特開2016-11360(P2016-11360A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016011360-液晶性ポリエステルの製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-11360(P2016-11360A)
(43)【公開日】2016年1月21日
(54)【発明の名称】液晶性ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/19 20060101AFI20151218BHJP
   C08G 63/181 20060101ALI20151218BHJP
【FI】
   C08G63/19
   C08G63/181
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-133223(P2014-133223)
(22)【出願日】2014年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】福手 恭之
(72)【発明者】
【氏名】川波 肇
(72)【発明者】
【氏名】石坂 孝之
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA04
4J029AB01
4J029AD09
4J029AE01
4J029BB05
4J029BB09
4J029BB11
4J029BC05
4J029BC06
4J029BH01
4J029CB04
4J029CB05
4J029CB06
4J029CB10
4J029CB12
4J029CC05
4J029DA02
4J029DA15
4J029EB04
4J029EB08
4J029EC05
4J029FB03
4J029KD02
4J029KD07
4J029KD17
4J029LA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、液晶性ポリエステルの製造方法において、反応溶媒を使用することなく、連続式の製造方法で、液晶性ポリエステルの構成成分の重縮合反応を行う方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、流通式リアクターに、芳香族カルボン酸及び/又は水酸基を有する化合物を含む構成成分を導入し、無溶媒条件下にて重縮合反応を行う重縮合工程を含む、液晶性ポリエステルの製造方法を提供する。前記重縮合工程は無触媒条件下にて行われてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通式リアクターに、芳香族カルボン酸及び/又は水酸基を有する化合物を含む構成成分を導入し、無溶媒条件下にて重縮合反応を行う重縮合工程を含む、液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記重縮合工程は無触媒条件下にて行われる、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステルは、機械的特性等に優れ、様々な分野において応用されている。液晶性ポリエステルは、一般的に、構成成分(芳香族ヒドロキシカルボン酸等)の水酸基を無水カルボン酸によってアシル化し、次いで、重縮合反応を行うことによって得られる。このような一連の反応は、従来、回分式(バッチ式)の製造方法にて行われているが(特許文献1参照)、この方法は、バッチ毎間での品質のバラツキを生じることが多い。
【0003】
化合物の製造においては、連続式の製造方法が知られており、具体的には、マイクロリアクターを使用した方法が挙げられる(特許文献2参照)。マイクロリアクターとは、一般的には流通式リアクターの一つで、一つの流路の幅が、通常、1μm以上、数mm以下であり、その断面の形状としては、円や多角形(三角形以上)等が挙げられるが、その形状に関しては特に限定されるものではない。また、マイクロリアクターの流路としては、1本から構成されるものや、複数本を直列又は並列に組み合わせて構成されるもの等、様々なものがあり、反応や処理量によって適宜選択される。この方法によれば、反応場が小さく、体積当たりの表面積が大きいため、熱交換速度、混合速度等が速くなり、反応の条件を瞬時に調整でき、得られる化合物の品質のバラツキを抑制できる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特許第3265662号明細書
【特許文献2】特開2007−210911号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Microreactors in Organic Chemistry and Catalysis、Edited by Thomas Wirth、2013、Wily−VCH
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のマイクロリアクターを使用した連続式の製造方法においては、反応溶媒を使用するため、該製造方法を液晶性ポリエステルの製造に採用した場合は、得られる液晶性ポリエステルが加水分解等を起こす可能性があった。また、反応溶媒を使用する場合、得られた反応物から反応溶媒を除く工程を設ける必要があるため、より効率的に液晶性ポリエステルを製造できる方法が求められていた。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、液晶性ポリエステルの製造において、反応溶媒を使用することなく、連続式の製造方法で、液晶性ポリエステルの構成成分の重縮合反応を行う方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、流通式リアクター内にて、無溶媒条件下にて液晶性ポリエステルの構成成分の重縮合反応を行うことにより、従来法と比較して、液晶性ポリエステルを効率的に得られる点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 流通式リアクターに、芳香族カルボン酸及び/又は水酸基を有する化合物を含む構成成分を導入し、無溶媒条件下にて重縮合反応を行う重縮合工程を含む、液晶性ポリエステルの製造方法。
