(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-530855(P2021-530855A)
(43)【公表日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20211015BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20211015BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20211015BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/40
H01M4/1395
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-526186(P2021-526186)
(86)(22)【出願日】2020年3月5日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月19日
(86)【国際出願番号】KR2020003125
(87)【国際公開番号】WO2020184900
(87)【国際公開日】20200917
(31)【優先権主張番号】10-2019-0026807
(32)【優先日】2019年3月8日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0027055
(32)【優先日】2020年3月4日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】507107394
【氏名又は名称】アイユーシーエフ−エイチワイユー(インダストリー−ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー)
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミンチョル・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】テソプ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】セホ・スン
(72)【発明者】
【氏名】ドンソ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビョンクク・ソン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA17
5H050CA20
5H050CA29
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA01
5H050EA02
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用負極、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。より詳細には、本発明に係るリチウム二次電池用負極は、金属と窒化リチウムからなる3次元構造体を含む保護層が形成され、負極の表面に均一なイオン伝導度と電気伝導度を誘導することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属層;及び前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成された保護層;を含むリチウム二次電池用負極であって、
前記保護層は3次元構造体を含むが、
前記3次元構造体は、金属及び窒化リチウムを含む、リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記金属は、Cu、Si、Ge、Zn、及びTiからなる群より選択された1種以上のリチウム親和的金属(Lithiophilic Metal)を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記保護層の厚さは1〜30μmである、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記3次元構造体は、金属50〜99重量%及び窒化リチウム1〜50重量%を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
前記リチウム金属層の厚さは1〜700μmである、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項6】
(S1)エッチング溶液に金属を浸漬させ、3次元構造の金属水酸化物を形成する段階;
(S2)前記3次元構造の金属水酸化物を窒化(nitration)反応させ、3次元構造の金属窒化物を形成する段階;及び
(S3)前記3次元構造の金属窒化物をリチウム金属層上に転写させ、金属及び窒化リチウムを含む3次元構造体を含む保護層を形成する段階;を含むリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記(S1)段階において、前記エッチング溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される1種以上のアルカリ(alkaline)を含む、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング溶液は、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate)、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムからなる群より選択される1種以上の過硫酸塩をさらに含む、請求項7に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記(S2)段階において、前記窒化反応は、不活性雰囲気下で前記3次元構造の金属水酸化物に窒素供給源ガスを反応させて行われる、請求項6から8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
前記窒素供給源ガスは、アンモニア(NH3)、窒素(N2)及び亜酸化窒素(N2O)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項11】
