(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-527555(P2021-527555A)
(43)【公表日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】向上した熱安定性を有する白金ナノ粒子クラスターを含む組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 23/42 20060101AFI20210917BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20210917BHJP
B01J 37/12 20060101ALI20210917BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20210917BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
B01J23/42 M
B01J37/10ZAB
B01J37/12
B01J37/16
B01D53/94 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-554924(P2020-554924)
(86)(22)【出願日】2019年3月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2019013991
(87)【国際公開番号】WO2019202949
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】特願2018-78117(P2018-78117)
(32)【優先日】2018年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤森 祐一
(72)【発明者】
【氏名】羽山 友治
(72)【発明者】
【氏名】根岸 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藏重 亘
(72)【発明者】
【氏名】原澤 敦也
(72)【発明者】
【氏名】清水 暢之
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AC06
4D148BA03X
4D148BA30X
4D148BA41X
4D148BB02
4D148BB17
4D148DA02
4D148EA04
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BB04A
4G169BC75A
4G169BC75B
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4G169EA18
4G169EB19
4G169EC30
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB23
4G169FB27
4G169FB29
4G169FB37
4G169FB39
4G169FB43
4G169FB57
4G169FC07
(57)【要約】
白金(Pt)ナノ粒子と無機酸化物とを含む組成物であって、前記Ptナノ粒子が、100個以下のPt原子を有し、前記Ptナノ粒子が、1nm以下の標準偏差で1nm〜10nmの平均粒径を有している、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金(Pt)ナノ粒子と無機酸化物とを含む組成物であって、前記Ptナノ粒子が、100個以下のPt原子を有し、前記Ptナノ粒子が、1nm以下の標準偏差で1nm〜10nmの平均粒径を有している、組成物。
【請求項2】
前記Ptナノ粒子が、1nm〜5nmの平均粒径を有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Ptナノ粒子が、600℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、15nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Ptナノ粒子が、700℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、20nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、25nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記Ptナノ粒子が、2〜100個のPt原子を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記Ptナノ粒子が、30〜100個のPt原子を有している、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、50nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、30nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記Ptナノ粒子が、900℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、60nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、80nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記Ptナノ粒子が、原子的に細分化されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記Ptナノ粒子が、12〜28個のPt原子を有している、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
吸着CO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2080cm−1未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
