【課題】耐熱性に優れたAEI型ゼオライト、及び前記ゼオライトの製造方法並びに、耐熱性に優れ、窒素酸化物の選択的接触還元反応において高い耐久性を有するAEI型ゼオライトを提供。
【解決手段】チタンを含有するAEI型ゼオライト。チタンを骨格金属として含有し、チタニアに対するシリカのモル比が5〜200であり、アルミナに対するシリカのモル比が5〜50であり、平均一次粒子径が0.05μm以上3μm以下である、AEI型ゼオライト。当該ゼオライトは、チタン、アルミニウム、ケイ素を含む酸化物を合成原料として合成し、ジメチルピペリジニウムカチオン、及びテトラエチルホスホニウムカチオンの群から選ばれる構造指向剤を結晶化工程に含む製造法。
チタン、アルミニウム、及びケイ素を含む酸化物と、構造指向剤を含有する組成物を結晶化する結晶化工程を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
構造指向剤が、1,1−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、1,1,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、及びテトラエチルホスホニウムカチオンからなる群の少なくとも1種である、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
AEI型ゼオライトは、オレフィン製造用触媒をはじめとする各種の触媒用途での応用が期待されている結晶性アルミノシリケートである(特許文献1)。また、AEI型ゼオライトは、CHA型ゼオライトに類似する構造を有する。このことから、AEI型ゼオライトは、選択的接触還元触媒(いわゆるSCR触媒)としての応用も期待されている(非特許文献1)。
これまで、具体的なAEI型ゼオライトとしては、以下のものが報告されている。
特許文献1は、AEI型ゼオライトに関する最初の報告である。特許文献1において、1,1−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン(以下、「DEDMP
+」とする。)を構造指向剤(Structure Directing Agent;以下、「SDA」とする。)として得られたSSZ−39、及び、当該ゼオライトの炭化水素合成反応での評価が開示されている。
特許文献2では、硝酸アルミニウム、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)を原料とし、DEDMP
+をSDAとして、フッ化水素の共存下で得られたSSZ−39、及び、当該ゼオライトのオレフィン合成反応での評価が開示されている。
非特許文献1では、ケイ酸ナトリウムとUSY型ゼオライトとを原料とし、1,1,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオンをSDAとして得られたSSZ−39が開示されている。
非特許文献2では、複数のSDAのうち、特定のSDAを用い、なおかつ、原料のSiO
2/Al
2O
3モル比が30の場合に限り、SSZ−39が得られることが開示されている。当該文献の開示する方法では、SiO
2/Al
2O
3モル比が30以外の混合物を結晶化してもSSZ−39と異なる結晶相のゼオライトが得られてしまい、耐熱性や触媒活性の改善を目的としてSiO
2/Al
2O
3モル比の組成が調整されたAEI型ゼオライトを得ることが困難であった。
非特許文献3では、テトラエチルホスホニウムカチオンをSDAとして得られたAEI型ゼオライトが報告されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のAEI型ゼオライトについて詳細に説明する。
本発明のAEI型ゼオライトは、AEI構造を有する。AEI構造は、国際ゼオライト学会(以下、「IZA」とする。)で定義される構造コードでAEI構造となる結晶構造である。AEI構造を有することは、例えば、非特許文献3のFig.1(f)に記載された粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターンと比較することで同定することができる。
【0010】
本発明のAEI型ゼオライトは、チタンを含有する。これにより、本発明のAEI型ゼオライトは優れた耐熱性を有し、熱処理後、特に900℃以上の熱処理をした後であっても、高い結晶化度を維持する。チタンは、AEI型ゼオライトの骨格金属(以下、「T原子」とする。)、又は、AEI型ゼオライトの骨格外にT原子以外の少なくともいずれかの形態として含有される。耐熱性がより向上することから、チタンはT原子として含有されることが好ましい。
チタンはT原子として含有されると、ゼオライト骨格内で4配位の状態で存在する。4配位の状態のチタンは、例えば、UV−visスペクトルにおいて210〜240nmにピークトップを有する吸収ピークとして確認される。
また、チタンがT原子以外として含有されるとは、例えば、チタンはAEI型ゼオライトの細孔内、特に、酸素8員環細孔内に含有される。
本発明のAEI型ゼオライトの細孔内に含有されるチタンの状態としては、例えば、チタンイオン、金属チタン、及びチタン化合物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。チタン化合物としては、酸化チタン、塩化チタン、硝酸チタン、硫酸チタン、チタン酸塩、及びチタン合金からなる群の少なくとも1種が例示できる。
【0011】
本発明のAEI型ゼオライトにおける、チタニアに対するシリカのモル比(以下、「SiO
2/TiO
2比」とする。)は5以上、更には20以上であることが好ましい。SiO
2/TiO
2比が5以上であることにより、AEI型ゼオライトが結晶化しやすくなる。SiO
2/TiO
2比が5未満では、結晶化が進行しにくくなる、または、AEI型以外の結晶が得られる。一方、SiO
