質複合体と、
前記活物質複合体の外面に位置する第2伝導性物質とを含み、
前記複数の高分子繊維によって相互連結された気孔構造が形成され、前記相互連結された気孔構造内に前記活物質複合体及び前記第2伝導性物質が均一に充填されて三次元充填構造を形成した、三次元構造電極。
【請求項2】
前記多孔性不織布が、前記複数の高分子繊維が三次元的に不規則且つ連続的に連結された集合体である、請求項1に記載の三次元構造電極。
【請求項3】
前記三次元構造電極の気孔度が、5〜95体積%である、請求項1または2に記載の三次元構造電極。
【請求項4】
前記三次元構造電極が、活物質粒子100重量部を基準にして、5〜50重量部の多孔性不織布、1〜50重量部の第1伝導性物質、及び0.1〜20重量部の第2伝導性物質を含む、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項5】
前記複数の高分子繊維の平均直径が、0.001〜1000μmである、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項6】
前記活物質粒子の平均直径が、0.001〜30μmである、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項7】
前記三次元構造電極の厚さが、1〜1000μmである、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項8】
前記活物質複合体及び第2伝導性物質を含む電極物質の面積当り重量が、0.001mg/cm〜1g/cmである、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項9】
前記三次元構造電極が、複数個の電極が積層された多層構造である、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項10】
前記活物質複合体及び第2伝導性物質を含む電極物質の面積当り重量が、0.002g/cm〜10g/cmである、請求項9に記載の三次元構造電極。
【請求項11】
前記複数の高分子繊維を構成する高分子が、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アガロース、アルジネート、ポリビニリデンヘキサフルオロプロピレン、ポリウレタン、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体からなる群より選択された少なくとも一つである、請求項1〜請求項10のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項12】
前記活物質粒子が、炭素系物質、リチウム金属系酸化物、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、硫黄、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり、
前記リチウム金属系酸化物が、鉄系酸化物、コバルト系酸化物、スズ系酸化物、チタン系酸化物、ニッケル系酸化物、亜鉛系酸化物、マンガン系酸化物、ケイ素酸化物、バナジウム系酸化物、銅系酸化物、及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つである、請求項1〜請求項11のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項13】
前記第1伝導性物質及び第2伝導性物質が、それぞれ独立して、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金ナノワイヤ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、これらの誘導体及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つである、請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項14】
前記三次元構造電極が、正極または負極である、請求項1〜請求項13のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極。
【請求項15】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に位置する分離膜と、前記正極、負極及び分離膜に含浸された電解質とを含み、
前記正極及び前記負極の少なくとも一つは、請求項1〜請求項14のうちいずれか一項に記載の三次元構造電極である電気化学素子。
【請求項16】
前記電気化学素子が、リチウム二次電池、スーパーキャパシタ、リチウム−硫黄電池、ナトリウムイオン電池、リチウム−空気電池、亜鉛−空気電池、アルミニウム−空気電池及びマグネシウムイオン電池を含む群から選択されたいずれか一つである、請求項15に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造電極及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2017年11月8日出願の韓国特許出願第10−2017−0148354号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォン、タブレットPC、高性能ノートパソコンなどのIT電子機器に対する市場の需要が増加している。また、地球温暖化及び資源枯渇に対する対策の一環として、電気自動車、スマートグリッドのような大容量電力貯蔵装置に対する要求が高まり、二次電池を始めとした電気化学素子に対する需要は急増している。
【0004】
特に、リチウム二次電池は、優れたサイクル寿命及び高いエネルギー密度のため、最も注目されている電気化学素子である。しかし、高出力及び高容量の要求に応えるためには、それを満足する電気化学素子に対する改善策が必要な実情である。
【0005】
これに関連して、電気化学素子の容量に寄与する電極は、金属集電体と、その上に塗布された活物質、導電材及びバインダーの混合物とからなるが、このような電極の構成物質のうち、実質的に電気化学素子の容量及びエネルギー密度に寄与するものは活物質だけである。そこで、活物質の多様な構造及び成分に対する研究が行われてきた。
【0006】
しかし、高い理論容量を有する活物質であっても、固有の電子及びイオン伝導度が低いため可逆容量が十分ではない。また、このような短所を補うため、電極を設計するとき、過量の伝導性物質が含まれるようになるが、これは電池のエネルギー密度向上に重大な問題になっている。
【0007】
したがって、導電材及びバインダーなどの添加物質を最小化することで、電極の重量当り容量または体積当り容量が増加するようになり、結果的に電気化学素子のエネルギー密度を高めることができる。
【0008】
これと共に、金属集電体の代わりに軽い素材の集電体を使用することが望ましい。金属集電体の場合、電極内でかなりの重量及び体積を占めるため、電極の重量当り容量、体積当り容量を低減させる原因の一つになるためである。
【0009】
また、導電材の役割をする伝導性物質を使用すれば、電極が均一な電子伝導ネットワークを有し得る。電極内の活物質の間に均一な電子伝導ネットワークを形成することで、電子伝導性を向上させ、その結果、電気化学素子の出力特性を改善することができる。
【0010】
このように、導電材及びバインダーなどの添加物質を最小化し、金属集電体の代わりに軽い素材の集電体を使用し、優れた電子伝導ネットワークを形成した電極を電気化学素子に適用することで、高容量、高出力及び高エネルギー密度などの優れた特性を実現することができるが、未だこのような三つの面を全て考慮した電極に関する研究は十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の問題点を解決するため、本発明は、電極層内の添加物質の最小化、軽い素材の集電体、及び優れた電子伝導ネットワークの三つの面を全て満たす三次元構造電極を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、上記三次元構造電極を含む電気化学素子を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、