前記(S3)段階において、前記3次元構造の金属窒化物を前記リチウム金属層に接するようにした後、加圧して転写させる、請求項6から10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の負極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月8日付け韓国特許出願第10−2019−0026807号及び2020年3月4日付け韓国特許出願第10−2020−0027055号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用負極、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近まで、負極としてリチウムを用いる高エネルギー密度電池を開発するにおいてかなりの関心があった。例えば、非−電気活性材料の存在で負極の重量及び体積を増加させ、電池のエネルギー密度を減少させるリチウムが挿入された炭素負極、及びニッケルまたはカドミウム電極を有する他の電気化学システムと比較して、リチウム金属は低重量及び高容量特性を持つため、電気化学電池の負極活物質として非常に注目を集めている。リチウム金属負極、またはリチウム金属を主に含む負極は、リチウム−イオン、ニッケル金属水素化物またはニッケル−カドミウム電池のような電池よりは軽量化され、高エネルギー密度を有する電池を構成する機会を提供する。このような特徴はプレミアムの低い荷重値で支払われる、携帯電話及びラップ−トップコンピュータのような携帯用の電子デバイス用電池に非常に好ましい。
【0004】
従来のリチウムイオン電池は負極に黒鉛、正極にLCO(Lithium Cobalt Oxide)を用いて、700wh/l水準のエネルギー密度を有している。しかし、最近、高いエネルギー密度を必要とする分野が拡大しており、リチウムイオン電池のエネルギー密度を増加させる必要性が持続的に提起されている。例えば、電気自動車の1回充電時、走行距離を500km以上に増やすためにもエネルギー密度の増加が必要である。
【0005】
リチウムイオン電池のエネルギー密度を高めるために、リチウム電極の使用が増加している。しかし、リチウム金属は反応性が大きく、扱いにくい金属として工程で扱いが難しい問題がある。
【0006】
リチウム二次電池の負極としてリチウム金属を用いる場合、リチウム金属は電解質、水または有機溶媒などの不純物、リチウム塩などと反応して不動態層(固体電解質相(SEI:Solid Electrolyte Interphase))を形成する。このような不動態層は、局部上の電流密度の差をもたらして充電時にリチウム金属による樹脂上のデンドライトの形成を促進させ、充放電時に漸次的に成長して正極と負極との間の内部短絡を誘発する。また、デンドライトは機械的に弱い部分(ボトルネック(bottle neck))を有しているため、放電中に集電体と電気的接触を失う不活性リチウム(デッドリチウム(dead lithium))を形成することで電池の容量を減少させ、サイクル寿命を短縮させ、電池の安定性によくない影響を与える。
【0007】
このようなリチウム金属負極の問題点を改善するために、様々な組成または形態を有する保護層が形成されたリチウム金属負極が開発されてきた(特許文献1、特許文献2)。
【0008】
しかし、リチウム二次電池において全般的な電池性能を改善できるようにするリチウム金属負極の保護層に対する研究成果は不十分な実情である。
【0009】
したがって、リチウム金属を負極として用いる電池において、電池性能を向上できるように、電極表面で均一な電気伝導度を示し、リチウムデンドライトの成長を抑制し、デッドLi(dead Li)の発生を防止するリチウム金属負極の開発が急務となっている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願公開第107863488号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2018−0012541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、前記問題点を解決するために多角的に研究を行った結果、内部に空洞(void)を含む3次元構造体を含む保護層をリチウム金属層の表面に転写させて負極を製造した。前記3次元構造体は、金属層及び前記金属層の表面に形成された窒化リチウム層を含むようにすることで、前記窒化リチウム層によりリチウム金属層の表面に均一なイオン伝導度と電気伝導度が誘導されることを確認した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、リチウム金属層の表面で均一なイオン伝導度と電気伝導度を示すリチウム二次電池用負極を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用負極の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、リチウム金属層;及び前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成された保護層;を含むリチウム二次電池用負極であって、前記保護層は3次元構造体を含むが、前記3次元構造体は、金属及び窒化リチウムを含むことである、リチウム二次電池用負極を提供する。
【0016】
前記金属は、Cu、Si、Ge、Zn、及びTiからなる群より選択された1種以上のリチウム親和的金属(Lithiophilic Metal)を含んでいてもよい。
【0017】
前記保護層の厚さは、1〜30μmであってもよい。
【0018】
前記3次元構造体は、金属50〜99重量%及び窒化リチウム1〜50重量%を含むことができる。
【0019】
前記リチウム金属層の厚さは、1〜700μmであってもよい。
【0020】
本発明はまたは、(S1)エッチング溶液に金属を浸漬させ、3次元構造の金属水酸化物を形成する段階;(S2)前記3次元構造の金属水酸化物を窒化(nitration)反応させ、3次元構造の金属窒化物を形成する段階;及び(S3)前記3次元構造の金属窒化物をリチウム金属層上に転写させ、金属及び窒化リチウムを含む3次元構造体を含む保護層を形成する段階;を含むリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する。
【0021】
前記(S1)段階において、前記エッチング溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム及びアンモニアからなる群より選択される1種以上のアルカリ(alkaline)を含んでいてもよい。
