【解決手段】使用電力量の推計装置は、分析対象となる建物の全体の使用電力量の情報を取得する使用電力量入力部1と、建物の内部の空間情報を用途別に取得する用途別空間情報入力部2と、前記空間情報に含まれる用途別の空間の延床面積の情報から、所定の相関式を用いて使用電力量を用途別に計算する使用電力量計算部5手段とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、配電線あるいは分電盤にセンサを配置することにより建物内の用途別の使用電力量を把握するので、センサのコストが掛かり、またセンサの設置作業とセンサの保守作業にコストと時間が掛かるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低コストかつ短時間で用途別の使用電力量を把握することができる使用電力量の推計装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の使用電力量の推計装置は、分析対象となる建物の全体の使用電力量の情報を取得する使用電力量入力手段と、前記建物の内部の空間情報を用途別に取得する用途別空間情報入力手段と、前記空間情報に含まれる用途別の空間の延床面積の情報から、所定の相関式を用いて使用電力量を用途別に計算する使用電力量計算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の使用電力量の推計装置の1構成例は、さらに、前記建物の設備機器情報を取得する設備機器情報入力手段と、外気温度の情報を取得する外気温度情報入力手段とを備え、前記使用電力量計算手段は、前記空間情報と前記設備機器情報と前記外気温度の情報とから、前記相関式を用いて使用電力量を用途別に計算することを特徴とするものである。
また、本発明の使用電力量の推計装置の1構成例において、前記使用電力量計算手段は、前記全体の使用電力量から前記用途別の使用電力量の総和を減算することにより、前記相関式が設定されていない用途の使用電力量を計算することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の使用電力量の推計方法は、分析対象となる建物の全体の使用電力量の情報を取得する使用電力量入力ステップと、前記建物の内部の空間情報を用途別に取得する用途別空間情報入力ステップと、前記空間情報に含まれる用途別の空間の延床面積の情報から、所定の相関式を用いて使用電力量を用途別に計算する使用電力量計算ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、省電力化を意図する建物について、建物内の用途(業務)ごとの使用電力量を分析する際に、分析対象となる建物の全体の使用電力量の情報と建物の内部の空間情報とを取得することにより、所定の相関式に従って建物内の用途別に使用電力量を計算できるため、建物内の用途別の使用電力量を計測するセンサが不要となり、このセンサの設置作業や保守作業にコストを掛ける必要が無くなるので、電力管理の専門家でなくとも低コストかつ短時間で用途別の使用電力量の把握が可能となる。その結果、分析対象の建物の省電力化の指針を推計装置の使用者に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の原理]
本発明の使用電力量の推計装置は、上記目的を達成するために、省電力化を意図する建物について、使用電力量を削減すると考えられる施策の立案を支援するために、建物全体の使用電力量と建物内の用途別延床面積に関する情報を取得することにより、対象となる建物内の用途ごとに使用電力量を推定することを特徴とする。
【0012】
次に、建物内の用途ごとに使用電力量を計算する方法について説明する。建物内の用途nの使用電力量をPn、建物内の用途nに使用される空間の延床面積をSnとする。単一用途の建物の調査により、建物の面積と使用電力量には相関があることが分かっているため、建物内の用途nの使用電力量の推計値Pnは、次式で表すことができる。
Pn=F(Sn) ・・・(1)
【0013】
延床面積Snは入手可能な情報である。延床面積Snと使用電力量Pnとの相関式Fの具体例については後述する。式(1)より建物全体の使用電力量の推計値Pallは、次式で表すことができる。
Pall=ΣF(Sn)
=F(P1)+F(P2)+・・・・+F(Pn) ・・・(2)
【0014】
建物全体の使用電力量の実測値をPとすると、一般的な相関式が不明な用途の使用電力量の推計値Pxについては、次式で算出が可能である。
Px=P−ΣF(Sn) ・・・(3)
【0015】
建物全体の使用電力量の実測値Pは入手可能な情報である。こうして、建物内の用途ごとに使用電力量の推計値Pnを計算することができ、また相関式が不明な用途の使用電力量Pxについては、建物全体の使用電力量の実測値Pから使用電力量の推計値Pnの総和を減算することで計算することができる。
【0016】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なおこの説明により本発明が限定されるものではない。