吸着CO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2070cm−1未満である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、セリウム、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記無機酸化物が、アルミナ又は酸化ランタン/アルミナ複合酸化物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記Ptナノ粒子が、前記無機酸化物上に担持されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金(Pt)ナノ粒子と、向上した熱安定性を有する無機酸化物とを含む新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白金族金属(PGM)は、耐熱性及び耐触性に優れ、触媒特性等を有するため、従来、自動車排ガス触媒、電極材料等として様々な分野で使用されてきた。より多数のより高い表面積を有する活性サイトを得るために、PGMは、通常は、無機担体材料(例えば、高比表面積アルミナ、炭素など)上に担持された高度分散ナノ粒子として使用される。しかしながら、PGMの熱安定性は、粒子のサイズが小さいほど顕著に低下し、例えば、面心立方(fcc)系のPtの溶融温度は、直径20nm〜30nm未満のサイズで急速に低下する(例えば、Nanoscale Research Letters,2011,6,396を参照されたい)。したがって、PGMナノ粒子は、より過酷なエージング条件中に、例えば、1000℃での水熱処理中にシンタリングを生じ、自動車用排ガス触媒は、活性サイトの喪失により不活性化される。
【0003】
一方、100原子未満のサイズの非fcc型PGMナノ粒子クラスターが見出されており、それらは、バルク金属とは異なるユニークな化学的特性を示すことが知られており、それに関する研究が様々な分野で行われている。白金クラスターにおいて、例えば、一酸化炭素に対する酸化触媒特性の学術研究が行われている(例えば、Journal of the American Chemical Society,1999,121(13),3214−3217;Journal of Materials Chemistry A,2017,5,4923−4931;及びCatalysis Science & Technology,2011,1,1490−1495を参照されたい)が、Ptクラスター材料の耐熱特性が非常に低いことを見越して、作動温度を温和なものとしている。
【0004】
したがって、本発明は、向上した耐熱性を有する白金ナノ粒子クラスターを含む新規組成物を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、白金(Pt)ナノ粒子と無機酸化物とを含む組成物を対象とし、Ptナノ粒子は、100個以下のPt原子を有し、Ptナノ粒子は、1nm以下の標準偏差で1nm〜10nmの平均粒径を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、トリフェニルホスフィン(TPP)保護Ptクラスターを合成するためのフロー図を示す。
【
図2】
図2は、合成されたTPP保護白金クラスターのMALDI質量スペクトルの例を示す。
【
図3】
図3は、フェニルエタンチオール(PET)保護Ptクラスターを合成するためのフロー図を示す。
【
図4】
図4は、合成されたPET保護白金クラスター(実施例2A〜2D)のMALDI質量スペクトルの例を示す。
【
図5】
図5は、実施例1において、アルミナ上の全Ptナノ粒子クラスターのうちの70%超の含有量を示す17原子(4.2kDa)白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図6】
図6は、実施例2Cについて、半値全幅で+/−5原子の分布を示す、アルミナ上の62原子(14kDa)白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図7】
図7は、比較例3による硝酸白金水溶液を利用する含浸法によって合成された白金担持アルミナの電子顕微鏡写真を示す。
【
図8】
図8は、300℃において、実施例1及び2C、並びに比較例3で吸着されたCOの赤外線吸収信号を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1及び2C、並びに比較例3に関する、吸着COの振動数と温度の間の関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、COが10000ppmであり、かつO
2が5000ppmである試験ガスを使用した触媒性能試験における触媒1、触媒2、及び比較触媒3のCO浄化率を示すグラフである。
【
図11】
図11は、C
3H
6が200ppmであり、かつO
2が5000ppmである試験ガスを使用した触媒性能試験における触媒1、触媒2、及び比較触媒3のC
3H
6浄化率を示すグラフである。
【
図12】
図12は、水熱酸化還元エージングに供した、元来、実施例4によるアルミナ上に約17原子の白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図13】
図13は、水熱酸化還元エージングに供した、元来、実施例5によるアルミナ上に約62原子(14kDa)の白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図14】
図14は、水熱酸化還元エージングに供した、元来、比較例6による硝酸白金水溶液を利用する含浸法によって合成された白金担持アルミナの物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図15】
図15は、COが10000ppmであり、かつO
2が5000ppmである試験ガスを使用した触媒性能試験における触媒4、触媒5、及び比較触媒6のCO浄化率を示すグラフである。
【
図16】
図16は、C
3H
6が200ppmであり、かつO
2が5000ppmである試験ガスを使用した触媒性能試験における触媒4、触媒5、及び比較触媒6のC
3H
6浄化率を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例1及び2C、並びに比較例3に関する、CO−パルスによって測定された平均粒径と水熱エージング温度の間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一態様は、白金(Pt)ナノ粒子と無機酸化物とを含む組成物を対象とし、Ptナノ粒子は、100個以下のPt原子を有し、Ptナノ粒子は、1nm以下の標準偏差で1nm〜10nmの平均粒径を有している。
【0008】
Ptナノ粒子は、100個以下のPt原子(有機保護配位子を伴った状態で24kDa以下の質量数に対応する)、好ましくは75個以下のPt原子、より好ましくは65個以下のPt原子を有することができる。
【0009】
あるいは、Ptナノ粒子は、2〜100個のPt原子、30〜100個のPt原子、40〜80個のPt原子、又は55〜65個のPt原子を有することができる。
【0010】