【0022】
前記エッチング溶液は、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate)、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムからなる群より選択される1種以上の過硫酸塩をさらに含んでいてもよい。
【0023】
前記(S2)段階において、前記窒化反応は、不活性雰囲気下で前記3次元構造の金属水酸化物に窒素供給源ガスを反応させて行ってもよい。
【0024】
前記窒素供給源ガスは、アンモニア(NH
3)、窒素(N
2)及び亜酸化窒素(N
2O)からなる群より選択される1種以上を含んでいてもよい。
【0025】
前記(S3)段階において、前記3次元構造の金属窒化物を前記リチウム金属層に接するようにした後、加圧して転写させてもよい。
【0026】
本発明はまた、負極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、自然的に存在しないため、化学合成を介してのみ製造可能な窒化リチウムを含むリチウム二次電池用負極を製造することができる。具体的に、金属水酸化物の窒化反応を介して3次元構造の金属窒化物を形成した後、リチウム金属層に転写する工程によって、窒化リチウムがリチウム金属表面に自発的に形成されるようにすることができる。前記リチウム金属層及び前記金属と窒化リチウムとからなる3次元構造体が形成された保護層を含むリチウム二次電池用負極を製造することができる。窒化リチウムはリチウムイオン伝導度に優れるため、前記リチウム金属層の表面に形成された窒化リチウムを含む保護層により、前記リチウム金属層の表面が均一なイオン伝導度と電気伝導度を示すようにすることができ、前記リチウム金属層と電解液との副反応を抑制することができる。
【0028】
また、本発明に係るリチウム二次電池用負極において、前記窒化リチウムは金属とともに、前記保護層で3次元構造体を形成するので、リチウムデンドライトの成長を防止し、リチウムイオンがリチウム金属層の表面に滑らかで密集した構造で蒸着されるようにすることができる。これにより、リチウム二次電池の寿命と安全性を改善することができる。例えば、前記金属と窒化リチウムからなる3次元構造体を含む保護層により、リチウム金属表面の抵抗を下げることができ、持続的な充放電後にも副反応が最小化され、界面の安定性を向上させることができる。
【0029】
また、前記保護層に含まれた3次元構造体により、リチウム金属層上に局所的に高い電流が示される現象を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一具現例に係るリチウム二次電池用負極の縦断面を示した模式図である。
【
図2】実施例1のリチウム二次電池用負極を製造する工程図である。
【
図3】実施例1及び比較例1の負極に対するX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)グラフである。
【
図4】実施例1、比較例1及び比較例4でそれぞれ製造された負極表面に対する走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)写真である。
【
図5a】実施例1及び比較例1の負極を含むリチウム二次電池駆動時に負極でのリチウム蒸着形態を示す写真で、負極の表面及び縦断面に対するSEM写真を示したものである。
【
図5b】それぞれ負極の表面及び縦断面に対するSEM写真を示したものである。
【
図6a】実施例1で製造されたリチウム二次電池に対する寿命特性の測定結果を示したグラフである。
【
図6b】比較例1で製造されたリチウム二次電池に対する寿命特性の測定結果を示したグラフである。
【
図6c】比較例4で製造されたリチウム二次電池に対する寿命特性の測定結果を示したグラフである。
【
図7a】実施例1及び比較例1で製造された負極を含むリチウム二次電池に対する性能測定実験の結果を示すグラフである(LCO電極を含むリチウム二次電池)。
【
図7b】実施例1及び比較例1で製造された負極を含むリチウム二次電池に対する性能測定実験の結果を示すグラフである(LTO電極を含むリチウム二次電池)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的な思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0033】
本明細書において使用した用語「3次元構造」は、内部に空洞(void)を含む構造体を意味し、前記空洞は気孔、通路などの空いた空間の形態を広範囲に含む概念である。
【0034】
本発明において、前記「3次元構造体」は、内部に空洞(void)を含むフレームワーク(framework)として、前記フレーム金属及び窒化リチウムからなる構造体を意味する。
【0035】
リチウム二次電池用負極
本発明は、リチウム金属層;及び前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成された保護層;を含むリチウム二次電池用負極であって、前記保護層は3次元構造体を含むが、前記3次元構造体は、金属及び窒化リチウム(Li
3N)を含むことである、リチウム二次電池用負極に関する。
【0036】
図1は、本発明の一具現例に係るリチウム二次電池用負極の縦断面を示した模式図である。
【0037】
図1を参照すると、前記リチウム二次電池用負極(1)は、リチウム金属層(10);及びリチウム金属層(10)の少なくとも一面に形成された保護層(20);を含んでいてもよい。また、リチウム金属層(10)は、集電体(図示せず)の少なくとも一面に形成されていてもよい。
【0038】
本発明に係るリチウム二次電池用負極において、前記保護層に形成された3次元構造体は、金属及び窒化リチウムを含むことができ、具体的に、前記金属50〜99重量%及び窒化リチウム1〜50重量%を含んでいてもよい。
【0039】
本発明において、前記金属は電気伝導性を示すと同時に、前記3次元構造体の形状を維持させる役割を果たすことができる。
【0040】
前記金属は、Cu、Si、Ge、Zn、及びTiからなる群より選択された1種以上のリチウム親和的金属(Lithiophilic Metal)を含むことができ、好ましくはCuを含むことができる。前記金属としてリチウム親和的金属を用いる場合、窒化リチウムを含む3次元構造体の形成に有利であり、リチウム金属表面の抵抗を下げることができ、持続的な充放電後にも副反応が最小化され、界面の安定性を向上させることができる。
