(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-506085(P2021-506085A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】非晶質シリコン−炭素複合体、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20210122BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20210122BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20210122BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20210122BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20210122BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20210122BHJP
C01B 33/00 20060101ALI20210122BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20210122BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/1393
C01B33/00
C01B32/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-531992(P2020-531992)
(86)(22)【出願日】2019年3月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】KR2019002843
(87)【国際公開番号】WO2019177338
(87)【国際公開日】20190919
(31)【優先権主張番号】10-2018-0029924
(32)【優先日】2018年3月14日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0026971
(32)【優先日】2019年3月8日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジャンベ・キム
(72)【発明者】
【氏名】スジン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジヘ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】テス・ボク
(72)【発明者】
【氏名】ドンキ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジェゴン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ソククン・ユ
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA03
4G072BB13
4G072DD05
4G072DD06
4G072HH29
4G072LL03
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4G072UU30
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5H029AJ05
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5H029AM07
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5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、非晶質シリコン−炭素複合体、熱分解方法を利用した非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法、これを含むリチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体であって、
前記非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmであることを特徴とする非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項2】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン−炭素共有結合、シリコン−シリコン共有結合及び炭素−炭素共有結合を不規則に含むことを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項3】
前記非晶質シリコン−炭素複合体はヘテロ原子をさらに含み、ヘテロ原子−炭素共有結合及びヘテロ原子−シリコン共有結合の中で1種以上の結合をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項4】
前記ヘテロ原子は、ホウ素、リン、窒素及び硫黄からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項5】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素を3:7ないし7:3の重量比で含むことを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項6】
前記非晶質シリコン−炭素複合体の密度は0.2ないし0.6g/ccであることを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項7】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン(Si)供給源及び炭素(C)供給源に対する熱分解蒸着工程によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項8】
a)炭化水素を含むシラン化合物を有機溶媒と混合して混合液を製造する段階;及び
b)前記混合液を非活性雰囲気で熱分解させて基板上に蒸着させる段階;を含む非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素を含むシラン化合物は、テトラメチルシラン、ジメチルシラン、メチルシラン、トリエチルシラン、フェニルシラン及びジフェニルシランからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
前記a)段階で炭化水素を含むシラン化合物は、ヘテロ原子をさらに含む化合物であることを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項11】
前記ヘテロ原子は、ホウ素、リン、窒素及び硫黄からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項12】