Ptナノ粒子は、例えば、フェニルエタンチオールの有機保護配位子を伴った状態で8〜20kDa、8〜18kDa、又は8〜16kDaの質量数を有することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、Ptナノ粒子は、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm〜10nmの平均粒径を有することができる。
【0012】
Ptナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm〜5nmの平均粒径を有することができる。Ptナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm〜4nmの平均粒径を有することができる。Ptナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm〜3nmの平均粒径を有することができる。Ptナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで2nm〜3nmの平均粒径を有することができる。
【0013】
驚くべきことに、従来のPtナノ粒子と比較した場合に、過酷な水熱エージング状態に供された後でも、本発明のPtナノ粒子が、向上した耐熱性及び向上したTOFを示すことを、本発明者らは見出した。
【0014】
Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に15nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に13nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に10nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
【0015】
Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に20nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に18nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に16nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
【0016】
Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に25nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に24nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に23nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
【0017】
Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に50nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に40nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に30nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
【0018】
Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に30nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に25nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。
【0019】
Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に60nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に55nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に50nm、45nm、又は40nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に85nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に80nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。
【0020】
いくつかの実施形態では、Ptナノ粒子は、原子的に細分化される。原子的に細分化されたPtナノ粒子は、12〜28個のPt原子を有することができ、いくつかの実施形態では、原子的に細分化されたPtナノ粒子は、14〜20個のPt原子を有することができ、更なる実施形態では、原子的に細分化されたPtナノ粒子は、15〜19個のPt原子を有することができ、その含有量は、合成された全Ptナノ粒子クラスターの70%超であり得る。
【0021】
組成物は、IR分光法によって測定した場合に、白金上に吸着されたCOの波数スペクトルにおいて、200℃で2080cm
−1以下のピークを有し得る。組成物は、IR分光法によって測定した場合に、白金上に吸着されたCOの波数スペクトルにおいて、200℃で2070cm
−1以下のピークを有し得る。
【0022】
無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、セリウム、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びそれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。好ましくは、無機酸化物は、アルミナ又は酸化ランタン/アルミナ複合酸化物である。Ptナノ粒子は、無機酸化物上に担持され得る。
【0023】
定義
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「原子的に細分化された」という用語は、+/−10原子、好ましくは+/−5原子、より好ましくは+/−2原子の狭い分布を有する「原子的に正確に合成された」ナノ粒子クラスター材料を指す。原子的に細分化されたクラスターは、典型的には2つのプロセスで得ることができる。一方のプロセスは、実験条件(例えば、溶媒、有機配位子、温度、pH...)を調整することであり、ターゲットクラスターは、他のサイズのクラスターと比較して、化学的に極めて安定である。別のプロセスは、典型的には、クロマトグラフィー、電気泳動、又は質量分析を使用する、ターゲットクラスターのサイズ選択である。
【0025】
「TEM」は、本明細書で使用される粒径測定方法である。収差補正装置を取り付けたJEOL ARM200CFEを使用して、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡画像を記録した。Pt/Al
