【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかるセメント組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態のセメント組成物は、
セメントとシリカ質粉末とを含む水硬性結合材と、細骨材と、粗骨材とを備えたセメント組成物であって、
前記細骨材が、表乾密度2.80g/cm
3以上、吸水率1.25質量%以上であり、
細骨材及び粗骨材の総量に対する前記細骨材の割合が35体積%以上85体積%以下である。
【0023】
A:水硬性結合材
本実施形態のセメント組成物の水硬性結合材は、セメントとシリカ質粉末とを含む。
尚、本実施形態における水硬性結合材は、水と反応して硬化する性質を示す粉末状のコンクリート材料をいう。
【0024】
A−1:セメント
セメントとしては、普通、中庸熱、低熱、早強、超早強、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント、アルミナセメント、ジェットセメント等の超速硬セメント、アーウィン系セメント等が挙げられる。
尚、前記各セメントは、一種類でもよくまたは二種類以上を混合して用いても良い。
【0025】
中でも、ビーライト(C
2S=2CAO・SiO
2:珪酸二カルシウム)を多く含有する低熱ポルトランドセメント(日本工業規格;JIS R 5210に記載の「ポルトランドセメント」の規格値ビーライト含有量=40質量%以上を満たすもの)、又は、中庸熱ポルトランドセメントが、硬化後の強度を高くしやすく且つ流動性も良好にしやすいため好ましい。
【0026】
本実施形態において、水硬性結合材中のセメントの含有量は特に限定されるものではないが、例えば、25質量%以上90質量%以下、好ましくは35質量%以上80質量%以下である。
セメントの含有量が前記範囲である場合には、硬化後の強度を高くしやすく、且つ、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすいため好ましい。
【0027】
A−2:シリカ質粉末
水硬性結合材は、シリカ質粉末を含む。
本実施形態でいうシリカ質粉末としては、例えば、シリカフューム、非晶質シリカ質粉末、フライアッシュ、天然ポゾランの粉末等が挙げられる。
また、本実施形態のシリカ質粉末としては、例えば、SiO
2を85.0質量%以上含む平均粒径3μm以下の粉末等とSiO
2を45.0質量%以上含む平均粒径3〜30μmの粉末等とが挙げられる。
前記各シリカ質粉末は、一種類でもよくまたは二種類以上を混合して用いても良い。
尚、前記平均粒径とはレーザー回折式粒度分布測定装置(LEEDS&NORTHRUP株式会社製「マイクロトラック SRA 7995−10−30」)を用いて粒子径を測定した値をいう。
【0028】
本実施形態の水硬性結合材は、シリカ粉末として、BET比表面積が15m
2/g以上25m
2/g以下、好ましくは15m
2/g以上20m
2/g以下であるシリカ質粉末(A)と、BET比表面積が1m
2/g以上3m
2/g以下、好ましくは1m
2/g以上2m
2/g以下であるシリカ質粉末(B)とを含んでいてもよい。
かかるBET比表面積の異なるシリカ質粉末を含む場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすくなるため好ましい。
【0029】
BET比表面積が15m
2/g以上25m
2/g以下であるシリカ質粉末(A)としては、例えば、金属シリコンまたはフェロシリコンを製造する際の副産物であるシリカフューム、シリカガラス等を製造する際に副産物であるシリカ質粉末、ケイ素または二酸化ケイ素から合成される非晶質シリカ質粉末、粒径1μm以下に分級または微粉砕されポゾラン活性を高めたフライアッシュ等が挙げられる。
中でも、IS A 6207「コンクリート用シリカフューム」の品質規格に適合するSiO
2含有量が85質量%以上のシリカフュームがコンクリートの流動性の観点から好ましい。
【0030】
BET比表面積が1m
2/g以上3m
2/g以下であるシリカ質粉末(B)としては、例えば、火力発電所のボイラー等において微粉炭を燃焼させた際の副産物であるフライアッシュ(石炭灰)、ケイ素または二酸化ケイ素から合成される非晶質シリカ質粉末、白土など火山灰由来の天然ポゾランの粉末等が挙げられる。
中でも、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のI種またはII種の品質規格に適合するSiO
2含有量が45質量%以上のフライアッシュがコンクリートの流動性の観点から好ましい。
【0031】
