比は、10以上100以下であることが好ましい。このような小細孔ゼオライトは、スズを含有する結晶性アルミノシリケート、構造指向剤、アルカリ金属カチオン、及び水を含む組成物を結晶化することによって製造できる。
該小細孔ゼオライトが、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、CHA型ゼオライト、LEV型ゼオライト及びKFI型ゼオライトからなる群の少なくとも1種である請求項1又は2に記載の小細孔ゼオライト。
ケイ素の原子とアルミニウムの原子の合計に対する前記スズの原子のモル比が0.001以上、0.1以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
スズを含有する結晶性アルミノシリケート、アルカリ金属カチオン、水及び構造指向剤を含む組成物を結晶化する結晶化工程を有する、スズを含有する小細孔ゼオライトの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の小細孔ゼオライトについて詳細に説明する。
【0015】
ゼオライトは、金属原子が酸素原子を介して結合された三次元の骨格構造を有する結晶性物質であり、酸素の結合状態により異なる大きさの径を有する細孔を含む。例えば、FAU型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、MFI型ゼオライト及びL型ゼオライトは、それぞれ酸素12員環、酸素12員環、酸素10員環及び酸素12員環からなる細孔を骨格構造に含むゼオライト、いわゆる中細孔ゼオライト又は大細孔ゼオライトである。なお、本明細書において、中細孔ゼオライトとは、骨格構造に含まれる最大の細孔が酸素10員環及び/又は酸素11員環からなる細孔であるゼオライトであり、大細孔ゼオライトとは、骨格構造に含まれる最大の細孔が酸素12員環以上からなる細孔であるゼオライトである。
【0016】
本発明のゼオライトは小細孔ゼオライトである。本明細書において、小細孔ゼオライトとは、酸素10員環以上からなる細孔を骨格構造に含まないゼオライトである。言い換えれば、小細孔ゼオライトは、骨格構造に含まれる最大の細孔が9個以下の酸素原子から構成されるゼオライトである。特に、本発明のゼオライトは、骨格構造に含まれる最大の細孔が8個の酸素原子から構成される環状構造(酸素8員環)からなる細孔であるゼオライトであることが好ましい。好ましい小細孔ゼオライトとしては、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、CHA型ゼオライト、LEV型ゼオライト及びKFI型ゼオライトからなる群の少なくとも1種が挙げられ、CHA型ゼオライト及びAEI型ゼオライトの少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0017】
上記のゼオライトの構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で規定されている構造である。これらの構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza−struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、これを同定することができる。
【0018】
本発明の小細孔ゼオライトは、結晶性アルミノシリケートであることが好ましい。結晶性アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる骨格構造を有するアルミノシリケートである。
【0019】
また、本発明の小細孔ゼオライトはスズを含有する。本発明の小細孔ゼオライトに含有されるスズの状態としては、例えば、ゼオライトの骨格構造に含まれている状態や、スズ化合物としてゼオライトに化学結合を介さずに固定されている状態や、ゼオライトの骨格構造に化学結合している状態を挙げることができる。本発明の小細孔ゼオライトにおけるスズの状態は紫外・可視分光法(UV−Vis)により測定することができる。小細孔ゼオライトにスズが含有されることにより、小細孔ゼオライトの分子篩効果に加え、スズによる触媒活性効果を兼備し、より選択性が高い触媒となる。
【0020】
本発明の小細孔ゼオライトに含有されるスズは4配位のスズであることが好ましい。4配位のスズは凝集していない状態、すなわち、分散した状態のスズである。スズが分散した状態であることで、触媒として作用するスズの割合が多くなる。スズが4配位であることは、上述したUV−Visにおいて203±5nmにピークトップを有するスペクトルにより確認することができる。4配位の状態で存在するスズは高分散した状態である。本発明の小細孔ゼオライトに含まれる4配位のスズは、主に、スズ化合物としてゼオライトに化学結合を介さずに固定されるスズ、ゼオライトの骨格構造に化学結合しているスズ又はゼオライトの骨格構造に含まれるスズと考えられる。
【0021】
本発明の小細孔ゼオライトにおいて、スズはゼオライトの骨格構造に含まれていることが好ましい。スズがゼオライトの骨格構造に含まれている場合、スズがゼオライトの骨格構造に含まれていない場合と比較して、本発明の小細孔ゼオライトの触媒活性がより高くなる。スズがゼオライトの骨格構造に含まれることは、上記のUV−Visピークを有し、なおかつ、XRDパターンにおいてスズ化合物のXRDピークが確認されないことにより判断できる。なお、例えば、小細孔ゼオライトに含まれるスズが、酸化スズ(SnO
2)(スズ化合物)としてゼオライトに化学結合を介さずに固定されている場合や、ゼオライトに化学結合している場合、ゼオライトのXRDパターンは、ゼオライトのXRDピークに加え、格子面間隔3.35、2.64及び1.76Åに相当するXRDピークを有する。
