特表2021-507904(P2021-507904A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-507904癌を処置するための方法および併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-507904(P2021-507904A)
(43)【公表日】2021年2月25日
(54)【発明の名称】癌を処置するための方法および併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20210129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210129BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210129BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20210129BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20210129BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20210129BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20210129BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20210129BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20210129BHJP
【FI】
   A61K45/06
   A61P35/00
   A61P43/00 111
   A61K39/395 T
   A61K39/395 U
   A61K31/5025
   A61K31/4184
   C07K16/30ZNA
   C12N9/99
   C12N9/12
   C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2020-533843(P2020-533843)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月18日
(86)【国際出願番号】IB2018060181
(87)【国際公開番号】WO2019123207
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】62/607,190
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(71)【出願人】
【識別番号】506125971
【氏名又は名称】アレイ・バイオファーマ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ボショフ,クリストッフェル・ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】チェサリ,ロッサーノ
(72)【発明者】
【氏名】マッサセシ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペイサン,ナチャット
(72)【発明者】
【氏名】リー,パトリス・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンスキー,シャンノン・エル
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC00
4B050DD11
4B050LL01
4C084AA22
4C084AA23
4C084AA24
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB022
4C084ZB052
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC422
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB18
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086CB09
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC42
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA71
(57)【要約】
本発明は、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせまたはMEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせを含む併用療法を、それを必要とする患者に投与することによって癌を処置する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を処置する方法であって、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与するステップを含み、ここにおいて、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法。
【請求項2】
患者における癌が、RAS突然変異体癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者における癌が、KRAS突然変異体癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者における癌が、HRAS突然変異体癌またはNRAS突然変異体癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
癌が膵臓癌である、請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
癌が非小細胞肺癌である、請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
癌が結腸直腸癌である、請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
癌が胃癌である、請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PD−1系アンタゴニストが、ニボルマブ、ペムブロリズマブおよびRN888からなる群から選択される抗PD−1抗体である、請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
PD−1系アンタゴニストが、アベルマブ、デュルバルマブおよびアテゾリズマブからなる群から選択される抗PD−L1抗体である、請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
PARP阻害剤が、オラパリブ、ニラパリブ、BGB−290およびタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩からなる群から選択される、請求項1−10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
MEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、レファメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD0325901、PD184352、PD098059、U0126、CH4987655、CH5126755およびGDC623またはその医薬上許容される塩からなる群から選択される、請求項1−11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
癌を処置する方法であって、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与するステップを含み、ここにおいて、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、PD−1系アンタゴニストは、アベルマブであり、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法。
【請求項14】
PARP阻害剤が、タラゾパリブトシレートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
MEK阻害剤が、結晶化ビニメチニブである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
患者における癌が、RAS突然変異体癌である、請求項13−15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
患者における癌が、KRAS突然変異体癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者における癌が、HRAS突然変異体癌またはNRAS突然変異体癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
癌が膵臓癌である、請求項13−18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
癌が非小細胞肺癌である、請求項13−18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
癌が結腸直腸癌である、請求項13−18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
癌が胃癌である、請求項13−18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
癌を処置する方法であって、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与するステップを含み、ここにおいて、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与され、PD−1系アンタゴニストは、アベルマブであり、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で静脈内投与され、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDまたは(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間オンおよび1週間オフについて、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与される、前記方法。
【請求項24】
ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩が、約30mg BIDまたは約45mg BIDの量で経口投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
PARP阻害剤が、タラゾパリブトシレートであり、MEK阻害剤が、結晶化ビニメチニブである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
患者における癌が、RAS突然変異体癌である、請求項23−25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
患者における癌が、KRAS突然変異体癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者における癌が、HRAS突然変異体癌またはNRAS突然変異体癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
癌が膵臓癌である、請求項23−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
癌が非小細胞肺癌である、請求項23−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
癌が結腸直腸癌である、請求項23−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
癌が胃癌である、請求項23−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
癌を処置する方法であって、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与するステップを含み、ここにおいて、PD−1系アンタゴニストはアベルマブであり、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法。
【請求項34】
アベルマブが、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で静脈内投与され、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩が、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDまたは(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間オンおよび1週間オフについて、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
患者における癌が、KRAS突然変異体癌である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
患者における癌が、HRAS突然変異体癌またはNRAS突然変異体癌である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項37】
癌が膵臓癌である、請求項33−36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
癌が非小細胞肺癌である、請求項33−36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
癌が結腸直腸癌である、請求項33−36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
癌が胃癌である、請求項33−36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
癌を処置する方法であって、一定量のPARP阻害剤および一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与するステップを含み、ここにおいて、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法。
【請求項42】
タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩が、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与され、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩が、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDまたは(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間オンおよび1週間オフについて、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
患者における癌が、KRAS突然変異体癌である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
患者における癌が、HRAS突然変異体癌またはNRAS突然変異体癌である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
癌が膵臓癌である、請求項41−44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
癌が非小細胞肺癌である、請求項41−44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
癌が、卵巣癌、乳癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、尿路上皮癌または去勢抵抗性前立腺癌である、請求項41−44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
癌が、トリプルネガティブ乳癌またはホルモン陽性乳癌である、請求項41−44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
癌が、約1%未満の、または約1%、5%、10%、25%、50%、75%もしくは80%以上のPD−L1発現の腫瘍比率スコアを有する、請求項1−40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
癌が、約5%以上、10%以上、14%以上15%以上、20%以上または25%以上のヘテロ接合性の消失スコアを有する、請求項1−49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
癌が、BRCA1、BRCA2、ATM、ATR、CHK2、PALB2、MRE11A、NMB RAD51C、MLH1、FANCAおよびFANCから選択される少なくとも1種のDDR遺伝子においてDDR欠損陽性である、請求項1−49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
患者が、約20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、42以上、45以上または50以上のHRDスコアを有する、請求項1−49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも約20%の客観的奏効率を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
処置が、少なくとも約30%の客観的奏効率を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
処置が、少なくとも約40%の客観的奏効率を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
処置が、少なくとも約50%の客観的奏効率を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
処置が、少なくとも約8ヶ月の中央値全生存時間を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
処置が、少なくとも約9ヶ月の中央値全生存時間を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
処置が、少なくとも約11ヶ月の中央値全生存時間を提供する、請求項1−52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
癌が、局所進行性または転移性非小細胞肺癌であり、患者が、局所進行性または転移性非小細胞肺癌の処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、癌がKRAS突然変異体非小細胞肺癌である、請求項1−59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前の処置が、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
癌が、転移性膵臓癌であり、患者が、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けていた、請求項1−59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
化学療法が、FOLFIRINOX、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
癌が、KRAS突然変異体結腸直腸癌またはKRAS突然変異体胃癌である、請求項1−59のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の処置のために有用な方法および併用療法に関する。特に、本発明は、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニスト(PD−1 axis antagonist)の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせを含む併用療法を投与することによって癌を処置するための方法および併用療法に関する。本発明の組み合わせの医薬的使用も記載される。
【背景技術】
【0002】
PD−L1は、多くの癌において過剰発現され、予後不良と関連する場合が多い(Okazaki Tら、Intern. Immun. 2007年19巻(7号):813頁)(Thompson RHら、Cancer Res 2006年、66巻(7号):3381頁)。興味深いことに、正常組織および末梢血中のTリンパ球とは対照的に、腫瘍浸潤性Tリンパ球の大部分は、PD−1を優勢に発現する。腫瘍反応性T細胞上のPD−1は、抗腫瘍免疫応答の障害に寄与し得る(Ahmadzadehら、Blood 2009年 1 14巻(8号):1537頁)。これは、PD−1発現T細胞と相互作用するPD−L1発現腫瘍細胞により媒介されたPD−L1シグナル伝達を利用することによるものである可能性があり、この結果T細胞の活性が弱まり、免疫監視は回避される(Sharpeら、Nat Rev 2002年)(Keir MEら、2008年 Annu. Rev. Immunol. 26巻:677頁)。したがって、PD−L1/PD−1相互作用の阻害は、腫瘍のCD8+T細胞媒介性の死滅を増強し得る。
【0003】
その直接リガンド(例えば、PD−L1、PD−L2)を介したPD−1系シグナル伝達の阻害は、癌の処置のためのT細胞免疫性(例えば、腫瘍免疫)を増強するための手段として提唱されてきた。さらに、T細胞免疫性に対する同様の増強は、PD−L1の結合パートナーB7−1との結合を阻害することによって観察されている。その他の有利な治療的処置は、PD−1受容体/リガンド相互作用の遮断と、その他の抗癌剤を組み合わせるであろう。種々の癌の発生を処置する、安定化する、防止するおよび/または遅延するためのこのような有利な療法は、依然として必要である。
【0004】
近年、PD−1抗体ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)ならびにPD−L1抗体アベルマブ(バベンチオ)、デュルバルマブ(イミフィンジ)およびアゼゾリズマブ(azezolizumab)(テセントリク)を含むいくつかのPD−1系アンタゴニストは、癌の処置のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
【0005】