前記a)段階で有機溶媒は、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項13】
前記b)段階で熱分解温度は600ないし900℃であることを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項14】
前記b)段階で熱分解は、混合液に非活性ガスを供給してバブリングさせる工程によって行われることを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項15】
前記基板から蒸着された非晶質シリコン−炭素複合体を分離する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項16】
前記分離された非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmであることを特徴とする請求項15に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項17】
活物質;導電材;及びバインダーを含むリチウム二次電池用負極において、
前記活物質は請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体を含むことを特徴とするリチウム二次電池用負極。
【請求項18】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記負極は請求項17に記載の負極であることを特徴とするリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月14日付韓国特許出願第10−2018−0029924号及び2019年3月8日付韓国特許出願10−2019−0026971号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、非晶質シリコン−炭素複合体、この製造方法、これを含むリチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池(例えば、リチウムイオン電池)、ニッケル水素電池及びそれ以外の二次電池は、車両搭載用電源、またはノートパソコンなどの携帯端末機の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度を得ることができるリチウム二次電池は、車両搭載用高出力電源で利用されることができるので、今後継続的に需要が増大する見通しである。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入及び脱離可能な物質を負極の活物質で使用し、前記正極と負極の間に多孔性分離膜を設けた後、液体電解質を注入して製造され、前記負極及び正極でのリチウムイオンの挿入及び脱離による酸化還元反応によって電気が生成または消費される。
【0005】
具体的には、リチウム二次電池において、負極活物質ではリチウムの挿入及び脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンを含む様々な形態の炭素系材料が適用されてきた。前記炭素系の中で黒鉛については、黒鉛を負極活物質で使用した電池が3.6Vの高い放電電圧を示すだけでなく、リチウム二次電池のエネルギー密度面でも利点を提供し、優れた可逆性によってリチウム二次電池の長い寿命を保障して最も広く使用されている。しかし、黒鉛活物質は極板製造時の黒鉛の密度(理論密度2.2g/cc)が低いため極板の単位体積当たりエネルギー密度という側面では容量が低く、高い電圧では使われる有機電解液との副反応が起きやすいため、ガス発生及びこれによる容量低下の問題があった。
【0006】
このような炭素系負極活物質の問題点を解決するために、黒鉛対比容量が非常に高いSi系負極活物質が開発、研究されている。しかし、高容量Si系負極素材は充・放電の際に激しい体積変化を伴い、これによって粒子の割れが発生して寿命特性が不良であるという短所がある。具体的には、リチウムイオンと合金及び脱合金化が可能なシリコンまたはシリコン酸化物(SiO
x、0<x<2)系負極活物質は最大300%まで体積が膨脹する。このような体積膨脹及び収縮の時、SiO
x系負極活物質は、物理的に酷くストレスを受けて崩壊(pulverization)してしまう。その結果、既存のSEI層が破壊されて新しい界面が発生することで、新しいSEI層を形成するようになる。これにより持続的な電解液分解及びリチウムイオンの消耗が発生することで電池のサイクル特性が劣化される。また、持続的な充・放電の際に、SiO
x系負極活物質の体積膨脹及び収縮によって導電構造が破壊され電極の耐久性が低下することで電池の寿命が劣化される。
【0007】
これを解決するために、体積膨脹を緩衝することができる空隙を含む複合体が提案された。しかし、空隙構造を含む複合体の場合、電極製造中に伴われる圧延過程で複合体が破砕されやすく、密度が低くて高いローディング量の電極を製造することが難しいという問題がある。
【0008】
また、これを解決するための方法としてナノチューブ形態のSiO
xが開発されたが、製造工程が難しく、単価が高いため商用化が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1612603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、リチウム二次電池の充・放電の際に体積変化が小さくて、破片化が発生しない非晶質シリコン−炭素複合体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、熱分解方法を利用して製造工程が単純な非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は前記非晶質シリコン−炭素複合体を含んで電池の電気伝導度及び寿命特性を向上させることができるリチウム二次電池の負極及びリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、
本発明は、シリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体であって、
前記複合体の直径は10nmないし1μmの複合体を提供する。
【0014】
また、本発明は、a)炭化水素を含むシラン化合物を有機溶媒と混合して混合液を製造する段階;及び
b)前記混合液を非活性雰囲気で熱分解させて基板上に蒸着させる段階;を含む非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、活物質;導電材;及びバインダーを含むリチウム二次電池用負極において、
前記活物質は、前記本発明の非晶質シリコン−炭素複合体を含むことを特徴とするリチウム二次電池用負極を提供する。
【0016】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記負極は前記本発明の負極であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素が分子単位で混合されていて電池の充・放電の際に体積変化が小さくて、破片化が発生しない長所を持っている。