2/TiO
2比は200以下、更には100以下、更には50以下であることが好ましい。SiO
2/TiO
2比が200以下であることにより、本発明のAEI型ゼオライトの耐熱性がより向上し、特に1,000℃以上の熱処理をした後であっても、高い結晶化度を維持する。
【0012】
本発明のAEI型ゼオライトにおける、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO
2/Al
2O
3比」とする。)は5以上、更には10以上であることが好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が5以上であることで、本発明のAEI型ゼオライトの耐熱性が高くなりやすい。一方、SiO
2/Al
2O
3比は50以下、更には30以下であることが好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が50以下であれば、本発明のAEI型ゼオライトが触媒として十分な量の酸点を有する。
【0013】
本発明のAEI型ゼオライトのBET比表面積は400m
2/g以上、更には500m
2/g以上であることが好ましい。BET比表面積が高くなるほど、これを触媒等として使用した場合に触媒活性が高くなる傾向にある。BET比表面積は950m
2/g以下、更には900m
2/g以下であれば、本発明のAEI型ゼオライトが触媒として十分な活性を有しやすい。好ましいBET比表面積として600m
2/g以上、900m
2/g以下を挙げることができる。
本発明において、BET比表面積は一般的な窒素ガス吸着法によって測定できる。試料を300〜400℃前処理した後、液体窒素温度で窒素ガスを吸着させることによって吸着量が求められる。
【0014】
本発明のAEI型ゼオライトは、その一次粒子径が大きいほど耐熱性がより向上する。そのため、平均一次粒子径は0.05μm以上、更には0.1μm以上であることが好ましい。一次粒子径は3μm程度であれば十分な触媒活性が得られる。そのため、平均一次粒子径は3μm以下、更には2μm以下であることが好ましい。好ましい平均一次粒子径として、0.05μm以上3μm以下を挙げられる。
ここで、本発明における一次粒子径とは、電子顕微鏡で観察される独立した最小単位の粒子の直径であり、平均一次粒子径は、電子顕微鏡で無作為に抽出した20個以上の一次粒子の粒子径を平均した値である。そのため、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の直径である二次粒子径や平均二次粒子径と、一次粒子径や平均一次粒子径は異なる。
【0015】
次に、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法について説明する。
本発明のAEI型ゼオライトは、チタン、アルミニウム及びケイ素を含む酸化物(以下、「複合酸化物」とする。)と、SDAを含有する組成物を結晶化する結晶化工程を有する製造方法により得ることができる。
複合酸化物は、チタン源、アルミニウム源、及びケイ素源となる。ここで、複合酸化物とは、チタン、アルミニウム及びケイ素が酸素で結合した酸化物として存在するものであり、チタニア(TiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、及び、シリカ(SiO
2)のような酸化物を個別に混合したものとは異なる。
複合酸化物としては、非晶質、又は、結晶のいずれであってもよい。具体的な複合酸化物として、複合酸化物ゲル、又はゼオライト構造を有する複合酸化物が挙げられる。ゼオライト構造を有する複合酸化物は、アルミニウム、ケイ素及びチタンをT原子として含む。複合酸化物は結晶性の複合酸化物であることが好ましく、更にはゼオライト構造を有する複合酸化物であることが好ましく、また更にはFAU型ゼオライト構造を有する複合酸化物であることが好ましく、また更にはX型ゼオライト又はY型ゼオライトの少なくともいずれかの構造を有する複合酸化物であることが好ましく、更にはY型ゼオライト構造を有する複合酸化物であることがより好ましい。複合酸化物がY型ゼオライト構造を有すること、すなわち、アルミニウム、ケイ素及びチタンをT原子として含みY型ゼオライト構造を有することによって、AEI型ゼオライトの結晶化が促進される。
複合酸化物のSiO
2/TiO
2比は特に限定されないが、本発明のAEI型ゼオライトを得るためには5以上100以下であることが好ましい。
複合酸化物のSiO
2/Al
2O
3比は特に限定されないが、本発明のAEI型ゼオライトを得るためには5以上100以下であることが好ましい。
原料組成物は、複合酸化物以外のチタン源、アルミニウム源、ケイ素源を含んでもよい。チタンをT原子とするAEI型ゼオライトとする場合、それぞれの元素が骨格に入りやすくなるため、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源は複合酸化物のみであることが好ましい。
【0016】
チタンを含有するAEI型ゼオライトが得られれば、混合物中のSDAは特に限定されない。SDAとして、例えば、DEDMP
+、1,1,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、及びテトラエチルホスホニウムカチオンからなる群の少なくとも1種の塩が例示できる。これらのカウンターアニオンも特に限定されず、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、及び硝酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0017】
複合酸化物とSDAを含有する組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)は、SDA及び複合酸化物以外に、アルカリ源、及び水を含んでいればよい。
