特開2015-212334(P2015-212334A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-212334(P2015-212334A)
(43)【公開日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】ポリエーテル系共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/10 20060101AFI20151030BHJP
   C08G 65/20 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   C08G65/10
   C08G65/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-95474(P2014-95474)
(22)【出願日】2014年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】菊池 早織
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英子
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
(72)【発明者】
【氏名】塩野 毅
(72)【発明者】
【氏名】中山 祐正
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA05
4J005AA08
4J005BB02
(57)【要約】
【課題】高分子量のポリエーテル系共重合体を、高収率で低コストに製造できるポリエーテル系共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】環状エーテル(A)に、特定のグリシジルエステル(B)を三フッ化ホウ素エーテラート(C)の存在下に作用させて開環重合を行なう工程を有し、前記環状エーテル(A)に対する前記グリシジルエステル(B)のモル比が0.0001〜0.14であり、前記環状エーテル(A)に対する前記三フッ化ホウ素エーテラート(C)のモル比が0.00001〜0.0085であることを特徴とするポリエーテル系共重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル(A)に、下式(1)で表されるグリシジルエステル(B)を三フッ化ホウ素エーテラート(C)の存在下に作用させて開環重合を行なう工程を有し、
前記環状エーテル(A)に対する前記グリシジルエステル(B)のモル比が0.0001〜0.14であり、前記環状エーテル(A)に対する前記三フッ化ホウ素エーテラート(C)のモル比が0.00001〜0.0085であることを特徴とするポリエーテル系共重合体の製造方法。
【化1】
(ただし、式(1)中、Rは炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐を有する炭化水素基、又は炭素数2〜10の不飽和結合を有する炭化水素基である。)
【請求項2】
前記環状エーテル(A)がテトラヒドロフランである、請求項1に記載のポリエーテル系共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記三フッ化ホウ素エーテラート(C)に対する前記グリシジルエステル(B)のモル比が0.5〜100である、請求項1又は2に記載のポリエーテル系共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記グリシジルエステル(B)がメタクリル酸グリシジルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエーテル系共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル系共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロフラン(以下「THF」と記す。)等の環状エーテルとエポキシ化合物を開環重合させてポリエーテル系共重合体を製造する方法としては、酸、塩基、金属塩、ルイス酸等を触媒として添加して開環重合を行なう方法が知られている。該方法では、エポキシ化合物のエポキシ部位に触媒が配位することでオキソニウムイオンが生成し、生成したオキソニウムイオンが環状エーテルの開環重合を誘起する。
【0003】
例えば、特許文献1には、三フッ化ホウ素エーテラートの存在下に、THFに(メタ)アクリル酸グリシジルを作用させて開環重合を行なう方法が開示されている。また、特許文献1には、得られるポリエーテル系共重合体の数平均分子量を300〜3000、(メタ)アクリロイル基の導入量を20〜98モル%とすることで、透明性、耐候性、弾性率、及び可とう性のバランスに優れたポリエーテル系共重合体となることが開示されている。
【0004】
非特許文献1には、イットリウム、スカンジウム、ランタン等からなるトリフルオロメタンスルホン酸金属塩の存在下に、THFに、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等のエポキシ化合物を作用させて開環重合を行なう方法が開示されている。
非特許文献2には、六塩化アンチモンエーテラートの存在下に、THFにメタクリル酸グリシジルを作用させて開環重合を行なう方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−192729号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Polymer 2012,53,4112