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MAP2K、MEKまたはMAPKKとしても知られる)は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)をリン酸化するキナーゼ酵素である。MAPKシグナル伝達経路は、細胞増殖、生存、分化、運動および血管新生において重要な役割を果たす。4種の別個のMAPKシグナル伝達カスケードが同定されており、そのうちの1つは、細胞外シグナル調節キナーゼERK1およびERK2ならびにその上流分子MEK1およびMEK2を含む(Akinleyeら、Journal of Hematology & Oncology 2013年6巻:27)。MEK1およびMEK2の阻害剤が、抗腫瘍薬発見の焦点となってきたが、トラメチニブがBRAF突然変異体黒色腫を処置するためにFDAによって承認され、多くのその他のMEK1/2阻害剤が臨床研究において研究されている。
【0006】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、細胞におけるDNA修復の天然に存在するプロセスに携わっている。PARP阻害は、合成致死を誘導することによる、二本鎖DNA修復遺伝子における生殖系列突然変異と関連する腫瘍に対する有効な処置戦略であるとわかっている(Sonnenblick, A.ら、Nat Rev Clin Oncol、2015年12巻(1号)、27〜4頁)。あるPARP阻害剤(PARPi)、オラパリブは、生殖系列BRCAが突然変異された(gBRCAm)進行性卵巣癌の処置のために2014年にFDAによって承認された。より最近では、PARP阻害剤ニラパリブおよびルカパリブも、卵巣癌の処置のためにFDAによって承認された。
【0007】
単剤処置または二重剤処置と比較して臨床抗腫瘍活性を改善するために、および任意選択で併用安全性プロファイルを改善するために、癌患者または癌患者の特定の集団を、潜在的には特定化された投薬計画を用いて、処置するための有利な併用療法を見出すことが依然として必要である。
【発明の概要】
【0008】
以下に記載される態様の各々は、組み合わされる態様と矛盾しない本明細書において記載される任意のその他の態様と組み合わされてもよい。さらに、本明細書において記載される態様の各々は、その範囲内に、本明細書において記載される化合物の医薬上許容される塩を想定する。したがって、語句「またはその医薬上許容される塩」は、本明細書において記載されるすべての化合物の説明中に潜在している。以下に記載されるような側面内の態様は、同側面または異なる側面内の矛盾しない任意のその他の態様と組み合わされ得る。
【0009】
一態様では、独立に、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法が本明細書において提供される。
一態様では、独立に、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の治療上有効な量を含む併用療法が本明細書において提供される。
【0010】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含み、ここにおいて、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法を提供する。
【0011】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、患者の癌は、RAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、HRAS突然変異体癌またはHRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、NRAS突然変異体癌またはNRAS関連癌である。
【0012】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、PD−1系アンタゴニストは、ニボルマブおよびペムブロリズマブから選択される抗PD−1抗体である。いくつかの態様では、PD−1系アンタゴニストは、アベルマブ、デュルバルマブおよびアテゾリズマブから選択される抗PD−L1抗体である。いくつかの態様では、PD−1系結合アンタゴニストはアベルマブである。
【0013】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、PARP阻害剤は、オラパリブ、ニラパリブ、BGB−290およびタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩からなる群から選択される。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩である。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブトシレートである。
【0014】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、MEK阻害剤は、トラメチニブ、コビメチニブ、レファメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD0325901、PD184352、PD098059、U0126、CH4987655、CH5126755およびGDC623またはその医薬上許容される塩からなる群から選択される。いくつかの態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。
【0015】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は、転移性膵臓癌であり、患者は、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、化学療法は、FOLFIRINOX(フォリン酸、5−フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチンの組み合わせ)、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである。
【0016】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様では、癌は局所進行性または転移性NSCLCである。いくつかの態様では、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、NSCLCは、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、NSCLC癌はKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCであり、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、NSCLCはKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。
【0017】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、それだけには限らないが、結腸直腸癌および胃癌を含むKRAS突然変異体癌である。
別の態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を投与することを含み、ここにおいて、PARP阻害剤がタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、PD−1系アンタゴニストがアベルマブであり、MEK阻害剤が、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法を提供する。
【0018】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、PARP阻害剤はタラゾパリブトシレートであり、MEK阻害剤はビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、遊離塩基としてのビニメチニブである。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブの医薬上許容される塩である。
【0019】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩は、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与される。
【0020】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、アベルマブは、約800mg2週間毎(Q2W)または約10mg/kg2週間毎(Q2W)の量で静脈内投与される。一態様では、アベルマブは、60分かけて静脈内投与される。
【0021】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、MEK阻害剤は、遊離塩基としてのビニメチニブである。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブの遊離塩基の結晶化形態である結晶化ビニメチニブである。一態様では、ビニメチニブは、(a)約30mg BIDもしくは約45mg 1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わない。
【0022】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、患者の癌は、RAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、HRAS突然変異体癌またはHRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、NRAS突然変異体癌またはNRAS関連癌である。
【0023】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は転移性膵臓癌であり、患者は、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、化学療法は、FOLFIRINOX(フォリン酸、5−フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチンの組み合わせ)、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである。
【0024】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCである。いくつかの態様では、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、NSCLCは、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、NSCLC癌はKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCであり、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、NSCLCはKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。
【0025】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、それだけには限らないが、結腸直腸癌および胃癌を含むKRAS突然変異体癌である。
別の態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPARP阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を投与することを含み、ここにおいて、PARP阻害剤がタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与され、PD−1系アンタゴニストがアベルマブであり、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で静脈内投与され、MEK阻害剤がビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDまたは(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与され、それに続いて1週間ビニメチニブの投与を行わない、前記方法を提供する。
【0026】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、PARP阻害剤は、タラゾパリブトシレートであり、MEK阻害剤はビニメチニブであり、PD−1系結合アンタゴニストはアベルマブである。
【0027】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、患者の癌は、RAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、HRAS突然変異体癌またはHRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、NRAS突然変異体癌またはNRAS関連癌である。
【0028】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は転移性膵臓癌であり、患者は、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けている。いくつかの態様では、化学療法は、FOLFIRINOX(フォリン酸、5−フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチンの組み合わせ)、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである。
【0029】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCである。いくつかの態様では、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、NSCLCは、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、NSCLC癌は、KRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCであり、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、NSCLCはKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。
【0030】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、それだけには限らないが、結腸直腸癌および胃癌を含むKRAS突然変異体癌である。
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、独立に、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−L1結合アンタゴニストおよびタラゾパリブまたはその医薬上塩であるPARP阻害剤の治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0031】
一態様では、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、独立に、ビニメチニブが、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて1週間ビニメチニブの投与を行わない、ビニメチニブであるMEK阻害剤の、アベルマブが、約800mg Q2W毎または約10mg/kg Q2Wの量で60分かけて静脈内投与される、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの、およびタロザパリブ(talozaparib)またはその医薬上許容される塩であり、約0.5mg QD、約0.75mg QDもしくは約1.0mg QDの量で経口投与されるPARP阻害剤の、治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む、前記方法が本明細書において提供され、一態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブトシレートである。
【0032】
別の態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤を投与することを含み、ここにおいて、PD−1系アンタゴニストがアベルマブであり、MEK阻害剤が、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法を提供する。
【0033】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、アベルマブは、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で静脈内投与され、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩は、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDまたは(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わない。
【0034】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、患者の癌は、RAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、HRAS突然変異体癌またはHRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、NRAS突然変異体癌またはNRAS関連癌である。
【0035】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は転移性膵臓癌であり、患者は、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、化学療法は、FOLFIRINOX(フォリン酸、5−フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチンの組み合わせ)、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである。
【0036】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様では、癌は局所進行性または転移性NSCLCである。いくつかの態様では、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、NSCLCは、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、NSCLC癌はKRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCであり、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、NSCLCは、KRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。
【0037】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、それだけには限らないが、結腸直腸癌および胃癌を含むKRAS突然変異体癌である。
別の態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPARP阻害剤および一定量のMEK阻害剤を投与することを含み、ここにおいて、PARP阻害剤が、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、MEK阻害剤が、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、量が全体で、癌の処置において有効である、前記方法を提供する。
【0038】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩は、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与され、ビニメチニブまたは医薬上許容される塩は、(a)約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与され、または(b)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わない。
【0039】
この態様の一側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、患者の癌は、RAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、HRAS突然変異体癌またはHRAS関連癌である。いくつかの態様では、癌は、NRAS突然変異体癌またはNRAS関連癌である。
【0040】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は転移性膵臓癌であり、患者は、癌の化学療法の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、化学療法は、FOLFIRINOX(フォリン酸、5−フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチンの組み合わせ)、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである。
【0041】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様では、癌は局所進行性または転移性NSCLCである。いくつかの態様では、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けていた。いくつかの態様では、NSCLCは、KRAS突然変異体癌またはKRAS関連癌である。いくつかの態様では、NSCLC癌は、KRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、癌は、局所進行性または転移性NSCLCであり、患者は、局所進行性または転移性NSCLCの処置の少なくとも1つの前のラインを受けており、NSCLCは、KRAS突然変異体癌である。いくつかの態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。
【0042】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、それだけには限らないが、結腸直腸癌および胃癌を含むKRAS突然変異体癌である。
本発明の以下の態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、約1%未満の、または約1%、5%、10%、25%、50%、75%もしくは80%以上のPD−L1発現の腫瘍比率スコアを有する。
【0043】
本発明の以下の態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、約5%以上、10%以上、14%以上15%以上、20%以上または25%以上のヘテロ接合性の消失(LOH)スコアを有する。
【0044】
この態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、少なくとも1種のDDR遺伝子においてDDR欠損陽性である。いくつかの態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、ATR、CHK2、PALB2、MRE11A、NMB RAD51C、MLH1、FANCAおよびFANCから選択される少なくとも1種のDDR遺伝子においてDDR欠損陽性である。