複数の高分子繊維を含む多孔性不織布と、
前記複数の高分子繊維の間に位置し、活物質粒子及び第1伝導性物質を備える活物質複合体と、
前記活物質複合体の外面に位置する第2伝導性物質とを含み、
前記複数の高分子繊維によって相互連結された気孔構造(interconnected porous network)が形成され、
前記相互連結された気孔構造内に前記活物質複合体及び前記第2伝導性物質が均一に充填されて三次元充填構造を形成した、三次元構造電極が提供される。
【0014】
前記多孔性不織布は、前記複数の高分子繊維が三次元的に不規則且つ連続的に連結された集合体であり得る。
【0015】
一方、前記三次元構造電極の気孔度は、5〜95体積%であり得る。
【0016】
前記三次元構造電極は、活物質粒子100重量部を基準にして、5〜50重量部の多孔性不織布、1〜50重量部の第1伝導性物質、及び0.1〜20重量部の第2伝導性物質を含み得る。
【0017】
前記複数の高分子繊維の平均直径は、0.001〜1000μmであり得る。
【0018】
前記活物質粒子の平均直径は、0.001〜30μmであり得る。
【0019】
前記三次元構造電極の厚さは、1〜1000μmであり得る。
【0020】
前記三次元構造電極の面積当り重量は、0.001mg/cm〜1g/cmであり得る。
【0021】
前記三次元構造電極は、複数個の電極が積層された多層構造であり得る。
【0022】
このような多層構造である三次元構造電極の面積当り重量は、0.002g/cm〜10g/cmであり得る。
【0023】
前記複数の高分子繊維を構成する高分子は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アガロース、アルジネート、ポリビニリデンヘキサフルオロプロピレン、ポリウレタン、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体からなる群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、多孔性不織布にカーボンナノチューブ(carbon nanotube)、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド及びカーボンナノ繊維(carbon nanofiber)を含む群より選択された少なくとも一つをさらに含み得る。
【0025】
前記活物質粒子は、炭素系物質、リチウム金属系酸化物、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、硫黄(S)、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり、前記酸化物は、鉄系酸化物、コバルト系酸化物、スズ系酸化物、チタン系酸化物、ニッケル系酸化物、亜鉛系酸化物、マンガン系酸化物、ケイ素酸化物、バナジウム系酸化物、銅系酸化物及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0026】
前記第1伝導性物質及び第2伝導性物質は、それぞれ独立して、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金ナノワイヤ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、これらの誘導体及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0027】
前記三次元構造電極は、極性を有し得る。
【0028】
前記三次元構造電極は、正極及び負極から選択されたいずれか一つであり得る。
【0029】
本発明の他の態様によれば、
正極と、負極と、前記正極と負極との間に位置する分離膜と、前記正極、負極及び分離膜に含浸された電解質とを含み、
前記正極及び前記負極の少なくとも一つは、上述した三次元構造電極である、電気化学素子が提供される。
【0030】
前記電気化学素子は、リチウム二次電池、スーパーキャパシタ、リチウム−硫黄電池、ナトリウムイオン電池、リチウム−空気電池、亜鉛−空気電池、アルミニウム−空気電池及びマグネシウムイオン電池を含む群から選択されたいずれか一つであり得る。
【0031】
本発明のさらに他の態様によれば、
活物質と第1伝導性物質とを複合化して活物質複合体を製造する段階と、
高分子を溶媒に溶解して高分子溶液を製造する段階と、
前記活物質複合体及び第2伝導性物質を分散媒に分散させてコロイド溶液を製造する段階と、
前記高分子溶液及び前記コロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階と、
前記三次元構造繊維を圧着する段階とを含む三次元構造電極の製造方法が提供される。
前記高分子溶液及び前記コロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階は、複数の高分子繊維を含む多孔性不織布を形成し、前記多孔性不織布に含まれた複数の高分子繊維の間に、前記活物質粒子及び前記伝導性物質を均一に充填して気孔を形成する工程を含み得る。
【0032】
前記活物質粒子と第1伝導性物質との複合化は、粉砕装置を用いて活物質粒子と第1伝導性物質とを混合することで行われ得る。
【0033】
前記活物質粒子と第1伝導性物質とを複合化するとき、均一な複合体を生成するための分散剤が添加され得る。
【0034】
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0035】
具体的には、前記高分子溶液及び前記コロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階は、デュアルエレクトロスピニング、デュアルエレクトロスプレー、デュアルスプレー及びこれらの組合せを含む群より選択されたいずれか一つの方法で行われ得る。
【0036】
前記高分子溶液の紡糸速度は2〜15μl/minであり、前記コロイド溶液の紡糸速度は30〜150μl/minであり得る。
【0037】
前記高分子溶液内の高分子の含量は、前記高分子溶液の総重量に対し、5〜30重量%であり得る。
【0038】
前記溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0039】
前記コロイド溶液内の活物質粒子の含量は、前記コロイド溶液の総重量に対し、1〜50重量%であり得る。
【0040】
前記コロイド溶液は、分散剤をさらに含み得、前記コロイド溶液内の分散剤の含量は、前記コロイド溶液の総重量に対し、0.001〜10重量%であり得る。
【0041】
具体的には、前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0042】
前記分散媒は、脱イオン水、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノール、ヘキサノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−メチルピロリドン及びこれらの組合せを含む群より選択されたいずれか一つであり得る。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一実施形態によれば、上述した活物質/伝導性物質複合体の三次元密集充填構造によって添加物質を最小化し、軽い素材の集電体を使用することで電極の重量当り容量及び体積当り容量を向上させながら、均一な電子伝導ネットワークを形成することで電気化学素子の高出力特性に寄与する、三次元構造電極を提供することができる。
【0044】