2O
3の触媒粉末を、2枚のスライドガラスの間で粉砕し、穴開きカーボンコーティングCu TEMグリッド上にダスティングした。
【0026】
「COパルス」は、本明細書で使用される粒径測定方法である。金属分散分析器(BEL−METAL,MicrotracBEL)を使用することによって、COパルス吸着実験を50℃で行い、続いて、Al
2O
3担体によるCO取り込みの部位をクエンチするためにCO
2の予備吸着を行った。触媒試料を、測定前に、600℃で20分間の10%O
2/Heガスと、続いて300℃で10分間の3%H
2/Heガスとによって、前処理した。
【0027】
TEMによって推定される「平均粒径」とは、球体形状のPt粒子が酸化物材料上に担持されているという仮定の下での粒子の平均直径を意味する。直径(2R)は、以下のように計算することができる;
【数1】
式中、AはTEMによって測定される粒子の面積である。
【0028】
COパルスによって推定される「平均粒径」とは、球体形状のPt粒子が酸化物材料上に担持されているという仮定の下での粒子の平均直径を意味する。平均粒径は、総原子数に対する表面原子数の比を表すPt金属分散度のデータ、及び対応するPtバルク材料の体積質量密度のデータを用いて計算することができる。
【0029】
「MALDI」は、マトリックス支援レーザー脱離及びイオン化技術に基づいて、質量分析のための、合成ナノ粒子クラスター材料をイオン化する方法である。MALDI質量スペクトルは、半導体レーザーを備えた螺旋軌道型飛行時間型質量分析計(JEOL,JMSS3000)によって収集した。DCTB63をMALDIマトリックスとして使用した。レーザー照射によって引き起こされるクラスターの解離を最小限に抑えるために、1:1000のクラスター対マトリックス比を使用した。
【0030】
「IR分光法」は、本明細書で使用するとき、Ptナノ粒子クラスター上に吸着されたCOの振動数測定方法である。拡散反射赤外フーリエ変換分光法は、MCT検出器を備えたFT/IR−6600 FV(JASCO)のFTIR分光計を使用して、1%CO/Heの流れの下で行った。スペクトルを、100℃、200℃、300℃、及び400℃における試料で記録した。触媒試料を、測定前に、600℃で20分間の10%O
2/Heガスと、続いて300℃で10分間の3%H
2/Heガスとによって、前処理した。
【0031】
「水熱エージング」は、実際の用途で使用される触媒のエージング状態を再現する方法である。蒸気と、表1に示す交互に入れ替わる還元/酸化ガスとの混合物が導入される電気炉に、試料をセットした。
【0032】
本明細書で使用される用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft
3の単位の測定値を指す。
【0033】
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0034】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例】
【0035】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0036】
実施例1:原子的に細分化された、アルミナ上の17原子のPtクラスター
トリフェニルホスフィン(TPP)によって保護されたPtクラスターを、
図1及びJ.Phys.Chem.C 2017,11002−11009に示されたフローに従って合成した。
【0037】
H
2PtCl
6・6H
2O(0.1mmol)及びNaOH(〜2mmol)をエチレングリコール(25mL)に溶解した。NaOHを用いて溶液のpHを制御し、ポリオール還元により得られる粒径を抑制した。混合物を120℃で10分間加熱して、Ptイオンを還元し、Ptによって触媒されたCOを生成させた。その溶液を室温(25℃)に冷却した後、TPP(0.5245g、2mmol)を含有するアセトン(10mL)をこの溶液に一度に加えた。数分後、トルエン(〜20mL)及び水(〜20mL)を反応溶液に加えた。Ptクラスターを有機相に移した。次いで、有機相を水相から分離し、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。乾燥した生成物を、水で、次いでメタノールで洗浄して、エチレングリコール及び過剰のTPPを除去した。白金クラスターの質量数は、
図2に示すように、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法を使用することにより確認した。
【0038】
原子的に細分化された17原子のPtクラスターの乾燥生成物(その含有量は全Ptナノ粒子クラスターの70%超である)を、トルエン溶液中に溶解し、次いで、その溶液にアルミナ粉末を混合した。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、TPP配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
【0039】
実施例2A〜2D:アルミナ上の35〜71原子のPtクラスター
白金クラスターを、フローが
図3に示されているポリオール還元法を使用して合成した。まず最初に、有機合成装置を使用することにより、塩化白金酸及び水酸化ナトリウムをエチレングリコールに溶解し、所定のpHに調整した。白金クラスターの質量数は、pH、温度、及び反応時間を変えることによって、変化させた。反応後、保護配位子のフェニルエタンチオール(PET)トルエン溶液を加え、次いで、その混合物を水及びメタノールで洗浄し、合成された白金クラスターをトルエンに抽出して、ターゲットの白金クラスターを得た。
図4に示すように、MALDI質量分析法を使用して、白金クラスターの質量数を確認した。
【0040】
実施例2Aは、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合されている、半値全幅で+/−5原子の分布を有する35原子のPtクラスターの生成物である。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
【0041】
実施例2Bは、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合されている、半値全幅で+/−5原子の分布を有する49原子のPtクラスターの生成物である。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
【0042】
実施例2Cは、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合されている、半値全幅で+/−5原子の分布を有する62原子のPtクラスターの生成物である。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