【0022】
本発明の小細孔ゼオライトの骨格構造は、スズが骨格構造中に含有されていない場合、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介した結合の繰返しからなる骨格構造を有する結晶性アルミノシリケートにより構成することができる。また、スズが骨格構造中に含有されている場合、アルミニウム(Al)やケイ素(Si)の少なくとも一部がスズにより置換された結晶性アルミノシリケートにより構成することができる。
【0023】
本発明の小細孔ゼオライトにおいて、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO
2/Al
2O
3比」ともいう。)の下限値は特に限定されないが、10であることが好ましく、更には15であることが好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が10以上であることで、触媒等の用途における実用的な耐熱性を有する。一方、SiO
2/Al
2O
3比の上限値は100であることが好ましく、更には50であることが好ましく、更には40であることがより好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が100以下、更には50以下であれば、本発明の小細孔ゼオライトが触媒として十分な量の酸点を有する。特に好ましいSiO
2/Al
2O
3比としては、15以上50以下を挙げることができ、さらに好ましいSiO
2/Al
2O
3比としては、15以上40以下を挙げることができる。
【0024】
本発明の小細孔ゼオライトにおいて、ケイ素原子とアルミニウム原子の合計に対するスズ原子のモル比(以下、「Sn/(Si+Al)比」ともいう。)の上限値は0.1、更には0.05であることが好ましい。Sn/(Si+Al)比が0.1以下であれば、0.1を超える場合と比較して、骨格構造がより安定になる。Sn/(Si+Al)比の下限値は0.001、更には0.015とすることができる。Sn/(Si+Al)比が0.001以上であれば、0.001未満である場合と比較して、スズを含むことによる触媒特性がより向上する。特に好ましいSn/(Si+Al)比としては、0.01以上0.1以下を挙げることができ、更に好ましいSn/(Si+Al)比としては、0.015以上0.05以下を挙げることができる。
【0025】
本発明の小細孔ゼオライトにおいて、アルミニウム原子に対するスズ原子のモル比(以下、「Sn/Al比」ともいう。)の上限値は、1、更には0.7であることが好ましく、更には0.20であることがより好ましい。また、Sn/Al比の下限値は0.01、更には0.1であることが好ましい。スズはルイス酸としての触媒反応を促進する触媒作用を有し、アルミニウムはブレンステッド酸としての触媒反応を促進する触媒作用を有する。Sn/Al比が、上述した上限値および下限値によって規定される範囲内であれば、この範囲外である場合と比較して、酸化反応及び酸触媒反応がいずれも高く進行し、高い触媒活性を示す。Sn/Al比は0.1以上1以下とすることが好ましく、0.20以上0.7以下とすることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の小細孔ゼオライトは、銅及び鉄の少なくともいずれか、更には銅を含むことが好ましい。これにより、本発明の小細孔ゼオライトがアルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒として高い触媒活性を示す。小細孔ゼオライトが銅及び鉄の少なくともいずれかを含むことで、本発明の小細孔ゼオライトは、特に窒素酸化物還元触媒として高い触媒活性を示す。具体的には、200℃〜500℃の広い温度域において、従来の窒素酸化物還元触媒より高い窒素酸化物還元特性を示し、なおかつ、200℃より低い温度域においても、従来の窒素酸化物還元触媒と同等以上の窒素酸化物還元特性を示す。
【0027】
銅及び鉄の少なくともいずれかの含有量は、小細孔ゼオライトの重量に対する重量割合として0.1重量%以上10重量%以下、更には0.5重量%以上5重量%以下を挙げることができる。ここで、銅及び鉄の少なくともいずれかの含有量とは、小細孔ゼオライトが銅だけを含む場合には銅の含有量であり、小細孔ゼオライトが鉄だけを含む場合には鉄の含有量であり、小細孔ゼオライトが銅及び鉄を含む場合には銅及び鉄の合計の含有量である。
【0028】
次に、本発明の小細孔ゼオライトの製造方法について説明する。
【0029】
本発明の小細孔ゼオライトは、スズを含有する結晶性アルミノシリケート、アルカリ金属カチオン、水及び構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程、を有する製造方法により得ることができる。
【0030】
原料組成物は、スズを含有する結晶性アルミノシリケートを含む。スズを含有する結晶性アルミノシリケートは、スズ源、シリカ源及びアルミナ源として機能する。また、スズを含有する結晶性アルミノシリケートは、規則性がある結晶構造を有している。結晶性アルミノシリケートに含有されるスズの状態は、特に限定されないが、例えば、アルミノシリケートの骨格構造に含まれている状態(骨格構造中のアルミニウム(Al)又はケイ素(Si)の一部がスズにより置換された状態)や、スズ化合物としてアルミノシリケートに化学結合を介さずに固定されている状態や、アルミノシリケートの骨格構造に化学結合している状態を挙げることができる。結晶性アルミノシリケートに含有されるスズは、分散した状態で含有されていることが好ましく、骨格構造に含まれていることが更に好ましい。
【0031】