【0041】
前記金属は、前記3次元構造体全体の重量を基準として50重量%〜99重量%で含まれることができる。具体的に、前記金属の含有量は、前記3次元構造体全体の重量を基準として50重量%以上、70重量%以上、90重量%以上が可能であり、99重量%以下、98重量%以下が可能である。前記金属の含有量が50重量%未満であれば、3次元構造体の耐久性が低下し、リチウム金属層の表面での電気伝導度が低下することができ、99重量%を超えると、前記3次元構造体内に含まれた窒化リチウムの含有量が相対的に減少されるので、リチウムイオン伝導度が低下することができる。
【0042】
本発明において、前記窒化リチウムは、高いリチウムイオン伝導度により、リチウム金属を保護するための保護層物質として好適である。前記リチウム金属の保護層物質として窒化リチウムを用いる場合、リチウム金属と電解液の界面で電気伝導度を下げ、イオン伝導度を高めることができる。
【0043】
前記窒化リチウムは、前記3次元構造体全体の重量を基準として1重量%〜50重量%で含まれることができる。具体的に、前記窒化リチウムの含有量は、前記3次元構造体全体の重量を基準として1重量%以上、2質量%以上が可能であり、50重量%以下、30重量%以下、10重量%以下が可能である。前記窒化リチウムの含有量が1重量%未満であれば、負極でのリチウムイオン伝導度が低下することができ、50重量%を超えると、前記3次元構造体内に含まれた金属の含有量が相対的に減少されるので、3次元構造体の耐久性と電気伝導度が低下することができる。
【0044】
本発明において、前記保護層は前記3次元構造体を含むことができる。
【0045】
前記保護層の厚さは、1μm〜30μmであってもよい。具体的に、前記保護層の厚さは1μm以上、2μm以上が可能であり、30μm以下、10μm以下、5μm以下が可能である。前記保護層の厚さが1μm未満であれば、水分及び外気から前記リチウム金属層を保護する性能が低下することができ、30μm超えると、保護層自体が抵抗として作用して電池の性能が低下することができる。
【0046】
本発明において、前記リチウム金属層の厚さは、1μm〜700μmであってもよい。具体的に、前記リチウム金属層の厚さは1μm以上、5μm以上、50μm以上、100μm以上が可能であり、700μm以下、600μm以下、550μm以下が可能である。前記リチウム金属層の厚さが1μm未満であれば、電池容量が低下することができ、700μmを超えると、リチウムデンドライトの成長抑制効果が少ない。
【0047】
本発明に係るリチウム二次電池用負極において、前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン及び焼成炭素のうち選択されるものであってもよい。また、前記銅またはステンレス鋼は、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものであってもよい。また、前記集電体は、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。また、前記集電体は、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0048】
リチウム二次電池用負極の製造方法
本発明はまた、(S1)エッチング溶液に金属を浸漬させ、3次元構造の金属水酸化物を形成する段階;(S2)前記3次元構造の金属水酸化物を窒化(nitration)反応させ、3次元構造の金属窒化物を形成する段階;及び(S3)前記3次元構造の金属窒化物をリチウム金属層上に転写させ、金属及び窒化リチウムを含む3次元構造体を含む保護層を形成する段階;を含むリチウム二次電池用負極の製造方法に関する。
【0049】
本発明において、前記(S1)段階では、エッチング溶液に金属を浸漬させ、3次元構造の金属水酸化物を形成することができる。
【0050】
前記金属は、Cu、Si、Ge、Zn、及びTiからなる群より選択されたリチウム親和的金属を含んでいてもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記金属は、前記金属をエッチングさせることができる前記金属用エッチング溶液と反応して3次元構造の金属水酸化物を形成し、窒化反応により金属窒化物を形成することができ、リチウム親和的な特性により前記金属窒化物とリチウムとの反応によって窒化リチウムを形成することができる特性を有する金属であれば、これに制限されるものではない。好ましくは、前記金属はCuであってもよい。
【0051】
また、前記金属用エッチング溶液は前記金属だけでなく、前記金属を含む物質をエッチングさせながら3次元構造で成長させ、3次元構造の金属水酸化物を形成させることができる。例えば、前記金属は、前記エッチング溶液によりエッチングされ、ナノワイヤ(nanowire、NW)またはナノロッド(nanorod、NR)の形態で成長し、3次元構造の金属水酸化物を形成することができる。
【0052】
前記金属用エッチング溶液は、アルカリを含むか、またはアルカリと過硫酸塩を含む溶液であってもよい。好ましくは、前記金属用エッチング溶液は、アルカリと過硫酸塩を含むことができ、この場合、金属水酸化物を形成する時間が短縮されるという点で有利である。
【0053】
また、前記金属用エッチング溶液の濃度は、1M〜10Mであってもよい。具体的に、前記金属用エッチング溶液の濃度は1M以上、1.5M以上、2M以上が可能であり、10M以下、8M以下、5M以下が可能である。前記金属用エッチング溶液の濃度が1M未満であれば、3次元構造の金属水和物が合成される時間が長くかかることができ、10Mを超えると、3次元構造の金属水和物が合成されることが困難な場合がある。
【0054】
また、前記金属用エッチング溶液は好ましくは水を溶媒として用いた水溶液であってもよい。
【0055】
前記アルカリ(alkaline)は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくは水酸化ナトリウムであってもよい。前記過硫酸塩は過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate、APS)、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくは過硫酸アンモニウムであってもよい。
【0056】