【0043】
実施例2Dは、半値全幅で+/−5原子の分布を有する71原子のPtクラスターの生成物であり、トルエン溶液に溶解させ、アルミナ粉末と混合した。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
【0044】
比較例3:含浸法により合成されたPt担持アルミナ
白金水溶液をアルミナ粉末に含浸させ、次いで150℃で2時間乾燥させた。乾燥した粉末を600℃で2時間焼成した。
【0045】
実施例4:水熱エージングに供した、元来、原子的に細分化されたアルミナ上の17原子白金クラスターを有する物質
実施例1のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【表1】
【0046】
実施例5:水熱エージングに供した、元来、アルミナ上の約62原子の白金クラスターを有する物質
実施例2のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングさせた。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【0047】
比較例6:水熱エージングに供した、元来、含浸法により合成されたPt担持アルミナ
比較例3のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【0048】
触媒1:実施例1を含有するハニカム触媒
触媒1は、約17原子のPtクラスター担持アルミナ(実施例1)を含有するウォッシュコートでコートされたハニカム構造の触媒である。Ptクラスター(重量基準で0.15%のPt)担持アルミナ粉末を、バインダー及び水と混合してスラリーを形成し、ハニカムキャリアにコーティングした。コーティングされたハニカムを、空気中で600℃で2時間焼成した。ハニカムキャリアの場合、1平方インチ当たり400個のセルを有し、4.0milのセル壁厚を有するコーディエライト担体を使用した。Pt/アルミナウォッシュコートの量は、キャリア1L当たり60gであった。
【0049】
触媒2:実施例2Cを含有するハニカム触媒
触媒2は、約62原子のPtクラスター担持アルミナ(実施例2C)を含有するウォッシュコートでコートされたハニカム構造の触媒である。Ptクラスター(重量基準で0.15%のPt)担持アルミナ粉末を、バインダー及び水と混合してスラリーを形成し、ハニカムキャリアにコーティングした。コーティングされたハニカムを、空気中で600℃で2時間焼成した。ハニカムキャリアの場合、1平方インチ当たり400個のセルを有し、4.0milのセル壁厚を有するコーディエライト担体を使用したものである。Pt/アルミナウォッシュコートの量は、キャリア1L当たり60gであった。
【0050】
比較触媒3:比較例1を含有するハニカム触媒
比較触媒3は、含浸法によって合成されたPt担持アルミナ(比較例3)を含有するウォッシュコートでコートされたハニカム構造触媒である。Pt(重量基準で0.15%のPt)担持アルミナ粉末を、バインダー及び水と混合してスラリーを形成し、ハニカムキャリアにコーティングした。コーティングされたハニカムを、空気中で600℃で2時間焼成した。ハニカムキャリアの場合、1平方インチ当たり400個のセルを有し、4.0milのセル壁厚を有するコーディエライト担体を使用したものである。Pt/アルミナウォッシュコートの量は、キャリア1L当たり60gであった。
【0051】
触媒4:水熱エージングに供した、元来、実施例1を含有する触媒
触媒1中のハニカム構造触媒を、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【0052】
触媒5:水熱エージングに供した、元来、実施例2Cを含有する触媒
触媒2中のハニカム構造触媒を、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【0053】
比較触媒6:水熱エージングに供した、元来、比較例3を含有する触媒
比較触媒3中のハニカム構造触媒を、表1に示した水熱酸化還元条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【0054】
実験結果
TEMによるPtナノ粒子クラスターの幾何学的構造
実施例及び比較例を、走査型透過電子顕微鏡(JEOL Ltdによって製造されたARM 200 CFE)を使用することにより観察した。
図5及び
図6に示すように、実施例1及び2Cでは、非fcc型幾何学的構造を有する白金クラスターがアルミナ上に観察された。平均粒径及び標準偏差(SD)を表2に掲げた。平均粒径は、1.5nm未満と非常に小さく、SDで0.5nm以内の非常に狭い粒度分布が観察された。
【表2】
【0055】
一方、
図7に示すように、比較例3では、約5nm〜10nmのfcc系結晶形態の白金粒子が、アルミナ上で観察された。結晶形態におけるこの白金粒子は、1000〜10000個の白金原子からなると考えられる。
図3及び
図4の間の比較から明らかなように、アルミナに担持されたPtナノ粒子の原子配列は、実施例の物質と、比較例の物質とでは大きく異なっていた。
【0056】
Ptナノ粒子クラスター上の吸着COのIR分光法
吸着COのIR分光法は、赤外線分光計(JASCO Corporationによって製造されたFT/IR−6600 FV)を使用して行った。吸着CO−FTIR測定では、実施例及び比較例の物質を、赤外線分光計の反応セルに入れ、COガスを反応セルに導入しながら、白金によって吸着されたCOのIRスペクトルを測定した。
【0057】
図8は、300℃の温度における実施例1及び2C並びに比較例3のIR吸収スペクトルを示している。実施例及び比較例について、トップCO状態(a−top CO state)に帰すことができる強いIR吸収信号が観察されたが、実施例のピーク位置は、より低い波数(振動数)であり、その発見は、比較例のPtのものとの比較において、吸着COが、実施例のPtとの強い化学的相互作用を介してより活性化されることを示唆している。
【0058】
図9は、実施例1、2C及び比較例3のPtナノ粒子上の吸着COの振動数と、IR測定により得られた温度との間の関係を示す図である。吸着COの振動数とは、各温度で得られたIRスペクトルにおいて最も強いピークが観測されるCOの波数を指し、
図9では、吸着COの振動数が低いほどPtナノ粒子上の吸着COの活性化が大きいことを意味している。
図9に示すように、実施例による材料では、吸着COはより低い温度でより大きく活性化された。また、驚くべきことに、実施例1及び2Cによる物質の200℃での吸着COの振動数は、比較例3による物質の400℃での吸着COの振動数よりも小さい。
【0059】
触媒酸化性能試験
試験条件
触媒性能試験は、実施例及び比較例による触媒について、COが10000ppmであり、かつO
2が5000ppmの組成を有する試験ガスと、C
3H