構造指向剤の存在下でスズを含有する結晶性アルミノシリケートを処理すると、結晶構造の規則性が適度に維持されながら結晶化が進行すると考えられる。スズ源、シリカ源及びアルミナ源がひとつの結晶性アルミノシリケートに含まれることにより、スズ源、シリカ源及びアルミナ源が個別の化合物に含有される場合と比べ、若しくはスズ源、シリカ源及びアルミナ源が非結晶性の化合物に含有される場合と比べ、小細孔ゼオライトがより効率良く結晶化する。また、骨格構造にスズを含有する結晶性アルミノシリケートを用いた場合には、骨格構造にスズが含有されない結晶性アルミノシリケートを用いる場合(すなわち、スズ化合物としてアルミノシリケートに化学結合を介さずに固定されている状態)と比較して、得られる小細孔ゼオライトのスズの分散性が高くなる。
【0032】
単一相の小細孔ゼオライトを得られやすくなるため、スズを含有する結晶性アルミノシリケートの構造は、FAU型(酸素12員環)とすることができ、更にはX型(酸素12員環)およびY型(酸素12員環)の少なくともいずれかとすることが好ましく、また更にはY型(酸素12員環)であることがより好ましい。
【0033】
結晶性アルミノシリケートのSiO
2/Al
2O
3比の下限値としては、1.25を挙げることができ、更には10、更には15を挙げることができる。一方、SiO
2/Al
2O
3比の上限値は、100とすることができ、更には50とすることができる。特に好ましい結晶性アルミノシリケートのSiO
2/Al
2O
3比としては、10以上100以下、更に好ましいSiO
2/Al
2O
3比としては、15以上50以下を挙げることができる。
【0034】
結晶性アルミノシリケートのSn/(Si+Al)比の上限値としては、0.1を挙げることができ、更には0.05を挙げることができる。一方、Sn/(Si+Al)比の下限値は、0.005とすることができ、更には0.01とすることができる。好ましいSn/(Si+Al)比としては0.005以上0.1以下を挙げることができ、更に好ましいSn/(Si+Al)比としては0.01以上0.05以下を挙げることができる。
【0035】
スズを含有する結晶性アルミノシリケートのカチオンタイプは任意である。カチオンタイプとしては、ナトリウム型(Na型)、プロトン型(H
+型)及びアンモニウム型(NH
4型)からなる群の少なくとも1種であり、更にはプロトン型であることが好ましい。
【0036】
原料組成物は、結晶性アルミノシリケート以外のスズ源、シリカ源又はアルミナ源を含有しなくてもよい。小細孔ゼオライトの製造(原料組成物の結晶化)の高効率化の観点から、原料組成物は非晶質のスズ源、シリカ源及びアルミナ源を含んでいないことが好ましく、スズ源、シリカ源及びアルミナ源は結晶性アルミノシリケートのみであることがより好ましい。
【0037】
アルカリ金属カチオンは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含むカチオンとすることができる。好ましいアルカリ金属カチオンは、ナトリウムおよびカリウムの少なくともいずれかを含むカチオンである。更に好ましいアルカリ金属カチオンは、ナトリウムカチオンである。
【0038】
アルカリ金属カチオンの状態は特に制限されないが、塩として原料組成物に含まれることが好ましい。アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物、アルカリ金属のヨウ化物及びアルカリ金属のフッ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が例示でき、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属の塩化物の少なくともいずれかであることが好ましく、アルカリ金属の水酸化物が特に好ましい。また、結晶性アルミノシリケートがアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ金属カチオンとすることができる。
【0039】
SDAは、小細孔ゼオライトの各構造を指向する任意のものであればよい。例えば、CHA構造を指向するSDAとして、N−メチル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩化物、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム臭化物、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨウ化物、トリメチルベンジルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム水酸化物及びN,N,N−トリメチルエキソアミノノルボルネンからなる群の少なくとも1種を挙げることができ、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、「TMAdaOH」ともいう。)であることが好ましい。また、AEI構造を指向するSDAとして、N、N−ジエチル−2、6−ジメチルピペラジニウム水酸化物、N、N−ジエチル−2、6−ジメチルピペラジニウム塩化物、N、N−ジエチル−2、6−ジメチルピペラジニウム臭化物、N、N−ジエチル−2、6−ジメチルピペラジニウムヨウ化物、N,N−ジメチル−3、5−ジメチルピペラジニウム水酸化物、N,N−ジメチル−3、5−ジメチルピペラジニウム塩化物、N,N−ジメチル−3、5−ジメチルピペラジニウム臭化物、N,N−ジメチル−3、5−ジメチルピペラジニウムヨウ化物、N,N−ジメチル−2、6−ジメチルピペラジニウム水酸化物、N,N−ジメチル−2、6−ジメチルピペラジニウム塩化物、N,N−ジメチル−2、6−ジメチルピペラジニウム臭化物及びN,N−ジメチル−2、6−ジメチルピペラジニウムヨウ化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0040】