本発明の他の実施形態によれば、電極の重量当り容量及び体積当り容量に優れ、高エネルギー密度及び高出力特性を有する電気化学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例1で製造された活物質/第1伝導性物質の活物質複合体を観察した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】本発明の一実施形態による三次元構造電極とともに、本発明の他の実施形態による三次元構造電極の製造方法を概略的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による三次元繊維構造電極を含むリチウム二次電池モジュールの概略図である。
図4】本発明の実施例1によって製造された電極断面を高倍率及び低倍率で観察したSEMイメージである。
図5】本発明の実施例1によって製造された電極の外観写真である。
図6】本発明の実施例1によって製造された三次元構造電極、及び比較例1、比較例2、比較例3によって製造された電極の電子伝導度を測定して比べた結果である。
図7】本発明の実施例1によって製造された三次元構造電極、及び比較例1によって製造された電極を繰り返して曲げながら抵抗変化を測定して比べた結果である。
図8】本発明の実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3によって製造されたリチウム二次電池に対し、放電率を変えながら活物質粒子の重量当り放電容量を観察した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、これは例示として提示されるものに過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によって定義される。
【0047】
特に定義しない限り、本明細書で使われるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者に共通して理解される意味で使用され得る。明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とすることは、特に言及しない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をもさらに含み得ることを意味する。また、単数の表現は、特に言及しない限り、複数の形態も含む。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態による三次元構造電極とともに、本発明の他の実施形態による三次元構造電極の製造方法を概略的に示した図である。以下、図2を参照して説明する。なお、明細書全体に亘って同一部材番号は同一構成要素を示す。
【0049】
本発明の一態様によれば、複数の高分子繊維を含む多孔性不織布と、上記複数の高分子繊維の間に位置し、活物質粒子及び第1伝導性物質を備える活物質複合体と、上記活物質複合体の外面に位置する第2伝導性物質とを含み、上記複数の高分子繊維によって相互連結された気孔構造が形成され、上記相互連結された気孔構造内に上記活物質複合体及び上記第2伝導性物質が均一に充填されて三次元充填構造を形成した、三次元構造電極が提供される。
【0050】
図2を参照すれば、上記三次元構造電極は、三次元充填構造(super lattice)であって、上記多孔性不織布に含まれた複数の高分子繊維110が支持体の役割をし、上記複数の高分子繊維110の間には、上記活物質粒子120/第1伝導性物質130の活物質複合体、及び上記第2伝導性物質140が均一に充填され、上記複数の高分子繊維110によって相互連結された気孔構造が形成された形態である。
【0051】
これは、添加物質の最小化、軽い素材の集電体、及び優れた電子伝導ネットワークの三つの面がすべて考慮された形態の電極である。
【0052】
具体的には、別途のバインダーを含まないことで添加物質を最小化し、金属集電体の代わりに軽い素材である多孔性不織布を使用することで、電極の重量当り容量及び体積当り容量を向上させることができる。
【0053】
さらに、上記三次元充填構造内の活物質粒子/第1伝導性物質の活物質複合体が上記第2伝導性物質に囲まれた形態を有することで、電子伝導ネットワークを均一化して電気化学素子の高出力特性に寄与でき、これは一般的な電極と比べて、放電率特性が向上したものである。特に、電子伝導性の良くない活物質粒子を適用する場合も、出力特性を極大化することができる。
【0054】
以下、本発明の一実施形態で提供する三次元構造電極についてより詳しく説明する。
【0055】
上述したように、上記三次元構造電極は、上記多孔性不織布に含まれた複数の高分子繊維110が三次元的に不規則且つ連続的に連結された集合体を形成することで、不均一な多数の空間を形成するようになる。
【0056】
このように形成された空間の間に、上記活物質粒子120/第1伝導性物質130を含む活物質複合体、及び上記第2伝導性物質140が均一に充填され、上記複数の高分子繊維110によって相互連結された気孔構造が形成される。
【0057】
このとき、第1伝導性物質と活物質粒子との複合体を形成することで、単なる活物質ナノ粒子ではなく、準二次粒子(Quasi−secondary particle)が形成されるため、コロイド溶液などを用いて活物質粒子と伝導性物質とを単に混合して得られた混合物とはその構造及び性能が異なる。
【0058】
上記活物質複合体は、第1伝導性物質及び活物質粒子から構成された二次粒子であり、上記二次粒子の内部及び表面に第1伝導性物質が位置し得る。したがって、上記二次粒子の内部にある第1伝導性物質は、上記活物質粒子同士を連結及び固定させる結合剤の役割を果たし、同時に、上記二次粒子の表面に位置した第1伝導性物質は、隣接する活物質複合体の表面に位置した他の第1伝導性物質、及び第2伝導性物質と連結する役割を果たすことができる。
【0059】
その結果、本発明の一実施形態による三次元構造電極は、活物質複合体内の第1伝導性物質によって活物質複合体を構成する活物質粒子同士の電子伝導ネットワークが形成され、さらに、活物質複合体の外面に形成された第2伝導性物質によって活物質複合体同士も均一な電子伝導ネットワークを形成することができる。
【0060】
具体的には、上記三次元構造電極の気孔度は、5〜95体積%であり得る。上記気孔度が上記の範囲内である場合、電解質を容易に吸収できるだけでなく、イオンの移動度を適切に調節することができ、電気化学素子の性能改善に寄与することができる。
【0061】
また、上記気孔度が上記の範囲を満足する場合、電極のローディング量が体積に比べて少な過ぎるという問題が発生せず、上記活物質粒子及び上記伝導性物質間の距離が適切に制御されて電子伝導ネットワークを形成し易く、三次元構造電極のイオン伝導性を容易に維持することができる。
【0062】
より具体的には、上記三次元構造電極の気孔度は、30〜90体積%であり得、この場合、上記三次元構造電極のイオン伝導性が一層高まり、機械的強度を向上させることができる。
【0063】
さらに、上記三次元構造電極の気孔度は、上記活物質粒子の直径または含量によって制御可能であるが、これについては後述する。
【0064】
一方、上記三次元構造電極に含まれたそれぞれの物質の含量について、以下のように説明する。
【0065】
上記三次元構造電極内の多孔性不織布の含量は、上記三次元構造電極内の活物質粒子100重量部を基準にして、5〜50重量部、詳しくは10〜40重量部、より詳しくは15〜30重量部であり得る。金属集電体の代わりに上記の範囲の多孔性不織布を含むことで、電極の重量当り容量及び体積当り容量を増大させることができる。
【0066】
上記多孔性不織布の含量が上記の範囲を満足する場合、多孔性不織布が支持体の役割を十分果たすことによって、三次元構造電極の構造を維持することができ、活物質粒子及び上記伝導性物質が適切に含まれて電極の電子伝導性が低下する問題を防止することができる。
【0067】
また、活物質粒子の含量に基づいた上記多孔性不織布の含量が上記の範囲を満足する場合、電気化学素子の容量及びエネルギー密度を向上でき、上記の範囲の三次元構造電極の気孔度を形成するのに寄与することができる。これは、上記活物質粒子が上記三次元構造電極を構成する物質のうち電気化学素子の容量及びエネルギー密度の発現に実質的に寄与する要素であり、上記三次元構造電極内の活物質粒子の含量が上記三次元構造電極の気孔度を決定する要素の一つになるためである。