図1は本発明の実施の形態に係る使用電力量の推計装置の構成を示すブロック図である。使用電力量の推計装置は、分析対象となる建物の全体の使用電力量の情報を取得する使用電力量入力部1と、建物の内部の空間情報を用途別に取得する用途別空間情報入力部2と、建物の設備機器情報を取得する設備機器情報入力部3と、外気温度の情報を取得する外気温度情報入力部4と、建物内の使用電力量を用途別に計算する使用電力量計算部5と、使用電力量計算部5が計算した使用電力量の情報を外部に出力する使用電力量出力部6とから構成される。
【0017】
以下、本実施の形態の推計装置の動作を
図2を用いて説明する。まず、使用電力量入力部1は、分析対象となる建物全体の分析対象期間の使用電力量P[kWh]の情報を取得する(
図2ステップS1)。建物全体の使用電力量P[kWh]の情報については、分析対象の建物に設けられたセンサ(不図示)から取得することもできるし、推計装置の使用者が推計装置を操作して入力した値を取得することも可能である。
【0018】
用途別空間情報入力部2は、分析対象となる建物内の用途別の空間情報を取得する(
図2ステップS2)。建物内の用途別の空間情報としては、空間の延床面積S[m
2]、空間の外皮面積Scr[m
2]、所定の温度係数α[kWh/m
2]、空間の断熱効率を示す断熱パラメータβ[m
2・℃]、空間の基準温度Tref[℃]がある。これらの空間情報については、用途別空間情報入力部2に予め設定されている値を取得することができ、また使用者が推計装置を操作して入力した値を取得することも可能である。用途別空間情報入力部2は、これらの空間情報を用途別に取得する。
【0019】
設備機器情報入力部3は、分析対象となる建物内の設備機器情報を取得する(
図2ステップS3)。建物内の設備機器情報としては、空間別の単位面積当たりのOA(Office Automation)機器の消費電力を示すOA機器容量Pcoa[kW/m
2]、空間別のOA機器の分析対象期間中の稼働時間toa[h]、空間別のOA機器の分析対象期間中の稼働率Roa、空間別のOA機器の発熱量換算値Hoa[kWh/m
2]、空間別の空調機器のエネルギー消費効率を示す成績係数である期間COP(Coefficient Of Performance)、空間別の単位面積当たりの照明機器の消費電力を示す照明容量Pi[kW/m
2]、空間別の照明機器の分析対象期間中の点灯時間ti[h]、空間別の単位面積当たりの通信設備の消費電力を示す通信設備容量Pco[kW/m
2]、空間別の通信設備の分析対象期間中の稼働時間tco[h]、空間別の通信設備の分析対象期間中の稼働率Rco、空間別の通信設備の発熱量換算値Hco[kWh/m
2]がある。
【0020】
設備機器情報入力部3は、建物の設備機器を管理する管理システム(不図示)から設備機器情報を取得してもよいし、設備機器情報入力部3に予め設定されている値を取得してもよいし、使用者が推計装置を操作して入力した値を取得してもよい。
【0021】
外気温度情報入力部4は、分析対象期間中の外気温度Ta[℃]の情報を取得する(
図2ステップS4)。外気温度情報入力部4は、外気温度Ta[℃]の情報を、建物に設けられた温度センサ(不図示)から取得してもよいし、外部の気象予報システム(不図示)から取得してもよい。
【0022】
次に、使用電力量計算部5は、分析対象となる建物内の使用電力量を用途別に計算する(
図2ステップS5)。
まず、使用電力量計算部5は、事務用途に使用される空間の延床面積S1[m
2]と事務用途の使用電力量P1[kWh]との相関式を用いて分析対象期間の使用電力量の推計値P1[kWh]を計算する。具体的には、使用電力量計算部5は、事務用途に使用される空間の延床面積S1[m
2]と、事務用途に使用される空間の外皮面積Scr1[m
2]と、温度係数α[kWh/m
2]と、事務用途に使用される空間の断熱パラメータβ1[m
2・℃]と、事務用途に使用される空間の基準温度Tref1[℃]と、事務用途に使用される空間の単位面積当たりのOA機器容量Pcoa1[kW/m
2]と、事務用途に使用される空間のOA機器の分析対象期間中の稼働時間toa1[h]と、事務用途に使用される空間のOA機器の分析対象期間中の稼働率Roa1と、事務用途に使用される空間のOA機器の発熱量換算値Hoa1[kWh/m
2]と、事務用途に使用される空間の空調機器のエネルギー消費効率を示すCOP1と、事務用途に使用される空間の単位面積当たりの照明容量Pi1[kW/m
2]と、事務用途に使用される空間の照明機器の分析対象期間中の点灯時間ti1[h]と、分析対象期間中の外気温度Ta[℃]とから、建物内において事務用途に使用される電力量の推計値P1[kWh]を次式により計算する。
P1=[(Pcoa1×toa1×Roa1)
+(Hoa1/COP1)
+{Scr1×(Ta−Tref1)×α}/{β1×COP1}
+(Pi1×ti1)]×S1 ・・・(4)
【0023】