原料組成物に含まれる水としては、例えば、純水を使用することができる。なお、原料組成物の各原料(水を除く)は、水溶液として使用することもできる。
【0041】
原料組成物は、種晶を含んでもよい。種晶は、CHA型ゼオライトとすることが好ましい。種晶に含まれるアルミニウム及びケイ素に関し、原料組成物中のアルミニウムをAl
2O
3に換算した重量をw1とし、原料組成物中のケイ素をSiO
2に換算した重量をw2とし、種晶中のアルミニウムをAl
2O
3に換算した重量をw3とし、種晶中のケイ素をSiO
2に換算した重量をw4としたときに、重量w1,w2,w3,w4は、下記(1)式を満たすことが好ましい。また、重量w1,w2,w3,w4は、下記(2)式を満たすことがさらに好ましい。下記式(1),(2)では、合計重量(w1+w2)に対する合計重量(w3+w4)の割合(重量%)の範囲を規定している。
0≦(w3+w4)×100/(w1+w2)≦30 (1)
0.1≦(w3+w4)×100/(w1+w2)≦10 (2)
【0042】
原料組成物中のアルミニウム及びケイ素について、アルミナに対するシリカのモル比(SiO
2/Al
2O
3比)の下限値は10とすることができ、更には15とすることができる。一方、原料組成物のSiO
2/Al
2O
3比の上限値は100とすることができ、更には50とすることができる。好ましいSiO
2/Al
2O
3比としては、10以上100以下を挙げることができ、更に好ましいSiO
2/Al
2O
3比としては、15以上50以下を挙げることができる。
【0043】
原料組成物中のケイ素及びSDAについて、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO
2比」ともいう。)の下限値は0.01とすることでき、更には0.05とすることが好ましく、更には0.1であることがより好ましい。SDA/SiO
2比が0.01以上の場合、SDA/SiO
2比が0.01未満の場合と比較し、小細孔ゼオライト中にスズが含まれやすくなる。SDA/SiO
2比の上限値は0.5とすることができ、更には0.3とすることができる。SDAは高価な化合物であるため、SDA/SiO
2比が0.5を超えると、SDA/SiO
2比が0.5以下である場合と比較して、SDAの使用量が増えてコストが高くなる。
【0044】
原料組成物中のケイ素及びアルカリ金属カチオンについて、シリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「アルカリ/SiO
2比」ともいう。)の上限値は0.5であることが好ましい。アルカリ/SiO
2比が0.5以下である場合、アルカリ/SiO
2比が0.5を超える場合と比較して、高いSiO
2/Al
2O
3比を有するCHA型ゼオライトが得られやすくなる。アルカリ/SiO
2比の下限値は0.05とすることができ、更には0.1とすることが好ましい。アルカリ/SiO
2比が0.05以上である場合、アルカリ/SiO
2比が0.05未満である場合と比較して、原料組成物の結晶化が進行しやすくなる。
【0045】
原料組成物に水酸化物が含まれる場合、シリカに対する水酸化物のモル比(以下、「OH/SiO
2比」ともいう。)の上限値は1とすることができる。OH/SiO
2比が1以下であることで、OH/SiO
2比が1を超える場合と比較して、より高い収率で小細孔ゼオライトを得ることができる。原料組成物のOH/SiO
2比の下限値は、0.1とすることができ、0.2とすることがさらに好ましい。なお、原料組成物に2種類以上の水酸化物が含まれる場合、それぞれの水酸化物について、シリカに対する水酸化物のモル比を算出し、算出されたモル比を合算することでOH/SiO
2比を算出することができる。
【0046】
原料組成物中のケイ素及び水(H
2O)について、シリカに対する水(H
2O)のモル比(以下、「H
2O/SiO
2比」ともいう。)の上限値は100とすることができ、更には50とすることができる。H
2O/SiO
2比が100以下であれば、H
2O/SiO
2比が100を超える場合と比較して、より効率良く小細孔ゼオライトが得られる。適度な流動性を有する原料組成物とするため、H
2O/SiO
2比の下限値は5とすることができ、更には10とすることができる。
【0047】
原料組成物の組成のモル比として好ましい範囲を以下に挙げることができる。
10≦SiO
2/Al
2O
3比≦100
0.01≦SDA/SiO
2比≦0.5
0.05≦アルカリ/SiO
2比≦0.5
0.1≦OH/SiO
2比≦1
5≦H
2O/SiO
2比≦100
【0048】
結晶化工程では、上記の各原料を含む原料組成物を水熱合成することにより、これを結晶化する。結晶化は、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
【0049】
結晶化を促進する観点から、結晶化温度は80℃以上とすることができる。結晶化温度が高いほど、結晶化が促進される。そのため、結晶化温度は100℃以上が好ましく、120℃以上がさらに好ましい。一方、原料組成物が結晶化すれば、必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下とすることができ、更には150℃以下とすることができる。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態、又は静置した状態で行うことができる。
【0050】
本実施形態の小細孔ゼオライトは、上述した結晶化工程により製造することができるが、以下に説明する工程を経ることにより、小細孔ゼオライトを触媒や吸着剤等として使用できる状態とすることができる。
【0051】