【0018】
また、本発明の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法は、工程が単純という長所を持っている。
【0019】
また、本発明の非晶質シリコン−炭素複合体を含むリチウム二次電池は、電気伝導度及び寿命特性に優れる効果を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の非晶質シリコン−炭素複合体の模式図である。
【
図2】実施例1−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図3】実施例1−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体(Si−C)の透過電子顕微鏡(TEM)エネルギー分散型分光分析法を利用して測定した写真である。
【
図4】比較例1−1で製造したシリコン−炭素複合体(Si−黒鉛(Graphite))の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図5】比較例2−1で製造したシリコン−酸素−炭素複合体(SiOC)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6】比較例3−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図7】比較例3−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図10】実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3の初期充・放電グラフである。
【
図11】実施例1−3及び比較例3−3の初期充・放電グラフである。
【
図12】実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3の充・放電寿命特性グラフである。
【
図13】実施例1−3及び比較例3−3の充・放電寿命特性グラフである。
【
図14】実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3のC−レート(rate)による充・放電特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
シリコンは黒鉛対比約10倍の容量を持っているが、電池の充・放電中に体積変化及び破片化が発生して電池の寿命特性が低下する問題がある。
【0023】
ここで、前記問題点を改善するためにシリコンと炭素を単純に混合したり、シリコン表面に炭素をコーティングした後、これを黒鉛と混合する方法などが提案されたが、前記従来の技術はシリコンと炭素の間の接触が円滑に行われないため、イオン伝導度及び電気伝導度が優れていないだけでなく、シリコンと炭素の分布が均一でないため、依然として前記問題点を解決することができなかった。
【0024】
したがって、本発明では前記の問題点を解決するために、シリコン(Si)及び炭素(C)が分子単位で混合された非晶質シリコン−炭素複合体を提供しようとした。
【0025】
前記本発明の非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素が分子単位で混合されていて前記問題点を解決することができる。
【0026】
非晶質シリコン−炭素複合体
本発明は、シリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体に係り、前記複合体の直径は10nmないし1μmである。
【0027】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン供給源及び炭素供給源に対する熱分解蒸着工程によって形成されたものであって、前記複合体はシリコン−炭素共有結合、シリコン−シリコン共有結合及び炭素−炭素共有結合を含んでいて、前記共有結合は複合体内で不規則的に存在している。
【0028】
また、前記非晶質シリコン−炭素複合体はヘテロ原子をさらに含んでもよく、この場合、前記複合体はヘテロ原子−炭素共有結合及びヘテロ原子−シリコン共有結合の中で1種以上の結合をさらに含んでもよく、前記共有結合は複合体内で不規則的に存在している。
【0029】
この時、前記ヘテロ原子は、ホウ素(B)、リン(P)、窒素(N)及び硫黄(S)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0030】
本発明において、前記非晶質シリコン−炭素複合体は、炭化水素を含むシラン化合物の熱分解蒸着工程で形成されたもので、前記化合物が熱分解される時、化合物の一部分または全体結合が切れて非晶質シリコン−炭素複合体が形成されるものである。すなわち、前記シリコン供給源及び炭素供給源は炭化水素を含むシラン化合物であってもよい。よって、本発明の複合体は濃度勾配がなく、シリコン及び炭素が分布されていて、これをリチウム二次電池に適用する時に体積膨脹問題を最小化することができるし、電池の寿命特性を向上させることができる。
【0031】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素を3:7ないし7:3の重量比で含んでいる。
【0032】
前記シリコンが前記範囲未満で含まれると電池の容量が減少することがあり、前記範囲を超えて含まれると電池の寿命が減少することがある。
【0033】
また、前記炭素が前記範囲未満で含まれると電池の寿命が減少することがあり、前記範囲を超えると電池の容量が減少することがある。
【0034】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、極少量の水素及び酸素を含んでもよい。
【0035】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は粒子形態からなって、前記複合体の直径は10nmないし1μmで、好ましくは100ないし500nmであってもよい。もし前記複合体の直径が10nm未満であれば複合体の密度が大きく低下するだけでなく電極を製造しにくいし、1μmを超えると複合体の電気伝導度が大きく減少して電池の寿命及び律速特性が低下することがある。
【0036】
また、前記非晶質シリコン−炭素複合体の密度は0.2ないし0.6g/ccであり、好ましくは0.3ないし0.5g/ccである。前記密度が0.2g/cc未満であれば電極の密度が低くなり、つまり、同一なローディング量のものと比べて電極の厚さが厚くなって電池のエネルギー密度が低下し、0.6g/ccを超えると電極の抵抗が高くなって律速特性が減少する。
【0037】
前記本発明の非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素が分子水準で混合されたものであって、複数のシリコン原子、複数の炭素原子及びこれらの共有結合からなっていて、これをリチウム二次電池の負極活物質で使用可能である。
【0038】
前記本発明の非晶質シリコン−炭素複合体をリチウム二次電池に使用すれば、電池充・放電の際に発生するシリコンの体積変化及び破片化などの問題点を解決することができ、電池の優れた電気伝導度及び寿命特性を示すことができる。
