特表2021-536460(P2021-536460A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-536460不斉水素化による光学活性カルボニル化合物の連続的調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-536460(P2021-536460A)
(43)【公表日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】不斉水素化による光学活性カルボニル化合物の連続的調製
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/62 20060101AFI20211129BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20211129BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20211129BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211129BHJP
【FI】
   C07C45/62
   C07C47/21
   C07B53/00 B
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-512427(P2021-512427)
(86)(22)【出願日】2019年9月3日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2019073456
(87)【国際公開番号】WO2020048975
(87)【国際公開日】20200312
(31)【優先権主張番号】18192756.7
(32)【優先日】2018年9月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バイ,オリヴァー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC11
4H006AC81
4H006BA24
4H006BA48
4H006BC13
4H006BC14
4H006BC18
4H006BD84
4H006BE20
4H039CA19
4H039CB10
(57)【要約】
少なくとも1つのキラル配位子を有する均一系ロジウム触媒の存在下、水素によるプロキラルα,β-不飽和キラル化合物の不斉水素化によって、光学活性カルボニル化合物を連続的に調製する方法であって、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物を含有する液体反応混合物が、第1の逆混合反応器内で2相気/液水素化に供され、次いで、液体反応混合物が、第2の反応器内でさらに水素化され、第1の反応器における、3重量%〜20重量%のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度が確立される、方法。この方法によって、プロキラル不飽和α,β-カルボニル化合物への全体としての高い変換率が可能になる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのキラル配位子を有する均一系ロジウム触媒の存在下、水素によるプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化によって、光学活性カルボニル化合物を連続的に製造する方法であって、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物を含む液体反応混合物が、第1の逆混合反応器内で気/液2相水素化に供され、
次いで、液体反応混合物が、第2の反応器内でさらに水素化され、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、第1の反応器内で3重量%〜20重量%の濃度で使用される、方法。
【請求項2】
水素ガスが、第2の反応器の入り口に位置する第2の反応器のセクションにおいて液体反応混合物中に分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、反応速度が少なくとも0.8×Vmaxである濃度で第1の反応器内で使用され、Vmaxが、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度に対する反応速度のプロットにおける反応速度の最大値である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度が5重量%未満になるまで、第2の反応器内で液体反応混合物が反応する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の反応器の反応体積と第2の反応器の反応体積との比が1:1〜1:5である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の反応器が1〜3の範囲内の反応器数Nを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の反応器への体積比動力入力が0.5〜5kW/m3である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の反応器がループ型反応器として構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の反応器における逆混合が制限され、少なくとも第2の反応器からの出口に位置する第2の反応器のセクションにおいて、水素化が液体単一相中で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の反応器における逆混合が、内部構造物によって制限される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の反応器が4より多い反応器数Nを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、一般式(I)の化合物
【化1】
[式中、
R1、R2は互いに異なり、それぞれ、飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有する、1〜25個の炭素原子を有する非分枝状、分枝状、又は環式の炭化水素基であり、
R3は、水素であるか、又は飽和しているか、若しくは1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有する、1〜25個の炭素原子を有する非分枝状、分枝状、若しくは環式の炭化水素基であり、
あるいは
R3はR1又はR2基のいずれかと共同で、3員〜25員アルキレン基を表してもよく、1、2、3又は4つの非隣接CH2-基は、O又はN-R5cによって置き換えられていてもよく、アルキレン基は飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つアルキレン基は非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C6〜C10-アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、2つの置換基同士が共同で、2員〜10員アルキレン基を表してもよく、2員〜10員アルキレン基は飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ2員〜10員アルキレン基は非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10-アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、