洗浄工程では、まず、結晶化後の小細孔ゼオライトと液相とを固液分離する。固液分離は、公知の方法を使用することができる。固液分離後、固相として得られる小細孔ゼオライトを純水で洗浄することができる。
【0052】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後の小細孔ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の処理条件は任意であるが、具体的な処理としては、結晶化工程後又は洗浄工程後の小細孔ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0053】
焼成工程は、小細孔ゼオライト内にあるSDAを燃焼させて除去する。焼成工程の処理条件は任意であるが、具体的な処理としては、結晶化工程後、洗浄工程後、又は乾燥工程後の小細孔ゼオライトを、大気中、500℃以上、900℃以下で静置することが例示できる。
【0054】
結晶化後の小細孔ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、金属イオンをアンモニウムイオン(NH
4+)や、プロトン(H
+)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換の具体的な処理としては、小細孔ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合して、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換の具体的な処理としては、小細孔ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0055】
本発明の小細孔ゼオライトが銅(Cu)及び鉄(Fe)の少なくともいずれかを含有する場合、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む化合物(以下、「銅化合物等」ともいう。)と本発明の小細孔ゼオライトとを接触させる金属含有工程、を有する製造方法により得ることができる。
【0056】
金属含有工程は、小細孔ゼオライトのイオン交換サイト及び細孔の少なくともいずれかに銅及び鉄の少なくともいずれかが含有される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には遷移金属化合物を含む水溶液と小細孔ゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。
【0057】
銅化合物等は、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む無機酸塩、更には銅及び鉄の少なくともいずれかを含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩及び塩化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0058】
銅化合物等を含有する小細孔ゼオライトの製造方法は、金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程、及び活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0059】
洗浄工程は、金属含有工程後の小細孔ゼオライトから不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有工程後の小細孔ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0060】
乾燥工程は、小細孔ゼオライトに付着した水分を除去すればよく、大気中で、100℃以上、200℃以下で静置することが例示できる。
【0061】
活性化工程は、金属含有工程後の小細孔ゼオライトから有機物を除去する。具体的な処理としては、金属含有工程後の小細孔ゼオライトを、大気中、200℃を超え、600℃以下で静置することが例示できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
【0063】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:AXS D8 Advance、Bruker AXS社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲 :2θ=5°〜50°
管電圧 :40kV
管電流 :40mA
スキャン速度 :0.1s
スリット幅 :8mm
【0064】
(組成分析)
試料の組成はEDX(装置名:S−4800、日立製作所製)によって測定した。測定条件は以下のとおりである。
加速電圧 :20kV
作動距離 :15mm
【0065】
(UV−vis測定)
一般的なUV−vis測定装置(装置名:V−570、日本分光株式会社製)を使用して、試料の拡散反射スペクトルをバンド幅10mm、スキャン速度400nm/分の条件で測定した。
【0066】
合成例1(Sn含有FAU型ゼオライト)
950gの水に0.25gのNa
2SnF
6を溶解させ、そこに濃度30重量%の硫酸を4g添加、混合して処理溶液を調製した。当該処理溶液にFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=5.6)を懸濁させ、室温で24時間攪拌した。得られた固相をpHが7になるまで純水洗浄した後、60℃の温水で洗浄した。120℃で乾燥することでSnを含有するFAU型ゼオライトを得た。得られたFAU型ゼオライトは、骨格構造中のアルミニウム(Al)又はケイ素(Si)の一部がスズにより置換された結晶性アルミノシリケートであった。得られたFAU型ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3比は36であり、Sn/(Si+Al)比は0.027であり、Sn/Al比は0.51であり、カチオンタイプはナトリウム型であった。