【非特許文献2】Macromolecules,2007,40,3183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、高分子量のポリエーテル系共重合体を充分な収率で得ることが難しい。そのため、得られたポリエーテル系共重合体を用いた成形体は、高い可とう性や耐衝撃性が求められる用途においては性能が不充分である。
非特許文献2で用いている六塩化アンチモンエーテラートは高価である。また、非特許文献1の方法では、得られたポリエーテル系共重合体に金属が残存する。そのため、耐気候性・耐熱性が必要となる用途に使用する場合等では、ポリエーテル系共重合体の精製過程において金属を除去することが必要となるため、コストが高くなる。
【0008】
本発明は、高分子量のポリエーテル系共重合体を、高収率で低コストに製造できるポリエーテル系共重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下のことを見出した。触媒として三フッ化ホウ素エーテラートを用い、式(1)で表される、エポキシ基に隣接した部位にカルボニル基を有するグリシジルエステルを環状エーテルに作用させる。この場合、式(I)のように、触媒である三フッ化ホウ素エーテラート(式中のL)がエポキシ骨格上の酸素に配位した際に、近傍に位置するカルボニル基がエポキシ基と相互作用(隣接基関与)することで、式(II)のように環状エーテルの開環重合能が向上する。
さらに本発明者らは、前記グリシジルエステルと三フッ化ホウ素エーテラートの使用量を特定の範囲に制御することにより、高分子量のポリエーテル系共重合体を高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
本発明のポリエーテル系共重合体の製造方法は、環状エーテル(A)に、下式(1)で表されるグリシジルエステル(B)を三フッ化ホウ素エーテラート(C)の存在下に作用させて開環重合を行なう工程を有し、前記環状エーテル(A)に対する前記グリシジルエステル(B)のモル比が0.0001〜0.14であり、前記環状エーテル(A)に対する前記三フッ化ホウ素エーテラート(C)のモル比が0.00001〜0.0085であることを特徴とする方法である。
【0013】
【化3】
【0014】
(ただし、式(1)中、Rは炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐を有する炭化水素基、又は炭素数2〜10の不飽和結合を有する炭化水素基である。)
前記環状エーテル(A)は、THFであることが好ましい。
前記三フッ化ホウ素エーテラート(C)に対する前記グリシジルエステル(B)のモル比は、0.5〜100であることが好ましい。
前記グリシジルエステル(B)は、メタクリル酸グリシジルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエーテル系共重合体の製造方法によれば、高分子量のポリエーテル系共重合体を、高収率で低コストに製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリエーテル系共重合体の製造方法は、環状エーテル(A)に、下式(1)で表されるグリシジルエステル(B)を三フッ化ホウ素エーテラート(C)の存在下に作用させて開環重合を行なう工程を有する。
【0017】
【化4】
【0018】
ただし、前記式(1)中、Rは炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐を有する炭化水素基、又は炭素数2〜10の不飽和結合を有する炭化水素基である。
不飽和結合とは、二重結合又は三重結合を意味する。
【0019】
環状エーテル(A)としては、特に限定されず、4〜6員環で官能基を持たない環状エーテルが好ましい。環状エーテル(A)の具体例としては、例えば、オキセタン、THFが挙げられる。中でも、反応を制御しやすい点、及び、高分子量のポリエーテル系共重合体が高収率で得られやすい点から、THFが好ましい。
環状エーテル(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
グリシジルエステル(B)は、前記式(1)で表される化合物である。すなわち、グリシジルエステル(B)は、グリシドールと、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基を持つカルボン酸、炭素数3〜20の分岐を有する炭化水素基を持つカルボン酸、又は炭素数2〜10の不飽和結合を有する炭化水素基を持つカルボン酸とが、エステル結合で結合した化合物である。
グリシジルエステル(B)は、エポキシ基近傍にカルボニル基が存在することで、触媒が配位した際のエポキシ基の酸素の重合活性が高い。これにより、環状エーテル(A)の開環重合が充分に誘起される。
【0021】
グリシジルエステル(B)としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸グリシジル、プロピオン酸グリシジル、酪酸グリシジル、ステアリン酸グリシジルが挙げられる。中でも、ポリエーテル系共重合体の分子量を高分子量化しやすい点、ポリエーテル系共重合体を用いて作製した成形体が透明性に優れる点から、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
グリシジルエステル(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
開環重合における、環状エーテル(A)に対するグリシジルエステル(B)のモル比B/Aは、0.0001〜0.14である。前記モル比B/Aが前記範囲内であれば、高分子量のポリエーテル系共重合体を高収率で製造できる。