本発明において、前記(S2)段階では、前記3次元構造の金属水酸化物を窒化(nitration)反応させ、3次元構造の金属窒化物を形成することができる。
【0057】
前記窒化反応は、不活性雰囲気下で前記3次元構造の金属水酸化物に窒素供給源ガスを反応させて行われてもよい。
【0058】
前記不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、及びキセノンからなる群より選択される1種以上の不活性ガスによって形成されることができ、好ましくは、前記不活性ガスは窒素またはアルゴンであってもよい。
【0059】
前記窒素供給源ガスは、アンモニア(NH
3)、窒素(N
2)及び亜酸化窒素(N
2O)からなる群より選択された1種以上であってもよく、好ましくはアンモニアであってもい。
【0060】
前記窒素供給源ガスを前記3次元構造の金属水酸化物に流すと、窒化反応が進行され、3次元構造の金属窒化物を形成することができる。
【0061】
本発明において、前記(S3)段階では、前記3次元構造の金属窒化物をリチウム金属層上に転写させ、金属及び窒化リチウムを含む3次元構造体を含む保護層を形成することができる。
【0062】
本発明において、前記(S3)段階では、前記3次元構造の窒化金属層をリチウム金属層上に転写させることができる。
【0063】
前記転写は、前記3次元構造の窒化金属層をリチウム金属層に接するようにした後、加圧により機械的エネルギー(Mechanical Energy)を加えて行われてもよい。
【0064】
前記転写時には、前記のリチウム金属層に含まれた一部のリチウム金属と前記3次元構造の金属窒化物が反応して、前記リチウム金属層上に金属と窒化リチウムを含む3次元構造体が形成されることができる。
【0065】
言い換えれば、前記リチウム金属層上に保護層が形成され、前記保護層は、前記金属と窒化リチウムを含む3次元構造体を含んでいてもよい。
【0066】
リチウム二次電池
本発明はまた、前述のような負極を含むリチウム二次電池に関する。
【0067】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むことができる。
【0068】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記負極は前述した通りである。
【0069】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を有する正極活物質層を含むことができる。また、前記正極活物質層は、導電材及びバインダーのうち1種以上をさらに含むこともできる。
【0070】
前記正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物が好ましく用いられることができ、例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(Ni
aCo
bMn
c)O
2(0<a<1、0<b<1、0<c<1 、a+b+c=1)、LiNi
1−yCo
yO
2、LiCo
1−yMn
yO
2、LiNi
1−yMn
yO
2(0≦y<1)、Li(Ni
aCo
bMn
c)O
4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn
2−zNi
zO
4、LiMn
2−zCo
zO
4(0<z<2)、LiCoPO
4及びLiFePO
4からなる群より選択されるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。また、このような酸化物(oxide)の他に、硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)及びハロゲン化物(halide)なども用いることができる。
【0071】
また、前記正極活物質は、硫黄元素(elemental sulfur、S8)、硫黄系化合物、硫黄−炭素複合体、またはそれらの混合物を含む。前記硫黄系化合物は、具体的に、Li
2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素−硫黄ポリマー((C
2S
x)
n:x=2.5〜50、n≧2)などであってもよい。
【0072】
また、前記正極活物質は、前記正極活物質層全体の重量を基準として60重量%〜80重量%で含まれることができる。具体的に、前記正極活物質の含有量は、前記正極活物質層全体の重量を基準として60重量%以上、65重量%以上が可能であり、80重量%以下、78重量%以下、75重量%以下が可能である。前記正極活物質の含有量が60重量%未満であれば、電池性能が低下することができ、80重量%を超えると、正極活物質以外の線状導電材またはバインダーの含有量が相対的に減少し、導電性または耐久性のような特性が低下することがある。
【0073】
本発明に係るリチウム二次電池用正極において、前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR:Styrene−Butadiene Rubber)/カルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymethyl Cellulose)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、架橋結合されたポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンとポリフッ化ビニリデンのコポリマー(商品名:Kynar)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、これらの誘導体、ブレンド、コポリマーなどを用いることができる。
【0074】
また、前記バインダーの含有量は、前記正極活物質層全体の重量を基準として1重量%〜20重量%であってもよい。具体的に、前記バインダーの含有量は、前記の正極活物質層全体の重量を基準として1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上が可能であり、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下が可能である。前記バインダーの含有量が1重量% 以上であれば、正極活物質間または正極活物質と集電体間の結着力が大きく改善され、容量特性が低下する問題も防止することができる。また、ポリスルフィドとバインダーとして用いられる高分子鎖の特定の作用基間の相互作用によるポリスルフィド溶出の抑制も期待することができる。前記バインダーの含有量が20重量%を超えると、電池容量が低下することができる。
