(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-513945(P2021-513945A)
(43)【公表日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】無機酸化物
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20210507BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20210507BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20210507BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J23/63 A
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-540512(P2020-540512)
(86)(22)【出願日】2019年2月15日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月21日
(86)【国際出願番号】JP2019005715
(87)【国際公開番号】WO2019160125
(87)【国際公開日】20190822
(31)【優先権主張番号】特願2018-25199(P2018-25199)
(32)【優先日】2018年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】川上 義貴
(72)【発明者】
【氏名】安東 博幸
【テーマコード(参考)】
3G091
4G048
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091BA39
3G091GA06
3G091GB10X
3G091GB16X
4G048AA03
4G048AB02
4G048AB06
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC71B
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB18Y
4G169FA02
4G169FB04
4G169FB13
4G169FB30
4G169FB70
(57)【要約】
構成元素としてAl、CeおよびZrを含む無機酸化物であって、波長200nmの光を照射した際に得られる発光スペクトルにおいて、420nmの発光強度I
Aと470nmの発光強度I
Bとの比(I
B/I
A)が1.65以下である無機酸化物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素としてAl、CeおよびZrを含む無機酸化物であって、波長200nmの光を照射した際に得られる発光スペクトルにおいて、420nmの発光強度IAと470nmの発光強度IBとの比(IB/IA)が1.65以下である無機酸化物。
【請求項2】
無機酸化物中のAlの含有量が、Al2O3換算で20〜80重量%である請求項1に記載の無機酸化物。
【請求項3】
無機酸化物中のCeの含有量が、CeO2換算で10〜40重量%である請求項1または2に記載の無機酸化物。
【請求項4】
無機酸化物中のZrの含有量が、ZrO2換算で5〜40重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機酸化物。
【請求項5】
構成元素としてLaをさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の無機酸化物。
【請求項6】
無機酸化物中のLaの含有量が、La2O3換算で0.5〜5重量%である請求項5に記載の無機酸化物。
【請求項7】
無機酸化物のZrのK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数において、0.1〜0.2nmに存在するピークの強度中の最大強度ICと、0.28〜0.35nmに存在するピークの強度中の最大強度IDとの比(ID/IC)が0.6以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の無機酸化物。
【請求項8】
粉末の形状である請求項1〜7のいずれか一項に記載の無機酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒金属を担持するために有用な無機酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガス浄化用触媒(三元触媒)は、一般に、ハニカム基材(例えば、コージェライト等の耐熱性セラミックスからなるハニカム構造を有する基材)、前記基材上の触媒担持層、および前記触媒担持層に担持された触媒金属(例えば、Rh、Pd、Pt等の貴金属)から構成される。
【0003】