【0068】
活物質粒子とともに活物質複合体を構成する上記第1伝導性物質の含量は、活物質粒子100重量部を基準にして、1〜50重量部、詳しくは5〜40重量部、より詳しくは10〜30重量部であり得る。
【0069】
上記第1伝導性物質の含量がこのような範囲を満足する場合、上記活物質粒子と上記第1伝導性物質との間の電子伝導ネットワークが容易に形成され、それにより電極の寿命特性及び出力特性が改善され、活物質の体積膨張が生じても電子伝導ネットワークを維持することができる。
【0070】
上記第2伝導性物質の含量は、活物質粒子100重量部を基準にして、0.1〜20重量部、詳しくは1〜15重量部、より詳しくは5〜10重量部であり得る。上記第2伝導性物質の含量がこのような範囲を満足する場合、電極を製造するとき、紡糸溶液の分散状態が安定的に維持され、電極の物理的変形が起きても電子伝導ネットワークを維持することができる。このような観点から、上記第2伝導性物質は、第1伝導性物質に比べて縦横比が大きいほど、電極の物性を向上させ易い。
【0071】
第2伝導性物質なく、活物質粒子及び第1伝導性物質を備える活物質複合体のみで多孔性不織布と電極を構成する場合、活物質複合体内に閉じ込められている第1伝導性物質のみでは活物質複合体間の伝導性を付与することができない。第2伝導性物質が活物質複合体同士の間に位置して、これら活物質複合体の外面で相互に接しながら連結されて位置することで、活物質複合体の間に伝導性を付与可能な均一な電子伝導ネットワークを形成できるようになる。
【0072】
第2伝導性物質の含量は、第1伝導性粒子100重量部を基準にして、0.2〜2000、詳しくは2.5〜300、より詳しくは10〜100であり得る。上記の重量比を満足する場合、均一な電子伝導ネットワークの連結によって電子移動を極大化することができる。
【0073】
上記複数の高分子繊維の平均直径は、0.001〜1000μm、詳しくは0.005〜50μm、より詳しくは0.01〜5μmであり得る。上記の範囲の平均直径を有する複数の高分子繊維が三次元的に集合体を形成することで、上記活物質粒子及び上記伝導性物質が充填され易い空間を確保でき、均一な気孔構造を有するため、電極内の電解質の吸収及びイオンの移動が円滑になる。
【0074】
また、上記の平均直径の範囲を満足する場合、上記複数の高分子繊維によって形成される支持体の厚さが適切に制御されて、上記活物質複合体及び第2伝導性物質が充填される気孔を確保でき、上記支持体の役割を果たすのに十分な物性を有し得る。具体的には、上記複数の高分子繊維の平均直径は、約0.01〜1μmであり得、この場合、上記の効果が極大化される。
【0075】
上記活物質粒子の平均直径は、0.001〜30μm、詳しくは0.001〜10μmであり得る。このような範囲の平均直径を有する活物質粒子は、上記三次元構造電極の気孔度を上述した範囲に制御するのに寄与する。また、後述する三次元電極の製造方法において、上記活物質粒子を含むコロイド溶液内の分散性を向上させ、デュアルエレクトロスピニング法の問題発生を最小化することで、最終的に収得される三次元構造電極の気孔を均一にすることができる。
【0076】
また、上記活物質粒子の平均直径がこのような範囲を満足する場合、電極製造のための紡糸溶液の分散状態が維持され、工程中に粒子を取り扱い易い。
【0077】
上記三次元構造電極の面積当り重量は、0.001mg/cm〜1g/cm、詳しくは0.01mg/cm〜0.1g/cm、より詳しくは0.5mg/cm〜20mg/cmであり得る。上記三次元構造電極内の添加物質を最小化し、金属集電体の使用を避けて上記多孔性不織布を使用することで、このように電極の面積当り重量が改善された。その結果、電極のエネルギー密度、及び電気化学素子の容量が増大される。
【0078】
一方、上記三次元構造電極が単層で形成される場合、その面積当り重量が1g/cmを超過することができない。
【0079】
これに関連して、上記三次元構造電極は、複数個の電極が多層構造を形成したものであり得る。それによって、上記三次元構造電極内の活物質複合体及び第2伝導性物質を含む電極物質のローディング量が極大化でき、その結果、電気化学素子の容量及びエネルギー密度を改善することができる。
【0080】
具体的には、上記多層構造である三次元構造電極における面積当り電極物質の重量(ローディング量)は、0.002g/cm〜10g/cm、0.005g/cm〜10g/cm、または、0.007g/cm〜10g/cmであり得る。
【0081】
これとは独立的に、上記三次元構造電極の厚さは、1〜1000μmであり得る。上記の範囲内で、厚さが厚くなるほど、電極のエネルギー密度が向上される。
【0082】
一般に、電極の厚さが厚くなるほど、厚さ方向の電子伝導性が低下して電池の出力特性が減少するという問題がある。しかし、上記三次元構造電極の場合、上記の厚さ範囲で、厚さ方向でも円滑な電子伝導ネットワークが維持される利点がある。
【0083】
一方、上記三次元構造電極に含まれた各物質についての詳しい説明は、以下のようである。
【0084】
上記複数の高分子繊維は、不均一に集合されて上記多孔性不織布を形成できるものであれば特に限定されないが、上記複数の高分子繊維を構成する高分子が耐熱性高分子であれば、電極の熱安定性の確保に有利である。
【0085】
具体的には、上記複数の高分子繊維を構成する高分子は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アガロース、アルジネート、ポリビニリデンヘキサフルオロプロピレン、ポリウレタン、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体からなる群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、多孔性不織布にカーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド及びカーボンナノ繊維を含む群より選択された少なくとも一つをさらに含み得る。この場合、上記多孔性不織布の強度及び電子伝導度を向上させることができる。
【0087】
上記活物質粒子は、上述したリチウム金属系酸化物、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、硫黄(S)、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。具体的には、リチウム金属系酸化物及びその誘導体は、正極活物質として知られており、これを適用した電極は正極になり得る。一方、酸化物、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、硫黄(S)及びこれらの誘導体は、負極活物質として知られており、これを適用した電極は負極になり得る。
【0088】
また、上記活物質粒子は、その表面が炭素系化合物でコーティングされたものであり得る。これについては一般に周知された通りであるため、詳しい説明を省略する。
【0089】
上記活物質粒子のうちリチウム金属系酸化物は、リチウムニッケル系酸化物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウムチタン系酸化物、リチウムニッケルマンガン系酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物、リチウムリン酸鉄系酸化物、リチウムリン酸バナジウム系酸化物、リチウムリン酸マンガン系酸化物、リチウムケイ酸マンガン系酸化物、リチウムケイ酸鉄系酸化物、及びこれらの組合せを含む群から選択された少なくとも一つであり得る。
【0090】
すなわち、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組合せの金属と、リチウムとの複合酸化物のうち一種以上を使用することができる。その具体的な例としては、以下の化学式のうちいずれか一つで表される化合物が挙げられる。