【0075】
本発明に係るリチウム二次電池用正極において、前記導電材は前記電気伝導性を向上させるためのものであり、リチウム二次電池において化学変化を起こさない電子伝導性物質であれば特に制限はない。
【0076】
このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく且つ導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などを用いることができる。
【0077】
本発明に係るリチウム二次電池用正極において、前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。このとき、前記正極集電体は、正極活物質との密着性を高めることもできるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0078】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記負極と正極との間に位置する分離膜は、負極と正極を互いに分離または絶縁させ、負極と正極との間にイオン輸送を可能にするものであれば、いずれも使用可能である。
【0079】
前記分離膜は多孔性基材からなってもよく、前記多孔性基材は、通常、電気化学素子に用いられる多孔質基材であればいずれも使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔質膜(membrane)または不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0080】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)が挙げられる。
【0081】
前記不織布としてはポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などをそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した不織布が挙げられる。不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド不織布またはメルトブロー不織布であってもよい。
【0082】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1μm〜100μmであってもよい。具体的に、前記多孔性基材の厚さは1μm以上、5μm以上が可能であり、100μm以下、50μm以下が可能である。
【0083】
多孔質基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001μm〜50μm及び10%〜95%であってもよい。
【0084】
前記リチウム二次電池は、分離膜により区分される正極側の正極電解液及び負極側の負極電解液をさらに含むことができる。前記正極電解液及び負極電解液は、それぞれ溶媒及び電解塩を含むことができる。前記正極電解液及び負極電解液は互いに同一もしくは異なっていてもよい。
【0085】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記電解液は水系電解液または非水系電解液であってもよい。前記水系電解液は溶媒として水を含むことができ、前記非水系電解液は溶媒として非水系溶媒を含むことができる。
【0086】
前記非水系電解液に含まれる電解質塩はリチウム塩である。前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものを制限なく用いることができる。例えば、前記リチウム塩は、LiFSI、LiPF
6、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiPF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2NLi、クロロボランリチウム及び4−フェニルホウ酸リチウムからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0087】
前述した非水系電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものを制限なく用いることができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線状カーボネート、環状カーボネートなどをそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。その中で代表的には、環状カーボネート、線状カーボネート、またはこれらのスラリーであるカーボネート化合物を含むことができる。
【0088】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、 2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーがある。これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)などがあり、これに限定されるものではない。
【0089】
また、前記線状カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーなどが代表的に用いられることができるが、これに限定されるものではない。特に、前記カーボネート系有機溶媒中で環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度の有機溶媒で誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をさらによく解離させることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適当な割合で混合して用いると、より高い電気伝導率を有する電解液を作ることができる。
【0090】
また、前記有機溶媒中のエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、及びエチルプロピルエーテルからなる群より選択されるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0091】