三元触媒は、排ガス中の炭化水素および一酸化炭素を酸化し、窒素酸化物を還元することによって、排ガスを浄化する。この浄化を促進するために、構成元素としてAl、CeおよびZrを含み、酸化雰囲気下では酸素を貯蔵し、還元雰囲気下では酸素を放出する酸素ストレージ能(OSC)を有する無機酸化物(以下「Al−Ce−Zr酸化物」と記載することがある)を用いて、触媒担持層を形成することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−202102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒(特に三元触媒)の性能向上が絶えず求められている。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は性能に優れた触媒を製造し得るAl−Ce−Zr酸化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 構成元素としてAl、CeおよびZrを含む無機酸化物であって、波長200nmの光を照射した際に得られる発光スペクトルにおいて、420nmの発光強度I
Aと470nmの発光強度I
Bとの比(I
B/I
A)が1.65以下である無機酸化物。
[2] 前記I
B/I
Aが、1.62以下である[1]に記載の無機酸化物。
【0007】
[3] 無機酸化物中のAlの含有量が、Al
2O
3換算で20〜80重量%である[1]または[2]に記載の無機酸化物。
[4] 無機酸化物中のAlの含有量が、Al
2O
3換算で30〜75重量%である[1]または[2]に記載の無機酸化物。
[5] 無機酸化物中のAlの含有量が、Al
2O
3換算で40〜65重量%である[1]または[2]に記載の無機酸化物。
【0008】
[6] 無機酸化物中のCeの含有量が、CeO
2換算で10〜40重量%である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[7] 無機酸化物中のCeの含有量が、CeO
2換算で15〜35重量%である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[8] 無機酸化物中のCeの含有量が、CeO
2換算で20〜30重量%である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
【0009】
[9] 無機酸化物中のZrの含有量が、ZrO
2換算で5〜40重量%である[1]〜[8]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[10] 無機酸化物中のZrの含有量が、ZrO
2換算で8〜35重量%である[1]〜[8]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[11] 無機酸化物中のZrの含有量が、ZrO
2換算で10〜30重量%である[1]〜[8]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
【0010】
[12] 構成元素としてLaをさらに含む[1]〜[11]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[13] 無機酸化物中のLaの含有量が、La
2O
3換算で0.5〜5重量%である[12]に記載の無機酸化物。
[14] 無機酸化物中のLaの含有量が、La
2O
3換算で0.7〜4重量%である[12]に記載の無機酸化物。
[15] 無機酸化物中のLaの含有量が、La
2O
3換算で1.0〜3重量%である[12]に記載の無機酸化物。
【0011】
[16] 無機酸化物のZrのK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数において、0.1〜0.2nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Cと、0.28〜0.35nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Dとの比(I
D/I
C)が0.6以下である[1]〜[15]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
[17] 前記I
D/I
Cが、0.55以下である[16]に記載の無機酸化物。
[18] 前記I
D/I
Cが、0.5以下である[16]に記載の無機酸化物。
【0012】
[19] 粉末の形状である[1]〜[18]のいずれか一つに記載の無機酸化物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無機酸化物を用いれば、性能に優れた触媒を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。なお、後述の例示、好ましい記載等は、これらが互いに矛盾しない限り、組み合わせることができる。
【0015】