ここで、
R4は水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、又はC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールであり、
R5a、R5bはそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、若しくはC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールであり、又は
R5a及びR5bが共同で、N若しくはOに割り込まれていてもよい、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表してもよく、
R5cは水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、又はC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールである]
から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(III)の光学活性シトロネラール
【化2】
[式中、*は不斉中心を指す]
を製造する方法であって、式(Ia-1)のゲラニアール若しくは式(Ib-1)のネラール
【化3】
又はネラール及びゲラニアールを含む混合物の不斉水素化によって製造する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
触媒濃度が、触媒中に存在するロジウム原子として計算して、反応混合物中のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の量を基準として0.001〜1mol%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
キラル配位子がキラル二座ビスホスフィン配位子、より特定するとキラホスである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(II)の化合物
【化4】
[式中、式(II)におけるZはCHR3R4基であり、可変要素R1、R2、R3、R4は独立して、特に共同で、次の通りである:
R1、R2は同一であるか又は異なり、且つ非置換であるか、又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3つの置換基を有するフェニルであり、ここで、R1及びR2はそれぞれ、特に非置換フェニルであり、
R3はC1〜C4アルキル、特にメチルであり、
R4は、P(=O)R4aR4b基を有するC1〜C4アルキル、特にCH2-P(=O)R4aR4b又はCH(CH3)-P(=O)R4aR4b基であり、
ここで、
R4a、R4bは同一であるか又は異なり、且つ非置換であるか、又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3つの置換基を有するフェニルであり、ここで、R4a及びR4bは、特に好ましくは、それぞれが非置換フェニルである]
の存在下で行われる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
光学活性メントールを製造する方法であって、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法において式(III)の光学活性シトロネラールが製造され、式(III)の光学活性シトロネラールが環化に供されて光学活性イソプレゴールを与え、光学活性イソプレゴールが水素化されて光学活性メントールを与える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのキラル配位子を有する少なくとも1種の均一系ロジウム触媒の存在下、水素によるプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化によって、光学活性カルボニル化合物を製造する方法に関する。特に本発明は、光学活性シトロネラールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光学活性アルデヒド及びケトンは、高度に精製された価値のあるキラル物質及び活性物質の合成のための価値のある中間体であり、それ自体が需要のある香料及び芳香物質であることも多い。
【0003】
メントールは最も重要な芳香化学物質の1つであり、その大部分は依然として天然供給源から単離される。天然に存在する鏡像異性体L-メントールへの全合成アプローチは、ゲラニオール又はネロールの光学活性シトロネラールへの不斉(鏡像選択的)水素化を使用する。光学活性シトロネラールは次いで、酸によってL-イソプレゴールへ環化し、L-メントールへ水素化することができる。この方法及び特に最初の不斉水素化ステップの経済的実行可能性の最適化は、常時必要とされている。
【0004】
DE 198 54 637 A1は、下向きに配向されたジェットノズル及び同心円状に配置された誘導管を有する、気-液、液-液、及び気-液-固反応を連続的に行うための反応器を記載している。
【0005】
EP-A 0 000 315は、反応系に溶解したロジウムとキラルホスフィンとの触媒錯体の存在下、ゲラニアール又はネラールの水素化によって光学活性シトロネラールを製造する方法に関する。
【0006】
DE 10 2004 049 631は、少なくとも1つの一酸化炭素配位子を有する、反応系に可溶な光学活性遷移金属触媒の存在下、α,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化によって光学活性カルボニル化合物を製造する方法を記載している。
【0007】
WO 2009/153123は、均一系又は不均一系触媒の存在下、多相系において有機化合物を連続的に水素化する方法であって、2段階において実施され、第1は外部熱交換器を有するループ型反応器において、第2段階は逆混合が制限された気泡塔型反応器において実施される方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 198 54 637 A1
【特許文献2】EP-A 0 000 315
【特許文献3】DE 10 2004 049 631
【特許文献4】WO 2009/153123
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも1つのキラル配位子を有する均一系ロジウム触媒の存在下、水素によるプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化によって、光学活性カルボニル化合物を連続的に製造する方法であって、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物を含む液体反応混合物が、第1の逆混合反応器内で気/液2相水素化に供され、
次いで、液体反応混合物が、第2の反応器内でさらに水素化され、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、第1の反応器内で3重量%〜20重量%の濃度で使用される、方法に関する。
【0010】