本実施形態において、水硬性結合材中の前記シリカ質粉末(A)の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、5質量%以上15質量%以下、好ましくは10質量%である。シリカ質粉末(A)の含有量が前記範囲である場合には、セメント組成物の硬化後の強度を高くしやすく、且つ、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすいため好ましい。
【0032】
本実施形態において、水硬性結合材中の前記シリカ質粉末(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、10質量%以上60質量%以下、好ましくは15質量%以上50質量%以下である。シリカ質粉末(B)の含有量が前記範囲である場合には、セメント組成物の硬化後の強度を高くしやすく、且つ、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすいため好ましい。
【0033】
尚、本実施形態におけるシリカ質粉末のBET比表面積とは、JIS R 1626「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準拠して測定した値である。
【0034】
BET比表面積の測定装置は、特に限定されるものではないが、例えば、前処理装置:BELPREP−vACII(日本BEL社製)、測定装置:BELSORP−mini(日本BEL社製)等が挙げられる。
前処理方法は、シリカ質粉末を120℃で6時間乾燥後、真空脱気することが挙げられる。
測定方法は、定容法を用いて窒素による吸着脱離等温線を測定することができる。吸着条件は、吸着温度=77K(−196℃)、吸着質=窒素、飽和蒸気圧=実測、吸着質(窒素分子)断面積=0.162nm
2、吸着平衡状態(吸脱着の際の圧力変化が所定の値以下になる状態)に達してからの待ち時間:500秒等が挙げられる。
【0035】
水硬性結合材の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、31.7質量%以上47.3質量%以下、好ましくは38.5質量%以上45.5質量%以下である。
水硬性結合材の含有量が前記範囲である場合には、硬化後の強度を高くしやすくなるため好ましい。
【0036】
B:細骨材
本実施形態のセメント組成物は細骨材を含む。
本実施形態のセメント組成物に含まれる細骨材は、表乾密度が2.80g/cm
3以上、好ましくは2.85g/cm
3以上、且つ、吸水率が1.25質量%以上、好ましくは1.31質量%以上のものである。
細骨材が、前記範囲の表乾密度及び吸水率である場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の自己収縮を抑制しやすいため好ましい。
【0037】
細骨材としては、例えば、フェロニッケルスラグ細骨材(日本工業規格JIS A 5011−2のFNS1.2A適合品、FNS5A適合品)、銅スラグ細骨材(日本工業規格JIS A 5011−3のCUS1.2適合品)、電気炉酸化スラグ細骨材(日本工業規格JIS A 5011−4のEFS1.2のNまたはH適合品)等が挙げられる。
中でも、フェロニッケルスラグ細骨材が自己収縮ひずみの抑制効果の観点から好ましい。
尚、前記各細骨材は、一種類でもよくまたは二種類以上を混合して用いても良い。
【0038】
本実施形態でいう細骨材の表乾密度は、例えば、JIS A 1109−2006に記載の測定方法で測定される値である。
また。本実施形態でいう細骨材の吸水率は、例えば、JIS A 1109−2006に記載の測定方法で測定される値である。
【0039】
本実施形態の細骨材の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、最大粒径が5.0mm以下である。
粗骨材として、前記範囲の最大粒径を有するものである場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の強度を高くしやすいため好ましい。
尚、本実施形態における細骨材、及び粗骨材の最大粒径とはJIS A 1102−2006「骨材のふるい分け試験方法」に従い測定した値をいう。
【0040】
C:粗骨材
本実施形態のセメント組成物は粗骨材を含む。
本実施形態のセメント組成物に含まれる粗骨材は、特に限定されるものではないが、表乾密度が2.50g/cm
3以上、かつ吸水率が1.50質量%以下のもの等が挙げられる。
粗骨材として、前記範囲の表乾密度及び吸水率を有するものである場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の強度を高くしやすいため好ましい。
尚、本実施形態の細骨材の表乾密度及び吸水率は前記細骨材の表乾密度及び吸水率と同様の測定方法で測定される値をいう。
【0041】
粗骨材としては、例えば、天然産粗骨材、人造粗骨材等が挙げられる。