また、前記有機溶媒中のエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、 σ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか1つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記非水系電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性によって、電気化学素子の製造工程の中で適切な段階で行われることができる。すなわち、電気化学素子の組立前または電気化学素子の組立最終段階などで適用されることができる。
【0093】
本発明に係るリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、セパレータと電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0094】
そして、前記電池ケースの形状は特に制限されず、円筒形、積層形、角形、ポーチ(pouch)形またはコイン(coin)形などの様々な形状にすることができる。これら電池の構造と製造方法は、この分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0095】
また、前記リチウム二次電池は、用いる正極/負極材質によってリチウム−硫黄電池、リチウム−空気電池、リチウム−酸化物電池、リチウム全固体電池など、様々な電池に分類が可能である。
【0096】
本発明はまた、前記リチウム二次電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0097】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高容量特性などが要求される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0098】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグ−インハイブリッド電気自動車(plug−in hybrid electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E−bike)、電気スクーター(E−scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0100】
実施例1:リチウム二次電池用負極
図2に示した工程により、下記のような方法でリチウム二次電池用負極を製造した。
【0101】
(1)3次元構造の金属水酸化物の形成(Cu(OH)
2NW箔(foil))
金属は、18μm厚さのCu箔(foil)、金属用エッチング溶液は、0.133Mの過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate)水溶液と2.67MのNaOH水溶液を1:1重量比で混合したエッチング溶液を用いた。
【0102】
前記Cu箔(foil)を前記エッチング溶液に10分間浸漬し、エッチングさせた後、水とエタノールを用いて洗浄(washing)し、50℃のオーブンで真空(vacuum)乾燥し、3次元構造のCu水酸化物であるCu(OH)
2NW箔(foil)を製造した(NW:ナノワイヤ(nanowire))。
【0103】
(2)3次元構造の金属水酸化物を窒化させて3次元構造の金属窒化物の形成(Cu
3N NW箔(foil))
窒素ガスにより形成された不活性雰囲気下で、3次元構造の金属水酸化物であるCu(OH)
2NW箔(foil)にアンモニアガスを流して窒化反応を行い、3次元構造の金属窒化物であるCu
3N NW箔(foil)を製造した。
【0104】
(3)3次元構造の金属窒化物をリチウム金属層に転写(Li
3N@Cu
3N NW−Li)
前記3次元構造の金属窒化物であるCu
3N NW箔(foil)を500μm厚さのリチウム金属層上に接するようにした後、圧延し、前記リチウム金属層上にCu
3N NW箔(foil)を転写させる工程を行い、前記リチウム金属層上にCuと窒化リチウムを含む3次元構造体を形成させた。
【0105】
転写工程の後、前記リチウム金属層上に前記3次元構造体を含む厚さ3μmである保護層が形成された負極が製造されたことを確認した(Li
3N@Cu
3N NW−Li)。
【0106】
実施例2:リチウム二次電池(フルセル試験(Full cell test)用)
実施例1で製造された負極(500μm厚さのリチウム3次元構造体が転写されて保護層が形成された形態)、LCO(LiCoO
2):ケチェンブラック(ketjen black):PVDF(Polyvinylidene fluoride)を8:1:1で混合したLCO電極を正極として用いた。電解液は溶媒としてEC/DEC(3:7、v/v)を用い、1.3M LiPF
6と5%重量のFECを含む組成で製造された電解液及びポリプロピレン分離膜を用いて、コインセル形態のリチウム二次電池を製造した(EC:エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、DEC:ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、FEC:フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate))。
【0107】
比較例1:保護層がないリチウム負極及びリチウム二次電池
厚さが500μmであるリチウム金属薄膜を負極(ベア(Bare)Li)とし、前記実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0108】
比較例2:3次元構造の金属窒化物を含む負極及びリチウム二次電池
実施例1と同様に行うが、前記(3)段階において、前記リチウム金属層上に、3次元構造の窒化金属層であるCu
3N NW箔(foil)を接するようにした後、加圧せず、転写工程を行った。
【0109】
その結果、加圧工程を行っていないため、前記リチウム金属層上にCuと窒化リチウムを含む3次元構造体が形成されないことを確認した。
【0110】
比較例3:薄膜形態の保護層が形成された負極及びリチウム二次電池
500μmのリチウム金属層(Honjo、lithium 1415)を準備した。
【0111】
Cu