【0045】
本発明の以下の態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、癌は、約20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、42以上、45以上または50以上のHRDスコアを有する。
【0046】
本発明の以下の態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、方法は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%の処置下での患者の客観的奏効率を提供する。
【0047】
本発明の以下の態様の別の側面では、および矛盾しない任意のその他の側面と組み合わせて、方法は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月または少なくとも約11ヶ月の処置下で患者の中央値全生存時間を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、本明細書において含まれる以下の本発明の好ましい態様の詳細な説明および実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。本明細書において使用される技術用語は、単に特定の態様を説明する目的のものであり、制限であると意図されないということは理解されるべきである。さらに、本明細書において詳しく定義されない限り、本明細書において使用される技術用語は、関連技術分野において公知であるようなその伝統的な意味が与えられるべきであるということも理解されるべきである。
一般的な技術および定義
本明細書において記載される、または言及される技術および手順は、全般的に十分に理解され、当業者によって従来の方法論、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(2001年)Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(F.M. Ausubelら編(2003年));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor編(1995年)), HarlowおよびLane編(1988年) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney編(1987年));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編、1984年);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編、1998年)Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney)編、1987年);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. MatherおよびP.E. Roberts、1998年)Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. GriffithsおよびD.G. Newell編、1993〜8)J. WileyおよびSons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. WeirおよびC.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. MillerおよびM.P. Calos編、1987年); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら編、1994年);Current Protocols in Immunology (J.E. Coliganら編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology (WileyおよびSons、1999年);Immunobiology (C.A. JanewayおよびP. Travers、1997年);Antibodies (P.Finch、1997年);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty編、1RL Press, 1988〜1989年); Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. ShepherdおよびC. Dean編、Oxford University Press、2000年);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年);The Antibodies (M. ZanettiおよびJ. D. Capra編、Harwood Academic Publishers, 1995年);およびCancer: PrinciplesおよびPractice of Oncology(V.T. DeVitaら編、J.B. Lippincott Company, 1993年)に記載される広く利用される方法論などを使用して一般に採用されている。
【0049】
本発明がより容易に理解され得るように、特定の技術用語および科学用語が、以下に具体的に記載される。本文書中の別の場所に具体的に定義されない限り、本明細書において使用されるすべてのその他の技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0050】
「約」とは、数的に定義されたパラメータ(例えば、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストもしくはPARP阻害剤の用量または本明細書において記載される併用療法を用いる処置時間の長さ)を修飾するために使用される場合、パラメータが、そのパラメータの示された数値の上下10%程度で変わり得ることを意味する。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kgから5.5mg/kgの間で変わり得る。「約」とは、パラメータの列挙の開始時に使用される場合には、各パラメータを修飾することを意味する。例えば、約0.5mg、0.75mgまたは1.0mgとは、約0.5mg、約0.75mgまたは約1.0mgを意味する。同様に、約5%以上、10%以上、15%以上、20%以上および25%以上とは、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上および約25%以上を意味する。
【0051】
「投与」、「投与すること」、「処置すること」および「処置」とは、患者、個々の動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器または生物学的流体に適用される場合、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器または生物学的流体への外因性医薬剤、治療剤、診断剤または組成物の接触を指す。細胞の処置は、試薬の細胞への接触ならびに試薬の、細胞と接触している流体への接触を包含する。「投与」および「処置」はまた、例えば、細胞の、試薬、診断用化合物、結合化合物によるまたは別の細胞によるin vitroおよびex vivo処置を意味する。用語「対象」として、任意の生物、好ましくは、動物、より好ましくは、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコおよびウサギ)、最も好ましくは、ヒトが挙げられる。「処置」および「処置すること」とは、臨床設定において使用される場合、有益なまたは所望の臨床結果を得るために意図される。本発明の目的上、有益なまたは所望の臨床結果として、それだけには限らないが、以下のうち1つまたは複数が挙げられる:新生物細胞または癌性細胞の増殖を低減すること(または破壊すること)、新生細胞の転移を阻害すること、腫瘍の大きさを縮小または減少すること、疾患(例えば、癌)の緩解、疾患(例えば、癌)に起因する症状を減少すること、疾患(例えば、癌)を患っているものの生活の質を増大すること、疾患(例えば、癌)を処置するために必要なその他の医薬の用量を減少させること、疾患(例えば、癌)の進行を遅延すること、疾患(例えば、癌)を治癒することおよび/または疾患(例えば、癌)を有する患者の生存を延長すること。例えば、処置は、障害の1つまたはいくつかの症状の減少または癌などの障害の完全根絶であり得る。本発明の意味内で、用語「処置する」はまた、発症(すなわち、疾患の臨床所見の前の期間)を停止、遅延することおよび/または疾患の発生若しくは悪化のリスクを低減することを表す。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測された生存と比較して生存を延長すること、例えば、本明細書において記載されるような処置を受けていない対象と比較した治療全生存(OS)の増大および/または本明細書において記載されるような処置を受けていない対象と比較した無増悪生存(PFS)の増大を意味する。用語「処置すること」はまた、癌を有する対象の状態の改善、例えば、対象における1つまたは複数の腫瘍の大きさの減少、対象における1つまたは複数の腫瘍の成長速度の減少または実質的な変化がないこと、対象における転移の減少および対象の緩解期間の増大(例えば、処置を受けていない、もしくは異なる処置を受けている同様の癌を有する対象における1つもしくは複数測定基準と比較した、または処置の前の同一対象における1つもしくは複数の測定基準と比較した)のうち1つまたは複数を意味し得る。癌を有する対象において処置に対する応答を評価するためのさらなる測定基準は、以下に本明細書において開示される。
【0052】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどといった標的と特異的に結合可能である免疫グロブリン分子である。本明細書において、この用語は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(scFv)およびドメイン抗体(例えば、サメおよびラクダ科抗体を含む)および抗体を含む融合タンパク質および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意のその他の修飾された立体配置も包含する。抗体は、IgG、IgAまたはIgMなどの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体を含み、抗体は任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられ得る。種々のクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。
【0053】
用語、抗体の「抗原結合断片」または「抗原結合部分」とは、本明細書において、所与の抗原(例えば、PD−L1)と特異的に結合する能力を保持する1つまたは複数の無傷の抗体の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体の断片によって実施され得る。用語、抗体の「抗原結合断片」内に包含される結合断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(Wardら、Nature 341巻:544〜546頁、1989年)および単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0054】
標的(例えば、PD−L1タンパク質)と「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において同義的に使用される)抗体、抗体コンジュゲートまたはポリペプチドは、当技術分野で十分に理解された用語であり、このような特異的または優先的結合を調べる方法も当技術分野では周知である。分子は、代替細胞または物質と行うよりも長い期間および/またはより大きな親和性で、特定の細胞または物質とより頻繁に、より迅速に反応または会合する場合に、「特異的結合」または「優先的結合」を示すといわれる。抗体は、その他の物質と結合するよりも、大きな親和性、結合力で、より迅速におよび/またはより長い期間結合する場合に、標的と「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、PD−L1エピトープと特異的に、または優先的に結合する抗体とは、その他のPD−L1エピトープまたは非PD−L1エピトープと結合するよりも、このエピトープと、より大きな親和性、結合力で、より容易におよび/またはより長い期間結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的と特異的に、または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第2の標的と特異的に、または優先的に結合する場合も、結合しない場合もあるということも理解される。そのようなものとして、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(含み得るが)。全般的に、必ずしもそうではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
【0055】
抗体の「可変領域」とは、単独または組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当技術分野で公知のように、重鎖および軽鎖の各可変領域は、超可変領域として知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接して一緒にされ、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術がある:(1)種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、1991年、米国国立衛生研究所、ミッドランド州、ベセスダ))および(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikaniら、1997年、J. Molec. Biol. 273巻:927〜948頁)。本明細書において、CDRは、いずれかのアプローチによって、または両アプローチの組み合わせによって定義されたCDRを指す場合がある。
【0056】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothiaの定義、KabaおよびChothia両者の蓄積、AbM、接触および/もしくはコンホメーション定義または当技術分野で周知のCDR決定の任意の方法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRは、Kabatらによって元々定義された超可変領域として同定され得る。例えば、Kabatら、1992年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、ワシントンD.C.を参照のこと。CDRの位置はまた、Chothiaおよびその他によって元々記載された構造ループ構造として同定され得る。例えば、Chothiaら、Nature 342巻:877〜883頁、1989年を参照のこと。CDR同定のためのその他のアプローチとして、KabatおよびChothia間の妥協であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(now Accelrys(登録商標))を使用して導かれる「AbM定義」またはMacCallumら、J. Mol. Biol.、262巻:732〜745頁、1996年に示される、観察された抗原接触をベースとするCDRの「接触定義」が挙げられる。CDRの「コンホメーション定義」と本明細書において呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー寄与を行う残基として同定され得る。例えば、Makabeら、Journal of Biological Chemistry、283巻:1156〜1166頁、2008年を参照のこと。さらにその他のCDR境界定義は、上記のアプローチのうち1つを厳密に従わない場合もあるが、それにもかかわらず、特定の残基または残基の群またはさらには全CDRが、抗原結合に著しく影響を及ぼすことはないという予測または実験的知見を鑑みて、短縮または延長されることがあっても、Kabat CDRの少なくとも一部と重複するであろう。本明細書において、CDRは、アプローチの組み合わせを含む当技術分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指すことがある。本明細書において使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。2つ以上のCDRを含有する任意の所与の態様について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触および/またはコンホメーション定義のうちいずれかに従って定義され得る。
【0057】
「単離抗体」および「単離された抗体断片」とは、精製状態を指し、このような関連で、名付けられた分子は、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などのその他の生体分子または細胞片および成長培地などのその他の材料を実質的に含まないことを意味する。全般的に、用語「単離された」は、それらが、本明細書において記載されるような結合化合物の実験的または治療的使用に実質的に干渉する量で存在しない限り、このような材料の完全な不在または水、バッファーもしくは塩の不在を指すものではない。
【0058】
「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」とは、本明細書において、実質的に均一な抗体、すなわち、少量で存在し得る潜在的な天然に存在する突然変異を除いて、アミノ酸配列において同一である集団を含む抗体分子を指す。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、通常、その可変ドメイン、特に、そのCDR中に種々のアミノ酸配列を有する多数の種々の抗体を含み、これらは、種々のエピトープに対して特異的であることが多い。修飾語「モノクローナル」は、抗体の特徴が、抗体の実質的に均一な集団から得られていることを示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975年)Nature 256巻:495頁によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991年) Nature 352巻:624〜628頁およびMarksら(1991年)J. Mol. Biol. 222巻:581〜597頁に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。Presta (2005) J. Allergy Clin. Immunol. 116巻:731頁も参照のこと。
【0059】
「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種(例えば、ヒト)に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に対して同一または相同であり、一方で、鎖の残部が、別の種(例えば、マウス)に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列に対して同一または相同である抗体ならびに所望の生物活性を示す限りこのような抗体の断片を指す。
【0060】
「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生される場合にマウス炭水化物鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」とは、それぞれマウスまたはラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0061】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト(例えば、マウス)抗体ならびにヒト抗体に由来する配列を含有する抗体の形態を指す。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、通常、ヒト免疫グロブリンのものを含む。接頭辞「hum」、「hu」または「h」は、ヒト化抗体を親のげっ歯類抗体から区別するために必要に応じて抗体クローン名に付加される。げっ歯類抗体のヒト化形態は、親のげっ歯類抗体の同一CDR配列を全般的に含むが、ヒト化抗体の親和性を増大し、安定性を増大するために、またはその他の理由のために特定のアミノ酸置換が含まれる場合もある。
【0062】
「保存的に修飾されたバリアント」または「保存的置換」とは、タンパク質中のアミノ酸の、同様の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、骨格コンホメーションおよび強剛性など)を有するその他のアミノ酸との置換を指し、その結果、タンパク質の生物活性またはその他の所望の特性、例えば、抗原親和性および/または特異性を変更することなく、変化が行われ得ることが多い。当業者には、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は、生物活性を実質的に変更しないということは認識される(例えば、Watsonら(1987年) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co.、224頁(第4版))。さらに、構造的または機能的に同様のアミノ酸の置換は、生物活性を破壊する可能性が低い。例示的保存的置換は以下の表1に示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
用語「PD−1系結合アンタゴニスト」とは、本明細書で使用される場合、PD−1シグナル伝達系に対するシグナル伝達から生じるT細胞機能不全を除去するように、PD−1系結合パートナーとその結合パートナーのうちいずれか1つまたは複数との相互作用を阻害する分子を指し、T細胞機能を回復または増強させる結果となる。本明細書で使用する場合、PD−1系結合アンタゴニストは、PD−1結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニストおよびPD−L2結合アンタゴニストを含む。一態様では、PD−1系結合アンタゴニストは、PD−L1結合アンタゴニストである。一態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、アベルマブである。
【0065】
以下の表2は、本発明の処置方法、医薬および使用において使用するための例示的PD−1系結合アンタゴニストのアミノ酸配列のリストを提供する。mAb7およびmAb15について、CDRは、下線が引かれている。mAB7はまた、RN888またはPF−6801591として知られている。mAb7(別名RN888)およびmAb15は、国際特許公開WO2016/092419において開示されており、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
【表2-1】
【0067】
【表2-2】
【0068】
【表2-3】
【0069】