【0039】
非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法
また、本発明は、a)炭化水素を含むシラン化合物を有機溶媒と混合して混合液を製造する段階;及び
b)前記混合液を非活性雰囲気で熱分解させて基板上に蒸着させる段階;を含む非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法に関する。
【0040】
前記a)段階は、炭化水素を含むシラン化合物を有機溶媒と混合して混合液を製造する段階である。
【0041】
前記炭化水素を含むシラン化合物は、シラン構造に作用基で炭化水素を含む化合物であって、その種類を特に限定することではないが、本発明では、好ましくはテトラメチルシラン、ジメチルシラン、メチルシラン、トリエチルシラン、フェニルシラン及びジフェニルシランからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0042】
また、前記炭化水素を含むシラン化合物はヘテロ原子をさらに含む化合物であってもよい。
【0043】
本発明では、ヘテロ原子がシリコン及び炭素と共有結合を成すことができるものであれば、化合物の種類を特に限定しない。前記ヘテロ原子は、ホウ素(B)、リン(P)、窒素(N)及び硫黄(S)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0044】
前記有機溶媒は、炭化水素を含むシラン化合物を溶解させることができるものであれば、その種類を特に限定せずに使用することができ、好ましくは沸点が約100℃以上で、粘度が高くなく、600℃以上の温度で炭化されない有機溶媒が使用されてもよく、本発明では具体的に例えば、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0045】
前記有機溶媒は、沸点が比較的低い炭化水素を含むシラン化合物の沸点を補完するための希釈用途で使用されるものであって、熱分解温度が800℃以上であれば有機溶媒の熱分解も一緒に起きることがあって、製造される非晶質シリコン−炭素複合体の内にさらに炭素を提供してシリコン及び炭素の割合を調節する役目をすることができる。
【0046】
前記化合物及び有機溶媒の混合は、常温で約10ないし30分間行われることが好ましい。
【0047】
前記b)段階は、前記混合液を非活性雰囲気で熱分解させて基板上に蒸着させる段階である。
【0048】
具体的に、前記熱分解は前記混合液に非活性ガスを供給してバブリングさせる工程によって行われ、前記非活性雰囲気は、好ましくはアルゴン(Ar)ガス雰囲気である。
【0049】
前記熱分解温度は600ないし900℃で、前記熱分解温度が600℃未満であれば炭化水素を含むシラン化合物の熱分解が行われないため、非晶質シリコン−炭素複合体を製造することができず、900℃を超えると有機溶媒が直接的に分解されてシリコン及び炭素の好ましい混合比を逸脱するだけでなく、その含量を調節することが難しい。
【0050】
非晶質シリコン−炭素複合体の内で水素の含量が高ければ、電池が作動する時に水素ガスが発生して電池容量が低下する問題が発生する。熱分解温度が前記温度範囲内であっても温度が高くなるほど非晶質シリコン−炭素複合体内の水素の含量を減少させることがあるので、熱分解温度は700ないし800℃であることが好ましい。
【0051】
また、前記熱分解は10分ないし1時間行われ、好ましくは30分ないし1時間行われる。
【0052】
前記混合液に含まれた化合物、または化合物及び有機溶媒が熱分解されることで、最終的にシリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体を製造することができる。
【0053】
より詳しくは、前記熱分解で生成された非晶質シリコン−炭素複合体は基板上に蒸着され、前記蒸着された複合体を分離する段階をさらに含んで、最終的に粒子形態の非晶質シリコン−炭素複合体を製造することができる。前記蒸着された複合体の分離方法を本発明で特に限定することはないが、好ましくはボールミル(ball−mill)工程を用いることができる。
【0054】
前記蒸着された複合体の直径は1μmを超える大きさを有し、基板から分離されて粒子形態を有する非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmであり、好ましくは100ないし500nmであってもよい。もし前記複合体の直径が10nm未満であれば複合体の密度が大きく低下するだけでなく電極を製造することが難しくなり、1μmを超えると複合体の電気伝導度が大きく減少して電池の寿命及び律速特性が低下することがある。
【0055】
前記基板の種類は、本発明で特に限定することではなく、好ましくはシリコンまたはアルミナ基板などを使用することができる。
【0056】
本発明の一具現例として、前記化合物と有機溶媒を常温で混合した混合液を準備する。ファーネスに基板を入れた後、ファーネス内部に非活性気体を流して非活性雰囲気にした後、加熱してファーネス内部の温度を一定にする。その後、前記混合液をファーネスに流して炭化水素を含むシラン化合物を熱分解して非晶質シリコン−炭素複合体を製造し、前記複合体は基板上に蒸着される。前記基板上に蒸着された複合体をボールミルなどの工程を通じて粒子形態の非晶質シリコン−炭素複合体を収得することができる。
【0057】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、基板に蒸着した後でボールミルなどの複合体を分離する工程を通じて粒子形態で製造され、前記非晶質シリコン−炭素複合体は粒子形態からなって、前記粒子形態の非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmで、好ましくは100nmないし500nmであってもよい。
【0058】
本発明の製造方法は、単純熱分解方法を通じて非晶質シリコン−炭素複合体を製造することで、製造工程が単純という長所を持っている。
【0059】
リチウム二次電池用負極
本発明は、活物質;導電材;及びバインダーを含むリチウム二次電池用負極に係り、前記活物質は前記本発明の非晶質シリコン−炭素複合体を含む。
【0060】
具体的に、前記負極は負極集電体上に形成された負極活物質を含み、前記負極活物質は本発明によって製造された非晶質シリコン−炭素複合体を使用する。
【0061】
前記負極集電体は、具体的に銅、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金では、アルミニウム−カドミウム合金が使用されてもよい。その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などが使用されてもよい。
【0062】
前記導電材は電極活物質の導電性をもっと向上させるために使用する。このような導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されないし、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などが使用されてもよい。