前記天然産粗骨材としては、日本工業規格JIS A 5005「コンクリート用砕石」の砕石2015、砕石2013、砕石2010、砕石1505、砕石1305、あるいは日本工業規格JIS A 5001「道路用砕石」の5号または6号等に適合する粗骨材が挙げられ、砕石の原料としては、硬質砂岩砕石、安山岩砕石、玄武岩砕石、石英片岩砕石などが挙げられる。
前記人造粗骨材としては、日本工業規格JIS A 5011−2のフェロニッケルスラグ骨材(フェロニッケル製造時の副産物)に適合する粗骨材、より具体的には、人造コランダムや焼結ボーキサイトなどの人造粗骨材などが挙げられる。
尚、前記各細骨材は、一種類でもよくまたは二種類以上を混合して用いても良い。
【0042】
本実施形態の粗骨材の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、最大粒径が10mm以上かつ20mm以下、好ましくは13mm以上かつ17mm以下である。
粗骨材として、前記範囲の最大粒径を有するものである場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の強度を高くしやすいため好ましい。
【0043】
本実施形態のセメント組成物において、前記細骨材の細骨材及び粗骨材の総量に対する割合が35体積%以上、好ましくは35体積%以上80体積%以下である。
前記細骨材の、細骨材及び粗骨材の総量に対する割合が前記範囲であることにより、硬化後に高い強度が得られやすいと同時に、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、自己収縮を抑制しやすい。
【0044】
本実施形態のセメント組成物において、細骨材の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、16.4体積%以上、好ましくは16.4体積%以上42.4体積%以下である。セメント組成物中の細骨材の含有量が前記範囲である場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の強度を高くしやすいため好ましい。
【0045】
本実施形態のセメント組成物において、粗骨材の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、33.7体積%以下、好ましくは9.3体積%以上33.7体積%以下である。セメント組成物中の粗骨材の含有量が前記範囲である場合には、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、且つ、硬化後の強度を高くしやすいため好ましい。
【0046】
D:水
本実施形態のセメント組成物は、前記水硬性結合材に対する割合が10.0質量%以上14.0質量%以下、好ましくは11.0質量%以上14.0質量%以下となる量の水を原料として含んでいても良い。
また、本実施形態のセメント組成物は、セメント組成物中に、100kg/m
3以上145kg/m
3以下、好ましくは、120kg/m
3以上140kg/m
3以下となる量の水を原料として含んでいてもよい。
水の含有量が前記範囲である場合には、セメント組成物の硬化後に高い強度が得られやすいと同時に、セメント組成物の練混時の流動性の低下を抑制しやすく、自己収縮を抑制しやすい。
【0047】
E:膨張材
本実施形態のセメント組成物は膨張材をさらに含んでいてもよい。
本実施形態でいう膨張材とは、JIS A 6202「コンクリート用膨張材」に適合する膨張材であれば、特に限定されるものではないが、例えば、カルシウムサルホアルミネート石灰合系膨張材、カルシウムサルホアルミネート系膨張材、石灰系膨張材が挙げられる。
中でもカルシウムサルホアルミネート石灰合系膨張材は自己収縮ひずみの抑制効果の観点から好ましい。
【0048】
前記膨張材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、水硬性結合材の成分としてセメント組成物中に含まれる場合には、水硬性結合材のセメントの全量に対して10質量%以上30質量%以下、好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
膨張材の含有量が前記範囲である場合には、硬化後に自己収縮をより抑制しやすいため好ましい。
【0049】
F:収縮低減剤
本実施形態のセメント組成物は、収縮低減剤をさらに含んでいてもよい。
収縮低減剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアルキレングリコール系誘導体、アルキレンオキシド系化合物等が挙げられる。
中でもポリアルキレングリコール系誘導体は自己収縮ひずみ低減効果の観点から好ましい。
本実施形態のセメント組成物における前記収縮低減剤の含有量は、1kg/m