用語「PD−1結合アンタゴニスト」とは、本明細書において、PD−1とPD−L1、PD−L2などのその結合パートナーのうち1つまたは複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。いくつかの態様では、PD−1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD−1の結合を阻害する分子である。特定の側面では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−L1および/またはPD−L2へのPD−1の結合を阻害する。例えば、PD−1結合アンタゴニストには、PD−1とPD−L1および/またはPD−L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD−1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一態様では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1を通したTリンパ球媒介性シグナル伝達の際に発現される細胞表面タンパク質によって媒介される、またはそれを介したネガティブ同時刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞をあまり機能不全でないものにする。いくつかの態様では、PD−1結合アンタゴニストは、抗PD−1抗体である。特定の側面では、PD−1結合アンタゴニストはニボルマブである。別の特定の側面では、PD−1結合アンタゴニストは、ペムブロリズマブである。別の特定の側面では、PD−1結合アンタゴニストは、ピディリズマブである。
【0070】
用語「PD−L1結合アンタゴニスト」は、本明細書において、PD−L1とPD−1、B7−1などのその結合パートナーのうちいずれか1つまたは複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。いくつかの態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1のその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の側面では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、PD−1および/またはB7−1との結合を阻害する。いくつかの態様では、PD−L1結合アンタゴニストとして、PD−L1とPD−1、B7−1などのその結合パートナーのうち1つまたは複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する、抗PD−L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドならびに他の分子が挙げられる。一態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1を通したTリンパ球媒介性シグナル伝達の際に発現される細胞表面タンパク質によって媒介される、またはそれを介したネガティブ同時刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞をあまり機能不全でないものにする。いくつかの態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体である。特定の側面では、抗PD−L1抗体は、アベルマブである。別の特定の側面では、抗PD−L1抗体は、アテゾリズマブである。別の特定の側面では、抗PD−L1抗体は、デュルバルマブである。別の特定の側面では、抗PD−L1抗体は、BMS−936559(MDX−1105)である。
【0071】
本明細書において、抗ヒトPD−L1抗体とは、成熟ヒトPD−L1と特異的に結合する抗体を指す。成熟ヒトPD−L1分子は、以下の配列(配列番号16)のアミノ酸19〜290からなる:
【0072】
【化1】
【0073】
以下の表3は、本発明の処置法、医薬および使用において使用するための抗PD−L1抗体アベルマブの配列を提供する。アベルマブは、国際特許公開WO2013/079174においてA09−246−2として開示されており、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
【表3】
【0075】
用語「PD−L2結合アンタゴニスト」は、本明細書において、PD−L2とPD−1などのその結合パートナーのうちいずれか1つまたは複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。いくつかの態様では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2のその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の側面では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2のPD−1との結合を阻害する。いくつかの態様では、PD−L2アンタゴニストは、PD−L2とPD−1などのその結合パートナーのうちいずれか1つまたは複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する、抗PD−L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドならびに他の分子が挙げられる。一態様では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2を通したTリンパ球媒介性シグナル伝達の際に発現される細胞表面タンパク質によって媒介される、またはそれを介したネガティブ同時刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞をあまり機能不全でないものにする。いくつかの態様では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2イムノアドヘシンである。
【0076】
「MEK阻害剤」またはMEKiは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ1(MEK1)またはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ2(MEK2)の機能を阻害して、細胞外シグナル調節されるキナーゼERK1およびERK2をリン酸化する分子である。いくつかの態様では、MEK阻害剤は、900ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である小分子である。いくつかの態様では、MEK阻害剤は、900ダルトンを超える分子量を有するポリペプチドである。いくつかの態様では、MEK阻害剤は、抗体である。MEK阻害剤の態様として、それだけには限らないが、トラメチニブ(別名GSK1120212)、コビメチニブ(別名Cotellic(登録商標)、GDC−0973、XL518)、レファメチニブ(別名RDEA119、BAY869766)、セルメチニブ(別名AZD6244、ARRY−142886)、ビニメチニブ(別名MEK162、ARRY−438162)、PD0325901、PD184352(CI−1040)、PD098059、U0126、CH4987655(別名RO4987655)、CH5126755(別名RO5126766)およびGDC623並びにその開示内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるC.J. Cauntら、Nature Reviews Cancer、15巻、2015年10月、 577〜592頁)に記載されるような、その任意の医薬上許容される塩が挙げられる。
【0077】
一態様では、MEK阻害剤は、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドであるビニメチニブであり、以下の構造を有する。
【0078】
【化2】
【0079】
ビニメチニブは、ARRY−162およびMEK162としても知られる。ビニメチニブおよびその医薬上許容される塩を調製する方法は、その開示内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開WO03/077914中、実施例18(化合物29lll)に記載されている。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、遊離塩基としてのビニメチニブである。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブの医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、結晶化ビニメチニブである。結晶化ビニメチニブおよび結晶化ビニメチニブを調製する方法は、その開示内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開WO2014/063024に記載されている。
【0080】
「PARP阻害剤」または「PARPi」は、ポリ(アデノシン二リン酸[ADP]−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の、DNAの一本鎖切断(SSB)を修復する機能を阻害する分子である。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、900ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である小分子である。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、900ダルトンを超える分子量を有するポリペプチドである。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、抗体である。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、オラパリブ、ニラパリブ、BGB−290、タラゾパリブまたはオラパリブ、ニラパリブ、BGB−290もしくはタラゾパリブのその任意の医薬上許容される塩からなる群から選択される。一態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレート塩である。一態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブトシレートである。
【0081】
タラゾパリブは、デオキシリボ核酸(DNA)修復を損なう遺伝子突然変異、合成致死と呼ばれる効果を保持し、PARPタンパク質をDNA上に捕捉し、それによって、DNA修復、複製および転写を妨げることによって、ヒト癌細胞株に対して細胞傷害性である、強力な経口利用可能なPARP阻害剤である。「(8S,9R)−5−フルオロ−8−(4−フルオロフェニル)−9−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−8,9−ジヒドロ−2H−ピリド[4,3,2−de]フタラジン−3(7H)−オン」および「(8S,9R)−5−フルオロ−8−(4−フルオロフェニル)−9−(1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−2,7,8,9−テトラヒドロ−3H−ピリド[4,3,2−de]フタラジン−3−オン」(「PF−06944076」、「MDV3800」および「BMN673」とも呼ばれる)である化合物、タラゾパリブは、以下の構造を有するPARP阻害剤である、
【0082】
【化3】
【0083】
タラゾパリブおよびトシレート塩を含むその医薬上許容される塩は、国際公開公報WO2010/017055およびWO2012/054698に開示されている。タラゾパリブおよびトシレート塩を含むその医薬上許容される塩を調製するさらなる方法は、国際公開公報WO2011/097602、WO2015/069851およびWO2016/019125に記載されている。タラゾパリブおよびトシレート塩を含むその医薬上許容される塩を使用する癌を処置するさらなる方法は、国際公開公報WO2011/097334およびWO2017/075091に開示されている。
【0084】
単剤としてのタラゾパリブは、DNA修復経路異常を有する複数の種類の固形腫瘍を有する患者において実証された有効性ならびに許容される毒性プロファイルを有する。
「DNA損傷応答欠損陽性」または「DDR欠損陽性」は、本明細書において、個体または個体中の癌組織が、遺伝子解析によって決定されるように、DDR遺伝子のうち少なくとも1つにおいて生殖系列または体細胞遺伝子変更を有すると同定される状態を指す。本明細書において、DDR遺伝子は、その開示内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPearlら、Nature Reviews Cancer 15巻、166〜180頁(2015年)における追加材料の表3に含まれた遺伝子のいずれかを指す。例示的DDR遺伝子として、制限するものではないが、以下の表4に記載されるものが挙げられる。好ましいDDR遺伝子として、制限するものではないが、BRCA1、BRCA2、ATM、ATRおよびFANCが挙げられる。例示的遺伝子解析として、制限するものではないが、DNA塩基配列決定法、FoundationOne遺伝子プロファイリングアッセイ(Framptonら、Nature Biotechnology、31巻、11号、1023〜1030頁、2013年)が挙げられる。
【0085】
【表4】
【0086】
「ヘテロ接合性の消失スコア」または「LOHスコア」は、本明細書において、個体の腫瘍組織におけるゲノムLOHのパーセンテージを指す。パーセンテージゲノムLOHおよびその算出は、Swisherら(The Lancet Oncology、18巻(1号):75〜87頁、2017年1月)に記載されており、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的遺伝子解析として、制限するものではないが、DNA塩基配列決定法、Foundation MedicineのNGSベースのT5アッセイが挙げられる。
【0087】
「相同組換え欠乏スコア」または「HRDスコア」は、本明細書において、個体の腫瘍組織における、ヘテロ接合性の消失(「LOH」)の加重されていない数的合計、テロメア対立遺伝子不均衡(「TAI」)および大規模状態遷移(「LST」)を指す。HRDスコアはLOHおよびLOHスコアと一緒に、ならびにその算出は、それらの開示内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるTimmsら、Breast Cancer Res 2014年12月5日;16巻(6号):475頁、TelliらClin Cancer Res;22巻(15号);3764〜73頁2016年に記載されている。例示的遺伝子解析として、制限するものではないが、DNA塩基配列決定法、MyriadのHRDまたはHRD Plusアッセイが挙げられる(Mirzaら N Engl J Med 2016年12月1日;375巻(22号):2154〜2164頁、2016年)。
【0088】
用語「KRAS関連癌」、「HRAS関連癌」および「NRAS関連癌」とは、本明細書において、それぞれ、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、それぞれ、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質、またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全と関連する、またはそれを有する癌を指す。
【0089】
語句「KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASキナーゼまたはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全」とは、野生型KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子の遺伝子突然変異または遺伝子変更(例えば、生殖系列突然変異、体細胞突然変異または組換え突然変異)(例えば、点突然変異(例えば、野生型KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子中の1つまたは複数ヌクレオチドにおける置換、挿入および/または欠失);野生型KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子の染色体突然変異(例えば、野生型KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子の逆位;それぞれ、KRAS、HRASもしくはNRAS融合タンパク質の発現をもたらす野生型KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子転座;それぞれ、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子または遺伝子断片の不在をもたらすKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子における欠失;それぞれ、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質のレベルの増大をもたらすKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子重複(増幅とも呼ばれる);野生型KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質と比較して、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を有するKRAS、HRASもしくはNRASタンパク質の発現をもたらすKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子のコピー数変動;およびKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子のトリヌクレオチドリピートの拡大);KRAS、HRASもしくはNRAS mRNAの選択的スプライシングバージョン;またはKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子の過剰発現に起因する自己分泌活性を指す。KRAS、HRASまたはNRASの調節不全を引き起こし得るその他の種類の遺伝子突然変異または遺伝子修飾は、例えば、その開示内容が参照により全体が本明細書に組み込まれるClancy,S.、Genetic mutation、Nature Education 1巻(1号):187頁、(2008年)に記載されている。例えば、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、それぞれ野生型KRAS、HRASまたはNRAS遺伝子によってコードされるタンパク質と比較して、構成的に活性である、または増大した活性を有する(例えば、過活性)、それぞれKRAS、HRASまたはNRASタンパク質の生成をもたらす、それぞれ野生型KRAS、HRASまたはNRAS遺伝子の遺伝子突然変異であり得る。別の例として、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、遺伝子または染色体転座をもたらすことがあり、これは、機能性キナーゼドメインを含む、それぞれKRAS、HRASまたはNRASの第1の部分およびパートナータンパク質(すなわち、それぞれKRAS、HRASまたはNRASではない)の第2の部分を含有する融合タンパク質の発現をもたらす。いくつかの例では、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質または発現もしくは活性の調節不全は、それぞれ、あるKRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子の、それぞれ別のKRAS、HRASもしくはNRAS RAF遺伝子との遺伝子転座をもたらし得る。
【0090】
「KRAS突然変異体癌」、「HRAS突然変異体癌」または「NRAS突然変異体癌」とは、本明細書において、個体中の癌組織が、遺伝子解析によって決定されるように、それぞれ、KRAS、HRASおよびNRAS遺伝子中に少なくとも1つの生殖系列または体細胞遺伝子突然変異を有すると同定され、このような突然変異が、過活性突然変異KRAS、HRASおよびNRASタンパク質をもたらす、またはこのような突然変異が、それぞれ、対応する染色体上での野生型もしくは突然変異KRAS、HRASおよびNRAS遺伝子のコピーの増大の形態である癌を指す。本明細書において、突然変異KRAS、HRASおよびNRASタンパク質は、GTPとのその結合の結合定数Kiが、それぞれ、GTPとの対応する野生型KRAS、HRAS、NRASタンパク質結合の結合定数Kiよりも、少なくとも約10%、約20%、約30%、約50%、約100%、約150%、約200%、約300%、約500%、10倍、50倍または100倍高い場合に、過活性と考えられる。いくつかの態様では、KRAS遺伝子、HRAS遺伝子またはNRAS遺伝子の遺伝子突然変異は、コドン12、13、59、61、117または146である。いくつかの態様では、突然変異は、コドン12、13または61での点突然変異である。いくつかの態様では、遺伝子突然変異は、コドン12、13または61でのミスセンス突然変異である。いくつかの態様では、KRAS遺伝子の遺伝子突然変異は、非小細胞肺癌においてG12C、G12R、G12S、G12A、G12D、G12V、G13C、G13R、G13S、G13A、G13D、Q61K、Q61L、Q61RおよびQ61Hからなる群から選択される。いくつかの態様では、KRAS遺伝子の遺伝子突然変異は、膵臓癌においてG12D、G12V、G12R、G12A、G13D、Q61HおよびQ61Lからなる群から選択される。いくつかの態様では、KRAS遺伝子、HRAS遺伝子およびNRAS遺伝子の突然変異は、対応する染色体遺伝子座上でのKRAS、HRASおよびNRAS遺伝子のコピーの増大の形態である。例示的遺伝子解析として、制限するものではないが、DNA塩基配列決定法および規制当局によって承認された遺伝子解析アッセイが挙げられる。用語「RAS突然変異体癌」とは、本明細書において、KRAS突然変異体癌、HRAS突然変異体癌またはHRAS突然変異体癌である癌を指す。
【0091】
「遺伝子突然変異」または「遺伝子変更」は、本明細書において、点突然変異、染色体突然変異およびコピー数変動を含む野生型遺伝子の生殖系列、体細胞または組換え突然変異を指し、その開示内容が参照により全体が本明細書に組み込まれるClancy,S.、Genetic mutation、Nature Education 1巻(1号):187、(2008年)に記載されるように、点突然変異は、遺伝子におけるヌクレオチドの置換、挿入および欠失を含み、染色体突然変異は、染色体の関連領域の逆位、欠失、重複および転座を含み、コピー数変動は、関連遺伝子座上の遺伝子のコピーの増大または拡大するトリヌクレオチドリピートを含む。
【0092】