【0063】
前記バインダーは、電極活物質と導電材の組み合わせと、集電体に対する組み合わせのために使用する。このようなバインダーの非制限的な例では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、ポリイミド(PI)、アルギン酸(Alginic acid)、アルジネート(Alginate)、キトサン(Chitosan)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化−EPDM、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などを挙げることができる。
【0064】
また、前記負極は充填剤及びその他の添加剤などをさらに含むことができる。
【0065】
リチウム二次電池
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、前記負極は上述した前記本発明の負極であることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0066】
前記リチウム二次電池の正極、負極、分離膜及び電解液の構成は本発明で特に限定せず、この分野で公知された内容にしたがう。
【0067】
正極は正極集電体上に形成された正極活物質を含む。
【0068】
正極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限されないし、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてもよい。この時、前記正極集電体は、正極活物質との接着力を高めるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使用してもよい。
【0069】
電極層を構成する正極活物質は、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が使用可能である。このような正極活物質の具体例として、リチウム金属;LiCoO
2などのリチウムコバルト系酸化物;Li
1+xMn
2−xO
4(ここで、xは0ないし0.33である)、LiMnO
3、LiMn
2O
3、LiMnO
2などのリチウムマンガン系酸化物;Li
2CuO
2などのリチウム銅酸化物;LiV
3O
8、LiFe
3O
4、V
2O
5、Cu
2V
2O
7などのバナジウム酸化物;LiNi
1−xM
xO
2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaで、x=0.01ないし0.3である)で表されるリチウムニッケル系酸化物;LiMn
2−xM
xO
2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaで、x=0.01ないし0.1である)またはLi
2Mn
3MO
8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;Li(Ni
aCo
bMn
c)O
2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)で表されるリチウム−ニッケル−マンガン−コバルト系酸化物;LiV
3O
8、LiFe
3O
4、V
2O
5、Cu
2V
2O
7などのバナジウム酸化物;硫黄またはジスルフィド化合物;LiFePO
4、LiMnPO
4、LiCoPO
4、LiNiPO
4などのリン酸塩;Fe
2(MoO
4)
3などを挙げることができるが、これらのみに限定されることではない。
【0070】
この時、前記電極層は正極活物質以外にバインダー、導電材、充填剤及びその他の添加剤などをさらに含んでもよく、前記バインダー及び導電材は前記リチウム二次電池用負極に述べた内容と同一である。
【0071】
前記分離膜は多孔性基材からなってもよいが、前記多孔性基材は、通常電気化学素子に使用される多孔性基材であればいずれも使用可能であり、例えば、ポリオレフィン系多孔性膜または不織布を使用してもよいが、これに特に限定されることではない。
【0072】
前記分離膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、及びポリエチレンナフタレートからなる群から選択されたいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物からなる多孔性基材であってもよい。
【0073】
前記リチウム二次電池の電解液は、リチウム塩を含む非水系電解液でリチウム塩と溶媒で構成されていて、溶媒では非水系有機溶媒、有機固体電解質及び無機固体電解質などが使用される。
【0074】
前記リチウム塩は、前記非水系電解液に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiSCN、LiC
4BO
8、LiCF
3CO
2、LiCH
3SO
3、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiC
4F
9SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、(CF
3SO
2)・2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウムイミドなどが使用されてもよい。
【0075】
非水系有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよい。
【0076】
前記有機固体電解質では、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、2次性解離基を含む重合体などが使用されてもよい。
【0077】
前記無機固体電解質では、例えば、Li
3N、LiI、Li
5NI
2、Li
3N−LiI−LiOH、LiSiO
4、LiSiO
4−LiI−LiOH、Li
2SiS
3、Li
4SiO
4、Li
4SiO
4−LiI−LiOH、Li
3PO
4−Li
2S−SiS
2などのLi窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されてもよい。
【0078】
また、非水系電解液には、充放電特性、難燃性などを改善する目的で、その他の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤の例では、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などを挙げることができる。
【0079】
本発明によるリチウム二次電池は、一般的な工程である捲取(winding)以外にも分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。そして、前記電池ケースは、円筒状、角形、ポーチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0080】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0081】
実施例1.