アルカリ源は、アルカリ金属を含む水酸化物を挙げることができる。より具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含む水酸化物であり、更にはナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含む水酸化物であり、また更にはナトリウムを含む水酸化物である。また、複合酸化物がアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ源とすることができる。
水は純水であってもよいが、各原料を水溶液とした場合の溶媒の水であってもよい。
【0018】
原料組成物のSiO
2/TiO
2比は5以上、200以下、更には5以上、100以下であることが好ましい。
原料組成物の、シリカに対するアルカリ金属カチオンのモル比(以下、「アルカリ/SiO
2比」とする。)は0.01以上、1以下であることが好ましい。
原料組成物の、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO
2比」とする。)は0.1以上0.5以下であることが好ましい。
原料組成物の、シリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO
2比」とする。)は1未満であることが好ましい。OH/SiO
2比が1未満であることで、より高い収率でAEI型ゼオライトを得ることができる。通常、原料組成物のOH/SiO
2比は、0.1以上である。
原料組成物の、シリカに対する水(H
2O)のモル比(以下、「H
2O/SiO
2比」とする。)は20以下であることが好ましい。H
2O/SiO
2比が20以下であることで、AEI型ゼオライトの収率が向上する。適度な流動性を有する原料組成物とするため、H
2O/SiO
2比は3以上であればよい。
【0019】
原料組成物は、種晶を含んでもよい。種晶は、AEI型ゼオライトとすることが好ましい。種晶を含む場合、以下の式を満たす含有量とすればよい。
0≦{(w4+w5+w6)/(w1+w2+w3)}×100≦30
上記式において、w1は原料組成物中のTiをTiO
2に換算した重量、w2は原料組成物中のAlをAl
2O
3に換算した重量、w3は原料組成物中のSiをSiO
2に換算した重量、w4は種晶中のTiをTiO
2に換算した重量、w5は種晶中のAlをAl
2O
3に換算した重量、及び、w6は種晶中のSiをSiO
2に換算した重量である。
好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO
2/TiO
2比 =5以上、200以下
SiO
2/Al
2O
3比 =5以上、100以下
アルカリ/SiO
2比 =0.01以上、1以下
SDA/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
OH/SiO
2比 =0.1以上、1以下
H
2O/SiO
2比 =3以上、20以下
【0020】
特に好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO
2/TiO
2比 =5以上、100以下
SiO
2/Al
2O
3比 =5以上、100以下
アルカリ/SiO
2比 =0.01以上、1以下
SDA/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
OH/SiO
2比 =0.1以上、1以下
H
2O/SiO
2比 =3以上、20以下
【0021】
結晶化工程では、原料組成物を結晶化する。結晶化方法は、水熱合成が挙げられる。その場合、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
結晶化温度は100℃以上であれば、原料組成物が結晶化する。温度が高いほど、結晶化が促進される。そのため、結晶化温度は130℃以上であることが好ましい。原料組成物が結晶化すれば、必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下であればよい。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態、又は静置した状態のいずれの状態で行うことができる。
【0022】
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
洗浄工程は、結晶化後のAEI型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるAEI型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のAEI型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のAEI型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0023】
結晶化後のAEI型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH
4+)や、プロトン(H
+)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、AEI型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、AEI型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:Mini Flex、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θとして5°から50°の範囲で測定した。