均一系ロジウム触媒の存在下、水素によるプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素化の反応速度は、低濃度のα,β-不飽和カルボニル化合物において、最初はα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度に伴って急激に上昇するが、次いで高濃度のα,β-不飽和カルボニル化合物において、急速に減少することが見出されている。高濃度のα,β-不飽和カルボニル化合物においては、おそらく、α,β-不飽和カルボニル化合物のオレフィン性二重結合が触媒のロジウム原子と相互作用することができ、触媒の可逆阻害を生じる。このような挙動は反応物阻害とも呼ばれる。
【0011】
本発明による方法では、液体反応混合物は、第1の逆混合反応器内で反応を起こす。水素化生成物との逆混合は、α,β-不飽和カルボニル化合物の希釈及び反応物阻害の最小化をもたらす。
【0012】
反応速度は、ロジウム原子のモル量に対して規格化された、単位時間当たりに反応したα,β-不飽和カルボニル化合物の量として表すことができる。プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度に対するプロット(第1の反応器内の圧力及び温度条件下)は、極大Vmaxを示す。プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、好ましくは反応速度が少なくとも0.8×Vmaxである濃度で第1の反応器内で使用される。
【0013】
第1の反応器では、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、3重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜20重量%、特に5重量%〜15重量%、例えば7重量%〜13重量%、8重量%〜12重量%、又は9重量%〜11重量%、例えば10重量%の液相濃度で使用される。第1の反応器における逆混合にもかかわらず、液相中のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度は完全には均一でないため、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度は、第1の反応器の排出口における液相中の濃度であると考える。
【0014】
変換率を上昇させるため、液体反応混合物は次いで、第2の反応器内でさらなる反応を起こす。最終反応混合物中の高濃度の未反応プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物(以後「反応物」とも呼ぶ)はまた、例えば蒸留によって光学活性カルボニル化合物が分離された触媒残留物中に、高い残留濃度のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物をもたらす。触媒残留物は通例、本明細書で後に記載する予備形成の後、水素化反応に返送される。高い残留濃度のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、予備形成に悪影響を与える。そのため、第2の反応器における変換がほとんど完了まで進行して、未反応プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度を最小化することが望ましい。
【0015】
第2の反応器では、液体反応混合物は好ましくは、5重量%未満、特に3重量%未満、例えば2重量%未満、又は1重量%未満のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の濃度まで使用される。
【0016】
第1の反応器の反応体積と第2の反応器の反応体積との比は、好ましくは1:1〜1:5、特に1:2〜1:4、例えば約1:3.5である。
【0017】
反応器内の滞留時間プロファイルは、直列に接続された理想的な撹拌槽型反応器の理論上の数N(「反応器数」)によって実際の反応器を記載する、カスケードモデル(例えば、Baerns、Hofmann、Renken、「Chemische Reaktionstechnik」[Chemical Reaction Technology]を参照されたい)によって表すことができる。これは、反応器同士が同じ体積を有し、反応器の体積が変化しないと仮定している。個々の反応器の間の逆混合は除外される。反応器数Nは1と無限大との間であってよいが、整数値のみであり得る。極端な状態は、N=1(完全な混合、理想的な撹拌槽型反応器)又はN=∞(軸方向の逆混合なし、理想的な流管)である。
【0018】
本発明による方法では、第1の反応器は好ましくは、1〜3の範囲内、特に1又は2の反応器数を有する。
【0019】
第1の反応器は好ましくは、ループ型反応器として構成される。ループ型反応器の例は、内部ループ及び外部ループを有する管型反応器である。このような反応器は、例えば、Ullmann's Encyclopedia (Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Verlag Chemie、2008年電子公開、第7版、章「Stirred-Tank and Loop Reactors」及び「Bubble Columns」)により詳細に記載されている。ループ型反応器は通例、縦型の、好ましくは円筒状の管型反応器からなる。
【0020】
ループ型反応器の長さとループ型反応器の直径との比は、典型的には2:1〜100:1、好ましくは5:1〜100:1、より好ましくは5:1〜50:1、特に好ましくは5:1〜30:1である。
【0021】
反応物は、好ましくはジェットノズルを通じて、より特定すると液体の水位より上に配置されたジェットノズルを通じて、管型反応器の選択地点に補給される。「ジェットノズル」という用語は、典型的には、フローの方向に細くなった管を指す。ジェットノズルは、第1の反応器内に混合を生じる。
【0022】
第1の反応器への体積比動力入力は、好ましくは0.5〜5kW/m3、例えば1.0〜4kW/m3、又は1.5〜3kW/m3である。体積比動力入力は、ジェットノズルの両端の圧力差と、ノズルを通じた体積フローとの積として決定することができる。
【0023】
ジェットノズルは、単一物質用又は2種の物質用ノズルとして構成することができる。単一物質用ノズルの場合、液体反応混合物のみが噴射され、水素は、別の選択地点であるが好ましくは反応器の下部領域において噴射される。この設計の利点は、このような単一物質用ノズルの単純な構造である。反応器の下部領域における水素の噴射は、反応器内の反応混合物の循環を有利に促進する。2種の物質用ノズルを用いて、水素は、液体反応混合物とともに補給され、分散する。
【0024】
好ましい実施形態では、反応混合物は、反応器の上部に存在する単一物質用ジェットノズルを介して、下向きに計量供給される。水素は、反応器内の液体の水位よりも上のガス空間に集まる。ノズルからのジェットは、ガス空間を通って落下し、水素ガスに衝突して、液相に入る際にガスを気泡に放散させて液相中に分散させる。
【0025】
ループ型反応器は一般に、外部回路(外部ループ)を有する管型反応器として構成される。外部回路を有するループ型反応器において、一般に、反応器の選択地点、好ましくは反応器の下部領域の選択地点に引き込み口(draw)があり、反応混合物はこれを介して、搬送要素によって外部回路のジェットノズルに帰還する。搬送要素は好ましくはポンプであり、そのため、外部回路は典型的には、ポンプ循環回路と呼ばれる。
【0026】
ポンプの例は、遠心ポンプ又はロータリーピストンポンプ、例えばロータリーローブポンプ、ロータリーベーンポンプ、円周ピストンポンプ、又は歯車ポンプである。搬送要素として、遠心ポンプを使用することが特に好ましい。
【0027】
第1の反応器は好ましくは、外部回路を有するループ型反応器として構成され、外部回路に熱交換器が存在する。このような反応器は、本発明の文脈において、外部熱交換器を有するループ型反応器と呼ばれる。