用語「腫瘍比率スコア」または「TPS」とは、本明細書において、サンプルの免疫組織化学試験において部分または完全膜染色を示す生存可能腫瘍細胞のパーセンテージを指す。本明細書において使用される「PD−L1発現の腫瘍比率スコア」は、サンプルのPD−L1発現免疫組織化学試験において部分または完全膜染色を示す生存可能腫瘍細胞のパーセンテージを指す。例示的サンプルとして、制限するものではないが、生体サンプル、組織サンプル、ホルマリンン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト組織サンプルおよびホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト腫瘍組織サンプルが挙げられる。例示的PD−L1発現免疫組織化学試験として、制限するものではないが、PD−L1 IHC 22C3 PharmDx (FDA承認、Daco)、Ventana PD−L1 SP263アッセイおよび国際特許出願PCT/EP2017/073712に記載された試験が挙げられる。
【0093】
用語「癌」、「癌性」または「悪性」とは、通常、未制御の細胞成長を特徴とする哺乳動物における身体的状態を指すまたは説明する。癌の例として、それだけには限らないが、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫および肉腫が挙げられる。このような癌のより特定の例として、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、神経膠芽腫多形、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌腫および頭頸部癌が挙げられる。一態様では、癌は、腎細胞癌である。一態様では、癌は、膵管腺癌(PDAC)である。
【0094】
用語「併用療法」とは、本明細書において、単一または複数の組成物中に包含される、治療上活性な薬剤、(すなわち、組み合わせパートナー)、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせまたはMEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせの任意の投薬計画を指し、治療上活性な薬剤は、医療関係者によって処方された様式で、または本明細書において定義されるように規制当局に従って、一緒にまたは別個に(各々またはその任意の組み合わせで)投与される。
【0095】
一態様では、併用療法は、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせを含む。
一態様では、併用療法は、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせを含む。
【0096】
一態様では、併用療法は、MEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせを含む。
一態様では、併用療法は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブトシレートであるPARP阻害剤の組み合わせを含む。
【0097】
一態様では、併用療法は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤およびタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であるPARP阻害剤の組み合わせを含む。
【0098】
一態様では、併用療法は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせを含む。
本発明に従う処置されるべき「患者」は、任意の温血動物、例えば、それだけには限らないが、ヒト、サルまたはその他の下等霊長類、ウマ、イヌ、ウサギ、モルモットまたはマウスを含む。例えば、患者はヒトである。医学の技術分野の当業者は、癌に罹患している、および処置を必要としている個体を容易に同定できる。
【0099】
いくつかの態様では、対象は、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する癌(例えば、KRAS、HRASまたはNRAS関連癌)(例えば、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたアッセイまたはキットを使用して決定されたような)を有すると同定または診断されている。いくつかの態様では、対象は、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全について陽性である腫瘍(例えば、規制当局によって承認されたアッセイまたはキットを使用して決定されるような)を有する。対象は、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全について陽性である腫瘍(例えば、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたアッセイまたはキットを使用して陽性と同定された)を有する対象であり得る。対象は、その腫瘍が、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する対象であり得る(例えば、腫瘍は、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたキットまたはアッセイを使用して、このように同定される)。いくつかの態様では、対象は、KRAS、HRASまたはNRAS関連癌を有すると疑われる。いくつかの態様では、対象は、KRAS、HRASもしくはNRAS遺伝子、KRAS、HRASもしくはNRASタンパク質またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する腫瘍を有することを示す臨床記録を有する(および任意選択で、臨床記録は、対象が、任意の本明細書において提供される組み合わせを用いて処置されなければならないことを示す)。いくつかの態様では、対象は、小児患者である。一態様では、対象は、KRAS突然変異体癌を有する。一態様では、対象は、KRAS突然変異体非小細胞肺癌を有する。一態様では、対象は、KRAS突然変異体膵管腺癌を有する。一態様では、対象は、KRAS突然変異体結腸直腸癌を有する。一態様では、対象は、KRAS突然変異体胃癌を有する。
【0100】
用語「小児患者」とは、本明細書において、診断または処置の時間で16歳の年齢未満の患者を指す。用語「小児」は、新生児(誕生から生後1ヶ月)、乳児(1ヶ月から最大2歳)、児童(2歳から最大12歳)および青年(12歳から21歳(22歳の誕生日まで、ただしそれを含まない))を含む種々の亜集団にさらにわけられ得る。Berhman RE、Kliegman R、Arvin AM、Nelson WE. Nelson Textbook of Pediatrics、第15版Philadelphia: W.B. Saunders Company、1996年;Rudolph AMら Rudolph’s Pediatrics、第21版New York:McGraw−Hill、2002年;およびAvery MD、First LR. Pediatric Medicine、第2版Baltimore:Williams & Wilkins;1994年。
【0101】
用語「治療レジメン」、「投薬プロトコール」および「投薬計画」は、本発明と組み合わせた、各治療薬の用量および投与のタイミングを指すために同義的に使用される。
「寛解させること」とは、処置を施されていないことと比較した、1つまたは複数の症状の減少または改善を意味する。「寛解させること」はまた、症状の持続期間の短縮または低減を含む。
【0102】
本明細書において、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」または「治療上有効な量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果を達成するのに十分な量である。予防的使用のためには、有益なまたは所望の結果は、疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症および疾患の発達の間に提示する中間の病理学的表現型を含む、疾患の、リスクを排除することまたは低減すること、重症度を減少することまたは発生を遅延することを含む。治療的使用のためには、有益なまたは所望の結果は、罹患率の低減などの臨床結果または種々の疾患もしくは状態(例えば、癌など)の1つもしくは複数の症状の寛解、疾患を処置するために必要なその他の医薬の用量の減少、別の投薬の効果の増強および/または疾患の進行の遅延を含む。有効投与量は、1つまたは複数の投与で投与され得る。本発明の目的上、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床関連で理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物または医薬組成物とともに達成される場合もある。したがって、「有効投与量」は、1種または複数のその他の薬剤とともに、望ましい結果が達成され得る、または達成される場合には、1種または複数の治療薬を投与することに関連して考えられてもよく、単剤が有効量で与えられると考えられてもよい。癌の処置に関連して、有効量とは、(1)腫瘍の大きさを低減する、(2)腫瘍転移の発生を阻害する(すなわち、ある程度まで減速する、好ましくは、停止する)、(3)腫瘍成長または腫瘍侵襲性をある程度まで阻害する(すなわち、ある程度まで減速する、好ましくは、停止する)、および/または(4)癌と関連する徴候または症状のうち1種または複数をある程度まで軽減する(または好ましくは、排除する)効果を有する量を指す。用量および投与計画の治療的または薬理学的有効性はまた、これらの特定の腫瘍を有する患者において疾患管理および/または全生存を誘導、増強、維持または延長する能力として特性決定されることができ、これらは、疾患進行前の時間の延長として測定され得る。
【0103】
用語「Q2W」は、本明細書において、2週間毎に1回を意味する。
用語「BID」は、本明細書において、1日2回を意味する。
「腫瘍」とは、癌と診断された、またはそれを有すると疑われる対象に適用される場合、任意の大きさの悪性または悪性の可能性が高い新生物または組織腫瘤を指し、原発腫瘍および続発性新生物を含む。固形腫瘍は、普通、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常な成長または腫瘤である。種々の種類の固形腫瘍が、それを形成する細胞の種類について名付けられている。固形腫瘍の例として、肉腫、癌腫およびリンパ腫がある。白血病(血液の癌)は、全般的に固形腫瘍を形成しない(国立癌研究所、癌用語の辞書)。
【0104】
「腫瘍量」はまた、「腫瘍負荷」とも呼ばれ、身体中に分散された腫瘍材料の総量を指す。腫瘍量とは、リンパ節および骨髄を含む身体中の癌細胞の総数または腫瘍の全体の大きさを指す。腫瘍量は、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、対象から除去の際に、例えば、ノギスを使用して、または身体中にあって、画像処理技術、例えば、超音波、骨スキャン、コンピューター断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像処理(MRI)スキャンを使用して腫瘍の寸法を測定することなどによって決定され得る。
【0105】
用語「腫瘍の大きさ」とは、腫瘍の長さおよび幅として測定され得る腫瘍の全体の大きさを指す。腫瘍の大きさは、例えば、対象からの除去の際に、例えば、ノギスを使用して、または身体中にあって、画像処理技術、例えば、骨スキャン、超音波、CTまたはMRIスキャンを使用して腫瘍の寸法を測定することによってなど、当技術分野で公知の様々な方法によって決定され得る。
【0106】
「個々の応答」または「応答」は、制限するものではないが、(1)減速または完全停止を含む、疾患進行(例えば、癌進行)のある程度までの阻害、(2)腫瘍の大きさの低減、(3)隣接末梢臓器および/または組織への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速または完全停止)、(4)転移の阻害(すなわち、低減、減速または完全停止)(5)疾患または障害(例えば、癌)と関連する1つもしくは複数の症状のある程度までの軽減、(6)全生存および無増悪生存期間を含む生存の長さの増大または延長および/または(7)処置後所与の時点での死亡率の減少を含む、個体にとっての利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
【0107】
医薬を用いる処置に対する患者の「有効応答」または患者の「応答性」および同様の単語は、癌などの疾患または障害のリスクにある、またはそれを患っている患者に与えられる臨床的または治療的利益を指す。一態様では、このような利益は、生存(全生存および/または無増悪生存期間を含む)の延長、客観的奏効(完全奏効または部分奏効を含む)をもたらすことまたは癌の徴候もしくは症状を改善することのうち任意の1つまたは複数を含む。
【0108】
「客観的奏効」または「OR」とは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な奏効を指す。「客観的奏効率」(ORR)とは、最小期間の間、所定量の腫瘍の大きさの低減を有する患者の割合を指す。全般的に、ORRとは、完全奏効(CR)率および部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0109】
「完全奏効」または「CR」とは、本明細書において、処置に応じた癌のすべての徴候の消失(例えば、すべての標的病変の消失)を意味する。これは、癌が治癒されたことを常に意味するものではない。
【0110】
本明細書において、「部分奏効」または「PR」とは、処置に応じた、1つもしくは複数の腫瘍もしくは病変の大きさ、または身体における癌の程度の減少を指す。例えば、いくつかの態様では、PRは、参照としてベースラインSLDをとりながらの、標的病変の最長径(SLD)の合計における少なくとも30%の減少を指す。
【0111】
「持続奏効」とは、処置の休止後の腫瘍成長の低減に対する持続効果を指す。例えば、腫瘍の大きさは、医薬投与の開始時の大きさと比較して同一の大きさである場合も、より小さい場合もある。いくつかの態様では、持続奏効は、処置期間と少なくとも同一の期間、処置期間の少なくとも1.5×、2×、2.5×または3×の長さまたはそれより長い期間を有する。
【0112】
本明細書において、「無増悪生存期間」(PFS)とは、処置されている疾患(例えば、癌)が悪化しない処置期間の間および処置期間後の時間の長さを指す。無増悪生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を起こした時間量ならびに患者が安定疾患を起こした時間量を含み得る。
【0113】
いくつかの態様では、本明細書において使用されるような「客観的奏効」、「完全奏効」、「部分奏効」、「進行性の疾患」、「安定な疾患」、「無増悪生存期間」、「奏効の持続期間」を含む、癌を処置する記載された方法の抗癌効果は、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)以外の局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者においてRECIST v1.1を使用して(Eisenhauerら、Eur J of Cancer 2009年;45巻(2号):228〜47頁)、ならびに転移性CRPCを有する患者においてはRECIST v1.1およびPCWG3を使用して(Scherら、J Clin Oncol 2016年4月20日;34巻(12号):1402〜18頁)研究者によって定義され、評価されるとおりである。Eisenhauerら、Eur J of Cancer 2009年;45巻(2号):228〜47およびScherら、J Clin Oncol 2016年4月20日;34巻(12号):1402〜18頁の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0114】
いくつかの態様では、それだけには限らないが、「免疫関連客観的奏効」(irOR)、「免疫関連完全奏効」(irCR)、「免疫関連部分奏効」(irCR)、「免疫関連進行性疾患」(irPD)、「免疫関連安定疾患」(irSD)、「免疫関連無増悪生存期間」(irPFS)、「免疫関連奏効期間」(irDR)を含む処置の抗癌効果は、本明細書において、転移性CRPCを有する患者以外の、局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者についての免疫関連奏効判定基準(irRECIST、Nishinoら J Immunother Cancer 2014年;2巻:17頁)によって定義され、評価されるとおりである。Nishinoら J Immunother Cancer 2014年;2巻:17頁の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
本明細書において、「全生存」(OS)とは、特定の期間後に生存している可能性が高い群中の個体のパーセンテージを指す。
「生存の延長」とは、未処置患者に対する(すなわち、医薬を用いて処置されない患者に対する)処置患者における全生存または無増悪生存期間の全体的な増大を意味する。
【0116】
本明細書において、「薬物関連毒性」、「注入関連反応」および「免疫関連有害事象」(「irAE」)およびその重症度またはグレードは、米国国立癌研究所の有害事象の一般技術用語判定基準v4.0(NCI CTCAE v4.0)に例示され、定義されるとおりである。
【0117】
本明細書において、「と組み合わせて」または「とともに」とは、根底にある化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤のうちすべてまたは一部、例えば、そのうち2種すべて、そのうち3種すべて、そのうち3種のうち任意の2種の別個の投与量としての、あるいは、固定用量組み合わせとしての、同時の、別個のまたは断続的な2種、3種またはそれより多い化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤の投与を指す。固定用量組み合わせ内の任意の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤は、同一用法および送達経路を有することが理解される。
【0118】
「低用量量」とは、本明細書において、臨床設定において通常使用される量または用量よりも少ない、物質、薬剤、化合物または組成物の量または用量を指す。
用語「進行した」とは、本明細書において、固形腫瘍と関連する場合に、局所進行性(非転移性)疾患および転移性疾患を含む。治癒的意図を用いて処置される場合も、または処置されない場合もある局所進行性固形腫瘍および治癒的意図を用いて処置され得ない転移性疾患は、本発明において使用されるように、「進行した固形腫瘍」の範囲内に含まれる。当業者ならば、患者において進行した固形腫瘍を認識および診断できるであろう。
【0119】
本発明の目的上、「奏効期間」とは、薬物処置による腫瘍モデル成長阻害の実証からの、前処置成長率と同様の回復成長率の獲得の時間までの時間を意味する。
用語「相加的」は、2種の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤の組み合わせの結果は、個々に化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤各々の合計と同等であることを意味するように使用される。用語「相加的」は、個別の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤各々の使用を上回る、処置されている疾患状態または障害の改善がないことを意味する。
【0120】
用語「相乗作用」または「相乗的」は、2種以上の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤の組み合わせの結果は、各薬剤を一緒にした合計よりも大きいことを意味するように使用される。用語「相乗作用」または「相乗的」とは、個別の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤各々の使用を上回る、処置されている疾患状態または障害の改善があることを意味する。処置されている疾患状態または障害のこの改善は、「相乗作用」である。「相乗的量」または「相乗的に有効な量」は、「相乗的」が、本明細書において定義されるように、相乗作用をもたらす2種の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤の組み合わせの量である。1種または2種の成分間の相乗的相互作用、効果の最適範囲および効果の各成分の絶対用量範囲を決定することは、処置を必要とする患者への種々のw/w(重量あたりの重量)比範囲および用量にわたる成分の投与によって決定的に測定され得る。しかし、in vitroモデルまたはin vivoモデルにおける相乗作用の観察は、ヒトおよびその他の種における効果の予測である可能性があり、in vitroモデルまたはin vivoモデルは、相乗作用を測定するために本明細書において記載されるように存在し、このような研究の結果はまた、薬物動態/薬力学的方法の適用によって、ヒトおよびその他の種において必要な有効用量および血漿中濃度比範囲および絶対用量および血漿中濃度を予測するために使用され得る。例示的相互作用として、それだけには限らないが、その開示内容が参照により全体が本明細書に組み込まれる、Jia JiaらNature Reviews、Drug Discovery、8巻、2009年2月、111〜128頁に記載されるように、個別の化合物、成分またはターゲッティングされる薬剤各々の使用を上回る、有効性の増強、同等または増大したレベルの有効性での投与量の減少、薬物耐性の発生の低減または遅延および同時増強または同等の治療作用および不要の作用の低減が挙げられる。
【0121】
いくつかの態様では、「相乗作用」とは、本明細書において、投与された化合物、成分またはターゲッティングされた薬剤各々自体の作用の単純付加より大きい効果、例えば、増殖性疾患、特に、癌またはその症状の症候性進行を減速することをもたらす、2種または3種の成分またはターゲッティングされる薬剤の組み合わせ、例えば、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせ、MEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせを指す。
【0122】