本発明の無機酸化物は、構成元素としてAl、CeおよびZrを含む。
無機酸化物中のAlの含有量は、耐熱性付与の観点から、Al
2O
3換算で、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜75重量%、さらに好ましくは40〜65重量%である。ここで、Al
2O
3換算での無機酸化物中のAlの含有量とは、まず、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって算出された無機酸化物中のAl量から換算した無機酸化物中のAl
2O
3量を意味する。このAl
2O
3量は、無機酸化物全体100重量%を基準とする。後述するCeの含有量、Zrの含有量、並びにAl、CeおよびZrとは異なる構成元素の含有量も同様である。
【0016】
無機酸化物中のCeの含有量は、酸素ストレージ能(OSC)付与の観点から、CeO
2換算で、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。
【0017】
無機酸化物中のZrの含有量は、OSC向上の観点から、ZrO
2換算で、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは8〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。
【0018】
本発明の無機酸化物は、Al、CeおよびZrとは異なる構成元素(以下「異なる構成元素」と記載することがある)を含んでいてもよい。異なる構成元素は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。異なる構成元素としては、例えば、第2族元素、Ceとは異なる異なる希土類元素(以下「異なる希土類元素」と記載することがある)が挙げられる。第2族元素および異なる希土類元素はいずれも、1種のみでもよく、2種以上でもよい。好ましい第2族元素としては、例えばSrおよびBaが挙げられる。好ましい異なる希土類元素としては、例えば、Laが挙げられる。異なる構成元素が含まれる場合、その含有量(2種以上の構成元素が含まれる場合、その合計量)は、耐熱性向上の観点から、異なる構成元素の酸化物換算で、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.7〜4重量%、さらに好ましくは1.0〜3重量%である。
【0019】
本発明の無機酸化物は構成元素としてLaをさらに含むことが好ましい。Laが含まれる場合、無機酸化物中のその含有量は、耐熱性向上の観点から、La
2O
3換算で、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.7〜4重量%、さらに好ましくは1.0〜3重量%である。
【0020】
本発明の無機酸化物は、波長200nmの光を照射した際に得られる発光スペクトルにおいて、420nmの発光強度I
Aと470nmの発光強度I
Bとの比(I
B/I
A)が1.65以下であることを特徴の一つとする。前記I
B/I
Aは、好ましくは1.62以下である。発光スペクトルの測定法は、後述の実施例欄に記載する通りである。
【0021】
ジルコニア(ZrO
2)はナノ化すると、450〜495nmの青色光を吸収することが知られている。例えば、特開2005−262069の
図1では、ジルコニアのナノシートが、ジルコニアの粉末および繊維と比べて、400nm以上である光吸収端の吸光度が増大していること(即ち、ジルコニアのナノシートでは、青色光の吸収が増大していること)が示されている。
【0022】
本発明の無機酸化物において発光強度の比(I
B/I
A)が1.65以下であるのは、ジルコニア(ZrO
2)がナノ化されて、高分散の状態で存在するためと推定される。言い換えると、ジルコニア(ZrO
2)が高分散の状態で存在する本発明の無機酸化物では、470nmの光が無機酸化物に吸収されるために、I
B/I
Aが1.65以下になると推定される。但し、本発明はこのような推定に限定されない。
【0023】
本発明者らは、前記I
B/I
Aを満たす無機酸化物中でジルコニアが高分散していることを、ZrのK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数によって確認している。具体的には、無機酸化物のZrのK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数において、0.1〜0.2nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Cと、0.28〜0.35nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Dとの比(I
D/I
C)が、前記I
B/I
Aを満たす無機酸化物では、前記I
B/I
Aを満たさない無機酸化物に比べて小さい。0.1〜0.2nmに存在する前記ピークは、Zr−O原子間距離に相当するピークであり、最大強度I