3Nナノパウダー70重量%及びスチレンブタジエンゴム(SBR:Styrene Butadiene Rubber)バインダー30重量%を混合し、保護層形成用スラリーを製造した。
【0112】
前記保護層形成用スラリーを、前記リチウム金属層4μmの厚さでコーティングした後、乾燥させ、リチウム金属層及びCu
3Nを含むレイヤー形態の保護層が順次積層されたリチウム二次電池用負極を製造した。
【0113】
前記リチウム二次電池用負極を用いて実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0114】
比較例4:薄膜形態の保護層が形成された負極及びリチウム二次電池
金属として、Cu箔(foil)の代わりにCu発泡体(foam)を用いたことを除いて、実施例1の(1)及び(2)と同様の方法で行い、前記Cu
3N NW箔(foil)の代わりCu
3N NW発泡体(foam)を製造した。
【0115】
その後、前記Cu
3N NW発泡体(foam)を液体リチウム(溶融(molten)Li)と200℃で反応させ、Liが前記Cu
3N NW発泡体(foam)の内部空間に浸漬された形態の負極を製造した(Li浸漬(infiltrated)Cu
3N NW)。
【0116】
前記負極を用いて実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0117】
実験例1:光電子分析の実験
実施例1で3次元構造の金属窒化物(Cu
3N NW箔(foil))をリチウム金属層に転写した後、窒化リチウムが形成されたか否かを確認するために、製造された負極に対してX線光電子分光法(X−ray photoelectron spectroscopy、XPS)を用いた実験を行った。
【0118】
図3は、実施例1(Li
3N@Cu
3N NW−Li)及び比較例1(ベア(Bare)Li)の負極に対するX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)グラフである。
【0119】
図3を参照すると、実施例1の負極は、3次元構造の金属窒化物(Cu
3N NW箔(foil))がリチウム金属層に転写された後、自発的反応によりCu
3NがCuに還元され、Li
3Nが生成されたことが分かる。
【0120】
実験例2:走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)の分析
図4は、実施例1、比較例1及び比較例4でそれぞれ製造された負極表面に対する走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)写真である。
【0121】
図4を参照すると、比較例1の負極はベア(Bare)Liの表面であり、実施例1の負極には、空洞(void)が形成された3次元構造体形態の保護層が形成されたことが分かる。
【0122】
また、比較例4の負極は、発泡体(foam)の内部にリチウムが浸漬された形態が観察された。
【0123】
実験例3:リチウム二次電池駆動時の負極の形態観察
実施例1(3次元構造体を含む保護層が形成されたリチウム負極)及び比較例1(ベア(Bare)Li)でそれぞれ製造された負極を用いて対称セル(Symmetric cell)を製造した。前記対称セルを駆動時の負極でのリチウム蒸着形態を観察するために、3〜20mAh/cm
2の条件下で、前記対称セルを駆動して負極の表面及び縦断面の形状を観察した。
【0124】
図5a及び
図5bは、実施例1及び比較例1の負極を含むリチウム二次電池駆動時の負極でのリチウム蒸着形態を示す写真で、それぞれ負極の表面及び縦断面に対するSEM写真を示したものである。
【0125】
図5a及び
図5bを参照すると、実施例1の場合は、リチウムデンドライトが形成されないことが分かる。
【0126】
実験例4:リチウム二次電池の寿命特性の測定(1)
実施例1、比較例1及び比較例4でそれぞれ製造された負極を用いて実施例2と同様の方法で製造されたリチウム二次電池に対して、1mAh/cm
2の充電及び1mAh/cm
2の放電条件下でリチウム二次電池を駆動した。
【0127】
図6a、
図6b及び
図6cは、それぞれ実施例1、比較例1及び比較例4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池に対する寿命特性の測定結果を示したグラフである。
【0128】
前記グラフを参照すると、実施例1は、600時間以上安定して駆動するのに対し(
図6a)、比較例1は、100時間までも駆動することが難しく(
図6b)、比較例4は、500時間までも駆動することが難しいこと(
図6c)を確認することができた。
【0129】
実験例5:リチウム二次電池の寿命特性の測定(2)
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造された負極を含むリチウム二次電池に対して性能テストを行った。このとき、正極活物質としては、それぞれLCO(LiCoO
2)及びLTO(Li
4Ti
5O
12)を用いて、実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を設計した。
【0130】
前記リチウム二次電池を1mAh/cm
2の充電及び1mAh/cm
2の放電条件下で充放電させた。
【0131】
図7a及び
図7bは、実施例1及び比較例1で製造された負極を含むリチウム二次電池に対する性能測定実験の結果を示すグラフである(
図7a:LCO電極を含むリチウム二次電池、
図7b:LTO電極を含むリチウム二次電池)。
【0132】
LCO電極のような場合、商用電極水準の単位面積当たりの容量3.4mAh・cm
−2で製作され、全体セルを0.5Cレート(rate)(〜1.7mA・cm
−2)で寿命評価を行い、LTO電極の場合、単位面積当たりの容量約0.5mAh・cm
−2で製作し、4Cレート(rate)(〜2mA・cm
−2)で寿命評価を行った。
【0133】
図7a及び
図7bを参照すると、正極活物質としてLCOを用いる場合とLTOを用いる場合のすべてが実施例1の性能が比較例1に比べて顕著に優れていることが分かった。
【0134】
以上、本発明は、たとえ限定された実施例と図面により説明したが、本発明はこれにより限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0135】
1:負極
10:リチウム金属層
20:保護層(3次元構造体)
【国際調査報告】