【0028】
熱交換器は、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器、二重シェルアンドチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、又はスパイラル式熱交換器である。100bar未満の反応器設計圧力においては、シェルアンドチューブ式熱交換器を用いることが好ましく、一方、より高圧においては、直列に接続された1つ以上の二重シェルアンドチューブ熱交換器を用いることが好ましい。
【0029】
外部熱交換器を有するループ型反応器は典型的には、反応混合物の一部が反応器から、外部熱交換器を含む外部ポンプ循環回路を通って搬送されるように運転され、したがって、熱交換器を通って搬送される反応混合物を冷却する。外部ポンプ循環は通常、第1の反応段階における反応混合物を激しく混合及び再循環させ、その結果、第1段階における滞留時間は典型的には、連続逆混合撹拌槽型反応器(CSTR)の滞留時間と一致する。
【0030】
反応混合物は最終的に、ジェットノズルによって反応器に返送される。典型的には、新しい反応物及び新しい触媒溶液がポンプ循環回路に導入され、ポンプ循環回路に既に存在する流れとともに、反応混合物として反応器に補給される。
【0031】
好ましい実施形態では、ループ型反応器は、外部回路に加えて、いわゆる内部ループフローが発現するように設計される。内部ループフローを有するループ型反応器では、同心円状の、好ましくは円筒状の誘導管が、通常、管型反応器の内部に配置され、この誘導管は実質的に、反応器端部を除いた管型反応器の長さ全体に及ぶ。
【0032】
誘導管は通常、単純な管として構成される。誘導管の長さと直径との比は、一般に5:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1である。
【0033】
誘導管の直径は、管型反応器の直径未満である。誘導管の直径と管型反応器の直径との比は、一般に0.3:1〜0.9:1、好ましくは0.5:1〜0.7:1である。誘導管と反応器壁との間の空間は一般に、環状空間と呼ばれる。
【0034】
ジェットノズルは通例、ジェットノズルによって発生する気/液ジェットが誘導管に向かうように配置される。ジェットノズルは好ましくは、誘導管の上端よりも上に配置される。ノズル先端は、液体の水位よりも上に位置し、液相に浸らない。ジェットノズルによって発生する気/液ジェットは、誘導管内に下向きのフローをもたらし(下向き流の筒)、このフローは誘導管を出た後に曲がり、誘導管と反応器壁との間の環状空間の液体が、ジェットノズルに向かって上に逆流する(上向きフローの筒)。これは通常、内部ループフローを発生させる。内部ループフローと外部ポンプ循環における反応混合物との体積フローの比は、好ましくは2〜30:1、より好ましくは5〜20:1である。
【0035】
反応混合物の少なくとも一部は、第1の反応器から第2の反応器へ補給される。第2の反応器における逆混合は、好ましくは、この第2の反応器における滞留時間分布が、管型反応器の滞留時間に近づくように制限される。この規定された液体滞留時間によって、反応物をほぼ完全に変換することができる。第2の反応器は好ましくは、4より多い、特に5より多い、又は6より多い反応器数を有する。
【0036】
第2の反応器は通例、縦型の、好ましくは円筒状の管型反応器からなる。反応器の長さと反応器の直径との比は、典型的には2:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1、より好ましくは7:1〜25:1である。
【0037】
第2の反応器からの出口に位置する第2の反応器のセクションでは、好ましくは液体単相反応として水素化が起こり、すなわち、第2の反応器からの出口に位置するセクションでは、分散した気相はなく、水素化は、もっぱら液相に溶解した水素によって起こる。第2の反応器からの出口に向かう水素化回転率は低いため、溶存水素の濃度は十分である。第2の反応器からの出口に向かう離散気相がないことは、第2の反応器における液体滞留量を増加させることができ、第2の反応器内の液相の滞留時間が延長されることを意味する。水素化は液相中で起こるため、これは反応空間を最適に使用している。液体単一相において運転される第2の反応器のセクションは、好ましくは、第2の反応器の総体積の30〜50%を占める。
【0038】
第2の反応器における逆混合は、好ましくは内部構造物(internal)によって制限される。このような装置の装着は一般に循環を制限し、したがって、気体及び液体の逆混合を制限する。
【0039】
第2の反応器における逆混合の制限は、種々の内部構造物を装着することによって達成され得る。好ましい実施形態では、逆混合の制限は、複数の固定トレイを管型反応器内に装着することによって行われる。これは、個別のトレイ同士の間に規定された反応体積を有する、個別のセグメント(「区画」)を生じる。個別のセグメントのそれぞれは一般に、個別の逆混合撹拌槽型反応器として機能する。連続する個別のセグメントの数が増加するにつれて、このようなカスケードの滞留時間分布は一般に、管型反応器の滞留時間に近づく。このように形成される個別のセグメントの数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜6である。ここで用いるトレイは、好ましくは液体透過性トレイである。トレイが穿孔金属シートであると特に好ましい。
【0040】
十分な水素飽和を確保するために、好ましくは第2の反応器の入り口に向かって位置する第2の反応器のセクションにおいて、例えば、第2の反応器の1つ目の個別のセグメントにおいて、液体反応混合物中に水素ガスを分散させる。
【0041】
第2の反応器の入り口に位置する第2の反応器のセクションは、この目的のために、好ましくは外部回路を有するループ型反応器として設計される。セクションへの水素の分散は、好ましくはジェットノズルを通じて行われる。ジェットノズルは、単一物質用又は2種の物質用ノズルとして構成することができる。セクションの選択地点に引き込み口があり、反応混合物はこれを介して、搬送要素によって外部回路のジェットノズルに帰還する。水素は、液体反応混合物とともに補給されてもよく、第2の反応器の入り口に位置するセクションに、選択地点において計量補給されてもよい。
【0042】
外部回路を有するループ型反応器は、好ましくは熱交換器を含み、外部ポンプ循環回路を通って反応器外へ供給される反応混合物が、熱交換器によって冷却されるように運転される。
【0043】
好ましい実施形態では、反応混合物は、第2の反応器の上部に存在する単一物質用ジェットノズルを介して、下向きに計量供給される。ノズルからのジェットは、ガス空間を通って落下し、ガスに衝突して、液相に入る際にガスを気泡に放散させて、液相中に分散させる。
【0044】
第2の反応器内の個別のセグメントの数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜6である。水素ガスを液体反応混合物中に分散させる1つ目の個別のセグメントの体積は、第2の反応器の総体積を基準として、好ましくは30〜70%である。第2の反応器における2つ目のセグメントから最後の個別のセグメントは、好ましくは液体単相において運転され、このとき、第2の反応器の2つ目のセグメントから最後の個別のセグメントは、好ましくは、第2の反応器の総体積の30〜70%を占める。
【0045】
第1の反応器及び第2の反応器は、好ましくは、パイプラインを介して互いに接続された、2つの空間的に離れた機器として配置される。
【0046】
他の実施形態では、両方の反応器を、1つの機器(水素化反応器)内に配置することができる。この好ましい実施形態では、水素化反応器は、長い円筒状の管(背の高い円筒状構造)として構成される。