【0091】
Li1−b(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);Li1−b2−c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiE2−b4−c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiNi1−b−cCoα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiNi1−b−cCo2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cCo2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cMnα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiNi1−b−cMn2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cMn2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiNiG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiCoG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMnG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiTO;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、Li(PO、LiTi12、LiMnSiO、LiFeSiO
【0092】
上記の化学式において、AはNi、Co、Mnまたはこれらの組合せであり、RはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組合せであり、DはO、F、S、Pまたはこれらの組合せであり、EはCo、Mnまたはこれらの組合せであり、ZはF、S、Pまたはこれらの組合せであり、GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組合せであり、QはTi、Mo、Mnまたはこれらの組合せであり、TはCr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組合せであり、JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組合せである。
【0093】
さらに、上記活物質粒子のうち酸化物は、鉄系酸化物、コバルト系酸化物、スズ系酸化物、チタン系酸化物、ニッケル系酸化物、亜鉛系酸化物、マンガン系酸化物、ケイ素酸化物、バナジウム系酸化物、銅系酸化物、及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0094】
すなわち、Fe、Co、SnO、TiO、NiO、Mn、Si、V、Cu及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つであり得る(0.90≦x≦2.2、0.9≦y≦6)。
【0095】
具体的には、後述する実施例では、上記活物質粒子として過剰リチウム化酸化物(OLO;Over−Lithiated Oxide、0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65)を選択した。
【0096】
一方、上記第1伝導性物質及び第2伝導性物質は、電子伝導ネットワークを形成可能な物質であれば特に限定されず、一次元(1D)または二次元(2D)形態のカーボン、金属あるいは伝導性高分子化合物が使用され得る。
【0097】
例えば、上記第1伝導性物質及び第2伝導性物質は、それぞれ独立して、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金ナノワイヤ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、これらの誘導体及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、上記第1伝導性物質及び第2伝導性物質は、それぞれ独立して、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド、または、これらのうち二つ以上の混合物であり得る。また、本発明の一実施形態によれば、上記第1伝導性物質及び第2伝導性物質は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキサイド、還元されたグラフェンオキサイド、または、これらのうち二つ以上の混合物の外に、銀ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金ナノワイヤ、ポリピロール、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、これらの誘導体、または、これらの混合物をさらに含み得る。
【0099】
上記カーボンナノチューブとしては、多重壁カーボンナノチューブ(multi−wall carbon nanotube、MWCNT)などを使用し得る。
【0100】
以下、上記三次元構造電極について説明する。
【0101】
上記三次元構造電極は、極性を有し得る。この場合、電解質に対して優れた濡れ性(wettability)を実現することができる。
【0102】
上記三次元構造電極は、正極及び負極から選択されたいずれか一つであり得る。
【0103】
上記三次元構造電極は、活物質と第1伝導性物質とを複合化して活物質複合体を製造する段階と、高分子を溶媒に溶解して高分子溶液を製造する段階と、上記活物質複合体及び第2伝導性物質を分散媒に分散させてコロイド溶液を製造する段階と、上記高分子溶液及び上記コロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階と、上記三次元構造繊維を圧着する段階とを含む製造方法によって製造される。
【0104】
このとき、上記高分子溶液及び上記コロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階は、複数の高分子繊維を含む多孔性不織布を形成し、上記多孔性不織布に含まれた複数の高分子繊維の間に、上記活物質粒子及び上記伝導性物質を均一に充填して気孔を形成する一連の工程を含み得る。
【0105】
これは、上記高分子溶液及び上記コロイド溶液の二つの溶液を同時に噴射することで、上述したように優れた特性の三次元構造電極を製造する方法である。
【0106】
上記一連の工程において、上記活物質粒子としては、リチウム金属系酸化物、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、硫黄(S)、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つを使用し得る。
【0107】
具体的には、上記活物質複合体及び第2伝導性物質を含むコロイド溶液を上記高分子溶液と同時に紡糸することで、支持体の役割をする複数の高分子繊維によって相互連結された気孔構造を形成し、上記活物質粒子と第1伝導性物質との活物質複合体及び上記第2伝導性物質による三次元密集充填構造を形成して三次元構造電極を製造する方法である。
【0108】
以下、本発明の一実施形態で提供する三次元構造電極の製造方法について詳しく説明するが、上述した説明と重なる部分は省略する。
【0109】
まず、高分子溶液及びコロイド溶液を同時に紡糸して三次元構造繊維を製造する段階である。
【0110】