3以上8kg/m
3質量%以下、好ましくは4kg/m
3以上7kg/m
3質量%以下である。
収縮低減剤の含有量が前記範囲である場合には、硬化後に自己収縮をより抑制しやすいため好ましい。
【0050】
G:その他の成分
本実施形態のセメント組成物は、前記各成分の他にその他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、減水剤、消泡剤、流動化剤、凝結促進剤、凝結遅延剤等の前記収縮低減剤以外の化学混和剤、合成樹脂粉末、合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、石灰石粉末等が挙げられる。
尚、前記各成分は、一種類でもよくまたは二種類以上を混合して用いても良い。
化学混和剤は、粉体状、液体状のいずれであってもよい。
【0051】
より具体的には、減水剤としてはポリカルボン酸系高性能減水剤等が挙げられ、消泡剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系等の消泡剤等が挙げられる。
中でも、ポリカルボン酸系高性能減水剤と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系消泡剤とを併用した場合には、粗泡が減少し、圧縮強度が増加するため好ましい。
前記ポリカルボン酸系高性能減水剤を使用する場合には、その含有量は目標とする流動性に合わせて適宜調整することができるが、例えば、水硬性結合材に対して0.5質量%以上かつ4.0質量%以下であることが好ましい。
【0052】
前記各その他の成分として、本実施形態のセメント組成物に消泡剤を配合する場合にはその含有量は目標とする空気量に合わせて適宜調整できるが、例えば、水硬性結合材に対して、0.01質量%以上かつ0.5質量%以下であることが好ましい。
【0053】
本実施形態のセメント組成物は、前記セメント組成物の各成分をミキサー等を用いて攪拌混合することでフレッシュの状態のセメント組成物(フレシュコンクリート)として得られる。
本実施形態のセメント組成物は、前述のような配合であるため、例えば、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験」に従い測定されるスランプフローが65cm以上という高い流動性が得られる。
さらに、前記フレッシュコンクリートを、例えば、養生温度70℃、7日間、養生して硬化させた硬化体(コンクリート)は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮試験方法」に従い測定される圧縮強度が190N/mm
2以上といういわゆる高強度コンクリートとなる。
さらに、前記フレッシュコンクリートを、例えば、養生温度90℃、4日間、養生して硬化させた硬化体(コンクリート)は、JCI自己収縮研究委員会およびJCI超流動研究委員会による「自己収縮ひずみの測定方法」に従い測定される自己収縮ひずみ量が752×10
-6以下である自己収縮が少ない高強度コンクリートとなる。
【0054】
尚、本実施形態にかかるセメント組成物は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示して、本発明にかかるセメント組成物についてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
セメント組成物の材料として以下のものを用いた。
【0057】
実施例および比較例に用いるセメント、シリカ質粉末、粗骨材、細骨材、化学混和剤(高性能減水剤、消泡剤)、水、膨張材、収縮低減剤として、下記のものを準備した。
【0058】
<水硬性結合材>
「セメント」
低熱ポルトランドセメント(JIS R 5210適合品、絶乾密度3.24g/cm
3、ブレーン比表面積3600cm
2/g、住友大阪セメント社製)(以下、LCと略記)
「シリカ質粉末A」
シリカフューム:EFACO(JIS A 6207適合品、絶乾密度2.20g/cm
3、BET比表面積15.4m
2/g、巴工業社製)(以下、SFと略記)
「シリカ質微粉末A−2」
シリカフューム:マイクロシリカ955U(JIS A 6207適合品、SiO
2含有量96.1質量%、絶乾密度2.20g/cm
3、BET比表面積22.9m
2/g、エルケムジャパン社製)
「シリカ質粉末B」
フライアッシュ:ファイナッシュ(分級フライアッシュ、JIS A 6201のI種適合品、絶乾密度2.44g/cm
3、BET比表面積2.4m
2/g、四電ビジネス社製)(以下、FAと略記)
「シリカ質微粉末B−2」
フライアッシュ:II種フライアッシュ(JIS A 6201のII種適合品、SiO
2含有量47.5質量%、絶乾密度2.46g/cm
3、BET比表面積1.6m
2/g、Jペック社製)
【0059】