【0047】
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、オレフィン性二重結合における付加反応を通じて、キラル中心を形成することができる。ここでの二重結合は、4つの異なる置換基を有する。プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、好ましくは一般式(I)の化合物
【0048】
【化1】
[式中、
R1、R2は互いに異なり、それぞれ、飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有する、1〜25個の炭素原子を有する非分枝状、分枝状、又は環式の炭化水素基であり、
R3は、水素であるか、又は飽和しているか、若しくは1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有する、1〜25個の炭素原子を有する非分枝状、分枝状、若しくは環式の炭化水素基であり、
あるいは
R3はR1又はR2基のいずれかと共同で、3員〜25員アルキレン基を表してもよく、1、2、3又は4つの非隣接CH2基は、O又はN-R5cによって置き換えられていてもよく、アルキレン基は飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つアルキレン基は非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、2つの置換基同士が共同で、2員〜10員アルキレン基を表してもよく、2員〜10員アルキレン基は飽和しているか、又は1つ以上の非共役エチレン性二重結合を有し、且つ2員〜10員アルキレン基は非置換であるか、又はOR4、NR5aR5b、ハロゲン、C6〜C10アリール、及び5〜10個の環原子を有するヘテロアリールから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、
ここで、
R4は水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、又はC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールであり、
R5a、R5bはそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、若しくはC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールであり、又は
R5a及びR5bが共同で、N若しくはOに割り込まれていてもよい、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表してもよく、
R5cは水素、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C6〜C14アリール-C1〜C10アルキル、又はC1〜C10アルキル-C6〜C14アリールである]
から選択される。
【0049】
好ましい実施形態では、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、一般式(Ia)及び(Ib)の化合物
【0050】
【化2】
[式中、
R1、R2はそれぞれ、飽和しているか、又は1、2、3、4若しくは5つの非共役エチレン性二重結合を有し、2〜25個の炭素原子を有する、非分枝状又は分枝状炭化水素基である]
から選択される。
【0051】
特に好ましい実施形態は、式(III)の光学活性シトロネラール
【0052】
【化3】
[式中、*は不斉中心を指す]
を製造する方法であって、式(Ia-1)のゲラニアール若しくは式(Ib-1)のネラール
【0053】
【化4】
又はネラール及びゲラニアールを含む混合物の不斉水素化によって製造する、方法に関する。ネラール及びゲラニアールを含む混合物は、シトラールとして知られる。
【0054】
このようにして得られる式(III)の光学活性シトロネラールは環化に供されて光学活性イソプレゴールを与え、光学活性イソプレゴールは水素化に供されて、光学活性メントールを与え得る。
【0055】
本発明による方法を通じて、光学活性カルボニル化合物、特に光学活性アルデヒドを、高収率且つ高鏡像異性体過剰率で提供することができる。所望の不斉水素化化合物は、典型的には、少なくとも80%eeの鏡像異性体過剰率において、しばしば約85%ee〜約99%eeの鏡像異性体過剰率で得られる。ここで留意する点は、達成可能な最大鏡像異性体過剰率が、用いる基質の純度に、より特定すると水素化される二重結合の異性体純度に関して、依存し得ることである。したがって、特に適当な出発物質は、E/Z二重結合異性体に関する異性体比が、少なくとも約90:10、好ましくは少なくとも約95:5である出発物質である。
【0056】
本発明による製造方法は、反応混合物に可溶であり、少なくとも1つの光学活性配位子を有する、光学活性ロジウム触媒の存在下で行われる。この種類の触媒は、例えば、反応混合物に可溶である好適なロジウム化合物を、少なくとも1個のリン及び/又はヒ素原子を有する光学活性配位子と反応させることによって得られる。
【0057】
本発明によって用いることができるロジウム化合物の例は、RhCl3、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16であり、ここで「acac」はアセチルアセトナート配位子であり、「cod」はシクロオクタジエン配位子である。
【0058】
反応混合物中の触媒濃度は、触媒中に存在するロジウム原子として計算して、反応混合物中のプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の量を基準として、好ましくは0.001〜1mol%、特に0.002〜0.5mol%、特に好ましくは0.005〜0.2mol%である。
【0059】
列挙したロジウム化合物を、光学活性であり、好ましくは実質的に鏡像異性的に純粋であり(すなわち、少なくとも約99%の鏡像異性体過剰率を有し)、且つ少なくとも1個のリン及び/又はヒ素原子、好ましくは少なくとも1個のリン原子を有する、さらなる化合物と接触させる。キラル配位子と呼ばれるこの化合物は、使用したロジウム化合物を有する反応混合物中、又は予備形成混合物中で、本発明によって用いるロジウム触媒を形成する。
【0060】
特に好ましいのは、2個のリン原子を有し、ロジウムとキレート錯体を形成するキラル配位子である。
【0061】
本発明の文脈において好適なキラル配位子としては、例えば、I. Ojima(編)、Catalytic Asymmetric Synthesis、Wiley-VCh、第2版、2000年、又はE.N. Jacobsen、A. Pfaltz、H. Yamamoto(編)、Comprehensive Asymmetric Catalysis、2000年、Springer、又はW. Tang、X. Zhang、Chem. Rev. 2003年、103巻、3029〜3069頁に記載されているものなどの化合物が挙げられる。
【0062】
好ましい配位子はキラル二座ビスホスフィン配位子であり、特に一般式(IV)〜(VI)
【0063】
【化5】
[式中、
R5、R6はそれぞれ独立して、飽和しているか、又は1つ以上の、一般に1〜約4つの非共役エチレン性二重結合を有してもよく、且つ非置換であるか、又はOR13、NR14R15、ハロゲン、C6〜C10アリール、及びC3〜C9ヘテロアリールから選択される1つ以上の、一般に1〜4つの同一の若しくは異なる置換基を有してもよい、1〜20個の炭素原子を有する非分枝状、分枝状、又は環式の炭化水素基であり、あるいは