「化学療法薬」は、癌の処置において有用な化合物である。化学療法薬の例として、チオテパおよびシクロホスファミド(シトキサン(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;エチレンイミンおよびアルトレタミンを含めたメチラメラミン(methylamelamines)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);δ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、マリナール(登録商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)を含む)、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)および9−アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK−386;CDP323;経口α−4インテグリン阻害剤;サルコディクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamidea)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア(nitrosureas);エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1IおよびカリケアマイシンωI1(例えば、Nicolaouら、Agnew、Chem Intl.Ed.Engl.、33巻:183〜186頁(1994年)を参照のこと)などの抗生物質;ジネマイシンAを含めたジネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロンおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンおよびイマチニブなどのピリミジン類似体(2−フェニルアミノピリミジン誘導体)ならびにその他のc−it阻害剤;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどのアンチアドレナール;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム塩;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンおよびアンサマイトシン(ansamitocins)などのマイタンシノイド(maytansinoids);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T−2毒素、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアンギジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(商標))およびドキセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE(登録商標))としても知られるパクリタキセルのアルブミンを操作したナノ粒子製剤;クロランブシル(chloranbucil);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;上記のいずれかの医薬上許容される塩、酸または誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの併用療法の略語、CHOPならびにオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を5−FUおよびロイコボビン(leucovovin)と組み合わせて用いる処置計画の略語、FOLFOXなどの上記のうち2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0123】
化学療法薬のさらなる例として、癌の成長を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断または阻害するように作用し、全身(systemic)または全身(whole−body)処置の形態であることが多い抗ホルモン剤が挙げられる。それらは、それ自体ホルモンであり得る。例として、例えば、タモキシフェン(NALVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェン(FERESTON(登録商標))を含めた抗エストロゲン薬および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);フルベストラント(FASLODEX(登録商標))などのエストロゲン受容体アンタゴニスト;卵巣を抑制またはシャットダウンするように機能する薬剤、例えば、酢酸ロイプロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプテレリンなどの黄体(leutinizing)ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミドなどの抗アンドロゲン;副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))などが挙げられる。さらに、化学療法薬のこのような定義は、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソレンヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC−α、Raf、H−Rasおよび上皮成長因子受容体(EGF−R)などの、異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路において遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));フルベストラントなどの抗エストロゲン;イマチニブまたはEXEL−0862(チロシンキナーゼ阻害剤)などのKit阻害剤;エルロチニブまたはセツキシマブなどのEGFR阻害剤;ベバシズマブなどの抗VEGF阻害剤;アリノテカン;rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブおよびラパチニブジトシラート(ErbB−2およびGW572016としても知られるEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);17AAG(熱ショックタンパク質(Hsp)90毒であるゲルダナマイシン誘導体);ならびに上記のいずれかの医薬上許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0124】
「化学療法」とは、本明細書において、癌の処置のための上記で定義されるような化学療法薬または2、3もしくは4種の化学療法薬の組み合わせを指す。化学療法が、2種以上の化学療法薬からなる場合には、化学療法薬は、患者に、同一治療サイクルで同日にまたは異なる日に投与され得る。
【0125】
「白金ベースの化学療法」とは、本明細書において、少なくとも1種の化学療法薬が、白金の配位化合物である化学療法を指す。例示的な白金ベースの化学療法として、制限するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、シスプラチンと組み合わせたゲムシタビン、ペメトレメド(pemetremed)と組み合わせたカルボプラチンが挙げられる。
【0126】
「白金ベースのダブレット」とは、本明細書において、2種および2種以下の化学療法薬を含む化学療法を指し、少なくとも1種の化学療法薬が、白金の配位化合物である。例示的な白金ベースのダブレットとして、制限するものではないが、シスプラチンと組み合わせたゲムシタビン、ペメトレキセドと組み合わせたカルボプラチンが挙げられる。
【0127】
本明細書において、用語「サイトカイン」とは、全般的に、細胞間媒介物質として別の細胞で作用する、またはタンパク質を産生する細胞上で自己分泌効果を有する、ある細胞集団によって放出されるタンパク質を指す。このようなサイトカインの例として、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(「IL」)、例えば、PROLEUKIN(登録商標)rIL−2を含む、IL−1、IL−la、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17A−F、IL−18〜IL−29(IL−23など)、IL−31;腫瘍壊死因子、例えば、TNF−αまたはTNF−β、TGF−l−3;ならびに白血病阻害剤因子(「LIF」)、繊毛様神経栄養因子(「CNTF」)、CNTF様サイトカイン(「CLC」)、カルジオトロフィン(「CT」)およびキットリガンド(「L」)を含むその他のポリペプチド因子が挙げられる。
【0128】
本明細書において、用語「ケモカイン」とは、白血球の走化作用および活性化を選択的に誘導する能力を有する可溶性因子(例えば、サイトカイン)を指す。それらはまた、血管新生、炎症、創傷治癒および腫瘍発生のプロセスを誘発する。例示的ケモカインとして、IL−8、マウスケラチノサイト化学誘引物質(KC)のヒトホモログが挙げられる。
【0129】
語句「医薬上許容される」は、物質または組成物が、製剤を含むその他の成分および/またはそれで処置される哺乳動物と化学的および/または毒物学的に適合しなくてはならないことを示す。いくつかの態様は、本明細書において記載される化合物の医薬上許容される塩に関する。用語「医薬上許容される塩」とは、投与される生物に対して著しい刺激作用を引き起こさず、化合物の生物活性および特性を抑止しない化合物の製剤を指す。特定の例では、医薬上許容される塩は、本明細書において記載される化合物を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などといった酸と反応させることによって得られる。いくつかの場合には、医薬上許容される塩は、本明細書において記載される酸性基を有する化合物を、塩基と反応させて、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩、有機塩基、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンの塩ならびにアルギニン、リシンなどといったアミノ酸を有する塩などの塩を形成することによって、またはこれまでに決定されたその他の方法によって得られる。
【0130】
酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩もまた形成され得る。
適した塩に関する概説については、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use by Stahl and Wermuth (Wiley−VCH, 2002年)を参照のこと。本明細書において記載される化合物の医薬上許容される塩を作製する方法は、当業者にとって公知である。
【0131】
用語「溶媒和物」は、本明細書において記載される化合物および1種または複数の医薬上許容される溶媒分子、例えば、水およびエタノールを含む分子複合体を説明するために本明細書において使用される。
【0132】
本明細書において記載される化合物はまた、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在し得る。したがって、いくつかの態様は、本明細書において記載される化合物の水和物および溶媒和物に関する。
【0133】
1個または複数の不斉炭素原子を含有する本明細書において記載される化合物は、2以上の立体異性体として存在し得る。本明細書において記載される化合物が、アルケニルまたはアルケニレン基を含有する場合には、幾何的シス/トランス(またはZ/E)異性体があり得る。構造異性体が低エネルギー障壁を介して相互交換できる場合には、互換異性的異性(「互換異性」)が生じ得る。これは、例えば、イミノ、ケトまたはオキシム基を含有する本明細書において記載される化合物においてプロトン互換異性または芳香族部分を含有する化合物においては、いわゆる平衡互換異性の形態をとり得る。単一化合物が、2種以上の異性を示し得る。
【0134】
本明細書において記載される態様の化合物は、本明細書において記載される化合物のすべての立体異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)ならびにすべての光学異性体(例えば、RおよびSエナンチオマー)ならびにこのような異性体のラセミ、ジアステレオマーおよびその他の混合物を含む。すべての立体異性体が、本発明者らの特許請求の範囲の範囲内に包含されるが、当業者は、特定の立体異性体が好ましいものであり得ることを認識するであろう。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書において記載される化合物は、エノールおよびイミン形態ならびにケトおよびエナミン形態ならびに幾何異性体およびそれらの混合物を含むいくつかの互換異性形態で存在することができる。すべてのこのような互換異性形態は、本態様の範囲内に含まれる。互換異性体は、溶液中に互換異性セットの混合物として存在する。固体形態では、普通、1種の互変異性体が優勢である。1種の互変異性体が記載されてもよいとしても、本態様は、本化合物のすべての互換異性体を含む。
【0136】
2種以上の異性を示す化合物およびそれらの1種または複数の混合物を含む本明細書において記載される化合物のすべての立体異性体、幾何異性体および互換異性形態が、本態様の範囲内に含まれる。また、対イオンが光学的に活性である、酸付加物または塩基性塩、例えば、d−乳酸塩もしくはl−リシンまたはラセミ、例えば、dl−酒石酸塩もしくはdl−アルギニンも含まれる。
【0137】
本態様はまた、本明細書において記載される化合物のアトロプ異性体も含む。アトロプ異性体は、回転が制限された異性体に分離され得る化合物を指す。
シス/トランス異性体は、当業者に周知の従来技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別結晶化によって分離され得る。
【0138】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来技術として、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用する、適した光学的に純粋な前駆体からのキラル合成またはラセミ体(または塩または誘導体のラセミ体)の分割が挙げられる。
【0139】
あるいは、ラセミ体(またはラセミ前駆体)は、適した光学的に活性な化合物、例えば、アルコールと、または本明細書において記載される化合物が、酸性または塩基性部分を含有する場合には、1−フェニルエチルアミンまたは酒石酸などの塩基または酸と反応されてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶化によって分離されてもよく、ジアステレオ異性体の一方または両方が、当業者に周知の手段によって対応する純粋なエナンチオマーに変換されてもよい。
【0140】
特に断りのない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が支配する。本明細書および特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」などの変形は、述べられた整数または整数の群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数の群の除外を意味しないと理解される。文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段の指示がない限り、複数の参照を含む。例えば、「1種の」賦形剤は、1種または複数の賦形剤を含む。本明細書で記載される本発明の側面および変形は、「からなる」および/または「本質的にからなる」側面および変形を含むことが理解される。
【0141】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験において使用され得る。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図していない。
方法、使用および医薬
他によるこれまでの研究によって、KRASおよびNRAS突然変異体腫瘍は、in vitroで、KRAS突然変異体腫瘍については、in vivoで、MEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせに対して高度に感受性であることが実証された。Sunら、Sci. Transl. Med. 9巻、eaal5148(2017年5月)。PD−L1発現は、肺腺癌においてKRAS突然変異と関連していることおよびPD−L1が、肺腺癌細胞においてCD3+T細胞のアポトーシスを誘導し、媒介された免疫エスケープは、抗PD−1抗体ペムブロリズマブによって逆転され得ることもわかっている。Chenら、Cancer Immunol Immunother 66巻:1175〜1187頁(2017年4月)。さらに、MEK阻害剤およびPD−L1抗体の組み合わせは、いずれかの薬剤単独がわずかにしか効果的ではない場合であっても、相乗的および耐久性腫瘍退縮をもたらすこともわかっている。Ebertら、Immunity 44巻、609〜621頁(2016年3月)。
【0142】
本発明に従って、一態様では、一定量の第1の化合物または成分、例えば、MEK阻害剤は、一定量の第2の化合物または成分、例えば、PD−1系結合アンタゴニストと、および任意選択で、第3の化合物または成分、例えば、PARP阻害剤との組み合わせで使用され、ここにおいて、量が全体で、癌の処置において有効である。全体で有効である量は、処置されている障害の症状のうち1つまたは複数をある程度まで軽減する。
【0143】
本発明に従って、本発明の併用療法の組み合わせパートナーの各々の治療上有効な量は、同時に、別個にまたは逐次、任意の順序で投与されてもよい。一態様では、癌を含む増殖性疾患を処置する方法は、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの組み合わせまたはMEK阻害剤およびPARP阻害剤の組み合わせまたはMEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤の組み合わせの投与を含んでもよく、個々の組み合わせパートナーは、共同で治療上有効な量(例えば、相乗的に有効な量)で、例えば、本明細書において記載される量に対応する毎日または断続的投与量で同時にまたは任意の順序で逐次投与される。本発明の併用療法の個々の組み合わせパートナーは、療法の過程の間の種々の時間で別個に、または分割されたもしくは単一の組み合わせ形態で同時に投与され得る。一態様では、PARP阻害剤は、1日1回または1日2回のいずれかで毎日投与されてもよく、MEK阻害剤は、1日1回または1日2回のいずれかで毎日投与されてもよく、PD−1系結合アンタゴニストは、毎週投与されてもよい。したがって、本発明は、同時または交互治療のすべてのこのようなレジメンを包含すると理解されるべきであり、用語「投与すること」は、それに応じて解釈されるべきである。
【0144】
用語「共同で治療上有効な量」とは、本明細書において、本明細書において記載される組み合わせの治療薬が、相互作用(例えば、共同治療効果、例えば、相乗作用)を示すような時間間隔で、患者に同時にまたは別個に(例えば、時差的な様式、例えば、順番を特定した様式で)与えられる場合を意味する。これが当てはまるか否かは、血液レベルを追跡することおよび組み合わせ成分が、少なくとも特定の時間間隔の間、処置されるべきヒトの血液中に存在することを示すことによって特に決定され得る。
【0145】
一態様では、癌を含む増殖性疾患を処置する方法は、例えば、毎日または本明細書において記載される量に対応する、共同で治療上有効な量(例えば、相乗的に有効な量)で、同時または任意の順序で逐次の、遊離または医薬上許容される塩の形態のMEK阻害剤の投与およびPD−1系結合アンタゴニストの投与を含み得る。一態様では、増殖性疾患を処置する方法は、共同で治療上有効な量(例えば、相乗的に有効な量)で、例えば、本明細書において記載される量に対応する毎日または断続的投与量で、同時または任意の順序で逐次の、遊離または医薬上許容される塩の形態のMEK阻害剤の投与、PD−1系結合アンタゴニストの投与および遊離または医薬上許容される塩の形態のPARP阻害剤の投与を含み得る。
【0146】
本発明の組み合わせの化合物または成分の投与は、作用の部位への化合物または成分の送達を可能にする任意の方法によって達成され得る。これらの方法として、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内注射または注入)、局所および直腸投与が挙げられる。
【0147】
一態様では、増殖性疾患を有する対象を処置する方法であって、前記対象に、本明細書において記載されるような併用療法を増殖性疾患に対して共同で治療上有効である量で投与することを含む、前記方法が本明細書において提供される。一態様では、増殖性疾患は癌である。一態様では、癌は、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)癌、腎癌(腎細胞癌を含む)、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌(膵管腺癌(PDA)を含む)、神経膠芽腫多形、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌腫および頭頸部癌から選択される。一態様では、癌は膵臓癌である。一態様では、癌は膵管腺癌(PDA)である。一態様では、癌は非小細胞肺癌である。一態様では、癌は結腸直腸癌である。一態様では、癌は胃癌である。一態様では、癌は前立腺癌である。一態様では、癌はRAS突然変異体癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体結腸直腸癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体胃癌である。一態様では、癌はHRAS突然変異体癌である。一態様では、癌はNRAS突然変異体癌である。一態様では、癌は、BRCA1、BRCA2、ATM、ATRおよびFANCから選択される少なくとも1つのDDR遺伝子においてDDR欠損陽性である。いくつかの態様では、対象は、処置の少なくとも1つの前のライン、例えば、別の抗癌処置を用いる少なくとも1つの処置、例えば、第1または第2ラインの全身抗癌療法(例えば、1種または複数の細胞傷害性薬剤を用いる処置)、腫瘍の切除または放射線療法を用いて以前に処置された。一態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。一態様では、前の処置は、FOLFIRINOX、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである化学療法である。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブであるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0148】