【0010】
(2) 前記重縮合工程は無触媒条件下にて行われる、(1)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶性ポリエステルの製造方法において、反応溶媒を使用することなく連続的に、液晶性ポリエステルの構成成分の重縮合反応を行う方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例において使用した流通式リアクターの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0014】
[液晶性ポリエステル]
本発明における液晶性ポリエステルとは、溶融加工性ポリエステルであり、溶融時に光学的異方性を示す。溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
【0015】
本発明における液晶性ポリエステルは、無水カルボン酸等によってアシル化された構成成分を重縮合させることで得られる。
【0016】
(液晶性ポリエステルの構成成分)
本発明における液晶性ポリエステルは、芳香族ヒドロキジカルボン酸の縮合重合や、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮合重合から得られ、芳香族カルボン酸及び/又は水酸基を有する化合物を含む構成成分からなる。芳香族カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられ、水酸基を有する化合物としては、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン等が挙げられる。
【0017】
液晶性ポリエステルの構成成分(モノマー)の好ましい例は、
(i)2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフタレン化合物、
(ii)4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸等のビフェニル化合物、
(iii)下記一般式(I)、(II)又は(III)で表わされる化合物:
【0018】
【化1】
【0019】
(但し、X:炭素数1〜4のアルキレンもしくはアルキリデン、−O−、−SO−、−SO−、−S−、−CO−より選ばれる基であり、Y:−(CH)n−(n=1〜4)、−O(CH)nO−(n=1〜4)、−O−、−SO−、−SO−、−S−、−CO−より選ばれる基)、
(iv)p−ヒドロキシ安息香酸(4−ヒドロキシ安息香酸)、テレフタル酸、ハイドロキノン、p−アミノフェノール、4−アセトキシアミノフェノール及びp−フェニレンジアミン等のパラ位置換のベンゼン化合物、及びそれらの核置換ベンゼン化合物(核置換の置換基はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、1−フェニルエチルより選ばれる。)、及び
(v)イソフタル酸、レゾルシン等のメタ位置換のベンゼン化合物、及びそれらの核置換ベンゼン化合物(核置換の置換基は塩素、臭素、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、1−フェニルエチルより選ばれる。)である。
【0020】
上述の構成成分のうち、ナフタレン化合物、ビフェニル化合物、パラ位置換のベンゼン化合物より選ばれる1種又は2種以上の化合物を必須の構成成分として含むものが好ましい。パラ位置換のベンゼン化合物のうち、p−ヒドロキシ安息香酸、メチルハイドロキノン及び1−フェニルエチルハイドロキノンが特に好ましい。
【0021】
(無水カルボン酸)
本発明における構成成分のうち、水酸基を有するものは、重縮合工程に供される前に、任意の方法にて水酸基がアシル化されたものを使用することが重縮合反応の効率化の観点から好ましい。本発明における無水カルボン酸としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、トリフルオロ酢酸無水物等の炭素数が10以下の低級脂肪族カルボン酸無水物が挙げられるが、コスト及び取扱面から無水酢酸が好ましい。本発明において、上記モノマーの中の、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミンの水酸基、特にフェノール性水酸基をアシル化するための無水カルボン酸の使用量は、水酸基を有する上記化合物、特にフェノール性水酸基を有する芳香族化合物の水酸基当量の1.0〜1.2倍、より好ましくは1.02〜1.08倍、最も好ましくは1.02〜1.06倍の量であってもよい。
【0022】
(液晶性ポリエステルの態様)
本発明における液晶性ポリエステルは、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むものであってもよい。特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する液晶性芳香族ポリエステル、液晶性芳香族ポリエステルアミドである。
【0023】
本発明における液晶性ポリエステルは、より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル
(2)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体の1種又は2種以上、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び/又はその誘導体のそれぞれ1種又は2種以上、並びに、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及び/又はその誘導体のそれぞれ少なくとも1種又は2種以上とからなるポリエステル
(3)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体の1種又は2種以上、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び/又はその誘導体のそれぞれ1種又は2種以上、並びに、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び/又はその誘導体のそれぞれ1種又は2種以上とからなるポリエステルアミド
(4)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体の1種又は2種以上、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び/又はその誘導体のそれぞれ1種又は2種以上、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び/又はその誘導体のそれぞれ1種又は2種以上、並びに、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及び/又はその誘導体の少なくともそれぞれ1種又は2種以上とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。
【0024】
上記の構成成分に、必要に応じて、安息香酸等の単官能モノマー、芳香族ヒドロキシジカルボン酸や芳香族トリカルボン酸等の3官能モノマー等の分子量調整剤を併用してもよい。
【0025】
本発明における液晶性ポリエステルは、上述の構成成分の他に、同一分子鎖中に部分的に異方性溶融相を示さないポリアルキレンテレフタレートを含んでいてもよい。この場合のアルキル基の炭素数は2〜4である。
【0026】
本発明における、エステル形成性の官能基を有する化合物の具体例及び液晶性ポリエステルの具体例については、特公昭63−36633号公報に記載されている。本発明における、液晶性ポリエステルは、一般に重量平均分子量が約2,000〜200,000、好ましくは約10,000〜50,000、特に好ましくは約20,000〜30,000である。本発明における、芳香族ポリエステルアミドは、一般に重量平均分子量が約5,000〜50,000、好ましくは約10,0000〜30,000、特に好ましくは15,000〜17,000である。上記の芳香族ポリエステル及びポリエステルアミドは、また、60℃でペンタフルオロフェノールに、0.1重量%の濃度で溶解したときに、少なくとも約2.0dl/g、例えば約2.0〜10.0dl/gの極限粘度[η]を一般に示す。なお、本発明において、極限粘度[η]とは、ペンタフロロフェノール中、60℃で測定した値のことである。
【0027】
液晶性ポリエステルの分子量の測定は、アミン分解による末端基分析による方法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分子量を測定する方法、ペンタフルオロフェノール溶液にして光散乱法を用いて分子量を測定する方法、又は、その他のポリマーの溶液形成を伴わない標準的測定法、例えば圧縮成形フイルムについて赤外分光法により末端基を定量する方法により行うことができる。全芳香族液晶性ポリエステルを例にとると、定量可能な末端基の種類は、以下のものである。カルボキシル末端基:(ポリマー鎖)−φ−COOH芳香族環末端基:(ポリマー鎖)−φフェノール性ヒドロキシ末端基:(ポリマー鎖)−φ−OH(但し、φはベンゼン環又はナフタレン環を示す。(ポリマー鎖)−φ−は、φにおける(ポリマー鎖)−に対する他の基の置換位置が、ベンゼン環の場合にはp−位又はm−位を示し、ナフタレン環の場合には1,4−、1,5−又は2,6−位を示す。)
【0028】
[流通式リアクター]
本発明においては、上記原料(液晶性ポリエステルの構成成分等)を流通式リアクターに導入して、合成反応を実施する。本発明における流通式リアクターとしては、通常のリアクターと共に、マイクロリアクターと称される装置も使用でき、具体的には、高温高圧フローセル、原料(液晶性ポリエステルの構成成分等)を送液する反応物送液ポンプ、炉体、反応物を炉体に導入する反応物導入管(反応管)、反応溶液を排出する排出液ライン、冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備しているものを使用できるが、これに限定されることなく、得ようとする反応物やその処理量に応じて、流通式リアクターを構成する各部材の長さや径を適宜調整できる。
【0029】
本発明の製造方法においては、副生するカルボン酸及び/又は原料の無水カルボン酸又はこれらの混合物を媒体とすることで、従来、化合物の製造方法において使用されていた反応溶媒(超臨界流体、無機溶媒、有機溶媒等)を追加して使用することなく、構成成分を重縮合できる。つまり、本発明の製造方法によれば、原料(液晶性ポリエステルの構成成分等)と共に反応溶媒を流通式リアクターに導入する必要がない。
【0030】
本発明の重縮合工程においては、触媒は使用しても、使用しなくともよい。反応後の溶液の中和処理、無害化処理等の後処理及び処分の必要がない点で、触媒を使用しないことが好ましい。触媒を使用する場合は、通常、液晶性ポリエステルの合成において使用される均一系触媒、不均一系触媒のいずれのもの(ジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタン珪酸塩類、チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩類、BF等のルイス酸塩等)も使用できる。