モル比B/Aは、得られるポリエーテル系共重合体の分子量を高分子量化しやすい点から、0.005〜0.08が好ましい。
【0023】
環状エーテル(A)に対する三フッ化ホウ素エーテラート(C)のモル比C/Aは、0.00001〜0.0085である。前記モル比C/Aが前記範囲内であれば、高分子量のポリエーテル系共重合体を高収率で製造できる。
前記C/Aは、得られるポリエーテル系共重合体の分子量を高分子量化しやすい点から、0.0001〜0.0020が好ましい。
【0024】
三フッ化ホウ素エーテラート(C)に対するグリシジルエステル(B)のモル比B/Cは、0.5〜100が好ましく、1〜80がより好ましい。前記モル比B/Cが前記範囲内であれば、得られるポリエーテル系共重合体の分子量を高分子量化しやすい。
【0025】
本発明の製造方法における開環重合では、必要に応じて重合溶媒を使用できる。
重合溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジエチルエーテル等の有機溶剤が挙げられる。
【0026】
重合温度は、−100〜80℃が好ましく、開環重合時の熱暴走を抑制しやすい点、環状エーテル(A)の揮発を抑制しやすい点から、0〜50℃がより好ましい。
重合時間は、0.1〜144時間が好ましく、製造コスト、重合溶液の粘度等の面から、0.5〜72時間がより好ましい。
【0027】
重合反応の停止は、活性水素を有する化合物を添加することで行える。活性水素を有する化合物を添加することで、ポリエーテル系共重合体の末端に活性水素を有する化合物由来の骨格が導入されて反応が停止する。
活性水素を有する化合物としては、例えば、水、炭素数1〜20の直鎖状アルコール、炭素数3〜20の分岐を有するアルコールが挙げられる。
炭素数1〜20の直鎖状アルコールと炭素数3〜20の分岐を有するアルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸グリシジル等のラジカル重合性を有するグリシジルエステル(B)を用いる場合、反応温度によっては、ラジカル重合が起きる可能性がある。そのため、ヒドロキノンや、ニトロキシラジカルの一種である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)等の重合禁止剤を、予め重合溶液に添加してもよい。
重合禁止剤の添加量は、重合反応で用いるラジカル重合性を有するグリシジルエステル(B)100質量部に対して、0.0001〜1質量部が好ましい。
【0029】
開環重合の終了後には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて溶媒や未反応物を分離除去してもよい。分離除去方法としては、公知の方法を採用できる。
【0030】
本発明の製造方法で製造するポリエーテル系共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ポリエーテル系共重合体を用いた成形体に、優れた透明性、及び高い破断伸度、高い曲げ強度等の優れた機械特性を付与しやすい点から、20,000〜2,000,000とすることが好ましい。また、本発明の製造方法で得られたポリエーテル系共重合体を(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性単量体と混合したときの粘度が比較的低粘度となりハンドリングが良好になる点から、Mwは20,000〜200,000がより好ましい。
【0031】
本発明の製造方法で製造するポリエーテル系共重合体の数平均分子量(Mn)は、ポリエーテル系共重合体を用いた成形体に、優れた透明性、及び高い破断伸度、高い曲げ強度等の優れた機械特性を付与しやすい点から、11,000〜500,000が好ましい。また、本発明の製造方法で得られたポリエーテル系共重合体を(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性単量体と混合したときの粘度が比較的低粘度となり、ハンドリングが良好になる点から、Mnは11,000〜50,000がより好ましい。
【0032】
本発明の製造方法で製造するポリエーテル系共重合体のMw/Mnは、共重合体を用いて成形体にしたときの物性制御が容易であることから、0.5〜7.0が好ましく、1.0〜4.0がより好ましい。
【0033】
以上説明した本発明のポリエーテル系共重合体の製造方法によれば、環状エーテル(A)とグリシジルエステル(B)と三フッ化ホウ素エーテラート(C)を特定の比率で作用させて開環重合を行なうため、高分子量のポリエーテル系共重合体を高収率で低コストに製造できる。
【0034】
本発明の製造方法で製造するポリエーテル系共重合体の用途としては、例えば、各種光学部材としての用途が挙げられる。中でも、本発明の製造方法で製造するポリエーテル系共重合体は、成形体が透明性・機械強度に優れる点から、フレキシブルディスプレイ前面板、太陽電池基板、有機EL基板、照明用カバー、液晶ディスプレイ前面板、導光シート等の用途に特に有用である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[測定方法及び評価方法]
(1)H−NMRスペクトル
化合物の構造は、H−NMRスペクトルにより確認した。
測定溶媒にCDClを用い、核磁気共鳴装置(Varian system500)を用いて測定を行った。測定温度は室温、積算回数は32回とした。CDCl中の残留CHCl(δ=7.26ppm)を内部基準として用いた。
ポリエーテル系共重合体中のポリ(3−メタクリロキシプロペンオキシド)の導入率FGMA(モル%)は、H−NMRスペクトル測定結果から、(メタ)アクリロイル骨格の二重結合の一つピーク(6.13ppm)強度をnとし、ポリブチレンオキシド由来のピーク(3.40ppm)強度をmとして、下式により算出した。