Cは、Zr原子に最近接しているO原子の量に対応する。一方、0.28〜0.35nmに存在する前記ピークは、Zr−Zr原子間距離に相当するピークであり、最大強度I
Dは、Zr原子に最近接しているZr原子の量に対応する。そのため、I
D/I
Cが小さいことは、Zr原子に最近接しているZr原子の割合が少ないこと、即ち、ZrO
2粒子サイズが小さく、無機酸化物中でZrが高分散の状態で存在していることを示す。但し、これらのピークの位置は、原子間距離に相当するが、位相シフトの影響により、ピーク位置と原子間距離の値とは若干のずれが生じることもある。
【0024】
本発明の無機酸化物では、そのZrのK吸収端の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数において、0.1〜0.2nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Cと、0.28〜0.35nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Dとの比(I
D/I
C)が0.6以下であることが好ましい。前記I
D/I
Cは、より好ましくは0.55以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。なお、0.1〜0.2nmの範囲および0.28〜0.35nmの範囲にピークといえるものが無く、なだらかな曲線(直線を含む)のみの場合は、各範囲における最大強度の値を、それぞれおI
CおよびI
Dとする。EXAFSスペクトルの測定法、およびフーリエ変換による動径分布関数の算出法は、後述の実施例欄に記載する通りである。
【0025】
ZrはRhなどの触媒金属とのアンカー効果を有することが知られている。そのためZrが高分散の状態で存在していると推定される本発明の無機酸化物を用いれば、得られる触媒においてRhなどの触媒金属もまた高分散した状態で存在すると推定される。そのため、本発明の無機酸化物を用いると、性能に優れた触媒を製造することができる。但し、本発明はこのような推定に限定されない。
【0026】
ウォッシュコート法を使用してハニカム基材上に触媒担持層を形成するために、本発明の無機酸化物は粉末であることが好ましい。
【0027】
本発明の無機酸化物は、下記工程S1〜S5:
金属アルミニウムおよび1価アルコールを含む混合物を還流下で撹拌して、アルミニウムアルコキサイドおよび1価アルコールを含む混合物を得る工程S1、
工程S1で得られた混合物に、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を添加して、得られた混合物を還流下で撹拌して、アルミニウムアルコキサイド、1価アルコール、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を含む混合物を得る工程S2、
工程S2で得られた混合物に水を添加し、得られた混合物を還流下で撹拌することによって、アルミニウムアルコキサイドを加水分解して水酸化アルミニウムを形成し、水酸化アルミニウムを含む混合物を得る工程S3、
工程S3で得られた混合物を乾燥して、水酸化アルミニウムを含む粉末を得る工程S4、および
工程S4で得られた粉末を焼成して、構成元素としてAl、CeおよびZrを含む無機酸化物を得る工程S5
を含む方法(以下「本発明の製法」と記載することがある)によって製造することができる。以下、各工程について、順に説明する。
【0028】
(1)工程S1
工程S1では、下記式:
2Al+6ROH→2Al(OR)
3+3H
2
に示すように、金属アルミニウム(Al)と1価アルコール(ROH)との固液反応によりアルミニウムアルコキサイド(Al(OR)
3)が得られる。
【0029】
原料の金属アルミニウムとしては、特に限定されないが、その中に含まれる鉄、ケイ素、ナトリウム、銅、マグネシウム等の不純物含有量が0.01重量%以下である(即ち、純度が99.99重量%以上である)高純度の金属アルミニウムを用いることが好ましい。このような高純度の金属アルミニウムを用いることにより、得られたアルミニウムアルコキサイドの精製が不要となる。このような高純度のアルミニウムとしては、市販品を使用することができる。
【0030】
金属アルミニウムの形状としては、特に限定されない。その形状としては、例えば、インゴット、ペレット、箔、線、粉末等が挙げられる。
【0031】
1価アルコールは、1種のみでもよく、2種以上でもよい。金属アルミニウムとの反応性の観点から、1価アルコールの炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である。1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。これらの中で、エタノール、n−プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0032】