1−1.非晶質シリコン−炭素複合体製造
10mLのテトラメチルシラン(tetramethylsilane、TMS)を10mLのトルエンに溶解させた後、常温で10ないし30分間混合して混合液を製造した。
【0082】
ファーネスに非晶質シリコン−炭素複合体が蒸着されるシリコンウェハー(wafer)を入れた後、500cc/minの速度でアルゴン(Ar)ガス(純度99.999%)を流してファーネス内部を非活性雰囲気にした。以後、10℃/minの昇温速度でファーネスを加熱して750℃まで加熱させた。ファーネスの温度が750℃に達した後、10ないし30分間前記温度を維持してファーネス内部の温度を一定にした。
【0083】
その後、前記混合液を100cc/minの速度でファーネス内部に注入し、アルゴンガスを流してバブリングさせて前記混合液を熱分解させた。
【0084】
熱分解後、ファーネスの温度を常温まで下げた後、ファーネス内部の基板上に分解された非晶質シリコン−炭素複合体を収得し、前記複合体をボールミル(ball−mill)を通じて粒子形態のシリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体(Si−C)を製造した(
図2及び
図3)。前記シリコン−炭素複合体の直径は約200nmで、密度は0.42g/ccであった。
【0085】
1−2.極板製造
前記実施例1−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体を負極活物質で使用した。負極活物質80重量%、バインダー(PAA/CMC、1:1の重量比)10重量%、導電材(super−P)10重量%を水に分散させて負極スラリーを作って、銅電極に塗布して極板を製造した。
【0086】
1−3.リチウム二次電池製造
前記実施例1−2で製造した極板を負極で使用した。対極でリチウムメタルを使用し、前記負極と対極の中間にポリエチレン分離膜を介在した後、1.3M LiPF
6を使用したエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(EC/DEC、3:7、体積比)を電解液で使用し、添加剤としてFEC 10重量%を使用してコインセルを製造した。
【0087】
比較例1.
1−1.シリコン−炭素複合体製造
寿命特性を評価する時、放電容量で600mAh/gに合わせるためにSi(理論容量約3500mAh/g)約15wt%、黒鉛(Graphite)(理論容量約372mAh/g)約85wt%を乳鉢で単純混合してシリコン−炭素複合体(Si−Graphite)を製造した(
図4)。
【0088】
1−2.極板製造
前記比較例1−1で製造したシリコン−炭素複合体(Si−Graphite)を負極活物質で使用したことを除いては、前記実施例1−2と同様に行って極板を製造した。
【0089】
1−3.リチウム二次電池製造
前記比較例1−2で製造した極板を負極で使用したことを除いては、前記実施例1−3と同様に行ってコインセルを製造した。
【0090】
比較例2.
2−1.シリコン−酸素−炭素複合体製造
3gのシリコーンオイル(silicone oil)をアルミナ容器に入れて非活性雰囲気のファーネスで900℃で熱処理した。その後、ファーネス内部の温度を常温に下げた後、シリコン−酸素−炭素複合体(SiOC)を収得した(
図5)。
【0091】
2−2.極板製造
前記比較例2−1で製造したシリコン−炭素複合体(Si−黒鉛(Graphite))を負極活物質で使用したことを除いては、前記実施例1−2と同様に行って極板を製造した。
【0092】
2−3.リチウム二次電池製造
前記比較例2−2で製造した極板を負極で使用したことを除いては、前記実施例1−3と同様に行ってコインセルを製造した。
【0093】
比較例3.