上記高分子溶液は、高分子を溶媒に溶解して製造し、上記高分子溶液内の高分子の含量は、高分子の種類によって適切な粘度が得られるように調節し得る。本発明の一実施形態によれば、上記高分子溶液の総重量に対し、5〜30重量%、5〜25重量%、より詳しくは10〜20重量%であり得る。このような範囲を満足する場合、上記高分子溶液の噴射によって複数の高分子繊維が形成され、それを通じて上記多孔性不織布を形成することができる。
【0111】
また、高分子溶液内の高分子の含量がこのような範囲を満足する場合、上記高分子溶液が紡糸されるノズルの終端で固まることが抑制され、上記高分子溶液の紡糸が円滑になり、上記高分子溶液が均一に紡糸されて、ビーズ(bead)が形成されることを防止することができる。
【0112】
上記溶媒は、上記高分子を溶解可能なものであれば特に限定されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びこれらの組合せを含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0113】
上記高分子溶液及び上記コロイド溶液を同時に紡糸可能な方法であれば特に限定されないが、デュアルエレクトロスピニング、デュアルエレクトロスプレー、デュアルスプレー、及びこれらの組合せを含む群より選択されたいずれか一つの方法であり得る。
【0114】
具体的には、デュアルエレクトロスピニング法を使用でき、上記三次元密集充填構造及び均一な気孔の形成に有利である。
【0115】
また、50分〜24時間実施し得る。このような実施時間の範囲内で上記三次元構造電極が形成され、特に実施時間が増加するほど、上記三次元構造電極内の活物質粒子のローディング量を向上させることができる。
【0116】
上記高分子溶液の紡糸速度は2〜15μl/minであり、上記コロイド溶液の紡糸速度は30〜150μl/minであり得る。このような各溶液の紡糸速度範囲をすべて満足するとき、上記三次元構造電極を形成することができる。特に、上記コロイド溶液の紡糸速度を上記の範囲内で増加させる場合、上記三次元構造電極内の活物質粒子のローディング量を向上させることができる。
【0117】
ただし、上記高分子溶液の紡糸速度範囲を満足しない場合、上記高分子溶液が均一に紡糸されず、ビーズが形成される問題が生じ得る。また、上記コロイド溶液の紡糸速度範囲を満足しない場合、上記コロイド溶液が均一に紡糸されず、大きい液滴状態で落ちる問題が生じ得る。そこで、それぞれの溶液の紡糸速度を上記のように限定した。
【0118】
また、上記活物質粒子と第1伝導性物質とを複合化して活物質複合体を製造する場合、粉砕装置を用いて活物質粒子と第1伝導性物質とを混合することで行うことができる。上記粉砕装置としてはボールミルなどを使用し得る。
【0119】
上記活物質粒子と第1伝導性物質とを複合化するとき、均一な複合体を生成するため、粉砕溶媒及び分散剤が添加され得る。
【0120】
上記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、これらの誘導体、及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0121】
上記粉砕溶媒の種類としては、水(脱イオン水など)、アルコール類などが挙げられる。
【0122】
このとき、上記分散剤の含量は、活物質粒子100重量部を基準にして、0.01〜20重量部、詳しくは0.1〜10重量部、より詳しくは0.25〜5重量部であり得る。
【0123】
以下、活物質複合体及び第2伝導性物質を分散媒に分散させてコロイド溶液を製造する段階について説明する。
【0124】
上記活物質粒子及び第1伝導性物質を一緒に粉砕する過程で活物質複合体が形成される。すなわち、粉砕過程で活物質粒子と第1伝導性物質とを相互凝集させて最終的に活物質複合体を形成する段階と、上記形成された活物質複合体及び上記第2伝導性物質を上記分散媒に分散させて上記コロイド溶液を製造する段階とを経ることになる。
【0125】
これは、上記コロイド溶液内に上記活物質複合体を均一に分散させるためであり、上記活物質複合体粒子の平均直径を限定したことに関連する。具体的には、上記コロイドを製造する前に、μm単位の平均直径を有する活物質複合体粒子をnm単位の平均直径を有するように粉砕すれば、上記コロイド溶液内への均一な分散に有利である。
【0126】
上記コロイド溶液内の活物質複合体と第2伝導性物質との重量比は、100:50、詳しくは100:30、より詳しくは100:15であり得る。
【0127】
上記の範囲の第2伝導性物質を含むことで、電極内の電子伝導ネットワークを提供して電気化学素子の出力向上に寄与することができ、上記のように上限及び下限を限定した理由は上述した通りである。
【0128】
上記コロイド溶液は分散剤をさらに含み得、上記コロイド溶液内の分散剤の含量は、上記コロイド溶液の総重量に対し、0.001〜10重量%であり得る。
【0129】
上記分散剤が上記の範囲で含まれるとき、上記コロイド溶液内の活物質粒子及び伝導性物質の分散を補助し、分散剤の量が多過ぎて上記コロイド溶液の粘度を高めること、または、分散剤の量が少な過ぎて分散剤として働かないことを防止することができる。
【0130】
具体的には、上記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの混合物を含む群より選択された少なくとも一つであり得る。
【0131】
また、上記分散媒は、上記活物質粒子及び上記伝導性物質を分散可能なものであれば特に限定されない。例えば、脱イオン水、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノール、ヘキサノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びこれらの組合せを含む群より選択されたいずれか一つであり得る。
【0132】
本発明の他の態様では、正極と、負極と、上記正極と負極との間に位置する分離膜と、上記正極、負極及び分離膜に含浸された電解質とを含み、上記正極及び上記負極の少なくとも一つが上述した三次元構造電極である電気化学素子を提供する。
【0133】
上記電気化学素子は、上述した特徴を有する三次元構造電極を含むことで、電極の重量当り容量及び体積当り容量に優れ、高エネルギー密度及び高出力特性を有する。
【0134】
上記電気化学素子は、リチウム二次電池、スーパーキャパシタ、リチウム−硫黄電池、ナトリウムイオン電池、リチウム−空気電池、亜鉛−空気電池、アルミニウム−空気電池及びマグネシウムイオン電池を含む群から選択されたいずれか一つであり得る。
【0135】
具体的には、リチウム二次電池であり得、一実施形態を後述する。図3は、本発明の一実施形態による三次元繊維構造電極を含むリチウム二次電池モジュールの概略図である。
【0136】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池200は、正極212、負極213、上記正極212と負極213との間に配置された分離膜210、及び、上記正極212、負極213及び分離膜210に含浸された電解質(図示せず)を含み、さらに、電池容器220、及び上記電池容器220を封じ込む封込部材240を主な構成として含む。
【0137】
一般に、上記リチウム二次電池200は、正極活物質を含む正極212と負極活物質を含む負極213との間に分離膜210を介在させ、正極212、負極213及び分離膜210を電池容器220に収納し、リチウム二次電池用電解質を注入した後、電池容器220を密閉して分離膜210の気孔にリチウム二次電池用電解質を含浸させることで製造できる。上記電池容器220は、円筒型、角形、コイン型、パウチ型などの多様な形態であり得る。円筒型リチウム二次電池の場合は、正極212、負極213及び分離膜210を順に積層した後、スパイラル状に巻き取った状態で電池容器220に収納してリチウム二次電池を構成することができる。
【0138】
リチウム二次電池の構造及び製造方法は当分野に周知されているため、本発明が曖昧に解釈されることを避けるため、詳しい説明は省略することにする。
【0139】