金属アルミニウムとの反応が充分に進行するようにするため、金属アルミニウムに対する化学量論比で過剰の1価アルコールを使用することが好ましい。また、金属アルミニウムと1価アルコールとを含む混合物の還流下での撹拌は、これらの反応が充分に進行するような時間で行えばよい。
【0033】
工程S1では、使用した1価アルコールに対応するアルコキシ基を有するアルミニウムアルコキサイドが生成する。得られるアルミニウムアルコキサイドとしては、例えば、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムsec−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイド等が挙げられる。
【0034】
工程S1で得られたアルミニウムアルコキサイドおよび1価アルコールを含む混合物を、そのまま、次の工程S2で使用してもよく、工程S1で得られた混合物に1価アルコールを追加して、得られた希釈混合物を次の工程S2で使用してもよい。
【0035】
(2)工程S2
本発明の製法では、工程S1で得られた混合物に、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を添加して、得られた混合物を還流下で撹拌して、アルミニウムアルコキサイド、1価アルコール、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を含む混合物を得る工程S2を行うことが必要である。この工程S2を行うことによって、Zrが高分散した状態であり、前記I
B/I
Aを満たす本発明の無機酸化物を得ることができる。工程S2での還流下での撹拌時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1.0〜12時間である。
【0036】
工程S2で使用するジルコニウム化合物としては、例えば、オキシ酢酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム等が挙げられる。ジルコニウム化合物は、無水物でもよく、水和物でもよい。ジルコニウム化合物は、好ましくはオキシ酢酸ジルコニウムである。ジルコニウム化合物は、得られる無機酸化物中のZrの含有量が上述の好ましい範囲になるような量で使用することが好ましい。
【0037】
工程S2で使用するセリウム化合物としては、例えば、酢酸セリウム、水酸化セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム等が挙げられる。セリウム化合物は、無水物でもよく、水和物でもよい。セリウム化合物は、好ましくは酢酸セリウムであり、より好ましくは酢酸セリウム1水和物である。セリウム化合物は、得られる無機酸化物中のCeの含有量が上述の好ましい範囲になるような量で使用することが好ましい。
【0038】
工程S1で得られた混合物に、上述のジルコニウム化合物およびセリウム化合物とは異なる成分(以下「異なる成分」と記載することがある)を添加してもよい。異なる成分は1種のみでもよく、2種以上でもよい。異なる成分としては、例えば、第2族元素(好ましくはSrまたはBa)を含む化合物、異なる希土類元素(好ましくはLa)を含む化合物(以下「異なる希土類元素化合物」と記載することがある)等が挙げられる。異なる成分としては、異なる希土類元素化合物が好ましい。異なる成分を使用する場合、その量は、異なる成分に由来する異なる構成元素の含有量が上述の好ましい範囲になるような量であることが好ましい。
【0039】
第2族元素を含む化合物としては、例えば、第2族元素を含む水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。第2族元素を含む化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。また、第2族元素を含む化合物は、無水物でもよく、水和物でもよい。第2族元素を含む化合物は、好ましくは酢酸ストロンチウムおよび酢酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0040】
異なる希土類元素化合物としては、例えば、異なる希土類元素を含む水酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。異なる希土類元素化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。また、異なる希土類元素化合物は、無水物でもよく、水和物でもよい。異なる希土類元素化合物は、好ましくは酢酸ランタンであり、より好ましくは酢酸ランタン1.5水和物である。異なる希土類元素化合物は、得られる無機酸化物中の異なる希土類元素の含有量が上述の好ましい範囲になるような量で使用することが好ましい。
【0041】
(3)工程S3
工程S3では、工程S2で得られた混合物に水を添加し、得られた混合物を還流下で撹拌することによって、アルミニウムアルコキサイドを加水分解して水酸化アルミニウムを形成し、水酸化アルミニウムを含む混合物を得る。