【0067】
実施例1
純水、水酸化ナトリウム、合成例1で得られたFAU型ゼオライト、種晶(CHA型ゼオライト、SiO
2/Al
2O
3比=32、Sn/(Si+Al)比=0、Sn/Al比=0、カチオンタイプ:プロトン型)及びTMAdaOH水溶液を混合して以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.1
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.2
OH/SiO
2比 =0.3
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0068】
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この容器を静置した状態で125℃、2日間の条件で原料組成物を結晶化させた。結晶化後の原料組成物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥して本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
【0069】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。また、本実施例の小細孔ゼオライトのXRDパターンを
図1に、SEM写真を
図2に、UV−visスペクトルを
図3に示した。XRDパターンの結果から、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認でき、酸化スズ(SnO
2)等のスズ化合物は観察されなかった。また、UV−visの結果から203nmにピークトップを有するスペクトルが確認された。これより、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。なお、本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が30であり、Sn/(Si+Al)比が0.025であり、Sn/Al比が0.41であった。
【0070】
実施例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.2
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.2
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0071】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が26であり、Sn/(Si+Al)比が0.031であり、Sn/Al比が0.43であった。
【0072】
実施例3
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.25
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.2
OH/SiO
2比 =0.45
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0073】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が26であり、Sn/(Si+Al)比が0.021であり、Sn/Al比が0.29であった。
【0074】
実施例4
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.3
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.2
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0075】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が24であり、Sn/(Si+Al)比が0.017であり、Sn/Al比が0.22であった。
【0076】
実施例5
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.4
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.2
OH/SiO
2比 =0.6
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0077】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が18であり、Sn/(Si+Al)比が0.036であり、Sn/Al比が0.36であった。
【0078】
実施例6
種晶にCHA型ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比=30、Sn/(Si+Al)比=0.025、Sn/Al比=0.41、カチオンタイプ:プロトン型)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
【0079】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が30であり、Sn/(Si+Al)比が0.032であり、Sn/Al比が0.52であった。
【0080】
実施例7
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例6と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.1