R5及びR6が共同で、2員〜10員アルキレン基又は3員〜10員シクロアルキレン基を表してもよく、1、2、3又は4つの非隣接CH基は、O又はN-R13によって置き換えられていてもよく、アルキレン基及びシクロアルカン基は、飽和しているか、又は1若しくは2つの非共役エチレン性二重結合を有し、且つアルキレン基及びシクロアルキレン基は、非置換であるか、又はC1〜C4アルキルから選択される1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、
R7、R8はそれぞれ独立して、水素、又は直鎖若しくは分枝状C1〜C4アルキルであり、
R9、R10、R11、R12は同一であるか又は異なり、且つ非置換であるか、又はC1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C6〜C10アリール、C1〜C6アルコキシ、及びアミノから選択される1つ以上の置換基を有するC6〜C10アリールであり、
R13、R14、R15はそれぞれ独立して、水素、C1〜C4アルキル、C6〜C10アリール、C7〜C12アラルキル、又はC7〜C12アルキルアリールであり、R14及びR15が共同で、N又はOによって割り込まれていてもよい、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖を表してもよい]
のものである。
【0064】
式(IV)、(V)、及び(VI)において、可変要素は特に次の通りである。
R5、R6はそれぞれ独立して、C1〜C4アルキルであり、又は
R5及びR6が共同で、C3〜C5アルカンジイル基、C3〜C7アルケンジイル基、C5〜C7シクロアルカンジイル基、若しくはC5〜C7シクロアルケンジイル基を表し、4種の前述の基は非置換であるか、又はC1〜C4アルキルから選択される、1つ以上の同一の若しくは異なる置換基を有し、
R7、R8はそれぞれ独立して、水素又はC1〜C4アルキルであり、
R9、R10、R11、R12はそれぞれフェニルである。
【0065】
容易に入手可能なために特に好ましいキラル二座ビスホスフィン配位子は、「キラホス」の名称で入手可能な、式:
【0066】
【化6】
の化合物である。
【0067】
キラル配位子は、用いる1molのロジウム化合物当たり約0.9〜約10mol、好ましくは約1〜約4molの量において、有利に用いられる。反応混合物に可溶な光学活性ロジウム触媒は、好都合なことに、水素化前又は水素化中にアキラルロジウム化合物をキラル二座ビスホスフィン配位子と反応させることによって、in situで発生する。この文脈において、「in-situ」という用語は、触媒が水素化の直前又は開始時に発生することを意味するものと理解されたい。触媒は、好ましくは水素化の前に発生する。
【0068】
単座配位子の存在は、触媒の活性を上昇させられることが見出されている。本発明による方法の好ましい実施形態は、式(II)の化合物
【0069】
【化7】
[式中、式(II)におけるZはCHR18R19基であり、可変要素R16、R17、R18、R19は独立して、特に共同で、次の通りである:
R16、R17は同一であるか又は異なり、且つ非置換であるか、又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3つの置換基を有するフェニルであり、ここで、R16及びR17はそれぞれ、特に非置換フェニルであり、
R18はC1〜C4アルキル、特にメチルであり、
R19は、P(=O)R19aR19b基を有するC1〜C4アルキル、特にCH2-P(=O)R19aR19b又はCH(CH3)-P(=O)R19aR19b基であり、
ここで、
R19a、R19bは同一であるか又は異なり、且つ非置換であるか、又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3つの置換基を有するフェニルであり、ここで、R19a及びR19bは、特に好ましくは、それぞれが非置換フェニルである]
を使用する。
【0070】
本発明による方法のこの好ましい実施形態では、特に好ましいのは、式(II)の化合物
[式中、
R16、R17は非置換フェニルであり、
R18はメチルであり、
R19はCH(CH3)-P(=O)R19aR19b基であり、ここで、R19a及びR19bはそれぞれ、非置換フェニルである]
を用いることである。
【0071】
これは、化合物(2-(ジフェニルホスホリル)-1-メチルプロピル)ジフェニルホスファン(キラホスモノオキシド)であり、(R,R)鏡像異性体(=(R,R)-キラホスモノオキシド)及び(S,S)鏡像異性体(=(S,S)-キラホスモノオキシド)、並びに((R,R)-キラホスモノオキシドと(S,S)-キラホスモノオキシドとの混合物を包含する。
【0072】
一般式(II)におけるR18及びR19基が異なる場合、R18及びR19基を有する炭素原子は、(R)配置を有しても、(S)配置を有してもよい。一般式(II)のこれらの化合物は、純粋な(R)若しくは純粋な(S)立体異性体の形態、又はこれらの混合物としてであり得る。このような例では、純粋な(R)及び(S)立体異性体が通常用いられるが、任意の立体異性体混合物も本方法において用いるのに好適である。
【0073】
ここ及び本明細書の以降において、純粋な立体異性体とは、所望の立体異性体が、少なくとも80%ee、特に少なくとも90%ee、とりわけ少なくとも95%eeの鏡像異性体過剰率(ee)で存在するキラル物質を意味するものとして理解されたい。
【0074】
より特定すると、用いるキラル配位子はキラホスであり、用いる単座化合物は(2-(ジフェニルホスホリル)-1-メチルプロピル)ジフェニルホスファン(キラホスモノオキシド)である。例えば、用いるキラル配位子はR-キラホスであり、用いる単座化合物は(R,R)-キラホスモノオキシド及び/又は(S,S)-キラホスモノオキシドである。代替的には、用いるキラル配位子はS-キラホスであり、用いる単座化合物は(R,R)-キラホスモノオキシド及び/又は(S,S)-キラホスモノオキシドである。
【0075】
本発明によれば、式(II)の化合物は通常、ロジウム1mol当たり0.01〜1mol、好ましくは0.02〜0.8mol、より好ましくは0.03〜0.7molの量で、特に0.04〜0.6molの量で用いる。
【0076】
ロジウム触媒及び単座配位子のさらなる実施形態は、米国特許出願公開第2018/0057437(A1)号、WO 2006/040096 A1、及びWO 2008/132057 A1に記載されている。
【0077】
水素化に用いる水素は一般に、化学量論的に必要な量の1〜10倍、好ましくは1.1〜5倍、相対的に大きく化学量論的に過剰で用いる。水素は、循環ガスとして反応に帰還させることができる。用いる水素は一般に、テクニカルグレード純度のものである。水素は、水素を含むガスの形態、すなわち、他の不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、又は二酸化炭素との混合物において用いてもよい。例えば、改質器排気、リファイナリーガス等を、水素を含むガスとして用いてもよい。しかしながら好ましいのは、純粋な水素又は実質的に純粋な水素をこの方法に用いることである。
【0078】
本発明による不斉水素化は、約2〜約200bar、特に約10〜約100bar、とりわけ約60〜約100barの圧力、且つ一般に約0℃〜約100℃、好ましくは約0℃〜約30℃、特に約10℃〜約30℃の温度において、有利に行われる。
【0079】