3−1.非晶質シリコン−炭素複合体製造
ボールミル段階を実施しないことを除いては、前記実施例1−1と同様に行って非晶質シリコン−炭素複合体(Si−C)を製造した(
図6及び
図7)。前記シリコン−炭素複合体の直径は約3μmで、密度は0.66g/ccであった。
【0094】
3−2.極板製造
前記比較例3−1で製造したシリコン−炭素複合体(Si−黒鉛(Graphite))を負極活物質で使用したことを除いては、前記実施例1−2と同様に行って極板を製造した。
【0095】
3−3.リチウム二次電池製造
前記比較例3−2で製造した極板を負極で使用したことを除いては、前記実施例1−3と同様に行ってコインセルを製造した。
【0096】
実験例1.複合体の結晶構造分析
前記実施例1−1で製造した非晶質シリコン−炭素複合体(Si−C)、比較例1−1で製造したシリコン−炭素複合体(Si−黒鉛(Graphite))及び比較例2−1で製造したシリコン−酸素−炭素複合体(SiOC)のXRDを測定した(
図8)。
【0097】
実施例1−1のシリコン−炭素複合体(Si−C)は、32度及び60度で広域のピークが表れた。比較例1−1のシリコン−炭素複合体(Si−黒鉛(Graphite))のシリコンは非晶質ではなく結晶質であるため、6個のシリコンピーク(約28度、47度、56度、69度、76度及び88度)が鮮明に表れ、約26度、35度及び44度などで黒鉛(Graphite)のピークが表れた。また、比較例2−1のシリコン−酸素−炭素複合体(SiOC)は30度及び42度で広域のピークが表れた。
【0098】
したがって、前記実施例1−1、比較例1−1及び2−1で製造された複合体は、相互異なる物質及び物性を有することを確認することができた。
【0099】
実験例2.極板の電気伝導度評価
前記実施例1−2、比較例1−2及び比較例2−2で製造した極板を4探針法(Four−point probe)を利用して電気伝導度を測定した(
図9)。
【0100】
実施例1−2の極板は、電気伝導度に優れて低い抵抗値を示した。比較例1−2の極板は黒鉛(Graphite)が炭素層が幾重にも重なった形態で電気伝導度がとても優れた物質であるため、電気伝導度に優れ、低い抵抗値を示した。しかし、比較例2−3の極板は、セラミックス物質であるシリコン−酸素−炭素複合体(SiOC)を含んでいて低い電気伝導度を示し、これによってとても高い抵抗を示した。
【0101】
実験例3.電池性能評価
前記実施例1−3、比較例1−3、比較例2−3及び比較例3−3で製造したコインセルの初期充・放電評価、寿命特性評価及び律速特性評価を実施した。
【0102】
(1)初期充・放電評価
シリコン複合体の種類による充・放電特性を観察するために、前記実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3で製造したコインセルの充・放電速度を0.05C−レート(rate)で固定し、作動電圧を0.005〜2.5Vで設定してコインセルの充・放電特性を測定した(
図10)。
【0103】
実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3のコインセルのいずれもC−レートが増加することで容量が減少し、最後の0.2C−レートでは初期容量水準に復元される結果を示した。
【0104】
また、シリコン複合体の直径の大きさによる充・放電特性を観察するために、実施例1−3及び比較例3−3で製造したコインセルの充・放電特性を観察し、実験方法は前記と同様に実施した(
図11)。
【0107】
前記表1の結果からみて、シリコン複合体の直径が小さい実施例1−3がシリコン複合体の直径が1μmを超えた比較例3−3より充・放電特性に優れることを確認することができた。
【0108】
これによって、シリコン複合体の直径が小さいほど優れた充・放電効果を示すことが分かる。
【0109】
(2)寿命特性評価
シリコン複合体の種類による寿命特性を観察するために、前記実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3で製造したコインセルの充・放電速度を0.2C−レートで固定し、作動電圧を0.005〜2.5Vで設定して50サイクルを行うことでコインセルの寿命特性を測定し、結果を下記表2及び
図12に示す。
【0111】
実施例1−3のコインセルは、サイクルが進んでも電池の容量がほとんど減少しないので、寿命特性に優れる結果を示した。
【0112】
しかし、比較例1−3のコインセルは黒鉛(Graphite)粒子にシリコンが点で接触されている形態であるため非常に不安定な連結であり、サイクルが進められることによってシリコンの体積が膨脹して電池容量が減少し、寿命特性がよくなかった。
【0113】
また、比較例2−3のコインセルもサイクルが進められるほど電池の容量が減少して寿命特性がよくなかった。
【0114】
また、シリコン複合体の直径の大きさによる寿命特性を観察するために、実施例1−3及び比較例3−3で製造したコインセルの寿命特性を観察し、実験方法は100サイクルを進めたことを除いては、前記と同様に実施した(
図13)。
【0115】
その結果、実施例1−3は50サイクル以前に容量が飽和されて安定的な寿命特性を示したが、比較例3−3は100サイクルの間に飽和されず、低い容量を示した。
【0116】
したがって、シリコン複合体の直径が小さいほど優れた寿命特性効果を示すことが分かる。
【0117】
(3)律速特性評価
前記実施例1−3、比較例1−3及び比較例2−3で製造したコインセルの充放電速度を0.2C−レートで20サイクル、0.5C−レートで10サイクル進め、その後、5サイクルごとに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10C−レートで充放電速度を調節し、最後に0.2−レートに戻って正常的にまた復元されるのかを確認した(
図14)。
【0118】