得られたXRDパターンと、非特許文献3のFig.1(f)に記載のXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
(組成分析)
試料の組成はEDX(装置名:S−4800、日立製作所製)によって測定した。
加速電圧 :20kV
作動距離 :15mm
得られたSi、Al及びTiの測定値から、試料のSiO
2/TiO
2比及びSiO
2/Al
2O
3比を求めた。
(BET比表面積測定)
比表面積は通常の定容量法で測定した(装置名:BELSORP−mini、マイクロトラック・ベル株式会社製)。
測定温度 :−196℃
前処理 :400℃、10時間、窒素流通
【0025】
(UV−vis測定)
一般的なUV−vis測定装置(装置名:V−570、日本分光株式会社製)を使用して、拡散反射スペクトルをバンド幅10mm、スキャン速度400nm/分の条件で測定した。
(走査型電子顕微鏡観察)
一般的な電解放出形走査型電子顕微鏡(装置名:S−4800、日立製作所製)を用いて試料の一次粒子の観察、及び平均一次粒子径の計測を行った。
(熱処理)
空気雰囲気、所定温度に加温した電気炉に、試料粉末を1時間静置して熱処理を行った。
(相対結晶化度の算出)
線源にはCuKα線を用いたXRD測定における、2θ=17.2度、20.9度、21.6度、24.2度及び31.5度に相当するピークの合計強度(以下、「結晶化ピーク強度ともいう。」)を求め、下式で相対結晶化度を算出した。
相対結晶化度(%)=〔熱処理後の結晶化ピーク強度/熱処理前の結晶化ピーク強度〕×100
【0026】
実施例1
文献「Applied Catalysis A: Gelenal 第388巻、256−261頁(2010年)」(以下、「参照文献」とする。)に記載の内容を参照して、Y型ゼオライトの結晶構造を有する複合酸化物を合成した。すなわち、Y型ゼオライト1gを(NH
4)
2TiF
6水溶液100mlに懸濁し、硫酸でpHを1にした。室温で24時間攪拌後、固液分離、水で十分に洗浄して不純物を除去し、さらに120℃で乾燥した後に、500℃で10時間焼成して複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、SiO
2/TiO
2比=34、SiO
2/Al
2O
3比=20のY型ゼオライト構造を有する複合酸化物であった。
以下の組成となるように、純水、水酸化ナトリウム、及びY型ゼオライト構造を有する複合酸化物を、1,1−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム水酸化物水溶液に添加、混合して原料組成物を得た。
SiO
2/TiO
2比 =34
SiO
2/Al
2O
3比 =20
Na/SiO
2比 =0.2
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =7.5
ここで、DEDMP
+/SiO
2比はシリカに対する1,1−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム水酸化物のモル比である。
【0027】
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、これを静置した状態で150℃、7日間結晶化させた。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥した。XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。本実施例の主な合成条件を表1に示した。本実施例のAEI型ゼオライトのXRDパターンを
図1に示した。
また、本実施例のSEM写真を
図2に示した。平均一次粒子径は0.3μmであった。
また、本実施例のUV−visスペクトルを
図3に示した。
図3において、220nm付近にピークトップを有する吸収ピークが観察された。このことから、チタンがゼオライト骨格に取り込まれており、チタンがT原子として含有されていることが確認された。
【0028】
実施例2
原料組成物の組成を以下のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。本実施例の主な合成条件を表1に示した。
SiO
2/TiO
2比 =34
SiO
2/Al
2O
3比 =20
Na/SiO
2比 =0.4
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.6
H
2O/SiO
2比 =7.5
XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。また、UV−vis測定の結果、220nm付近にピークトップを有する吸収ピークが観察され、チタンがゼオライト骨格に取り込まれており、チタンがT原子として含有されていることが確認された。
【0029】
実施例3
水950gに30%硫酸(4g)、(NH
4)
2TiF
6(0.18g)、Y型ゼオライト(3g)を加え、室温で24時間攪拌後、固液分離、水で十分に洗浄して不純物を除去し、さらに125℃で乾燥した後に、500℃で10時間焼成して複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、SiO
2/TiO
2比=33、SiO
2/Al
2O
3比=38のY型ゼオライト構造を有する複合酸化物であった。
以下の組成となるように、純水、水酸化ナトリウム、及びY型ゼオライト構造を有する複合酸化物を、1,1−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム水酸化物水溶液に添加、混合して原料組成物を得た。
SiO
2/TiO
2比 =33
SiO
2/Al
2O
3比 =38
Na/SiO
2比 =0.2