【0042】
耐熱性に優れた無機酸化物を製造するために、水の添加およびその後の還流を2段階に分けて行うことが好ましい。詳しくは、工程S2で得られた混合物に水を添加し、得られた混合物を還流下で撹拌する工程(以下「工程S31」と記載することがある)、次いで工程S31で得られた混合物に水を添加し、得られた混合物を還流下で撹拌する工程(以下「工程S32」と記載することがある)を行うことが好ましい。水の添加およびその後の還流下での撹拌を2段階に分けて行うことによって、水の添加およびその後の還流下での撹拌を1段階で行う場合(即ち、一度に大量の水を使用する場合)に比べて、局所的な加水分解を抑制し、水酸化アルミニウムの凝集を防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れた無機酸化物を製造することができる。
【0043】
局所的な加水分解の防止等の観点から、工程S31で添加する水の量は、アルミニウムアルコキサイド1モルに対して、好ましくは1.0〜2.0モル、より好ましくは1.5〜2.0モルである。
【0044】
工程S31では、工程S2で得られた混合物に、水のみではなく、水および1価アルコールの混合液を添加することが好ましい。こうすることによって、より一層、局所的な加水分解を抑制することができる。前記混合液の調製に使用する1価アルコールは、工程S1で使用した1価アルコールと同じであることが好ましい。水および1価アルコールの混合液を添加する場合、その混合液中の水の濃度は、好ましくは2.0〜40重量%、より好ましくは5.0〜30重量%である。
【0045】
工程S31での還流下での撹拌時間は、好ましくは0.2〜24時間、より好ましくは0.4〜12時間である。
【0046】
充分な加水分解およびその後の乾燥の観点から、工程S32で添加する水の量は、アルミニウムアルコキサイド1モルに対して、好ましくは1.0〜7.0モル、より好ましくは1.5〜3.0モルである。工程S31で添加する水の量および工程S32で添加する水の量の合計は、アルミニウムアルコキサイド1モルに対して、好ましくは2.0〜9.0モル、より好ましくは3.0〜5.0モルである。工程S32での還流下での撹拌時間は、好ましくは0.2〜24時間、より好ましくは0.4〜12時間である。
【0047】
(4)工程S4
工程S4では、工程S3で得られた混合物を乾燥して、水酸化アルミニウムを含む粉末を得る。工程S4で得られる粉末に水(または水および1価アルコール)が残っていても、それらは次の工程S5の焼成で除去されるため、工程S4では完全に乾燥した粉末を調製する必要はない。
【0048】
工程S4の乾燥は、周知の手段を使用する加熱および/または減圧によって行うことができる。乾燥温度は、好ましくは100〜240℃、より好ましくは120〜200℃であり、乾燥時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。
【0049】
(5)工程S5
工程S5では、工程S4で得られた粉末を焼成して、構成元素としてAl、CeおよびZrを含む無機酸化物を得る。
【0050】
焼成温度は、好ましくは800〜1100℃である。前記焼成温度での保持時間は、好ましくは0.5〜20時間である。室温から前記焼成温度までの昇温速度は、好ましくは30〜500℃/時間である。
【0051】
焼成は、例えば焼成炉を用いて行うことができる。焼成炉としては、例えば電気炉等が挙げられる。焼成容器は、アルミナ製のものが好ましい。焼成は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0052】
周知の技術によって、触媒金属を本発明の無機酸化物で担持することによって触媒を製造することができる。触媒金属は、好ましくはロジウム(Rh)である。例えば、触媒金属の塩(例えば、硝酸ロジウム)水溶液に、本発明の無機酸化物を添加し、得られた混合物を一定時間保持した後、水を除去(例えば、留去)することによって、触媒金属を担持した触媒を製造することができる。得られる触媒中の触媒金属の担持量が、触媒全体あたり0.1〜5.0重量%となるように、触媒金属の塩を使用することが好ましい。触媒金属の担持量は、より好ましくは0.5〜3.0重量%である。
【0053】
周知の技術(例えば、ウォッシュコート法)によって、本発明の無機酸化物を用いて三元触媒を製造することができる。例えば、ハニカム基材を、触媒金属の塩および本発明の無機酸化物を含む水性分散液に浸漬し、その中で一定時間保持した後、引き上げて、乾燥することによって、ハニカム基材、前記基材上の本発明の無機酸化物からなる触媒担持層、および前記触媒担持層に担持された触媒金属から構成される三元触媒を製造することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0055】
<実施例1>
(1)工程S1