本発明の不斉水素化を行うために用いる溶媒の選択は、重要性が低い。反応条件下で不活性な、好適な溶媒又は溶解媒体の例としては、エーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オクタデカノール、ビフェニルエーテル、Texanol、Marlotherm、Oxool 9N(異性体オクテンからのヒドロホルミル化生成物、BASF SE)、及びシトロネラール等が挙げられる。溶解媒体として、反応において形成される、水素化生成物又は任意の高沸点副生成物を用いることもできる。任意で事前に行われる任意の予備形成と同じ溶媒中で不斉水素化を行うことが、特に有利である。
【0080】
本発明による方法の好ましい実施形態では、水素化の前に、一酸化炭素及び水素を含むガス混合物によって触媒が前処理され、且つ/又は不斉水素化が、反応混合物に追加で補給された一酸化炭素の存在下で行われる。
【0081】
このことは、反応混合物に可溶な、すなわち、均一系である用いるロジウム触媒を、一酸化炭素及び水素を含むガス混合物によって、不斉水素化の前に前処理するか(すなわち、「予備形成」を行う)、若しくは不斉水素化を、反応混合物に追加で補給した一酸化炭素の存在下で行うか、又は予備形成を行った後に、反応混合物に追加で補給した一酸化炭素の存在下で不斉水素化を行うかのいずれかであることを意味する。
【0082】
そのため、この好ましい実施形態において用いる、反応混合物に可溶なロジウム触媒は、少なくとも、触媒サイクルに関与する形態、又は実際の触媒サイクルの上流である前駆体において、少なくとも1つのCO配位子を有し得るが、少なくとも1つのCO配位子を有するこの触媒形態が、触媒の実際に触媒活性な形態を構成するかは重要ではない。場合によりCO配位子を有する触媒形態を安定化するために、水素化中に反応混合物に一酸化炭素を追加で補給することは有利であり得る。
【0083】
この好ましい実施形態では、言及した触媒前駆体の前処理は、20体積%〜90体積%の一酸化炭素、10体積%〜80体積%の水素、及び0体積%〜5体積%の他のガスを含むガス混合物によって、5〜100barの圧力において行い、言及した体積比率の合計は100%である。加えて、過剰な一酸化炭素は、このようにして得た触媒から、不斉水素化に用いる前に除去される。過剰な一酸化炭素という用語は、得られた反応混合物中にガス状又は溶解形態で存在し、ロジウム触媒又はその前駆体に結合していない一酸化炭素を意味するものと理解されるべきである。したがって、触媒に結合していない過剰な一酸化炭素は、少なくとも大部分が、すなわち、いずれの残存量の溶存一酸化炭素であれ、後続の水素化を顕著には妨げない程度に除去される。これは典型的には、予備形成のために用いた一酸化炭素のうちの約90%、好ましくは約95%以上が除去された場合に確実となる。過剰な一酸化炭素は、好ましくは、予備形成を通じて得られた触媒から完全に除去される。
【0084】
過剰な一酸化炭素は、得られた触媒から又は触媒を含む反応混合物から、種々の方法において除去され得る。予備形成を通じて得られる触媒又は触媒を含む混合物は、好ましくは最大約5bar(絶対)の圧力に、好ましくは、とりわけ5〜10barの圧力範囲内で予備形成を行う場合、5bar(絶対)未満の圧力に、好ましくは約1bar〜約5barの範囲内の圧力に、好ましくは1〜5bar未満に、特に好ましくは1〜3barの範囲内の圧力に、非常に特に好ましくは約1〜約2barの範囲内の圧力に、とりわけ好ましくは常圧に除圧され、その結果、ガス状の結合していない一酸化炭素が予備形成生成物から出ていく。前述の予備形成した触媒の除圧は、例えば高圧分離器、例えば、それ自体が当業者に公知の高圧分離器を用いて行われ得る。液体が連続相であるこのような分離器は、例えばPerry's Chemical Engineers' Handbook、1997年、第7版、McGraw-Hill、14.95頁及び14.96頁に記載されており、起こり得る落下飛沫同伴の防止は、14.87〜14.90頁に記載されている。予備形成した触媒の除圧は、1bar〜約5barの範囲内の所望の圧力に到達するまで、1段階プロセスで行っても、2段階プロセスで行ってもよく、これは典型的には、10℃〜40℃への温度の低下によって遂行される。代替的には、過剰な一酸化炭素は、ガスによる、有利には反応条件下で不活性なガスによる、触媒又は触媒を含む混合物のいわゆるストリッピングによって除去され得る。ストリッピングという用語は、例えば、W. R. A. Vauck、H. A. Muller、Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations in chemical process technology]、Deutscher Verlag fur Grundstoffchemie Leipzig、Stuttgart、第10版、1984年、800頁に記載されているように、触媒又は触媒を含む反応混合物へのガスの導入を意味するものと当業者に理解される。これのために好適な不活性ガスの例としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素、及び/又はCO2、好ましくは水素、窒素、アルゴンが挙げられる。
【0085】
次いで、好ましくは、50〜3000ppmの範囲内、特に100〜2000ppmの範囲内、とりわけ200〜1000ppmの範囲内、特にとりわけ400〜800ppmの範囲内の一酸化炭素含有量を有する水素によって、不斉水素化が行われる。
【0086】
ロジウム触媒の予備形成を行う場合、選択したロジウム化合物及び選択したキラル配位子を、典型的には、反応条件下で不活性な好適な溶媒又は溶解媒体、例えば、エーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オクタデカノール、ビフェニルエーテル、Texanol、Marlotherm、Oxool 9N(異性体オクテンのヒドロホルミル化生成物、BASF Aktiengesellschaft)、及びシトロネラール等に溶解させる。溶解媒体として、反応中に形成される、水素化生成物又は任意の高沸点副生成物を用いることもできる。得られる溶液は、有利には好適な圧力反応器又はオートクレーブ中で、典型的には約5〜約350bar、好ましくは約20〜約200bar、及びより好ましくは約50〜約100barの圧力において、水素及び一酸化炭素を含むガス混合物によって加圧される。予備形成は、好ましくは、約
30体積%〜99体積%の水素、
1体積%〜70体積%の一酸化炭素、及び
0体積%〜5体積%の他のガスを含むガス混合物を用いて行い、体積比率の合計は100%である。
【0087】
予備形成のために特に好ましいガス混合物は、いわゆる合成ガスであり、典型的には、水素及び微量の他のガスに加えて、35体積%〜55体積%の一酸化炭素を含む。
【0088】
触媒の予備形成は、典型的には約25℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約80℃の温度において行われる。予備形成は、典型的には約1時間〜約24時間後、しばしば約1時間〜約12時間後に完了する。本発明によれば、任意で行われる予備形成には、選択した基質の不斉水素化が後続する。先行する予備形成の後、選択した基質は通例、追加の一酸化炭素の補給があってもなくても、首尾よく行うことができる。予備形成を行わない場合、本発明による不斉水素化は、反応系に補給した一酸化炭素の存在下、又は一酸化炭素の補給なしのいずれかにおいて行うことができる。記載したように予備形成を行い、不斉水素化中に追加の一酸化炭素を反応混合物に加える場合が有利である。
【0089】
一酸化炭素を反応系に補給する場合、補給は種々の方法で行われ得る。例えば、一酸化炭素を、不斉水素化に用いるための水素中に混合してもよく、そうでなければガス状形態で反応溶液中に直接導入してもよい。一酸化炭素は、好ましくは、不斉水素化に用いるための水素中に混合される。