一態様では、癌の処置を必要とする患者において癌を処置する方法であって、(a)患者における癌がKRAS関連癌であることを決定することおよび(b)患者に、本明細書において記載される併用療法の治療上有効な量を投与することを含む、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの態様では、患者は、患者または患者から得た生検サンプルにおいて、KRAS遺伝子、KRASキナーゼまたはそれのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を同定するための、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認された試験またはアッセイの使用によって、または本明細書において記載されるアッセイの限定されない例のいずれかを実施することによってKRAS関連癌を有すると決定される。いくつかの態様では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。一態様では、癌はKRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体結腸直腸癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体胃癌である。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0149】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に独立に、PARP阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびMEK阻害剤の治療上有効な量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0150】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、独立に、PARP阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびMEK阻害剤の治療上有効な量を投与することを含み、ここにおいて、PARP阻害剤がタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩である、前記方法を提供する。一態様では、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩は、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与される。一態様では、PD−1系アンタゴニストは、アベルマブである。一態様では、アベルマブは、約800mg2週間毎(Q2W)または約10mg/kg2週間毎(Q2W)の量で60分かけて静脈内投与される。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、遊離塩基としてのビニメチニブである。一態様では、MEK阻害剤は、結晶化ビニメチニブである。一態様では、ビニメチニブは、(i)約30mg BIDもしくは約45mg 1日2回(BID)または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わない。一態様では、量が全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0151】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であるPARP阻害剤、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(c)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与されるPARP阻害剤、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(c)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含み、一態様では、量が全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0152】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であるPARP阻害剤、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて1週間ビニメチニブの投与を行わないMEK阻害剤および(c)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、量は全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0153】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であるPARP阻害剤、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(c)アベルマブであり、約800mg Q2W毎または約10mg/kg Q2Wの量で60分かけて静脈内投与される、PD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含み、一態様では、量は全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0154】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩であり、約0.5mg QD、約0.75mg QDまたは約1.0mg QDの量で経口投与されるPARP阻害剤、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて1週間ビニメチニブの投与を行わない、MEK阻害剤および(c)アベルマブであり、約800mg Q2W毎または約10mg/kg Q2Wの量で60分かけて静脈内投与される、PD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、量は全体で癌の処置において相乗作用を達成する。
【0155】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、独立に、PD−1系結合アンタゴニストおよびMEK阻害剤の治療上有効な量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0156】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、独立に、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび一定量のMEK阻害剤の治療上有効な量を投与することを含む、前記方法を提供する。一態様では、PD−1系アンタゴニストはアベルマブである。一態様では、アベルマブは、約800mg2週間毎(Q2W)または約10mg/kg2週間毎(Q2W)の量で60分かけて静脈内投与される。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、結晶化ビニメチニブである。一態様では、ビニメチニブは、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わない。一態様では、量は全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0157】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(b)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(b)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、量は全体で、癌の処置において相乗作用を達成する。
【0158】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(b)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて1週間ビニメチニブの投与を行わない、MEK阻害剤および(c)アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、量は全体で癌の処置において相乗作用を達成する。
【0159】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であるMEK阻害剤および(b)アベルマブであり、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で60分かけて静脈内投与されるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。
【0160】
一態様では、癌を処置する方法は、それを必要とする患者に、独立に、(a)ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、(i)約30mg BIDもしくは約45mg1日2回(BID)の量で毎日経口投与される、または(ii)少なくとも1つの28日の処置サイクルにおいて、3週間、約30mg BIDもしくは約45mg BIDの量で毎日経口投与され、それに続いて、1週間ビニメチニブの投与を行わないMEK阻害剤および(b) アベルマブであり、約800mg Q2Wまたは約10mg/kg Q2Wの量で60分かけて静脈内投与されるPD−1系結合アンタゴニストの治療上有効な量を含む併用療法を投与することを含む。一態様では、量は全体で癌の処置において相乗作用を達成する。
【0161】
一態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、癌の処置において有効である、一定量のMEK阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび/または一定量のPARP阻害剤を投与することを含む、前記方法に関する。別の態様では、本発明は、癌の処置において使用するための、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよび/またはPARP阻害剤の組み合わせに関する。別の態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のMEK阻害剤、一定量のPD−1系結合アンタゴニストおよび/または一定量のPARP阻害剤を投与することを含む、前記方法に関し、ここにおいて、量が全体で癌の処置において相互作用を達成する。別の態様では、本発明は、癌の処置のための、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよび/またはPARP阻害剤の組み合わせに関し、組み合わせは相乗的である。一態様では、本発明の方法または使用は、標的とされる治療薬の相乗的組み合わせ、具体的には、PD−1系結合アンタゴニストおよび/またはPARP阻害剤と組み合わせたMEK阻害剤に関する。この段落のすべての態様の一側面では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩であり、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレート塩であり、PD−1系結合アンタゴニストはアベルマブである。
【0162】
当業者ならば、既知の方法に従って、本発明の組み合わせで使用される各化合物の適切な量、用量または投与量を、年齢、体重、一般的な健康状態、投与された化合物、投与経路、処置を必要とする癌の性質と進行、および他の医薬の存在などの因子を考慮して決定し、患者に投与できるであろう。
【0163】
本発明の方法の実施は、様々な投与または投与計画を通じて達成され得る。本発明の組み合わせの化合物は、断続的に、同時に、または逐次投与され得る。一態様では、本発明の組み合わせの化合物は、同時投与計画で投与され得る。
【0164】
癌細胞の所望の低減または減少を達成するために必要に応じて投与または投与計画の反復が実施され得る。「連続投薬スケジュール」とは、本明細書において、用量中断がない、例えば、処置なしの日がない投与または投与計画である。処置サイクルの間に用量中断がない21または28日の処置サイクルの反復は、連続投薬スケジュールの一例である。一態様では、本発明の組み合わせの化合物は、連続投薬スケジュールで投与され得る。一態様では、本発明の組み合わせの化合物は、連続投薬スケジュールで同時投与され得る。
【0165】
一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は結晶化ビニメチニブである。一態様では、ビニメチニブは、経口投与される。一態様では、ビニメチニブは、錠剤として製剤化される。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、15mgのビニメチニブまたはその医薬上許容される塩を含む。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、15mgの結晶化ビニメチニブを含む。一態様では、結晶化ビニメチニブは、1日2回経口投与される。一態様では、結晶化ビニメチニブは、1日2回経口投与され、結晶化ビニメチニブの第2の用量は、ビニメチニブの第1の用量の約12時間後に投与される。一態様では、30mgの結晶化ビニメチニブが、1日2回経口投与される。一態様では、45mgの結晶化ビニメチニブが、1日2回経口投与される。
【0166】
一態様では、45mgの結晶化ビニメチニブが、有害作用の観察まで1日2回経口投与され、その後、30mgの結晶化ビニメチニブが1日2回投与される。一態様では、30mg1日2回に用量が低減されている患者は、用量低減をもたらした有害作用が、ベースラインまでに改善し、例えば、最大14日または最大3週間または最大4週間安定であるままである場合には、薬物再拡大を妨げるであろうビニメチニブと関連するその他の随伴する毒性がないという条件で、45mg1日2回に再拡大してもよい。
【0167】
一態様では、PARP阻害剤は、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレートであり、28日の完全サイクルを含むように1日1回投与される。28日サイクルの反復は、本発明の組み合わせを用いる処置の間継続される。
【0168】
一態様では、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレートは、21日の完全サイクルを含むように1日1回投与される。21日サイクルの反復は、本発明の組み合わせを用いる処置の間継続される。
【0169】
一態様では、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレートは、約0.1mg〜約2mgの1日投与量で1日1回、好ましくは、約0.25mg〜約1.5mgで1日1回、より好ましくは、約0.5〜約.01mgで1日1回経口投与される。一態様では、タラゾパリブまたはその医薬上許容される塩、好ましくは、そのトシレートは、約0.5mg、0.75mgまたは1.0mgの1日投与量で1日1回投与される。本明細書において提供される投与量とは、タラゾパリブの遊離塩基形態の用量を指し、または投与されたタラゾパリブ塩形態の遊離塩基当量として算出される、例えば、0.5、0.75mgまたは1.0mgなどのタラゾパリブまたはその医薬上許容される塩の投与量または量は、遊離塩基当量を指す。この投与計画は、最適治療応答を提供するように調整され得る。例えば、用量は、治療状況の緊急性によって示されるように比例して低減または増大され得る。
【0170】
いくつかの態様では、PD−1系結合アンタゴニストはアベルマブであり、処置の過程を通じて約14日(±2日)または約21日(±2日)または約30日(±2日)の間隔で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの態様では、アベルマブは、処置の過程を通じて約14日(±2日)または約21日(±2日)または約30日(±2日)の間隔で約80、150、160、200、240、250、300、320、350、400、450、480、500、550、560、600、640、650、700、720、750、800、850、880、900、950、960、1000、1040、1050、1100、1120、1150、1200、1250、1280、1300、1350、1360、1400、1440、1500、1520、1550または1600mg、好ましくは、800mg、1200mgまたは1600mgのフラット用量として投与される。特定の態様では、対象は、本明細書において記載されるPD−1系結合アンタゴニストのいずれかを含む医薬の静脈内(IV)注入を投与される。一態様では、アベルマブは、2週間毎に60分かけて静脈内注入として10mg/kgの量で投与される。一態様では、患者は、アベルマブの静脈内注入の前にアセトアミノフェンおよび抗ヒスタミン剤を用いて前投薬される。一態様では、患者は、アベルマブの最初の4回の注入について、その後は必要に応じて、アセトアミノフェンおよび抗ヒスタミン剤を用いて前投薬される。特定の態様では、対象は、本明細書において記載されるPD−1系結合アンタゴニストのいずれかを含む医薬の皮下(SC)注入を投与される。
【0171】
MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含む本明細書において記載されるような併用療法の投薬計画のいずれかの一態様では、PARP阻害剤の治療上有効な量は、MEK阻害剤の第1の治療上有効な用量と一緒に摂取される。本明細書において、語句「と一緒に摂取される」とは、PARP阻害剤およびMEK阻害剤の投与の間に、5分以下または10分以下または15分以下または20分以下または25分以下または30分以下が経過したことを意味する。
【0172】
本明細書において記載されるような併用療法の投薬計画のいずれかの一態様では、MEK阻害剤の第2の治療上有効な用量は、MEK阻害剤の第1の用量の投与の約12時間後に投与される。本明細書において、語句「MEK阻害剤の第1の用量の投与の約12時間後」とは、MEK阻害剤の第2の用量が、MEK阻害剤の第1の用量の投与の10〜14時間後に投与されることを意味する。
【0173】
本明細書において記載されるような併用療法の投薬計画のいずれかの一態様では、PD−1系結合アンタゴニストが投与される日に、PD−1系結合アンタゴニストは、PARP阻害剤の治療上有効な量(併用療法が、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含む場合)および1日2回投与されるMEK阻害剤の第1の治療上有効な用量の投与の後者の少なくとも30分後に投与される。本明細書において、語句「少なくとも30分後」とは、PD−1系結合アンタゴニストが、PARP阻害剤(併用療法の一部の場合)およびMEK阻害剤の第1の用量の投与の後者の少なくとも30分または少なくとも35分または少なくとも40分または少なくとも45分または少なくとも50分または少なくとも55分または少なくとも60分または少なくとも65分または少なくとも70分または少なくとも75分または少なくとも80分または少なくとも85分または少なくとも90分後に投与されることを意味する。
【0174】
本明細書において記載されるような併用療法の投薬計画のいずれかの一態様では、PD−1系結合アンタゴニストが投与される日に、PD−1系結合アンタゴニストは、PARP阻害剤の治療上有効な量(併用療法が、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含む場合)およびMEK阻害剤の第1の治療上有効な用量の投与の前、少なくとも30分に投与される。本明細書において、語句「少なくとも30分後」とは、PD−1系結合アンタゴニストが、PARP阻害剤(併用療法の一部の場合)およびMEK阻害剤の第1の用量の投与の前、少なくとも30分または少なくとも35分または少なくとも40分または少なくとも45分または少なくとも50分または少なくとも55分または少なくとも60分または少なくとも65分または少なくとも70分または少なくとも75分または少なくとも80分または少なくとも85分または少なくとも90分で投与されることを意味する。
【0175】
一態様では、本明細書において記載される任意の併用療法は、PD−1系結合アンタゴニストの投与の前の1回または複数回の前投薬の投与をさらに含む。一態様では、1回または複数回の事前投薬は、PARP阻害剤(併用療法が、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含む場合)およびMEK阻害剤の投与の1時間後にすぐに投与される。一態様では、1回または複数回の前投薬は、PD−1系結合アンタゴニストの投与の30〜60分前に投与される。一態様では、1回または複数回の前投薬は、PD−1系結合アンタゴニストの投与の30分前に投与される。一態様では、1回または複数回の前投薬は、Hアンタゴニスト(例えば、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤)およびアセトアミノフェンのうち1種または複数から選択される。
【0176】
一態様では、KRAS関連癌を有すると同定または診断された患者の処置を選択する方法(例えば、in vitro法)が本明細書において提供される。いくつかの態様は、KRAS関連癌を有すると同定または診断された患者に選択された処置を投与することをさらに含み得る。例えば、選択された処置は、併用療法の治療上有効な量の投与を含み得る。いくつかの態様は、患者がKRAS遺伝子、KRASキナーゼまたはそのうちいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するか否かを調べるために、患者から得られたサンプルでアッセイを実施するステップならびにKRAS遺伝子、KRASキナーゼまたはそのうちいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定された患者を、KRAS関連癌を有すると同定および診断するステップをさらに含み得る。いくつかの態様では、患者は、患者または患者から得た生検サンプルにおいて、KRAS遺伝子、KRASキナーゼまたはそのうちいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を同定するための、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたキットの使用によって、KRAS関連癌を有すると同定または診断された。いくつかの態様では、KRAS関連癌は、本明細書において記載される、または当技術分野で公知の癌である。一態様では、癌は、KRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌は、KRAS突然変異体結腸直腸癌またはKRAS突然変異体胃癌である。いくつかの態様では、アッセイは、in vitroアッセイ、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学、または分解FISH分析を利用するアッセイである。いくつかの態様では、アッセイは、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたキットである。
【0177】
用語「規制当局」とは、その国での医薬品の医学的使用を承認するためのその国の機関である。例えば、規制当局の限定されない例として、米国食品医薬品局(FDA)がある。
【0178】
患者が、KRAS関連癌(例えば、KRAS突然変異を有する癌)を有するか否かを調べるために、患者から得られたサンプルでアッセイを実施することおよび併用療法の治療上有効な量を、KRAS関連癌(例えば、KRASキナーゼ突然変異を有する癌)を有すると決定された患者に投与することを含む患者を処置する方法も提供される。いくつかの態様では、KRAS関連癌は、本明細書において記載される、または当技術分野で公知の癌である。一態様では、癌は、KRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体結腸直腸癌またはKRAS突然変異体胃癌である。いくつかの態様では、アッセイは、in vitroアッセイ、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学、または分解FISH分析を利用するアッセイである。いくつかの態様では、アッセイは、規制当局によって承認された、例えば、FDAによって承認されたキットである。いくつかの態様では、患者は、処置の少なくとも1前のライン、例えば、別の抗癌処置を用いる少なくとも1つの処置、例えば、第1または第2ラインの全身抗癌療法(例えば、1種または複数の細胞傷害性薬剤を用いる処置)、腫瘍の切除または放射線療法を用いて以前に処置された。一態様では、前の治療は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。一態様では、前の処置は、FOLFIRINOX、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである化学療法である。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブであるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0179】