【0031】
重縮合工程における原料は、フェノール性水酸基を予めアシル化した構成成分(4−アセトキシ安息香酸等)も使用することができ、直接重合法やエステル交換法等を用いて液晶性ポリエステルを重合できる(例えば、特開昭64−33123号、特開昭63−284221号公報を参照。)。
【0032】
重縮合工程における反応条件としては、液晶性ポリエステルの重縮合において通常適用されるものであってもよいが、高温高圧の重合条件を用いると短時間で重合を行うことが可能となり、例えば、温度350〜450℃、圧力0.1〜10MPa、反応時間(滞在時間)1〜90秒、より好ましくは、350℃〜420℃、圧力2〜8MPa、反応時間(滞在時間)1〜60秒、最も好ましくは、400℃〜420℃、圧力5MPa、反応時間(滞在時間)1秒から60秒であってもよい。但し、これらの反応条件は、使用する出発原料、目的とする反応生成物の種類等により適宜設定することができる。
【0033】
より低い圧力条件(0.1〜2.0MPa)で重縮合反応を行うと、分子量が高いポリマーが得られ、ポリマーの収率も高くなる傾向にある。
【0034】
本発明による液晶性ポリエステルの製造方法においては、本発明の効果を阻害又は低下させない範囲で、安定剤、着色剤、充填剤等を添加して重合することも可能である。
【0035】
本発明の製造方法によれば、合成反応後に反応溶媒の除去等を行う必要がなく、液晶性ポリエステルの構成成分を効率的に重縮合できる。得られた液晶性ポリエステルは、機械部品用材料、電気電子部品用材料等の任意の用途に使用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1:無触媒系における検討)
流通式リアクター(使用反応管:ステンレス製、ハステロイ製又はインコネル製、外径=3.18mm、内径=1.78mm、反応管の長さは、表1中の「長さ」の項を参照)において、表1の「温度1」の反応温度、圧力5MPa、滞留時間19.1秒の条件で、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、並びに無水酢酸の混合溶液を、無溶媒及び無触媒条件下にて、0.5ml/minの速度にてポンプで送液し、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のアシル化を行った。本実施例において使用した流通式リアクターの構造の模式図を図1に示す。
【0038】
次いで、アシル化された4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を、流通式リアクター(使用反応管:ステンレス製、ハステロイ製又はインコネル製、外径=3.18mm、内径=1.78mm、反応管の長さは、表1中の「長さ」の項を参照)において、表1の「温度2」の反応温度、圧力5MPa、滞留時間27.3秒の条件で、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2ナフトエ酸を、無溶媒及び無触媒条件下にて、0.5ml/minの速度にてポンプで送液し、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の重縮合を行った。なお、表1中、「長さ」の項において、「アシル化」、「連結管」、「重縮合」とは、それぞれ、アシル化工程の反応管の長さ、連結管の長さ、重縮合工程の反応管の長さを指す。
【0039】
なお、表1中の略記の意味は下記のとおりである。
HBA:4−ヒドロキシ安息香酸
HNA:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
AcO:無水酢酸
【0040】
【表1】
【0041】
上記の反応の結果、乳白色の反応生成物を得た。各反応生成物の溶融異方性の性質を、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察した結果、得られた反応生成物は液晶性ポリエステルであることが確認された。
【0042】
(実施例2:無触媒系における圧力の影響についての検討)
実施例1と同様の流通式リアクター(図1)を用い、表2に示す条件で、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、並びに無水酢酸の混合溶液を、無溶媒及び無触媒条件下にて、5ml/minの速度にてポンプで送液し、4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のアシル化、次いで、アシル化された4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の重縮合を行った。なお、表2中、「長さ」の項において、「長さ1」、「長さ2」とは、それぞれ、アシル化工程の反応管の長さ、重縮合工程の反応管の長さを指す。
【0043】
【表2】
【0044】
上記重縮合を行った後、ポリマー収率、並びに、原料(オリゴマー及びモノマー)の残量を測定した。その結果を、表3に示す。上記重縮合後、得られたクリーム色の固体に対して、アセトン非可溶分をポリマーとし、アセトン可溶分をモノマー及びオリゴマーとした。モノマー及びオリゴマーは、得られた残量(アセトン可溶分の総量)に対して、H−NMRを用いて残量における内訳を求めた。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示されるとおり、本発明によれば、無溶媒条件下かつ無触媒条件下においても、良好に重縮合反応を行うことができる。特に、より低い圧力条件で重縮合反応を行うと、分子量が高いポリマーが得られ、ポリマーの収率も高くなる傾向にあった。
図1