純度99.99重量%以上の高純度の金属アルミニウム(住友化学社製)189gおよび純度99.9重量%以上のイソプロピルアルコール(JXTGエネルギー社製)1389gの混合物を還流下で撹拌することによって、アルミニウムイソプロポキシド1420gおよびイソプロピルアルコール158gの混合物を得た。
【0056】
(2)工程S2
工程S1で得られた混合物の全量(アルミニウムイソプロポキシド1420gおよびイソプロピルアルコール158g)に、酢酸ランタン1.5水和物(ニッキ社製)17g、オキシ酢酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製)225gおよび酢酸セリウム1水和物(第一稀元素化学工業社製)335gを添加して、混合物を得た。得られた混合物を還流下で60分間撹拌した。
【0057】
(3)工程S3
(a)工程S31
工程S2で得られた混合物に、水(214g、アルミニウムアルコキサイド1モルに対する添加する水の量:1.7モル)とイソプロピルアルコール(1928g)との混合液(混合液中の水の濃度:10重量%)を添加して、混合物を得た。得られた混合物を還流下で30分間撹拌した。
【0058】
(b)工程S32
工程S31で得られた混合物に、水(290g、アルミニウムアルコキサイド1モルに対する添加する水の量:2.3モル)を添加して、混合物を得た。得られた混合物を還流下で30分間撹拌した。
【0059】
(4)工程S4
工程S32で得られた混合物を、窒素雰囲気下で撹拌しながら140℃で4時間加熱することによって乾燥し、粉末を得た。
【0060】
(5)工程S5
工程S4で得られた粉末を、電気炉を用いて、大気雰囲気下、1000℃で4時間焼成することによって(室温から1000℃までの昇温速度:200℃/時間)、構成元素としてCe、Zr、LaおよびAlを含む無機酸化物の粉末(Ceの含有量:26.1重量%、Zrの含有量:18.7重量%、Laの含有量:1.2重量%、Alの含有量:54.0重量%)を得た。なお、前記含有量は、ICP発光分光分析法によって無機酸化物から得られた各元素(即ち、Ce、Zr、LaおよびAl)の量から換算した酸化物(即ち、CeO
2、ZrO
2、Al
2O
3およびLa
2O
3)の量を表す。以下の比較例1も同様である。
【0061】
<比較例1>
特許文献1に記載の方法(特にその実施例1と同様の方法)によって、構成元素としてCe、Zr、LaおよびAlを含む無機酸化物の粉末を得た。具体的には、水8000mlにオキシ硝酸ジルコニウム282gを溶解し、攪拌しながら80℃に加熱した。そこへアルミニウムイソプロポキシド1420gを添加し、さらに硝酸60mlを加えて攪拌を続け、エチレングリコール1000ml中の硝酸セリウム6水和物434gと硝酸ランタン6水和物22gの溶液全量を添加し、80℃で48時間攪拌した。前記撹拌によって得られた沈殿物をロータリーエバポレータで乾燥し、さらに真空中110℃で100時間乾燥させた後、得られた粉末を950℃で4時間焼成して、構成元素としてCe、Zr、LaおよびAlを含む無機酸化物の粉末(Ceの含有量:26.1重量%、Zrの含有量:18.7重量%、Laの含有量:1.2重量%、Alの含有量:54.0重量%)を得た。
【0062】
<発光スペクトル>
蛍光分光測定装置(日本分光社製FP−6500)を、励起バンド幅5nm、蛍光バンド幅1nm、レスポンス0.1秒、感度High、および走査速度100nm/分の条件で用いて、実施例1または比較例1で得られた無機酸化物に波長200nmの光を照射し、得られた発光スペクトルにおける420nmの発光強度I
Aおよび470nmの発光強度I
Bを測定し、それらの比(I
B/I
A)を算出した。結果を下記表に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルの測定および解析>
実施例1または比較例1で得られた無機酸化物のZrのK吸収端のEXAFSスペクトルの測定は、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光科学研究施設ビームラインNW−10AのXAFS測定装置を用いてQuickXAFS法にて行った。入射X線強度(I
0)は、Ar(25体積%)およびN
2(75体積%)の混合ガスを使用したイオンチェンバーを用いて常温下で測定し、透過X線強度(I
t)は、Krガスを使用したイオンチェンバーを用いて常温下で測定した。測定したエネルギー範囲、間隔、および測定点1点当りの積算時間は、次のように設定した。
・入射X線のエネルギー範囲:17494〜19099eV
・データ点数:3835点
・スキャン時間:300秒
・積算:1回
【0065】
各入射X線エネルギー(E、x軸)において、I
0およびI
tを測定し、次式:
X線吸光度μ
t=−ln(I
t/I
0)
により、X線吸光度(y軸)を求め、x軸−y軸でプロットすることにより、X線吸収スペクトルを得た。
【0066】