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.25
OH/SiO
2比 =0.35
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0081】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が28であり、Sn/(Si+Al)比が0.033であり、Sn/Al比が0.50であった。
【0082】
実施例8
原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例6と同様の方法で本実施例の小細孔ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =36
Sn/(Si+Al)比 =0.027
NaOH/SiO
2比(アルカリ/SiO
2比) =0.1
TMAdaOH/SiO
2比(SDA/SiO
2比) =0.3
OH/SiO
2比 =0.4
H
2O/SiO
2比 =40
(w3+w4)×100/(w1+w2) =3
【0083】
原料組成物の主な組成及び本実施例の小細孔ゼオライトの評価結果を表1に示した。XRD及びUV−visの結果より、本実施例の小細孔ゼオライトがCHA型ゼオライトの単一相であることが確認できた。また、スズは分散した状態で存在し、本実施例のCHA型ゼオライトは、4配位のスズを含み、なおかつ、CHA型ゼオライトの骨格構造にスズが含まれていることが確認できた。本実施例の小細孔ゼオライトにおいて、SiO
2/Al
2O
3比が26であり、Sn/(Si+Al)比が0.034であり、Sn/Al比が0.48であった。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、いずれの実施例においてもスズを含有する酸素8員環のCHA型ゼオライトが得られることが確認できた。また、原料組成物の組成を変化させることで、小細孔ゼオライトの組成を調整できることが確認できた。
【0086】
測定例(窒素酸化物還元率の測定)
実施例8と同様な方法で得られた小細孔ゼオライトを、大気中、500℃で10時間焼成した後、硝酸アンモニウム水溶液を用いてイオン交換して、NH
4型のゼオライトとした。NH
4型ゼオライト0.97gに硝酸銅水溶液を添加し、これを乳鉢で混合した。硝酸銅水溶液は硝酸銅3水和物54mgを純水0.5gに溶解したものを使用した。
【0087】
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成し、これを本実施例の銅含有小細孔ゼオライトとした。
【0088】
また、スズを含有しないCHA型ゼオライト(Sn/(Si+Al)比=0、Sn/Al比=0)を同様な方法で処理し、比較例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0089】
これらの銅含有ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液に溶解した後に、ICP−AES分析(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)した結果、本実施例の銅含有小細孔ゼオライトの銅含有量は1.6重量%であり、銅含有CHA型ゼオライトの銅含有量は1.4重量%であった。
【0090】
得られた銅含有ゼオライトを、それぞれ、プレス成形後、凝集径12メッシュ〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、これに10体積%のH
2Oを含む空気を300mL/分で流通させて水熱耐久処理を行った。水熱耐久処理は、900℃で4時間行った。
【0091】
水熱耐久処理後の銅含有ゼオライトの凝集粒子体を1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。その後、150℃、200℃、300℃、400℃及び500℃のいずれかの温度で、窒素酸化物を含む以下の組成からなる処理ガスを当該反応管に流通させることでアンモニアSCR方法により窒素酸化物還元率を測定した。処理ガスの流量は1.5L/分、及び空間速度(SV)は60,000h
−1として測定を行った。
【0092】
<処理ガス組成>
NO :200ppm
NH
3 :200ppm
O
2 :10容量%
H
2O :3容量%
残部 :N
2
【0093】
反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式(3)に従って、窒素酸化物還元率を求めた。ここで窒素酸化物とは、一酸化窒素と二酸化窒素を指す。
【0094】
上記式(3)において、Rは窒素酸化物還元率(%)、N1は、銅含有ゼオライトに接触させる前の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)、N2は、銅含有ゼオライトに接触した後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)である。
【0095】
窒素酸化物還元率の算出結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2より、本発明の小細孔ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても、150℃から500℃の広い温度範囲において、比較例(従来)のSnを含有しないCHA型ゼオライトよりも高い窒素酸化物還元率を示すことが確認できた。これより、本発明のCHA型ゼオライトは、耐熱性が高く、高温高湿下に晒された後でも高い窒素酸化物還元特性を示す触媒となることが確認できた。