また、上記電解質としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解した非水電解質、ポリマー電解質、無機固体電解質、ポリマー電解質と無機固体電解質との複合材料などが挙げられる。
【0140】
非水電解質の非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をする。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒が挙げられる。非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用され、一つ以上混合して使用する場合の混合比は目的とする電池の性能に応じて適切に調節することができ、このことは当業者には容易に理解されるであろう。
【0141】
上記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として働いて基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0142】
上記リチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサレートボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)またはこれらの組合せが挙げられ、これらを支持電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1〜2.0M範囲内で使用することが望ましい。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を発揮し、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0143】
以下、本発明の望ましい実施例及び実験例を説明するが、下記の実施例は本発明の望ましい一実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0144】
〔リチウム二次電池用電極の製造及びそれを含むリチウム二次電池の製作〕
[実施例1]
(高分子溶液の製造)
まず、多孔性高分子を製造するための高分子としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を使用し、それを溶解させる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドを使用した。
【0145】
上記ポリアクリロニトリルをN,N−ジメチルホルムアミドに添加した後、溶液内のポリアクリロニトリルの含量が10重量%になるように高分子溶液を製造した。
【0146】
(活物質粒子/第1伝導性物質の活物質複合体の製造)
上記活物質粒子としては、平均直径5μmの過剰リチウム化酸化物(OLO)である0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65を使用し、第1伝導性物質としては、多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)を使用し、粉砕溶媒としては、脱イオン水を使用した。このとき、上記第1伝導性物質は、活物質粒子100重量部に対して20重量部を使用した。
【0147】
粉砕溶媒100重量部にポリビニルピロリドン1重量部を分散剤として添加し、ボールミルを用いて500rpmで1時間粉砕し、0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65粒子とMWCNTとが均一に複合化された活物質複合体を製造した。
【0148】
(コロイド溶液の製造)
また、活物質粒子/第1伝導性物質の活物質複合体及び第2伝導性物質を含むコロイド溶液を製造するため、第2伝導性物質としては多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)を使用し、分散媒としては脱イオン水及びイソプロピルアルコールを共溶媒(co−solvant)で使用した。
【0149】
具体的には、上記分散媒(脱イオン水:イソプロピルアルコール(重量比)=3:7)に、上記のように製造した0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNTの活物質複合体を添加して分散させた後、溶液内の0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNTの活物質複合体の含量が5重量%になるように活物質複合体溶液を製造した。
【0150】
上記活物質複合体溶液に上記第2伝導性物質を活物質粒子(0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65)の重量に対して10重量%で添加し、上記活物質複合体及びカーボンナノチューブが一緒に分散されたコロイド溶液を製造した。このとき、分散剤であるポリビニルピロリドンを上記コロイド溶液に対して1重量%含有されるように添加した。
【0151】
(デュアルエレクトロスピニングを通じた電極の製造)
上記高分子溶液及び上記コロイド溶液を電界紡糸装置(NanoNC社製)に導入した後、上記高分子溶液の噴射速度を5μl/min、上記コロイド溶液の噴射速度を100μl/minにして、約240分間同時に紡糸(デュアルエレクトロスピニング)し、三次元構造繊維である多孔性不織布を製造した。
【0152】
製造された多孔性不織布を、ロールプレス(KIPAE Ent.社製)を用いて圧縮し、水溶液を用いた洗浄過程を経て分散剤であるポリビニルピロリドンを除去した。これにより、活物質複合体及び第2伝導性物質を含む電極物質の面積当り重量(ローディング量)が7mg/cmであり、厚さが約30μmである三次元構造電極を収得した。
【0153】
(リチウム二次電池の製作)
収得した三次元構造電極を正極として適用してリチウム二次電池を製作した。
【0154】
具体的には、負極としてリチウム金属を使用し、分離膜としてポリエチレン(Tonen 20μm)を使用した。
【0155】
有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1(v:v))にLiPFの濃度が1Mになるように溶解して非水性電解液を製造した。
上記のように製造した正極、負極及び分離膜を入れてコイン型セルを形成した後、上記非水性電解液を注入してコイン型リチウム二次電池を製造した。
【0156】
[比較例1]
(電極の製造)
実施例1で製造された活物質複合体(0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNT)80重量部、導電材としてカーボンブラック10重量部、バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10重量部を、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)120重量部に添加して正極混合物スラリーを製造した。
【0157】
上記正極混合物スラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム(Al)薄膜に塗布し乾燥して正極を製造した後、ロールプレスを施して活物質複合体及び導電材を含む電極物質ローディング量が約7mg/cmである電極を製造した。
【0158】
(リチウム二次電池の製作)
このような電極を正極として使用した点を除き、実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製作した。
【0159】
[比較例2]
コロイド溶液を製造するとき、活物質粒子/第1伝導性物質の活物質複合体の代りに活物質粒子のみを使用した点を除き、実施例1と同じ方法で電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0160】
[比較例3]