【0090】
反応生成物は、それ自体が当業者に公知の方法によって、例えば蒸留及び/又はフラッシュ蒸発によって、反応混合物から取り出すことができ、残留する触媒は、任意で新たな予備形成の後、さらなる反応に用いられる。好ましい実施形態の文脈において、溶媒を加えない場合、並びに反応が起こる基質中/生成物中、及び任意で、溶解媒体としての高沸点副生成物中で、記載した変換が行われる場合に有利である。特に好ましいのは、本発明によって安定化された均一系触媒の再使用/再循環による連続反応モードである。
【0091】
添付の図面及び続いての実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】キラホスロジウム触媒の存在下でのシトラールの水素化の(最大反応速度に対する)反応速度の、シトラール濃度の関数としてのプロットである。
図2】本発明の方法を実施するのに好適な系の概略図である。
図3】本発明の方法を実施するのに好適な系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
図1に示すデータは、ジェットループ型反応器において得たものであり、異なる変換率は異なる触媒装填量を通じて達成した。反応器に入る、及び反応器を出るシトラールの量の差は、ここでは、反応器中のロジウムの質量に関係し、反応器からの流出物におけるシトラール濃度によってプロットした。このように決定した反応速度を、最大反応速度によって規格化した。
【0094】
図1から、シトラールの水素化の反応速度は、低いシトラール濃度においてはシトラール濃度に伴って大きく上昇するが、次いで、高いシトラール濃度においては急速に減少することがわかる。最大反応速度Vmaxには、約9重量%のシトラール濃度で到達する。0.8×Vmaxより速い反応速度には、約5重量%〜20重量%の濃度範囲のシトラールにおいて到達する。
【0095】
図2によれば、本発明の方法を実施するのに好適な系は、第1の水素化反応器201、及び第2の水素化反応器202を含む。
【0096】
水素化反応器201は、撹拌子203を含む。水素化される反応物を含む液体は、ライン204を介して水素化反応器201に補給される。水素ガスは、ライン205を介して水素化反応器201に補給される。水素化反応器201からの排気は、ライン206を介して水素化反応器1の外に導かれる。
【0097】
水素化反応器201の底部において外に導かれる流出流207は、水素化反応器202に補給される。水素化反応器202は、撹拌子208を含む。水素ガスは、ライン209を介して水素化反応器202に補給される。水素化反応器202からの排気は、ライン210を介して水素化反応器202の外に導かれる。
【0098】
水素化反応器202は、水素化反応器202における逆混合を制限するはめ込みトレイ211を含む。トレイは、好ましくは穿孔シートである。分散した水素ガスは、トレイによって少なくとも部分的に保持され、その結果、第2の反応器からの出口に位置するセクションにおける液体反応混合物中の分散ガスの比率が減少する。少なくとも出口においては、水素化は液体単相において起こる。
【0099】
水素化した反応生成物を含む液体は、ライン212を介して水素化反応器202の外に導かれる。
【0100】
少なくとも1つのキラル配位子を有する均一系ロジウム触媒を含む液体は、液体流204に計量供給される(図示せず)。
【0101】
図3によれば、本発明の方法を実施するのに好適な系は、第1の水素化反応器301、及び第2の水素化反応器302を含む。水素化反応器301及び302は噴射によって混合され、それぞれポンプ循環回路を有する。
【0102】
水素化反応器301は、ジェットノズル303を含む。液体は、ライン304から水素化反応器301に、ジェットノズル303を介して補給される。ライン304からの液体流は、反応物流305及びポンプ循環流306を含む。反応物流305は、水素化される反応物を含む液体を含む。ポンプ循環流306は、水素化反応器1の底部において外に導かれる流出流307の副流である。水素ガスは、ライン308を介して水素化反応器301に補給される。水素化反応器301は、誘導管309、液体の水位よりも上に配置されたジェットノズル303を含み、ジェットノズル303によって発生する気/液ジェットは、誘導管309に向かう。水素化反応器301からの排気は、ライン310を介して水素化反応器301の外に導かれる。
【0103】
流出流307の副流は、水素化反応器302の逆混合ゾーンから引き出される液体ポンプ循環流311と組み合わせられて液体流312を形成し、ジェットノズル313を介して水素化反応器302に補給される。水素ガスは、ライン314を介して水素化反応器302に補給される。水素化反応器302は、誘導管315、液体の水位よりも上に配置されたジェットノズル313を含み、ジェットノズル313によって発生する気/液ジェットは、誘導管315に向かう。水素化反応器302からの排気は、ライン316を介して水素化反応器302の外に導かれる。
【0104】
水素化反応器302は、水素化反応器302における逆混合を制限するはめ込みトレイ317を含む。トレイは、好ましくは穿孔シートである。分散した水素ガスは、トレイによって少なくとも部分的に保持され、その結果、第2の反応器からの出口に位置するセクションにおける液体反応混合物中の分散ガスの比率が減少する。少なくとも出口においては、水素化は液体単相において起こる。
【0105】
水素化した反応生成物を含む液体は、ライン318を介して水素化反応器302の外に導かれる。
【0106】
少なくとも1つのキラル配位子を有する均一系ロジウム触媒を含む液体は、水素化反応器301のポンプ循環回路に、例えば液体流304に計量供給される(図示せず)。水素化反応器301及び水素化反応器302のポンプ循環回路は、例えば、流出流307及びポンプ循環流311を冷却する外部熱交換器(図示せず)を含む。
【実施例】
【0107】
1500kg/hのシトラール及び1500kg/hの触媒混合物を、12m3の液体体積を有するジェットループ型反応器に供給した。触媒混合物は、米国特許出願公開第2018/057437(A1)号、WO 2006/040096、及びWO 2008/132057 A1に記載されている手順と同様の方法において調製した混合物であり、1:1.4:10のモル比におけるRh(CO)2acac、キラホス、及びトリドデシルアミンを、CO及びH2とシトロネラール中で反応させた。ジェットループ型反応器中の触媒混合物の濃度は、触媒中のロジウムの量を基準として、300〜1000重量ppmであった。外部循環と供給との比は、380:130であった。内部循環と供給との比は、3000:1000であった。
【0108】
動力入力は2kW/m3であった。反応器内の圧力は、水素ガス(1000ppmの一酸化炭素を含有する)を供給することによって、80barに調節した。反応器内の温度は22℃に調節した。シトラールの変換率は88%であった。第1の反応器からの流出物中に、約7重量%のシトラール濃度が存在した。
【0109】
反応器からの流出物を9.7m3の液体体積を有する第2の反応器に供給した。第2の反応器内の圧力は、水素ガス(1000ppmの一酸化炭素を含有する)を供給することによって、80barに調節した。反応器内の温度は22℃に調節した。第2の反応器後の合計変換率は、93%と99.9%との間であった。
【0110】
第1の反応器における反応速度は、高いシトラール濃度においては減少することが見出された。したがって、第1の反応器を低いシトラール濃度において運転し、第2の反応器において反応を完了させることが有利であることを実証した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】