実施例1−3及び比較例2−3のコインセルのいずれもサイクルが進められるほど電池容量が減少し、最後の0.2−レートで初期容量水準に復元される結果を示した。
【0119】
しかし、比較例1−3のコインセルの場合、黒鉛(Graphite)層と層の間にリチウムイオンをインターカレーション(intercalation)の形態で保存するので、リチウムイオンの移動速度がとても遅い。よって、比較例1−3のコインセルは律速特性に優れていない結果を示した。実施例1−3のコインセルの場合、合金(alloy)の形態でリチウムイオンを保存するので、黒鉛(Graphite)より相対的に低い電気伝導度を有しても律速特性に優れたことを確認することができた。
【0120】
前記結果から、シリコン及び炭素が分子水準で混合され、直径が10nmないし1μmである非晶質シリコン−炭素複合体は、電気伝導度、充・放電特性及び寿命特性に優れた効果を示すことを確認することができた。
【手続補正書】
【提出日】2020年6月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)及び炭素(C)が分子水準で混合された非晶質シリコン−炭素複合体であって、
前記非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmであることを特徴とする非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項2】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン−炭素共有結合、シリコン−シリコン共有結合及び炭素−炭素共有結合を不規則に含むことを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項3】
前記非晶質シリコン−炭素複合体はヘテロ原子をさらに含み、ヘテロ原子−炭素共有結合及びヘテロ原子−シリコン共有結合の中で1種以上の結合をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項4】
前記ヘテロ原子は、ホウ素、リン、窒素及び硫黄からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項5】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン及び炭素を3:7ないし7:3の重量比で含むことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項6】
前記非晶質シリコン−炭素複合体の密度は0.2ないし0.6g/ccであることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項7】
前記非晶質シリコン−炭素複合体は、シリコン(Si)供給源及び炭素(C)供給源に対する熱分解蒸着工程によって形成されることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体。
【請求項8】
a)炭化水素を含むシラン化合物を有機溶媒と混合して混合液を製造する段階;及び
b)前記混合液を非活性雰囲気で熱分解させて基板上に蒸着させる段階;を含む非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素を含むシラン化合物は、テトラメチルシラン、ジメチルシラン、メチルシラン、トリエチルシラン、フェニルシラン及びジフェニルシランからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
前記a)段階で炭化水素を含むシラン化合物は、ヘテロ原子をさらに含む化合物であることを特徴とする請求項8に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項11】
前記ヘテロ原子は、ホウ素、リン、窒素及び硫黄からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項12】
前記a)段階で有機溶媒は、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項8から11の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項13】
前記b)段階で熱分解温度は600ないし900℃であることを特徴とする請求項8から12の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項14】
前記b)段階で熱分解は、混合液に非活性ガスを供給してバブリングさせる工程によって行われることを特徴とする請求項8から13の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項15】
前記基板から蒸着された非晶質シリコン−炭素複合体を分離する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8から14の何れか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項16】
前記分離された非晶質シリコン−炭素複合体の直径は10nmないし1μmであることを特徴とする請求項15に記載の非晶質シリコン−炭素複合体の製造方法。
【請求項17】
活物質;導電材;及びバインダーを含むリチウム二次電池用負極において、
前記活物質は請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の非晶質シリコン−炭素複合体を含むことを特徴とするリチウム二次電池用負極。
【請求項18】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記負極は請求項17に記載の負極であることを特徴とするリチウム二次電池。
【国際調査報告】