GMA=n/(n+(m÷4))×100
【0036】
(2)分子量測定
重合体の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンをスタンダードとして、GPC(HLC−8230:東ソー(株)製、カラム:TSK−GEL G2000、G3000、G4000、G5000を直列接続したもの。)により測定した。
溶離液はTHF、測定温度は40℃、流速は1.0mL/分とした。
【0037】
(3)収率
重合時に仕込んだTHF、メタクリル酸グリシジルの質量の合計に対する、デシケーターによる減圧乾燥後に回収された固体の質量から収率を算出した。
【0038】
(4)重合性評価
(2)、(3)の結果を基に、下記の基準で重合性を評価した。
◎:質量平均分子量30,000以上、且つ、収率1%以上。
〇:質量平均分子量30,000以上又は収率1%以上。
×:質量平均分子量30,000未満、且つ、収率1%未満。
【0039】
[実施例1]
撹拌子を備えた10mLの二口シュレンクに、THF(関東化学株式会社製)3.67g、メタクリル酸グリシジル0.142g、三フッ化ホウ素エーテラート(関東化学株式会社製)0.00570gをシリンジにより量り入れ、温度計を備えたオイルバス(25℃)において撹拌し、開環重合を行った。
40分撹拌後、メタノール3mLを添加して反応を停止させた。反応終了後、未反応のTHF及びメタクリル酸グリシジル、メタノール等の揮発成分を減圧留去することにより粗生成物を得た。該粗生成物をクロロホルム3mLに溶解させ、蒸留水4mLを用いて3回洗浄した。その後、再び揮発成分を減圧留去により除去し、デシケーターを用いて減圧乾燥して、白色固体1.00g(収率26.3%)を得た。
【0040】
得られた白色固体の質量平均分子量を測定したところ、55000であった。また、該白色固体についてH−NMRスペクトルを測定した結果を以下に示す。
メタクリル酸グリシジルの開環体に由来するプロトンのピークが1.95ppm、4.05ppm、5.60ppm、6.13ppmにそれぞれ観測され、THFの開環体に由来するプロトンピークが1.60ppm、3.40ppmにそれぞれ観測された。
以上から、得られた白色固体が、(メタ)アクリロイル骨格からなるポリ(3−メタクリロキシプロペンオキシド)とポリブチレンオキシドからなるポリエーテル系共重合体であることを確認した。
また、ポリエーテル系共重合体中のポリ(3−メタクリロキシプロペンオキシド)の導入率FGMA(モル%)は、2.4モル%であった。
H−NMRスペクトル)
1.60(m)、1.95(s)、3.40(m)、4.05(s)、4.22(m)、5.60(s)、6.13(s)
【0041】
[実施例2〜5]
THF、メタクリル酸グリシジル、三フッ化ホウ素エーテラートの使用量、重合温度及び重合時間を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエーテル系共重合体を得た。
【0042】
[比較例1、2]
触媒を三フッ化ホウ素エーテラートからトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)水和物に変更し、メタクリル酸グリシジル、THFの使用量と重合時間を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエーテル系共重合体を得た。
【0043】
[比較例3、4]
THF、メタクリル酸グリシジル、三フッ化ホウ素エーテラートの使用量、重合温度及び重合時間を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして開環重合を行った。
【0044】
各実施例及び比較例における重合条件と、各測定結果及び評価結果を表1に示す。
なお、表1における略号は以下の意味を示す。
GMA:メタクリル酸グリシジル。
THF:テトラヒドロフラン。
BTFE:三フッ素化ホウ素エーテラート。
YTMS:トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)水和物。
モル比B/A:環状エーテル(A)に対するグリシジルエステル(B)のモル比。
モル比C/A:環状エーテル(A)に対する三フッ化ホウ素エーテラート(C)のモル比。
モル比B/C:三フッ化ホウ素エーテラート(C)に対するグリシジルエステル(B)のモル比。
表1の比較例1、2においては、モル比C/Aの欄に、環状エーテル(A)に対するトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)水和物のモル比を記載した。また、モル比B/Cの欄に、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)水和物に対するグリシジルエステル(B)のモル比を記載した。
【0045】
【表1】
【0046】
環状エーテル(A)とグリシジルエステル(B)と三フッ化ホウ素エーテラート(C)を本発明の特定の比率で作用させて開環重合を行なった実施例1〜5では、高分子量のポリエーテル系共重合体が高収率で得られた。
一方、触媒を三フッ化ホウ素エーテラート(C)からトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)水和物に変更した比較例1、2では、得られたポリエーテル系共重合体の質量平均分子量が30000未満と低く、収率も1%未満と低かった。
三フッ化ホウ素エーテラート(C)の量が少ない比較例3では、開環重合が進行せず、ポリエーテル系共重合体が得られなかった。
グリシジルエステル(B)の量が多い比較例4では、ゲル化が進行して溶剤に溶解しないゲル状の物体となり、ポリエーテル系共重合体が得られなかった。