EXAFSスペクトルの解析は次のようにして行った。上記のようにして得られたX線吸収スペクトルから、次のようにして、ZrのK吸収端のEXAFSスペクトルを得て、動径分布関数を得た。具体的には、得られたQuickXAFS法によるX線吸収スペクトルデータを高エネルギー加速器研究機構が提供している「Multi File Converter」、「Multi Data Smoothing」にてリガク社製EXAFS解析ソフト形式へと変換し、スムージング処理を行った(スムージング条件:Savitzky-Golay法、Points: 10、rep: 5)後、解析ソフト(リガク社製REX2000)を用いてEXAFS振動の解析を行った。ZrのK吸収端のエネルギーE
0(x軸)は、X線吸収スペクトルにおけるZrのK吸収端付近のスペクトルにおいて、その一階微分係数が最大となるエネルギー値(x軸)とした。スペクトルのバックグランドは、前記のZrのK吸収端よりも低エネルギー域のスペクトルにVictoreenの式(Aλ
3−Bλ
4+C;λは入射X線の波長、A,B,Cは任意の定数)を最小自乗法で当てはめて決定し、スペクトルからバックグランドを差し引いた。続いて、該スペクトルにつき、Spline Smoothing法(Spline Termination1: 0.002、Spline Termination: 0.2)により孤立原子の吸光度(μ
0)を見積もり、EXAFS関数χ(k)を抽出した。なお、kは0.5123×(E−E
0)
1/2で定義される光電子の波数のことで、このときのkの単位はÅ
−1である。最後に、k
3で重み付けしたEXAFS関数k
3χ(k)について、特に断りのない限り、kが3.0から12.0Å
−1の範囲でフーリエ変換して動径分布関数を求めた(フーリエ変換条件は次の通り、FT size: 2048、Filter type: HANNING、Window width: Δk/10)。なお、得られた動径分布関数の横軸原子間距離は未補正である。
【0067】
上記のようにして得られた動径分布関数から0.1〜0.2nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Cおよび0.28〜0.35nmに存在するピークの強度中の最大強度I
Dを求め、これらの比(I
D/I
C)を算出した。結果を下記表に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
<触媒性能の評価>
(1)触媒の調製
実施例1または比較例1で得られた無機酸化物の粉末5gを、塩化ロジウム水溶液25g(ロジウムの濃度:0.2重量%)に添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌し、次いで120℃で12時間乾燥することによって水を留去した後、大気中600℃で3時間焼成し、Rhが担持された触媒粉末を調製した。Rhの担持量は、触媒粉末全体あたり1.0重量%であった。
【0070】
得られた触媒粉末1.0gを、一軸成形用の円筒容器(直径30mm)に投入し、室温、圧力:約20MPaおよび時間1分の条件で一軸成形して、成形体を得た。得られた成形体を、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、得られた粉砕物を篩分けして、100〜180μmの大きさの篩分けした触媒を調製した。
【0071】
(2)触媒性能の評価
上記(1)で得られた、篩分けした触媒60mgを石英反応管に充填し、下記表に示す組成のモデルガスを、空間速度(SV)=250,000(時間
−1)で流通し、触媒入口のガス温度を、昇温速度60℃/分で室温から600℃まで昇温し、600℃に到達後、この温度で20分保持した。
【0072】
【表3】
【0073】
上記のように触媒入口のガス温度を600℃で20分保持した後、触媒入口のガス温度を降温速度:2.5℃/分で600℃から200℃まで降温し、触媒入口のガス温度が200℃または250℃であるときの、触媒に通過する前後のガス中のNO、COおよびプロピレンの含有量を、全炭化水素分析計(HORIBA社製「PG−340P」)およびポータブルガス分析計(HORIBA社製「FIA−510」)によって測定した。
【0074】
触媒に通過する前後のガス中のNO、COおよびプロピレンの含有量から、下記式:
浄化率(%)=100×(触媒通過前のガス中の各成分の含有量−触媒通過後のガス中の各成分の含有量))/触媒通過前のガス中の各成分の含有量
にて、NO、COおよびプロピレンの浄化率を算出した。結果を下記表に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
表4に示すように、実施例1の無機酸化物を用いれば、比較例1の無機酸化物を用いる場合に比べて、性能に優れた触媒を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の無機酸化物から、性能に優れた触媒を製造し得る。そのため、本発明の無機酸化物は、例えば三元触媒の製造のために有用である。
【0078】
本願は、日本で出願された特願2018−025199号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。
【国際調査報告】