一態様では、KRAS関連癌(例えば、KRAS突然変異を有する癌)を有する対象を処置する方法であって、前記対象に、本明細書において記載される併用療法の治療上有効な量を投与することを含む、前記方法が本明細書において提供され、ここにおいて、対象は、本明細書において記載される併用療法を用いる処置の前に、処置の少なくとも1つの前のラインを用いて処置された。一態様では、患者は、例えば、別の抗癌処置を用いる少なくとも1つの処置、例えば、第1または第2ラインの全身抗癌療法(例えば、1種または複数の細胞傷害性薬剤を用いる処置)、腫瘍の切除または放射線療法を用いて処置されていた。一態様では、前の処置は、白金ベースの化学療法、ドセタキセル、PD−1系アンタゴニストまたは化学療法のPD−1系アンタゴニストとの組み合わせである。一態様では、前の処置は、FOLFIRINOX、ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビンである化学療法である。いくつかの態様では、KRAS関連癌は、本明細書において記載される、または当技術分野で公知の癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌は、KRAS突然変異体結腸直腸癌またはKRAS突然変異体胃癌である。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブであるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0180】
癌または癌関連疾患の改善は、完全または部分奏効として特性決定され得る。「完全奏効」または「CR」とは、任意のこれまで異常であったX線検査研究、骨髄および脳脊髄液(CSF)または異常なモノクローナルタンパク質測定値の正常化を伴う、臨床上検出可能な疾患がないことを指す。「部分奏効」とは、新規病変の不在下でのすべての測定可能な腫瘍量(すなわち、対象中に存在する悪性細胞数または腫瘍塊の測定された容積または異常なモノクローナルタンパク質の量)の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の減少を指す。
【0181】
処置は、中でも、疾患進行の阻害、腫瘍成長の阻害、原発腫瘍の低減、腫瘍関連症状の軽減、腫瘍分泌因子の阻害(本明細書において同定されたようなチェックポイントタンパク質の発現レベルを含む)、原発または続発性腫瘍の出現の遅延、原発または続発性腫瘍の発達の減速、原発または続発性腫瘍の発生の減少、疾患の二次効果の重症度の減速または減少、腫瘍成長の停止および腫瘍の退縮、腫瘍増殖停止時間(TTP)の増大、腫瘍応答までの時間(TTR)の改善、応答期間(DR)の増大、無増悪生存期間(PFS)の増大、全生存(OS)の増大、客観的奏効率(ORR)によって評価され得る。OSとは、本明細書において、処置開始から任意の原因による死亡までの時間を意味する。TTPとは、本明細書において、処置開始から腫瘍進行までの時間を意味し、TTPは、死亡を含まない。本明細書において、TTRは、確認された客観的奏効(CRまたはPR)を有する患者について、無作為化の日付または研究処置の第1の用量の日付から客観的腫瘍応答の第1の記述までの時間として定義される。本明細書において、DRとは、腫瘍応答の記述から疾患進行までの時間を意味する。本明細書において、PFSとは、処置開始から腫瘍進行または死亡までの時間を意味する。本明細書において、ORRとは、所定量の、最小期間の腫瘍の大きさの低減を有する患者の割合を意味し、応答期間は、普通、最初の応答の時間から記述される腫瘍進行までが測定される。極端に、完全阻害は、本明細書において、防御または化学防御と呼ばれる。
【0182】
したがって、本明細書において記載される併用療法を用いて癌を処置することに関連して1つまたは複数臨床エンドポイントを達成する方法が、本明細書において提供される。一態様では、本明細書において記載される患者は、本明細書において記載される組み合わせを用いる処置後の腫瘍成長の阻害または腫瘍の大きさの低減などの陽性腫瘍応答を示し得る。特定の態様では、本明細書において記載される患者は、本明細書において記載される併用療法の有効量の投与後に、完全奏効、部分奏効または安定疾患の固形腫瘍における奏効判定基準を達成し得る(例えば、RECIST 1.1)。特定の態様では、本明細書において記載される患者は、腫瘍進行のない生存の増大を示し得る。いくつかの態様では、本明細書において記載される患者は、中でも、疾患進行の阻害、腫瘍成長の阻害、原発腫瘍の低減、腫瘍関連症状の軽減、腫瘍分泌因子の阻害(カルチノイド症候群の一因となるものなどの腫瘍分泌ホルモンを含む)、原発または続発性腫瘍の出現の遅延、原発または続発性腫瘍の発達の減速、原発または続発性腫瘍の発生の減少、疾患の二次効果の重症度の減速または減少、腫瘍成長の停止および腫瘍の退縮、腫瘍応答までの時間(TTR)の減少、応答期間(DR)の増大、無増悪生存期間(PFS)の増大、腫瘍増殖停止時間(TTP)の増大および/または全生存(OS)の増大を示し得る。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブであるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0183】
別の態様では、本明細書において記載される癌を有する患者の腫瘍応答までの時間(TTR)を減少する、応答期間(DR)を増大する、無増悪生存期間(PFS)を増大するための方法であって、本明細書において記載される併用療法の有効量を投与することを含む、前記方法が提供される。一態様では、本明細書において記載される癌を有する患者の腫瘍応答までの時間(TTR)を減少するための方法であって、本明細書において記載される併用療法の有効量を投与することを含む、前記方法が提供される。一態様では、本明細書において記載される癌を有する患者の無増悪生存期間(PFS)を増大するための方法であって、本明細書において記載される併用療法の有効量を投与することを含む、前記方法である。一態様では、本明細書において記載される癌を有する患者の無増悪生存期間(PFS)を増大するための方法であって、本明細書において記載される併用療法の有効量を投与することを含む、前記方法である。一態様では、癌は、一態様では、癌は、KRAS突然変異体癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体非小細胞肺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体膵管腺癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体結腸直腸癌である。一態様では、癌はKRAS突然変異体胃癌である。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤、アベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストおよびタラゾパリブであるPARP阻害剤を含む。一態様では、併用療法は、ビニメチニブであるMEK阻害剤およびアベルマブであるPD−1系結合アンタゴニストを含む。
【0184】
本明細書において記載される方法または使用のいずれかのいくつかの態様では、患者から得たサンプルを使用して患者がKRAS関連癌を有するか否かを調べるために使用されるアッセイとして、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学、蛍光顕微鏡、分解FISH分析、サザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、FACS分析、ノーザンブロッティングおよびPCRベースの増幅(例えば、RT−PCRおよび定量的リアルタイムRT−PCR)を挙げることができる。当技術分野で公知のように、アッセイは、通常、例えば、少なくとも1種の標識された核酸プローブまたは少なくとも1種の標識された抗体またはその抗原結合断片を用いて実施される。アッセイは、KRAS遺伝子、KRASキナーゼまたはそれのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出するために、当技術分野で公知のその他の検出方法を利用できる(例えば、本明細書において引用される参考文献を参照のこと)。いくつかの態様では、サンプルは、患者から得た生体サンプルまたは生検サンプル(例えば、パラフィン包埋生検サンプル)である。いくつかの態様では、患者は、KRAS関連癌を有すると疑われる患者、KRAS関連癌の1つまたは複数の症状を有する患者および/またはKRAS関連癌を発生するリスクが増大した患者)である。
【0185】
一態様では、本発明による癌を処置する方法としてまた、手術または放射線療法が挙げられる。手術の限定されない例として、例えば、直視下手術または最小侵襲性手術が挙げられる。手術として、例えば、全腫瘍の除去、腫瘍の減量または対象において疼痛もしくは圧力を引き起こしている腫瘍の除去を挙げることができる。癌を有する対象で直視下手術および最小侵襲性手術を実施する方法は、当技術分野で公知である。放射線療法の限定されない例として、外部照射ビーム療法(例えば、キロボルトX線またはメガボルトX線を使用する外部ビーム療法)または内部放射線療法が挙げられる。内部放射線療法(近接照射療法とも呼ばれる)は、例えば、低用量内部放射線療法または高用量内部放射線療法の使用を含み得る。低用量内部放射線療法は、例えば、小さい放射活性ペレット(シードとも呼ばれる)を、対象中の癌組織中またはその近位に挿入することを含む。高用量内部放射線療法は、例えば、薄いチューブ(例えば、カテーテル)またはインプラントを対象中の癌組織中またはその近位に挿入することおよび照射機器を使用して高用量の放射線を薄いチューブまたはインプラントに送達することを含む。癌を有する対象で放射線療法を実施する方法は、当技術分野で公知である。
【0186】
本明細書において記載される併用療法が、先に本明細書において記載された有益な効果をもたらすことは、確立された試験モデルによって示され得る。当業者ならば、このような有益な効果を証明するための関連試験モデルを十分に選択できる。本明細書において記載される併用療法の薬理学的活性は、例えば、臨床研究において、または例えば、以下に記載されるような試験手順において実証され得る。
【0187】
適した臨床研究として、例えば、増殖性疾患を有する患者におけるオープンラベル用量漸増研究がある。このような研究は、特に、本明細書において記載される併用療法の治療薬の相乗作用を実証し得る。増殖性疾患に対する有益な効果は、これらの研究の結果によって直接的に決定され得る。このような研究は、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含む三重併用療法の効果に対する、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストまたはPARP阻害剤のうちいずれか1種を使用する単独療法の効果を比較するのに、またはMEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストまたはPARP阻害剤のうちいずれか1種を使用する単独療法の効果に対する、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤のうちいずれか2種を使用する二重療法の効果を比較するのに、特に適したものであり得る。
【0188】
併用療法が、MEK阻害剤、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤を含むトリプレット療法である一態様では、MEK阻害剤の用量は、最大耐容投与量が到達されるまで拡大され、PD−1系結合アンタゴニストおよびPARP阻害剤は、固定用量として各々投与される。あるいは、MEK阻害剤およびPARP阻害剤が、固定用量として投与されてもよく、PD−1系結合アンタゴニストの用量が、最大耐容投与量が到達されるまで拡大されてもよい。あるいは、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストの用量が、固定用量として各々投与されてもよく、PARP阻害剤の用量が、最大耐容投与量が到達されるまで拡大されてもよい。
【0189】
併用療法が、MEK阻害剤およびPD−1系結合アンタゴニストを含むダブレット療法である一態様では、MEK阻害剤の用量が、最大耐容投与量が到達されるまで拡大され、PD−1系結合アンタゴニストは、固定用量として投与される。あるいは、MEK阻害剤が、固定用量として投与されてもよく、PD−1系結合アンタゴニストの用量が、最大耐容投与量が到達されるまで拡大されてもよい。
【0190】
処置の有効性は、このような研究において、例えば、症状スコアの評価によって6、12、18または24週後に、例えば、6週毎に決定され得る。
本発明の方法の化合物または組み合わせは、投与の前に製剤化され得る。製剤化は、特定の投与様式に適応されることが好ましい。これらの化合物は、当技術分野で公知のような医薬上許容される担体とともに製剤化され、当技術分野で公知のようなさまざまな投与形で投与され得る。本発明の医薬組成物の作製において、有効成分は、普通、医薬上許容される担体と混合され、または担体によって希釈され、または担体内に封入される。このような担体として、それだけには限らないが、固体希釈剤または充填剤、賦形剤、滅菌水性媒体および種々の非毒性有機溶媒が挙げられる。投与量単位形または医薬組成物として、錠剤、カプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、水性および非水性経口溶液および懸濁液、ロゼンジ剤、トローチ剤、ハードキャンディ、噴霧剤、クリーム剤、軟膏(salves)、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏(ointment)、注射用溶液、エリキシル、シロップおよび個々の用量への細分に適応された容器中にパッケージングされた非経口溶液が挙げられる。
【0191】
非経口製剤として、医薬上許容される水性または非水溶液、分散物、懸濁液、エマルジョンおよびその調製のための滅菌散剤が挙げられる。担体の例として、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、植物油および注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。流動性は、レシチンなどのコーティング、界面活性剤などの使用または適当な粒径を維持することによって維持され得る。例示的非経口投与形態は、滅菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の本発明の化合物の溶液または懸濁液を含む。このような投与形は、必要に応じて適宜緩衝され得る。
【0192】
さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤は、打錠目的で有用であることが多い。同様の種類の固体組成物はまた、ソフトおよびハード充填ゼラチンカプセルにおいて使用され得る。好ましい材料は、したがって、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールを含む。経口投与のために、水性懸濁液またはエリキシルが望まれる場合には、活性化合物を、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンまたはそれらの組み合わせなどの希釈剤と一緒に、種々の甘味料または香味剤、着色物質または染料と、必要に応じて、乳化剤または懸濁剤とも同様に組み合わせてもよい。
【0193】
指定量の活性化合物を用いて種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者には公知であり、明らかであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easter、Pa.、第15版(1975年)を参照のこと。
【0194】
一態様では、MEK阻害剤は、経口投与のために製剤化される。一態様では、MEK阻害剤は、錠剤またはカプセル剤として製剤化される。一態様では、MEK阻害剤は、錠剤として製剤化される。一態様では、錠剤は、コート錠剤である。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブまたはその医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、遊離塩基としてのビニメチニブである。一態様では、MEK阻害剤は、ビニメチニブの医薬上許容される塩である。一態様では、MEK阻害剤は、結晶化ビニメチニブである。ビニメチニブの経口製剤を調製する方法は、PCT公開番号WO2014/063024に記載されている。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、15mgのビニメチニブを含む。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、15mgの結晶化ビニメチニブを含む。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、45mgのビニメチニブを含む。一態様では、ビニメチニブの錠剤製剤は、45mgの結晶化ビニメチニブを含む。
【0195】
本発明はまた、本発明の組み合わせの治療薬および治療薬の投与のための書面による説明書を含むキットに関する。一態様では、書面による説明書は、例えば、本発明の治療薬の同時または逐次投与のための治療薬の投与様式を詳述し、認定する。一態様では、書面による説明書は、例えば、28日サイクルの間の治療薬の各々の投与日を指定することによって、治療薬の投与様式を詳述し、認定する。
【0196】
開示された教示は、様々な適用、方法、キットおよび組成物を参照して説明されたが、本明細書の教示および以下の特許請求される本発明から逸脱することなく、様々な変法および改変がなされ得ることは理解される。前述の例は、開示された教示をよりよく示すために提供されており、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図していない。本教示はこれらの例示的な態様に関して説明されてきたが、当業者ならば、これらの例示的な態様の多数の変法および改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解されよう。そのようなすべての変法および改変は、現在の教示の範囲内である。
【0197】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用されるすべての参考文献、およびそれらで引用されている参考文献は、それらがすでに組み込まれていない限り、参照により全体が本明細書に組み込まれる。組み込まれた文献および類似の材料のうち1つまたは複数が、それだけには限らないが、定義された用語、用語の使用法、説明された技術などを含む本出願と異なるまたは矛盾する場合、本出願が支配する。
【0198】
前述の説明および実施例は、本発明の特定の態様を詳述し、本発明者によって企図された最良の様式を説明している。しかし、前述のものが本文においてどのように詳細に現れようとも、本発明は多くの方法で実施され得、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物に従って解釈されなくてはならないことは理解されよう。
【実施例】
【0199】
実施例1
癌の処置のための、タラゾパリブを伴うまたは伴わない、ビニメチニブおよびアベルマブの組み合わせの臨床研究
これは、局所進行性または転移性KRAS突然変異体NSCLCおよび膵管腺癌(PDAC)およびその他のKRAS突然変異体固形腫瘍を有する成人患者における、タラゾパリブを伴うまたは伴わないアベルマブと組み合わせたビニメチニブの第1/2相、オープンラベル多施設研究である。この実施例において使用されるように、用語「タラゾパリブ」とは、タラゾパリブまたはそれだけには限らないがタラゾパリブトシレートを含むその任意の医薬上許容される塩を指す。
【0200】
アベルマブと組み合わせたビニメチニブの1b相:
ビニメチニブおよびアベルマブの組み合わせの安全性および予備的抗腫瘍活性は、KRAS突然変異体NSCLCおよびPDACを有する患者において研究のこの相1/2部分において評価される。
【0201】
最初に、KRAS突然変異体NSCLCおよびPDACを有する2つのコホートの患者を登録し、28日サイクルにおいて800mg IV Q2Wの固定容量で投与されたアベルマブと組み合わせた、経口投与される45mg BIDまたは30mg BIDのビニメチニブを用いて処置し、DLTについて表5に示されるようにサイクル1の間評価した。
【0202】
【表5】
【0203】
DLTが観察される場合には、ビニメチニブ用量を低減してもよく、またはビニメチニブの交互投薬スケジュール(3週間オンおよび1週間オフ)を採用してもよく、出現する安全性データは、連続BID投薬は許容されないことを示唆するはずである。
【0204】
アベルマブおよびタラゾパリブと組み合わせた1b相ビニメチニブ:
1相の用量設定部分から、トリプレット組み合わせにおけるビニメチニブおよびタラゾパリブの推奨される2相用量(RP2D)を同定する。局所進行性または転移性KRAS突然変異体NSCLCおよびPDACを有する患者を、28日の治療サイクルにおいて、表6に示されるように、2種の異なる用量(30または45mg)の、1日2回(BID)経口投与されるビニメチニブおよび3種の異なる用量の毎日(QD)経口投与されるタラゾパリブ(0.5mg、0.75mgまたは1.0mg)および固定用量のアベルマブ(800mg Q2W)を用いて処置し、用量制限毒性(DLT)について評価する。
【0205】
【表6】
【0206】
DLT評価期間は、28日(すなわち、サイクル1)となり、改変毒性確率間隔(mTPI)法を使用して、組み合わせのRP2Dを定義する。ビニメチニブの交互投薬スケジュール(3週間オンおよび1週間オフ)も採用してもよく、出現する安全性データは、連続BID投薬は許容されないことを示唆するはずである。さらに、タラゾパリブおよびビニメチニブの組み合わせは、トリプレット組み合わせが許容されない場合には、表6の関連投薬計画を使用することを含めて評価されてもよい。
2相設計
ひとたび、1b相が完了すると、ダブレット(アベルマブと組み合わせたビニメチニブ)およびトリプレット(アベルマブおよびタラゾパリブと組み合わせたビニメチニブ)のR2PDが決定されており、2相部分を開始して、各組み合わせのRP2Dの安全性および抗腫瘍活性を評価する。KRAS突然変異体NSCLCの患者およびmPDACコホートは、ダブレットおよびトリプレットに1:1比で無作為化される。さらに、その他のKRAS突然変異体進行性固形腫瘍を有する患者が、トリプレット処置を受け取るために登録される。
腫瘍応答、安全性およびバイオマーカーの評価
タラゾパリブを伴うまたは伴わない、アベルマブと組み合わせたビニメチニブの全奏効率(ORR)を、この研究における患者において、固形腫瘍における奏効判定基準バージョン1.1(RECIST v1.1)によって評価する。
【0207】
安全性、全生存(OS)ならびに腫瘍応答までの時間(TTR)、応答期間(DR)および無増悪生存(PFS)などのその他の抗腫瘍活性データは、RECIST v1.1を使用して評価する。
【0208】
組み合わせの抗腫瘍活性の、PD−L1発現、DDR遺伝子変更、PI3K/mTOR経路活性化マーカー、例えば、PIK3CA突然変異およびPTEN欠失との相関を評価する。
【0209】
それだけには限らないが、免疫応答と関連するバイオマーカーを含む、タラゾパリブを伴うまたは伴わないビニメチニブおよびアベルマブの作用機序またはそれに対する耐性と関連し得る、末梢血および腫瘍組織中の潜在的予測的および/または薬力学的バイオマーカーも評価する。
【配列表】
2021507904000001.app
【国際調査報告】