実施例1で製造された活物質複合体(0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNT)の代りに0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65のみを使用した点を除き、比較例1と同じ方法で電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0161】
〔リチウム二次電池用電極及びそれを含むリチウム二次電池の評価〕
[実験例1:実施例1で製造された活物質/第1伝導性物質の活物質複合体の観察]
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、純粋0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65粒子(図1のa)、0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNT複合体(図1のb及びc)を観察した。実施例1によって製造された0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65/MWCNT複合体は、純粋0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65粒子対比10重量%のMWCNTを混合して粉砕して得られ、粉砕溶媒としてはポリビニルピロリドンが添加された脱イオン水を使用した。ポリビニルピロリドンは分散剤の役割をし、粉砕によって0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65粒子とMWCNTとが均一な複合体を形成した(図1のb)。上記分散剤を使用しない場合は、図1のcのように複合体が形成されなかった。
【0162】
具体的には、上記粉砕はTaemyong Scientific社製の遊星ミルを用いて500rpmで30分間行った。
【0163】
[実験例2:実施例1で製造された電極の観察]
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて実施例1によって製造された電極の断面を観察し、その結果を図4に示した。
【0164】
図4によれば、実施例1の場合、多孔性不織布に含まれた複数の高分子繊維の間に存在する大きい空間が活物質粒子(0.33LiMnO・0.67LiNi0.18Co0.17Mn0.65)及びカーボンナノチューブによって完璧に満たされ、上記カーボンナノチューブによって上記活物質粒子が囲まれ、均一な電子伝導ネットワークが形成されたことが見られる。
【0165】
また、図4によれば、実施例1によって製造された電極の断面でも活物質粒子とカーボンナノチューブとが均一に混合され、電極の厚さ方向に電子伝導ネットワークを形成したことが確認できる。
【0166】
さらに、図5は、実施例1によって製造された電極の外観写真である。
【0167】
図5によれば、別途のバインダーを使用しなかったにもかかわらず、電極を曲げた状態でも活物質粒子が脱離せず電極構造がよく維持されることが確認できる。
【0168】
[実験例3:電極の表面抵抗の比較]
実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3で製造されたそれぞれの電極の表面抵抗を比べるため、電子伝導度を測定した。
【0169】
具体的には、上記電子伝導度はDasol Eng社製の4探針を用いて表面抵抗を測定し、その結果を図6に示した。
【0170】
図6によれば、0.17S/cmの電子伝導度を見せた比較例1に比べ、実施例1では7.55S/cmと約44倍増加した数値を見せた。特に、類似した電極構造を有する比較例2の電極も、実施例1より低い数値である3.25S/cmの電子伝導度を見せた。一方、比較例3に比べれば、比較例1の電極で電子伝導度が向上したことが見られるが、これは一旦活物質複合体の内部に電子伝導ネットワークが形成されれば、通常の電極構造であっても電子伝導度が向上することを裏付ける根拠となる。これを通じて、実施例1の電極では、活物質と複合化されて活物質複合体を形成する第1伝導性物質によって活物質複合体の内部にも電子伝導ネットワークが形成され、高い電子伝導度を有することが分かり、別途の集電体がなくても電極として使用でき、それを含む電池の出力特性も比較例1及び比較例2に比べて向上すると類推することができる。
【0171】
[実験例4:電極の繰返し曲げによる抵抗変化の比較]
実施例1及び比較例1で製造された電極の繰返し曲げによる抵抗の変化を比べるため、電子伝導度を測定した。
【0172】
具体的には、上記抵抗の変化は、UTM装置を用いて幅1cm、長さ5cmの電極を半径5mmの円を形成するように20mm/sの速度で300回繰り返して曲げながら測定し、その結果を図7に示した。図7において、Rは曲げたときの抵抗値であり、Rは完全に伸ばしたときの抵抗値である。
【0173】
図7によれば、実施例1の電極は抵抗の変化がほとんどない一方、比較例1の電極は抵抗の変化が益々大きくなることが分かる。これを通じて、実施例1の均一な電子伝導ネットワークは電極を曲げたときにも相変わらず維持され、柔軟状態の電極性能も優れると類推することができる。
【0174】
[実験例5:電池性能の比較]
実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3によって製作されたそれぞれの電池の性能を測定するため、コイン型セルの放電電流速度を0.2Cから5Cに増加させながら放電容量を観察した。
【0175】
図8に、実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3によって製造されたリチウム二次電池に対し、電極の重量当り放電容量を観察した結果を示した。
【0176】
図8によれば、放電電流速度が増加するほど、実施例1のリチウム二次電池は、比較例1及び比較例2のリチウム二次電池より高い放電容量を見せた。これは、比較例1ではカーボンブラックによる電子伝導ネットワークが十分且つ均一に形成されず、さらにバインダー高分子として使われたポリフッ化ビニリデンが上記電子伝導ネットワークを妨害したためである。
【0177】
一方、比較例3のリチウム二次電池より比較例1のリチウム二次電池が高い放電容量を見せることから、活物質と第1伝導性物質との複合体に形成された電子伝導ネットワークが通常の電極構造でも放電率特性を向上できることが確認された。
【0178】
これに対し、実施例1の電極は、比較例1と異なってバインダー高分子が存在せず、カーボンナノチューブによって均一な電子伝導ネットワークを形成するため、リチウム二次電池を駆動するとき比較例1より優れた性能を見せると評価される。また、金属集電体を使用した比較例1と異なって、実施例1は支持体として不織布繊維のみを使用し、電子伝導ネットワークを形成するためカーボンナノチューブのみを使用したため、添加物質の減少によって電極の重量当り放電容量が比較例1に比べて大きく増加したことが分かる。さらに、類似した電極構造を有する比較例2と比べれば、活物質と第1伝導性物質との複合化を通じて活物質複合体の内部にも均一な電子伝導ネットワークが形成され、電極の性能が一層向上したことが分かる。これを通じて、実施例1のリチウム二次電池は、比較例1よりも軽いのに、高出力、高容量、高エネルギー密度の特性を見せることが分かる。
【0179】
本発明は、上述した実施形態によって限定されるものではなく、他の多様な形態にも製造され得る。本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるであろう。したがって、上述した実施形態はあらゆる面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解せねばならない。
【符号の説明】
【0180】
100:三次元構造電極
110:高分子繊維
120:活物質粒子
130:第1伝導性物質
140:第2伝導性物質
200:リチウム二次電池
212:正極
213:負極
210:分離膜
220:電池容器
240:封込部材
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】