6が200ppmであり、かつO
2が5000ppmの組成を有する試験ガスとの2種類を用いて実施した。
【0060】
触媒性能試験では、ガス流量を空間速度として60000時間に設定し、温度を20℃/分の速度で100℃から400℃まで上昇させ、触媒を通過した後のガス組成をAO−2020(ABB製)により測定し、CO及びC
3H
6の浄化率を測定した。
【0061】
図10及び
図11に示すように、触媒1及び2は、COの反応とC
3H
6の反応をより低い温度で活性化し、比較触媒3よりもCO及びC
3H
6の浄化率が高いことを示した。したがって、触媒1及び2は、比較触媒3よりも、CO及びC
3H
6の酸化に対して高い触媒活性を有している。その結果は明らかに、触媒1及び2が、CO及び炭化水素などについての酸化触媒として優れた特性を有することを示している。
【0062】
COが10000ppmであり、かつO
2が5000ppmである組成を有する試験ガスと、C
3H
6が200ppmであり、かつO
2が5000ppmである組成を有する試験ガスとを使用する試験における触媒のターンオーバー頻度(TOF)を計算し、触媒1及び2、並びに比較触媒3で比較した。触媒のTOFは、反応物分子がPt触媒の活性サイト当たりの生成物分子へと転換し得る最大頻度(s
−1)を指し、触媒のTOFがより大きいということは、より高い反応速度を有するより高い触媒性能を意味する。
【0063】
表3及び表4に示すように、C
3H
6酸化のTOFは、比較触媒3より、触媒1に関してより高い。触媒1の場合には、C
3H
6酸化性能の向上は、TOFとより高い分散(つまり、より小さい粒径)の両方に起因していた。
【表3】
【表4】
【0064】
過酷な水熱エージング処理に対する耐久性
実施例4及び5、並びに比較例6を、TEMによって観察し、その結果を
図12〜14に示している。エージング処理後、Ptナノ粒子は、凝集し、かつシンタリングを生じて、粒径がより増大した。平均粒径及びSDを表5に掲げた。実施例4の平均粒径は直径25.3nmで最小であったが、実施例5及び比較例6の平均粒径は実施例4のものの約3倍であった。その結果は明らかに、約17原子のPtの非fcc型クラスターを備えたPt触媒が、過酷なエージングの間でも、アルミナ担体表面との予期しない強い相互作用におそらく起因して、熱安定性の優れた特性を有することを示している。
【表5】
【0065】
図15及び
図16に示すように、触媒4及び5は、より低い温度でCOの反応及びC
3H
6の反応を活性化し、比較触媒6よりも高いCO及びC
3H
6の浄化率を示した。したがって、触媒4及び5は、比較触媒6よりも、COの酸化及びC
3H
6の酸化に対して高い触媒活性を有する。その結果は明らかに、触媒4及び5が、CO及び炭化水素などの酸化触媒として優れた特性を有することを示している。
【0066】
表6及び表7に示すように、CO酸化及びC
3H
6酸化のTOFは、比較触媒6よりも、触媒4に関してより高い。触媒4の場合、触媒酸化性能の向上は、TOFとより高い分散(すなわち、より小さい粒径)の両方に起因していた。酸化触媒のために約17原子のPtクラスター材料を使用すると、白金の使用量が効果的に削減される可能性があり、換言すれば、希少価値の高い白金資源の使用量を削減することができると共に、CO及び炭化水素の排出等の環境負荷を低減することができる。
【表6】
【表7】
【0067】
図17に示すように、COパルスによって推定される、700℃、800℃、900℃、及び1000℃での熱水酸化還元エージング後の平均粒径は、比較例3よりも、実施例1及び2Cに関してより小さかった。特に、実施例1のサイズは、900℃及び1000℃のエージング後に最小である。したがって、約17原子のPtクラスターは、約62原子のより大きなPtクラスターと比較して、熱安定性がより高い。
【手続補正書】
【提出日】2020年10月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金(Pt)ナノ粒子と無機酸化物とを含む組成物であって、前記Ptナノ粒子が、100個以下のPt原子を有し、前記Ptナノ粒子が、1nm以下の標準偏差で1nm〜10nmの平均粒径を有している、組成物。
【請求項2】
前記Ptナノ粒子が、1nm〜5nmの平均粒径を有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Ptナノ粒子が、600℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、15nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Ptナノ粒子が、700℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、20nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、25nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記Ptナノ粒子が、2〜100個のPt原子を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記Ptナノ粒子が、30〜100個のPt原子を有している、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、50nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、30nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記Ptナノ粒子が、900℃で4時間の水熱酸化還元エージング後に、60nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、80nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記Ptナノ粒子が、原子的に細分化されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記Ptナノ粒子が、12〜28個のPt原子を有している、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
吸着CO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2080cm−1未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
吸着CO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2070cm−1未満である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】