式(4)の[]内の第1項はOA機器の稼働に必要な電力消費量を示し、第2項はOA機器の発熱分を吸収するために必要な空調機器の電力消費量を示し、第3項は事務用途に使用される空間を基準温度Tref1に保つために必要な空調機器の電力消費量を示し、第4項は照明の点灯に必要な電力消費量を示している。
【0024】
次に、使用電力量計算部5は、通信用途に使用される空間の延床面積S2[m
2]と通信用途の使用電力量P2[kWh]との相関式を用いて分析対象期間の使用電力量の推計値P2[kWh]を計算する。具体的には、使用電力量計算部5は、通信用途に使用される空間の延床面積S2[m
2]と、通信用途に使用される空間の外皮面積Scr2[m
2]と、温度係数α[kWh/m
2]と、通信用途に使用される空間の断熱パラメータβ2[m
2・℃]と、通信用途に使用される空間の基準温度Tref2[℃]と、通信用途に使用される空間の単位面積当たりの通信設備容量Pco2[kW/m
2]と、通信用途に使用される空間の通信設備の分析対象期間中の稼働時間tco2[h]と、通信用途に使用される空間の通信設備の分析対象期間中の稼働率Rco2と、通信用途に使用される空間の通信設備の発熱量換算値Hco2[kWh/m
2]と、通信用途に使用される空間の空調機器のエネルギー消費効率を示すCOP2と、分析対象期間中の外気温度Ta[℃]とから、建物内において通信用途に使用される電力量の推計値P2[kWh]を次式により計算する。
P2=[(Pco2×tco2×Rco2)
+(Hco2/COP2)
+{Scr2×(Ta−Tref2)×α}/{β2×COP2}]×S2
・・・(5)
【0025】
式(5)の[]内の第1項は通信設備の稼働に必要な電力消費量を示し、第2項は通信設備の発熱分を吸収するために必要な空調機器の電力消費量を示し、第3項は通信用途に使用される空間を基準温度Tref2に保つために必要な空調機器の電力消費量を示している。
【0026】
なお、式(4)、式(5)の相関式は分析対象の建物の調査、あるいは標準的な建物の調査から予め導き出され設定されたものである。また、使用電力量P1,P2は分析対象期間(例えば1時間単位、1日単位、1ヶ月単位)について計算されるものであるため、分析対象期間中に外気温度Taが変化する。したがって、例えば1日単位の使用電力量P1を計算する場合には、当日の各時間の外気温度Taの情報を用いて式(4)により1時間単位の使用電力量P1を時間別に計算し、計算した各時間の使用電力量P1を積算して1日単位の使用電力量P1を求めるようにすればよい。同様に、1日単位の使用電力量P2を計算する場合には、当日の各時間の外気温度Taの情報を用いて式(5)により1時間単位の使用電力量P2を時間別に計算し、計算した各時間の使用電力量P2を積算して1日単位の使用電力量P2を求めるようにすればよい。1ヶ月単位の使用電力量P1,P2を求める場合も同様である。
【0027】
続いて、使用電力量計算部5は、分析対象となる建物全体の使用電力量の推計値Pall[kWh]を次式により計算する。
Pall=P1+P2 ・・・(6)
【0028】
最後に、使用電力量計算部5は、建物全体の使用電力量の推計値Pall[kWh]と、使用電力量入力部1が取得した建物全体の分析対象期間の使用電力量P[kWh]とから、相関式が不明な用途の分析対象期間における使用電力量の推計値Px[kWh]を次式により算出する。
Px=P−Pall ・・・(7)
なお、相関式が不明な用途としては、例えば多目的に使用されている会議室等の部屋、対象期間内に使用用途を変更した部屋、室内で複数の用途に区分して使用されている部屋などが挙げられる。こうして、使用電力量計算部5は、建物内の使用電力量を用途別に計算することができる。
【0029】
次に、使用電力量出力部6は、使用電力量計算部5が計算した用途別の使用電力量の値を外部に出力する(
図2ステップS6)。出力方法としては、例えばモニタディスプレイに使用電力量の値を表示して使用者に提示する方法や、プリンタで使用電力量の値を印刷して使用者に提示する方法、使用電力量の情報を外部に送信する方法などがある。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、省電力化を意図する建物について、建物内の用途(業務)ごとの使用電力量を分析する際に、建物全体の使用電力量Pと建物内の用途別延床面積Sに関する情報を取得することにより、所定の相関式に従って建物内の用途別に使用電力量を計算できるため、建物内の用途別の使用電力量を計測するセンサが不要となり、このセンサの設置作業や保守作業にコストを掛ける必要が無くなるので、電力管理の専門家でなくとも低コストかつ短時間で用途別の使用電力量の把握が可能となる。その結果、分析対象の建物の省電力化の指針を推計装置の使用者に提供することができる。
【0031】
本実施の形態で説明した使用電力量の推計装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に記憶されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。