<膨張材>
カルシウムサルホアルミネート石灰合系膨張材(スーパーサクス:住友大阪セメント社製)
【0060】
<粗骨材>
「天然産粗骨材A」
硬質砂岩砕石2005(日本工業規格JIS A 5005「コンクリート用砕石」砕石2005適合品、最大粒径20mm以下、絶乾密度2.65g/cm
3、吸水率0.7質量%)
<細骨材>
表1に示す各細骨材
尚、細骨材の表乾密度、吸水率はJIS A 1109−2006に記載の測定方法で測定した値である。
【0061】
【表1】
【0062】
<化学混和剤>
「高性能減水剤」
ポリカルボン酸系高性能減水剤:シーカメント1200N(JIS A 6204の高性能減水剤I種適合品、日本シーカ社製)(以下、SPと略記)
「消泡剤」
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系消泡剤:シーカアンチフォームW(日本シーカ社製)
「収縮低減剤」
シーカコントロール(日本シーカ社製)
【0063】
<水>
上水道水(千葉県船橋市産)
【0064】
前記各成分を表2に示す配合で用いて実施例1乃至32及び比較例1乃至7のセメント組成物を作製した。
尚、高性能減水剤はすべてのセメント組成物についてセメントの0.5重量%となる量を配合した。
各セメント組成物は20℃の恒温室内にて、水硬性結合材、膨張材、細骨材、粗骨材を、公称容量0.01m
3の二軸強制練りミキサ(大平洋機工社製、型番;SD−100、200V三相モータ出力5.5kW)に投入して空練りを15秒間行い、次いで、水、高性能減水剤(SP)および消泡剤を投入して900秒間本練りを行った。なお、1バッチの練混ぜ量は0.075m
3の一定とした。
【0065】
【表2】
【0066】
各実施例及び比較例を用いて、以下の試験を行なった。
《スランプフローの測定試験》
各セメント組成物の練上り後、直ちに日本工業規格JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験」および日本工業規格JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法」に準拠してスランプフローおよび空気量を測定した。
結果を表2に示す。
【0067】
《圧縮強度測定試験》
各セメント組成物の練上り後、鋼製簡易型枠に流し入れて圧縮強度測定用の直径100mm×高さ200mmの円柱供試体を作製した。
各供試体は、水の蒸発を防ぐために脱型直前まで供試体の頭部をビニールフィルムと塩化ビニル製テープを用いて密封し、20℃の恒温室内にて、コンクリートの練混ぜ(注水)開始から48時間まで封かん養生した。
さらに、各供試体を、材齢2日(コンクリートの練混ぜ開始=水硬性結合材に注水してから48時間後)から供試体頭部を密封したまま、鋼製簡易型枠ごと、70℃、90℃に維持した恒温養生槽に各5本ずつ入れて96時間の加熱養生を行った。各養生後、空気中で室温になるまで放冷した後、脱型した。
尚、各圧縮強度には供試体数を各4本(N=4)用い、その平均値で表した。また、圧縮強度試験に用いる供試体は、圧縮試験を行う直前に両端面の研磨を行った。
供試体の材齢7日及び28日の圧縮強度をJIS A 1108「コンクリートの圧縮試験方法」に則して測定した。
圧縮強度の測定装置としては、3000KN耐圧試験機(島津製作所社製)を使用した。
結果を表2に示す。
【0068】
《自己収縮ひずみの測定試験》
自己収縮ひずみの測定方法は、JCI自己収縮研究委員会およびJCI超流動研究委員会の方法に準拠した方法で材齢28日目の自己収縮ひずみを測定した。
10cm×10cm×40cmの角柱供試体用型枠内壁にテフロンシートを貼付し、その中に練りあがった直後の各セメント組成物(フレッシュコンクリート)を充填し、該フレッシュコンクリートの内部に埋め込みひずみ計(KM−100BT、東京測器研究所社製)を配置した。その後、水が散逸しないように角柱供試体の全表面をテフロンシートおよび樹脂テープを用いて密封被覆した。その後、凝結開始時に型枠ごと角柱供試体を昇温速度2.9℃/時間にて90℃まで加熱し、その後96時間90℃に維持し、その後、加熱履歴養生後の角柱供試体を自然放冷し、材齢28日まで20℃で封かん養生した。
材齢28日目の自己収縮ひずみ量の値を表2に示す。
【0069】
表2の結果から、各実施例は、圧縮強度が190N/mm
2以上であり高強度となった。
また、流動性についても、スランプフローが65cm(実施例11)以上であり、良好な流動性を示した。
さらに、自己収縮ひずみ量についても、すべて752×10
-6以下であった。
【0070】
一方、各比較例は、スランプフローが65cm未満、圧縮強度が190N/mm
2未満、自己収縮ひずみ量752×10
-6超のいずれかに該当した。すなわち、高強度、流動性、自己収縮性のすべてを満足することができなかった。