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、これを静置した状態で150℃、2日間結晶化させた。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥した。XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。本実施例の主な合成条件を表1に、得られたAEI型ゼオライトの評価結果を表2に示した。また、UV−vis測定の結果、220nm付近にピークトップを有する吸収ピークが観察され、チタンがゼオライト骨格に取り込まれており、チタンがT原子として含有されていることが確認された。本実施例のAEI型ゼオライトは、SiO
2/TiO
2比=27、SiO
2/Al
2O
3比=32であった。BET比表面積は826m
2/gであった。
【0030】
実施例4
水950gに30%硫酸(4g)、(NH
4)
2TiF
6(0.36g)、Y型ゼオライト(3g)を加え、室温で24時間攪拌後、固液分離、水で十分に洗浄して不純物を除去し、さらに125℃で乾燥した後に、500℃で10時間焼成して複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、SiO
2/TiO
2比=156、SiO
2/Al
2O
3比=26のY型ゼオライト構造を有する複合酸化物であった。
原料組成物の組成を以下のとおりとしたこと以外は、実施例3と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。
SiO
2/TiO
2比 =156
SiO
2/Al
2O
3比 =26
Na/SiO
2比 =0.2
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。本実施例の主な合成条件を表1に、得られたAEI型ゼオライトの評価結果を表2に示した。また、UV−vis測定の結果、220nm付近にピークトップを有する吸収ピークが観察され、チタンがゼオライト骨格に取り込まれており、チタンがT原子として含有されていることが確認された。本実施例のAEI型ゼオライトは、SiO
2/TiO
2比=119、SiO
2/Al
2O
3比=20であった。BET比表面積は817m
2/gであった。
【0031】
実施例5
水950gに30%硫酸(4g)、(NH
4)
2TiF
6(0.135g)、Y型ゼオライト(3g)を加え、室温で24時間攪拌後、固液分離、水で十分に洗浄して不純物を除去し、さらに125℃で乾燥した後に、500℃で10時間焼成して複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、SiO
2/TiO
2比=44、SiO
2/Al
2O
3比=36のY型ゼオライト構造を有する複合酸化物であった。
原料組成物の組成を以下のとおりとし、種晶としてAEI型ゼオライト(SiO
2/TiO
2比=139、SiO
2/Al
2O
3比=16)を2重量%加えたこと以外は、実施例3と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。
SiO
2/TiO
2比 =44
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Na/SiO
2比 =0.2
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。本実施例の主な合成条件を表1に、得られたAEI型ゼオライトの評価結果を表2に示した。また、UV−vis測定の結果、220nm付近にピークトップを有する吸収ピークが観察され、チタンがゼオライト骨格に取り込まれており、チタンがT原子として含有されていることが確認された。本実施例のAEI型ゼオライトは、SiO
2/TiO
2比=24、SiO
2/Al
2O
3比=28であった。BET比表面積は752m
2/gであった。
【0032】
比較例1
Tiを含まず、SiO
2/Al
2O
3比=24のY型ゼオライト構造を有する複合酸化物を用いたこと、及び、原料組成物の組成を以下のとおりとしたこと以外は、実施例3と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。
SiO
2/Al
2O
3比 =24
Na/SiO
2比 =0.2
DEDMP
+/SiO
2比 =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =5
XRD測定の結果、当該結晶化物は、AEI構造の単一相からなるAEI型ゼオライトであった。本比較例の主な合成条件を表1に、得られたAEI型ゼオライトの評価結果を表2に示した。本比較例のAEI型ゼオライトは、SiO
2/TiO
2比>1,000でありTiを実質的に含んでおらず、また、SiO
2/Al
2O
3比=20であった。BET比表面積は693m
2/gであった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
測定例1
実施例3乃至5、比較例1のAEI型ゼオライトを900℃または1,000℃で熱処理し、熱処理後の相対結晶化度を求めた。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3から、900℃の熱処理において、本実施例のAEI型ゼオライトは900℃の熱処理後であっても90%以上の相対結晶化度を維持するのに対し、比較例1では80%未満であり、結晶化度が10%以上も異なることが確認できる。さらに、1,000℃の熱処理では、本実施例のAEI型ゼオライトはいずれも70%以上の相対結晶化度であるのに足しい、比較例1は30%以下であり、両者の耐熱性の差は顕著であった。これより、Tiを含有する本実施例のAEI型ゼオライトは高い耐熱性を示すことが確認できた。